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体罰根絶に向けた総合的な対策 部活動指導等の在り方検討委員会報告書

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学校における体罰の根絶に向けて

部活動は、教育課程外の教育活動として定着してきた我が国固有の学校文化である。部活動はた だ単に上手になるとか、試合の勝ち負けにこだわるだけでなく、努力する気持ち、克己心、思いや り、そして自主性や社会性を育てる。そして何よりも、心から話し合える友達、先輩・後輩の上下 関係や顧問の先生との絆きずな等、豊かな人間関係の基礎を培う上で、極めて重要な教育活動であり、今 後も引き続き振興していくことが大切である。 平成24年末、大阪市立桜宮高校バスケットボール部において、顧問教諭の体罰を背景として生 徒が自殺するという痛ましい事件が発生した。この事件を契機に、これまでにない規模で全国的に 調査が行われ、潜在化していた体罰等の実態が明らかとなってきた。また、多くの運動部活動にお ける暴力的な指導が問題となり、柔道をはじめとしてスポーツ界における指導の在り方も問われる こととなった。 東京都教育委員会は、平成25年1月17日付けで、体罰の根絶に向け、「適切な部活動指導の 推進について」の通知を発出するとともに、都内公立中学校及び高等学校を対象に、「部活動指導 における体罰の実態把握について」により、平成24年度中の運動部活動における体罰の実態調査 を開始した。その後、1月23日には、文部科学省による全国調査が始まったことを受け、小学校 を含めた都内全公立学校を対象に、全ての教育活動における体罰を調査することとなった。 その結果、平成25年5月23日、都内公立学校における体罰の実態把握について、最終報告を 行うに至った。東京都では、平成 19 年度から平成 23 年度までの間、平均すると 1 年間に約 30 件の体罰に係る懲戒処分・措置が行われてきた。しかし、このたびの調査により、平成 24 年度に は、146 校で 182 件の体罰が明らかとなった。また、体罰に至らないまでも不適切な指導と判断 されたものも 335 校で 542 件明らかとなった。 多くの学校では、児童・生徒を健全に育成していくために、適切に部活動が行われている。一部 であっても、体罰を指導の手段とすることがあってはならない。そのためにも、体罰を指導の一環 とする認識や暴力による厳しい指導も時として必要とする風潮を一掃していかなければならない。 しかし、既に明治 12 年(1879 年)の教育令において、「凡 オヨソ 学校ニ於 オ イ テハ生徒ニ体罰ヲ加 ク ハ フ可 ベ カ ラ ス」と定められて以来 130 年以上経っても、体罰は後を絶たない状況である。教師となり授業を 行うことを、「教鞭き ょうべ んをとる」と言うが、我が国では永らく体罰を容認する風土や、多少の「愛の鞭む ち」 は必要といった意識が潜在的にあり、問題の根は極めて広く深い。 東京都教育委員会では、今回の事件を契機に、体罰の根絶に向けた総合的な対策を検討すること となった。平成25年2月に本委員会が設置されて以来、体罰が起こる原因や背景、そして体罰を 根絶していくための対策を検討してきた。このたび、その検討結果を取りまとめたので、ここに報 告する。 平成25年 9 月12日

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目次

第 1 章 部活動の振興について

1 部活動の教育的意義と位置付け ・・・1 2 スポーツの本来的意義 ・・・2 3 求められるスポーツ指導者像 - Good Coach を求めて - ・・・3 4 部活動指導者に求められるコンプライアンスと倫理規範 ・・・4 5 中学校・高等学校の部活動からの体罰の一掃 ・・・5

第 2 章 体罰について

1 文部科学省の見解 ・・・7 2 過去の判例から ・・・9 3 体罰の概念規定 ・・・11 4 体罰の陰に隠れていた暴言や不適切な指導 ・・・13 5 体罰関連行為のガイドライン ・・・15

第3章 東京都の現状

1 体罰防止に向けたこれまでの取組 ・・・19 2 平成24年度体罰実態把握調査の結果 ・・・21 3 「体罰調査委員会」による課題の整理と今後の方向性 ・・・23

第4章 体罰はなぜ繰り返されるのか

1 体罰発現のメカニズム ・・・25 2 体罰が繰り返される構造 ・・・26 (1) 教員自身の問題 (2) 児童・生徒自身の問題 (3) 学校文化や教員の意識 (4) 体罰を容認する社会風土 3 なぜ体罰を根絶しなければならないのか ・・・28

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第5章 体罰を根絶していくための総合的な対策

1 体罰防止に関する教員研修の徹底 ・・・32 (1) 全校で、全教員に対し、年度初めに体罰禁止を徹底 (2) 体罰防止校内研修の全校実施 (3) 教員の意識を改革する新たな研修の展開 (4) 校長等管理職のマネジメントの強化 2 体罰をチェックする機能の強化 ・・・37 (1) 体罰ガイドラインの策定と活用 (2) コンプライアンスと管理職の果たす役割 (3) 体罰調査の継続実施 (4) 子供の声が届く相談機能の充実 3 体罰を容認する風土を刷新するための取組 ・・・39 (1) 体罰根絶の考え方の周知徹底 (2) 保護者等への学校公開や授業参観の一層の推進 (3) 体罰事案報告システムの統一 (4) 処分量定の見直し 4 体罰のない部活動の推進 ・・・41 (1) 顧問教諭に対する指導者講習会の実施 (2) 部活動単位で、保護者等との意見交換会を開催 (3) Good Coach 賞の創設 (4) スポーツ医・科学的視点の積極的導入 (5) 学校管理運営規則に、顧問教諭の業務内容を明示 (6) 外部指導員との契約関係の明確化 (7) 外部指導員の資格要件 (8) 外部指導員や上級生への対応 (9) 顧問教諭の努力に応えるための条件整備

関係資料

○ 特別講演の記録 ・・・47 ○ 関係通知 ・・・55 ○ 「部活動指導等の在り方検討委員会」設置要綱 ・・・76 ○ 「部活動指導等の在り方検討委員会」委員名簿 ・・・77 ○ 「部活動指導等の在り方検討委員会」検討経過 ・・・78 ○ 参考文献等・主な相談機関(都内) ・・・79

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報告書の概要

本委員会は、平成 25 年 1 月に発覚した大阪市立桜宮高等学校バスケットボール部員の

自殺を受けて設置されたものである。このため、当初は運動部活動における体罰のない指

導の在り方を推進していくための対策を検討することを目的としていた。

しかし、体罰は部活動に限って発生しているわけではない。平成 25 年 5 月 23 日に、

「都内公立学校における体罰の実態把握について」で報告されたとおり、都内公立学校に

おける体罰等の実態が広範囲にわたり、恒常的に行われている例があることが明らかとな

った。このため、全教育活動から体罰等を根絶していくことが急務の課題となった。

本委員会は、部活動指導の在り方を含めて学校から体罰等を根絶していくための対策に

ついて検討を行ったものである。その概要(特徴)は以下のとおりである。

部活動の方向性

生徒の意欲を高める部活動の推進

体罰について

① 体罰の概念規定を行い、ガイドラインを明確化した。

② 体罰が繰り返されてきた背景や構造を明らかにした。

最重要課題

教員の意識改革

総合対策の柱

① 体罰を根絶するため、教員研修を徹底する。

② 体罰をチェックする機能を強化する。

③ 体罰を容認する風土を刷新する。

④ 体罰のない部活動を推進する。

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第1章

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1 部活動の教育的意義と位置付け

● 教育的意義と位置付けの明確化

部活動は、学校が教育活動の一環として計画・実施するものであり、思いやりの心や

自主性・社会性を育み、豊かな人間関係や生涯学習の基礎づくり、生徒の個性・能力の

伸長や体力の向上、健康増進等にとって極めて重要な教育的価値がある。

部活動をめぐっては、これまでその位置付けが曖昧であることが指摘されてきた。平

成 16 年設置の「部活動基本問題検討委員会」において、その原因は、部活動の歴史的経

緯、活動の任意性、教員のボランティア意識、クラブ活動との混同、関係諸規定の未整

備等にあると分析した。

このため、東京都教育委員会は、

「東京都立学校の管理運営に関する規則」の一部を改

正し、平成 19 年4月から、学校における部活動の位置付けを規則上明確にした。

東京都立学校の管理運営に関する規則 (部活動) 第 12 条の 12 学校は、教育活動の一環として部活動を設置及び運営するものとする。 2 校長は、所属職員(事務職員等を除く。)に部活動の指導業務を校務として分掌させることができる。 3 校長は、所属職員(事務職員等を除く。)以外の者に部活動の指導業務を委嘱することができる。 4 学校は、部活動が当該学校の施設で活動できない場合に、当該学校以外の施設を活動の拠点とすることができる。

● 部活動指導の職務関連性

東京都教育委員会においては、既に、部活動指導を本務として校務分掌に位置付けて

いること、人事考課の業績評価の評価項目に位置付けていること、週休日等の部活動指

導は振替休日や特殊勤務手当で対応していることなど職務との関連性を明確にしている。

一方、部活動を学校管理運営規則に位置付けていない区市町村教育委員会があること

や、

「部活動の指導は、教員の本務ではない。

「部活動指導はボランティアで行っている。

と誤解している人がいる状況を改善していくことが課題である。

中央教育審議会

平成 20 年 1 月 17 日、中央教育審議会は、

「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特

別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」において、学校教育活動を「教

育課程内の学校教育活動」と「教育課程外の学校教育活動」に大別し、部活動は「教育

課程外の学校教育活動」の一つであると整理している。

● 学習指導要領

文部科学省は、中学校・高等学校学習指導要領において、

「教育課程外の学校教育活動」

である部活動について、以下のように言及している。

「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。」 総則「教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項」から

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-2 スポーツの本来的意義

● 「スポーツ」の語源

「sport」は、ラテン語の「deportare」に由来し、「気晴らしをする」、「楽しむ」、

「遊ぶ」などを意味していた。この言葉が、古フランス語の「desport」を経て、競技な

どを意味する「sport」として19世紀から20世紀にかけて国際的に使用されるように

なった。

スポーツは、しばしば、健康や体力の維持増進といったその効用面から捉えられがち

であるが、その語源にもあるように、気晴らしや気分転換がそもそもの意味であり、ス

ポーツすること自体が喜びや楽しさをもたらす活動である。

● 世界共通の文化としてのスポーツ

スポーツは、それぞれの国や地域に固有のスポーツがある一方で、子供から大人まで、

障害のある人もない人も、言葉や生活習慣の違いを越えて、誰もがともに楽しみ、競う

ことができる、世界共通の人類の文化と言える。

現在、スポーツは、 生きがいのある豊かな人生を送るために必要な健やかな心身、 豊

かな交流や自己開発の機会を提供する重要な文化的価値を有している。

● スポーツの効果

スポーツを適切に行うことは、 身体の機能や体力・技能を維持・向上させるという効

果がある。スポーツにより、ルールやマナーに関する合意を形成することや適切な人間

関係を築くことなどの社会性の発達に効果が期待される。

● 生徒の意欲を高める部活動の推進

スポーツは、福祉、教育、観光、産業、都市づくり等他の分野の施策と連動すること

で、相乗効果により、心身の健康を含めた生活の質の向上、地域コミュニティや経済を

含めた都市の活性化などに対して大きな力を発揮する。

このため、東京都は、スポーツの持つ力に、より多くの人が気付き、それぞれの年齢

や健康状態、技術、興味、目的に応じて、スポーツを楽しみ、都民の誰もがスポーツの

持つ力による効果を享受し、活気あふれる社会「スポーツ都市東京」の実現を目指して

いる。

部活動は、スポーツに興味と関心を持つ同好の生徒が、より高い水準の技能や記録に

挑戦する中で、スポーツの楽しさや喜びを味わうとともに、体力の向上や健康の増進に

も極めて効果的な活動である。

スポーツ都市東京を実現していくためには、学校教育において、体育授業ではスポー

ツの良さや効果を体感させ、部活動の振興によりスポーツの愛好者をより多く育成して

いくことが大切である。

- 2 -



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-3 求められるスポーツ指導者像 -Good Coach を求めて-

● スポーツ指導者の役割

スポーツ文化を豊かに享受する能力とは、プレイヤーが自らスポーツすることに意義

と価値を持ち、スポーツの競技規則、スポーツマンシップとフェアプレイに代表される

マナー、エチケットなどのスポーツ規範に基づき主体的・継続的にスポーツの楽しさや

喜びを味わうことである。

これらの能力を育成するため、スポーツ指導者は、自らがスポーツ文化を理解し、プ

レイヤーとお互いに尊敬し合い、プレイヤーの立場に立ち、サポートしていかなければ

ならない。

● 求められるスポーツ指導者像

スポーツ指導者には、スポーツに関わる人々の様々な欲求に対し適切にサポートして

いくことが求められる。学校の部活動顧問教諭が、そのスポーツの専門的な知識・技能

や高いコーチング能力を有するとは限らない。しかし、教育活動の一環として設置した

部活動の顧問になった以上、児童・生徒のニーズが何かということを十分に理解した上

で、その役割を果たすことが大切である。

スポーツとの出会いをコーディネート 生徒同士の仲間づくり スポーツを継続できるようサポート マナーやエチケットなどの道徳的規範の育成 意欲、自立心や協調性・社会性の育成 信頼関係の醸成 スポーツの楽しさを体現するモデル 対象による適切な目標水準の設定 専門的な知識・技能 的確な練習内容・方法 高いコーチング能力 人間的魅力 〈顧問に期待される役割〉 〈身に付けておきたい資質・能力〉

● 優れた指導者(Good Coach)像-Good WinnerとGood Loserを育てる-

「リーダー論」

「十の自戒」

一 部活動は教育活動であることを心に刻むべし 二 生徒は小さいながらも大きな人格をもってい るものと心得るべし 三 優れた指導者には自ずと蹊が成るものと省み るべし 四 人は、愛情と率先垂範により手塩にかけて育 てるべし 五 大声と怒鳴り声は違うもの、人を責める前に 自らを責めるべし 六 立派な指導者に学び、生徒を伸ばす優れた指 導法を追究すべし 七 人は信頼する人からしか学ばないものと理解 すべし 八 自分の過去の実績や経験に頼らず未来を見る べし 九 師弟の親密な関係性に落とし穴あり、一線を 画すべし 十 罰を与えることは指導者として敗者であると 自覚すべし (体罰根絶に向けた教員研修用パンフレットから)

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ポール・ピコーズ(米国:心理学者・行動科学者) 選手の声を聞くということ。 選手に説明するということ。 選手を支えるということ。 選手と話し合うということ。

選手を正当に評価するという こと。

指導者として責任をとるとい うこと。

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-4 部活動指導者に求められるコンプライアンスと倫理規範

● コンプライアンス(compliance)

広義には、民間企業、非営利組織、

などが消費者、従業員・職員、取引先、

などの利害関係者の要請に機動的に対応することを意味する。

行政組織

我が国では一般的に、法律や規則に従う「

法令

遵守」の意味で使われている。

● 部活動顧問教諭や外部指導員のコンプライアンスの欠如

平成24年度の体罰の実態把握調査により、顧問教諭や外部指導員による体罰が数多

く判明した。一部には、「部活動の指導は、教員の本務ではない。」「部活動指導はボラン

ティアで行っている。」と誤解している者がおり、部活動指導を私的領域と勘違いしている

と見受けられる事案もあった。部活動は、

「教育課程外の学校教育活動」であっても、その

指導は教員の本務である。

こうしたことから、校長は、学校教育法第11条で禁じられている体罰をさせない、

教員は体罰を行わないというコンプライアンス(法令遵守)を徹底しなければならない。

● 公益財団法人日本体育協会及び加盟団体における倫理に関するガイドライン

公益財団法人全国中学校体育連盟と公益財団法人全国高等学校体育連盟が加盟してい

る公益財団法人日本体育協会は、平成 23 年4月、加盟団体における倫理に関するガイド

ラインを改定して加盟団体に示している。

中学校・高等学校の部活動でスポーツの指導に携わる者は、十分にその内容を理解し、

実践に役立てていくことが大切である。

◇身体的・精神的暴力(バイオレンス)行為等について スポーツを行う際又は指導する際に問題解決の手段として、暴力行為(直接的暴力、暴言、 脅迫、威圧等)を行うことは厳に禁ずる。 ◇身体的及び精神的セクシュアル・ハラスメントについて 安易に性的言動、表現を行うことは厳に慎むこと。親しみの言動、表現であっても、個人に よって受け止め方に違いがあることを認識すること。 ◇アンチ・ドーピング及び薬物乱用防止について 競技能力を高めるためにドーピングを行うことは、フェアプレーの精神に反するばかりでな く、競技者の健康を害するものであり、絶対に行わないこと。 ◇経理処理について 補助金などの取り扱いについては、補助先・助成先のその補助・助成の目的及び経理要項等 を遵守の上、適正な経理処理を行い、決して他の目的に流用しないこと。 〈倫理に関するガイドライン(抜粋)〉

- 4 -



(12)

-5 中学校・高等学校の部活動からの体罰の一掃

● 都内公立学校における体罰の実態把握について(最終報告)から

平成24年度に行った体罰実態把握調査において、合計182人の体罰事案が明らか

となった。全体の52%が授業中等に、48%が部活動中に発生した。

しかし、校種別では、中学校、高等学校において、約60%が部活動中に発生してお

り、授業中を上回った。部活動指導において、生徒を体罰等の手法により育てるという

考え方は誤っており、今後一掃されなければならない。

31 47 16 1 95 0 63 24 0 87 0 20 40 60 80 100 小学校 中学校 高等学校 特別支援学校 合計 授業中等 部活動中 平成24年度体罰実態把握調査における、場面別の体罰の状況(東京都) (人)

● 大阪市立桜宮高等学校バスケットボール部事件

大阪市立桜宮高等学校バスケットボール部主将である男子生徒が、顧問教諭の体罰を

受けた後に、平成24年12月23日朝、自宅で自殺した。

この問題で、大阪市は弁護士による外部監察チームにより、事件の全容を明らかにし

た。それによると、顧問教諭は、生徒に対する暴力を指導の一環であると位置付け、そ

れが指導方法として効果的であるとの考えのもと、主にバスケットボール部員に対し、

恒常的に、平手打ち、足蹴り、物を投げつけるなどの暴力を、時には相当程度に強くか

つ執拗な態様において行っていたことが判明した。

この顧問教諭には顕著な暴力傾向が認められ、生徒が自殺した前日まで暴力が振るわ

れていたことから、生徒の自殺と顧問教諭の暴力の間に関連性があるとした。

さらに、これまで体罰が根絶されていない背景を、以下のように分析した。

「愛の鞭という言葉で表されるところの社会において存在すると思われる体罰に寛容 な考え方を背景として、このように、大半の体罰等が、生徒及び保護者がこれに異を唱 えないため、顕在化されることなく処理されてきたことこそが、これまで体罰が根絶さ れていない根本的理由の一つであると考える。」(外部監察チーム報告書から)

学校においては、こうした教訓を踏まえ、対策を十分に講じて、二度とこのような部

活動での不幸な事件を起こしてはならない。

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-第2章

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1 文部科学省の見解

学校教育法第 11 条

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、 児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

体罰禁止の考え方

体罰は、違法行為であるのみならず、児童・生徒の心身に深刻な悪影響を与え、教員

等及び学校への信頼を失墜させる行為である。

体罰により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童・生徒に力による解決への

志向を助長させ、いじめや暴力行為などの連鎖を生むおそれがある。もとより教員等は

指導に当たり、児童・生徒一人一人をよく理解し、適切な信頼関係を築くことが重要で

あり、このために日頃から自らの指導の在り方を見直し、指導力の向上に取り組むこと

が必要である。懲戒が必要と認める状況においても、決して体罰によることなく、児童・

生徒の規範意識や社会性の育成を図るよう、適切な手段で懲戒を行い、粘り強く指導す

ることが必要である。

懲戒と体罰の区分について

教員等が児童・生徒に対して行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童・

生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒

の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。

この際、単に、懲戒行為をした教員等や、懲戒行為を受けた児童・生徒、保護者の主

観のみにより判断するのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断すべきである。

体罰かどうかの判断

その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とするもの

(殴る、蹴る等)

、児童・生徒に肉体的苦痛を与えるようなもの(正座・直立等特定の姿

勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合は、体罰に該当する。

平成 25 年3月 13 日付 25 文科初第 1269 号 「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」から 文部科学省

- 7 -



(15)

-●

文部科学省が示した体罰等の参考事例

・ 体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。 ・ 帰りの会で足をぶらぶらさせて座り、前の席の児童に足を当てた児童を、突き飛 ばして転倒させる。 ・ 授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちす る。 ・ 立ち歩きの多い生徒を叱ったが聞かず、席につかないため、頬をつねって席につ かせる。 ・ 生徒指導に応じず、下校しようとしている生徒の腕を引いたところ、生徒が腕を 振り払ったため、当該生徒の頭を平手で叩く。 ・ 給食の時間、ふざけていた生徒に対し、口頭で注意したが聞かなかったため、持 っていたボールペンを投げつけ、生徒に当てる。 ・ 部活動顧問の指示に従わず、ユニフォームの片づけが不十分であったため、当該 生徒の頬を殴打する。 ・ 放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室 外に出ることを許さない。 ・ 別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出 ることを許さない。 ・ 宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が 苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた。 ○ 学校教育法施行規則に定める退学・停学・訓告以外で認められると考えられるもの の例 ・ 放課後等に教室に残留させる。 ・ 授業中、教室内に起立させる。 ・ 学習課題や清掃活動を課す。 ・ 学校当番を多く割り当てる。 ・ 立ち歩きの多い児童・生徒を叱って席につかせる。 ・ 練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させる。 ○ 児童・生徒から教員等に対する暴力行為に対して、教員等が防衛のためにやむを得 ずした有形力の行使 ・ 児童が教員の指導に反抗して教員の足を蹴ったため、児童の背後に回り、体をき つく押さえる。 ○ 他の児童・生徒に被害を及ぼすような暴力行為に対して、これを制止したり、目前 の危険を回避するためにやむを得ずした有形力の行使 ・ 休み時間に廊下で、他の児童を押さえつけて殴るという行為に及んだ児童がいた ため、この児童の両肩をつかんで引き離す。 ・ 全校集会中に、大声を出して集会を妨げる行為があった生徒を冷静にさせ、別の 場所で指導するため、別の場所に移るよう指導したが、なおも大声を出し続けて抵 抗したため、生徒の腕を手で引っ張って移動させる。 ・ 他の生徒をからかっていた生徒を指導しようとしたところ、当該生徒が教員に暴 言を吐きつばを吐いて逃げ出そうとしたため、生徒が落ち着くまでの数分間、肩を 両手でつかんで壁へ押しつけ、制止させる。 ・ 試合中に相手チームの選手とトラブルになり、殴りかかろうとする生徒を、押さ えつけて制止させる。

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-2 過去の判例から

これまでにも、教員の懲戒行為が体罰であるかないかが裁判で争われてきた。

戦後の体罰関係裁判のリーディングケースとなった代表的な判決から、体罰に対する司

法の判断や考え方を確認する。

奈良県下北山村立中学校暴行傷害被告事件

(昭和 30 年5月 16 日判決)

大阪高等裁判所

【事件の概要】

昭和 26 年3月 20 日、中学校教諭Tは、中学校玄関付近で、小学校6年生のHほか数名が受け持ちの 担任名を偽ったことに憤慨し、「中学校に入って来たらこんな味や」と言いながら、Hの頭部を右手拳 で一回殴打した。また、昭和 28 年 5 月 23 日、同校S助教諭が、講堂において中学3年生となったHほ か数名が喧騒であったのを再三制止したが、これに従わなかったことに腹を立て、Hの頭部を右平手で 一回殴打した。この2つの事件を合わせ、Hが告訴した。

【判決(抜粋)

・・・・・ 右殴打はこれによつて傷害の結果を生ぜしめるような意思を以てなされたもの ではなく、またそのような強度のものではなかつたことは推察できるけれども、しかしそれが た め に 右 殴 打 行 為 が 刑 法 第 208 条 に い わ ゆ る 暴 行 に 該 当 し な い と す る 理 由 に は な ら な い。・・・・・・・ 殴打のような暴行行為は、たとえ教育上必要があるとする懲戒行為として でも、その理由によつて犯罪の成立上違法性を阻却せしめるというような法意であるとは、と うてい解されないのである。 ・・・・・ そして、殴打の動機が子女に対する愛情に基ずくとか、またそれが全国的に現 に広く行われている一例にすぎないかということは、とうてい右の解釈を左右するに足る実質 的理由とはならない。さらに、所論は親の子に対する懲戒権に関する大審院判例及びいわゆる 一厘事件に対する同院判例を援用するけれども、前者の援用は主として親という血縁に基ずい て教育のほか監護の権利と義務がある親権の場合と教育の場でつながるにすぎない本件の場合 とには本質的に差異のあること看過してこれを混同するものであり、後者の援用は具体的事案 を抽象的に類型化せんとするに帰着し、ともに適切ではない。論旨はいずれもその理由がない。

水戸五中暴行被告事件

(昭和 56 年4月1日判決)

東京高等裁判所

【事件の概要】

昭和 51 年 5 月 12 日、水戸五中では、体育館で全校生徒対象の体力テストを行うこととしていた。女 性K教諭が「体前屈係の人は集まりなさい」と声をかけたところ、2 年生Sが「何だKと一緒か」とず っこけ動作をした。KはSに呼び捨てにされたことに憤慨し、「言っていいことと悪いことがある」な どと叱責しながら、Sの頭部を平手で押すように叩き、拳骨で数回軽く叩いた。 Sは、8 日後に、脳内出血で死亡した。(殴打と死亡の因果関係は認められないと判示された。) 体罰と認定 体罰と認定せず

【判決(抜粋)

右懲戒は、生徒の人間的成長を助けるために教育上の必要からなされる教育的処分と目すべ きもので、教師の生徒に対する生活指導の手段の一つとして認められた教育的権能と解すべき ものである。

- 9 -



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-・・・・・・ 教育作用をしてその本来の機能と効果を教育の場で十分に発揮させるために は、懲戒の方法・形態としては単なる口頭の説教のみにとどまることなく、そのような方法・ 形態の懲戒によるだけでは微温的に過ぎて感銘力に欠け、生徒に訴える力に乏しいと認められ る時は、教師は必要に応じ生徒に対し一定の限度内で有形力を行使することも許されてよい場 合があることを認めるのでなければ、教育内容はいたずらに硬直化し、血の通わない形式的な ものに堕して、実効的な生きた教育活動が阻害され、ないしは不可能になる虞れがあることも、 これまた否定することができないのであるから、いやしくも有形力の行使と見られる外形をも つた行為は学校教育上の懲戒行為としては一切許容されないとすることは、本来学校教育法の 予想するところではないといわなければならない。 ・・・・・・ 被告人の本件行為は、前期認定のとおり、刑法上法令による正当行為と認め られ、・・・・・被告人に対し無罪の言渡しをすることとする。

熊本県天草市立小学校における体罰に係る国家賠償請求事件

(平成 21 年4月 28 日判決)

最高裁判所第三小法廷

【事件の概要】

被上告人は、平成14年11月当時、本件小学校の2年生の男子であり、身長は約130cmであっ た。Aは、その当時、本件小学校の教員として3年3組の担任を務めており、身長は約167cmであ った。Aは、被上告人とは面識がなかった。 Aは、同月26日の1時限目終了後の休み時間に、本件小学校の校舎1階の廊下で、コンピューター をしたいとだだをこねる3年生の男子をしゃがんでなだめていた。同所を通り掛かった被上告人は、A の背中に覆いかぶさるようにして肩をもんだ。Aが離れるように言っても、被上告人は肩をもむのをや めなかったので、Aは、上半身をひねり、右手で被上告人を振りほどいた。そこに6年生の女子数人が 通り掛かったところ、被上告人は、同級生の男子1名と共に、じゃれつくように同人らを蹴り始めた。 Aは、これを制止し、このようなことをしてはいけないと注意した。その後、Aが職員室へ向かおうと したところ、被上告人は、後ろからAのでん部付近を2回蹴って逃げ出した。Aは、これに立腹して被 上告人を追い掛けて捕まえ、被上告人の胸元の洋服を右手でつかんで壁に押し当て、大声で「もう、す んなよ。」と叱った。 体罰と認定せず

【判決(抜粋)

Aの本件行為は、児童の身体に対する有形力の行使ではあるが、他人を蹴るという被上告人 の一連の悪ふざけについて、これからはそのような悪ふざけをしないように被上告人を指導す るために行われたものであり、悪ふざけの罰として被上告人に肉体的苦痛を与えるために行わ れたものではないことが明らかである。 Aは、自分自身も被上告人による悪ふざけの対象となったことに立腹して本件行為を行って おり、本件行為にやや穏当を欠くところがなかったとはいえないとしても、本件行為は、その 目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の 範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当するものではない というべきである。したがって、Aのした本件行為に違法性は認められない。 (原文のまま)

- 10 -

0

(18)

-3 体罰の概念規定

体罰の概念規定の必要性

教員等が行った懲戒行為が、体罰に相当するかどうかについては、裁判例や行政処分

の手続のとおり、当該児童・生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた

場所的及び時間的環境、懲戒の態様や強度、肉体的苦痛の度合いなどの諸条件を総合的

に考え、個々の事案ごとに判断しなければならないとされている。

これまで文部科学省は、過去の事例等から、体罰、認められる懲戒や正当行為の具体

例を示してきている。

(8ページ参照)

当然のことながら、児童・生徒を殴ったり蹴ったりするような暴力行為は認められる

ものではない。しかし、司法の判断ですら、ノックする程度の拳骨

げ ん こ つ

や注意喚起するため

に肩をたたくなどの行為が体罰なのかどうかがあらかじめ判然としていない状況である。

これまで、体罰禁止がうたわれながら、どのような行為が体罰であるのかということが

明確ではなく、そもそも体罰とは何かということが曖昧なまま、教員はもとより、児童・

生徒、保護者、関係者の間で体罰論議がなされてきている。

現在、人によって体罰のイメージが異なることや、保護者の間でも「子供が悪いこと

をしたのだからこの程度の拳骨

げ ん こ つ

は体罰ではない。

」との発想が根強くある。本委員会では、

体罰問題をより複雑にしているのは、体罰の概念が曖昧であるところに原因があると分

析した。

日々の教育活動は、教員と児童・生徒の直接的な触れ合いや接触行為があってこそ生

き生きとなるものであり、無用な制限は教育活動の目的を阻害する。今後、教育活動が

硬直化し、体罰問題により教員が萎縮したり児童・生徒が誤解したりしないよう、体罰

とは何かということについて考え方を整理しておく必要がある。

そこで、教員、児童・生徒、保護者等が共通理解の下、体罰を行わず生き生きとした

教育活動を展開していくために、そもそも体罰とは何かということをより明確にするこ

ととした。

体罰の定義

体罰問題が大きくクローズアップされる中、誰もが「体罰」という言葉を使用するが、

人によって、そのイメージするところや解釈が微妙に異なっている。

事物の概念は、要素に共通する性質と、それらの要素を列挙することによって規定さ

れる。体罰については、これまで具体的事例が数多く示されてきているが、現在のとこ

ろ確定した定義がなく曖昧であるとの指摘がなされている。

そこで本委員会では、学校教育法、刑法、判例や研究論文等を参考に、懲戒と体罰に

ついて次のとおり定義付けを行った。

- 11 -



(19)

-教員が、児童・生徒に対して、戒めるべき言動を再び繰り返させないとい

う、教育目的に基づく行為や制裁を行うことを

体罰の定義

懲戒

という。

体罰

という。

傷害行為

危険な暴力行為

暴力行為

に分

暴言

行き過ぎた指導

は、

懲戒には、事実行為としての注意、警告、叱責、説諭、訓戒や、法的効果

をもたらす訓告、停学、退学の処分がある。

懲戒のうち、教員が、児童・生徒の身体に、直接的又は間接的に、肉体的

苦痛を与える行為を

体罰には、たたく、殴る、蹴る等の有形力(目に見える物理的な力)の行

使によるものと、長時間正座や起立をさせるなどの有形力を行使しないもの

がある。いずれも法によって禁じられている。

この体罰は、その態様により、

類される。

また、

体罰概念に含まれないが、体罰と同様に、

教育上不適切な行為であり許されないものである。

体罰の定義では、肉体的苦痛がキーワードであり、必要条件である。

一方、精神的苦痛は、肉体的苦痛と同等か、それ以上に、児童・生徒の心身に大き

な影響を与える場合もある。

このため、今後は、児童・生徒に精神的苦痛を与える『暴言』を体罰と同様に問題

視していく必要がある。

また、部活動やスポーツ指導において、目的は誤ってはいないが、その指導内容・

方法等が対象となる児童・生徒の発育・発達や心身の現況に適合していない指導や能

力の限界を超えた危険な指導等を、

『行き過ぎた指導』とした。

次に、この定義を基に、体罰の関連行為を分類し、それぞれの特徴、内容、具体例、

想定される事例等を示すことにより、曖昧であるとされてきた体罰概念をより明確に

する。

- 12 -



(20)

-4 体罰の陰に隠れていた暴言や不適切な指導

暴言の例

〈口癖のようになっているもの〉

死ね 消えろ バカ アホ クズ うざい 使えねえ

〈人格等を否定するようなもの〉

デブ チビ ゴミ女 ババア 病気か お前らクソだ

〈部活動を私物化している〉

部活を辞めろ 一生使わない どうせ勝てない

不適切な指導の例

① 算数の授業中、机間指導や全体指導の際に、児童に注意を与えながら

出席簿や指示棒で頭部を軽くたたいた。

② 野球部の練習に遅れた生徒に対して、顧問教諭が指導している最中

に、当該生徒が笑ったので、

「ふざけるな」と言って胸部を押した。

③ バレーボール部の練習中、顧問教諭が何度も同じことを繰り返し注意

したのに反応することができない生徒に対し、腹部にボールを当てた。

④ 試合に負けたため、外部指導員が、部員18名を1列に並べ、空のペ

ットボトルで、全員の頭を軽くたたいた。

⑤ 学芸会の演技指導中、教師からの呼び掛けに答えない児童に対し、気

付かせるために、自らの靴を児童の近くに投げた。

⑥ 学級担任が、授業中に「机を蹴る」

「机をたたく」

「児童を廊下に出し、

同児童の胸倉の部分をつかむ」等の行為を繰り返した。

- 13 -



(21)

-●

暴言や不適切な指導はなぜ問題か

一般的に、身体に対し物理的な力を加えることをもって暴力というが、身体的な暴力

と同様に、暴言や不適切な指導によるものも精神的な暴力であり、あってはならない。

精神的な暴力は、人の記憶に一生残り心の傷となることがあること、対象となる児童・

生徒とともに周囲にいる者にも同様の精神的苦痛を与えること、教員のストレスのはけ

口であることが多いこと、精神的に恐怖感を与え人格を否定することで児童・生徒の言

動等をコントロールしようとしていること、他の指導方法を工夫しなくなり時にエスカ

レートすることなどの問題点がある。

本来、児童・生徒同士のいじめを防止し、迅速適切に対応することが期待されている

教員が、自ら児童・生徒をいじめるような暴言等を行うことは許されるものではない。

また、暴言等の精神的暴力は、教育指導上、児童・生徒に恐怖感や不信感を抱かせる

こととなり、負の学習効果しか期待できないため、体罰等の身体的暴力と同様に指導方

法として用いてはならない。

そして、不適切な指導は、他の適切な指導内容・方法をもって代替することができる

ものであり、指導法の研究・研修を怠らないよう、教員としての力量形成に努めなけれ

ばならない。

- 14 -



(22)

-5 体罰関連行為のガイドライン

行為の分類 名称 特徴 内容 傷害行為 (肉体的苦痛) 危険な暴力行為 (肉体的苦痛) 体罰 暴力行為 (肉体的苦痛) 懲戒のうち、教員が、児童・生徒の身体に、直接的・間 接的に、肉体的苦痛を与える行為 【直接的】強くたたく、殴る、蹴る、投げる等 【間接的】長時間にわたる正座・起立等 不適切な指導 肉体的負担 教員が、児童・生徒の身体に、肉体的負担を与える程度 の、軽微な有形力の行使 暴言等 精神的苦痛・負担 教員が、児童・生徒に、恐怖感、侮辱感、人権侵害等の 精神的苦痛を与える不適切な言動 行き過ぎた 指導 精神的・肉体的負担 運動部活動やスポーツ指導において、児童・生徒の現況 に適合していない過剰な指導 指導の範囲内 肉体的苦痛や負担を 伴わない 注意喚起や指導を浸透させるためにやむを得ず行われ た、児童・生徒の身体に肉体的負担を与えない程度の、 極軽微な有形力の行使 適切な指導 懲戒行為 教育指導としての 有形力の行使 学習指導や生活指導時における法令で認められた範囲の 懲戒行為 スポーツ指導において、動きのタイミングを図る、注意 喚起する、激励する、覚醒させるための有形力の行使 正当防衛 正当行為 防衛のためにやむを得ずした有形力の行使 他に被害を及ぼす暴力行為に対して、制止・危険を回避 するためにやむを得ずした有形力の行使 緊急避難 肉体的苦痛を伴う 有形力の行使 自己又は児童・生徒の生命、身体、自由又は財産に対す る現在の危難を避けるため、やむを得ずした行為

- 15 -



(23)

※ 本ガイドラインは、「体罰」関連行為の区分を示したものである。 ガイドライン 具体例 想定される事例 有形力の行使により、物理的な力の程度や肉体的苦痛 の有無にかかわらず、出血、骨折、歯牙破折、鼓膜損 傷等の傷害を負わせた場合 ●授業中ふざけていた生徒を数回注意したが従わず、 更に増長したため、生徒を押し倒し骨折させた。 ●メールで友人の中傷を繰り返したため、事の重大性 を分からせるため、頬を平手打ちし鼓膜損傷させた。 一歩間違えば重大な傷害を負わせる可能性のある、急 所・頭部・頚部け い ぶに対する、あるいは棒や固定物等を使 用して有形力を行使した場合や、柔道等の格闘技の技 を用いた場合、又は椅子を投げ当てるなどした場合 ●学級会で協力せず、他の児童の迷惑になる行動をし ている児童に向かって、椅子を投げ当てた。 ●柔道有段者の教員が、廊下で反抗的な態度の生徒を 背負い投げし床にたたきつけた。 頭・頬をたたく、突き飛ばす、足・臀部で ん ぶ・脇腹を蹴る、 髪を引っ張り引き倒す、長時間廊下に立たせる、長時 間ランニングさせるなどした場合 ●試合中にミスをしてチームが負けてしまったこと の戒めとして、生徒の頬を複数回たたいた。 ●体育授業中、何度注意しても真面目にやろうとしな い生徒がつばを吐いたため、後ろから足を蹴った。 手をはたく(しっぺ)、おでこを弾く(デコピン)、尻 を軽くたたく、小突く、拳骨げ ん こ つで押す、胸倉をつかんで 説教する、襟首をつかんで連れ出すなどの行為を行っ た場合 ●宿題を忘れた児童に対し、罰として鼻をつまみ、ま た忘れたら鼻をつまむと予告した。 ●チャイムが鳴っても教室に戻らず遊んでいた生徒 の襟首をつかみ、教室まで連れていった。 罵る、脅かす、威嚇する、人格(身体・能力・性格・ 風貌等)を否定する、馬鹿にする、集中的に批判する、 犯人扱いするなどの言動を行った場合 ●授業中、解答を間違えた児童に、「犬のほうがおり こうさん」と馬鹿にした。 ●事情を聴取している最中、答えない生徒に対し、棒 で机をたたいたりして威嚇した。 目的は誤ってはいないが、その指導内容・方法等が児 童・生徒の発育・発達や心身の現況に適合していない 指導、能力の限界を超えた危険な指導等 ●毎日、休みなく練習を続けさせ、生徒は心身共に疲 労し、勉強する時間もなくなった。 ●普段練習時間が少ないことから、合宿で経験したこ とのない長時間の練習メニューを課した。 腕をつかんで連れて行く、頭(顔・肩)を押さえる、 体をつかんで軽く揺する、短時間正座させて説諭す る、寝ている生徒の肩をたたき起こすなどの、社会通 念上妥当とみなされる行為を行った場合 ●友達に暴言を吐き泣かせてしまった児童を正座さ せ、両肩を抑えながら説諭した。 ●授業中に騒いで立ち歩く生徒の腕をつかみ、教室の 外に連れ出した。 注意、警告、叱責、説諭、訓戒 頑張りに対し肩(背中)をたたき褒める、緩慢なプレ ーを大声で注意する、危険行為を大声で注意する、接 触プレーを直接指導するなどの場合 ●授業中に物を投げた児童を注意し、残りの時間を教 室後ろに立たせた。 ●大縄跳びの練習中、上手く中に入れない生徒の背中 をたたきタイミングよく飛び込ませた。 殴りかかってきた生徒をかわすために押す、喧嘩け ん かして いる生徒の間に割って入り双方を抱え込む、棒を振り 回す生徒をさす股で押さえ込むなどの行為を行った 場合 ●化学の実験中に、多動傾向の生徒が塩酸のビンをも って暴れだしたため、体を抱え込んで押さえ付けた。 ●身だしなみを注意したところ、反抗してつかみかか ってきたので、その腕をねじあげた。 校舎から飛び降りようとする生徒を引き倒したなど の行為を行った場合 ●情緒不安定となり4階窓から飛び降りようとした 生徒を、教室側に引き倒した。 ●階段の手すりに腰掛けていた生徒を注意し、腕をつ かんだところ、生徒が振り払おうとして転倒した。

- 16 -

6

(24)

-【参考】刑法

第 204 条(傷害) 第 205 条(傷害致死) 第 208 条(暴行) 第 222 条(脅迫) 第 223 条(強要) 第 230 条(名誉棄損) 第 231 条(侮辱) 第 35 条(正当行為) 第 36 条(正当防衛) 第 37 条(緊急避難) 人の身体を傷害した者は、15 年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処 する。 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処す る。 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役 若しくは 30 万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅 迫した者は、2年以下の懲役又は 30 万円以下の罰金に処する。 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅 迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使 を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかか わらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は 50 万円以下の罰金に処する。 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処す る。 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを 得ずにした行為は、罰しない。 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除す ることができる。 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避ける ため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした 害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超え た行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

- 17 -



(25)

-第3章

(26)

1 体罰防止に向けたこれまでの取組

東京都教育委員会の取組

(1)服務事故防止月間の設定による都内全公立学校における啓発活動の実施

・ 平成18年から毎年7月と12月を「服務事故防止月間」と定め、都内全公立学校にお いて、全ての教員を対象とした校内研修による服務事故防止の啓発を行ってきた。 ・ 平成25年度は、体罰の実態調査結果を踏まえ、7月の服務事故防止月間を体罰防止月 間と位置付けて体罰防止に重点を置いた啓発を行った。

(2)服務通知の発信

・ 服務規律の徹底を図るため、「教職員の服務の厳正について」(服務通知)を定期的(年 2回程度)に発信してきた。 ・ 重大事故が発生した場合などには、随時、服務通知を発信している。

(3)啓発資料の提供

・ 各所属における啓発・指導に資するため、都立学校の管理職に対し、服務事故防止に係 る記事を掲載した啓発資料「ふくむ情報最前線」を年6回程度発行してきた。 ・ 時宜にかなった注意喚起を行うため、注意事項を記載した電子メール「あなたは大丈夫 ですか」を全教職員のTAIMS個人端末宛てに月2回程度送信している。 ・ 新規採用予定者に向けた啓発資料を配布し、新規採用時から服務事故防止の徹底を図っ ている。 ・ 学校における研修が効果的に行われるよう、服務事故の事例や傾向・対策、関連通知を まとめた資料「服務事故防止ハンドブック」、「服務事故の防止に向けて」、「服務事故事例 別指導資料」を年1回程度作成・配布している。

(4)服務事故の周知

・ 服務規律の確保の観点から、懲戒処分を発令する都度、処分内容を記載した「教職員の 服務事故について」を、都立学校及び区市町村教育委員会宛てに電子メールで送信してい る。

(5)職層研修、地区教育委員会が実施する研修への講師派遣

・ 東京都教職員研修センターが実施する若手教員育成研修、主任教諭任用前研修、10年 経験者研修、教育管理職候補者研修、校長候補者研修等の研修に講師として管理主事を派 遣している。 ・ 区市町村教育委員会や校長会等が実施する服務事故防止研修等に講師として管理主事を 派遣している。

- 19 -



(27)

-●

平成 25 年 1 月以降の東京都教育委員会の取組

1月 17 日(木) 「適切な部活動指導の推進について(通知)」 「部活動指導における暴力による体罰の実態把握について(依頼)」 全公立中学校及び全都立学校の校長・顧問教諭・生徒対象の調査開始 24 日(木) 調査範囲を部活動以外の教育活動も含め、全教職員・生徒対象に拡大 30 日(水) 「小学校における暴力による体罰の実態把握について(依頼)」 全公立小学校の全教職員及び児童対象の調査開始 2月 2日(土) 「健全育成緊急対策本部」(本部長:教育長)を招集 12 日(火) 都立高等学校の運動部活動での体罰事故が発覚し、都立学校臨時校長連絡会 において教育長訓示 18 日(月) 体罰調査委員会による調査チームの学校派遣を開始 3月 8日(金) 体罰根絶に向けた教員研修用パンフレット(生徒の意欲を高める部活動指導 の在り方を求めて)を全公立中学・都立学校の全教職員に配布 12 日(火) 13 日(水) 「体罰の根絶に向けた教員研修」の開催 講演「東京から Good Coach を発信しよう!」 東京都教育委員会 瀬古利彦 教育委員 18 日(月) 「部活動指導等の在り方検討委員会」における総合的な対策の検討開始 4月 11 日(木) 「都内公立学校における体罰の実態把握について(第一次報告)」体罰の疑い 事例 490 校 962 人 23 日(火) 公益通報弁護士窓口を開設し、コンプライアンス体制を強化 5月 23 日(木) 「都内公立学校における体罰の実態把握について」最終報告(体罰 146 校・ 182 人)・「体罰調査委員会報告書」公表 28 日(火) 暴力的指導を「しない、させない、許さない」の3ない運動の展開 部活動において体罰等の暴力的指導が行われた場合の対応について、基本的 な考え方を明示 6月 27 日(木) 7月を「体罰防止月間」に位置付け、事例研究による校内研修及びチェック シートによる自己点検を全校実施 28 日(金) 「ストップ体罰」服務事故防止啓発用ポスターを全校へ配布 7月5日(金) 体罰の根絶に向けた意識啓発用「卓上ミニのぼり旗」を全校へ配布 8月1日(木) 東京都教職員研修センターに、「体罰・暴言 しない、させない、許さない」 3ない運動の意識啓発を図る懸垂幕を設置 8月9日(金) 東京都教職員研修センター夏季集中講座「絶対 NO!体罰」 講演「体罰に頼らないスポーツ指導」 東京都教育委員会 山口 香 教育委員

- 20 -

0

(28)

-2 平成-24年度体罰実態把握調査の結果

(平成 25 年 5 月 23 日公表)

調査の内容・方法

(1)調査の趣旨 大阪市立の高等学校の体罰による生徒の自殺事件を受け、体罰の疑いがあるような事例に対しても見逃 さずに迅速に対応することを含め、体罰の根絶に向けた取組を行うため、都内公立学校における実態を的 確に把握する。 (2)調査対象者 区市町村立及び都立学校全2,184校の校長、教職員、児童・生徒全てを対象 (3)調査対象期間 平成24年度 (4)調査内容 教育活動における暴力による体罰、精神的・肉体的苦痛を感じる体罰の疑い例の有無 (5)調査方法 教職員・・・校長による聞き取り調査 児童・生徒・・・質問紙調査 (6)調査期間 平成 25 年1月 21 日(月)~3月 15 日(金)

調査結果

31 110 40 1 54 458 30 0 11 7 89 94 38 3 17 0 0 200 400 600 小学校 中学校 高等学校 特別支援学校 31 92 29 1 0 0 4 5 0 14 6 0 0 40 80 120 160 小学校 中学校 高等学校 特別支援学校 16 3 1 4 2 0 5 18 26 17 10 4 1 34 7 1 0 0 0 0 0 0 4 8 4 0 0 17 0 20 40 教室 体育舘 校庭 廊下・階段 生徒指導室 職員室 その他 ① 体罰の有無 ② 行為者別 ③ 場所別 体罰 ■ 不適切・行き過ぎた指導 ■ 指導の範囲内 ■ 非該当 教職員 ■ 外部指導員 ■ 卒業生・上級生 ■ 小学校 ■ 中学校 ■ 高等学校 ■ 特別支援学校 (人) (人) (人) ■ ■

- 21 -



(29)

-17 1 1 1 3 2 1 5 54 16 22 5 4 1 0 8 17 11 3 5 2 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 88 28 26 11 9 3 1 16 0 20 40 60 80 100 叩く 叩く殴る蹴る等 蹴る 物で叩く 殴る 殴る 投げる 転倒させる 物をぶつける その他 16 7 6 0 2 0 39 29 17 12 6 7 10 12 9 6 0 3 0 1 0 0 0 0 65 49 32 18 8 10 0 20 40 60 80 感情的にな ってしまった 言葉で繰り返し言っ ても伝えられなかった 体罰と思って いなかった 人間関係ができている ので許されると思った 体罰を行う以外 考えられなかった 高い成績、成果の期待 に応えようと思った 6 18 0 4 2 1 41 20 19 11 9 10 11 6 8 9 5 1 0 1 0 0 0 0 58 45 27 24 16 12 0 20 40 60 態度が悪い 指示に 従わない 意欲が求める 水準に達しない 問題行動を 止めるため 技能・知識が求める 水準に達しない その他 ④ 態様別 ⑤ 体罰に対する認識 ⑥ 体罰に至る原因 ■ 小学校 ■ 中学校 ■ 高等学校 ■ 特別支援学校 ■ ■ ■ 合計 ■ 小学校 ■ 中学校 ■ 高等学校 ■ 特別支援学校 合計 ■ 小学校 ■ 中学校 ■ 高等学校 ■ 特別支援学校 合計 (人) (人) (人)

分析

・ ①体罰の有無では、中学校の「体罰」や「不適切・行き過ぎた指導等」が多いのは、

思春期等成長の過程における生活指導上の課題が多いことによるものと考えられる。

・ ③場所別では、

「その他」が約30%を占めているが、部活動の対外試合や合宿等の

学校外での活動が多いことが影響している。

・ ⑤体罰に対する教員の認識では、約60%が一時的な感情によるもの、約40%が

体罰を指導の手段とする誤った認識に基づくものに大きく分類される。

- 22 -



(30)

-3 「体罰調査委員会」による課題の整理と今後の方向性

(平成 25 年 5 月 23 日公表)

「体罰調査委員会」は、このたびの都内公立学校の体罰実態把握の調査の過程で、特に

都立高校において、体罰が反復・継続的に行われていたものや被害が広範に及んでいるも

のなどの重大事案について、外部有識者の協力を得て、直接当該校に行き、関係者から聞

き取り調査を行った。その後、その発生原因や背景を解明し、解決すべき課題を明らかに

し、平成 25 年 5 月 23 日、調査結果と検討内容について報告書を公表した。

調査結果に見る課題の整理

1 独善的な考え方・指導方法

2 一時的な感情の高まり

3 絶対的な権力関係

4 勝つことに対するプレッシャー

5 体罰の再生産

6 体罰に対する認識不足

7 教員としての基本的な指導力不足

1 自己起因(技術向上面)と捉えた受

容意識

2 自己起因(生活指導面)と捉えた受

容意識

3 絶対的な権力関係

4 個人差のある体罰の定義付け

1 子供の成長や試合の勝利への期待

2 生活指導を親代わりとして捉える

意識

3 自己の体験からくる体罰許容意識

4 個人差のある体罰の定義付け

1 課題のある指導に対する意見し難い

状況(遠慮意識)

2 管理職・組織内の危機意識(課題意

識の欠如)

3 外部指導員に対する管理体制(学校

と外部指導員との関係性)

体罰を行った顧問や外部指導員の認識・考え方 生徒の認識・考え方 保護者の認識・考え方 校内体制

課題解決への提言

指導者の意識改革 生徒や保護者への理解啓発の推進 組織的な指導体制の確立とマネジ メント能力の育成 コンプライアンス体制の整備 外部指導員制度の見直し ○ 指導に関する独善的な考え方の払拭 ○ 怒りや興奮をコントロールする指導技術の習得 ○ 処分量定の見直し ○ 体罰概念や心身への悪影響について理解させる取組 ○ 体罰等のボーダーラインの考え方や具体例の提示 ○ 体罰や暴言を許さない校内の雰囲気づくり ○ 複数指導体制等、指導体制の見直し ○ 部活動に関する校内規程や組織体制の見直し ○ 若手からマネジメント能力の育成 ○ 顧問教諭と保護者の定期的な情報交換 ○ 校内コンプライアンス体制の整備 ○ 公益通報弁護士窓口の周知及び効果的活用 ○ 学校と外部指導員の関係性の整備 ○ 外部指導員の指導範囲の明確化 ○ 外部指導員の委嘱行為の適正化

- 23 -



(31)

-第4章

(32)

1 体罰発現のメカニズム

一時的な「怒り」

(感情・情動)発生に伴う衝動的・攻撃的行動モデル

体罰を指導の手段と位置付けている場合

大阪市立桜宮高校のケース

① 顧問教諭の暴力傾向

顧問教諭は、生徒に対する暴力を指導の一環であると位置付け、それが指導方法と

して効果的であるとの考えのもと、バスケットボール部員に対し、恒常的に、平手打

ち、足蹴り、物を投げつけるなどの暴力を、時には相当程度に強度かつ執拗

し つ よ う

な態様に

おいて行っていた。

② 暴力の契機

顧問教諭の生徒に対する暴力の契機については、特段に見るべきところはない。そ

もそも、暴力がいかなる理由があろうとも正当化されることはない。

(大阪市外部監察チーム報告書から)

きっかけ

体罰

衝動的・攻撃的行動

教員

【要因】 怒りや不満の源泉 信念 行動制御能力の不足

反抗的・挑発的行動

〈体罰発生の原因と結果〉

児童 生徒 【誘因】 引き金となる言動 問題行動 注意無視・反抗的態度 25



参照

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