* 連絡先著者(Corresponding author): E-mail:[email protected]
〒271-0092 千葉県松戸市松戸 648 648, Matsudo, Matsudo city, Chiba 271-0092, Japan
論文
ORIGINAL ARTICLE
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1)1)千葉大学大学院園芸学研究科 Graduate School of Horticulture, Chiba university
2)千葉大学大学院工学研究科 Graduate School of Engineering, Chiba university
���屋上植栽基盤における剪定枝由来堆肥の利用可能性を検討するため,剪定枝由来堆肥のみの土壌基盤(以下,剪定枝),園芸培 養土のみの土壌基盤(以下,培養土),剪定枝と培養土を重量比 1:1 で混合した土壌基盤(以下,混合土)の 3 種類の土壌基盤の調査 を行った。千葉大学園芸学部松戸キャンパス内5 階屋上で,それぞれの土壌基盤を充填したプランターにおいて,葉菜類(コマツナ, チンゲンサイ,リーフレタス)と草本類(ストック,ビオラ,ハボタン)の生育調査を行った。調査結果から,剪定枝でも培養土と同 程度の生長が認められたため,剪定枝由来堆肥は,軽量で環境に配慮した屋上植栽基盤として利用することが可能であることが示 された。 ������屋上緑化,剪定枝,植栽基盤
TASHIRO, Yurika, NAGASE, Ayako and TAKAHASHI, Terumasa : Investigation of wood chips as a substrate for extensive green roofs.
Abstract : This study investigated the possibility of using woodchips as a substrate for a green roof on a five-story building in Matsudo, Chiba University. Three kinds of substrate were used; woodchips, garden compost and a mixture of the two. Vegetables (Brassica rapa var. peruviridis, Brassica rapa var. chinensis, Lactuca sativa var. crispa ) and forbs (Viola×williamsii, Matthiola incana, Brassica oleracea) were grown in a container of each substrate. The results showed that the plant growth in woodchips was good as that in horticultural compost and woodchips can be used as a lightweight and environmental friendly green roof substrate.
Key words : Green roof, wood-chips, substrate
1. ���� 都市の環境改善効果等を期待して,国や自治体では屋上緑 化を進める動きが高まっている。しかし,荷重制限やコスト 面,管理面で解決しなくてはならない課題は多い。特に荷重 制限は既存の建築物へ施工する際に大きな課題となっている 7)。また省エネ,エコへの関心の高まりから,屋上緑化導入 時にも,リサイクル品等を使用し環境へ配慮することや,持 続可能性の検討が求められるようになってきた。 そこで,本研究では剪定枝由来堆肥に着目し,屋上におけ る植栽基盤としての利用を検討した。剪定枝由来の堆肥は, 通常の土壌よりも軽量であり,堆肥化が自然に起こるため環 境への負荷が小さく,生産コストが低いことなどから,屋上 緑化に適した基盤になりえる。しかしながら,緑のリサイク ルとして,剪定枝葉を再び敷き均し材等として利用する事例 はあるものの 6),土壌基盤として利用した研究は少ない。ま た,公園等で出る剪定枝の処理は課題となっており,土壌基 盤としての利用は,屋上以外の場所における家庭用プランタ ーなどへの汎用性が高いと考えられる。 本研究では,1 年以上堆肥として利用せず,放置していた 剪定枝チップを剪定枝由来堆肥とし,その特徴把握と,植栽 基盤としての利用可能性を検討した。 2. �������� 2.1 実験設定 2.1.1 実験区概要 2010 年 7 月 21 日から 2010 年 12 月 15 日まで,千葉 県松戸市の千葉大学園芸学部E 棟屋上で実験を行った。E 棟 は5 階建て鉄筋コンクリート構造で,四方を高さ 110 cm 程 の壁で囲まれており,屋上への出入りのための構造物は中心 よりやや南東側に位置している。本研究では,剪定枝由来堆 肥が屋上緑化のみならず家庭でのプランター植栽など小規模 面積で利用されることを想定し,プランター(菜園プランタ ー550 型 480 mm×260 mm×165 mmh/IRIS)を使用して 植栽の生育を調査した。プランターは壁から十分に離れてお り,また出入り口のある構造物の陰になる部分を避け,終日 日光が当たる場所を選び設置した。
論 文
2.1.2 土壌の種類 土壌は剪定枝由来堆肥のみの土壌基盤(以下,剪定枝)と 葉菜類の生育を考えた市販の園芸培養土(株式会社刀川平和 農園)のみの土壌基盤(以下,培養土)に加え,剪定枝由来 堆肥と培養土を混合した時の効果も調べるため,剪定枝由来 堆肥と園芸培養土を重量比1 : 1 で混合した土壌基盤(以下, 混合土)の3 種を用意した。剪定枝由来堆肥は,町田市内で 発生した剪定枝葉を回収し,町田市の剪定枝資源化センター にて3 ヶ月切り返しを行い堆肥化されたものである。実験目 的で同センターの管理運営を委託されているアゴラ造園株式 会社から提供を受け,千葉大学園芸学部A 棟 3 階屋上にて 約5 cm の土壌厚で広げた状態で 1 年以上放置されていたも のを利用した。 また,剪定枝由来堆肥には養分がほとんどないため,蔬菜 類の標準的な施肥適量4)から生育に必要最低限量になるよう 考慮し, 1 プランター当たり有機肥料(有機化成スーパー ユーキ30 号/N:10 ,P:10 ,K:10 ,Mg:2 ,B:0.3 /昭光通 商アグリ株式会社)を剪定枝と混合土にそれぞれ15 g,7.5 g 加えた。 2.1.3 土壌厚 一般建築物において荷重制限は60 kg/m2となるため7),こ の荷重制限をもとに土壌厚を求めた。3 号ポットにそれぞれ の土壌を入れ,上から十分な水を含ませた後,体積と重量の 比から60 kg 時の体積を求めそれぞれの土壌厚を決定した。 剪定枝は10 cm,混合土は 9 cm,培養土は 8 cm となった。 2.1.4 実験区の設置と管理 1 つのプランターにつき葉菜類 3 種,または草本類 3 種 をそれぞれ1 列に種ごとの間隔を 5 cm 程あけて筋蒔きし, 間引きによって生長の良いものを 5 個体選び調査対象とし た。繰り返しは3 回とし,この土壌の種類と植栽の組み合わ せにより18 区画(植栽 2 グループ×土壌基盤 3 種類×繰り 返し3 回)を設定した。 播種後10 日間は毎日潅水を行った。1 つのプランターか ら水が排水され,十分な潅水量であると確認がとれた水量(2 L)を 18:00 に潅水した。この潅水量は約 15 mm 厚に相当 する。ただし,前日または当日に雨が降り,土壌が湿ってい る場合は潅水しなかった。発芽後は 2 日に 1 度の頻度で潅 水した。追肥は行わず,除草作業は週1 回,生育調査の日に 行った。 2.1. 5 植物材料 植物材料は,安価である種子を使用し,発芽からの生長過 程を調査した。種子はホームセンターなどで手軽に手に入り, 10 cm 以下の土壌基盤でも生育可能であるような乾燥条件に 強く,かつ草丈の低いものとした。また,屋上緑化や家庭の ベランダ等のプランター栽培では草本類だけでなく葉菜類の 需要も高くなっていることから,1 年草である草本類と 1 年 で収穫可能な葉菜類からそれぞれ種を選択した。葉菜類はコ マツナ(Brassica rapa var. peruviridis),チンゲンサイ
(Brassica rapa var. chinensis),リーフレタス(Lactuca
sativa var. crispa)の3 種類とし,草本類は,ビオラ(Viola ×williamsii),ストック(Matthiola incana),ハボタン (Brassica oleracea)の3 種類とした。 2.2 生育調査 播種後2 週間経過した 2010 年 8 月 4 日から週 1 回の頻 度で葉数,草丈,広がりをそれぞれ測定した。草本類におい ては開花後,花数の測定も行った。草丈は,葉菜類ではもっ とも長い葉をその植物の草丈とし,草本類では地上からの高 さを草丈として測定した。広がりは,上から見たときに最も 長く取れる葉から葉までの横の広がりを測定した。コマツナ とチンゲンサイは2010 年 8 月 26 日まで計 4 回,リーフレ タスは2010 年 9 月 9 日まで計 6 回測定した。また,発芽 が遅かった草本類は,2010 年 8 月 19 日から測定を開始し, ストックは2010 年 9 月 2 日まで計 3 回,ハボタンは 2010 年9 月 15 日まで計 5 回,ビオラは生長が遅くなってきた 2010 年 10 月 7 日からは 2 週間に 1 回の頻度に切り替え, 2010 年 12 月 15 日まで計 13 回測定を続けた。 2.3 土壌環境測定 土壌温度と土壌水分の測定は,データロガー(Em50 Data Collection System/DECAGONDEVICES)を設置し,2010 年9 月 10 日から 10 月 26 日まで草本類のプランターで測 定を行った。データは60 分毎にとり,剪定枝,混合土,培 養土の基盤からそれぞれ1 つずつプランターを選び,土壌温 度,土壌水分が測定できるセンサー(ECH2O-TE)を設置し, さらに剪定枝にのみ土壌水分のみを測定する土壌水分センサ ー(EC-5)も設置した。これらのセンサーは植物の植栽位置を 避け,センサーが全て土壌で覆われるように設置した。 ECH2O プローブでは,プローブの黒いプラスチック成型部 に内蔵されたサーミスタにより温度を測定しており,プロー ブ先端の熱接触により,プローブ先端表面にそって平均の温 度を読み取っている1)。また,土壌水分は,70 MHz の高い 周波数で誘電率を測定し土壌の体積含水率を求めることによ って表される。センサーの直径は52 mm であり,植栽基盤 に用いた剪定枝や培養土の粒径よりはるかに長いため,得ら れる測定値はそれぞれの基盤の温度,水分特性を反映してい たと考えられる。 土壌中のC/N 比は C/N コーダー(MT-700 型/ヤナコ分析工 業株式会社)にて測定を行った。葉菜類は 8 月 5 日,8 月 20 日,9 月 9 日の計 3 回,草本類はさらに 10 月 7 日も含め る計4 回プランターの土壌を採取し,測定を行った。 測 定 結 果 の 統 計 分 析 に は ,MINITAB Release 14 (Minitab)を用いた。One-Way ANOVA を使用し, 5 %の棄 却率とした。 2.4 屋上気温測定 実験区のあるE 棟屋上にて,7 月 22 日から 11 月 2 日の 間測定を行った。おんどとり(Thermo Recorder おんどとり Jr. TR-51S/株式会社ティアンドデイ)を使用し,60 分毎に
データを取った。 �� �� 3.1 土壌環境 3.1.1 土壌温度および屋上気温 各基盤の土壌温度の変化に著しい差はみられなかったが, 剪定枝の温度がやや高い傾向にあった(図-1)。降雨日は最高 土壌温度と最高気温との差は小さかったが,晴天で気温が高 くなると最高土壌温度と最高気温の差は大きくなる傾向があ った。最低土壌温度と最低気温に関しては,測定期間通して ほとんど差はなかった。また,降雨時あるいは降雨後は,屋 上気温は上昇しないことが確認された。各基盤の最高土壌温 度の差が最も大きい 9 月 13 日の 1 日の土壌温度の変化で は,1 日を通して剪定枝の土壌温度が他の基盤と比較してや や高いという結果が得られた(図-2)。 3.1.2 土壌水分 測定期間中,屋上気温の高い日が続いた9 月 15 日から 19 日にかけての土壌水分の変化を図-3 に示す。潅水後の 18:00 には土壌水分が急激に増加した。剪定枝と培養土の土壌水分 を比較すると,潅水後は剪定枝の方がより多く水分を保持し ていたことが確認された。しかし,測定期間中を通じて,培 養土の土壌水分の最大値と最小値の差は比較的小さく安定し ていたのに対し,剪定枝では日によって土壌水分の変化が激 しいことがあった。 3.1.3 C/N 比 剪定枝土壌のC/N 比は培養土の C/N 比と大きな差はなく, 植栽の生育に大きな影響はなかったと考えられる。剪定枝の C/N 比は,実験開始直後は他の基盤に比べて高かったが,実 験開始 50 日後には培養土と同程度の値まで低下した(表 -1) 。これらの値は,窒素飢餓の状態を作り出す程ではなか った8)。 3.2 植栽の生育状況 葉菜類ではコマツナとチンゲンサイが,草本類ではストッ ク,ハボタンが測定期間中に枯死し,生存したのはリーフレ タスとビオラとなった。枯死した 4 種は,播種後 3 週間ほ どに当たる 8 月末までは混合土の生育が最も良く,後に剪 定枝,培養土と続いた(図-4)。このことから,剪定枝と培養 土を混合することによって,生育が良好になる種もあること が示唆された。 混合土は,潅水直後は剪定枝と同程度まで土壌水分量が高 まるが,時間が経つと培養土と同程度になるなど,剪定枝と 培養土の中間的性質を示し,それぞれの土壌の欠点を補える 土壌基盤となる可能性がある。 一方,リーフレタスでは剪定枝,混合土,培養土の順で生 育が良好だった。それぞれの土壌基盤における個体の葉数, 草丈,広がりを比較すると,有意差が見られた(図-5~7)。 ビオラでは,10 月まではリーフレタスと同様に剪定枝, 図-1 日最高土壌温度の経時的変化
Fig.1 Daily maximum soil temperature during the experiment
図-2 9 月 13 日の土壌温度の 1 日の変化
Fig.2 Change of soil temperature on September 13
図-3 9 月 15 日から 19 日までの土壌水分の変化 Fig.3 Change of soil moisture from September 15 to 19
表-1 葉菜類のプランターにおける C/N 比の変化
Table 1 Change of C/N ratio in substrate of vegetable planter 15 日後 30 日後 50 日後 剪定枝 19.4 a 17.6 b 15.6 b 混合土 15.5 a 16.4 ab 15.4 b 培養土 14.5 a 15.6 a 16.5 a 異なる英小文字は,Tukey の多重検定により 5 %レベルでの有意 差を示す。検定はそれぞれ15 日後,30 日後,50 日後に行った。 図-4 チンゲンサイの広がりの変化
Fig.4 Change of diameter(Brassica rapa var. chinensis) エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-5 リーフレタスの葉数の変化
Fig.5 Change of number of leaves(Lactuca sativa var. crispa)
エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-6 リーフレタスの草丈の変化
Fig.6 Change of leaf length(Lactuca sativa var. crispa) エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-7 リーフレタスの広がりの変化
Fig.7 Change of diameter(Lactuca sativa var. crispa)
エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-8 ビオラの葉数の変化
Fig.8 Change of number of leaves(Viola×williamsii)
エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-9 ビオラの草丈の変化
Fig.9 Change of leaf length(Viola×williamsii )
エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-10 ビオラの広がりの変化
Fig.10 Change of diameter(Viola×williamsii)
エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-11 ビオラの花数の変化
Fig.11 Change of number of flowers of(Viola×williamsii) エラーバーは標準偏差を表す。異なる英小文字は,Tukey の多 重検定により5 %レベルでの有意差を示す。
図-12 屋上気温の変化
Fig.12 Change of rooftop temperature
混合土,培養土の順で生育が良好であったが,11 月以降に は,培養土における花数が急激に増加した。剪定枝と培養土 では良好な生長を示す時期に違いが見られたが,花数以外の 最終的な生育結果の数値に有意差はなかった(図-8~11)。 �� �� 以上の結果より,本実験で使用した植物においては,剪定 枝由来堆肥のみの土壌基盤でも,培養土と同程度の生長が認 められた。土壌温度やC/N 比は剪定枝と培養土との間で顕著 な差が見られなかったことから,剪定枝の植栽の生育が培養 土と同程度の値を示したのは,土壌水分が高いことが要因の 一つであると考えられる。培養土に比べ,剪定枝の保水力が 高かったのは,空隙の大きさや構造も関係していると考えら れる。例えば,高橋ら5)は剪定枝の堆肥化により表面積が大 きくなることを報告している。剪定枝を基盤として利用する 際は,以上のような粗密の特性も考慮して利用方法を検討す る必要がある。また,50 日後の培養土の土壌 C/N 比が 15 日 後のものよりやや増加したのは,培養土中の窒素肥料が降雨 に伴い流亡した可能性が考えられる。培養土では葉菜類の生 育が悪く,植栽による土壌流出防止効果が小さかったため, 土壌が流出してしまい,相対的に有機物量が高くなったと考 えられた。 本研究において,信頼性が高くなる時期まで生存した種は リーフレタス,ビオラの 2 種類であった。また,コマツナ, ハボタンは害虫による被害が強く,ストックは害虫の被害は 小さかったものの,枯死に至る個体が多かった。体積含水率 が基盤によって異なっているにもかかわらず,一斉に枯死し, 高温になりやすい剪定枝で若干早くしおれが進行していた。 8 月 16 日に最高気温が 40 ℃近くになり,21 日から 9 月 7 日まで最高気温が35 ℃を超える日が多く続いたことから, 植栽が高温ストレス,また高温により上昇した大気飽差が引 き起こす水ストレスの影響を受け 3),枯死に至ったと考えら れる(図-12)。チンゲンサイは,害虫による被害も大きかった
が,実験初期はしおれの方が目立っていた。このことから, 葉中の水分量が不足し,しおれたため害虫に対する抵抗力が 低下し,被害が大きくなったと考えられる。枯死や害虫の被 害で生育の悪かったコマツナ,チンゲンサイ,ストック,ハ ボタンも夏期までは生育が良好だったため,潅水頻度を高め, 寒冷紗を使用した害虫防除などにより,生存できた可能性が ある。 さらに,ビオラにおいて剪定枝と培養土の生長時期に大き く違いが見られたことから,季節によって,最適な基盤が異 なる可能性があることが示唆された。剪定枝は,一時的な保 水力が高く,その後の排水性が良い,そして市販されている 土壌に比べ肥料分が少ないといった特徴を持っているため, 屋上緑化において頻繁に使用される高山植物,海岸性植物, ハーブ類の生育には適した基盤だと考えられた。ハーブ類と 葉菜類の混作が害虫の生育抑制につながる研究もあることか ら2),混作をすることでさらに省管理の土壌基盤としての利 用可能性も考えられる。 �� ��� 本研究により,剪定枝由来堆肥は,軽量で環境に配慮した 屋上植栽基盤として利用できることが示された。剪定枝由来 堆肥は培養土と比較して,下記の特徴があることが確認され た。 ・土壌温度が高く,土壌水分量も高い。 ・土壌水分量の安定性が劣る。 ・C/N 比の値は培養土とほとんど差はない。 ・軽量であるため,より基盤を厚くできる。 本研究では荷重制限に注目し,重量から土壌基盤の厚さを 求めたが,基盤の厚さを全て10 cm にした場合,培養土の重 量は75 kg/m2となり,本研究で使用した剪定枝は培養土に比 べ 1 m2あたり15 kg の軽量化が可能であることが分かった。 実験において,基盤の厚さの違いが植栽の生育に影響した可 能性も考えられるため,等しい基盤の厚さの実験区の調査も さらに行う必要がある。 今回は地上部の生長のみの調査にとどまったため,地下部 の定着度合も含め,土壌基盤と植物の適合性に関してはさら なる研究が必要である。また,本研究では実験時期が植栽の 生育に大きく影響したことが考えられる。同時に,培養土に 比べ剪定枝の土壌栄養が少ないとの仮定に基づき剪定枝のみ に施肥を行ったが,このことが生長を早めた要因であること も考えられる。今後は,異なる季節の実験,異なる潅水頻度 の実験,生長と施肥量に関する実験も行う必要がある。 ���本研究を行うにあたり,千葉大学蔬菜園芸学研究室の みなさま,千葉大学再生生態学研究室のみなさま,千葉大学 都市環境デザイン学研究室のみなさまに大変お世話になりま した。以上の方々にこの場をお借りして,厚く御礼申し上げ ます。 ���� 1) アイネクス株式会社,5TE 土壌水分・温度・EC センサー取 扱説明書,p.4 2)足達太郎・鳥海航・大川原亜耶・高橋久光(2008)ハーブ類の 混作がキャベツ害虫の個体数と天敵寄生率におよぼす影響,東 京農大農学集報,53(3):259-263. 3)彦坂幸毅(2004)光合成過程の生態学,甲山隆司ほか編,植物 生態学,朝倉書店,pp.42-80. 4)橘昌司(1990)土壌管理,伊東正・藤枝国光・廣瀬忠彦・橘 昌司,蔬菜園芸学,川島書店,pp.232-233. 5)高橋輝昌・越田淳平・長峯利樹・加藤顕(2010)堆肥化に伴う 剪定枝葉チップ地表面の微細構造の変化,日本緑化工学会誌, 36(1):183-186. 6)佃千尋・加藤陽子・高橋輝昌・小林達明(2008)公園に敷き 均された剪定屑チップ材の分解特性と土壌の化学的性質の変 化,日本緑化工学会誌,34(1):235-238. 7)山田宏之(2007)屋上緑化,森本幸裕・小林達明編,最新環境 緑化工学,朝倉書店,pp.160-168. 8)米林甲陽(1997)土壌有機物の分解と C/N 比,久馬一剛編,最 新土壌学,朝倉書店,pp.45-46. (2012.6.26 受理)