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食衛誌 60(5): (2019)

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報 文

有毒クサウラベニタケ近縁種のリアルタイムPCR法による同定

近 藤 一 成

1,

*  坂田こずえ

1

  加 藤 怜 子

1

  菅 野 陽 平

2

  武 内 伸 治

2

  佐 藤 正 幸

2

Qualitative Real-Time PCR Method for Poisonous Entoloma rhodopolium-Related Species in Japan:

Real-Time PCR Method for Entoloma Mushrooms

Kazunari Kondo1,*, Kozue Sakata1, Reiko Kato1, Yohei Sugano2, Shinji Takeuchi2 and Masayuki Sato2

1 National Institute of Health Sciences: 3–25–26 Tonomachi, Kawasaki-ku, Kawasaki, 210–9501, Japan, 2Hokkaido Institute of Public Health: Nishi 12-chome, Kita 19-jo, Kita-ku, Sapporo, 060–0819, Japan

* Corresponding author

Qualitative real-time PCR method for three poisonous Entoloma rhodopolium-related species in Japan was established using specific primers and FAM, VIC, Texas Red, Cy5-labeled probes. The use of multicolor probes can extend the method to simultaneous detection of different targets. Stan-dard plasmids were constructed as reference materials. Designed primers and probes in the method detect only a target species, and the detection limit was 12.5 copies or below. This indicates it is highly specific and sensitive enough to detect the poisonous mushrooms in food residues. Next, we applied the method to four food residue samples obtained from food poisoning cases. The real-time PCR method did identify all of four samples as E. subrhodopolium and E. pseudorhodopolium, whereas PCR-RFLP did not. The method established here revealed Entoloma rhodopolium-related species in Hokkaido were different species such as E. eminens and unknown species.

(Received May 24 2019; Accepted July 25 2019)

Key words: き の こ mushrooms; ク サ ウ ラ ベ ニ タ ケ Entoloma rhodopolium; リ ア ル タ イ ム  PCR Real-time PCR

付録資料: 付録資料(Fig. S1, Fig. S2)はJ-STAGEの日本食品衛生学雑誌(http://dx.doi.org/10.3358/ shokueishi.60.144)で閲覧できる. 緒 言 日本では,きのこによる食中毒事例が毎年数多く報告さ れる.2018年度は,植物性自然毒による食中毒事例が患 者数99人,死者0人で,きのこによるものは患者数43人, 死者1人であった.食中毒の原因となったきのこはツキヨ タケとクサウラベニタケ近縁種のほか,ドクカラカサタケ やテングタケであった.これらのきのこで食中毒が多く発 生する原因は,形態的によく似た食用のきのこが存在する ためである.そこで,摂食前に判別可能な簡易検査法や中 毒発生時の確定検査法の整備が求められてきた.近年は, 遺伝子の特定領域を標的にした種の判別同定法が多く検討 されている.著者らは,ツキヨタケやクサウラベニタケ近 縁種を対象に簡便な遺伝子検査法の開発を行ってきた.有 毒きのこであるクサウラベニタケ近縁種は,食用であるウ ラベニホテイシメジとともにハラタケ目イッポンシメジ科 イッポンシメジ属(Entoloma)に属し,形態学的には種内に おいても変化があり,ほかのEntoloma属きのこと多様な グループを形成している1–12).このことが,形態学的な判 別を困難にしており,結果として誤食による食中毒が発生 する大きな要因となっていることから,遺伝子検査法が重 要な役割を果たすことが期待される.最近,複数のきのこ

internal transcribed spacer (ITS) 領域を標的にしたスク

リーニング法が報告され13),さらに食中毒が多いツキヨタケ を対象にした簡易検査法であるPCR- Restriction Fragment Length Polymorphism (RFLP) 法が報告された14).しかし, クサウラベニタケ近縁種は複雑なグループを形成している ため,これまで分類も十分解明されていなかった.著者ら は,クサウラベニタケ近縁種についてリボソームRNAを コードする遺伝子のITS領域およびsecond largest subunit

of RNA polymerase 2 (RPB2) 領域を用いて詳細な分類再

検討を行い,以下のことを明らかにしてきた15).すなわ

ち,日本国内には欧州起源のクサウラベニタケ(Entoloma

rhodopolium)やイッポンシメジ(E. sinuatum) は存在し ないこと,これまでクサウラベニタケと考えられてきた毒 きのこは以下の新規3種E. lacus, E. subrhodopolium, E.

pseudorhodopoliumであり,その結果を用いた簡易検査

* 連絡先 [email protected]

国立医薬品食品衛生研究所: 〒210–9501 川崎市川崎区殿 町3–25–26

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法PCR-RFLP法を考案して報告した.一方で,調理済食 品残さなどDNAが分解し,他の食物の混入も想定される 試料を検査する場合は,食毒判別は可能であるが種の同定 まではできなかった. 本稿では,クサウラベニタケ近縁種の食毒判別と種の同 定が可能な定性リアルタイムPCR法の検討を行った.そ の結果,食品残さにも適用可能な確定検査法として,ウラ ベニホテイシメジと有毒クサウラベニタケ近縁3種を感度 よく特異的に検出するリアルタイムPCR法を開発できた. 実 験 方 法 1. 試 料 PCR-RFLP法およびリアルタイムPCR法の検討には本 州各地より採取したクサウラベニタケ近縁種から抽出した DNAおよび食中毒事例で回収した残さから抽出したDNA を用いた15).また,北海道におけるクサウラベニタケ近縁 種解析のために,形態的にクサウラベニタケと考えられた きのこを札幌市郊外で2016年および2017年に採取したも のを用いた.使用した試薬類は以下の実験方法において記 した.また,交差反応性の確認に市販の食用きのことし て,シイタケ,ブナシメジ,マイタケ,エノキタケ,マッ シュルーム,ナメコを用いた. 2. クローニング 北海道にて採取したクサウラベニタケ近縁種から抽出し たDNAを鋳型に,ITS領域を増幅して得られたPCR産物

に対して,3′末端にdA付加処理後,TOPO TA Cloning Kit

を用いてpCR4-TOPO vectorに挿入して大腸菌TOP10株 に導入した.得られた各コロニー群から,2コロニーより 回収したプラスミドを精製してシークエンス解析を行い ITS領域の塩基配列を決定した. 3. PCR-RFLP条件 1.5 mL容チューブに蒸留水で洗浄した検体を湿重量100 mg (または乾燥重量20 mg)を測りとり,Nippiバイオマッ シャー II(富士フィルム和光純薬(株)製)ですりつぶした 後,PrepMan Ultra Sample Preparation Reagent(Ther-mo Fisher Scientific社製)400 µLを添加してボルテック スミキサーにより懸濁した.懸濁液は100℃, 10分間加熱し た後に13,000×gで2分間遠心分離した.得られた上清は, 新しい1.5 mL容チューブに移してDNA抽出液とした.

PCR反応液は,2×Ampdirect ®Plus (Shimadzu社製) 25

µL, BIOTAQ™ HS DNA Polymerase (5 U/µL) (Shimadzu

社製)0.25 µL, 10 µM primers ITS1FおよびITS4*1をそれ

ぞれ2.5 µL, DNA抽出液1.0 µL,蒸留水18.75 µLを加えて 50 µLとしたものを用いた.反応条件は95℃10 分間の後, 95℃30秒→55℃1分間→72℃1分間を1 サイクルとして 40 サイクル行い,最後に72℃で7分間反応させた.PCR 反応生成物はWizard SV Gel and PCR Clean-Up system

(Promega社製)を用いて精製した後,制限酵素FastDigest®

Hae III, Hinc II, Dde I, Msl I(Thermo Fisher Scientific

社製)で処理した.酵素反応液組成は,Buffer 5.0 µL,制 限酵素 (DNA 1 µgに対して10 units使用)1.0 µL,生成 PCR 反応物2.0 µL,蒸留水42.0 µLで,反応条件は37℃ でMsl Iは30分,Dde Iは5分,Hae III/Hinc IIは5分間 処理した後,Agarose 21(3% in TAE buffer,富士フィ ルム和光純薬(株)製)を用いて電気泳動し,得られたバン ドパターンを解析した.

4. リアルタイムPCR条件

DNA溶液は,DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen社製) を 使用して抽出精製し,10 ng/µLに調製した.加熱処理・ 消化された検体の場合は,Kitからの溶出液をそのまま用 いた.PCR反応液は,FastStart Universal Probe Master ×1(ロシュ・ダイアグノスティックス社製),Forward primer1 (F1)とForward primer2 (F2)各0.5 µM, 共 通 Reverse primer (R)または個別Reverse primer(R1, R2, R3)1.0 µM,および各probeを 200 nM(終濃度)にDNA 抽出液を2.0 µL添加して25 µLとした.リアルタイムPCR 装置にはLightCycler® 96(ロシュ・ダイアグノスティッ クス社製)を用い,温度条件は95℃10分の後,95℃15秒, 55℃1分を1 cycleとして45 cycleで行った.なお,primer およびprobeの配列は以下のとおりである(Fig. S1). Forward primer: F1: 5′-CTTCAAGTGTTCGATTTCAACCG-3′ F2: 5′-TTCCAAGTGTTCGATTCAACCG-3′ Reverse primer: R1: 5′-TTCCCTAAGGAAACACCTCGCT-3′ R2: 5′-TCCAAAGAGCACCTCGCTTC-3′ R3: 5′-ACTGTTCCTAAGAAAAGTGCCTTCG-3′ R: 5′-YTCGCTTCGTCAACCTGAA-3′ Probe: E. lacus: 5′-VIC-CACCAGCCTAGGCACAGACATTAA

CTTGTT-TAMRA-3′, E. subrhodopolium: 5

-FAM-TTCAACACCATCAGACGAGCTAACTCATC-BHQ1a-3′,

E. pseudorhodopolium: 5′-Texas Red-TTGAAGCACCAG

CTTAGGCACAGACATTAATTTG-BHQ2a-3′, E. sarcopum: 5′ -Cy5-ACCAGCTTAGGCACAGATGTGAACTCATT-BHQ3a-3′ 5. プラスミド構築 PCR-RFLP法およびリアルタイムPCR法検査用に,ク サウラベニタケ3種及びウラベニホテイシメジ1種のそれ ぞれのITS全領域を含む標準プラスミドを作成した. pST108: コガタクサウラベニタケ,E. lacus pST124: クサウラベニタケモドキ,E. subrhodopolium pST10: ニセクサウラベニタケ,E. pseudorhodopolium pST136: ウラベニホテイシメジ,E. sarcopum 6. リアルタイムPCRを用いた検討 検出感度および特異性の検討は,標準プラスミドを2× 100∼2×106コピー/ウェルに調整してリアルタイムPCR を行い,得られた増幅曲線から増幅効率および検出限界の *1 PCR protocols, https://doi.org/10.1016/B978-0-12-372180-8. 50042-1.

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目安を求めた.求めた検出限界の目安から検出限界付近の 5濃度(6.25, 12.5, 25, 50, 100コピー/ウェル)を設定して, 8ウェル並行,8ウェル並行,4ウェル並行と3回実験を 行って合計20ウェル測定により検出限界を求めた.また, 標準プラスミドとクサウラベニタケ3種,ウラベニホテイ シメジおよび市販きのこ6種の抽出DNAを用いてprimer 対と4つのprobeの特異性を検討した.判定は,バックグ ラウンドの3倍以上のシグナル強度でCq値38未満で検出 されたものを陽性とした.primer対には混合Forward primerF1/F2と個別Reverse primer, R1, R2, R3またはR (E. lacus, E. subrhodopolium, E. pseudorhodopolium,

E. sarcopum用)を,プローブにはそれぞれの種特異的プ ローブを用いた. 7. 食中毒事例から回収した試料の分析 2016年に発生したクサウラベニタケ近縁種によると考 えられる食中毒事例から回収した4検体を用いた.そのう ち,2検体は山梨県衛生薬務課,1検体は広島県北部保健 所生活衛生課,1検体は岩手県中部保健所を通じて供与頂 いた.各検体1∼4からそれぞれ187, 270, 226, 187 mgを 採取して,DNeasy Plant Mini kit(Qiagen社製)で最初 のみプロトコールの2倍の緩衝液でDNA抽出した. 結果および考察 1. 日本における有毒クサウラベニタケ近縁種の分類 クサウラベニタケ(E. rhodopolium)は,イッポンシメ ジ(E. sinuatum)とともに日本国内において長らく有毒き のこと考えられてきた.最近著者らは,国内各地からクサ ウラベニタケ,イッポンシメジ,ウラベニホテイシメジと して形態的に同定されたきのこを採取し,ITS領域および RPB2領域を比較解析した結果,日本にはクサウラベニタ ケやイッポンシメジと同種のものは存在しないこと,クサ ウラベニタケと考えられてきたきのこは,新種のE. lacus (コガタクサウラベニタケ),E. subrhodopolium(クサウ ラベニタケモドキ),E. pseudorhodopolium(ニセクサウ ラベニタケ)のいずれかであり,かつ,食中毒の原因とさ れるきのこは後者の2つであることを示した15)(Fig. 1) ウラベニホテイシメジは,分類に変化はなかった.食中毒 の原因と考えられるクサウラベニタケ近縁種の分類が明確 になり,それぞれに対する特異的な検出法の開発が可能と なったことから,本研究では確定検査法としてのリアルタ イムPCR法の検討を行った.一方で,北海道内における クサウラベニタケやイッポンシメジと考えられたきのこは 上記3種とも異なる結果となっていた.最近,武内らは札 幌市周辺で採取したきのこ5試料の解析を行い,その配列 をBLAST検索したところ,99%相同性があることから一 部はE. eminensに似ているものの,その他は種が特定で きないものであったと報告した16).しかし,比較配列が 328∼371 bpと短く正確な同定までには至らなかった.そ こで,それら試料を含めて札幌市周辺で採取したきのこ 7種(KUB-301から307)についてクローニングして再解 析を行った.その結果,Table 1に示すようにKUB-301か ら303はE. eminensと同定され,KUB-306は東北地方で見 られた既報のKUB-215)と同一のものであるが,KUB-304 およびKUB-305と同様に種が特定できないもの(Entoloma. sp.)と判明した.北海道ではクサウラベニタケ近縁種が本州

のそれとは異なると考えられた(Fig. S2).なお,E. eminens

および Entoloma sp.と毒性との関係は不明であった. 2. クサウラベニタケ近縁種を検出する定性リアルタイ ムPCR法 クサウラベニタケ近縁3種(コガタクサウラベニタケ, クサウラベニタケモドキ,ニセクサウラベニタケ)のアラ イメント結果15)から,食用のウラベニホテイシメジ,クサ ウラベニタケ近縁種3種に特異的な配列を選定した(Fig. S1).

Fig. 1 Phylogenetic tree of Entoloma

rhodopolium-relat-ed species

Table 1 Entoloma rhodopolium-related species in Hokkaido

Sample name Location Year Morphologically Identified as KUB-301 Makomanai, Sapporo 2016 Entoloma rhodopolium Entoloma eminens KUB-302 Makomanai, Sapporo 2016 Entoloma rhodopolium Entoloma eminens KUB-303 Makomanai, Sapporo 2016 Entoloma rhodopolium Entoloma eminens KUB-304 Makomanai, Sapporo 2016 Entoloma rhodopolium Entoloma sp. KUB-305 Makomanai, Sapporo 2016 Entoloma rhodopolium Entoloma sp.

KUB-306 Toyohira, Sapporo 2016 Entoloma rhodopolium Entoloma sp. (identical to KUB-2/207) KUB-307 Maruyama park, Sapporo 2017 Entoloma rhodopolium Entoloma sp.

*1 Entoloma sp.: there is no identical species.

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Forward primerには,ウラベニホテイシメジに特異的な F1 primerおよびクサウラベニタケ近縁3種に共通のF2 primerを混合して,Reverse primerにはR, R1, R2, R3プラ イマーを対象に応じてそれぞれ用いた.ProbeにはMultiplex PCRへの応用が可能なようにそれぞれ異なる標識をしたも の,すなわち食用ウラベニホテイシメジにはCy5-BHQ3a, コガタクサウラベニタケにはVIC-TAMRA,クサウラベ ニタケモドキにはFAM-BHQ1a,ニセクサウラベニタケ にはTexas Red-BHQ2a標識したものを用いた.構築した 4種の標準プラスミドは,ウラベニホテイシメジおよびク サウラベニタケ近縁3種それぞれのITS全領域配列を有し ており,それをウェルあたり各2,000コピー含む標準プラ スミド溶液を用いて特異性を検討したところ(Fig. 2A),ク サウラベニタケモドキ(E. subrhodopolium)検出系では, 目的のpST124のみに反応してそれ以外のニセクサウラベ ニタケ(E. pseudorhodopolium),コガタクサウラベニタ ケ(E. lacus)およびウラベニホテイシメジ(E. sarcopum) の標準プラスミドには反応しなかった.同様に,ニセクサ ウラベニタケ(E. pseudorhodopolium)やコガタクサウラ ベニタケ(E. lacus)検出系もそれぞれ目的のニセクサウラ ベニタケやコガタクサウラベニタケのみに反応したことか ら,いずれの検出系も高い特異性を有していると考えられ た.ウラベニホテイシメジおよびクサウラベニタケ近縁種 3種はそれぞれ異なる蛍光プローブを用いているため,FAM, VIC, Texas Red, Cy5を検出可能なリアルタイムPCR装置 があればMultiplex PCR分析可能である.LightCycler96 では4色同時分析が可能であることからMultiplex PCRの 検討を行なったところ,simplex検出では見られなかった

Fig. 2 Sensitivity and specificity of real-time PCR to detect detection of Entoloma rhodopolium-related species

A, each designed primes and probes detected each target plasmid. B, Multicolor probes were changed into single col-or

FAM probes. Multiplex real-time PCR can detect three poisonous E. rhodopolium-related species simultaneously. C and D, Lower detection limit and PCR efficiencies were examined. Twelve point five copies were detected in each detec-tion system.

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Texas Red標識E. pseudorhodopolium検出系で市販食用 きのこであるエノキタケおよびマッシュルームへの交差反 応が見られたが,それ以外は良好な結果であった(data not shown).さらに,汎用されているABI-7900リアルタイム PCR装置のようなMultiplex検出できない機種でも適用可 能なように,すべての検出系のプローブ標識をFAMに置 き換えて検討を行った(Fig. 2B).その結果,クサウラベ ニタケ近縁種3種は標準プラスミド溶液(pST10, 108, 124) および抽出DNA溶液(KUB-10, 108, 124)に特異的に反 応し,市販きのこであるエノキタケおよびマッシュルーム にCt値38以降で少し立ち上がりが見られたものの十分な 特異性を有したことから,効率的なMultiplex リアルタイ ムPCRによるスクリーニング検査が可能であることが分 かった.さらに,個別に分析することで種の同定が可能で あると考えられた.次に,増幅効率および検出感度について 検討を行った.標準プラスミド溶液(2×100∼2×106 ピー/ウェル)を用いた結果から(Fig. 2C),各検出系の増幅 効率はそれぞれ96% (E. lacus), 100%(E. subrhodopolium), 102%(E. pseudorhodopolium), 99%(E. sarcopum)と良好 であった.検出感度は,6.25, 12.5, 25, 50, 100コピー/ウェ ルの標準プラスミド溶液を用いた時(Fig. 2D)に95%以上 の確率で検出された濃度(検出下限値)は,それぞれ12.5 コピー(E. lacus), 6.25コピー(E. subrhodopolium), 6.25 コピー(E. pseudorhodopolium), 12.5コピー(E. sarcopum) であった.ここで,標準プラスミドを用いた時の検出下限 値でのCq値は37であり,また,湿重量100 mgを用いた時 にCq値20付近で検出されていることから,約0.8 μgが検 出可能な最低試料量と考えられ,十分な感度を有している. クサウラベニタケ近縁種の毒性発現量は不明であるが,過 去の中毒事例からツキヨタケのそれ(1/2本かそれ以下)と 同程度と考えると,本検出法は毒性発現量よりもはるかに 微量の試料から検出可能であると考えられた. 3. 食中毒事例由来試料のPCR-RFLPおよびリアルタ イムPCR法による検出 (1) PCR-RFLP法による検出 食中毒事例から回収した食品残さ4検体(すべてクサウ ラベニタケとして形態学的に同定された)は,食毒判別を 行うためShort-PCRを行った後に,制限酵素Msl Iで処理 した結果から,検体1から3はクサウラベニタケ近縁種で あること,検体4はクサウラベニタケ近縁種に食用ウラベ ニホテイシメジが混ざっていることが分かっている15) PCR-RFLP法で種の同定がどこまで可能か明らかにする ため,universal primers (ITS1F&ITS4) を用いてITS領 域を増幅させたところ,予想された1,075 bpのITSに由 来するバンドがすべての検体で見られたが,検体3以外は

弱いバンドしか観察されなかった(Fig. 3).用いた検体は

食品残さであり他の食物由来のDNAが混在している可能

性,universal primers (ITS1F&ITS4)の特異性が高くな

Fig. 3 PCR-RFLP analysis of four food residues from food poisoning

PCR reactions from the recovered samples did not produce clear 1 kb bands, indicating that they were degraded. Diges-tion of sample-3 by HaeIII/HincII provides bands at 158, 273, 503 bp. This shows sample-3 is E. pseudorhodopolium.

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いこと,および30分の加熱で1,075 bpのバンドが分解し て消失すること15),を総合的に考えると,調理残さにおい てはクサウラベニタケ近縁種のDNAは一部分解されてい ることに加え,混入している他の食物由来のDNAからの 増幅が起きた結果と考えられた.次に,DNAの一部分解 と非特異的増幅がされたこれら各検体のPCR産物を制限 酵素Msl I, Dde Iまたは Hae III/Hinc IIで処理して電気 泳動したところ,複雑なバンドパターンが得られた.その 中で,検体3はDNA分解されていない検体であることか らバンドパターンを解析した.その結果,Dde I処理で予 想される104, 136(弱いバンド),529 bpのバンドが,Hae III/Hinc IIの処理で予想される158, 273, 503 (弱い)bp のバンドが見られた.このことから,既報15)をもとにし て検体3はニセクサウラベニタケであると推定されたが, 検体1, 2, 4は電気泳動の結果からは推定できなかった. これらの結果から,食品残さからでも目的の1,075 bpの バンドが明確に得られる検体では種の推定も可能であるこ とと考えられた.一方,1,075 bpのバンドが明瞭ではない 検体ではPCR-RFLP法での同定は困難であった. (2) リアルタイムPCR法による検出 食中毒事例由来の検体は,DNA分解や非特異的PCR増 幅が見られたことから制限酵素処理後の電気泳動パターン は複雑で解析困難であった.そこで,リアルタイムPCR 法での確認同定を試みた.Probeは,ウラベニホテイシメ ジにはCy5-BHQ3a,コガタクサウラベニタケにはVIC-TAMRA,クサウラベニタケモドキにはFAM-BHQ1a,ニ セクサウラベニタケにはTexas Red-BHQ2a標識したもの を用いて個別に測定した(Simplex分析).その結果,検 体1, 2, 4はニセクサウラベニタケ,検体3はクサウラベニ タケモドキであることが判明した.検体4はウラベニホテ イシメジも検出され,ニセクサウラベニタケと混在したも のと考えられた.いずれの検体からもコガタクサウラベニ タケは検出されなかったことから,中毒原因とされるクサ ウラベニタケ近縁種はクサウラベニタケモドキとニセクサ ウラベニタケが中心であると考えられた.リアルタイム PCR法を用いることで,食品残さのようなDNA分解が進 み,かつ,他の種のDNAの混在が想定されるPCR-RFLP 法では同定できない試料においても,確実に食中毒原因種 を同定できることが示された.北海道種については,近年 クサウラベニタケ近縁種が原因の食中毒は報告されていな いことから有毒種の特定はできなかった.これまでに,ク サウラベニタケに対するリアルタイムPCR法は前田らに より報告されていたが17),分類の再検討の結果から日本国 内でのクサウラベニタケ近縁種の同定には不十分であっ た.本法は国内で有毒と考えられるクサウラベニタケ近縁 種を同定可能な唯一の方法と考えられる.また,本リアル タイムPCR法で使用したprimer対の配列は,北海道内で 採取したE. eminensおよび Entoloma. sp.の塩基配列に 一致することから定性PCRまたはSYBR Greenを用いた リアルタイムPCR法での検出は可能と考えられるが,今 回使用したprobeの配列は北海道の種には該当する配列が ないため改めて設計が必要である.今後,北海道内でのク サウラベニタケ近縁種について多くの検体での配列解析と 毒性との関係が明らかにされた段階で改めて検出方法の検

Fig. 4 Real-time PCR analysis of four residue samples from food poisoning cases

Unknown samples (UN1 and UN2) were identified as E. pseudorhodopolium. UN3 was E. subrhodopolium. UN4 was a mixed sample of E. pseudorhodopolium and E. sarcopum.

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討が必要と考えられる. 以上の結果から,日本国内で有毒クサウラベニタケ近縁 3種の特異的検出法としてリアルタイムPCR法を開発し た.本法は,DNA分解が進み,他の種のDNA混入も考え られる調理加工された食品残さからでも高感度で特異的な 検出が可能である.また,本法を用いることにより,北海 道におけるクサウラベニタケ近縁種は本州で見出された KUB-2と同じKUB-306,本州とは異なるE. eminensと Entoloma. sp.から構成されていることを明らかにした. 謝 辞 本研究の一部は,厚生労働科学研究費補助金(食品の安 全確保推進事業H27-食品-一般-007およびH30-食品-一 般-008)により実施された. 文 献

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Table 1 Entoloma rhodopolium-related species in Hokkaido
Fig. 2  Sensitivity and specificity of real-time PCR to detect detection of Entoloma rhodopolium-related species
Fig. 3  PCR-RFLP analysis of four food residues from food poisoning

参照

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