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成立当初の「費用・収益対応」の概念-香川大学学術情報リポジトリ

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成立当初の「費用。収益対応」の概念

田 中 嘉 穂 Ⅰ,.はじめに,ⅠⅠ〃「会計の基礎に.ある利益概念」について,III.「会計 原則要監」について,ⅠⅤ、.「会計上の利益概念」について,Ⅴり「会計原 則試案の改訂のための諸提案」について,ⅤⅠい「会社会計基準序説」に っいて,ⅤⅠⅠ.「会社財務諸表会計原則」について,ⅤⅠⅠⅠ.むすび−一成 立当初の「対応」概念。 Ⅰ. はじめに 費用・収益の関連が正しい期間損益計算においてどのようにあるべきか,あ らためてそのような問題が意識されるようになったのはそれはど旧くはない。 費用・収益の対応の考え方が会計の中心的な課題であると自覚され,それとと もに期間費用と期間収益の関連がどうあるべきかが問われ,「対応」という術 語が成立したのは,われわれの知る限りではおそ・らく1940年前後のことであろ うと思われる。そこでは利益の意義軋ついての一・断面が問われて∵いるというこ とができるであろう。 しかしこのような問題認識は突然に生じたものでは.なく,当時すでに−・般化 していた費用と収益の好ましい関連についての一・般的な概念,あるいは費用と 収益との間に横たわるばくぜんとしているが慣行化した考え方が,長い間準備 されていたものと思われる。当時の文献においても次のような短い言葉を散見 することができる。たとえば,「発生する正しい原価は,通常資産が稼得する のに貢献して−いる収益の原価であると理解するのが適切であろう‥−‥…。1)」と か,あるいは,「……・費用は,収益の産出の際に・発生せしめられたその収益に 課せられるべきである……。2)」といった表現である。そこでは費用と収益の閑

1)George R..Husband,“Accounting Postulates:AnAnalysisof the Tentative Statement of Accounting Principles”,the Accounting Review,Vol.12,No.4, Dec.1937,p.389

2)VictorH.Stempf,“A Critique of the Tentative Statement of Accountinq PrirlCiplesけ,the Accounting Review,Vol.8,No.1,Mar.1938,p.60,

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香川大学経済学部 研究年報14 J97・f ーβ2− 遵についての基礎的な考え方が述べられているのであるが,費用・収益の関連 紅ついて改めで会計におけるその在り方が検討されるためには,会計全体につ いての再考を待たざるを得なかった。費用・収益の対応概念の起源は,たとえ ばBeamsに.よれば企業実体の理論が成立したと.とにもとめられる。それにつ いて彼ほ次のように述べている。「『対応』(りmatching’,)という用語ほ㌧用いら れなかったけれども,‥…川対応概念のいくつかの成分ほ企業実体の理論にまで 形跡をたどるこ.とができる。$)」「対応の概念への実体理論の貢献は,会計責任 の中心が,所有主から所有主の利益とほ完全紅分離して1、る会計実体へ移った 時に,必要な諸概念や諸定義の変更がなされたことに由来して.いる。4)」しかし 後に展開されるGilmanの著書紅よると,概念的軋は蟄用・収益対応の概念は 会封期間のコンペン1/ヨンの導入に起源がもとめられている。 拙論は,対応の考え方のそのような起源を探求する考証学的な考察庭相応し いものではなく,むしろ1940年前後のいくつかの米国の文献により,対応概念 の会計における全体的な位置づけが意識され始めた当時の−・時代的な考え方の 特色をいくつか観察することを試みた。こ.のような検討紅より,後紅盾接原価 計算論者から提唱される「固定費の期間的対応」の主張が財務会計の立場から どう受け取められるべきかの論争に.一つの素材を提供したいと考えた。 ここで取上げた文献は,年代順軋A.C.Littletonの「会計の基礎にある利

益概念5)」,ThomasHenrySanders,HenryRandHatfield,Underhi11Moore

紅,よる「会計原則憂思6)」,Stephen Gilmanの「会計上の利益概念7)」,ふた たびLittletonの「会計原則試案の改訂のための諸提案8)」,W.A.Paton,

3)Floyed Alan Beams,“Critical Examination of fhe Matching Conceptin

Accountancy”,1968,p.10 4)Ibid.,pp.10∼11 5)A.C.Littleton,“ConceptsofIncomeUnderlyingAccounting”,theAccounting Review,Vol..12,Noい1,MaI\1937 6)Thomas HenrySanders,HenryRandHatfield,UnderhillMoore,“AStatement Of Accounting Principles”,1938.

7)StephenGilman,“Accounting Conceptsof Profit”,1939.片野−・郎監閲,久野

光朗訳,「ギルマン会計学(上・中・下)」,昭和40年,昭和42年,昭和47年。

8)A.C.Littleton,“Suggestionsforthe

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成立当初の「費用・収益対応」の概念 ー∂β−

A.C.Littletonの「会社会計基準序説97J,A.A.A.の1941年報告書である

「会社財務諸表会計原則10)」である。もちろん,これらほ.費用・収益の対応紅 関する1940年頃の文献の完全なり、ストを目指したものではなく,もしそのよう なリストがあるとすれば含まれるであろう主要な文献を任意に.取上げたものに. 過ぎない。 しかしこれらの文献に.は明らか紅−\連の傾向がある。つまり「−・般に認めら れる会計原則」を明文化して,そのリストを作成することが当時の会討の主要 な関心事であり,上記の文献ほいずれもそのような時代的関心への表明を惜し まないものであった。 当時の−・般的状況について,Haskins&Se11s Foundation,Inc.は次のよ うに.述べている。「現今の会討実務は,その大部分ほ評判のよい会計士の倫理 綱領(ethics)や意見紅もとづいており,いくぶんほ様々の法律の会計に関す る規定に.もとづくものであるが,同じ程評判のいい実務家(pactitioners)同 志に.もしばしば広範な意見の相違が存在している。意見の統一・的なまとまりを 得たものはないし,また意見の専門的な相違の最終的な判決をするための公式 の法廷も存在していない。11りかくして一斉に.おいて会計士,各種の法令,その 監督機関相互の対立や矛眉があったにもかかわらず,他方では成文化されてい なぐてこも,「認められる会討原則」という用語が使用され,一・般に認められる 会計原則の集成がどこかに.あることが経験上信じられていた。「『会計原則』 (“accountingprinciples”)またほ.『会討の原則』(“principlesofaccounting”) なる用語ほ長い間流布していた。実業界に.おけるそ・れの使用ほ最近二とみに増加 した。1933年以来12),株主紅向けて会社の報告書の中で公表される監査人の証 書ほいよいよその大多数がその用語を使用していた。またその用語は法令やそ の他の政府の規制軋も見られる。会計原則の要覧(statement)に,対する要請

9)WいA・Paton,AいCりLittleton,“AnIutroduction to Corporate Accpunting

Satandards”,1940.,中島省吾訳,「会社会計基準序説」,昭和28年。

10)ALA.A.,,“AccountingPrinciples UnderlyingCorporate FinancialStatemerltS”,

the AccountingReview,Vol。16,No.2,June1941.中島省吾訳編,「増訂A.A.A.,

会計原則」,昭和44年。

11)Thomas Henry SandeI.S and others,Op.Cit.,p.Xii. 12)この年にアメリカでほ連邦有価証券法が施行された。

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J974 香川大学経済学部 研究年報14 −β4− が目立つようになったのである。18).」そのような会計原則の確認に・より,会計や 教育の分野での複雑な問題の解決,各種法令の合理化公衆への利益が期待さ れたのである。そのため1930年代には,いくつかの個人や団体によって一会計原 則の諸項目が提案された14)。 このように多くの議論が,「認められる会計原則」に・向けられた当時の状況 紅照して,上述のここで取上げられる諸文献ほ.,学説史的に見て互いに・無関連 のものとして扱われるべきではなく,むしろ関連しあっていたと言ってもあや まりでほなかろう。拙論は,そのようなものと理解して,それらの文献から費 用・収益の対応概念成立当初の特色をいくつか探求することを意図したもので ある。 ⅠⅠ.「会計の基礎に.ある利益概念」に“ついて 1.Littletonの展開 こ.の論文15)で,Littletonは,,会計上の利益がおかれる企業の経済的基盤を 強調している。企業の経済的機能は,本来−・定の産出を供給するため紅必要な 投入活動を計画的・意図的に行なうことであるとする。企業家はそのような活 動を持嘩させるためにそ・の活動の成否を日々判断し,決定していかなければな らない。そのような活動を判定する手掛りとして,投入と産出の関係を把握する 中間利益の概念が必要であり,会計ほそのような利益の完全な概念的説明が準 備されるか否かにかかわらず,企業活動を補助するものとして利益の数患化を 実践してきたのである。それは当初から一個して明白な概念をもつものではな いけれども,長い間の会計の健全な批判と改善に.より次第に発生主義会計に固 有な利益概念を構成するように.なってきたと考えるのである。

13)Thomas Henry Sanders and others,Op.Citu,pいⅩVい

14)StephenGilman,OpいCit.,pp…196∼7,片野一郎監閲,久野光朗訳,前掲書,244 ∼5k・−ジは,会計原則の公表された業結を列挙している,1930年代の個人,委員会, 団体の業績を,パA Statementof AccountingPrinciples〃を含めて14点リストして いる。

15)別稿(拙稿,「初期の費用・収益対応の概念」,香川大学経済学部研究年報11,昭和 47年)でもこの論文に触れたこともあるが,ここでの展開の意図に必ずしも相応しく ないので再論を試みた。

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成立当初の「費用・収益対応」の概念 ーβざ − かくして会計上の利益は,投入と産出,それを共通の分母である貨幣価額で 表わした費用と収益とを,企業活動における統制可能な因果関係を表わすもの として結合する,つまり費用と収益の企業活動紅‥おける意図的な関連を正しく 反映するものとして表示しなければならないとするのである。基本的にほその ような関連づけとして利益は叫層改善されるであろうとするのである。 したがってLittletonの論述は,費用・収益の具体的な対応の手続そ・のもの を論ずるというよりは,費用と収益の概念的な基盤を論ずるものであり,対応 概念の根源的な発想の由来紅触れるものであるといえよう。拙論ではそのよう なものとしてLittletonの論文を参照することとしたい。16) 2.利益の重要性 会計の文献では,1930年代までほ損益計算書よりは貸借対照表がより注目さ れてきたと叫・般紅理解されている。それ把は二つの事情があるという。まず帝 一・に.,「企業の負債支払能力についての最も得やすい証拠が映し出されていると いう理由で,多くの文献を生み出した監査実務ほ,薄記が会計といわれるまで 紅.拡張されで以来,貸借対照表,つまり資本計算書(capitalstatement)に専 心してきたのである。17)」さら把「第二の状況ほ.,この100年間の企業の発展は, 資本計算書を含めた相当藍の訴訟問題,通常その問題は配当のため私利用可能 な利益に関連するものであるが,そのような訴訟問題を携行したという点であ る。一・般的にノは法廷の判決は配当を未分配利益(undivided profit)に制限し たけれども,初期の訴訟事件の判決が行なわれた英国払おける「末分配利益」 ほ,資産の負債プラス資本金超過額を表わす貸借対照表項目に.より立証された ものであって,そのようなものとしての利益計算書の結果に.よるものでほなか った。18り 未分配利益ほ,貸借対照表の残高項目として計辞しても,当該会計 期間の純利益分だけ増加した未分配利益の累積額として計辞しても,大抵の利 害関係者にとっては重要な数値は同じものになると思われるから,期間利益の 研究ほ監査や法廷でほ特に重要な役割を果さなかったのである。そこでほ主と 16)Littletonの論文でほ節に分けられていないが,解釈の必要上ここでほ意識的に.分節 して論述した。

17)A.C.Littleton,“ConceptsofIncome Uuderlying Accounting”,Op.Cit.,pp 13←5

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香川大学経済学部 研究年報14 J974 ー叫g6・− して−貸借対照表的観点が強調されていたものと思われる。 しかしLittletonは,簿記において収益と費用のための名目勘定が追加され てから500年来の会計発達史をより注意深く観察すると,−・賞して利益は会計 の主要な考慮すべき事柄であったこ.と,しかもそのような利益の優位性は当時 のA.Ⅰ.A.によってあらためて強調されるにいたったことを指摘している。 A.Ⅰ.A.の主張によって,(1)剰余金の,資本剰余金と利益剰余金への分割 19),(2)会社報告のための諸基準に.関するエコ.−ヨ−・ク証券取引所(TbeNeⅥ7 York Stock Exchange)との共同作業による,利益の第一・義的な重要性の表

明,20)(3)公表財務諸表が「認められる会計原則」に.従って作成されて−いる かどうかを監査すべきことの表明21)がなされ,これらは一召して,資産・負債 の報告の改善というよりほ,正しい費用・収益の重要性をあらためて認識する ものであるとしている。22) しかしより基本的な事柄は,簿記が費用・収益の勘定を導入するようになっ てから何世紀に.もわたって利益の体系的な記録を工夫してきたことに.ついての 認識である。 一面においては,『会計士は,利益の思考紅ついての完全な原理的体系を持 っていない。2さ)』といわれ,その批判ほ適格であるとしている。企業家や会計士 は利益の理論を表明せずに.,なぜ利ざやのようなものが存在するかの説明を経 済学者に.ゆだね,有限責任会社の債権者を保護するために.配当を制限すること についての考慮は法律家にまかせてきた。「しかし,企業家,および伝統の範 囲内で仕事をする簿記担当者ほ,たとえ利益の理論に.ついて書くことほ偲とん どなかったとしても,長い間利益の理論を現実の生活に.実行してきたのである 19)“YearBook〃,AmericanInstitute of Accountants,1930,p.173.

20)SpecialCommitteeonCooperationwith StockExchangeofAmericanInstitde

Of Accountants,“Audits of Corporate Accounts〃,AmericanInstitute of Accountants,1934,p.6,p..10.

21)“Examinationof FinancialStatements byIndependent Public AccountantS”, AmericanInstituteof Accountants,1936,p.、41.

22)A“CいLittleton,“ConceptsofIncome Underlying Accounting〃,Op・.Cit.,pp

13∼5.

23)JohnB.Canning,“The Economicsof AccountanCy〃,1929,p.160からの引用 である。

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成立当初の「費用・収益対応」の概念 −β7 −

(have beeingli’ving a theory of profit)。彼等ほ経済学老や法律家とほ異 なり,利益を数量化することを日々行なっており,決定を行なう前紅最終的な 清算の成果を待つことができないから,そ・のようにせざるを得ないのである。 企業家は,あらかじめその行動を合理化するために,′多くの時間を費やさず紅 とにもかくにも利益に.関して行動することを回避することができないのであ る。24)」ともかく勘定を記入する技術として−の会計は,「企業についての多くの 認められた慣行(accepted customs)へ1−・定の数盟的表現を与・える手段25)」で あったとするのである。しかしそのことほ会計には明白な利益概念が永久に.存 在しないことを意味するのでほない。会封士は,その利益慣行について,長年 紅わたり健全な原則(sound princible)′に照して一その合理性を批判し,漸次的 に.でほあるけれども,発生主義会計制度といわれるまでに.複式簿記が拡大し, 改善されてくるとともに,簿記に周有の利益概念が形作られてきたと著者ほ考 えるのである。 かくして企業家の差迫った決定の必要性紅応え,それを支えるものとしで生 れた中間利益の会計とそれを実行する会計士ほ,「……企業活動を補足するも のである(supplementarY)。たとえそのサ岬ビスが投資家,債権者,租税徴収 者紅有益であるとしても,そのようなサービスほ信板できる記録紅.とっては第 二次的であり,たとえ後の解釈のための出発点にすぎないとしても,正しい記 録がまず第一・義的である。 簿記は何といってもまず生産単位としての経済的事業(economicenter− prise)のための記録の方法である。しかも会計は勘定記録の拡張され改善され たものに.外ならないから,たとえ企米家のみならず会計士でさえもそれが法律 である限り国の法律に.従う必要があるとしても,会計の最も有益な思考の真の 基盤は法律的というよりは経済的であると結論づけざるを得ない。2の」 Littletonは,このように.企業の経済的活動に.基盤をおく発生主義会計制度 に周有な利益概念を描写しようとするのである。 3.企業の機能と経済的利益

24)A.C.Littleton,uConcepts ofIncome UnderlyingAccounting〃,Op.Citu,p.16. 25)Ibid.

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香川大学経済学部 研究年報14 ヱ974 †−8鳩・−・・ 企業ほ′,法律的な機関というよりほ.,より基本的軋は,経済的単位であり, 「雇客年受け才れられるほ.ずの産出物を生産する本来的な経済的活動27).」を実 施するものである。そのような活動の性格ほ次のようであるという。つまり 「企業紅おける産出物の出現ほ,投資による単なる投機的冒険あるいは幸運な 陰徳の施しの結果でほない。しかも利益は他人へ現在移転した所覇権から生ず る利得の偶然的な実現より以上のものである。28)」 そのような企業の活動をより蕨極的紅規定すると次のようにいうことができ るであろう。「選択された投入要素の組立や結合紅.より,企業の最終的な産出 物の単位が構成される。おそらくその加工の過程(血anipulative process)は 前には個別的であった要素の効用(utilities)の単なる総計以上の新しい効用 を追加するであろう。29)」実際にどの位い効用が追加されるかほ,−・定の価格で の最終生産物を市場が受入れる程度,およびその生産物を生産するのに必要な 犠牲を表わすと見られる個別の投入要素の原価額との比較で測定される。それ は,産出効用(output−utilities)(収益)と投入要素の効用(原価)との比較 であるといえる。この場合価格を支配できるはどの独占的状態が存在すれば, と.のような比較が必ずしも純粋K.「生産者の追加する効用(producer−added utility)30)」を測定しないが,価格支配がなければ,どの生産物紅も等しく作用 する「『自然な』稀少性要因叫」(“natural”scarcity factors)の効果に.より, 追加効用を測定することができる。 効用の測定の問題はともかく,要するに企業ほ自身の生産活動紅より追加効 用を得るぺく意図的・計画的な活動を行なうものであるという。との観点から は.投入と産出は企業活動に.おいて次のよう紅規定されることとなる。「かくて

企業家の観点紅よれば,産出(摘材融)は明瞭紅計画された仕事の結果,ある

いは産出を創出する意図で行なわれた以前の用役投入(∫β㌢・涙’cβ−わ多少〝わ の籍果 であり,また貨幣流入(沼0兜β.γ一古形CO刑β)は計画された仕事から流入する稼得,

あるいほ流入(income)を発年さ降る意図で行なわれる以前の貨幣流出

27)Ibid. 28)Ibid.,pp.16∼7 29)Ibid.,p.17。 30)Ibid. 31)Ibid

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成立当初の「費用・収益対応」の概念 −β9−】 (椚〃乃♂.γ−0〟才Jα.γ)の結果であるといえよう。 企業家の観点,したがってまた会計理論の観点からほ,この学説紅.対する重 点ほ.『意図』(“intent”)という言葉紅ある。用役投入およびそれに対する貨幣 の対価である支出は,それ以後の用役産出およびそれに対する貨幣の対価であ る収益とある関係を設定する明白な意図をもって開始されるのである。つまり 投入は企業の経済的状況にある結果を産出する目的をもっているのである。32)」 原価や収益がそれぞれ単なる貨幣支出または債務の負担,あるいは.貨幣収入ま たは受取資産の受理以上のものである所以である。 かくして投入と産出,またほ原価と収益とは.,企業の計画的な経済的活動匿お いて意図的に.設定された関連として相互に意義づけられるとされる。したがっ て経済的状況ほそ・のような二つの関係によって表わせるのである。「・−・定の価 格での雇客によ る用役産出の受入れ38)」と「・一・定の原価による雇客のための用 役産出の準備34)」との結合に.より純利益が説明される。 かくて,経済的状況ほ二つの関係により表わせるのほ上述の通りであるが, 利益に対する働きは必ずしも同等でほなく,「原価支出ほ,収益よりも企業の 決定や選択にはるかに.左右されやすい……85)」という。それは「‥…原価ほ特 定の意図で行なわれた『凝結した』(“solidified”)経営者の選択を表わす・・り36)J と考えられるからである。 もしそうだとすれば,「…・その関係は収益よりも原価の影響でより容易に 変化しやすい,つまり利益はイ凱、原価に付随しやすいものであり,損失は高い 原価に潜びつきやすい。もし『A』が限界生産者であるとすると,市場の支払 おうとする価格との関連で彼の原価が高いからそうなっているのであノり,もし 『B』が同じ市場の同じ製品で利益をあげているなら,市場価格との関連で彼の 原価を低ぐすることができたからそうなっているのである。37)」かくて利益を手 掛りとする経済的状況ほ.,積極的紅コントロ−ルされる原価とむしろ受動的紅 b b b b b b : : T⊥ Ⅰ Ⅰ : ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 2 3 4 5 6 7 3 3 3 3 3 3 d d d id.,pり18. d d

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仙・9〃− 香川大学経済学部 研究年報14 J97尋 受け入れられる収益との関連であらわされるという。 4.費用・収益の因果的関連 ところで原価と収益は,計画的な企業活動に.おいて関連の、あるものとして意 義づけられるのであるが,その関連鴫より具体的紅はどのようなものとして存 在するのであろうか。 Littleton_m:,両者の関連を原因と結果による結びつきであるとするが,・一般 紅.「結果というものは,特定の諸原因からというよりは,むしろ先行する諸状 況の複合体から出現すると考えられるから,今日のような\科学の時代紅ほ慎重 に.『原因と結果』を語るぺきであるのほ当然である。しかし稼得した純利益の 出現に.先行する複雑な状況を熟考し,少くともある距離をおいて紛糾した事態 を観察しようとしないことは困難である。38)」という。そこでLittletonほ原価 と収益との間にある因果関係の例を示している。 たとえば原価と収益は,雇客の需要粧働きかけるものとして因果関係に.おか れている。収益の背後に」は需要があり,その一つの原因として−雇客の欲望があ る。その欲望は企業の費用の影響の全くおよばないというものでほなく,旧製 品の改良,新製品開発,カのこもった広告,すぐれた設計,願力的な品質等の ための費用は,明らかに儲要に.影響を与える意図で決定されたものである。お そらくそれまで満たされなかった欲望を開拓するであろう。「この意味で,個 別の売手の原価でさえも,その売手の産出物の最終的な受け入れ,したがって 収益の流入をもたらすことができるのである。もし支出が特定の用役紅対する 需要を『引起す』(‘‘cause”)なら,それは提供された用役から流入する収益と 因果的な関連があると考えることができよう。39)」 また需要の原因としてほ雇客の購買力がある。売手の党用ほおそらく雇客の 支払能力に.影響することができるであろう。賢明な支出紅.よる低簾な原価とそ の結果価格を低ぐすることができれば,雇客の購買力に盾接紅働きかけるこ.と ができる。「その意味でも,企業の費用ほ.需要を『引起す』ことができ,製品 を受け入れさせうる。40)」 d d d ●l ●l ■l b b b l T⊥ Ⅰ ヽ−′ ︶ ヽ■.. 8 9 0 3 3.4

(11)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 −− 5り −・ しかしこれらの需要に対する働きかけのみでは,利益の機会が提供されるに

すぎず,それが必ずしも利益を生むというわけではない。「……

利益の実現 は,かなりの程度まで,原価をどの程度巧みに収益以下に.抑えておくことができ たかに依存している。41)」原価も部分的に.ほ,供給市場の状態に.左右されるが, 原価ほ,「その大きな部分は,前に示唆したように,生産者の選択や資質によ るのである。すぐれた購入,作業者の高能率,発明カのような諸要煮やその他 の要素のための費用は,それが明白な見通し溜周明な意図でなされるのなら,計 画通りの成果,つまり相応する収益よりも低い原価をもたらすことになる。42)」 しかもいかなる経営政策も原価支出によって有効なものとなるから,コントロ −ル可能な原価軋対して働きかける企業満動がより孟祝されるのであるとい う。 多くが企業家のコントロ−ル下に儲かれる原価にほ,意図的な企業活動紅含 まれる因果関係がより明瞭に現われるという。原価と収益のうちでも,「・・・l・…原 価は,直接に経営者のコントロ−ル下に置かれ,因果的要素(causalfactoI−s) をより多く表明しているから,企業常とってより有益である。かくして原価は 企業活動の致命的に.重要な側面であるといえるまで紅.認められるから,そ・の大 きな重要性ほ会計紅引継がれるのである。43)」 つまり,「企業の原価は原価計算という特殊領域を形作り,原価が因果的要 素を表わすものとして最も明白な概念の見られるのは原価計算にトおいてこであ る。44)」たとえば遊休設備に.関連する間接費を,次期以降紅繰延べたり,当期の 生産盈紅.分散させること把原価会計士が反対しているのほ,因果関係が原価計 算の基礎になっていることを示すものであるという。 かくして企業家の観点を補助するものとしての会計上の利益は.,法律や判決 に見られる概念よりも,経済学の概念に㌧近いと思わせられる。会計が費用と収 益をそれぞれ投入と産出を表わすものとして経びつけようとするならば,それ は,会計上の利益が企業の経済的状況の手掛りとして用いられるこ.とを示すも のであるといえよう。そこで会計の主巽な課嘩は㌍のように小うこ・とができ皐 9 1 p = , ■ l d d d d ・l ●l ,l ◆l b b b b : I T⊥ : ︶ ︶ ︶ ︶. 1 2 3 4 4 4 4.4て

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香川大学経済学部 研究年報14 − 92 − J97・J う。つまり「それほ,(1)様々な原因の結果を区別するのに.有益であるよう な分析的形式で収益流入の明細を記録すること,(2)様々な結果に.ついての 諸原因を区別するの紅役立つような分析的形式で費用流出の明細を記録するこ と,(3)知られた結果とその原因要素との結合関係を非常に忠実に反映する ような技法で分析的な明細を整理すること,である。45)」 そこで,企業家の観点を補助するものとしての会計ほ.,その役割を一層緊密 に達成するためには次のような点を改善するのが望ましいという。 5.会計上の利益紅ついての若干の提案 発生主義会計ほ,利益を計算するため紅,「幾組もの個別価格を比較すると いう方法というよりほ.むしろ二つの価格の流れ(price−StreamS)によって産 出された純成果を算定するという方法46)」が用いられる。その流れとほ.提供さ れた用役の流出と受取られた用役の流入であり,収益と費用はそれを「共通の 分母を得るための実際上の便宜47)」として−貨幣価格で表わしたものにすぎず, 基本的に「二つの物的な流れ48)」の比較が行なわれるのである。 このような二つの流れによる水準の変化を見るの紅は,異なる時点で直接水 準の変動を見る静的な見方と,流れの強弱そのものを見る動的な見方がある が,「企業は動的な(dynamic)ものであるから,会計は.本来動的とならざる を得ないのである。49)」という。 そこで発生主義会計が期間利益を算定するためにほ.,「原価と同じく期間に 配分された収益に.対して原価が対応される(meet)ぺき期間へ,原価支出を 配分させるプロセス50)」が必要になる。発生主義会計の重要な部分である,「費 用(expense)と支払(disbursement),また収益(income)と受取(receit) との区別51)」,および「資産と費用との注意深い分離52〉」はこのプロセスを構 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 5 6 7 00 9 0 1 2 4 4 4 4 4 5 5 与 Ibid.,p.20. d d d d d d一也 ●l ︳l ︳l ●l ■l ●l ●l b b b b b b b ▼l l l T▲ : : l

(13)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 −9β−一 成するものである。そこでの費用と収笹とが会計紅おいてはどのように鷹合さ れており,またどのよう紅結合されるぺきかをLittletonは次のように.述べ る。「便益(benefit)が痍与され,実現の達成される期間に依存する発生額 (accruals)は,,完全な事実を示すのにほ十分でないかもしれない。会計にお いては,収益の出現と費用の負担は,とも紅所属する要素を結集する(bIing together the elements which belong together)ために強調されるのである。

しかし何が『所属すること』への手掛りになるのであろうか。期間原価と連結 した期間収益ほ,望ましいはど緊密な原因と糖果の結合紅なっているであろう か。 発生主義会計の趣旨ほ,関連のある原価と収益を結合することであり,それ らを同一の会計期間に配分することが現在の認められた方法である。しかし応 々紅して−,原価がそれを産出することを促した収益と一層直接的紅連結するた めのより明確な手段がないという理由だけで,この結合のために.期間(time− peIiods)が利用されているという印象がもたれている。53)」つまり,会計にお ける費用と収益の結合は,少なくともそれぞれの期間への帰属ほ避けがたいが, 単なる期間への帰属以上に,本来ともに結合すべくして関連づけられたものと すべきであって−,当時の実務を,一層「■関連のある原価と収益」の対応をめぎ して改善すべきであるという。・そこで次のような提案が行なわれる。 発生主義会計の歪要な要素である,収益と受取とを区別する考え.方を一層洗 練されたものとするためには,ト…u源泉別に収益をよりよく区分する…‥叫」 ことが必要である。というのほ収益の「……源泉が原因の手掛りを提供するか らである。55)」すなわち,収益の実現の規則に加えて,「生産された稼得収益

(earnedincome produced)と受理された派生的利益(derivedprIOfit r・eCe−

ived)とを区別すると.とは最も認められやすい改善策であろう。56)」 この二つの区別は次のように行なわれる。「企業の特定の経済的機能を遂行 するこ.とで当期に原価が発生したために,ノ合理的に・生じたと考えられる収益を 53)王bid.. 54)Ibid. 55)Ibid. 卵)Ibid,

(14)

香川大学経済学路 研究年報14 ー 94 − ∫9 74 会社が産出する57)」場合,収益を稼得したというこ.とができ,「財産の譲渡, 負債または資本構造の修正,あるいは企業の特定の経済的機能の直接の遂行と は関係のない他の諸活動に.よってのみ会社ほ派生的利益を得る58)」と考えるこ とができるであろう。こ.こでは経済的機能の遂行に関わる収益とそれとほ関わ りのない単なる受取との区別が強調されるのである。 かくて,「この二つの実現利得が経営技能や活動に∴おいて示す徴候ほ明らか に異なるから,何よりもまず別個紅報告されるべきである。59)」そして稼得収益 のみが利益剰余金にかかわり,利益剰余金ほ未分配稼得利益のみを反映すべき であるという80)。 また資産と費用を区別する原則も,費用と損失,および種類の異なる損失の 注意深い区別によっで一・層改善されるという。 会計では.期間への原価配分が行なわれ,原始原価ほ,資産になるか費用にな るか損失紅なるかであるが,現在の実務では特定の項目の処理について−の手掛 りほ「それの期間に対する関係61)」(its relation to a time period)であるよ うに思われる。しかし,「その手掛りが特定の原価原因とそれに相応する収益 源泉との関係であれば,−・層好ましいものとなるであろう。したがって原始支 出原価は,それが将来の収益源泉と因果的に関係すると合理的に考えられる場 合にのみ,繰延原価(defferredcosts)とすべきであり,それが当期の収益源 泉と因果的に関係すると合理的に.考えられる場合にのみ,償却原価(amoI・tト Zd costs)とすべきであり,またそれがいかなる収益の産出とも決して因果関 係がありえないと合理的に考えられる場合にのみ,廃棄原価(abandonedcosts) と奉るべきである。62)」と提案する。かくして費用と収益の間にもしこのよう な因果関係が設定されれば,「…等しい期間への原価と収益の配分は,純利 益の計算の支配的な特徴というよりほ副次的なものとなるであろう。8a)」とい 57)Ibid. 58)Ibid.,pp.20∼21 59)Ibid.,p..21. 60)おそらく当期業績主義の損益計辞眉が考えられているものと思われる。 61)A・C・Littleton,“ConceptsofInc叩eUnd寧rlyinqAccounting”,Op†Cit・!p,?1・ 62)Ibid. 63)Ibid,

(15)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 −9∂− う。 しかしこのような区別だけでほ.営業上の損失とそれ以外の損失との区別が十 分に明らかでないから,損失には次のような区別が追加されるべきであるとい う。「設備の廃棄項目はある種の損失を表わしており,それとは.別種のきわめ て明瞭な損失として,収益に対して当期紅償却されなければならない原価を補 償するための当期収益の不鱒がある○後者の損失ほ,明らかに企業の特定の経 済的機能の遂行と関連があり,提供された経済的用役の市場における忌避,あ るいは市場の与える需要価格以下に供給原価を抑えておくことの失敗を意味し ている。他方,当期またはそれ以降の稼得利益の出現に貢献しない廃棄ま■たほ 処分殉れる原価は,資本政策すなわちその特定の支出から生来する産出物で市 場に侵入しようとする以外の決定の経営者による変更を意味している。 このように区別がなされると,『稼得純損失』(“earned netloss”)(『稼得純 利益』(=earned ne土income”)に匹敵する)といいうるものと,『派生的損失』 (“derivedloss”)(『派生的利益』(“derivedpr’Ofit”)に匹敵する)といいうる ものとが存在するであろう。64)」稼得損失ほ理論的にほ利益剰余金に含まれる べきものであるという。それに対して派生的損失は,引当剰余金(resevred Surplus)に含まれるであろうという。 6.Littletonの所説 上述のようなLittletonの所説の要点ほ次のように要約することができるで あろう。 (1)もともと会計ほ,名目勘定の導入以来,企業の経済的機能の遂行を補 助するものとして発展してきたことが基本であり,投資家・債権者・徴税担当 者などのための役割は第二次的であると考えられる。企業家が企業の経済的活 動を持続するためにほ.,そのための投入と産出または費用と収益の動的な関連 が第一・の関心事となるから,そのような企業家の観点を補助するものとしての 会計は,より妥当と思われる利益の計算に従事して−きたのである。したがって 利益ほ,長年一・貰して会計上の課題であり,また会計の基盤は経済的なもので あって,本来的にほ法律的ではないとされる。つまり会計上の利益は,企罪の 64)Ibid.,pp.21∼2, だ

(16)

−・96 − 香川大学経済学部 研究年報14 Jタ74 経済的な機能の遂行を本来的な発想の基盤に.するという。 (2)企業の経済的な活動把おいて投入と産出ほもともと別個のものではな くて,企業活動の本来的な特色は,投入と産出とのより好ましい関連の樹立を 意図した合理的活動であるという点である。単なる投機的な活動であるとは見 られないのである。したがって,企業の経済的状況についての判断の手掛りほ 投入と産出との結合関係にもとめられるとするのである。 会計上の費用と収益ほ,このような投入と産出の基礎的概念に支持された適 用の形態であり,投入用役と産出用役とを共通の貨幣尺度で測定したものに他 ならない。 (3) したがって,会計に.おける費用と収益ほ,企業の経済活動における投 入と産出の因果関係を反映させるものとして,直接的な結合関係におかれるべ きであって二,そのこ.とにより会計上の利益は企業家の観点を補助しうLるのであ る。今日の発生主義会計の認められる方法は,費用と収益の単なる期間帰属で はなくて,関連のある原価と収益とを結合させ,それらを同一・の会計期間へ配 分するこ.とである。 (4)このような費用と収益との対応関係の強調ほ,裏返せば,企業に固有 な経済的機能の遂行に関わる稼得利益またほ稼得損失と本来的な経済的機能の 遂行とほ関わりのない派生的利益または派生的損失との区別の必要性を強調す ることにもなる。後者ほ,企業の本来的な活動における意図的な結合関係をも たないものとされるのであろう。 ⅠⅠⅠ.「会計原則要蒐」について 1.概要

本番は,The Haskins&Sells Foundation,Inc.の発起により1935年に編 成された委員会による報告書である。その委員ほ,Thomas Henry Sanders

(議長),Henry Rand Hatfield,Underhi11Mooreから構成されている。こ

の報告書軋 委員会の成立後およそ2年数か月を費やして,当時必ずしも・−・般

紅同意されたものとして明文化されていなかった「一一・般紅認められる会計原 則65)」をかなり網羅的にとりまとめようとしたものである。それは,大きく分

(17)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 叫97− けて,Ⅰ.−・般原則,ⅠⅠ.損益計算書原則,ⅠⅠⅠ.貸借対照表原則,ⅠⅤ.連結財 務諸表,Ⅴ.注解および脚注より構成され,25の会計原則が巻末に要約されて いる。 その会計原則を引出すため紅,多くの会計士の見解,会計上の文献,各種の 法令や判決,会社の報告書や監査証明書などを参照して,かなり広範囲に意見 や実務の探求がなされている66)。おそらく理論的には種々の問題点を含んでい ると思われるが,当時の・一・般的見解を知るものとして本書を取上げるこ.とにい くらかの意義があるであろう。ここでは逐条的に原則の内容を検討するのでは なくて,費用・収益の対応に関連すると思われる個所を部分的紅参周するにと どめ,対応概念について与え.られた当時の関心やその程度を伺うことにした い。 2.費用・収益の関連 結論的に/いえば,本書紅は費用・収益の関連に.ついて意識的紅述べる個所ほ あまり見当たらないが,一・般紅認められている費用と収益のあるべき関係が概 説されている。 会計原則の25のリストにおいてほ,対応概念そのものに直接言及する項はな く,拡張的に解釈すればⅠⅠ.AとⅠⅠ.D,特にⅠⅠ.Dがそれにかかわるものと考 えられよう。それほ次のように規定されている。「ⅠⅠ.A損益計浄書ほ,それが 含んでいる期間の(a)あらゆる源泉からの収益,(b)あらゆる榎類の原価およ

び経費(costs and expenses),(c)純所得を表示すべきである。67)」「ⅠⅠ.D原

計原則のリストの開拓的労作ほ次のものであるという。

1.SpecialCommittee on Cooperation with Stock Exchange of American Institute of Accountants,Op.,Cit

2.AハA.Aい,“A Tentative Statement of Accounting PriJ】Ciples Affecting Corporate Reports〃,the Accounting Review,Vol.11,Noい2,June1936 3.D.L..Trouant,“FinancialAudits〃,1937

4.、Gilbert R.Byrne,“To What Extent Can the Practice of Accounting Be Reduced to Rules and Standards?〃,theJournalof Accountancy,Nov.

1937

Cf.Stephen Gilman,OpいCitり,pp..171∼2,久野光朗訳,前掲苔,214ぺ−ジ。 66)このことほ,巻頭に掲載された,委員会より財団へ出された通知文に述べられてい

る。Thomas Henry Sanders and others,Op.Cit.,pp.XV∼ⅩVi, 67)Thomas Henry Sanders andothers,Op,Cit.,p.114.

(18)

ユタ74 香川大学経済学部 研究年報14 ー−15)β・一

価および経費ほ,次のものを含まなければならない。(a)あらゆる当期の営業

費(operatingcosts),(b)当期の棚卸損失(inventorylosses)(も)その他の

流動資産に対する,当期に生ずる可能性のある損失の引当額,(d)これらの

営業過程に供されるあらゆる資本資産の減価償却(depreciation),減耗償

却(depletion),なし崩し償却(amortization)に対する適切な割当額。68)」

このような項目からだけでほ,費用・収益の範囲が示唆されるのみで,資用

・収益対応に関する具体的な見解や解釈をはとんど引出すことは出来ないが,

本文にほそれに関連する次のような展開が見られる。 売上製品原価と営業費用(costofgoodssoldand/oroper・atingexpenses)69)

の金額は,「……総売上高または総営業収益(grosssalesorgrossoperating

revenues)の決定と−署し{:いる(consistent)べきである。原則として借方

記入される原価ほ売上げられた特定の財および用役の特定の原価であるべきで

あり,実行可能なかぎりこの原則に従うべきである。売上収益の基礎となる物

的数鼻と売上原価の引算に含まれる物的数量とに重要な不・一傲があるべきでほ ない。70)」

上記の引用には明らかに.費用・収益のある好ましい関連についての論述がな

されている。そこでは(1)少くとも売上原価の決定は.,原則として売上収益

の基礎にある東上品の産出に関わる原価によるべきであるこ・と,(2)そのよ

うな原則ほ必ずしもすべて−の原価に適用できるのでほ.なく,実行可能な範囲内

で適用するにとどまらざるをえないことのこ点が明らかにされている○

またこれに関連して−,販売費。一般管理費について−は次のような論述がなさ

れている。「「般通則としてほ,販売費および一腰管理費は手持の商品の棚卸

資産原価の・一部にはならない。この通則に対する例外としては,受注して製造

される財の場合があり,その場合紅ほ仕掛品や手持の完成品は事実上すでに販

売されており,販売費の適当な割合を棚卸資産価値に含めるこ・とにほはとんど

反論しえない。 68)Ibid

69)おそらく,COSt Of goods sold ほ販売された物的な財の原価であり,Operating expensesは販売された無形の用役の原価であると使いわけられているように思われ

る。

(19)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 −99一 製造と販売の二つの機能が企業の主要な活動であるという論拠紅よって,・− 般管理費を製造と販売へ割当てるといういくつかの会社の実務は,その配分が 合理的紅行なわれていると仮定すれば,是認されるであろう。71)」販売費・一般 管理費についても,合理的に実行可能な限り,特定の売上項目と特定の原価項 目との直接的関連が樹立されるべきであるとの観点が一一一項↓ているように思わ れる。 しかし費用と収益との関連に関するこれらの展開は断片萬になされるので, 会計における全体的な関わりほ十分に把握できない。ただ,会計実務家の間で のかなり一般的な了解として,、実行可能な限り,特定の原価と特定の収益とを 対応させることが好ましいとする見解がすでに漕及していたことが伺えるであ ろう。 ⅠⅤ.「会計上の利益概念」について 1.一・般会計的対応の概念 Gilmanの主著「会計上の利益概念」に見られる対応概念ほすでに別の機会 で検討を試みており72),ここでほ,それに対する若干の補足および軍役する部 分についての結論のみを述べることとしたい。補足する点に・関しては,別の拙 論でほ,一腰会計係のいう意味での「対応」が,Gilmanでは必ずしも期間損 益計瓢でどのように意義づけられているか明白にされていないと述べたが,明 白に.されている程度ほ明らかにする必要があると思われるので,それについて の論述を補足し,いくらかでも解釈を敷節していきたい。 費用・収益の「対応」という限り,通常は費用と収益との何らかの関連の存 在を暗示している。このこ.とは,Gilmanにおいても,たとえば「はとんどす べての会計関係の著作者が,原価,経費および損失を特定の実現収益項目と対 応させる要請を認識しているけれども,そのうちの多くの人達は,実行可能な 限りにおいてのみ会計上かかる関係を樹立しなければならないと主張してい る。78)」と述べられているように,会計においてほ,できる限り特定の費用項目 71)Ibid小,p.37. 72)拙稿,「Gilmanの費用・収益対応の概念」,香川大学経済論叢,第47巻,第4・5・ 6号,昭和50年2月。 73)StephenGilman,Opn Cit.,p.125.久野光朗訳,前掲杏,159ぺL−i7。

(20)

ヱ974 香川大学経済学部 研究年報14 −∫00− と特定の収益項目との関連の追求ないしはそれの樹立が望ましいとされている ことに,うかがうことができる。また同時に,そ・れほ「実行可能な限りにおい てのみ」に留められるべきであって,ある項目が費用・収益の対応関係を樹立 できないからといって,特定期間の損益の計算から除外していヤ、ということに ほならないことも認識されている点ほ,注意すべきである。 かくて,費用・収益の対応は,特定費用項目と特定収益項目との直接的な関 連づけをめざすもめであると考えることができ,原価会計上の対応においてそ のような対応関係が具体化されるのである。それほ,主に・価値移転のコンベン ションおよびそれの実践的適用である様々な通則を一般的方針またほ基礎的概 念として基礎づけられるのである。対応が理想的に達成される場合紅ほ.,主要 な材料や直接作業のように個別的な利用またほ消費における関係が直接に把握 されるけれども,原価会計的対応ほ必ずしもすべての項目についてそのような 正確性を保証するものではない。むしろ−・般的な原価のコンペン1/ヨンや仮定 を前提とした仮定的で擬制的(artificial)な関連が設定され,iEL.確性を装わせ ることが多いとされている。そこでほ最初の原価の消費から最終的な製品項目 の売上げにいたるまで,コンベンション化した仮定にもとづく任意的関連が打 ち立てられるのである。それはたとえばそれ自体不確実な一ユ場単位の減価償 却費の製品単位への配賦,・一噂的な労働の不能率の同種製品への平均化 製造 原価の同種製品単位への平均化などにおいてそうである。にもかかわらず費用 項目と収益項目との経営活動における直接的な関連という一腰的方針が無視さ ているのではなく,「……実務上の要請,任意的な諸仮定,−・般的コンペン1ン ヨソというものがどの程度まで費用と収益の対応という理想を限定することに なるかを示している。74)」にすぎないといえよう。 しかし,このような個別的関連の設定が,何か得心のいく実務の指針を提供 するとしても,その指針があらゆる損益項目の実践的な指針として適用可能で あるというわけではない。ある年度の損益の算定に含まれる項目の中には何ら かの事情で,費用・収益の直接的関係が樹立されないと見られる項目がある。 たとえば研究・開発のための支出や各種の販売促進費は収益に対して何か良 い結果を与えるであろうとの一・般的期待はあるであろうが,期間や金額があま 74)Ibidい,pい129前掲杏.164ペ一汐。

(21)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 一武Lトー り紅も不確定で,慣行化しうるほどの確固とした聞達の手掛りや金額が得られ ない75)。役員の給与は,経営者の時間のうちいくらが将来の計画匿.当てられ, そのいくらが当期の諸問題に当てられるかにより将来の期間と当期の費用が得 られるかもしれないが,勤務時間報告書を作成することは実務上愚かなことに 思われる76)。販売費!一般管理費の多くは,時には対応関係が存在すると期待 され,それの樹立の読みがなされることがあって−も,概して製造費用よりも管 理可能性や経常性が乏しく,直接的な関連ほ納得のいくものとして樹立されて いない77)。さらにそこ.に.ほ,「不確実性な収益ならば期末損益計算書から除外す るのに射し,不確実な原価・経費・損失ならば計上する78)」という保守主義原 理が作用して,保守的会討通則が確立されていると考えることができるであろ う。また火災・水害による財産の破墟紅よる非経常的営業外損失ほどう見ても 特定の収益項目との関連づけほまず不可能であろうとされている79)。 また・過年度の損益の誤謬を修正する項目の損益計上紅は異論があるが,損益 計上される場合には,「対応」概念との関わりが生ずる80)。理論的紅は過年度 損益の修正項目ほ誤謬の確定した年度の損益項目でほ.ないから,修正損益計算 書の作成が最も理論的に正当な処理であるけれども,現実的な支持を得ること ができないであろう。過年度の損益を反映する剰余金勘定の調整によって誤謬 の修正を果すべきであるとの主張は,簿記的次元での議論なら正当であろう。 しかしより広い観点に立てば,この処理によると,一足期間の集合祝益計算書 が完全にすべての利得と損失を示すことができないこと紅なる。また誤謬の確 定の期間に修正項目を損益計上することは,対応の欠除,当該期間の収益の実 現性の欠除,期間相互間の利益の歪み等の観点から反論されている。これらの 両立し難い議論にもかかわらず,−・般紅受け入れられる実務では次のように処 理されて−いる。「大多数の会計人ほ, 計上金額が重要な場合の前期誤謬の 75)Ibid。,pp..127∼8.前掲書,162∼3ぺ−i7。 76)Ibid.,p.128小前掲宙,163ぺ−汐。 77)Ibid..,p..127り前掲雷,161ぺ−ジ。 78)Ibid.,p.130..前掲蕃,165ぺ−ジ。 79)Ibid..,p小129〃前掲書,163∼4ぺ・−ジ。 釦)過年度損益修正項目の処置についての論点は,比較的詳細に.論述されている。Cf. 1bid。,pp.135∼45.前掲杏,171∼81ぺ−ty。

(22)

香川大学経済学部 研究年報14 J974 ■−ヱ仇㌢− 修正手段として剰余金勘定の利用を考えているというのが真実である。計上金 額が重要でない場合,大多数の会計人ほこれらの項目を当期に属しているかの ごとく処理する。……したがって,1938年度損益計算書の営業区分における小 額の誤謬は,1939年度損益計算書の営業区分における相殺的誤謬によって修正 されるであろう。……同じようなやり方は,損益計算書の営業外区分に関して も採用され,かくて営業区分と営業外区分との区別は保存される。81)」かくて, たとえば過年度損益の修正項目のように.,「……たとえある照応する収益もし くは費用の項目と対応できなくても,この種の項目をある年度の損益計罫書へ 割り当てることが良いやり方と考えられる・1・…・82)」のが当時の実状または動向 であるとされている。 また根底にある論理は首肯しがたいけれども物価水準の下落による棚卸資産 の末実現評価損の損益計上は,会計実務では−・般に認識されるものである83)。 それは費用・収益の対応の理想を全く無視しているけれども,損益計上される とすれば,「対応」概念との関りを無視することができない。 これらの諸項目ほ直接的対応関係の設定が不可能であるからといって,当時 の会計では特定の期間の損益計算書から必ずしも除外されているわけではな い。Gilmanは,そのような項目についてほ−・般会計係のいう意味での対応概 念が該当するというのであろう。それは,単に「通常同一・会計期間に費用と収 益を計上すること84)」を意味するに過ぎない。それは,費用・収益の盾接的関 連を樹立することができないとしても,会計期問のコンベンションをはずして 考えれば,明らかに.資本主に対する負債の増減(この場合,資本の拠出,引き 出しは除外するものとする。)をもたらす85)から,会計期間を導入する場合に は.,いずれかの期間の損益に挿入されなければならないという要請によるもの である。それほ期間相互間への損益項目の漬接的な割り当ての問題であるとい 81)Ibid.,pP.145∼6.前掲苔,181∼2ぺ−i7。 82)Ibid.,p小146.前掲書,183ぺ一一汐。 83)Ibid。,pp.129∼30。前掲雷,164∼5ぺ−ジ。 84)Ibidい,p.127.前掲書,161ぺ▲−・汐。 85)利益は,資本主(債権者を含む。)に対する負債の増加部分であるとの見方は,基本 的コンベンションの−㌦つであるエンティティ・コンベンションに.由来するものであ る。この点は,「会計上の利益概念」の第5茸・第6葦に詳論されている。

(23)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 −ヱ0β− えよう。 しかしこのような期間配分について統一・的な指針ほ存在していないように思 われる。−・般会討でいう対応は,それ自体一つの統一・的な方針や観点を強調す るというよりは,むしろ痘接的な関連を樹立できない損益項目の損益計上の必 要性を強調するものであるということができよう。上述のように,一一・般会計に おける対応でほ.,販売費・一・般管理の処理紅関する保守的通則や実務的要請, 過年度損益の修正項目に?いてほ会計上の修正のコンベンション・修正の実践 的通則や重要性の原則の適用,その他の非経常的損益項目に関する様々な通則 等ほほとんど一項■性のないいろいろな観点が導入されており,必ずしも独自の 観点を明記するものでほ.ない。 2.Gilmanの対応概念 Gilmanの費用・収益対応の概念ほ,再び要約すると次のよう紅いうことが できるであろう。 (1)費用・収益対応の概念は,会計期間のコンベンションの導入以後発生 したもので,費用および収益の流れをある会計期間へ割り当てる要請に関わっ ている。会計上の利益概念は,コンベンション,原理,通則といえるような− 般的方針や概念およびむしろ実務と密接な仮定・判断・慣行などから構成され る・一部は体系的,一部は慣習的,実務的な会計機構であるといえるが,そ・あ一 部を構成する「対応」概念にも同じことがいえる。したがって対応の問題ほ, 単に規範的紅設定された諸概念の論理的形成物であるというよりほ,歴史的紅 形成されたコンベンションや実践的指針である通則に.より支持された歴史的・ 社会的構築物であるといえる。それらの基本的概念の成立と導入が,今日の会 計紅特性や限界を与えるとするのであるが,同時にそのことほ,対応概念が将 来の社会的変化に伴って変貌しうるものとして−歴史的に位置づけられることを 自ら認めるものであろう。 (2)会計にほ,観点の異なる二つの対応概念がある。一・つは原価会計係が 適用する対応概念であり,一つは−・般会計係のいう意味での対応概念である。 一・般に実行可能な限り,原価会封的な対応を実施すべきであると見看されてお り,そこには費用と収益の結合関係を直接の問題とする原価会計的な対応が, 会計上の対応としてほ優位にあるとする思考が潜んでいると思われる。一・般会

(24)

−一九り− 香川大学経済学部 研究年報14 J97・J 計上の対応概念は,むしろ期間損益の計算のために.原価会計的対応だけでは処 理しきれない部分を補足するものとして位置づけられているのである。いずれ にしても,会計期間のコンベンションが会計に導入される以前にほ,対応の問 題が重要なものと意儲されなかったことは確かであろう。 (3)原価会計的対応は,特定費用項目と特定収益項目との直接的閑適を目 指し,会計上そのような関連を設定するものである。それは,活動における項 目相互間の事実関係にもとづく関連を表わすことを理想とするが,現実の事象 にもとづくという意味での対応の正確さが必ずしも実現されるとほ限らない。 したがって,原価会計的対応は,−・般的な方針の総括的な適用および実務上の 要請や便宜性の影響をうけて,多くは対応の正確性を装わせた対応とならざる をえない。 (4)一般会計的対応ほ,費用と収益を単に同一・会計期間に計上するこ阜を 意味しており,費用と収益の相互関連にもとづいて計上するこ.とを意味しな い。原価会計的対応のような意味での相互に照応する費用項目またほ収益項目 がなくても,ある年度の損益計算書に.含まれるぺき損益項目ほ,何らかの方針 により期間への割り当てが行なわれる。営業上の経常項目および非経常項目, 営業外の諸項目などに関する様々なコンペンレヨンや通則にもとづいて各種項 目の期間計上が果される。その意味でほ,−・般会計的対応は,異なる損益計上 の指針や概念を含み,いわば原価会計的対応以外の対応概念を総称していると いうことができるであろう。 Ⅴ.「会計原則試案の改訂のための諸提案」について 1936年には,A.A.A.の最初の報告書である「会社報告書会計原則試案」が

公表され,それ以後A.A.A.の年次総会,定期刊行物,A.Ⅰ.A.の協力等様

々な機会に.それをめぐっての論争が展開された。「試案」ほ,その当初から, いつしか改訂の行なわれることを予期していたものであったが,A.A.A.の執 行委員会では1938年中にすでに改訂の作業に着手していたことが伺われる86)。 Littletonによる「会計原則試案のための諸提案」は,さらに論争を促すた

86)A。C.Littleton,〃Suggestionsfor the Revisionof the Te王1tativeStatement of

(25)

成立当初の「費用・収益対応」の概念 −ヱ∂β− めに,改訂草案に含められる予定のいくつかの事柄の概要をA.A.A.の会員 に提案したものである。いまだ委員会内部でも系争申であったから,「提案」 の体裁ほ草案を示すものでなく,さらに委員会のメンバーであったLittleton 個人の見解として論述されてはいるが,それでも改訂の内容に・ついてある方向 を示唆するものであるといえよう。 この論述では,会計過程の最終的目標を「−費用と収益の対応」に層くことに ょって,原則全体を体系化しようとする意周が明白である。1936年の「試案」 は,大きく分けて「■原価と価値」,「利益の測定」,「資本と剰余金」の三つの章 から構成されており,各章では主として−それぞれ取得原価主義,包括主義,資 本取引と損益取引との区分が取上げられている。それに対してLittlet血の所 説でほ,収益の認識(実現主義),原価の認識(取得原価主義),利益の測定( 収益と原価の対応),財務諸表の解釈上の若干の問題(註釈および分析,低価 主義,包括主義)が展開されている。この所説自体改訂の草案を目指したもの ではないから,虐接に「試案」と比較することはいささか勇み足であるが;両 者の比校において−顕著な特色は,費用。収益対応の概念やプロセスが会計の中 心的課題であるとの認識が明瞭であるという点である。 Littletonは利益の測定について次のよう紅論述している。「収益および原価 の認識と密接に関連しているのは,純利益の計算における両者の対応(ma− tching)である。事実上,この対応は,認識の諸基準を設定する試みに対して 目的を与えるものである。 会計の中心的課題は,当期においては,当期に確認される収益とそれに関連 する原価とを結合する(bringinto association)ことであり,将来に∴おいて は,将来に確認される収益とそれに関連する原価とを結合するこ・とである。こ の問題を解決するのに会計を使用する者は,要するに・努力(effor’tS)と成果 (accomplishments)とを対応させている。ある努力は当期K・有効なものとな り,それは収益(成果)から当期に・控除される原価(努力),つまり当期の収益 紅対する原価(revenue−COStS Of thepresent)に・よって測定される。他の努 力は将来において有効なものとなることが期待され,それは将来の収益紅対す る原価(revenue−COStS Of thefuture)(資産)として繰延べられる原価に・よ って測定される。ある努力は当期に蘭効なものとなることが立証され,将来に

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香川大学経済学部 研究年報14 ー∫♂♂−一 Jp7−ノ おいて有効なものとなりそうにないと判断されるこ.とがあり,それは,認識さ れた損失として当期の収益から控除されなければならない原価紅よって測定さ れる。 したがって,会計の基本的課題は原価の流れを切断し,正しく配分される部 分を当期と将来\分割することである。現在と将来への流れの分割を報告する ための用具が損益討算薔であり,貸借対照表である。87)」という。 このような展開に㌧見られるいくつかの特色を要約すれば,次のように.いうこ とができるであろう。 (1)ここでは,費用・収益の対応の問題が会計過程における最終的課題で あるとの認識が強調されている。このことは,−・般に.損益計算書を中心とする 会計観がさらに.浸透しつつあることを示すものといえよう。 (2)費用と収益の対応関係が成立する概念上の基盤ほ,企業の封画的な 生産活動に.おける「努力」と「成.呆」との関連に・あるという。こ・れは従来の Littletonの個人的見解の流れに,与するものであるが,そのような見解が会計 原則設定の過程で−・般紅.共有化されつつあったこと,またほむしろそのような 考え方を受け入れさせる時代的状況がすでに遍在していたことが伺える。 (3)ここでおそらく初めて「対応」紅対してmatchingという用語が当て られ,この頃からそのような用語港が定着しはじめるのであろうg8)。 ⅤⅠ.「会社会討基準序説」について 1. ほじめに. 1936年にA.A.A.により「会社報告書会計原則試案」が公表された。その 後1941年の「会社財務諸表会計原則」が公表されるまでの間,雑誌や学会に・ おいて会計原則をめぐって活発な議論がなされたが,「会社会計基準序説」 87)Ibid.,p.、60‖

88)ちなみに,これより少し遡るが,1931年に刊行されたThe Committeeon Accou・

nting Terminology of the A.Ⅰ…A。,“Accounting TerminoIogy−Preliminary Report of a SpecialCommittee on Terminology.,”ほ,1922年以来A..ⅠいA..の機 関誌theJournalof Accountancyで逐次的に定義されてきた用語を編纂している

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