平成 14 年10月6日(日)
午前 10 時∼12 時
豊川体育館にて
安全登山のために
目 次 はじめに...2 Ⅰ リーダーと責任...2 《リーダーの資格とは》...2 《リーダーの責任とは》...2 《山岳遭難と法的諸問題》...2 《山岳遭難とリーダーの刑事責任》...2 ①リーダーの業務上過失致死罪について...2 ②山岳遭難事故におけるリーダーの注意義務について...3 Ⅱ 装備...3 《装備の説明》...4 《パッキング》...6 Ⅲ 登山計画...6 《登山計画書の作成》...6 《山行プランの秘訣》...6 Ⅳ 読図...7 《地図は何を持っていけばいい?》...7 《コンパスは何を持っていけばいい?》...7 《等高線》...7 《磁北と真北》...7 《磁北線の引き方》...8 《道に迷う前に》...8 《道に迷ったら》...9 ★現在位置の把握★...9 《コンパス使用上の注意》...9 《コンパスの用途》...9 《進行方向の確認》...9 Ⅴ ロープワーク... 11 Ⅵ 気象... 13 《四季の気象》... 13 ①春山... 13 ②夏山... 13 ③秋山... 14 ④冬山... 14 《雷》... 14 《風》... 15 Ⅶ 救急法... 15 《気道と血液循環の確保》... 16 《事故者の体位》... 16 《日射病》... 16 《人工呼吸》... 17 《熱疲労》... 17 《高山病の予防 》 ... 17 《山で遭難しないために》... 17 《こんなことも事故につながる》... 19 《参考文献等》... 20 《お勧め図書》... 20 - 1 -
はじめに
登山は、いろんな知識や経験が必要です。そこで、私達、豊川山岳会で話し合ったことを皆さ んに少しでも伝えることができ、安全登山に結び付けばと思い今回の機会を設けました。会長の 言葉をお借りすると、「豊川山岳会の自慢は死者が創立以来1人もでていない。」ということです。 この言葉には、会員相互の理解や今後の活動への注意点等含まれていると思います。皆さんも、 安全には十分注意していただき、山を楽しんでください。Ⅰ リーダーと責任
《リーダーの資格とは》
①責任感、②冷静な判断力と決断力、③統率力と指導力、④登山経験の豊富、⑤体力と技術と 精神力、⑥自然の危険性に対し敏感な感受性等があれば申し分ない訳ですが、これらのすべてを 持っている者は皆無であると思います。しかし、あればあるほど、安全登山が達成できる訳です からリーダーは非常に重要な位置を占めています。《リーダーの責任とは》
遭難したとき、しそうになったときなど困難な状況に陥った場合、メンバーがそれぞれの意見 を出して、困難を回避しようとします。このとき、それぞれの個人が状況判断をしますが、リー ダーが行動の決断をしますので責任は重大です。この決断を誤ると遭難事故へつながります。ま た、裁判によって刑事罰が科せられるケースも発生します。したがいまして、この決断の『根拠』 をメンバーに伝え、メンバーの意見を再度聞き、行動をとることが必要だと考えます。《山岳遭難と法的諸問題》
スポーツ事故が社会的相当行為と考えられ、違法性阻却の事由とされるのは刑法35条(法令 または正当な業務による行為)にいう正当行為としての判断によるものです。山岳遭難事故に対 して法的責任を判断する場合に違法性阻却などの問題として次のものがあげられます。 ① 不可抗力 登山計画に無理がなかったこと。当日の行動には無理がなかったこと。天候急変に対する 処置が適切であること。避難などの処置を取る努力をしたこと。等の最大限の危険回避を行 ったにもかかわらず事故が起きたものかどうか。 ② 自己過失 本人の技術未熟、指導者の警告の無視、用具装備の整備の不完全など、事故に遭った本人 の過失の程度がどれくらいか。 ③ 危険の同意 登山は多分に危険の要素を含む活動であるから、社会的に容認される危険には登山者は同 意しているものと考えられます。しかし、登山において同意していると考えられる危険とは、 思いがけない、天候の急変、予知不可能な雷雲、なだれ、落石などの多分に不可抗力的な要 素による危険であって、リーダーが十分な注意義務を怠ったために引き起こされる事故にお いては、それに参加したパーティーはそのような危険には前もって予測的に同意したとは考 えられません。《山岳遭難とリーダーの刑事責任》
①リーダーの業務上過失致死罪について リーダーの選任方法、リーダーとパーティーとの関係などから判断されなければならない。 登山指導員が山岳会の初心者訓練として登山した場合などには、リーダーの業務上の責任と - 2 -考えることができるが、登山仲間どうしの中からそのときだけのリーダーを選んだとすると 問題は別です。学校の教員が生徒を引率して登山した場合には一般山岳会のリーダーの場合 よりその業務性は明確です。 ②山岳遭難事故におけるリーダーの注意義務について ★注意義務の構造★ 『危険な結果を予見する義務』 登山に際して自己の経験、知識などあらゆる努力を集中してその登山について考えられる 危険を予見することであり、この危険を予見することによってその登山に際しての具体的な 結果回避義務の内容を決定するする基準となります。「結果回避義務」とはまず予見可能な危 険に対処するために危険を回避するための用心深い態度であり、危険の発生を抑制する態度、 ならびに熟考の義務です 『危険を回避する義務』 予見しないような事態の発生に際しては、その状況に応じてその突発の危険を回避するた めに合理的な判断により、状況によっては計画を変更し、また、十分な別の対策を立て、沈 着に処置する義務です。 ★注意義務の標準★ 体育、スポーツの事故における判決には、「平均的通常人の注意」という表現がなされ、そ の際に、参考とされる基準とされているのは、行政上、警察上の取締法規です。これには、 その行為の定型的な危険を予測して、それを予防するための行為を要求しています。それゆ えに、この定型に該当する行為を守らなかったことにより、事故が発生したとなるとその行 為は、注意義務の標準を逸脱する行為であり責任追及の対象になります。 【遭難例】 <雪山での滑落> 2001年3月11日、天気は微風快晴。中高年の4人パーティが、6:00、西穂山荘前の テントを出発。西穂高山頂より南約200mを下山中、10:39、男女2名が35∼40度の 雪面を飛騨側に300m滑落。 各々足の裂傷と額の陥没傷で、他パーティがツエルトで防寒、待機したが、ヘリが霧のため近 づけず、収容は夕方に(18時過ぎ)。病院収容後、男性は出血性ショックで、女性は凍死で夕 方から深夜にかけて死亡。 それまでは岩場の下りで、スタカットを4回ほど行ったが、事故の時点ではフリーで、しかも 1 名だけバックステップではなく、安易に前向きに下降したところ滑落した。 このメンバーでの一緒の山行も少なく、お互いの力量を把握できない状態で、やや難しい場所 をフリー(ザイルを付けない)で通過しようとした。
Ⅱ 装備
装備は、軽くて機能的なものがなんと言っても便利です。そして、必要なものは必ず持参する ようにして、使い方も熟知しておく必要があります。 また、すべての装備に対して、ビニール袋に入れて、防水対策を施してください。これ常識中 の常識。 - 3 -《装備の説明》
① ヘッドランプ 「LED発光ダイオードの電球」のものが軽くて長持ちします。電池は単4のものが主流です。 ② カッパ ゴアテックスが有名です。カッパは、雨だけでなく、風が強い場合にも着ますので、なるべく 良いものがいいと思います。雨天時では、防水性が非常に落ちたものは、保温力も低下し、体力 の消耗につながりますので注意が必要です。 ③ 非常食 軽くて、保存が利いて、栄養のあるものを選びます。本来は、個人の食料と分けて持っていく ものですが、食料を多めにして非常食の代用にしている方も多いようです。 例として、「塩・アメ・チョコレート・ビスケット・etc」。特に、塩は、熱中症の場合に必 要だったり、用途が多いので携帯をお勧めします。 ④ 防寒具 防寒具は、フリースが暖かくて軽くて便利です。フリースも質によりますので、登山専門店で 購入したものが安心できます。 ⑤ 下着 下着は、汗の吸収・発散に優れ、保温性の高いものを選びます。登山店での購入をお勧めしま す。いざというときの生死の分かれ目になる場合もあり、重要です。 ⑥ 遭難対策カード いざ、遭難が発生した場合の連絡先、連絡の方法、自分が意識不明の場合を想定して、第三者 に自分を照会するカードを持参するようにしている。個人装備の中、ザックの裏ポケットに入れ ておきたいものです。 (例) 愛知県東三河遭難対策カード(表) (裏) 事故が発生したら まず、落ち着け! ●警察連絡先 ・山梨県 警察 0552−35−2121 ・静岡県 警察 054−271−0110 ・長野県 警察 026−235−3611 ・富山県 警察 0764−41−2211 ・岐阜県 警察 058−271−2424 ●豊川山岳会連絡先 ・山岳 太郎 0532-○○-1234 氏 名 豊川 太郎 性別 男 団体名 豊川山岳会(愛知県山岳連盟) 血液型 A 生年月日 S13.1.6 年齢 60 自宅連絡先 豊川 本宮(妻) 自宅住所 〒442-0006 豊川市西○○町1−11 自宅電話0533-85-1234
豊川山岳会 緊急連絡先 〒440 豊橋市○○町 19-2 山岳 太郎 電話 0532-○○-1234 保険証番号 車番号 関係団体名 東三河遭難対策協議会(豊川山岳会・名古 屋渓稜会・豊稜岳友会・蒲郡山の会・豊橋 山岳会・鳳来 CC) 無線コール JG2ZDR(豊川)・JG2ZNM(蒲郡) 平成○年○月○日作成 ⑦ ナイフ ナイフは徳用ナイフでいろんな物が付いている物が便利そうでよさそうですが、軽さを求める なら単純な折りたたみナイフのみの小さい物で、軽い物が私は好きです。 ⑧ シュラフ(寝袋) シュラフは季節に応じて、種類の違う物を購入した方がいいようです。夏は、軽くて小さくな - 4 -るものが便利で、暖かさは持ってきた服を着て調整するようにしています。しかし、積雪期はそ うはいかないので保温力のあるものを選んでください。また、羽毛を選ぶ場合は、濡れることが 致命的になりますので、必ず、シュラフカバーを準備してください。 ⑨ シュラフカバー シュラフカバーは手のひらサイズの小さくて軽い物がありますが、寝ている間に自分の汗がシ ュラフに付き逆に濡れてしまいます。冬山では何度もこの経験をして、せっかくの羽毛が濡れて しまう経験をされた方も多いと思います。結局、今でもゴアテックスで、収納サイズがカッパ(又 はツエルト)程度の大きさで重量も重くなってしまいますが、これが私は好きです。 ⑩ 登山計画書 必ず、持参し、登山口で提出するようにしたいものです。日山協の保険は、最低でも、この計 画書の提出が会の中でなされていることが保険支払の条件になっているようです。 登山計画書は、ホームページの中(長野県警山岳情報)にもフォーマットがダウンロードでき るサービスがあり、富山県警は、登山届がホームページで警察署へ提出することも可能です。 *** 登山計画書の様式は最後のページに記載 *** ⑪ ロウソク 積雪期登山で、冷えた体をテントの中に納め、ロウソクを1本つけたときの温もりを味わい、 精神の安定剤的な役割があります。また、沢登りで焚き火をするときの火種にも便利です。 ⑫ ツエルト ツエルトを持って行くことは常識ですが、小屋泊まりだと、ついつい持って行きたくなくなる 方も多いと思います。そこで、ツエルトは軽くて、小さなものを選んでください。そして、いざ というときは生死を分ける重要な装備の一つです。 ⑬ テント 夏山では、軽い山岳用のテントがお勧め。ゴアテックス素材にこだわると、かえって重くなる 場合もありますので、ナイロン素材で、軽さと強度を重視していただければ、フライシートを着 用しますので、雨天でも問題ありません。 ⑭ ライター・マッチ どちらがいいですかとよく聞かれますが、両方がベスト。電子ライターは火花が飛ぶだけで、 火が付かない場合がありますので、避けてください。ライターはオイルの残りが見えるものが便 利で、マッチは防水マッチがよく、両方ともビニール袋に入れて防水対策を行って下さい。 ⑮ 携帯電話 警察庁の統計によれば、平成12年度の遭難パーティー、1,215のうち、アマチュア無線 での救助要請は35パーティー。携帯電話は293パーティーでした。しかも、この293パー ティー中265パーティーが救助されていることからも(90%以上の救助率)遭難したときに 携帯電話がいかに発揮するかが明白です。 ただし、谷筋などでは圏外になってしまう場合が多いので、万全とは言えません。 ⑯ レスキューシート ツエルトを所持しない場合、最低でもレスキューシートは必要です。生死の分かれ目は、こん な小さなもので決まります。 ⑰ テーピングテープ テーピングテープは、捻挫、骨折等の固定に使ったり、変わった使用方法としては、靴底が剥 がれたときなどの応急処置として、靴にぐるぐる巻きすることで、緊急時の回避に繋がりますの で、携帯をお勧めします。 - 5 -
『装備表』 ◎は重要、□はあった方が便利 個人装備 無雪期用(共同) 登攀具 積雪期用 ◎ ヘッドランプ・替電池 ◎ テント ◎ ロックハンマ ◎ ヤッケ上下 ◎ 非常食 ◎ ガスヘッド ◎ ロックハーケン ◎ 目出帽・セーター ◎ ナイフ ◎ ガスボンベ ◎ ヘルメット ◎ ピッケル ◎ 防寒具 ◎ MSR(ガソリン) ◎ ハーネス ◎ ビーコン ◎ 遭難対策カード ◎ トランシーバー ◎ シュリンゲ ◎ ソンデ棒 ◎ 山行計画書 ◎ 携帯電話 ◎ ザイル 11 ㎜ ◎ 外張り □ 竹ペグ ◎ 水筒・食器・軍手 ◎ ガソリン ◎ ザイル 9 ㎜ ◎ スパッツ・アイゼン ◎ シュラフカバー □ ローソク ◎ クライミングシューズ ◎ スノーバー □ デッドマン ◎ シュラフ □ ラジオ ◎ カラビナ・8環 ◎ スコップ ◎ コンパス・地図 □ 薬品・体温計 □ バイル ◎ ゴーグル・サングラス ◎ カッパ・傘 □ 細引き □ ナッツ類 ◎ 毛手袋・オーバーミトン □ マット・テーピングテープ □ ベニヤ板 □ ジャンピング・ボルト □ ワカン □ 保険証コピー □ 天気図用紙 □ ジャンピング □ 日焼け止め □ タオル・帽子 □ ツエルト □ アブミ □ タワシ □ 温度計 □ 修理用具・針金 □ コッヘル □ 赤布 □ しの竹 □ レスキューシート □ 裁縫用具
《パッキング》
① 下のほうに軽くて、山行中には使わないもの。真ん中は共同装備、上のほうに休憩中に使 用する、行動食・カッパ・防寒着等。装備が多くなると、ザックが首の付け根に当たる部 分に重いもの(水筒・ガソリン等)を入れます。 ② 左右のバランスを考えます。 ③ 重心が、ザックが首の付け根に当たる部分から背骨の部分になるようにします。 ④ 地図・コンパス等はザックのタッセに入れ、休憩ごとに現在位置の把握と、今後の行動予 測をしたいものです。 パッキングの上達方法はあります。それは、毎回の山行で、いいかげんにパッキングせず、そ の都度考え、今日はどうだったか反省することです。この気持ちが上達の早道です。Ⅲ 登山計画
《登山計画書の作成》
登山計画書の作成、届出は、遭難のときだけ役立つものではありません。むしろ、プランを立 てる際に、 ① 自分の体力と技術がその対象の山域に合っているか。(コースタイムの計画) ② 日程は大丈夫か?(食料計画) ③ 対象の山域で必要な装備は何か。(装備計画) ④ 緊急時の連絡方法(無線・携帯電話の所持。連絡がつかない場合、家庭から警察の連絡はい つしてもらうか等の事前打ち合わせ) といった、確認をすることにより、遭難事故の回避の意味合いがあることを忘れてはいけないと 思います。したがいまして、計画書の作成、提出は必ず行ってください。《山行プランの秘訣》
① 一番体力、技術の無い者を中心に計画してください。 ② コースタイムは、ガイドブックの 1.5 倍を目安とし、余裕のある行動時間を計画してくださ い。 - 6 -③ 早春や晩秋は日が暮れるのが早いので、早立ち早着きを基本としてください。 ④ 天候不順、体調不調の場合等、エスケープルートを常に計画に含めておいて、遭難時の捜索 の参考となるようにしてください。
Ⅳ 読図
地図は、実に多くの情報を教えてくれます。初めての山域でも安心して登山できるのは、地図 のおかげです。慣れてくると、平面図が立体図に見えてきます。また、危険箇所等の情報も登山 計画の段階で分かるので、装備は何が必要か?という準備もできます。 いずれにしても、立体的に地図が見ることができるまでには、時間が掛かりますが、地図を見 る時間を多く取れれば、必ず、地図は分かるようになるものです。普段の山行だけでは中々上達 しないという方も、オリエンテーリングの大会にゲーム感覚で参加されることをお勧めします。《地図は何を持っていけばいい?》
5万分の1のエリアマップでも十分使えますが、より、シビアな地図読み(沢、積雪期の登山等) が要求される場合は、「国土地理院発行の2万5千分の1地形図」が最適です。この地図は精度がすば らしく、地図が立体的に見ることができる方にとっては、まさに宝物です。《コンパスは何を持っていけばいい?》
山の店で"SILVA COMPASSES"(Made in Sweden エバニュー取扱) 等の名前で売っています。これが使いやすく機能的です。
《等高線》
地図を立体的に見られるのは、この「等高線」のおかげです。 平らなところは間隔が広く、急なところは間隔が狭いのが特徴 です。 尾根を歩いていると、この等高線の間隔でかなりの情報が得 られ、現在位置の把握に役立ちます。《磁北と真北》
普通の地形図は上方を「北」 にしており、単に「北」とい う場合は、経緯の北(上)方 向を指し、これを『真北』と 呼びます。これに対して、コ ンパスが指す北は、『磁北』と 呼ばれ、真北との間にはズレ があります。このズレを偏差 といい、日本では、5°(沖 縄)∼10°(北海道)の偏 差があります。地図には「磁 針方位は西偏約 6°50′」等と - 7 -記載されています。 なぜ偏差があるかというと、地球の磁北の極(北磁軸極)と北極点が一致しないからです。 地球の磁北の極は、グリーンランドの北、スミス海峡付近 77.0°N102.3°W(1984 年)にあり、 南磁極は、南極大陸アデリーランド沖合い 65.1°S 140.0°E 辺りにあります。長い時間かけて 少しずつ移動しています。 一方、地球磁場を最もよく近似する地磁気極は、球芯を通って、地球の回転軸に対して 11.0° 傾いていて、磁極とは一致しないようです。(磁極は磁力線が観測上収斂する場所で北と南では 正反対の場所ではない。)
《磁北線の引き方》
① コンパスのリングを偏角の数字にあわせる。(偏角6°なら ば、360°−6°=354°) ② 真北(地図の南北線は通常地図の余白の縦線)にコンパスの 北を合わせる。 ① コンパスの右辺を利用し、磁北線を引く。 ② 約4cm 間隔(2万5千分の1地形図で約1㎞)に線を引く。《道に迷う前に》
地図を見るのは、道に迷ってからでは遅すぎます。地図読みで、一番大切なことは、「予測」 です。そして、その予測どおりの地形が出てこないと「道に迷っているかもしれない」と注意す るわけです。そして、自分の位置が、正しいかどうかを判断し、分からないときは・・・・。さ て、ここからが一番重要なところです。 ① 予測(特徴物とは) 尾根・・・・・伸びている方向、尾根の幅、傾斜の角度、尾根の分岐。 沢・・・・・・沢の方向、沢の幅、沢の傾斜、沢の合流。 トラバース・・歩いている方向、出てくる尾根と沢の大きさ、道の傾斜。 上記の要素で、だいたいの現在位置及び今後の道のりが予測できます。予測のポイントは、大 きな特徴物をとらえ、そこまでの大体の距離を把握することが重要です。あまり、小さな特徴物 にこだわり過ぎると、予測の持続が難しいので結局は、予測せずに適当に歩いてしまうことにな ります。 ② 実行 予測どおりの特徴物が出てくれば、安心できます。しかし、予測どおりの特徴物が出てこなか ったときはどうすればよいでしょう。 現在位置の特定ができる場合は、リロケート(relocation=再び位置づけること)できますが、 現在位置の特定ができない場合は、困ります。原則は、来た道を戻ることです。これが、一番で す。来た道が分からなくなったら、体力を消耗しないように救助隊を待つことが重要です。 次に、もし、現在位置をここだと仮定することができれば、その仮定に基づいて、道を進むこ とも正しい選択です。しかし、このとき重要なことは、より正確な予測を必要とし、大きな特徴 物に合わせて、小さな特徴物も把握することも必要です。また、距離も正確に地図上で把握し、 実際に歩測をして距離と特徴物の関係を把握したいものです。こうすれば、正しい道を見つける ことも、最悪、分からなかった場合、戻る決断もし易くなります。 - 8 -《道に迷ったら》
まず、冷静になることが一番重要です。冷静になるためには、何か食べ物を口にしたり、水を 飲んだり、休憩したりするのもよいでしょう。 1963年 1 月の愛知大学遭難の追悼集に寄せられた槇有恒氏(元日本山岳会会長)が、同じ 薬師だけで愛知大学の遭難に似たケースを報告していて、「頂上を去って、登ってきた道を引き 返して、太郎兵衛の方へ下りかけると、急に濃い霧に包まれて全く視界がきかなくなった。する と嘉門次(案内人)は地面にこしを下ろして、鉈豆きせるを取り出して、火打石で火を付けて煙 草を吸い、動こうとしない。小一時間も座っていただろうか、幸いに霧に切れ間が出ると、予期 に反して赤牛岳が右手に現れた。私たちは霧のために道を全く反対の方向に歩いていることがわ かった」。視界が不良な場合、熟練した登山者でさえ、方向感覚はあてにならないので、まず、 落ちつこう。 ★現在位置の把握★ 現在位置の確定ができれば、迷っていないことになりますが、迷っているから特定が難しいの です。 読図の熟練者は、道に迷っても、大きな特徴物の予測をして、歩いていることが多いので、道 に迷っても、今まで歩いた道の状態と距離でだいたいの位置を推測することができます。この推 測に基づいて、もし、現在位置がここだとしたら、 ① この方向に、尾根があるはずだ。 ② この先約200mに尾根の傾斜が急になるはずだ。 ③ この先500m進んでも尾根の分岐が出てこなければ、現在位置が違っているのでもどろう。 という具合に予測をします。 まず、①の方向(コンパスの携帯)。②の距離。③の特徴物の3つの要素は欠かせません。そ して、③の特徴物が出てこなかったら、戻る勇気が必要です。これ以上歩いても更に悪化するだ けです。来た道を戻ることは比較的容易ですし、戻る間に、特徴物の確定が出来るかもしれませ ん。《コンパス使用上の注意》
① 磁気に影響されるので、ナイフなどの鉄類やラジオ、 トランシーバー、火山などの強い磁場は避け、岩場 で使用するときは1m以上離し使用する。 ② 水平に使用する。 ③ 体の正面で使用する。《コンパスの用途》
① 現在地確認・・・自分の現在位置を確認する。 ② 目標方向確認・・・自分が進んでいる方向が正しいかどうかを確認する。 ③ 目標物確認・・・・地図と照合して視認できる目標物が何かを確認する。《進行方向の確認》
左記のような尾根を下側の「X」から上方の「Y」へ進む場合、 一番道に迷いやすく、コンパスを使用しないと遭難の危険がありま す。 - 9 -①地図場の現在地点から目的地に向けてコンパスの長辺を当てま す。 ②コンパスはそのまま動かさないで、リングを回して、リング底の 矢印を磁北線と平行にします。 ③コンパスを胸の辺りに水平にかまえます。 ④コンパスをしっかり構えたままかただをゆっくり回して、赤い針 を北と合わせます。 ⑤このときの進行線の方向が目的地に進む方向です。 ⑥普段の山行で、道の分岐、尾根の分岐、沢の分岐等必ずコン パスを使用し、進行方向の決定をする練習をしましょう。 ⑦コンパスを頼りに歩いていくと、コンパスがずれていっ た場合、ルートを外れていることになり、早めにリロケー トしたいものです。 【遭難例】 ① 1963年 1 月、北アルプス薬師岳において愛知大学山岳部の遭難は13名全員が死亡す る一大事故となった。2日の午前5時40分に全員で登頂を目指して出発したのの、9時4 0分ごろ悪天候により、頂上手前300mの地点で登頂を断念、太郎小屋に向けて引き返す ことになった。遭難につながる道迷いはこの後発生した。一行は、第3キャンプのある太郎 小屋方面ではなく、南東に分岐する尾根に入ってしまった。分岐から2.5㎞ほど進んだと ころで、続いているはずの尾根が突然谷へ落ち込んでおり、道間違いに気付いたらしい。そ - 10 -
して、2日間のビバークの末、力尽きた。 (参考:愛知大学山岳部発行追悼記念誌『薬師』)
Ⅴ ロープワーク
「生兵法(なまびょうほう)はケガの元」しっかり練習して実践に役立ててください。 ≪ブーリン結び≫ ブーリン結びはいろいろ応用できるが、正しい使 い方を知ってから使うように心がけてください。 もやい結び、とも呼ばれ、結びやすく、解きやすい。ただし、 ハーネスとの連結には使用しないこと。 ① 末端側を持ち、もう一方にからめてひねり、ループを作る。 ② 手に握ったロープの端を主ロープにかけ、端を持ちかえる。 ③ 手をループから抜く。 ブーリン結びの末端を、もう一度ロ−プにからめて結び目へ 戻して通し、締め込むのが、「タックド・ブーリン」という。 末端処理を兼ねた結び方ともいえる。 ≪8の字結び≫ 8の字結びは、ひとえ結びより結び目が大きく、比較的解け やすい。ロープ端の各種ストッパーに使われる。 - 11 -≪二重8の字結び≫ 二重8の字結び。強度的にも強く、信頼のおける結び方。ク ライミング・ハーネスへの連結はすべてこの結び方で行う。必 ず、末端処理を行うこと。 カラビナとザイルを結ぶときは、二重 8の字結びで行うこと。 ≪インク・ノット≫ 巻き結びとも呼ばれ、クライミングのセルフビレイ(自己確 保)等に使われる。カラビナで使用した場合、強加重が加わる と、ほどけにくいのが欠点。 ≪ダブルフィッシャーマン・ノット≫ ロープ・スリングを作るときや、クライミングロープで懸垂 下降の際の捨て縄(支点)として使用する。ロープ端の余裕を 十分(ロープ径×10倍が目安)とること。 ≪テープ結び≫ 滑りやすい糸やテープに有効な結び方。特にクライミングの 平織りのテープ・スリングを結ぶ方法として使用する。ロープ 端の余裕を十分(10cm 以上)とること。 ≪ダブルブーリン結び≫ ループの大きさも簡単に調節できるので便利。 - 12 -
≪プルージック結び≫ コイル状の結び目と摩擦により、ある程度、荷重がかかると結 び目がブロックされる。応用範囲は広いが強度の加重がかかると 動かなくなるのが欠点。 ≪自在結び≫ テントのペグ等、長さを自由に調節できるのが特徴。 【事例】 平成6年6月に、鳳来町大島ダム付近の岩場で、山草取りの男性が、岩の上からから登山ロー プを使用し、懸垂下降をしている際に、滑落死亡した事故があります。原因は、ユマール(ロー プを使用し、登る際の確保器。登行器。)の誤った使用方法とロープワークが原因で、正しい使 用方法を知っていれば、防げた事故だと思われます。
Ⅵ 気象
最近は、山にいても、天気予報の情報が容易に手に入るようになりましたが、気象遭難は後を 絶ちません。春や、秋の天気は、いつ雪が降ってもおかしくない状態ですし、山の天気は変わり やすく、装備等の準備もしっかりして、いざというときは、引き返すことが重要です。 また、気温は標高100 メートルおきに 0.6 度下がり、アルプスの 3000 メートル級の山では、 平地より18 度も気温が低くなる計算ですから、夏でも防寒着が要ります。《四季の気象》
①春山 春が近づくと大陸性高気圧が弱くなり移動性となります そこに低気圧が日本海に入ると南 よりの風が吹き気温が高くなります。この最初の南風を"春一番"と呼びますが気温が高くなる ため雪のある山では 融雪による雪崩、増水に気をつけなければなりません。春は寒い大陸性 高気圧と暖かい大平洋高気圧が共存するため一年で最も寒暖の差が激しく高い山では真冬も共 存しますので十分気をつけなければなりません。この春山を甘くみるとゴールデンウィーク遭 難となるわけです。 ②夏山 6 月も半ばになると梅雨の原因となる梅雨前線が日本付近に停滞します。梅雨も末期となる と特に西日本では大雨になり関東では雷が発生し、梅雨前線が大平洋高気圧により北に押し上 げられ梅雨明けとなります。"梅雨明け 10 日"ということわざがありますが梅雨明け後 10 日は 優勢な大平洋高気圧のため最も安定した晴天です。これはだいたい8 月第 1 週でアルプスは人 で一杯となります。この時期を過ぎると山は雷や台風が発生しやすくなります。 - 13 -③秋山 9 月に入ると梅雨の時期と同じ様に秋雨前線が停滞し天候がぐづつき台風でも近づくと大雨台 風になりがちです。この時期を過ぎると冷たい大陸性高気圧が寒気を吹き込み良い天候にはなる ものの気温がぐっと下がるようになり、山は紅葉してきます。秋は春と同様寒暖の差が激しく 2000 メートル以上の山では 氷雨、雪が降ることもあり十分に注意することが必要です。 1989 年 10 月上旬には北アルプスで雪による大量遭難が起きています。さらにこの頃にはだいぶ日が 短くなるため行動時間もあまり取れなくなる。 ④冬山 季節的には一番厳しい季節ですので冬山に関する知識と経験がなければ行動できないのは事 実です。ここでは、冬山については詳しくは述べません。
《雷》
雷は、湿気を含んだ、非常に強い上昇気流が発生しており、上空の温度がー10 度以下に下が っている場合に雷が発生しやすくなります。 ① 安全な場所 実際に雷にあってしまったらどうするか? 100%回避する方法はありません。雷を避け る時の安全な場所とは、高い木の仰角45度以内、高い木から2m 以上離れた所が良いと言 いますが、高山の稜線上では見当たりません。気休めかもしれませんが低い姿勢、肩より高 い位置に身につけている金属類を外した方が良いと思います。 ② 非難姿勢 安全な場所に避難したら、姿勢を低くします。頭より高く物をかざさないように注意しま しょう。 ③ 避ける場所 雨水溝のような所は避けること。山頂、岩稜、岩場、水場の様なところは特に注意が必要 です。必ず這松やザックなどの上に座ること。また、雷の直撃を受けなくても、爆風にとば されて二次的災害を受ける場合があります。細い稜線や凸地は避けて、体が飛ばされてもな るべく衝撃を受けないような場所に避難して下さい。 ④ 分散して非難 パーティーが多勢の時は、被害が大きくなるのを避けるため分散して避難しましょう。 ★雷の体の流れ方★ ①体内電流(左) 全電流が体内を流れるものです。内臓に電流が流れるために、呼 吸停止や心停止などを起こして死亡する確率が非常に高くなりま す。 ②部分沿面放電(中) 体内電流とともに部分的に体外に電流が流れるもので、実際には このタイプの落雷が一番多く起きています。被害者の80 パーセン トは死亡してしまいます。 ③沿面放電(右) 電流のほとんどが体外を流れます。電流が流れた部分は軽いやけどをしますが、内臓には 電流が流れないために、死亡は免れる例が多く報告されています。 - 14 -★雷の観天望気★ ・ 早朝から日差しが強く、下界の雲海の流れが早くから始まって、午前中から3,000m 級の 稜線までガスがかかるようになると注意。 ・ 山の山腹や山麓(山間部)で、午前中から水蒸気が多くなって、視界がボヤけて悪くなっ てきたら注意。 ・ 盛夏期にもかかわらず、早朝から秋空のように青く澄みきった空の状態になっている時は 注意。これは上空に冷たい空気が入ってきているという事です。 ・ 各地の天気予報で「雷雨」という天気予報が出ていたら一応注意。 ・ ラジオにノイズが入るようになったら注意。(FMバンドは除く) ★体から金属を外さない方がいい?★ 一概に言えないのですが、雷が体の中を伝わって地面に流れるのが、一番危険です。落ちた 雷は、腕時計などの金属を探すので、体の表面を流れて、火傷程度で命には別状がなかった例 もあります。 【雷の遭難例】 ① 西穂高岳 松本深志高校 落雷事故 1967年(昭和42年)8月1日、集団登山で西穂高岳を登頂した同校の2年生41人 と引率教師5人の総勢46人は、下山中の独標直下で落雷を受け、11人が死亡、13人が 重軽傷を負うという大惨事になった。 当日、天気は晴れであったが、一行が頂上に到着して間もなくすると、大粒の雨が降りだ した。下山中、独標手前のピークにさしかかるころには急に空が暗くなり、大粒の雨は豪雨 に変わった。その豪雨はすぐにアズキ大のヒョウに変わり、明神岳のほうからは雷鳴も聞こ えてきた。 そして13時40分ごろ、独標ピークの北斜面に突如として爆発音が響き、青白い火柱が 立った。その瞬間、生徒がバタバタと斜面のガレ場に倒れ伏し、何人かは飛騨側あるいは岳 沢側に弾き飛ばされていったという。 この事故による死者11人のうち、雷に撃たれたのが死因となった者は10人。残る1人 は、落雷のショックによる岩場からの転落死であった。死亡者が11人という多数になった のは、ピークに達した落雷電流が大地に吸収されず、そのまま岩場の尾根に沿った放電(沿 面放電)となって地表を走ったためである。 (山渓より抜粋 羽根田 治 文)
《風》
山頂、峠、キレット、樹木のない岩場などでは一般に風が強く吹きます。例えば、峠やキレッ ト等では、風の収束によって、ほかの場所よりも風が強く吹きます。休憩などは、風のない場所 を選びましょう。Ⅶ 救急法
救急法とは、病気・けが・災害から自分自身を守り、急病人やけが人を正しく救助して、医師に渡 すまでの応急の手当てのことです。したがって、生半可な知識で、これ以上負傷者を悪化させること が一番危険です。しかし、「知っていれば助かっていた」ということのないように正しい知識を身につ けましょう。 - 15 -《気道と血液循環の確保》
片方の手のひらをおでこに、もう一方の手で下アゴの先端にあて、 アゴを上げ、呼吸を楽にする。 また、脳へ十分な血流が行われる体位にする。《事故者の体位》
①顔色がひどく蒼白なとき 足を少し高くなるように寝かせる。しかし、、頭、胸、 腹をケガしているときは頭を低くしてはいけない。また、 この体位で寝かせると息苦しくなったり、痛みがひどく なる場合にも、水平に寝かせる。 ②顔色がひどく赤いとき 頭と肩が少し高くなるように寝かせる。この場合頭だけを高 くするのではなく(気道確保のため)上半身全体にかけて高く する。アゴは少し上げるようにする。 ③嘔吐するとき 左肩を上にして(心臓が上)横向きに寝かせ、アゴを前の 方へ少し突き出す。肩の高さくらいの枕を右頬の下に当てて おく。なお、傷の部位によっては、右肩が上でもよい。 ④意識不明や背中に傷があるとき ふつう右を下にするが、傷の部位によっては左を下にしても よい。右をしたにする場合は、左ひじを曲げ、その腕の上に右 頬がのるように寝かせる。右腕は体の後に伸ばしておく。 また、意識不明で特に気道確保が必要なときは、片手で握り こぶしを作らせ、そのこぶしでアゴを下から押し上げるように する。《日射病》
症状は、頭痛、めまい、吐き気、疲労感に襲われ、顔面が紅 潮してくる。発汗は止まって、皮膚はカサカサに乾燥し、脈拍 が強く、速くなる。 日射病にかかったときは、風通しのよい涼しい場所に移し、 呼吸がしやすいようにアゴを突き出すような形をとらせ、上半 身をやや高くして寝かせる。衣服を緩め、濡れタオルなどで体 を拭いたり、タオルなどで扇いだりして体温を下げる。 意識がある場合は、冷たい水か薄い食塩水、又はスポーツドリ ンクを飲ませる。決して、いきなり水を体にかけたりしない。 この処置をしても意識が薄れてくようなら呼吸の有無を調べる。呼吸がなければ、人口呼吸を 行う。 - 16 -《人工呼吸》
①口の中の異物を取り出し、②気道の確保を行い、③おでこに 置いた手で鼻をつまみ、④口の周りから息が漏れないように吹 き込む。うまく息が吹き込まれたら、胸が膨らむので確かめる。 大人は5秒に1回、子供は4秒に1回の割合で吹き込む。《熱疲労》
高温多湿の環境下で長時間行動して体力を消耗し、大量の 汗をかいたのに十分な水分補給をしない場合に起こる脱水 性のショク症状。顔が蒼白になり、肌は汗でベトベトになっ て冷たく感じる。また、頭痛、めまい、脱力感などの症状が あらわれる。①風通しのよい涼しい場所に移す。②汗で濡れ た衣服を乾いた者に着替えさせ、③シュラフなどで保温をし、 ④足をやや高めにして寝かせる。薄い食塩水、又はスポーツ ドリンクを飲ませる。《高山病の予防 》
高度障害を避けるためには、まず水をたくさん飲んで利尿を促す事が大切。夏山では水分補給 が特に大切になってくる。そのためにも、水は多めに持っていく事が望ましい。《山で遭難しないために》
《晴れているのに雷が落ちてきた》
1969年の夏、浅間山山頂下200m付近で晴れているにもかかわらず雷に打たれ、14人 パーティーのうち 1 人が死亡、5人が重軽傷を負いました。水平に襲ってきた急激な雷でした。 ときに雷は10キロ以上の距離を走る。遠くでかすかに「ゴロッ」と雷鳴が聞こえたら、危険な 範囲内にいると思うべきです。《上から人が落ちてきた》
2001年7月22日、北アルプス・前穂高岳の重太郎新道を下っていた6 人パーティーのう ち最後尾を歩いていた男性がバランスを崩し転倒。そのとき一行はちょうどカーブに差しかかっ ていたところで、転倒した男性は最前列を歩いていた男性に接触し、二人とも30mほど滑落し、 亡くなりました。《季節はずれの雪が降ってきた①》
1989年10月8 日、北アルプスの立山で、関西の中高年のパーティーが室堂から入山。立 山三山を縦走して釼御前小屋に泊まる予定であったが、登り始めてまもなく雪が降り始め、一ノ 越に着いたときには吹雪になっていました。 この時点で、行動を中止するか、室堂に下山していればよかったのですが、パーティーは計画 を続行。しかし、寒さと疲労のために10人中8人が死亡するという惨事になりました。《季節はずれの雪が降ってきた②》
1999年4月20日、浅間山で60歳台の男女4人が疲労凍死する事故が起きました。 日帰りで山頂を往復する予定でしたが、この日の天気は朝から曇りで、昼前には雨が降り出しま した。この雨が山頂付近で雪に変わり、思いもかけない寒さのため行動不能に陥り遭難したもの とみられています。出発前から天気が下り坂になることが明白だったにもかかわらず、登山を強 - 17 -行した結果の事故でした。
《岩場のロープが劣化していた》
2001年の秋、飯士山(いいじさん)に登った際、負欠岩(ふっかけいわ)という岩場に張 られていた補助のロープが劣化していて、急激な力が加わると切れてしまいそうになっていまし た。《岩場のロープの固定がいいかげんだった》
1996年の夏、南アルプス・甲斐駒ケ岳∼鋸岳を縦走中、10m程度の岩の登りで、補助ロ ープが掛かっており、触る程度に補助として使用しました。ところが、固定されているはずのロ ープの末端が固定されておらず、20kg程度の岩が置いてあるだけでした。もし、全加重を掛 けていたら、恐らく転落していたでしょう。《山での写真撮影中に転落①》
長野県・戸隠山の一般登山コースの一部に両側がすっぽりと切れ落ちた箇所があります。通称、 『蟻の戸渡り』。立ち上がっては、怖くて通過できないほどの細いナイフエッジです。 実は、この箇所で、数年に一度の割合で転落死亡事故が起こっています。特異な場所なので、 そこを通過する登山者が、記念に写真を撮ろうとして立ち上がり、バランスを崩し転落してしま います。《山での写真撮影中に転落②》
2001年8月20日、北アルプス・北穂高岳ドームの南側縦走路で、写真を撮ろうとした登 山者が、狭い稜線上でバランスを崩して滝谷側に約400m転落。全身を強く打って亡くなりま した。《登山者の言うことを鵜呑みにして遭難》
1999年の夏、福島・山形県境の飯森山を往復する予定であったが、途中で出会った登山者 に「下山は沢コースの方が近いのでは」とアドバイスされ、また山頂にも「沢コース50m先」 という標識があったことから、沢コースを選択。ところが、このコースは沢登り的要素が強く、 通常は下山に使われないコースであったため、下っている途中で進退きわまり、山中で、着の身 着のままのビバーク。4日目に捜索のヘリで救助されました。 男性側の行動にも、地図とコンパスを持っていなかったこと、コースの状況が分からないにも かかわらず、安易に計画を変更してしまったこと、おかしいと思った時点で引き返さなかったこ となど、遭難の原因となる点もあげられます。 コース上で他の登山者から状況を尋ねられたときには、知ったかぶりをしたり、憶測でものを 言ったりしてはいけません。分からないときには、はっきり「分からない」と言ってください。 また、山頂に「沢コース50m先」という標識があれば、普通は「下って行けるコースの入り 口が50m先にあるのだろう」と思ってしまいます。北アルプスのメインコースなどはともかく、 登山者の少ない地方の山では、あいまいな標識が見られることもあるので、十分に注意してくだ さい。《仲間とはぐれて遭難①》
2001年1月18日、大菩薩峠に入山した5人のパーティーの一人が、下山途中で行方不明 になり、翌日、遺体で発見されました。このパーティーは介山荘に向けて登山を出発したが、大 雪のため計画を断念。引き返す途中、遭難者は携帯電話で通話していたことから一人遅れ、その 後、仲間に追いつこうとして滑落したものです。 - 18 -《仲間とはぐれて遭難②》
2001年1月21日、仲間8人で丹沢の大山に登ったグループから、夜になって「下山中に 仲間の一人がいなくなった」と地元の警察署に連絡が入りました。捜索の結果、登山者は崖下で 遺体となって発見されました。その遭難者は「トイレに行きたくなったのでさきにいってくれ」 と言って仲間と別れ、以降、姿が見えなくなりました。 もし、パーティーの誰かが一人でもそばに付いていれば、或いは、遅れた人が追いつくのを皆 が途中で待っていれば、もしかしたら命は助かっていたかも知れません。 いずれにしても、下山するまで仲間がいないことに気づかないというのは、パーティーとして 失格ですし、もし、行動中に用足しなどで仲間が遅れる場合は、少なくとも誰か一人は、少し離 れた場所で待つようにすべきだと考えます。《病気①》
警察庁がまとめた平成12年度の山岳遭難の概要によれば、遭難者総数1,494人のうち、 一番多い遭難要因は、「滑落・転落・転倒」を合わせた589人。次いで「道迷い」の524人。 そして、第3位が病気の101人となっています。 2001年10月1日、62歳の男性が行動を開始して40分後に、北アルプスの穂高平非難 小屋付近で突然「胸が苦しい」と訴え救急車で病院に運ばれましたが、2時間後に急性心不全で 亡くなりました。《病気②》
2001年10月8日、伯耆大山の山頂直下で倒れている男性(65歳)が発見され、ただち にヘリで病院に搬送されたものの、急性心不全のためまもなく、亡くなりました。《こんなことも事故につながる》
《靴底のはがれ》
登山靴の靴底の剥がれは、素材が劣化することによって起こる。とりわけ1年に 1、2回しか 山に行かない人は、靴底がはがれそうになっていないかチェックする必要がある。また、使用後 のメンテナンスを行うとともに、保管場所にも気を配りたい。《ストックを岩に引っ掛けてしまう》
ストックの長さの調整ができなくなってしまったため、山小屋にペンチを借りにくる登山者が 増えています。それも、破損ではなく、腕力のなさや、ストックの構造を知らないことが原因と なっています。 ストックの長さが調整できなくなって困るのは、岩場を通過するとき。長いままでは邪魔にな るばかりか、岩に引っ掛けてバランスを崩してしまえば転・滑落につながります。ストックは必 ず自分で調節を行えるようにし、岩場では、縮めてザックに装着して行動してください。《メガネが壊れてしまった》
メガネをしている人は、山での破損に注意してください。例えば、目印のペンキや赤布を見落 としてしまえば、道に迷って遭難ということにもなりかねないし、遠近感に支障をきたし、転・ 滑落の恐れもあります。そこで、山に行くときには、必ず予備のメガネを持っていくことをお勧 めします。行動中は落下防止のためのメガネバンドを装着するといい。コンタクトをしている人 も同様で、万一紛失したときのため、予備のレンズかメガネが必要です。《テントを燃やしてしまった》
炊事中に誤ってストーブを倒してしまった。ガスランタンの下で炊事をしていてランタンが爆 - 19 -発した。ガソリンストーブに燃料を入れる際に引火してしまったなど、その原因はさまざまだが、 ほとんどのケースでは大ヤケドを負って救助されています。
《参考文献等》
豊川山岳会 http://member.nifty.ne.jp/toyokawa_alpine/index.html 登山指導者研修会テキスト(文部省) 山の便利帳(山と渓谷) 道迷い遭難を防ぐ「最新読図術」(山と渓谷:村越真著) 山と渓谷「山で遭難しないために」(2002年2月号) 富山県警察山岳情報 (富山県警察への登山届も可能) http://www.pref.toyama.jp/KENKEI/SANGAKU/INDEX.HTM 長野県警山岳情報 http://www.avis.ne.jp/~police/sangaku/sangaku.htm 山岳保険について http://www.convention.co.jp/ip/hira/insur.html 山岳情報 http://nagoya.cool.ne.jp/alpine/sub7.htm#link0 読むアウトドア講座 http://eco.goo.ne.jp/wnn-o/files/yamakei/《お勧め図書》
『道迷い遭難を防ぐ「最新読図術」(山と渓谷:村越真(ムラコシ シン)著)1,700円』 という本があります。この本は、オリエンテーリング日本チャンピオンの村越さんが書かれた本 で、実に分かりやすく地図について書かれております。 『生還 山岳遭難からの救出(羽根田 治(ハネダ オサム)著1,600円)』 山で遭難し、生死をさまよった後、生還した登山者のドキュメント。登山者がちょっとした不 注意から遭難し、何日間も山に閉じこめられてしまう例が後を絶たないという。そうした遭難の 中から生死の境をさ迷いながらも、危機を乗りきって無事生還した登山者に取材し、生還した原 因を分析したノンフィクション。 『山のトラブルブック 213の解決法(別冊:山と渓谷)980円』 山のトラブルを防ぐ安心登山の心がけから、トラブルに遭わないための装備とウエア 図鑑、シュミレーション山行で学ぶ安心登山術、テーピングテープの使い方など5つの安全登山 を提言。 - 20 -- 21 -