うがい薬でビタミン C を調べよう:
目的: ヨウ素を使って、酸化還元反応と定量法(酸化還元的定)について学ぶ。どんな食べ物にビ タミン C が含まれているのか調べる。 この実験の背景 この実験では、うがい薬を使って、いろいろな野菜や果物や飲料の中にどのくらいビタミン C が含 まれているのかを調べます。うがい薬溶液にレモン汁を何滴かたらすと、溶液の色が消えます。な ぜ色が消えるのでしょうか? うがい薬はヨウ素という物質でできています。ヨウ素は非常に強い 酸化剤として知られていますが、レモン汁に含まれるビタミン C(アスコルビン酸)は強い還元剤 として知られています。ひとつの溶液の中に、酸化剤と還元剤が存在するとこの二つは反応します。 ヨウ素がビタミン C と反応すると、ヨウ素の構造は無色透明のヨウ化水素へと変化するため、溶液 の色が消えるのです。同時に、調べたい試料がうがい薬溶液の色を消すまで何滴必要だったか数え れば、その試料にどのくらいのビタミン C が含まれていたのかを知ることもできます。 酸化還元 酸化還元とはいったいなんでしょうか? いちばん簡単な説明は、物質が酸素を得る(酸化)か、 酸素を失う(還元)反応のことをいいます。しかし、ヨウ素とビタミン C の間の酸化還元反応は、 酸素が存在する反応ではないので、このように説明することはできません。では、実際何が起こっ ているのでしょう? 酸素を介した「酸化還元反応」は酸化還元を説明するときの一部の反応でし かありません。実際には水素と電子についても考える必要があります。 酸化還元反応における酸素、水素、電子のやり取りは以下の表のようになります。 酸素 水素 電子 酸化 得る 失う 失う 還元 失う 得る 得る ヨウ素とビタミン C の反応では、水素がビタミン C から放出され、その水素をヨウ素が受け取る反 応になります。+ I2
à
+ 2HI
ビタミン C(アスコルビン酸) ヨウ素(紫-オレンジ) デヒドロアスコルビン酸 ヨウ化水素(無色)前ページの反応から、ビタミン C はヨウ素によって酸化され、ヨウ素はビタミン C によって還元さ れた、と説明できます。あるいはビタミン C は還元剤として働き、ヨウ素は酸化剤として働いた、 ともいう事ができます。 定量法 ある物質の量や濃度を知りたいとき、いくつかの定量法を使って調べることができます。この実験 で使っている方法は「酸化還元滴定」と呼ばれていて、もしある物質に酸化あるいは還元能力があ って、しかも目立つ色がついていれば、この物質を一種の指示薬として用いることができます。ヨ ウ素はこのような物質のひとつですが、代表的なものには、過マンガン酸カリウムなどがあります。 このような物質(どちらも酸化剤)を利用すると、還元剤の量や濃度を調べることができます。こ の調査方法は、酸化還元反応に基づいています。 他の定量法としては、酸とアルカリの反応を利用した中和滴定がありますが、この方法の場合、フ ェノールフタレイン、メチルレッド、メチルオレンジなどの指示薬を加える必要があります。この 方法は、酸とアルカリ間の中和反応を利用しています。 うがい薬(ポビドンヨード) BASF は「ポビドンヨード」といううがい薬の原料を製造しています。ポビドンヨードは強い酸化 作用で雑菌を殺すため、殺菌消毒などに幅広く使われています。ポビドンヨードはうがい薬だけで なく、手術用消毒液としても使われていて、どうやら BASF はあなたの健康な毎日に一役かってい るといえそうです。 ビタミン ビタミン C は人が生きていくのに不可欠なビタミンのひとつです。ビタミン C は風邪を引きにくく し、きれいな肌を作ります。問題は、ビタミン C が水溶性ビタミンであるということ。水溶性ビタ ミンの場合、余分に摂取した分を体の中に貯蓄することができません。体内で使われなかったビタ ミン C は、溶けて尿と一緒に排出されてしまいます。つまり、毎日必要な分量のビタミン C を取る ように心がけなければいけないのです。同じく水溶性ビタミンであるビタミン B 群も同様です。 もうひとつのグループは脂溶性ビタミンと呼ばれていて、ビタミン A、E、D、K などがあります。 これらのビタミンは取りすぎても体内で貯蓄することができるので、毎日どうしてもとらなければ ならないものでもありませんが、逆にとりすぎると健康を損ねることもあります。もしビタミンの サプリメントを摂るなら、製品に記載されている飲み方と分量をきちんと守ることが大切です。た だ、サプリメントは摂らず普通の食事でビタミンを補う場合、よほど偏った食事をしない限り脂溶 性ビタミンを取りすぎるということはないので、サプリメントを摂るとき以外は、脂溶性ビタミン の過剰摂取をそれほど心配する必要はありません。 BASF はいろいろな種類のビタミンを生産しています。生産されたビタミンは、飲料、スーパーで 売っている食べ物、サプリメント、パン、お菓子、薬などいろいろな分野に使われています。
実験
器具: ビーカー2 個(あるいは試験管 2 本)、ガラス棒 2 本、スポイト 3 本 材料: うがい薬(ポビドンヨードが原料のもの)、水、レモン汁、お茶、いろいろなフルーツや野菜のジ ュースなど。 注意事項 · 二人一組で行うこと。 · 実験を行う前に以下の項目について確認すること。 -実験の目的と背景 -実験で使用する器具 -実験に使用する材料 · 実験の途中、できるだけ実験に関係のある子供達に身近な事柄を挙げて、説明すること。 · 実験中、実験に対する子供達の疑問や提案をなるべくとりあげるようにし、可能ならその場 でやってみること。 · 観察の結果を必ず話し合うこと。 実験手順 1: ひとつのビーカーに 100ml の水を入れ、うがい薬を 12 滴加え、よく混ぜる。 2: 1 の溶液 50ml を別のビーカーに移し、溶液を半分ずつに分ける。 3: ひとつのビーカーにスポイトでレモン汁をうがい薬溶液の色が消えるまで加える。 何滴加えたかを数えておく。 4: もうひとつのビーカーにスポイトでお茶をうがい薬溶液の色が消えるまで加える。 何滴加えたかを数えておく。 5: もし時間があれば、いろいろなジュースや、野菜やフルーツの汁などで同じように 試してみましょう。何にたくさんのビタミン C が含まれているでしょうか? 各手順におけるポイント 1: 観察: うがい薬によって、水がオレンジ色に変わる 子供達へ質問: どんなときにうがい薬を使う? 何でオレンジ色なのかな? (ヨウ素の色) 3: 子供達へ質問: レモン汁にはどんなビタミンが含まれている?(ビタミン C) なぜレモン汁でうがい薬の色が消えるか? (ビタミン C とヨウ素が 反応するから) 何滴レモン汁を加えた?Step 4: 子供達へ質問: お茶にはビタミン C が含まれていると思う? (含まれている) レモン汁とお茶、どちらがビタミン C を多く含んでいる? (お茶) (注) 加えた試料の量が少ないほど、ビタミン C が多く含まれているといえる。 まとめ: ヨウ素を含むうがい薬を使って、身の回りにあるいろいろな食べ物に、どのくらいビタミン C が含 まれているかを調べることができます。調べたい食べ物の溶液をうがい薬溶液の入ったビーカーに 入れると、ビタミン C が入っていればうがい薬の色が消えてしまいます。また試料を加えるときに 何滴加えたかを数えれば、試料ごとのビタミン C 濃度の違いも調べることができます。この実験を 通して、ヨウ素がビタミン C と反応すると、ヨウ素の色が消えて無色透明になる、という反応を学 ぶことができます。この反応はさらに複雑な化学反応にも応用することができますが、ここではう がい薬という安全な化学品を使うことで、子供達にも安全に行え、さらに市販のうがい薬で家庭で も手軽にいろいろな食べ物のビタミン C を調べることができます。 BASF における「持続可能な発展」とのつながり うがい薬の原料はポビドンヨードです。うがい薬を使うことで、風邪を引きにくくなり、健康な生活を 送ることができます。ポビドンヨードは殺菌作用があることからほかにも手術用消毒液としても使われ、 周りの環境をきれいに保つのに役立っています。 ポビドンヨード以外に健康な生活を保つのに必要なものは何でしょうか? たとえば、バランスの取れ た食事をとることはどうでしょう? 人間が必要な栄養素のうち、体内で合成できないもののひとつに ビタミン類があります。つまり、人間はビタミンを食べ物などで補わなければいけないのです。ビタミ ンは野菜やフルーツ、肉など自然にも存在しますが、いろいろな加工食品にも栄養強化と鮮度維持の目 的で添加されています。いずれにせよ、健康に生きていくために、ビタミン類はなくてはならないもの なのです。 BASF はポビドンヨードとビタミン類を生産しています。BASF はあなたの生活を便利なものにするだ けでなく、あなたの健康にも貢献しています。
うがい薬でビタミン C を調べよう:
器材: ビーカー(2), かき混ぜ棒(2)ポリスポイト(2) 化学品: イソジン、水、レモン汁、お茶(伊藤園)(野菜、フルーツジュース) 実験方法: 1: ビーカーに、水を 100ml 入れます。うがい薬(ヨウ素液)を、ビーカーに 12 滴加えて、 ゆっくりとかきまぜます。 2: 50ml を新しいビーカーに入れる。3: ポリスポイトを使ってレモン汁を 1 滴加える。色変更を確認した上もう1滴を加え る。色が消えるまで滴を数える。
4: ポリスポイトを使ってお茶を 1 滴加える。色変更を確認した上もう1滴を加える。 色が消えるまで滴を数える。