の
広場
教育管理職研究会 編集
管理職
のための
教育 topics
管理職
のための
教育 topics
小・中学校 管理職向け資料 topic 2 教員の資質向上にむけて topic 3 食物アレルギーにどう対応するか topic +1 体罰根絶への取り組み ④ 011312902
topic 1
新時代,学校運営の改善を
学校教育法・学校教育法施行規則が改正され,設置者の判断により法に 定める小中学校等に副校長・主幹教諭及び指導教諭,そして事務長などの 新しい職を置くことができることとなった。これらは,校長・教頭の下に 横並びの組織,いわゆる「鍋ぶた型」の運営組織に新たな職を位置づける ことにより,組織的・機能的な学校運営ができる体制を構築するための措 置と考えられる。各都道府県での新しい職の活用は同様ではないが,校長 (教頭)には,この趣旨を踏まえた新たな発想で,学校運営を改善するこ とが求められている。■組織的な学校運営の充実を図る
学校運営は,校長をトップとし,教頭との経営陣を中心として校務分掌 組織を通して行われている。この組織は,教務部や生徒指導部等の各部の もとに細かに各係が置かれ,教職員が配置されているのが通常である。し たがって,組織的な運営には,各部をリードし,中核となって部組織を動 かす人材を育てること,また,各部がばらばらではなく統一性や一貫性を もって指導・指示・命令が行われることが大切である。それには,特に主 幹教諭・指導教諭や事務長に一定の責任をもたせ,力を発揮できるような 仕組みにすることである。また,経営・指導スタッフの打ち合わせや会議 を重視したい。それによって,認識が共通化され,指揮命令や各分掌の取 り組みへの指導内容が明確になるからである。主幹教諭等が配置されてい ない学校では,設置の趣旨や利点が現在の各分掌の主任などによって反映 できる(リード・指導ができる)よう工夫する必要がある。主幹等が置か れた場合,直ちに機能するよう,現組織を整えておくべきである。また, 組織を構成する教職員個々の運営への参画意識と協働の意識を醸成するこ とも必要である。どのようにすれば,よりよい学校運営となるかを,個々 の教職員に考えさせて発表させたり,検討へ参加させたりすること,また, 努力や成果を評価し,励ますなどの日頃からの具体的で細かな心遣いや取3
■機能的な学校運営の充実を図る
ものごとを決めたり,進めたりするのに時間がかかり過ぎてはいないか, 喫緊の課題解決に組織で集中できる体制を考えたい。組織を整理統合する こと,簡素で分かりやすい組織にすることなどの検討が必要であろう。特 に,緊急に対応を迫られる場合,校長の命を前提とする副校長・主幹教諭・ 事務長等をトップとしたプロジェクトチームの設置と取り組みによって, 適切かつスピーディに対処したい。スクラップ・アンド・ビルドの発想を 実際に生かしてみることである。これらのことは,新しい職を配置されて いない学校においても,校長自身が発想を転換すること,また,主任層等 に対し,即対応できる組織のリーダーとしての自覚と責任感と力量を培う よう,校長(教頭)として日頃からあらゆる場面で指導することが求めら れていよう。 《参考》 「副校長」は,校長から命を受けた範囲で校務の一部を自らの権限で処理で きる。「教頭」は,校長を補佐することの一環として校務を整理するというもの である。副校長と教頭をあわせて置く学校については,教頭は校長及び副校長 を補佐する立場となる。 「主幹教諭」は,命を受け担当する校務について一定の責任をもって取りま とめ,整理し,他の教諭等に対して指示することができる。一方「主任」は, 校長の監督を受け,担当する校務に関する事項について連絡調整及び指導・助 言に当たるというものである。 「指導教諭」は,学校の教員として授業を受けもち,所属する学校の児童・ 生徒等の実態を踏まえ,他の教員に対して教育指導に関する指導・助言を行う。 「事務長」 は,校長の監督を受け,事務職員その他の職員が行う事務を総括し, つかさどる。 「学校教育法等の一部を改正する法律について(通知)第二留意事項第 5 副校長等の職の設置に 関する事項について」H19.7 文科省 「学校教育法(第 37 条,第 49 条)」「学校教育法施行規則(第 46 条,第 49 条)」よりtopic 2
4教員の資質向上にむけて
管理職は,自校の教育活動の質の向上に大きな責任を負っている。その 中心的課題は「教員の授業力の向上」にあるといえよう。この解決には,「そ の教員の資質をどう高めるか」という基本的な取り組みが欠かせない。そ のための手立てについて考えてみたい。■授業の準備をする時間を確保する
時間を守らせ,勤務時間内に明日の準備をさせたいものだ。グーグル社 では,勤務時間の 20%を自由な時間として使い,多くの創造的な発想が この時間に生まれるという。管理職は,教師が明日の授業を創造できる時 間を確保したい。■授業参観を日常的に行う
管理職による授業参観を大切にしたい。管理職が授業を見て,指導者本 人が気づかなかった,児童・生徒の大きな感動などを伝えれば,その教員 の大きな自信になり,成長につながる。管理職が授業を見に来たあとには, 指導者が管理職のところに必ず来て,授業の感想を聞くような人間関係が 構築できれば最高である。■相互の授業参観の場を設ける
中学校や高校では,教科担任制である。教科は違っても,課題の提示の 仕方・意見の受け止め方・板書の仕方・言葉遣いなど,指導技術には共通 点がある。教科や年齢にとらわれず,教員どうしで授業を見せ合うことを 勧めたい。可能ならば,校種を超えて(特に中学校教員は小学校教員と, 高校教員は中学校教員と)見せ合うことも重要であろう。5 通常,各学校では週案の提出がなされている。1 週間分の指導すべき内 容,安全面での配慮事項,必要とする教材等が記されている。枠が小さく, 多くは書けないが,単元名だけでなく,授業のポイントとなる発問なども 記載できるとよい。そうすれば,形骸化した週案から,「授業改善のため の週案」となる。管理職は,提出された週案には,当然ながら印鑑だけで なく必ずコメントを残したい。
■研究授業の実践と指導案をデータベース化する
授業研究を重視したい。研究指定校として自校の課題に取り組んだり, 他の公開授業を見たりすることが動機づけとなり,授業の質が高まること はよく経験する。他校の教員との意見交換や資料交換は,教員自身を大き く成長させる。また,よく練られた指導案は,他の教員の参考にもなる。 校内で,ぜひデータベース化しておきたいものだ。各校が,校内でデータ ベース化を進められれば,市町村や県レベルまでそれを広げることは,き わめて簡単にできる。■自主的な研修・研究を奨励する
勤務時間外の自主的な自己研修は,時間的にも内容的にも自由であるか ら,新しい発想が生まれやすい。企業や自治体が行う講演会,新聞や雑誌 などの活字媒体,インターネットでの検索など,自分の好きな方法で行え ばよい。教員は,本来,自分の努力によって授業が変わり,児童・生徒の 表情に満足感や充実感を見たとき,無上の喜びを感じるものである。一人 ひとりがもっている,「子どもたちが好きだから。」「その教科が好きだか ら。」という気持ちは,決定的な力となる。そして,各個人の研究成果を, 他に発信するように助言するのは,その学校の管理職がもっとも望ましい だろう。topic 3
6食物アレルギーにどう対応するか
■管理職の認識が問われる
全国の公立学校の児童・生徒の約 2.6%が食物アレルギー有病者という, 平成 19 年の調査を受け,文部科学省は様々なアレルギー疾患対策を示し てきた。しかし,平成24年,食物アレルギーによるアナフィラキシーショッ クの疑いで,児童が亡くなる深刻な事故が,学校給食において発生した。 再発防止の観点から,文部科学省は,平成 25 年 7 月に「学校給食におけ る食物アレルギー対応について(中間まとめ)」を示した。 これまでの学校給食に関する危機管理は,食中毒の防止やウイルス性の 感染の防止,食材の安全や適切な施設・設備の整備などが中心であった。 しかし,これらに加え,校長の強いリーダーシップの下,食物アレルギー に関する事故の事前防止と発生時の対応のためのマニュアル作成や研修を 行うこと,全職員が臆することなく適切に対応できるような体制づくりを 構築することも緊急に強く求められている。■具体的な対応策が求められる
(1) 実態の把握と職員の確かな認識を 管理職を含めた全職員一人ひとりが「どの子にも起こりうる。」とい う認識の下,食物アレルギーを有する子どもを把握し,共通理解,共通 対応できる体制(見過ごし,ミスは許されない)を早急につくりあげる。 (2) 細心の注意を払った「除去食」「代替食」を 学校では,アレルギー疾患をもつ子と , 個々に事前の連絡・連携を図 りながら,「除去食」や「代替食」等への対応を積極的に行っている。 これは,平成 20 年に文部科学省が食物アレルギー対応に関するガイド ラインで示した「食物アレルギーの児童生徒が他の児童と同じように給7 食を楽しめることを目指すことが重要」「学校給食が原因となるアレル ギー症状を発症させないことを前提として,各学校,各調理場の能力や 環境に応じて食物アレルギーの児童生徒の視点に立ったアレルギー対応 給食を提供することを目指して学校給食における食物アレルギー対応を 推進する」ことを基本としたものである。 いま,校長(教頭)の指導の下,給食の実施・未実施に関わらず,教 職員が食物アレルギー対応について知ること,さらに,給食で細心の注 意を払った「除去食」「代替食」を実施することが求められている。 (3) 実効性のある研修の実施を ガイドラインや自校の対応マニュアル,関係機関からの報告書などの 読み合わせはもちろん,食物アレルギーの未然防止の方策や有事の際の 対応,例えばエピペン(アドレナリン自己注射薬)使用の実地訓練など, より実効性のある研修を全職員で繰り返し実施する。また,関係機関で 実施される研修会には,積極的に参加させるようにする。 (4) 食物アレルギー学習の充実を 食物アレルギーに対する正しい知識をすべての児童・生徒がもち,当 該者を理解し,見守り,支援する環境をつくることこそが大切である。 そのために,食物アレルギーに関する学習を,食育・安全教育等に位置 づけ,学習を推進することが重要である。 (5) 保護者等との連携をより密に 事前に給食の献立をチェックし,個々の「学校生活管理指導表」など も活用し,学校と保護者双方の食い違いや見落としがないように,十分 に連携する。当該保護者は「少しでもみんなと同じものを。」という願 いをもっているが,給食施設・設備の状況から完全除去等が不可能な場 合もあることなど,保護者の理解を求めることが肝要である。ときには, 主治医や学校医等と相談し,決して無理をさせないようにすることであ る。事前打ち合わせ会には管理職も一緒に加わり,保護者への理解を求 めることが必要である。