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イネの穂における出穂遺伝子による着生分布変異の定量化

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Academic year: 2021

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2015 年 4 月 20 日受理 連絡責任者: 奥本 裕 ([email protected]

イネの穂における出穂遺伝子による着生分布変異の定量化

菊澤恭子・今村優見・戸田大智・齊藤大樹・横尾敬行・吉竹良洋・築山拓司・寺石政義・奥本 裕

京都大学大学院農学研究科 (〒 606-8502 京都市左京区北白川追分町) 要旨:イネの出穂期は,品種の地域適応性を決定し,生産性の保障に関わる重要な形質の一つである.近年,出 穂期遺伝子が出穂期以外の形態形質に与える多面的効果が明らかにされてきた.本研究では,イネの出穂期遺伝 子が穂形態に及ぼす効果を,特に一次枝梗数および二次枝梗数の着生分布に着目して検証した.台湾の日本型イ ネ品種台中 65 号(T65)の出穂期遺伝子に関する準同質遺伝子系統を用いて,各系統から得られた穂の一次枝梗 数および二次枝梗数,およびこれらに着生した籾数を調査し,着生分布マップを作成した.さらに,一次枝梗の 数が異なる系統間で着生分布を比較するため,一次枝梗の着生した二次枝梗数を相対化した.研究の結果,早生 対立遺伝子 Ef1 に,一次枝梗数および二次枝梗数を減少させる効果が認められた.また,晩生対立遺伝子 Hd1 は 一次枝梗に着生する二次枝梗数を減少させる効果が認められた. キーワード:出穂期遺伝子,多面効果,着生分布,穂形態

緒 言

イネの出穂期は,品種の地域適応性を決定し,生産性の 保障に関わる重要な形質の一つであることから,イネの出 穂期制御に関わる多くの遺伝子が単離され,その機能の詳 細が明らかにされてきた(Tsuji et al. 2011).最近の研究は, 出穂期遺伝子が,多様な形態形質に多面的効果をもつこと を明らかにしてきている.長日条件で出穂を遅延させる

Ghd7(Grain number, plant height and heading date 7)は,穂

の大きさや稈長を増大させ,幼穂分化期の幼穂で強く発現 して,二次枝梗数を増やす(Xue et al. 2008).また,感光 性遺伝子座 Hd1(Heading date 1)および基本栄養成長性 遺伝子座 Ef1/Ehd1(Early À owering 1 / Early heading date 1) は,両座の対立遺伝子の組み合わせによって一次枝梗数を 増減させる(Endo-Higashi and Izawa 2011).以上のことか ら,穂における一次枝梗および二次枝梗の粒の着生に対す る,出穂期遺伝子の効果を明らかにすることは,出穂期遺 伝子が生産性の向上に及ぼす効果の解明に極めて重要と考 えられる. Ikeda et al. (2005) は穂における一次枝梗および二次枝梗 の着生数に基づいて一次枝梗および二次枝梗の着生数に関 与する遺伝子を明らかにした.さらに,池田ら(2006)は, 一次枝梗および二次枝梗の着生数と分布に基づいて,二次 枝梗の着生分布を 3 タイプに分類し,遺伝的に支配されて いることを報告している.以上のことから,イネの穂の形 態的特性の評価において,一次枝梗および二次枝梗の着生 数と着生分布に着目し,遺伝子のもつ効果を検証すること で出穂期遺伝子が穂形態形成におよぼす影響をより詳細に 明らかにできると考えられた. 本研究では,台中 65 号(T65)を遺伝的背景にもち, Ghd7,Ef1 および Hd1 座に異なる対立遺伝子をもつ準同 質遺伝子系統を材料に,一次枝梗および二次枝梗の着生数 と着生分布とを相対化して評価する方法をもちいて,一次 枝梗および二次枝梗の着生に対する出穂期遺伝子の多面的 効果を明らかにした.

材料および方法

圃場栽培および穂形質データの取得

台 湾 イ ネ 品 種 台 中 65 号(Oryza sativa L. cv. Taichung 65,以下 T65)を遺伝的背景にもち Hd1,Ef1 および Ghd7 座の遺伝子型が異なる準同質遺伝子系統(TNL)5 系統を 供試した(第 1 表).2012 年 4 月 25 日に播種し,2012 年 5 月 25 日に京都大学農学部附属農場の高槻圃場(北緯 34o 51 )に株間 15 cm,畝間 30 cm で移植した.1 反復を 12 株× 10 畝の群落として,各系統を 3 反復の乱塊法で栽 培した.10 a 当たり N: 6 kg, P: 9 kg, K: 9 kg を元肥として 移植前に全量施肥した.また,T65 の出穂期のおよそ 30 日前(6 月下旬)に 10 a 当たり 3 kg の窒素を追肥として 与えた.全茎数の 40 ∼ 50 %が出穂した日を出穂日とし, 播種日から出穂日までの日数を到穂日数とした.出穂日か ら約 40 日後に群落の中心部から 24 個体(8 株× 3 畝)を 刈り取り,得られた穂のうち平均的な 6 穂について一次枝 梗数,二次枝梗数および着生した籾数を調査した. 籾の着生分布曲線 池田ら(2006)が用いた方法を元に,統計解析ソフトウェ ア Excel(Microsoft Co. Ltd.)を用いて,一次枝梗,二次枝 梗および籾の着生分布を示す 2 次元マップを作成した.穂 首に近い一次枝梗から順に,各二次枝梗に着生した籾数お よび一次枝梗に直接着生した籾数を調査した.穂軸側から 順に二次枝梗に着生した籾数(2 以上の数値で表記)を入 力した後,一次枝梗に直接着生した籾を 「1」 として表記 した(第 1 図). 27 作物研究 60:27 − 30(2015)

Copyright 近畿作物・育種研究会 (The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan)

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次に,一次枝梗数ごとの二次枝梗の着生分布を評価する ため,それぞれの穂について,穂軸節から最上位の一次枝 梗までを 10 区画に分割し,それぞれの区画内に含まれる 一次枝梗における二次枝梗数の平均値を求めた.合計 6 穂 の平均値をもとに,縦軸に穂軸節を「0」とした区画を取り, 横軸に一次枝梗に着生した平均総籾数および一次枝梗に着 生した平均二次枝梗数を取って,総籾数および二次枝梗数 に関する着生分布曲線を求めた.

結果および考察

T65 および準同質遺伝子系統 4 系統の到穂日数は,76.3 ∼ 110.1 の範囲で推移し,TNL7 は Hd1 座および Ghd7 座 に不感光性アレルをもち,Ef1 座に早生対立遺伝子をもつ ことから,最も早生であった.一方,TNL15 は Hd1 座お よび Ghd7 座に感光性アレルをもつことから,最も晩生で あった(第 1 表).一次枝梗数および二次枝梗数は,それ ぞれ 8.9 ∼ 12.7 および 14.5 ∼ 27.4 の範囲であった(第 1 表). 一次枝梗数は到穂日数と正の相関をもつのに対し,二次枝 梗数および一穂粒数と到穂日数との間に明瞭な相関は認め られなかった(第 2 図). 一次枝梗および二次枝梗の着生分布に及ぼす出穂期遺伝 子の効果を明らかにするために,Ef1 座の遺伝子型が異な る 2 系統,TNL5(ef1)と TNL7(Ef1)とを比較した.一 次枝梗数および二次枝梗数は TNL5 の方が多くなった(第 1 表,第 3 図).相対的な着生分布の比較では,下位およ び中位では TNL5 のほうが平均粒数,平均二次枝梗数とも に多く,上位では TNL7 の方が多くなる傾向があった(第 4 図).以上のことから,早生対立遺伝子 Ef1 は一次枝梗 の着生部位中位から下位にかけて,一次枝梗数および二次 枝梗数を減少させる効果をもつと考えられた. 次に,Hd1 座について遺伝子型が異なる 2 系統,TNL6 (hd1)および TNL15(Hd1)を比較した.一次枝梗数は TNL15 の方が多く,二次枝梗数は TNL6 のほうが多くなっ た( 第 1 表, 第 3 図 ). 相 対 的 な 着 生 分 布 の 比 較 で は, TNL15 の平均粒数および平均二次枝梗数が TNL6 よりも 少なくなる傾向が認められた(第 4 図).以上のことから, 晩生対立遺伝子 Hd1 には二次枝梗数を減少させる効果を もつと考えられた. 二次枝梗の着生分布について,Sasahara et al. (1985)は 帽子頭,レイメイ,Panbila,Stripe 136,Anthocyane およ びこれらを交配した交雑集団において,二次枝梗の分布が 着生上位,中位,下位優勢型などに分類でき,遺伝的に支 配されていると報告している.また,池田ら(2006)は, 穂の中央部から先端にかけて分枝数が減少するタイプ,中 央部に多く分枝を生じるタイプおよび基部から先端にかけ てほぼ一定に分枝し続けるタイプの三つに分類されると報 告している.一方,加藤(2006)は,穂重心指数(PCI) および PCI の二次モーメントである穎花散布度(DSD)を 用いて,登熟能力と穂型の関連性の検討が重要であると指 摘している.池田らの評価法では,極端に一次枝梗数に差 がある複数系統間で二次枝梗の分布の差を直接比較するこ

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第 1 図 一次枝梗および二次枝梗の着生分布を示す二 次元マッピング . 「2」以上の数値の個数が二 次枝梗数を示す . 「1」は一次枝梗に着生した 籾を表す .

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R = 0.0762 R= 0.8338 R = 0.3929 第 2 図 到穂日数と穂形質との相関 . (A)一穂粒数 . (B)一次枝梗数 . (C)二次枝梗数 ⣔⤫ྡ 㑇ఏᏊᆺ ฿✑᪥ᩘ ᯞ᱾ᩘ୍ḟ ᯞ᱾ᩘ஧ḟ ୍✑⢏ᩘ Hd1 Ef1 Ghd7 Taichung 65 hd1 ef1 Ghd7 87.4 11.8 25.3 137.7 TNL7 hd1 Ef1 ghd7 76.3 8.9 16.4 99.2 TNL5 hd1 ef1 ghd7 92.7 11.7 22.9 132.8 TNL15 Hd1 Ef1 Ghd7 110.1 12.7 14.5 111.5 TNL6 hd1 Ef1 Ghd7 84.1 11.4 27.4 150.2 第 1 表 台中 65 号および準同質遺伝子系統の到穂日 数,一次枝梗数,二次枝梗数および一穂粒数 作物研究 60 号(2015) 28

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とは困難であった.本研究では,一次枝梗に着生した総籾 数および二次枝梗数を相対化し,池田らの評価では判定困 難であった複数系統間での二次枝梗および穀粒の着生位置 の違いを示すことができた.今後は,突然変異系統の穂形 質を相対的に評価することで更に突然変異遺伝子の定量的 な効果を比較できると期待される.

謝 辞

本研究に用いた台中 65 号およびその準同質遺伝子系統 TNL6 は蔡国海博士から譲与いただいた.また準同質遺伝 子系統 TNL15 は鹿児島大学,一谷勝之博士から譲与いた だいた.

引用文献

Endo-Higashi, N. and T. Izawa (2011) Flowering time genes

Heading date 1 and Early heading date 1 together control

(A) (B) (C) (D) 0 2 4 6 8 10 0 10 20 ୍ḟᯞ᱾╔⏕༊⏬ ᖹᆒ⢏ᩘ TNL5 TNL7 0 2 4 6 8 10 0 2 4 ᖹᆒ஧ḟᯞ᱾ᩘ TNL5 TNL7 0 2 4 6 8 10 0 10 20 ୍ḟᯞ᱾╔⏕༊⏬ ᖹᆒ⢏ᩘ TNL6 TNL15 0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 ᖹᆒ஧ḟᯞ᱾ᩘ TNL6 TNL15 第 4 図 . 一次枝梗の着生区画おける平均粒数および平 均 二 次 枝 梗 数 .(A)TNL7 (Ef1 ) お よ び TNL5 (ef1 ), (B) TNL15 (Hd1 ) および TNL6 (hd1 )

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(A)

(D)

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Estimation of the Distribution Pattern of Grains and Branches in Rice Panicle

Kyoko Kikuzawa, Yumi Imamura, Daichi Toda, Hiroki Saito, Takayuki Yokoo, Yoshihiro Yoshitake, Takuji Tsukiyama, Masayoshi Teraishi, Yutaka Okumoto

Graduate School of Agriculture, Kyoto University (Kitashirakawa-oiwake, Sakyoku, Kyoto, 606-8501, Japan)

Summary: Flowering time is one of most important traits to contribute the regional adaptability in rice. Recent molecular genetic studies reveal a lot of genes involved in controlling not only À owering time, but also yield related traits. In this study, We investigated the distribution patterns of the primary rachis-branches and the secondary rachis-branches, by using a Taiwanese rice variety Tachung 65 and its near isogenic lines for À owering time gene loci, Hd1, Ehd1 and Ghd7. To evaluate the pleiotropic effects on the grain distribution patterns, we applied two methods of two-dimension mapping and graphical evaluation based on the relative branching position of the primary branch. The experimental results showed that Ef1 reduced the numbers of the secondary branches, especially at the middle and bottom part of the primary branches in the panicle. Hd1 also reduced the numbers of the secondary branches at all parts of the primary branches in the panicle.

Keywords: Flowering time gene, Grain distribution pattern, Panicle architecture and Pleiotropic effects

Journal of Crop Research 60: 27-30(2015) Correspondence: Yutaka Okumoto([email protected]) 作物研究 60 号(2015)

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