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5. がん患者さんの在宅医療 介護等の基礎知識 財団法人名古屋市療養サービス事業団名古屋市西区訪問看護ステーション所長訪問看護認定看護師村井満美子 講義の狙い がん患者さんの在宅医療と在宅医療 療養を支える資源について学ぶ 訪問看護の利用の仕方について学ぶ 事例を通してより良い在宅医療のあり方を学ぶ

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Academic year: 2021

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がん患者さんの在宅医療について 在宅医療とは、医療を受ける者の居宅等において、 提供される医療であり、外来・通院医療、入院医療に 次ぐ「第 3 の医療」と位置づけられます。 このうち「訪問診療」とは、通院困難な患者さん に対して、患者さんの同意を得て、計画的な医学管 理の下に定期的な訪問(月に最低 2 回)をして診療 を行うことです。また、「訪問看護」は、疾病又は負 傷により居宅において継続して療養を受ける状態に ある者に対し、その者の居宅において看護師等が行 う療養上の世話又は必要な診療の補助を言います。 在宅ではどんな治療が受けられるの?

在宅療養と入院療養の違いを右の図に示します。 病院では、入院および通院治療を主体としており、 医療者がすぐ近くにいる安心感があります。しかし、 入院中の生活は基本には病院の規則を守ることが求め られるため、その人らしい暮らしは難しい部分があり ます。一方、在宅の場合は、患者さんやご家族の意向 に沿った治療やケアが提供され、ご家族の生活が中心 になりますが、その一方でご家族の負担が大きく、常 に医療者がそばにいるわけではないので不安感がある という側面もあります。 現在、在宅では以下のような治療を受けることが できます。手術など一部の治療を除き、ほとんどは 在宅で行うことができます。 ①点滴・注射 ②酸素療法 ③腹水穿刺 ④痛みのコントロール 麻薬などの投与→内服・座薬・貼用剤 持続点滴・持続皮下注射など 講義の狙い ■がん患者さんの在宅医療と在宅医療・療養を支える資源について学ぶ ■訪問看護の利用の仕方について学ぶ ■事例を通してより良い在宅医療のあり方を学ぶ

5.がん患者さんの在宅医療・介護等の基礎知識

財団法人名古屋市療養サービス事業団 名古屋市西区訪問看護ステーション 所長 訪問看護認定看護師 村井 満美子

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⑤膀胱留置カテーテル(尿の管)挿入・交換 ⑥その他、留置されている管類のケア 気管カニューレ・胃ろう・腸ろう・胆汁などを出す管など ⑦痰の吸引 人工呼吸器 など 点滴ポンプなど在宅向けの医療器具は、コンパクトで家族が操作しやすく、使う人のことを考えた改 良、工夫がされています。 訪問看護ステーションの利用者背景 訪問看護の利用者背景について説明します。 【年齢別・疾患別内訳】 小児から高齢者まですべての年齢の方が対象になります。様々な疾患を持つ方が対象になります。がんの 方の利用率も多くなっています。 また、高齢者の方は「がん」だけという方は少なく、認知症、糖尿病や慢性心不全などの慢性疾患、何等か の疾患を合わせもつかたが多いです。 【介護度別内訳】 要介護度は、病気の重症度で決定するのではなく、人の援助をどれだけ必要としているかが尺度になって います。 がん患者さんの場合は、その方の日常生活動作の状況にもよりますが、比較的軽い介護度(要支援・要介 護1・2など)になっていることが多いです。 【介護の状況】 近年、独居世帯や高齢者世帯の方が増加しています。 介護者の方も何等かの疾患を持っている例があります。また、認認介護(認知症の人が認知症の人を介護) するといった例もあります。 在宅医療・療養を支える社会資源 在宅療養を開始する際の相談の窓口として、まず、病院内では、医師・看護師・医療ソーシャルワーカ ーなどがいます。また、地域の窓口として、地域包括支援センター・市町村窓口(介護保険課など)、 かかりつけ医、訪問看護ステーション、ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)などがあります。 利用できる制度には、①介護保険制度、②障害者総合支援法などがあります。 ①介護保険制度 ・65 歳以上の方:要支援・要介護認定を受けた方 ・40 歳以上 65 歳未満の方 16 特定疾病の対象者で要支援・要介護認定を受けた方 ※16 特定疾病→ がん末期、関節リウマチ、ALS、パーキンソン病、脳血管疾患など ②障害者総合支援法 ・身体・精神・知的障がいがあり障害認定区分を受けた方 居宅介護(ヘルパー)や短期入所などのサービス利用ができます。 ただし、介護保険認定を受けている方は、介護保険サービスが優先されます。 なお、①②の制度利用に該当しない方でも、お体の状態によっては介護保険と同じようなサービスを 利用できることもあります。市町村によって利用できるサービスに違いがあるので、病院や地域の窓口 に相談して下さい。

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●在宅医療・療養を支える医療・生活面の支援と支援チーム 在宅医療・療養においては、患者さん本人やご家族を様々な職種がチームで支えます。医師、看護師、 ケアマネジャーの他、薬局薬剤師は薬の飲み間違いがないように「一包化」をしたり、訪問歯科による 口腔ケアなどの支援もあります。また、市町村によっては、配食サービスや乳酸菌飲料などを戸別に配 布して安否確認をする独自のサービスを行っているところもあります。 在宅療養を決定するときに・・ 在宅療養を決定する時に覚えておいていただきたいことがあります。 ①ご本人とご家族の間で、治療や療養の場所などについて意向のズレがないか確認します。 ご自宅でどのように過ごしたいか? 痛みや苦痛を伴う症状が出現した時、病状悪化時に入院するのか? そのまま在宅療養を希望するのか? など 経過と共に希望や状況が変わってくるので、そのつど確認をすることが必要です。 ②お一人暮らしでも在宅療養は可能です (ただし、重度の認知症を患っている場合など困難なケースもあると思われるので、介護力や環境の査定は 必要です) サポートするケアマネジャーを始め在宅医・訪問看護の他に、訪問介護などの利用をお勧めします。 ご本人の希望する在宅療養を支援してくれる在宅医や訪問看護などを選択することも重要であり、事前に 「どのような状態になったら入院をするのか」、「在宅でできる限界」などを話し合っておくことが重要です。 訪問看護について 訪問看護について皆さんはどのようなイメージをお持ちですか?多くの方は次のような疑問をお持ちでは ないでしょうか。 「どんなことをしてもらえるんだろう?」 「重症な人しか利用できないのかしら?」 「訪問介護と何が違うの?」 訪問看護とは、「介護保険法第8条」によると、「居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につ き厚生労働省令に定める基準に適していると認めたものに限る。)について、その者の居宅において看護師そ の他厚生労働省令で定めるものにより行われる療養上の世話又は、必要診療の補助を言う」とされています。 訪問看護を提供する事業所には 2 種類あります。

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①訪問看護ステーション(都道府県知事の指定を受け、訪問看護を行う事業所) ②医療機関(病院・診療所)→みなし指定 (病院や診療所内に「訪問看護部門」を設け、退院時に在宅療養が必要な方、病院や診療所に通院した り、訪問診療・往診を受ける方に訪問看護を行う) また、訪問看護を実施するスタッフは、訪問看護ステーションの場合は、職員として在籍している保健師・ 助産師・看護師・准看護師の他に、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がいます。一方、病院・診療所の 場合、看護職員のみとなります。 ●訪問看護の内容 右図のように、「かかりつけ医の指示に基づく医療処置」「在宅でのリハビリテーション」「床ずれ予防や処 置」「療養上のお世話」「低栄養や運動機能低下を防ぐアドバイス」「ご家族への介護支援・相談」「ターミナ ルケア」など幅広く、24 時間 365 日、患者さんやご家族の安心をサポートしています。 ●訪問看護師の役割 ①問診や身体状況の観察・計測などから心身がどのような状態か判断します。 ②病気がその方の生活にどのような影響を及ぼしているのか考えます。そのことをご本人やご家族に分かり やすく伝えます。 ③医師に身体や生活の状況などを報告します。必要時、臨時の診察・治療を依頼します。 ④ケアマネジャー・ヘルパーなどに病気の状況や必要な介護ケアなどを分かりやすく説明します。 ⑤ご本人・ご家族・医師・その他ケアチームメンバーそれぞれの意向や考えを確認したり、橋渡し役となり ます。 ●訪問看護と訪問介護(介護職員)の違い ①ヘルパーの支援内容は、家事援助、身体介護(保清援助・排泄や移動援助など)です。痰吸引や経管栄養 を実施できるヘルパーもいます。(ただし、特定の研修を受けた者に限る。) ②ヘルパーは、医療処置や医学的な判断はできません。また、看護師は家事援助(掃除・買い物など)をす ることはできません。

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がん患者さんの在宅医療 事例紹介 <在宅医療導入までの経過> ●病院ケースワーカーからケアマネジャー・在宅医に相談。 ●本人の希望:通院は一人では難しいと感じている。でも別の病院に転院するくらいなら自宅で過ごしたい。

事例 1 Aさん

<年齢・性別> 80 歳代 女性 <主病名> 悪性リンパ腫 <既往症> 高血圧・くも膜下出血 <要介護度> 要介護4 左上下肢麻痺あるが何とか歩行や身の回りのことは出来る <家族構成> 長男との二人暮らし 長女は他県在住(月 1 回程度訪問) 長男は長距離トラックの運転手。家を空けることが多く、Aさんは独居に近い状態 ・病気の治療が一段落した。現在、病状は安定しているが、治療の副作用で感染症などを起こす可能性 がある。 ・年齢や既往歴を考慮すると継続的に経過観察が必要。 ・外来通院ができれば良いが、体調や麻痺の具合、家族状況を考えると困難な状況。

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<在宅医療導入までの経過> ●ご家族・病棟看護師から訪問看護ステーションに相談 ●ご本人→ まだ病院にいたい。 ●ご家族→ 仕事の加減や毎日病院に面会に来るのも大変。 早く退院させたい。何とか家族で介護できる。 相談日の翌日に退院が決定していました。そこで以下の 2 点を調整し、退院しました。 ①疼痛コントロールや 24 時間持続点滴の管理などはご家族だけでは困難、医療者の目が必要と判断。在宅 医・訪問看護導入の必要性を説明し同意を得ました。 ②介護ベッドなどの福祉用具の必要性も判断。社会資源や介護保険制度の説明をしました。 在宅医療支援チームによる支援を行いましたが、 退院 2 週間後には再入院することになりました。 在宅療養が困難であった原因には下記のような点 が考えられました。 ①退院後も、本人はとにかく病院に戻りたいと希望 ・病院主治医への信頼が強く、何があっても○○先 生にみてもらいたい。 ・色々な人が家に出入りするのも好ましくない。 ②ご家族とご本人の意向がずれていた。 ③十分な調整をしないまま在宅療養開始された。 まとめ 1.在宅医療はどなたでも受けることができます。 (現在の状態や環境と在宅療養の条件が合うか確認したり、在宅医療・療養が可能か査定や調整は必要) 2.ご本人・ご家族 それぞれの意向に大きなずれがないか確認しましょう。 3.色々な社会資源を活用しましょう。 4.医師や看護師・ケアマネジャーなどには気軽に何でも相談しましょう。

事例 2 Bさん

<年齢・性別> 70 歳代 男性 <主病名> 大腸がん <既往症> 高血圧 <要介護度> 申請中 腰部に痛みはあるが何とか歩行や身の回りのことはできる <家族構成> 妻・長男と3人暮らし 自営業を家族で営む ・病気の治療が一段落した。現在、痛みのコントロール中 ・24 時間持続の栄養点滴が必要な状態。 ・年齢や既往歴を考慮すると継続的に経過観察が必要。 ・今後も外来通院 治療の予定である。 財団法人名古屋市療養サービス事業団 名古屋市西区訪問看護ステーション 所長 訪問看護認定看護師 村井満美子

参照

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