福祉避難所のススメ
災害時に自宅に住めなくなったとき、 一時的に生活するところが避難所です。 震災後の調査結果から、大勢の人が生活する避難所では、 障害のある人は生活しづらいことが明らかになっています。 災害時に障害のある人を守るためには、ケアのできる人材や バリアフリーなどの設備が整った福祉施設、特別支援学校等を 「福祉避難所」として整備することが必要です。 それには、自治体が福祉避難所をあらかじめ指定し、マニュアル作成、 開設・運営などの訓練を進めることが大切です。本小冊子は、次のポイントを紹介します
■災害時の障害児者の現状と福祉避難所の必要性、課題 ■福祉避難所の活動とマニュアルイメージ ■福祉避難所マニュアルの内容(目次)と記入例(ひな型) ■マニュアル作りの方法、研修案内自治体、社会福祉協議会、施設のみなさまへ
指定
・
開設
・
運営委託をスムーズに進めるために
■
いま、福祉関連事業所が避難所として求められています
被災時に、障害児者や支援者はどんな問題に直面するのでしょう。東日本大 震災後に行ったヒアリング調査からは、福祉関連施設が避難所としての機能を 求められながらも役割を果たせていない現状がみられます。 ◦避難所で周りに迷惑をかけたくなかったので車で過ごした(保護者、利用者) ◦指定避難所になっていなかったために物資も情報も来なくて困った(入所施設) ◦宿泊機能がない中での利用者の避難対応に迫られた。やむをえず一般の避難所に行った が、利用者は不安定で、一睡もできなかった(通所施設) ◦「特別支援学校を福祉避難所として開放してほしいんだ」という声があった。避難所経 営は、学校の教員がやることではないけれども、3日間はとにかく何とかやりましょう と承諾した(特別支援学校) (平成24年〜 26年度研究班による調査) ■福祉関係者は被災時のキーパーソン?
また、避難の際の情報源や支援者についても、福祉関係者をあげる人が多く、 被災した障害児者や家族にとっては、福祉関係者が身近で大きな存在である現 状がみてとれます。 ○避難行動に関わる情報源(315人、複数回答あり) ◦家族など同居している人の判断 101人 ◦近所の人、友人等からの連絡 97人 ◦福祉関係者からの連絡や声かけ 74人 ○避難行動に関わる支援者(197人、複数回答あり) ◦近所の人、友人等面識のある人 85人 ◦家族など同居している人 67人 ◦福祉関係者 53人 (内閣府「避難に関する総合的対策の推進に関する実態調査結果報告書」2013年)1.災害時に、児童生徒・教職員を守るために
■
避難できる場所、命と生活をつなぐ場所の指定を
被災した障害児者を守るために、どのような場所・機能が必要なのでしょうか。 前述のヒアリング調査にもあるように、「一般の避難所へは、バリアがあった り周りに迷惑をかけたりで行きにくい」という声をよく聞きます。やむをえず 壊れた自宅ですごすとしても情報、物資が必要です。 災害時の厳しい状況の中、障害児者が命・生活をつなぐためには、ケアので きる人材やバリアフリーなどの設備が整い行き慣れた、福祉施設や特別支援学 校で支援を受けられることは大きな安心につながります。 ■福祉避難所指定の現状
実際、障害のある人にとって身近な施設は避難所として指定を受けているの でしょうか。調査によると、高齢者施設では半数が避難所として指定を受けて いるのに対し、障害者施設は約4分の1、特別支援学校では10分の1が避難 所指定されているにすぎませんでした。 ■福祉避難所の指定を阻む課題の解消をめざして
身近な場所を福祉避難所として指定するためには現状の課題を解消しなければ なりません。指定を阻む、以下の事項に心あたりはないでしょうか。 ○ 福祉避難所開設・運営マニュアルと訓練が不可欠だが、自治体・社会福祉協議会・ 施設にノウハウがない ○ 介護に必要な物資・器材、消耗品、生活ルールが必要だが、準備ができていない ○長期間になると、専門支援者が必要だが、支援の仕組みがない 福祉避難所マニュアルの作成はこれらの課題を解消する大きな力となります。 高齢者施設 全12,303カ所 障害者施設 全6,446カ所 特別支援学校 全1,080カ所 福祉避難所指定状況調査結果より(平成 24 年 9 月末時点)1.災害時に、児童生徒・教職員を守るために
避難所指定カ所数 6,211カ所 50% 1,664カ所 25.8% 102カ所 9.4%0 福祉避難所全体イメージ 1 状況想定 2 福祉避難所の役割と運営の原則 3 平常時の活動 4 休日夜間の発災害対応策 5 平日昼間(勤務時間内)の発災害対応策 6 発災直後 7 参集後の対応 (1) 災害対応 (2) 利用者の支援継続 (3) 福祉避難所の開設準備 (4) 福祉避難所の運営 ① 福祉避難所における要援護者の支援 ② 福祉避難所の運営一般(被災1日目) ③ 福祉避難所の運営一般(被災2日目以降) ④ 長期対応の場合の交代 ⑤ 福祉避難所の統廃合 ⑥ 活動の終了 別紙1(避難所運営役割分担) 【 活動班 】 別紙2(福祉避難所内の各班の活動内容) 【 総務班 】 【 避難者支援班 】 【 食料・物資班 】 【 保健・衛生班 】 別紙3(空間配置) 【 居住空間の管理 】 【 共有空間の管理 】 別紙4(生活ルール) 福祉避難所の管理運営は、原則として 自治体から福祉施設責任者に委託され、 平常時から計画作成、教育、訓練、見直 しを行います。 発災後の活動を以下に示します。 ⑴初動対応 ◦ 利用者と職員の安全確保、安否確認、 救助、避難、初期消火、施設点検など ◦ バス移送時、屋外活動中などは安全な 場所で待機。落ち着いた時点で施設に 戻る ※ 施設閉所時は、災害対応要員、施設長などあ らかじめ決められた担当が参集する ⑵福祉避難所開設 ①自治体災害対策本部からの要請 ② 自主判断(近隣から要援護者が避難し てくる場合など) ※施設閉所時は①②どちらかにより開設 ⑶主要業務 ①災害対応 ②利用者の支援継続 ③要援護者の受け入れ、支援 ⑷業務実施上のボトルネック ◦ 電気・水・通信・交通などライフライ ンが途絶した場合を想定し対応を検討 ◦ 人員、物資、情報の確保 ⑸閉鎖に向けた環境づくり ⑹閉鎖
内容(目次)
福祉避難所マニュアルのでき上がりイメージです。実際には5ページで紹介する過程を経て内容(目次)や詳細を詰めていきます。 ボトルネックの解消と 業務の継続が マニュアル作成の 主目的です2.福祉避難所の活動
3.福祉避難所マニュアルの内容(目次)と詳細
詳細
福祉避難所マニュアルのでき上がりイメージです。実際には5ページで紹介する過程を経て内容(目次)や詳細を詰めていきます。 班長 総務班 福祉避難所運営協議会の事務局、福祉避難所運営情報の記録・生活 ルール作成、福祉避難所内外情報収集、福祉避難所外向け情報発信、 福祉避難所内向け情報伝達、危険箇所への対応、防火・防犯、取材 への対応、郵便物・宅急便の取り次ぎ その他調整全般 班長 避難者支援班 避難者名簿の管理、避難者介護、相談の対応、 ボランティアの受け入れ・活動調整 班長 食料・物資班 食料・物資の調達、受け入れ、管理、配給、炊き出し 班長 保健・衛生班 衛生管理、ごみ、風呂、トイレ、清掃 協力 保護者 自治体職員 ボランティア 副所長 避難所長 福祉避難所の運営一般 【被災1日目】 ⑴福祉避難所担当職員の配置、施設との調整 自治体が福祉避難所を開設したときは、原則として要援護者班から福祉避難所担 当職員を派遣し、施設との調整を行います。なお、災害発生当初は、自治体が福祉 避難所担当職員を確保できないことが想定されるため、施設管理者等が対応します。 ⑵福祉避難所運営協議会の設置・福祉避難所運営の検討 「福祉避難所運営協議会」を設置し、避難所長、各活動班の班長、支援者で構成 します。協議会が設置されるまでは、福祉避難所長又はその職務代理者(職務代 理者も不在の場合は、参集している者)が指揮をとり当面の運営をします。 福祉避難所の運営体系 福祉避難所運営の活動班 ① 活動班の設置 一部の特定の人に重い負担がかからないようにするため、活動班を設置し、 保護者やボランティアと協力して福祉避難所運営を行います。ただし、福祉 避難所の規模や作業量によっては活動班を統合するなど、福祉避難所に最適 な状態を作ります。 ② 班長の選出 ③ 班長補助者の設置 備蓄倉庫の管理方法・避難所の共通のルールづくり・班編成 生活ルール 相談窓口の設置……要援護者の相談に対応する窓口を福祉避難所に設置し、専 門職による総合的な福祉、健康相談等を行います。3.福祉避難所マニュアルの内容(目次)と詳細
準備が整い、作成までの大まかな流れをつかんだら、いよいよ活動開始です。 「計画」と「人」は防災の両輪! マニュアルを作りながら人づくりを進めましょう。