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香川県におけるカンアオイ属 Heterotropa 2種の分布についての一考察-香川大学学術情報リポジトリ

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香川県におけるカンアオ■イ属月も£¢γ0孟γ叩α

2種の分布についての一・考察

久 米 修

〒766 満濃町四条1200 香川県西部林業事務所1)

Notes on the Distribution of TwoHbterOtrOPa SpeciesinKagawa Pr・efecture

Osamu Kume,励gawaPr(押CtualWesternForestry qffice,

1200,ぶん宜J■y百,伽す−亡ん百766,J叩α彿1) 産地の記述は久米(1984)に従った。 <ナンカイアオ・イの追加標本産地> 白鳥町入野山宗心星越峠(17.刃.1984JI、0) ;綾上町扮所西貞重(3Ⅴ.1984−OK), 貞盛永富池(3Ⅴ.1984−OK);満濃町吉 野神野(3“Ⅲ.1984−OK);仲南町七箇三 田(3一Ⅲ.1984−OK);観音寺苗粟井町藤 ノ谷菩提山(31皿.1984−OK)。 <ミヤコアオイの追加標本産地> 仲南町七箇三田(3“Ⅲ.1984−OK),小弥 谷(25Ⅸ.1984−OK)。 地質調査は,分布調査実施時に,現地におい て五.万分の一・表層地質図(野間,1969;斉藤, 1972;斉藤ほか,1972,1973,1974,1975, 1976;須鎗ほか,1977)との比較対照を行い決 定した。その結果,3箇所(観音寺市粟井町竹 成片山,竹成粟井神社;高瀬町上麻柏谷麻部神 社)において,表層地質図に相違が認められた ので,その部分は修正した。現地調査を実施出 来なかったもの(ナンカイアオイ;引田町川股 千足西谷,小路鉢伏山;大内町水主風呂;琴南 町川束両島;山本町河内六地蔵越,神田桐谷; 財田町財田中書田;大野原町五郷井関五郷山公 園:ミヤコアオ・イ;土庄町大部小部恵門不動; 内海町福田森生川;綾上町東分栗原,菖蒲;満 濃町神野岡;琴南町造田備中地池)については, 使用資料から除外した。この結果,地質調査地 点は,ナンカイアオイで52地点,ミヤコアオイ で38地点を得た。 は じ め に カソアオイ属旅≠βγ0≠γOpαは,分散速度の大 変遅い植物で,茎は1年に1節,数mmしか伸 長せず,種子の散布能力も極めて弱く,ほぼ花 の位置に落下する。したがって,一・定の地理的 距離を扱がってゆくには,地史的時間の経過を 必要とすると言われている(前川,1953;日浦, 1968)。 筆者(久米,1984)は,香川県産のカンアオ イ属2種,すなわちナンカイアオイガ.w漉α五−・ e・nSis(F.Maekawa)F.Maekawaとミヤコ アオイH.aspeγα(F.Maekawa)F.Maekawa の分布について報告した。そこで,本研究では, 前川(1953,1964),日清(1968,1978),清 (1972)などにより従来試みられている地史的 な観点からの解析法を適用して,この2種のカ ンアオイの分布機構の解析を試みた。 本稿を草するに当たり,香川大学農学部吉田 重幸助教授,香川大学教育学部金子之史助教授, 香川大学附属図書館島谷尚子文部事務官には, 魚重な文献の入手について大変お世偏になった。 また,香川県東部林業事務所大石黍輔技師には, 図幅の作成に当たってお手数をかけた。記して 感謝の意としたい。 方 法 ナンカイアオイとミヤコアオイの分布結果は, 久米(1984)によったが,その後の調査で新た に分布の確認された次の地点を追加した。標本 −17−

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図2 讃岐平野の鮮新世の古地理とカンアオイ属の分布. 横線は水域を示す.●:ナンカイ■アオイ,▲:ミヤコアオ■イ. (古地理図は斉藤・坂東,1960に.もとづく) 考 察 香川県におけるミヤコアオ・イの分布の主体は, 新しい地層では讃岐層群上にある(表1)。讃 岐層群は瀬戸内火山系に属する火山岩類であり (斉藤,1984),噴出の際には当然その近郊に ある植物は死滅す−ることになる。またミヤコア オイが分布する讃岐層群は台地の上部にある。 したがって低地部や谷部で仮りにこの種が生き 残り得たとしても,その種子散布および根茎の 伸長の特異性から,斜面上部への分散はきわめ て微々たるものと考えられる(前川,1953)。 以上のことから,香川県におけるミヤコアオイ の侵入分散時期は,讃岐層群成立後と推定でき る。 讃岐層群の属する火山活動は,第三紀中新世 中期の第一・次瀬戸内海と,鮮新世後期から洪積 世初期に出現した第二次瀬戸内海との間に行わ れた。そして第二次瀬戸内海は,主として淡水 湖列で−・部内海域となっていた(以上,斉藤, 1984)。この鮮新世の第二次瀬戸内海の海岸線 とミヤコアオイの分布が一・致しており(図2), 第二次瀬戸内海に堆積した三豊層群(斉藤,19朗) 結 果 地質調査結果に基づき,香川県の表層地質図 (図1)と讃岐平野における鮮新世の古地理図 (図2)に,ナンカイアオイとミヤコアオイの 分布地点をプロットした。 ナンカイアオイとミヤコアオイの分布と表層 地質の平面的な関係については,特に明確な債 向が認められない(図1)。 そこで,カソ■アオイ属2種の分布地点の表層 地質を地層層序表に組みかえてみると(表1), ミヤコアオイの分布の主体は,後期中新世の讃 岐層群と白亜紀に併入した領家花崗岩類上にあ る。他に少数なが ら白亜紀中∼後期に堆積した 和泉層群上にミヤコアオイが見られる。−L方ナ ンカイアオイの分布の主体は,和泉層群と領家 花崗岩類上にある。また西讃地区では,鮮新世 後期∼更新世初期の三豊層群上と更新世の段丘 堆積層上にもナンカイアオイが見られる。しか し,東讃地区では,三豊層群と段丘堆積層にナ ンカイアオイの分布が確認されていない。 また,ミヤコアオイの分布と鮮新世の古地理 とは(図2),ほぼ一・致している。 −19−

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表1香川県の代表的地層群の時代とカンアオイ属の分布関係. (地層闇序表は斉藤,1980にもとづく). カソアオ・イ属分布箇所数 時 代 絶対年代 地 層 ミヤコアオイ ナンカイアオイ (100万年) 東讃 中讃 西讃 第 縄紋海進 1 四 現在の瀬戸内、 4 更新世 上位.段丘礫層 5 紀 2 第2瀬戸内海 新 j第 火成活動

‡讃岐層群

16 !三 紀 23 第1瀬戸内海 古 撃 福 5 入 和泉層群 5 5 13 ) 領家層群 13 3 4 7 生】 代 まり東讃地区の鮮新世の水域が,図2よりも広 がっていたことが想像できる。これらのことか ら,鮮新世の古地理が,東讃および西讃地区の ミヤコ1アオイの分布を制限したことが考えられ る。 日浦(1978)は,近畿中軸部におけるミヤコ アオイについて,中新統以前の基盤山地に分布 し,鮮新い更新統の堆積年代に,すでに近畿中 軸部に展開し終わっていたと述べている。また, 古い種であるにもかかわらず,分布域は広義の 古瀬戸内に限られ,西日本の内陸気候とむすび ついているとしている(日清,1979)。これに 対し,香川県では,ミヤコアオイと古瀬戸内海 とのむすびつきが認められるが,分布年代につ いては,讃岐層群成立後から三豊層群堆積時代 にかけて,つまり鮮新世から更新世にかけてと 考えられ,日浦(1978)による近畿中軸部の年 代よりも新しい。 −・方香川県におけるナンカイアオイの分布年 代は,西讃地区では三豊層群堆積後と考えられ る(表1)。この地域のナンカイアオイは,和 泉層群の北側に位置する高位段丘堆積層をこえ 上にミヤコアオイの生育がほとんど認められな いことから(表1),ミヤコアオイの分布は, 三豊層群堆積年代までにほぼ完了していたもの と推測できる。 ただし,三豊層群(仲南町七箇三田),洪積 層(綾上町筋所泉下和田,仲南町佐文加茂神社) および沖積層(高瀬町上麻樫谷)上に少数なが らもミヤコアオ・イの分布が確認されている(表 1)。沖積層上の分布は,周囲の生育地からの 二次的分布と考えられるが,三豊層群及び洪積 層上の分布は,一概に二次的分布と結論しがた い。これらについては,今後詳しい研究が必要 である。 また,ミヤコアオイは中讃地区を主体に分布 しており,東讃および西讃地区に分布していな い。斉藤(1984)は,第四紀の初期には,財田 町と徳島県池田町の風隙部に南から北へ流れる 古い流れがあったことが想像されると述べてい る。高松市の屋島では,現在までミヤコアオイ の生育が確認されていないが,山頂部で三豊層 群の−・部が,讃岐層群を不整合におおっている ことが知られている(斉藤,1954,1984)。つ −20−

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て,三豊層群上に分布している(囲1)。斉藤 (1984)は,更新統洪積層は讃岐山脈の北麓に 分布しており,上位段丘堆筋層は更新世中期の 堆積を,下位段丘堆積層は更新世■最後期の堆積 をそれぞれ推定している。このことから,西讃 地区でナンカイアオイの分布が現在のような形 に定着したのは,上位段丘堆積層の堆積以降す なわち更新世ヰ期以降と推定できる。西讃地区 への侵入年代については,いまのところ検討資 料が無いが,徳島県の吉野川以南からの北上を 仮定す・れば,吉野川成立以前に讃岐山脈に達し ている必要が ある。第四紀の初期には,讃岐山 脈はそれ程高くなく,讃岐山脈を越えて南から 北へ流れる古河道の存在が推定されている(斉 藤,1984)。したがって,この種は第四紀の初 期には,既に讃岐山脈に達しており,讃岐山脈 のその後の急速な隆起と古河道の存在(斉藤, 1984)がその後の分布に影響を与えた事が考え られる。 また,沖積層上にはナンカイアオイの分布が 確認されていない(表1)。この種は,東讃地 区では引田町で小海川を,白鳥町で湊川を,中 讃地区では綾上町で綾川及び田万川を,西讃地 区では仲南町と財田町で財田川を,山本町で神 田川を各々越えて北上している。これらの事か ら,各河川の成立前には,現在の分布状態が完 了していたものと推測できる。 摘 要 1香川県産カンアオイ属2種の分布機構に ついて,表層地質図に基づき地史的観点から考 察を行った。 2ミヤコアオイの侵入分散年代は,讃岐層 群成立後から三豊層群堆積時代,つまり鮮新世 から更新世にかけてと考えられた。 3.ナンカイアオ・イの西讃地区での分散年代 は,三豊層群堆積後から上位段丘堆積後,つま り更新世初期から中期以降,沖積世までと考え られた。 文 献 日浦 勇.1968カンアオイの分布3“Natur・e Study14掴:144−147 1978蝶のきた道.蒼樹書房,東京. −+ .1979地表性分化塾生物の現在の地 理的分布から推定したウルム氷期日本列島の 環境区分.科研費総研A(ウルム氷期以降の 生物地理)昭和54年度報告書:67−75 久米 修.1984.香川県におけるカンアオイ類 の分布について.香川生物 ㈹:1−5 前川文夫.1953植物における変異と地史の関 連について.民主主義科学者協会生物部会 (編),生物の変異性:35−47,岩波書店 −− .1964.地史と種の分化.自然科学と

博物館 31(1・2):2−15

野間泰二.1969五.万分の−・表層地質囲(丸亀). 経済企画庁. 斉藤 突.1954.屋島礫層の時代について.地

質学雑誌(短報)60(704):212

−−−

.1972.五万分の一・表層地質図(観音 寺).香川県. .1973‖十万分の−・香川県表層地質因. 経済企画庁総合開発局. 1980,四国地方の地質と地すべり, 山くずれおよび地殻変動について.20年のあ ゆみ(支部創立20周年記念出版):9−48, 土質工学会四国支部. 1984香川の地質.昭和59年度特別 技術講習会資料:1−46,四国地質調査業協 会. い坂東祐司.1960四国内帯の鮮新・ 洪積層について.東北大学理科報告(特別号)

4:576−582

・・古市光信.1973.五万分 の一・表層地質図(≡本松).香川県. ・・−−−・ .1974 五万分 の−・表層地質囲(高松南部).香川県.

.1975.五万分 の−・表層地質図(高松・草壁・西大寺・寒霞 渓).香川県. +・・ 光野千春・坂東祐司・古市光信. 1976.五万分の一・表層地質園(玉野)・香川 県・岡山県. ・中川衰三・岩崎正夫・須鎗和己. ー21−

(6)

1972五万分の一L表層地質図(池田).徳島 植物と自然 6(6):13−23 県・香川県. 須鎗和巳・中川東三・岩崎正夫・・斉藤 実. 清 邦彦.1972 南部フォッサいマグナ西縁に 1977.五.万分の−・表層地質図(脇町).徳島 おけるカンアオイ属月壱≠eγ0£γOpαの分布1 県。香川県.

1)現住所(Present address):(〒76ト41)小豆郡土庄町渕崎字植松甲2079q5 香川県東

部林業事務所小豆支所(ぶ九討0βγα花¢ん,∬αgα卿αPγ(形C≠旬αgβαβfβ和典γββ£叩q〝ど¢β, roヶ♭08ん∂■−¢如,ぶ鬼石一之≠−ダ祉彿76卜41,Jαpα耽) −22−

参照

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