高等学校における「通級による指導」について
1.「通級による指導」について(概要)
2.研究指定校における「通級による指導」の実践例
3.高等学校における「通級による指導」に係る教育課程について
4.高等学校における「通級による指導」に係る教育課程の例
(参考1)「通級による指導」に関する規定
(参考2)「通級による指導」を受けている児童生徒数の推移(公立小・中学校)
(参考3)「通級による指導」の対象となる障害の種類及び程度
(参考4)特別支援学校学習指導要領「自立活動」の内容
(参考5)高等学校における通級による指導の制度化及び充実方策について(報告)概要
(参考6)
特別支援教育部会における議論の取りまとめ(案)-通級による指導部分の抜粋-1 平 成 2 8 年 6 月 1 日 教 育 課 程 部 会 高 等 学 校 部 会 資料4「通級による指導」について(概要)
■
小・中学校等においては、通常の学級に在籍している障害のある児童生
徒に対して、大部分の授業を通常の学級で行いながら、一部(週1~8単位時間
程度(LD・ADHDは月1~週8単位時間程度))、障害に応じた特別の指導を特別
な場(通級指導教室)で行うため、
特別の教育課程を編成することができる
(平成5年に制度化)
。
【参考1:学校教育法施行規則 第百四十条】■
通級による指導の実施に当たっては、特別支援学校小学部・中学部学習
指導要領を参考とし、
障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を目
的
とした
指導領域である「自立活動」の内容を取り入れるなど
して、個々の
児童の障害の状態等に応じた具体的な目標や内容を定め、学習活動を行う
(中学校においても同様)
。
【参考1:小学校学習指導要領解説 総則編】■
小・中学校等で通級による指導を受けている児童生徒数は、年々増加傾
向にあり、
平成27年度には約9万人
。
【参考2:「通級による指導」を受けている児童生徒数の推移】【課題】
現在、中学段階卒業後においては、通級による指導が制度化されておらず、
障害のある生徒の学びの場は、主として高等学校の通常の学級又は特別支援
学校高等部に限られている。
2研究指定校における「通級による指導」の実践例
平成26年度より、文部科学大臣指定(学校教育法施行規則第85条等)により、現行の高等
学校の教育課程の基準によらない教育課程を編成、実施する「高等学校における個々の能力・才
能を伸ばす特別支援教育」を開始。
3研究指定校における取組
研究指定校における取組
長崎県立 佐世保中央高等学校
通級名称
SWP(
self-help work program)
授業時間数
年間1単位(35単位時間)~2単位(70単位時間)
指導教員
自立活動等担当教員+支援教員 (2名)
対象生徒
5名
対象生徒決定までの流れと実施者
対象生徒決定までの流れと実施者
観察・チェックリスト
による実態把握
自立活動の
視点で実態
把握
対象生徒の
検討
生徒、保護者への
説明・確認
(合意形成)
(平成27年度)
決
定
担任
コーディネーター
特別支援教育
校内委員会
学校側(校長等)
【実施者】
【流れ】
研究指定校における「通級による指導」の実践例
4生徒の障害や特徴等を把握する
生徒A
・記憶力は優れているが、コミュニケーション能力に課題
・言葉どおりに受け止めてしまう傾向
など
生徒B
・思いつくままの話し方で、相手の感情や立場、社会通念の理解が困難
など
生徒C
・運動調整、空間認知等が困難
など
収集した情報をもとに、
自立活動の6区分26項目
に即して整理
【参考4:特別支援学校学習指導要領「自立活動」の内容】指導内容を決定する
生徒A
・他者の意図や感情を理解する手掛かりやスキルを高める
生徒B
・生活場面、対人場面におけるストレスや緊張への対応を身につける
生徒C
・自ら身体感覚や状況認知を行うことができるようにする
通級による指導では、
一人一人の生徒の実態等に応じ、必要な項目を選定
。
それらを関連付けて、
具体的な指導内容等を設定し指導
。
(優先する指導目標を設定)
⇒(指導目標を達成するために必要な項目を選定)
⇒(選定された項目を関連付け、具体的な指導内容を設定)
研究指定校における「通級による指導」の実践例
月 時数 内 容 自立活動の関連区分・項目(例) 4 4 状況に合った応答の仕方を身に付ける。 ・いろいろな状況が描かれたカードを見て、どのように応じればいいのか考える。 コミュニケーション・状況に応じたコミュニケーション 人間関係の形成 ・感情の理解 ・自己認識 ・集団に参加するための手順やきまりの 理解 心理的な安定 ・状況の把握 ・改善・克服への意欲 5 8 相手の立場や気持ちなどに応じて、それにふさわしい行動や言葉づかいをする。 ・電話での会話やあいさつなどの状況を設定し、場に応じたあいさつや敬語に慣れる。 6 4 インターンシップに向け、自分の良さに気付き、長所を活かせる職業について考える。 ・よく聞き取れないときや意味が理解できないときの確認や対応の方法などを理解する。 ・話し合いなどの活動を設定し、相手の話を最後まで聞くような機会を積み重ねる。 7 8 9 6 いろいろな職業について調べながら、自己の良さを踏まえた上で、どのような仕事が自分に 合っているか、あるいは、自分に合わない仕事はどのようなものかを理解する。 10 10 状況に応じて、それにふさわしい言葉づかいをする ・友達との会話、目上の人との会話、会議等の場面を設定し、話し方の使い分けをする。 コミュニケーション・状況に応じたコミュニケーション 人間関係の形成 ・行動の調整 11 8 日常的な学校生活の時間や提出物等の管理、係分担など、計画に沿った行動を意識づけ ることで、自己プランニングや自己マネージメントの方策を理解する。 12 4 修学旅行に向け、諸活動の項目を確認しながら、時間の変更や活動順序の変更等が合っ た場合の自分の心理状態と対応方法について考える。 心理的な安定・状況の変化への対応 人間関係の形成 ・感情の読み取り ・自己認識 1 6 相手の気持ちを受け止めることに慣れる。 ・身近な事件や新聞記事などをもとに、自分の意見を発表したり、他者の意見を聞いたりし ながら、自分と他者の気持ちの程度は、同じことや違うことがあることを知る。 2 8 ワークショップ形式により、他者が自分の良さをどう見ているかを理解し、自己の良さを認識 する。 人間関係の形成・自己認識 心理的な安定 ・改善・克服への意欲 3 4 自分が日々どのような行動をしているかを知る。 ・グループ討議などの方法で、自分が努力によって変わっていったことを振り返る。 5 授業時数計 2単位時間(週)、70単位時間(年間) 指導の形態 自校での通級目標
個々の生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、 態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う。 活動のねらい 場や相手の状況に応じて、主体的なコミュニケーションを展開し、対人関係を円滑にするため、コミュニケーション・スキ ルの向上を目指す。高等学校における「通級による指導」に係る教育課程について
6■
基本的な考え方は小・中学校等と同様としつつ、以下のとおり取り扱うことが適
当ではないか。
①特別の教育課程の編成
⇒通級による指導を高等学校の通常の教育課程に
加え、又はその一部に替える
ことができる。
②単位による履修・修得、卒業認定
⇒生徒が学校の作成する「個別の指導計画」に従って履修し、その成果が個別に設定された
目標からみて満足できると認められた場合は、
通級による指導について履修した単位を修
得したことを認定しなければならない
。
⇒
通級による指導に
係る修得単位数は、
年間7単位
(※)
を超えない範囲で卒業認定単位に
含める
ことができる。
※中学校の時数と同程度⇒通級による指導は、2以上の年次にわたる授業時数を合算して、単位認定を行うことがで
きる。
また、単位認定を学期の区分ごとに行うことができる
。
⇒高等学校生徒指導要録においては、
通級による指導の授業時数、指導期間、指導の内容や
習得した単位数を記入
する(「総合所見及び指導上参考となる諸事項」等に記入)。
③必履修教科・科目等との関係
⇒通級による指導は、
・各学科に共通する必履修教科・科目及び総合的な学習の時間
・専門学科においてすべての生徒に履修させる専門教科・科目
・総合学科における「産業社会と人間」
に替えることはできない。
④全日制、定時制及び通信制の課程
⇒障害がある
生徒が、いずれの課程にも進学していることが推測されるため
、
全ての課程に
おいて制度化する。
高等学校における「通級による指導」による教育課程の例
7 (※以下、全日制・普通科において、国語総合、数学Ⅰ、コミュニケーション英語Ⅰ及び総合的な学習の時間を2単位として履修した場合) ●“加える”場合の例(授業時数が増加する) 各学科に共通する必履修教科・科目 総 合 的 な 学 習 の 時 間 選択教科・科目 特別 活 動 ( ホ ー ム ル ー ム 活 動 ) 国 語 総 合 世 界 史 A 日 本 史 A 現 代 社 会 数 学 Ⅰ 科 学 と 人 間 生 活 物理 基礎 体育 保健 音楽Ⅰ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 家 庭 基 礎 社 会 と 情 報 必履修教科・科目を増単位、 選択科目、学校設定教科・科目 を履修 化学 基礎 美術Ⅰ 地 理 A 生物 基礎 工芸Ⅰ 情 報 の 科 学 地学 基礎 書道Ⅰ 31単位 2単位 41単位 Ⅰ障
害
に
応
じ
た
特
別
の
指
導
年間7単位まで 授業時数 が増加 各学科に共通する必履修教科・科目 総 合 的 な 学 習 の 時 間 選択教科・科目 特別 活 動 ( ホ ー ム ル ー ム 活 動 ) 国 語 総 合 世 界 史 A 日 本 史 A 現 代 社 会 数 学 Ⅰ 科 学 と 人 間 生 活 物理 基礎 体育 保健 音楽Ⅰ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 家 庭 基 礎 社 会 と 情 報 必履修教科・科目を増単位、 選択科目、学校設定教科・科目 を履修 化学 基礎 美術Ⅰ 地 理 A 生物 基礎 工芸Ⅰ 情 報 の 科 学 地学 基礎 書道Ⅰ 31単位 2単位 41単位 Ⅰ障害に応じた特別の指導
年間7単位まで ●“替える”場合の例(授業時数が増加しない)通級による指導を高等学校の通常の教育課程に
加え、又はその一部に替える
ことができる。
(参考1)「通級による指導」に関する規定
9【学校教育法施行規則】
第百四十条 小学校、中学校若しくは義務教育学校又は中等教育学校の前期課程において、次の各号のいずれ
かに該当する児童又は生徒(特別支援学級の児童及び生徒を除く。)のうち
当該障害に応じた特別の指導を
行う必要があるもの
を教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、 (中略) 、
特別の
教育課程によることができる
。(※次の各号:一 言語障害者、二 自閉症者、三 情緒障害者、四 弱視者、
五 難聴者、六 学習障害者、七 注意欠陥多動性障害者、八 その他障害のある者で、この条の規定により特
別の教育課程による教育を行うことが適当なもの)
【
平成5年1月28日文部省告示第7号】
小学校、中学校若しくは義務教育学校又は中等教育学校の前期課程において、学校教育法施行規則(以下
「規則」という。)第百四十条各号の一に該当する児童又は生徒(特別支援学級の児童及び生徒を除く。以
下同じ。)に対し、同項の規定による特別の教育課程を編成するに当たっては、次に定めるところにより、
当該児童又は生徒の
障害に応じた特別の指導
(以下「障害に応じた特別の指導」という。)
を、小学校、中
学校若しくは義務教育学校又は中等教育学校の前期課程の教育課程に加え、又はその一部に替えることがで
きる
ものとする。
1 障害に応じた特別の指導は、
障害の状態の改善又は克服を目的とする指導
とする。ただし、
特に必要が
あるときは、障害の状態に応じて各教科の内容を補充するための特別の指導を含む
ものとする。
2 障害に応じた特別の指導に係る授業時数は、規則第百四十条第一号から第五号まで及び第八号に該当す
る児童又は生徒については、
年間三十五単位時間から二百八十単位時間までを標準
とし、同条第六号及
び第七号に該当する児童又は生徒については、
年間十単位時間から二百八十単位時間までを標準
とし、
(以下略)
【小学校学習指導要領解説 総則編】
指導に当たっては、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考とし、例えば、
障害による学習上又
は生活上の困難の改善・克服を目的とした指導領域である「自立活動」の内容を取り入れる
などして、個々
の児童の障害の状態等に応じた具体的な目標や内容を定め、学習活動を行うことになる。
(参考2)「通級による指導」を受けている児童生徒数の推移(公立小・中学校)
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