04
Key words: Whole-spine radiation, Gonad shielding, Idiopathic scoliosis【Summary】
Whole-spine radiography is employed periodically for patients with idiopathic scoliosis. Young female patients who are susceptible to radiation account for most cases of idiopathic scoliosis. In our clinic, gonadal shielding is therefore required for all female patients aged younger than 50. However, because of the poor reproducibility of protector placement and disagreement between the shapes of the protector and the pelvic cavity, adequate gonadal shielding is not achieved. In this study, we report on the development and evaluation of an examination gown for whole-spine radiography that enables adequate gonadal shielding in female patients with idiopathic scoliosis. The results suggested that installation of protectors of the same size regardless of the body type or height 8.5cm below Jacoby s line allowed highly reproducible and adequate gonadal shielding.
【要 旨】 全脊椎撮影は主に特発性側彎症患者に対して行われる撮影法である.特発性側彎症患者は,放射線感受性の高い若年齢女性患者が ほとんどを占めており,当院では50歳未満の女性全てに生殖腺防護を行っている.しかし,プロテクター装着の再現性が悪く,プ ロテクターの形状も骨盤腔と合致していないことから,正確に生殖性防護が行えていなかった.今回われわれは,特発性側彎症にお ける女性患者に対し,正確な生殖腺防護を行うことができる全脊椎撮影専用検査着を作成し,検討した.その結果,体格や身長に関 係なく,ヤコビー線から8.5cm下に同一サイズのプロテクターを装着することによって,再現性良く,正確に生殖腺防護を行うこ とが可能となった.
学 術
Arts and Sciences原 著
特発性側彎症患者全脊椎撮影における
女性患者の生殖腺防護着作成の検討
Evaluation of whole-spine radiography with respect to gonadal shielding in female patients with idiopathic scoliosis
林映里1()59858) 加藤京一2()25483) 藤澤宏信1()48473) 渋谷綾子1()52805)
高橋俊行3()37576) 中澤靖夫2()19263)
1)昭和大学藤が丘病院 放射線室 診療放射線技師
2)昭和大学大学院 保健医療研究科 教授
3)昭和大学大学院 保健医療研究科 講師
Eri Hayashi1()59858), Kyoichi Kato2()25483), Hironobu Fujisawa1()48473),
Ayako Shibuya1()52805), Toshiyuki Takahashi3()37576), Yasuo Nakazawa2()19263)
1) Showa University Fujigaoka Hospital Depart-ment of radiology
2) Showa University Graduate School Health Sciences
3) Showa University Graduate School Health Sciences
諸 言
全脊椎撮影は,主に側彎症患者の診断や経過観察を 目的として,頸椎・胸椎・腰椎・仙椎を1
枚の画像上 に描出する撮影法で1),2)側彎症進行度合いを確認す るために3
∼12
カ月ごとに定期的に行われる.しか し,撮影目的が脊椎側彎症のカーブの大きさを表すCobb
角の測定,腸骨稜骨端核による骨年齢評価,椎 体のねじれ,仙腸関節炎の診断,骨盤の傾きの計測に あるため1),3)∼7),撮影部位に生殖腺を含み,若年者の 生殖腺被ばくが問題となっていた.特に,特発性側彎 症患者は全側彎症の70
∼80%
を占めており,症例の85%
が放射線感受性の高い若年齢女性の患者である ため3),4),8),撮影時の生殖腺防護が非常に重要9)∼11) であった.当院では,50
歳未満の女性を対象に恥骨 結合やヤコビー線を体表指標として触知し,骨盤腔の 位置にプロテクターを装着することで生殖腺防護を行 っている.しかし,全脊椎撮影は,生殖腺を防護しな がら仙腸関節下縁まで描出する必要があるにもかかわ らず,再現性良くプロテクターを装着することができ ず,生殖腺防護を一律に行うことができなかった.ま た思春期の女性患者が多く,男性の診療放射線技師が, プロテクターの位置決めのために患者の下腹部を触れ ることに抵抗があった.プロテクターについても,骨 盤腔の形状と合致しなかったり,装着のために用いて いるテープが撮影時に外れたりして,防護の意味を成 さないことを経験した.今回われわれは,全脊椎撮影 において,撮影者が女性患者の体に触れることなく, 再現性良く正確に生殖腺防護を行うことのできる検査 着を作成することができたので報告する.1
.方 法
1-1
.全脊椎撮影プロテクター形状の検討と作成 座高や体形の違いが防護すべき骨盤腔の形状に及ぼに及ぼす影響を骨盤と骨盤腔の長径を計測(
Fig.2
) することで,それぞれの関連性について検討し,特 発性側彎症患者専用のプロテクターを作成した.計 測には,平成25
年4
月から平成26
年3
月までに当院 で撮影した全脊椎撮影において,無作為に抽出した50
歳未満女性47
人の全脊椎正面撮影画像を用いた.1-2
.プロテクター最適装着位置の決定方法 プロテクターの装着位置を決定する基準線を,立位 でも触知しやすいヤコビー線とし,症例ごとに座高と ヤコビー線−骨盤腔上縁間距離を計測(Fig.3
)し, その関連性を検討することで,ヤコビー線をプロテクFig.2 Major axis of the pelvis – Major axis of the pelvic cavity measure method
E:Major axis of the pelvis F:Major axis of the pelvic cavity
Fig.3 Distance between Jacoby s line and superior margin of the pelvic cavity measure method G:Jacoby s line
C:Superior margin of the pelvic cavity
Fig.1 Sitting height-Minor axis of the pelvic cavity measure method
(a)Sitting height A:Vertex
B:Inferior margin of the ischium (b)Minor axis of the pelvic cavity
C:Superior margin of the pelvic cavity D:Superior margin of the pubic symphysis
原 著 特発性側彎症患者全脊椎撮影における女性患者の生殖腺防護着作成の検討 学 術Arts and Sciences
04
ター装着位置の基準として用いることができるかを検 討した.なお,計測には方法1-1
で計測を行った47
人の全脊椎正面撮影画像を用いた.1-3
.全脊椎撮影専用検査着の作成 方法1-1
で作成したプロテクターを,方法1-2
で検 討した位置に装着できる専用検査着を試作し,この検 査着を用いて行う全脊椎撮影法について検討した.1-4
.従来法と新撮影法のプロテクター位置変位の検討 従来法と新撮影法で撮影した画像で,骨盤腔に対す る最適プロテクター装着位置がどのように変位してい るかを計測し,比較検討した.変位の基準である原点 は,体軸である正中線と骨盤腔上縁の接線との交点と し,骨盤腔上縁側をY
軸,正中線側をX
軸とした.Y
軸は骨盤腔上縁より上方への変位をプラス,下方への 変位をマイナスとし,X
軸は正中から左外側への変位 をプラス,右外側への変位をマイナスとした.2
.結 果
2-1
.全脊椎撮影プロテクター形状の検討と作成 座高と骨盤腔短径の関係をFig.4
に,体形(骨盤長 径)と骨盤腔長径の関係をFig.5
に表した.またこの 関係を図で表した(Fig.6
).今回計測した患者の座高 は最長94cm
,最短70cm
,標準偏差は5.3
と値に変 動があるのに対して,骨盤腔の短径の標準偏差は1.3
となり,座高の高低にかかわらず,値に変動は認めら れなかった(Fig.4
).また特発性側彎症患者の骨盤長 径が標準偏差2.0
,骨盤腔長径が標準偏差1.3
であり, 骨盤長径値に対する骨盤腔長径値も値に変動は認めら れなかった(Fig.5
).この結果より,作成するプロテ クターのサイズを最大長径16.0cm
,最大短径12cm
で一定とし,当院で用いている1mm
厚の被ばく防護 用鉛シートを加工し,特発性側彎症患者専用の全脊椎 撮影用プロテクター(約150g
)を作成した(Fig.7
).2-2
.プロテクター最適装着位置の検討 ヤコビー線−骨盤腔上縁間距離は平均7.8cm
,標 準偏差は0.7
であった(Fig.8
).またヤコビー線−骨 盤腔上縁間距離で最も多い結果は,7cm
と8.5cm
でFig.4 Sitting height – minor axis of the pelvis cavity
Fig.6 Correlation diagram
Sitting height Minor axis of the pelvic cavity
Ave:9.4 SD:1.3 n=47 Ave:86.3 SD:5.3 n=47 Major axis
of the pelvis Major axis of the pelvic cavity
Ave:13.0 SD:1.3 n=47 Ave:26.7 SD:2.0 n=47
fig6. Correlation diagram
Fig.7 Protector for whole-spine radiography Fig.5 Major axis of the pelvis – major axis of the
あった(
Fig.9
).2-3
.全脊椎撮影専用検査着の作成 鉛板が検査着の上端位置から8.5cm
下にプロテクタ ーを装着できる,ポケット付きの専用検査着(Fig.10
) を作成した.2-4
.従来法と新撮影法のプロテクター位置変位の検討 従来法と新撮影法のプロテクターの上下の変位は, 従来法では最大11cm
あり,平均値は3.6cm
,標準 偏差は2.8
であった.それに対して,新撮影法では最 大2.5cm
,平均値は1.1cm
,標準偏差は1.1
であった (Fig.11
).従来法と新撮影法間にはMann-whitney
のU
検定で有意差(P<0.05
)が認められた.左右の 変位は,従来法では平均値は1.0cm
,標準偏差は0.8
であったが,新撮影法では平均値0.5cm
,標準偏差 は0.6
となり(Fig.11
),従来法と新撮影法の間に差 は認められなかった.なお,変位の基準は方法1-4
に 記述した.3
.考 察
3-1
.全脊椎撮影プロテクター形状の検討と作成 座高の標準偏差の値に変動があるのに対して,骨盤 腔短径の標準偏差は小さく,値の変動が少ない.この ことから,骨盤腔の短径と座高の間に相関関係はない と考えられた.また骨盤長径,骨盤腔長径ともに標準 偏差の値が小さかった理由として,特発性側彎症の女 性患者の体形が類似して細身であるため,骨盤および 骨盤腔の長径に差がなかったと考えられた.これらの ことから,特発性側彎症の女性患者の生殖腺防護プロ テクターは,同一サイズに統一できると考えられた. Fig.9 Distance between Jacoby s line and superiormargin of the pelvic cavity(number of cases according to the distance)
Fig.11 Comparison between conventional and new radiographic methods with respect to the vertical gap and the horizontal gap distance of protectors
原 著 特発性側彎症患者全脊椎撮影における女性患者の生殖腺防護着作成の検討 学 術Arts and Sciences
04
3-2
.プロテクター最適装着位置の検討 ヤコビー線−骨盤腔上縁間距離の標準偏差の値に変 動が少ないことから,全脊椎撮影専用検査着に装着す るプロテクターの高さは患者の座高を考慮せず,ヤコ ビー線を基準に同一箇所に装着することが有用である と考えられた.3-3
.全脊椎撮影専用検査着の作成 ヤコビー線−骨盤腔上縁距離の平均が7.8cm
であ るにもかかわらず,プロテクターを装着する基準を8.5cm
にしたのは,症例の半数が8cm
以上で,平均 値をプロテクター装着位置とすると仙骨が欠像してし まうことから,標準偏差0.7
を加算した8.5cm
にする 必要があると考えられた.3-4
.従来法と新撮影法のプロテクター位置変位の検討 プロテクター最適装着位置の上下変位が,従来法よ りも新撮影法の方が,平均値で3.6cm
から1.1cm
に, 標準偏差が2.8
から1.1
に減少したことから,今回作 成した全脊椎専用検査着は,再現性良く安定した位置 にプロテクターを装着することができると考えられ た.プロテクター最適装着位置の左右変位で,従来法 と新撮影法の標準偏差の値に変動が見られなかった理 由として,特発性側彎症の女性患者の体形が類似して 細身であるため,体の正中を視覚的にも明瞭に指摘す ることができたためであると考えられた.4
.結 語
今回われわれは,全脊椎撮影を行う特発性側彎症女 性患者に対し,プロテクター形状とプロテクターの最 適装着位置を特定することで,体表指標を触知するこ となく,再現性良く正確に生殖腺防護を行いながら撮 影することができる全脊椎撮影専用検査着を作成する ことができた. 参考文献 1)ハーウィグ・イムホフ,他:わかる!脊椎画像診断の要点第 1版.37-40,株式会社メディカル・サイエンス・インターナ ショナル,2009年. 2)遠藤啓吾,他:図解診療放射線技術実践ガイド第3版. 149,文光堂,2014年. 3)国分正一,他:標準整形外科学第10版.466-468,株式 会社医学書院,2008年.4)小宮節郎,他:Rothman-Simeone The Spine 脊椎・脊髄 外科原著第5版.1巻,515-524,株式会社金芳堂,2009 年. 5)京極伸介,他:骨・関節X線撮影マニュアル第1版. 122-123,株式会社PILAR PRESS,2013年. 6)金澤一郎,他:今日の診断指針第6版.1501-1504,株式 会社医学書院,2010年. 7)日本放射線技術学会,他:X線撮影技術学改訂2版.218, オーム社,2009年. 8)スティーブン・G・デイビス,他:所見から考える画像鑑別 診断ガイド第1版.43,メディカル・サイエンス・インターナ ショナル,2014年. 9)草間朋子,他:放射線防護マニュアル第3版.99,日本医 事新報社,2013年. 10)田内 広,他:本当のところ教えて!放射線のリスク第1版. 37-40,株式会社医療科学者,2015年. 11)鈴木 元:正しい被曝医療Q&A50 第1版.71-73,株式会 社診断と治療社,2012年. 図の説明 Fig.1 座高−骨盤腔短径計測方法 Fig.2 骨盤長径−骨盤腔長径計測方法 Fig.3 ヤコビー線−骨盤腔上縁間距離計測方法 Fig.4 座高−骨盤腔短径 Fig.5 骨盤長径−骨盤腔長径 Fig.6 相関図 Fig.7 全脊椎撮影専用プロテクター Fig.8 ヤコビー線−骨盤腔上縁間距離 Fig.9 ヤコビー線−骨盤腔上縁間距離(距離別症例数) Fig.10 全脊椎撮影専用検査着 Fig.11 従来法・新撮影法 プロテクター上下左右ズレの距 離比較