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瀬戸内地方に適合した畑地かんがいの基礎的研究 IV 傾斜地における土壌水分消費機構について-香川大学学術情報リポジトリ

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第22巻第2号(1971) 瀬戸内地方に適合した畑地かんがいの基礎的研究

Ⅳ∴傾斜地における土壌水分消費機構について

113 松田松二 山田宣良 Ⅰま え が き 既に論述したように,瀬戸内地方に.おける畑地には傾斜地果樹園が多くみられる。(1)しかしながらそこでのかんが い施設は未だ充分であるとはいえず,又,そのかんがい方法はたた攣に乎埋地紅おけるものをそのまま適用したにす ぎず,必ずしも合理的なかんがいが行なわ融ているとほいえない。特紅.花崗岩の風化土壌地帯では,不適当なかんが いの為土壌侵食がひき起されている例も少なくはない。従っで傾斜地において−ほかんがい強度や水患の適正化に留意 する必要性が大きく,それらを規制する因子であるところの土壌水分消彗機構の解明が急がれねばならない。なかで も段佃のように億成された耕地では,その土壌水分特性が特異であることが考え・られるので,Ⅱ報(2)とも.閑適してテ ラス全体についての把捏が必要と考えらかる。

ここでは前報(3)に・ひき続き,香川大学農学部付属傾斜地農場において昭和45年6月1日から8月20日まセ行なった

実測デー・タをもとにして考察した。 ⅠⅠテラスにおける土壌水分消費特性 本研究の対象としたテラスの断面図は周一1に示すとおりである。 \ l ご「 l l l 図−1 テラスの断面図 この図からわかるように,本テラスは大別して山側(切土部分),道路敷,谷側(盛土部分)となっでおり,このう ち山側に2列,谷側に3列のミカンの樹が植えられている。母岩(閑雲花崗岩)は風化がすすんでおり,明確な境界・ をみせてはいないが,山側に.は局部的紅浅層地下水的な重力水の存在が認められる。土壌水分ほ山側,谷側共2ケ所 で測定し,その他地下水位ならびに地中温度も併せて測定した。 1.谷側の水分特性について 図−1からもわかるように,テラス谷側は盛土によって造成された部分と考えられ,土塊水分特性についても盛土 部分としての特徴が発現し■ているものとして取扱った。本闘場における盛土は切ニヒ部分の土壌が移動したものが大部 分であり,谷側と山側との間における土壌の本質的相違は小さいものと考えられる。又,谷側における土壌水分ポテ ンシャルの変化は図一2に示すとおりである。 この図からわかるように,テラス谷側に.おい■て−は比較的平.蛙lな畑地での水分消蟄特性がそのまま現われていること がわかる。それらの事柄を列挙すると以下のとおりである。

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香川大学虚学部学術報告 114 5 7 7/15 17 19 21 23 25 27 29 318/1 3 図−2 谷側土塊水分ポテンシャルの変化 1.表層土壌の乾燥が顕著であり,かんがい開始時(pF3)に到達して:いる。 2.表層土壌の乾燥がすすみ,土壌水分消費量が漸減してくると代って深層の土壌水分が消費されはじめる。 3.少量かん水後ほ土壌水分の均一イヒがみられ,下層の水分消饗が早期に・はじまる。 これらのうち,3ほ未だ定説とはなっていないが,Ⅲ報でも述べたように2と同様畑地においては一腰的であると みなしうるものと考えられる。(3) 従って,テラス谷側においては従来用いられてきた畑地かんがい基準をそのまま用いても土壌水分特性の上からは それほどさしつかえがないことがわかる。むしろここでは斜面の保全等,別の見地からの考察が必要となってくるの ではなかろうか。又,斜面からの蒸発については,今回の測定ではその影響が認められるに・は至らなかったが,局部 的に.は当然考えられる水分損失である。 2.山側の水分特性軋ついて 図−1に示されているように.,テラス山側ほ切土に.よって生じたと考えられる部分であり,従って土壌水分特性も 切土部分の一般性として取扱えるものと考えられる。なかでも鹿地形との関係でとらえることは重要であり,多段紅

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11g 舘22巻舘2号(1971) 亘る造成地では下段に.地下水の演出がみられる例が多い。(4)ここでは山側における土壌水分ポテンシャルの変化を測 定し,その結果を図−3紅示した。 図−3と図・−2とを対比させてみると,デラスの土壌水分特性をはっきりと把捉できる。サなわち,山側は見かけ 上の土塊水分消費量が極めて少なく,2週間の連続干天後でもpF値は3以下に・とどまっていること,表層のみの乾 燥がみらかる段階が谷側の場合のように.は顕著でないこと,従って土壌水分の鉛恐分布は此較的均一・であり,しかも 全般的に.潤沢であることなどの点において,谷側における土壌水分消費特性とは著しい相違点をみせてこいる。これら の現象を規制してこいるところの最大の要因ほ,前述したように地下水の存在によるところが大きいものと考えられ る。本テラスに.おいては,深さ1・5m・以上に亘って土層がはとんど均一・であり,わずかい薄いレキ混りの層を含むに すぎない。従ってここの地下水は宙水のような形態で保留されているものとみなすことができよう。一例として山側土 壌水分測定地点近傍に.おける経日的地下水位変化を図一4に示した。

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19 21 23 25 27 29 31 8/1 図−・4 地下水位の変動 7/15 17 3 5 7 この図からわかるように,地下水位は地表面下数10C朋と非常に・浅く,板群域内の土壌水分特性に対して多大な影響 を及ぼしてル、るものと考えられる。すなわち,見かけ上の消費水鼻が非常紅少ない(土壌水分減少過程から静出した 場合)のは,地下水からの補給が顕著であったことを考えれば充分に・理解できる。すなわち,地下水位1Cmの低下 は,当テラス土壌の間隙率が約40%であることから,ほほ4御の消費水量に・相当することがわかる。このうちのかな りの部分ほ未発散によって失なわれているものと考えらかるので,テラス山側の消費水嚢が谷側と比較して著しく少 ないものとみなすのは誤りであるこ.とがわかる。−■・例として:,地下水からの補給を考慮した場合としない場合の消懲 水墓の値を表−1に示した。 表−1地下水からの補給 テラス谷側 消潜水塁 山 側 (除補給) 山 側 (合補給) 山 側 (補給一を) 11.9深沈 145∴Tご 9.6邦訳 9い7ガZ戊 7/17∼7/20 7/2L7′}7/30 7/31∼8/3 8/′4∼8/7 1●9郡1 21●9抑 10り5都」 18.5罰珊 15.郎珊 13.7都盈

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11(; 香川大学農学部学術報告 又,各深さにおける土壌水分ポチ∴/シヤルの変化ほ,地下水位の変化と良好な−・致をみせており,テラス山側にお いでは地下水と平衡した状態で土壌水が存在しているこ.とが認められる。一・般に畑地かんがいを行なうペき対象とし て,地下水位が存在しない耕地があげられるので,その意味からほテラス山側に.はかん水を要しない。この事柄は, 図−4紅示した土壌水分ポチう/シヤルがpF3(かんがい開始時期)を超えない事実からも支持されうることであり, 少なくとも谷側と山側とを同一・祝して:かんがいを行なうのは非合理的ではなかろうか。 ⅠⅠⅠテラスにおける畑地かんがいの合理化 1.立体的土壌水分プロファイルの適用 Ⅱで論述したようにノ,テラスに.おいて:はその部位によって土塊水分特性に著しい相違がみられる。しかしながら従 来の研究に.おいてはそれらを均一・なものとして扱い,実際上は局部的な土壌水分変化を畑地かんがい上の基準として 用いてきたきらいがある。いわゆる「点」の測定結果を代表的紅用いてせたわけであるが,少なくともテラスをかん がいの対象とする場合に.ほ,「一面」あるいは「立体」的な把握が必要となろう。そしてそれらの面や立体を代表する位 置の選定が行なわれてこそはじめて点測定の意義があるのではなかろうか。いわゆる測点の代表性が検討せられねば ならない所以である。ここ∴ではテラスに鹿角な方向に軸をとり,横断面1習を作成したが,それらのうち特にかんがい 必要時期である7月30日に.おける土塊水分ポテンシャルのプロファイルを図−5に.示した。 この図をもとにして,土塊水分消費機構

≡ ̄ ̄ ̄ ̄三こ

に.ついて考察を加えて.みる。まず未発散に.よ る損失については,土壌物理的には土壌水分 が多い山側が大となり,徽気象的にほ環境条 件の変化が大きい谷側が大となる傾向にあろ う。植物生理からみると地下水位の浅いLh偵け は吸水が容易ではあるが細根の伸長が妨げら れ,いわゆる湿害も考.え.られるので,土壌水 分消費機構ほ磯雄となってくる。現にテラス 山側の−し弥でほ,ミカンの樹の発育障害もみ られるが,これについては後報にゆずる。 以上ほ主として二消費からみた場合の噂傲で あるが,水分補給塁には極端な差がみられ 〇 20 ﹁1﹂■■卜lL 図…5 土壌水分プロファイル る。すなわち,山側では主として−地下水に.よ る外部からの補給が考えられるのに対して,谷側では垣接的降水以外の自然給水は考えられず,畑地かんがいが不可 欠なものとなろう。従ってこのプロファイルをもとに・して土塊水分の充足をほかり,作物生育上有利な状態となるよ うにかん水することが合理的と考えられる。 2.合理化上の問題点 テラスにおいて合理的なかんがいを行なってゆく為に・は,まずその造成形態から問題忙しなければならない。すな わち,図−1にみられるのが一廠的なテラスの形態であるのならば,土壌水分特性からみた場合に・は有利な栽培方式 とはいえない。例えば道路の位置は水分が過剰な山側端か,損失水量が多い谷側端に・設けるべきであり,最も条件の よい現在の位置は栽培に利用されるのが適当であろう。スブリンクラ−の位置は,作物に対しては現在のままでもよ いが,道路との距離が近すぎるので無効かん水盛が多くなるきらいがあろう。 次にかんがい時期,水量等の決定法紅ついてみると,従来のように土壌水分の消長をみて消費水鼠を決定する方法 には適用上の限界・があることがわかる。この方法では実際には土壌水分の増減を知ることができるが,移動の方向は 推定によるはかない,従ってテラス山側のように重力水が存在している場合には消費水虫の算出はできえない。又, いわゆる蒸発散という用語に示されているように,消背水晶全体のうちのどれだけが作物に.よって利用されたかにつ いて:は應定の域を出ない。このようなことから,植物生理的な側面からの考察がこれまで以上に必要となろう。 更紅現在の畑地かんがい方式に・ついて考えてみると,その施用法があまりにも機械的であることを・指摘せざるをえ ない。そこで行なわれているのは作物不在のかんがいである。当テラスにおいても,いわゆる均一・散水を行なえば山

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第22巻第2号(1971) 117 側が水分過剰になることが明白であるにもかかわらず,そのような配慮は充分でほなく,平地における場合と全く同 様なかんがい方法がそのまま適用されているにすぎない。具体的にいえば,パートナークルのスプリンクラーや,多 孔ホース紅よるかんがい等が実情紅応じてもっと幅広く運用されてしかるべきである。 ⅠⅤ あ と が き 本研究の皿,Ⅳ報ほ,昭和44,45年度の義挙に行なった一・遵の土壌の物理性の測定結果をもとにしたものである。 特にテラスの土壌水分特性についてほ,ある程度の知見を得ることができた。今後は徽気象的側面,植物生理的側面 からの検討をも加え,特質ある環境条件を萌しているところの瀬戸内地方紅適合した畑地かんがい法について更狂者 究をすすめてゆく予定である。本稿の終りにあたり,昭和45年8月21日,四国地方紅来襲した台風の為の今回の測定 に供した観測施設が倒壊し,関係各位に多大な御迷惑をおかけしたことをおわび申し上げる。 参 考 文 献 (1)上原勝樹,松田松ニ,山田宣良:瀬戸内地方紅適合した矧地かんがいの基礎的研究,Ⅰ香大農学報 20(2) 180−183(1969) (2)上原勝樹,松田松二,山田宣卑:瀬戸内地方に適合した畑地かんがシ、の基礎的研究,Ⅱ 香大農学報 20(2) 184−187(1969) (3)松田松二 山田宣良:瀬戸内地方に適合した畑地かんがいの基礎的研究,Ⅲ 番犬農学報 22(2)(1971) (4)黒上泰治,葦沢正義,森正義,深井弘義:傾斜地果樹園の開設に関する生懲学的研究,香大農学部11302 −319(1959)

FUNDAMENTAL STUDIES ONTHERATIONALIRRIGATION FOR

THE DISTRICT ALONG THEINLAND SEA OFJAPAN

IV.On the mechanisms of consumptive soilmoisture of the sloping orchard

MatsujiMATSUDA and NoriyoshiYAMADA

SⅦmmary

In this paper,many pIOblems ofairrigation plannlrlg Of slopiz)g OrChardaIe pOintedout・

They are;

1.There are many different characteristicsof the consumptive soilmoisture between upper andlower part of the terrace.

2.Perched water supplies considerable soilmoistureinto the upper part of the teIraCe.

3.It can be considered that alower part of a terrace has the similar characteristics to

those of flat field with regard to consumptive soilmoisture.

Therefore,in the sloping orchard,it willbe more usefulto utilize a sprinkler method with part

circle nozzle or perforated pipe method

参照

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