2014 Autumn Vol.74
ビッグデータ
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人間力
カルビー/ウェザーニューズ/
帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス
Cのキセキ
POWER PROJECTOR
特集
2377
あの人の仕事を変えたブ
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の瞬間に迫る
「POWER PROJECTOR」 location:ハイアット リージェンシー大阪 アーバンリゾートウエディング 【 詳細は28ページ「Cのキセキ」】 キヤノンのある風景 Cover 2 は じ め の 半歩 声優 ・ タ レ ン ト 山寺宏 一 さ ん 4 特集ビ
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人間力
16 き ず な の マ ー ケ テ ィ ン グ 株式会社 フ ォ ー デ ッ ク 代表取締役社長 沖本光 旦 さ ん 18 imaging S 「 未知 な る 世界 」 写真家 竹沢 う る ま さ ん 21 フ ォ ト な び ⑲ E O S M 2を 持 っ て 旅 に 出 よ う ! 横 と 縦 の 比率 を 変 え て 撮影 す る 22 I T ソ リ ュ ー シ ョ ン の カ エ ル 力 V ol.7 ﹁ W e b コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 現在 と こ れ か ら ﹂ W e b 会議 シ ス テ ム﹁ I C 3 ︵ ア イ シ ー キ ュ ー ブ ︶﹂ 26 売 れ る モ ノ に は 理由 が あ る ヒ ッ ト の ピ ン ト 第 4回﹁
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28 Cの キ セ キ 〜 キ ヤ ノ ン 製品 に 込 め た 思 い 〜 Episode.7﹁
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34 世界 が 認 め た ニ ッ ポ ン﹁
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︵ ロ シ ア ︶ 35 Canon T opics ﹁ P I X U S の ラ イ ン ア ッ プ 刷新 お よ び 新 シ リ ー ズ M A X I F Y 登場 ﹂ほ か 36 Event Information キ ヤ ノ ン イ ー グ ル ス 試合情報 編集・発行 キヤノ ン マ ー ケ テ ィ ン グ ジ ャ パ ン 株式会社 コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン 本部 広報部 〒 108 ─ 8 0 1 1 東京都港区港南 2 ─ 16─6 電話 03─6 7 1 9 ─ 9 0 9 4 発行人・松阪喜幸 編集人・上野 敦 制作ス タ ッ フ Editor 安藤夏樹 、御船晶子 、菅原 研 、中村真紀 、 榎本 暁( 日経BP コ ン サル テ ィ ン グ ) Writer 二階堂 尚 、宇治有美子 、い なもあきこ 、千葉はるか 、 井上隆文 、小泉森弥 、手代木建 Art Director おおうちおさむ ( ナ ノ ナ ノ グ ラ フ ィ ッ ク ス ) Designer 伊藤 絢( ナ ノ ナ ノ グ ラ フ ィ ッ ク ス ) Cover Photographer 大腰和則 Photographer 本浪隆弘 、江藤海彦 、和泉義貴 ( s t u d i o - L ) 、 吉澤咲子 ( ブ ル ー ス ト ー ン ス タ ジ オ )、 大腰和則 、 上内かなえ ( U M U K A )、 武藤奈緒美 、 G O T O A K I 、 井上裕康 、山田愼二 Illustrator 寺 田 晶 子 ( ヒ ッ ト の ピ ン ト ) 岡田 丈 / vision track ( I Tソ リ ュ ー シ ョ ン の カ エ ル 力 ) Cooperation 石州瓦 工業組合 ( 世界が認めたニ ッ ポン ) ※本誌で 紹介して い る製品 ・ サ ー ビ ス など の 名称は 、 一般 に 各社 の 商標または登録商標で す 。 こ と で 、 自 分 の 持 ち 味 を 出 そ う と 考 え ま し た 」 元 の作 品 を 何 度 も 見 て 、 俳 優 の声 を 繰 り 返 し 聞 く 。 そ う し て そ の イ メ ー ジ を 吸 収 し て 、 自 然 な 口 調 に な る ま で セ リ フ の 練 習 を 重 ね る 。 も ら っ た 役 を 自 分 の も の に す る た め に 、 い つ も 必 死 だ っ た と 振 り 返 る 。 し か し 、 そ れ は 必 ず し も つ ら い こ と で は な か っ た 。「 小 さ い 頃 か ら 人 の 声を ま ね る の が 大 好 き だ っ た か ら 」だ 。 「 つ い 、 ま ね ち ゃ う ん で す よ 。 声 優 の 仕 事 を 始 め た 頃 も 、 他 の 人 が や っ て い た 役 を 、 家 に 帰 っ て 全 部 一 人 で 再 現 し て 楽 し ん で い ま し た( 笑 )」 そ の 才 能 が 後 に 、 声 優 の 枠 を 超 え て「 も の ま ね の 達 人 」と し て 開 花 し た の は 周 知 の 通 り だ 。 月 曜 か ら 金 曜 ま で の朝 の 子 供 向 け 番 組「 お は ス タ 」 の 司 会 を 務 め て 、 今 年 で 18年 目 に な る 。 「 あ の 番組 で 皆 さ ん に 顔 を 覚 え て い た だ い て 、 仕 事 の 幅 が ぐ っ と 広 が り ま し た ね 」 俳 優 、 ナ レ ー タ ー 、 バ ラ エ テ ィ ー 番 組 と 、 活 躍 の フ ィ ー ル ド は キ ャ リ ア を 重 ね る ご と に 広 が る 一 方 だ 。 最 近 、 演 劇 ユ ニ ッ ト を 起 ち 上 げ 、 歌 手 と し て デ ュ エ ッ ト 曲 も 発 表 し た 。 慣 れ 不 慣 れ は あ っ て も 、 あ ら ゆ る 仕 事 に プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル と し て 臨 む こ と 。 そ れ が 自 分 に 仕 事 を オ フ ァ ー し て く れ た 人 へ の 恩 返 し で あ る と 話 す 。 「 い つ も 期 待 を 超 え る 仕 事 を し て 、 た く さ ん の 人 に 喜 ん で い た だ き た い 。 そ れ が 声 優 を 始 め た 頃 か ら ず っ と 変 わ ら な い 気 持 ち で す 。 そ の 気 持 ち が 全 て の 仕 事 を つ な げ て い る 。 そ う 感 じ て い ま す 」 「 職人 」と い う 呼 び 名 が 最 も ふ さ わ し い 声 優 で は な い だ ろ う か 。 洋 画 の 吹 き 替 え で は 、 ト ム ・ ク ル ー ズ や ブ ラ ッ ド ・ ピ ッ ト と い っ た 二 枚 目 俳 優 か ら 、 エ デ ィ ・ マ ー フ ィ 、 ジ ム ・キ ャ リ ー と い っ た 個 性 派 まで を 幅 広 く こ な し 、 ア ニ メ で は『 宇 宙 戦 艦 ヤ マ ト 』の 古 代 進 や『 ル パ ン 三 世 』 の 銭 形 警 部 な ど の 人 気 キ ャ ラ ク タ ー を 巧 み に 演 じ る 。 ド ナ ル ド ダ ッ ク 、 ス テ ィ ッ チ 、 め い け ん チ ー ズ な ど 、 人 間 以 外 の キ ャ ラ ク タ ー も お 手 の も の だ 。 し か も 、 ど れ 一 つ と し て 同 じ 声 は な い 。 誰 にも ま ね の でき な い 、 多 彩 に し て 多 才 な 役 作 り 。 し か し 、 そ の「 小 器 用 さ 」が 実 は コ ン プ レ ッ ク ス だ っ た と 、 山 寺 宏 一 さ ん は 話 す 。 「 何 で も で き て し ま う と い う こ と は 、 声 に 個 性 が な い と い う こ と で す よ ね 。 若 い 頃 は 経 験 を 積 む た め に 、 と に か く い ろ い ろ な 役 に チ ャ レ ン ジ し て い た の で す が 、 周 囲 か ら は『 お ま え っ て 、 ほ ん と 器 用 貧 乏 だ よ な 』と い つ も 言 わ れ て い ま し た 」 ク リ ン ト ・ イ ー ス ト ウ ッ ド な ら ば 山 田 康 雄 、 ピ ー タ ー ・ フ ォ ー ク な ら ば 小 池 朝 雄 、 ク ラ ー ク ・ ゲ ー ブ ル な ら ば 納 谷 悟 朗 、 ア ラ ン ・ ド ロ ン な ら 野 沢 那 智 ― ― 。 あ ら ゆ る 人 を 納 得 さ せ る よ う な 、 そ ん な は ま り 役 が 自 分 に は な か っ た 。 だ か ら 、 工 夫 を 重 ね る し か な か っ た 。 そ う 山 寺 さ ん は 言 う 。 「 個 性 や 演 技 力 で は 先 輩 た ち に 太 刀 打 ち で き ま せ ん か ら 、 オ リ ジ ナ ル の 俳 優 に で き る 限 り 近 い 声 を 再 現 す る やまでら・こういち◉1961年6月17日、宮城県塩竈市生まれ。東北学院大学卒業後、俳協養成所に入所。85年、オリジナルビデオアニメ『メガゾーン23』で声優デ ビュー。97年から子供向け番組「おはスタ」のメイン司会者を務める。テレビ、ラジオ、映画、ゲーム、CM、舞台などさまざまな分野で活動を続けている山
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2014 Autumn Vol.74 2 3 C-magazine 2014 Autumn C-magazine 2014 Autumn 3 2IT企業や流通業、製造業をはじめ、幅広い業界に広がりつつあるビッグデータの活用。
コンピューターでデータの分析結果を出すことができても、全てをI T任せにしていては、
そこから改革を実行し、新事業を創造していくことはできないだろう。
人間の力でしか集められないデータを融合させる——。
人間の経験に基づく分析を行い、新しいアイデアを導く——。
必要なのは、データと人間の力との融合だ。成功事例から、新時代のデータ戦略に迫る。
す れ ば い い の だ ろ う か
—
。 星 野 さ ん の 一つの提案が、行動経済学の知見を応用 することだ。 従 来 の 経 済 学 は、 「 人 間 の 合 理 的 行 動 」 という基盤の上に築かれてきた。人は損 をするより得をすることを選ぶ。なぜな ら、その方が合理的だから。それが経済 学の暗黙の前提だ。それに対し、心理学 の方法論などを応用した行動経済学は、 「 人 間 は し ば し ば 合 理 的 と は い え な い 行 動 を す る 」こ と を 出 発 点 と す る。 こ の 考 え方をベースに、経済活動を通して人間 が行いがちな判断や行動を研究する学問 が、行動経済学である。 「行動経済学が注目されたのは、一見非 合理に見える人間の行動にも、法則や傾 向があることを指摘したことによってで した。その法則や傾向を実験によって明 らかにしたことが、この学問の大きな功 績です」 例 え ば、 「 割 引 セ ー ル を す れ ば、 来 客 数 が 増 え て、 売 り 上 げ が 伸 び る 」と い う 広く信じられているセオリーがある。し かし、行動経済学の知見によれば、この セオリーは長期的に見て誤りであるケー スが多い。 「 割 引 は 多 く の 人 に“ お 得 感 ” を 与 え ま す が 、 実 は 、 そ の 割 引 が 終 わ っ て 正 価 に 戻 っ た と き の“ 損 失 感 ” の 方 が 大 き い こ と が 、 行 動 心 理 学 の 実 験 の 結 果 、 明 ら か に な っ て い ま す 。 つ ま り 、“ お 得 感 ” を 醸 成 す る こ と に よ っ て 獲 得 で き る 顧 客 よ り も 、“ 損 失 感 ”を 与 え る こ と で 失 っ て し ま う 顧 客 の 方 が 多 い 可 能 性 が 高 い の で す 」 行動経済学の領域には、このような知 見が蓄積していると星野さんは話す。ビ ッ グ デ ー タ と、 こ う い っ た い わ ば「 人 間 的 知 見 」を う ま く 組 み 合 わ せ れ ば、 よ り リアルで緻密なストーリーを作ることが できる。それが星野さんの意見だ。 経済行動とは、もとより人間的行動で あ る。 自 ら を「 買 い 手 」 の 立 場 に 置 い て みれば、自分がいかに気まぐれに、その ときのフィーリングや状況に応じて購買 決定や商品選択をしているかがすぐに分 か る。 そ の よ う な 人 間 的 行 動 を、 「 売 り 手 」の 立 場 か ら 想 像 し、 仮 説 を 立 て、 実 行し、検証すること。その素材となりツ ールとなるのがビッグデータであり、行 動経済学が提供してくれるような人間的 知見である。 高度成長時代、生活者のストーリーの パターンは限られていた。しかし、日本 が成熟社会を迎えた今日、人々のストー リーはいよいよ多様化し、いよいよ複雑 化している。その時代にあって、いかに リアルで、いかに人間への洞察を備えた ス ト ー リ ー を 紡 い で い く か—
。 そ れ が、 モノやサービスを売る立場にある全ての 人 間 に 求 め ら れ て い る と い っ て い い だ ろう。 私たちの身の回りのあらゆる機器がネ ッ ト ワ ー キ ン グ さ れ る I o T( I n t e r n e t o f T h i n g s : モノのインターネット) の時 代が早晩到来するといわれている。そう なれば、日々蓄積していくデータは一層 加 速 度 的 に「 ビ ッ グ 」 に な っ て い く だ ろ う。しかし、それを使いこなす適切なス キルがなければ、ビッグデータが企業の 果実となることはない。そのスキルの一 つ が、 人 間 的 知 見 で あ り 人 間 的 洞 察 で あ る こ と は 間 違 い ない。 ることなどがあると考えられます」 マーケティングサイエンスを専門とす る、東京大学大学院准教授の星野崇宏さ んはそう語る。 インターネットの普及によって、ウェ ブ閲覧やECサイトでの購買履歴などの データが膨大にストックされるようにな ったという事実を、そこに付け加えても いいだろう。データの母数は、この 10年 ほどの間に爆発的に膨れ上がっている。 しかし、蓄積されたその膨大なデータ のポテンシャルを生かしたマーケティン グ手法は、まだ確立していないと言われ ている。生活者の行動をこと細かに示す データがあるのに、それをどう自社のマ ーケティング活動につなげていいか分か らない。それが多くの企業が抱えている 悩みだ。 「重要なのは、そのデータを基にして、 いかに納得感のあるストーリーを作るか です。そのストーリーがなければ、顧客 の心を捉えるマーケティングを実現する ことは難しいでしょう」 デ ー タ を 基 に し た ス ト ー リ ー 作 り—
。 それは、数字や断片的記録により構成さ れ る「 デ ー タ 」 と い う 抽 象 的 素 材 か ら、 「 生 身 の 人 間 の 行 動 」 と い う 具 体 的 な 像 を描き出していく作業といってもいいだ ろう。 では、そのストーリーを紡ぐにはどう こ の 一 年 ほ ど で「 ビ ッ グ デ ー タ 」 と い う言葉を新聞や雑誌で目にする機会が格 段に増えている。生活者の行動に関する 膨 大 な デ ー タ—
。 そ れ が ビ ッ グ デ ー タ の最もシンプルな説明だ。もちろん、そ のようなデータが過去になかったわけで はない。 「マーケティングの領域では、生活者の データを企業活動に生かすことはこれま でもごく当たり前に行われてきました。 しかし、近年になってとりわけデータ活 用に注目が集まっている背景には、経済 産業省や総務省が消費者データの有効利 用を本格的に推進し始めたことや、デー タを解析するシステムの開発が進んでい 1975年生まれ。博士(学術、東京 大学)、博士(経済学、名古屋大 学)。ノースウェスタン大学ケロッ グ経営大学院客員、名古屋大学大 学院経済学研究科准教授などを 経て2014年4月より現職 ほしの・たかひろ星
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膨大 に 蓄積 し た ビ ッ グデ ー タを有効 に 活用す る 方法を、 現在、 多く の 企業 が 模索 し て い る 。 デ ー タ活用 の カ ギ に な る と い われて い る の が 、「 人間 に 対す る 洞察 」だ。 そ の「 洞察 」を行動経済学 の 知見 に 求め る こ とを提唱 し て い る 星野崇宏さ ん に 話を聞 い た。 6 7 C-magazine 2014 Autumn C-magazine 2014 Autumnカルビーの業績が好調だ。スナック菓 子市場における国内シェアが5割を超え たのは、昨年初頭のこと。連結の売上高 は、 こ の 5 年 で お よ そ 1 ・ 4 倍 に な っ て いる。その順調な経営の屋台骨を支えて い る の が、 ロ ン グ セ ラ ー「 カ ル ビ ー ポ テ ト チ ッ プ ス 」を は じ め と す る じ ゃ が い も 原料の商品である。 カルビー製品に使われる国産じゃがい も の 量 は、 年 間 お よ そ 25・ 9万 ト ン ( 2012 年産) 。うち、約8割に当たる 17・ 9万 ト ン が 北 海 道 で 生 産 さ れ る。 北 海 道 で 作 ら れ る じ ゃ が い も の 量 と 質 が、 事実上、カルビーの経営を左右している というわけだ。 その原料じゃがいもの調達、貯蔵、品 種開発といった重要な役割を担っている のが、関連会社のカルビーポテトである。 同社は2004年、北海道で産出するじ ゃがいもの収量と品質を安定させるため のデータ収集活動を始めた。 「 そ れ 以 前、 じ ゃ が い も 生 産 の ノ ウ ハ ウ は、ほぼ契約生産農家の皆さんの経験に 依存していました。しかしそれだけでは、 求められる水準の原料を安定的に供出で きない可能性があります。そこで、植え 付けから収穫までのあらゆるデータを集 めて、収量と品質をコントロールできな いかと考えたわけです」 同社馬鈴薯研究所栽培技術課の小野豪 朗さんはそう話す。生産現場に足を運び、 自らの五感を駆使してデータを収集する こから日光が土中に差し込みます。それ がじゃがいもの緑化の原因となっていま した。そこで、フィールドマンが北海道 の全産地を調査し、種芋をどのくらいの 深さで植えれば日光が差し込まず、緑化 を低減できるかを明らかにしたのです」 結果、じゃがいもの緑化は大幅に減少 し、緑色のポテトチップスが消費者に届 く こ と も ほ ぼ な く な っ た。 「 人 力 」に よ る データ収集活動が、製品の品質を安定さ せたというわけだ。 一 方、 「 人 力 」以 外 の デ ー タ 収 集 も 実 践 している。同社は 08年、道内全5カ所に 気 象 セ ン サ ー を 設 置 し、 気 温、 降 水 量、 湿度、気圧、風向き、風速、日射量、日 照時間などのデータを自動で収集する仕 組みを作った。ここで得られる気象デー タ と 収 穫 情 報 を 照 ら し 合 わ せ る こ と で、 気候とじゃがいも生育との関係を捉える 研究を進めている。 今後の目標は、フィールドマンが収集 する人力データと、自動的に取得される デジタルデータを掛け合わせ、より確度 の は、 「 フ ィ ー ル ド マ ン 」と 呼 ば れ る 社 員 だ。フィールドマンは、北海道全域でお よそ 20カ所を数えるじゃがいも産地をそ れぞれ担当し、種芋を植える深さ、間隔、 最初に出る芽の本数、肥料の種類と量な どを事細かに記録していく。病気の兆候 を捉えるのも、彼らの重要な役割だ。 「 じ ゃ が い も の 生 育 条 件 は、 畑 ご と に 異 なります。それぞれの畑のデータを記録 した一種のカルテを作成して、そこから 改善点を洗い出していく作業を現在も続 けています」 フィールドマンによるこの地道なデー タ 収 集 が 大 き な 成 果 を 発 揮 し た 一 例 が、 「 緑 化 防 止 」 で あ る。 じ ゃ が い も に は、 日光を浴びると表面に近い部分が緑色に なるという性質がある。これをそのまま 加工すると、ふちが緑色のポテトチップ スが出来上がり、その見た目から消費者 のクレームにつながる可能性がある。小 野さんはこう説明する。 「 畑 の 土 が 乾 燥 す る と、 ひ び が 入 り、 そ の高い収量予測を立てていくことだ。 「 各 産 地 の デ ー タ を ベ ー ス と し、 そ こ に 変動要因としての気象データを加えるこ とで、例えば、冷夏の年にはどのような 対策を取ればいいかといったことが見え てくると考えています」 気象条件が同じでも、土壌や立地条件 により栽培方法が異なる以上、対策法は 個 別 に 立 て て い か な け れ ば な ら な い。 個々の生産者と話し合いながら、よりよ い生産法を考えていくこともまた、フィ ールドマンの重要な仕事だ。センサーに よ る デ ー タ 収 集 が ど れ だ け 進 ん で も、 「 人 力 」 が 果 た す 役 割 が な く な る こ と は ない。そう小野さんは言う。 「 カ ル ビ ー 製 品 に 必 要 な じ ゃ が い も の 量 は、将来的に 30万トンになると予測して います。 今後、生産地でのデータ活用は ますます重要になっていくでしょう」 老若男女に愛され続けているポテトチ ップス。データ収集と活用の根気強い取 り組みが、人気商品の品質と、市場への 安定供給を支えている。 生産者専用のWebサイト。生産 者への情報発信の窓口だ。気象 センサーで取得した情報は、自動 的にこのサイトにアップされる カルビーポテトにてデータの収 集、管理、分析などを担当してい る小野豪朗さん。2006年の入社 当時は、フィールドマンだった ▲ 看板商品のひとつ 「じゃがりこ サラダ」 ▲ 左は「ポテトチップス うすしお味」、右は「堅あ げポテト うすしお味」 収穫されたじゃがいもは、カ ルビーの工場や貯蔵庫に送 られる。一年近くにわたって 原料を傷まないように貯蔵 するのも、重要な役割だ 北海道の十勝地区に広がる じゃがいも畑。備え付けら れた気象センサーが、気温 や降水量などのデータを自 動で収集している ビッグデータ 人間力 じゃがいもの植え付けや収穫は可能な限り機械化され、 効率化されているが(上)、「人力」による作業も多い。じ ゃがいもの傷んだ部分や緑化した部分を取り除く作業 は、現在も人の手によって担われている(左)
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カルビー
地道な「人力」データ収集で 人気商品の品質を守る case study データ 収集 に人間力を生かす ここからは、「ビッグデータ」に「人間力」を融合させ、 成功している企業の事例を見ていこう。 ビッグデータに人間にしかできない仕事をいかに加えるか—。 それにより、膨大なデータは有用なデータに変わるのである。2
ウェザーニューズ
生活者からの「感測データ」が 気象予報の精度を向上させる case study ビッグデータ 人間力 気象予報はデータ活用が最も進んでい る分野の一つだ。国内外の観測所から得 られる気温、気圧、風向・風速などのデ ー タ を コ ン ピ ュ ー タ ー に イ ン プ ッ ト し、 気 象 の 推 移 を ほ ぼ 自 動 的 に 算 出 す る「 数 値 予 報 」と 呼 ば れ る 方 法 が、 現 代 の 気 象 予報の根幹を成している。 その科学的モデルによる予報を生活者 から寄せられるデータで補完しているの がウェザーニューズである。同社は、空 や雲の様子を携帯電話のカメラで撮影し 投稿してもらう取り組みを2005年に ス タ ー ト さ せ た。 現 在 は、 W e b サ イ ト と ス マ ー ト フ ォ ン ア プ リ「 ウ ェ ザ ー ニ ュ ー ス タ ッ チ 」で デ ー タ の 収 集 と 情 報 提 供 を 行っている。中でも成果を上げているコ ン テ ン ツ の 一 つ が、 「 ゲ リ ラ 雷 雨 防 衛 隊 」 だ。取締役の森田清輝さんは説明する。 「 ゲ リ ラ 雷 雨 が 発 生 し そ う な 地 域 を 従 来 の観測データから割り出し、そこに居住 している方々に雲の写真を送っていただ きます。その画像を解析することで、雷 雨の危険性が高いエリアを細かく絞り込 んでいくことが可能になります。現在の 科学でゲリラ雷雨をピンポイントで予測 することは不可能であると言われていま した。しかしこの方法なら、特定の地域 を 60分後に雷雨が襲う確率を、ほぼ9割 の精度で言い当てることができます」 ス マ ー ト フ ォ ン ア プ リ「 ウ ェ ザ ー ニ ュ ー ス タ ッ チ 」の ダ ウ ン ロ ー ド 数 は、 現 在 1000万超。いわば、1000万を超 えるミクロな観測所が全国に点在してい るということだ。ユーザーは、天気予報 に関する専門的知識がなくても、住み慣 れた地域の天候に異変があれば、それを 感覚的に察知することができる。同社が 「 感 測 デ ー タ 」 と 呼 ぶ そ の 情 報 が 全 国 か ら寄せられることによって、科学的観測 だけでは難しいリアルで緻密な気象予測 が可能になる。 「“感測データ” が従来の数値予報を強化 する方法論を今後、確立していきたいと 考えています」 顧客がホテルに到着したという連絡がインカムでドアマン から入れば、すぐにフロントに伝えてチェックインの準備 を促す。ロビーで待っている顧客がいれば、声をかけて要 望を聞く。チェックアウトの際は、手続きの進み具合を見な がらベルマンやドアマンと連携し、車までスムーズに誘導 する─ 。その全てが、「ロビーマネージャー」の仕事だ。 この耳慣れない職種を帝国ホテルが設置したのは、2005 年のこと。外資系ホテルに対抗するためのサービス強化策の 一環として設けられた職種である。 「ドアマン、ベルマン、フロント、ゲストサービスといった 持ち場をつなげ、“面”にするのが私たちの仕事です」 9人いるロビーマネージャーの一人、金井大輔さんはそう 話す。特筆すべきは、全てのロビーマネージャーが「顧客単 位」でサービスを行うスキルを身に付けている点だ。それぞ れのロビーマネージャーの頭にインプットされている顧客情 報は1000人以上。顔を見れば、即座に名前や好みが想起さ れ、どのような応対をすればいいかが分かるという。 「お客さまの詳細なデータは、システムでも管理されていま す。そのデジタルデータと、過去に交わした会話の内容など の両方を活用することで、それぞれのお客さまに最適なサー ビスをご提供することが可能になります」 タブレット端末で顧客データを見ながら接客をするという 方法もあり得なくはないだろう。しかし、それでは「自然な 接客」にはならないと金井さんは言う。 「大切なのは、私たちがお客さまを“覚えている”ことです。 顔を見て、お名前でお声掛けをすれば、多くの方々がホテル のファンになってくださいます。そうや ってお客さまとホテルの距離を近づけて いくことが私たちの一番の役割です」 データと人間力の融合が、他にはない 高品質なサービスを生み出している。 上/到着した顧客に名前で呼びかけ、 笑顔で荷物を受け取る。「この顧客に はどのようなサポートをするのが最適 か」といった情報も、全て頭にインプッ トされている 下/ロビーでは、常に顧客が声をかけ やすい場所に位置取る。ケアが必要 そうな顧客がいれば、静かに近寄り声 をかける。「声をかけてほしくない」と いう雰囲気が感じられる場合は、遠く から見守るにとどめる。マニュアルは 一切ない。全ては、日々の訓練と経験 のたまものだ 右/同社はコンテンツのユーザ ーを「サポーター」と呼ぶ。写真 やコメントが全国のサポーター から連日寄せられる 左/オフィスでは、サポーターか ら送られてきた写真が、エリアご とにリアルタイムで表示される 上/取締役の森田清輝さん。「将来的には、サポー ターの皆さんの天気に関する知識が高まり、自ら天 気予報ができるようになるのが理想」と話す 下/世界中から届く気象データは、コンピューター でほぼ自動的に解析される。現在、この「観測デー タ」と「感測データ」の融合が目指されているそ の 究 極 の 形
帝国ホテル・ロビーマネージャー
顧客データの有効活用は、サービスレベルの向上につながる。 しかし、接客の現場で実際にサービスを行うのは、 常に生身の人間である。 データを血の通ったサービスにつなげて顧客とのリレーションを 強化しているのが、帝国ホテルだ。「
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人間力
」
ロビーマネージャー発足 当初からこの職種を担当 している金井大輔さん。 初めてのゲストでも、観 察し、コミュニケーションを する中で、どのような人か がおおむね分かるという COLUMN 千葉・幕張のウェザーニュ ーズ本社にある「ゲリラ雷 雨防衛隊本部」。ゲリラ雷 雨発生が予測されると、こ こからその地域に住む「隊 員」にミッションを送り、雲 の画像などを収集する データ 収集 に人間力を生かす 11 C-magazine 2014 Autumn C-magazine 2014 Autumn 10「 ガ ス ト 」「 ジ ョ ナ サ ン 」「 バ ー ミ ヤ ン 」な ど、レストランチェーン約3000店舗 を 全 国 で 展 開 し て い る「 す か い ら ー く グ ル ー プ 」。 神 谷 勇 樹 さ ん が 一 員 と な っ た のは、昨年秋のことだった。コンサルテ ィング会社を経て、グリーでビッグデー タを担当してきたデータ分析のプロフェ ッショナルだ。 以 前 よ り、 す か い ら ー く で は P O S ( 販 売 時 点 情 報 管 理 ) デ ー タ を 店 舗 経 営 に生かしてきたが、ビッグデータの専門 家を迎え、データ活用をいよいよ本格化 させた。グループの全店舗から得られる POSデータは一日数百万件。その膨大 な顧客データをはじめ、過去のキャンペ ーンデータや提携企業が保有するビッグ データを、メニュー改善や人員配置の最 適化、マーケティング戦略の立案などに 生かしている。 「 デ ー タ 活 用 の 目 的 は、 お 客 さ ま を よ り 深 く 理 解 す る こ と に 尽 き ま す。 し か し、 過去に蓄積したデータだけでは、それを 実現することはできません」 神谷さんが挙げるのはこんな例だ。ガ ス ト で 昨 年 実 施 し て 好 評 を 得 た「 ア メ リ カ ン フ ェ ア 」を 今 年 再 び 展 開 す る に 当 た り、新しいメニューの試食調査を実施し た。 そ の 結 果、 数 あ る メ ニ ュ ー の 中 で、 ガ ス ト の 中 で は 高 価 格 帯 に 属 す る「 ミ ス ジ ス テ ー キ 」の 人 気 が 突 出 し て 高 い こ と が分かった。 「 過 去 の デ ー タ か ら 見 れ ば、 手 頃 な 価 格 が、 デ ー タ に「 人 間 力 」 を 掛 け 合 わ せ る ことだ。 「 人 間 力 に は 二 つ の 意 味 が あ る と 思 い ま す。一つが、経験を基にデータを読む力。 もう一つが、データから見えてきた仮説 を実現させる力です」 す か い ら ー く グ ル ー プ の 新 入 社 員 は、 全 員 が 一 度 は 店 舗 で の 仕 事 を 経 験 す る。 そこでの接客経験が、データを読み取る 際に生かされることになる。 「 同 じ デ ー タ を 見 て も、 何 を 読 み 取 る か は人によって異なります。その差をもた らすのが経験の質。お客さまとより深く 接した経験がある人ほど、データを深く 読むことができるのです」 神谷さんに店舗での経験はない。だか ら自身は、店舗経験を持つ他のスタッフ にデータ活用の方法論や考え方を示す立 場に徹する。結果、接客のスキルとデー タ活用のノウハウの両方を備えたスタッ フが育つことになる。 「 デ ー タ 活 用 の ノ ウ ハ ウ と 接 客 の ノ ウ ハ の メ ニ ュ ー を 用 意 す る こ と が“ 正 解 ” で した。しかしお客さまの声は、やや高め のミスジステーキを前面に出した新しい フェアを行うべきであることを示してい たのです」 そ の 声 に 従 っ て「 ア メ リ カ ン フ ェ ア 」 を「 ミ ス ジ ス テ ー キ フ ェ ア 」 に 変 え た 結 果、 昨 年 を 超 え る 売 り 上 げ を 記 録 し た。 「 ア メ リ カ ン ス タ イ ル の メ ニ ュ ー を 提 供 す る 」と い う 施 策 自 体 は 誤 り で は な か っ たが、どこにフォーカスすべきかが新た な調査によって明らかになった。これは そんな一例だ。いわば、顧客の生の声が 過 去 の デ ー タ を 補 正 し た と い う わ け だ。 このように、他の要素と掛け合わせるこ と で 、 蓄 積 し た デ ー タ は 力 を 持 つ 場 合 が 多いと神谷さんは言う。特に重要なの ウを切り離してはいけないと私は考えて います。接客のプロがデータの活用法を 習得し、データ活用のプロとなっていく。 それが理想的なあり方です」 も う 一 方 の「 デ ー タ か ら 見 え て き た 仮 説 を 実 現 さ せ る 力 」と は、 コ ミ ュ ニ ケ ー ション力であり、ネゴシエーション力で あり、プレゼン力である。 「 正 し い と 思 わ れ る 方 向 性 を デ ー タ が 示 し て い て も、 “ 正 し さ ”だ け で 人 は 動 き ま せん。その方向に進む意味と、期待され る成果を根気強く周囲に説明し、納得さ せなければ、データは絵に描いた餅で終 わってしまいます」 デ ー タ 活 用 の 専 門 家 は、 し ば し ば「 こ う す べ き で あ る 」と い っ た 断 定 的 な 論 調 で議論を進める。 「なぜなら、データがそ れ を 語 っ て い る の だ か ら 」 と。 し か し、 そのような言い分はビジネスの現場では 通用しないと神谷さんは言う。 「 ア イ デ ア や 仮 説 は 実 現 に 至 ら な け れ ば 意味がありません。物事を実現させる道 筋を付けるところにこそ人間力が現れる と言えるのではないでしょうか」 すかいらーくに来て約一年。 「データに は ビ ジ ネ ス を 動 か す 確 か な 力 が あ る 」と いう認識が社内に定着しつつあることを 神谷さんは実感している。 「 デ ー タ を よ り 有 効 に 活 用 す る こ と で、 お客さまの姿を一層鮮明にしていくこと。 そこに私たちのこれからのチャレンジが あると考えています」
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すかいらーく
データ活用に求められる 二つの「人間力」 case study ビッグデータ 人間力 すかいらーくグループが展 開する店舗は全10ブラン ド。中華の「バーミヤン」、和 食の「夢庵」など、ブランド ごとにコンセプトが異なる 新入社員の全員が店舗で の仕事を経験する。それ ぞれが現場で得た経験値 が、グループの貴重な資産 となっている 「アメリカンフェア」から「ミスジステ ーキフェア」への転換によって、大 幅な売り上げ増を達成した すかいらーくグループで最も 店舗数の多いブランド「ガス ト」。現在、全国で1300店舗 以上を展開している。リーズ ナブルな価格が特徴 ガストをはじめとする各店舗では、さまざ まなキャンペーンを実施している。その 実績も重要なデータとなる マーケティング本部にてデータ戦略 のディレクターを務める神谷勇樹さ ん。「社内のデータ活用のスキルを どんどん上げていきたい」と話す データ 分析 に人間力を生かす常務の松波晴人さん。米 コーネル大学大学院で行 動観察の方法を学んだ。 著書に『ビジネスマンのた めの「行動観察」入門』(講 談社現代新書)などがある しかし、私たちが数日間にわたって何 人かのお年寄りと接する中で分かったの は、次のようなことでした。 高齢者の中には、ペットの世話、孫へ の資金援助、近所への特産物のお裾分け といった行動に情熱を燃やす人たちがい る。 彼・ 彼 女 ら は、 何 か を「 し て ほ し い 」の で は な く、 何 か を「 し て あ げ た い 」 と考えている。彼・彼女らが抱えている の は、 「 自 分 の 困 り ご と 」よ り も、 「 人 に 何 か を 提 供 し た い 」と い う 思 い で あ る ─ ─。 こ こ か ら 私 た ち は、 「“ 高 齢 者 に 何 か を 提 供 す る ”の で は な く、 “ 高 齢 者 か ら 何 か を 提 供 し て も ら う ”場 を 創 出 す る こ と で、 これまでにないサービスが成立するので は な い か 」と い う 仮 説 を 導 き 出 し ま し た。 このように、対象者と接したり、現場 に足を運んだりする中から細かな事実を 集め、それを解釈し、そこから具体的な 仮 説 を 生 み 出 し て い く の が「 行 動 観 察 」 と呼ばれる方法です。 従来のマーケティングリサーチと行動 観 察 の 最 大 の 相 違 点 は、 対 象 を 知 る「 深 さ 」に あ り ま す。 行 動 観 察 で は、 対 象 者 と丸一日行動を共にすることもまれでは なく、ときには同行が一週間にわたるこ とも。その間、事実を徹底的に収集しま す。多くの対象者を調査することは不可 能ですが、たとえサンプルが5人分だけ だとしても、行動観察では本質的なイン サイト (洞察) を導くことができます。 行動観察によって得られる情報は、ビ 高齢者を対象とした新しいサービスの アイデアを出してほしい ─ ─。もし、こ のような課題を与えられたら、どうすれ ばよいでしょうか。多くの人は、最初に おそらくこう考えるはずです。 「 お 年 寄 り は、 生 活 上、 た く さ ん の“ 困 り ご と ”を 抱 え て い る は ず だ か ら、 そ れ を見つけ出し、その解決を目指すサービ スを考えればいい」 ッグデータの対極にあるデータと言って もいいかもしれません。ビッグデータは、 文字通り、データの量が膨大であるとこ ろに特徴があります。しかし、それぞれ のデータは断片的で、文脈を欠いている 場 合 が ほ と ん ど で す。 例 え ば、 「 ど の ジ ュ ー ス が ど の 店 舗 で ど の く ら い 売 れ た か 」と い う こ と は 分 か っ て も、 「 な ぜ そ の ジュースを買ったのか」 「どのような比較 検 討 の 過 程 を 経 て 選 ば れ た の か 」と い う ことは分かりません。 一方、行動観察は、対象者と深く接す ることで、事実の背後にある文脈をつか むことを可能にします。人々の行動の裏 に あ る「 な ぜ 」や 「 ど の よ う に 」が 把 握 で きるわけです。 今 後 は、 ビ ッ グ デ ー タ の「 量 」 と 行 動 観 察 の「 人 間 を 見 る 深 さ 」 を 掛 け 合 わ せ るデータ活用の方法が進んでいく。そう 私は考えています。その掛け合わせ方に は、次の2つの方法があり得るでしょう。 行動観察の結果から仮説を立て、そ れを補完するために既存のビッグデータ を 使 う 。 あ る い は 、 新 た に デ ー タ を 取 得 する。 ビッグデータから傾向や法則などを 読み取り、行動観察でそれを検証する。 行 動 観 察 は、 観 察 者 の「 人 間 力 」 が 求 められる方法です。観察の過程では、対 象者との信頼関係をつくる力や、共感す る力が必要です。データを解釈する段階 では、物事を考え続ける探求心が求めら れます。仮説を作る際に重要なのは、既 存の枠組みにとらわれずに斬新な発想を 生み出す力です。 こ う し て 必 要 な 素 養 を 挙 げ て い く と、 行動観察とは極めてハードルの高い方法 だと感じるかもしれません。しかし、本 質にある要素は実はシンプル。現場に足 を運ぶこと、お客さまとじかに接するこ と、 常 識 や 枠 組 み に と ら わ れ な い こ と、 そして、人間に対する興味を絶やさない こと ─ ─。そのような、ごく当たり前の 人 間 力 が あ れ ば、 誰 で も 行 動 観 察 を 実 行 す る こ と は 可 能 で す 。 本田技研の創設者である本田宗一郎さ ん は、 「 研 究 所 は 人 間 の 気 持 ち を 研 究 す るところであって、技術を研究するとこ ろ で は な い 」と 言 っ て、 居 酒 屋 に 足 し げ く通い、人々の様子をじっくり観察して いたといいます。そのようなマインドが あったからこそ、ホンダは人々に受け入 れられる自動車を造ることができたのだ と私は思います。 データが膨大に収集できるようになっ た 今 日 で も、 ビ ジ ネ ス の 基 本 は、 「 人 間 」 をしっかりと見て、確かな気付きを得る ことである。そう言えるのではないでし ょうか。
人間の本質を深く捉える
「行動観察」という方法
行動観察に求められるの は思い込みや偏見を取り 払うこと。一つ一つの事実 を丁寧に書き留めていく中 から、新しい発想が見える ワークショップのテーブル にも、写真と言葉で発想を 広げる仕掛けが施されて いる。この空間で、クライ アントと共に仮説を練る 行動観察研究所のワーク ショップルーム。ポジティ ブな言葉を壁に貼り付け、 思考の枠を取り払う雰囲 気をつくり出している 1 2── 大阪ガス行動観察研究所・松波晴人常務に聞く
人間を徹底的に観察し、分析し、ビジネスのソリューションを考案する─。 その「行動観察」の方法で数々の成果を上げているのが大阪ガス行動観察研究所だ。 数字的なデータからは見えてこない、人間の行動の「なぜ」や「どのように」を 浮き彫りにするその作業に求められるのもまた、「人間の力」である。 15 C-magazine 2014 Autumn C-magazine 2014 Autumn 14株式会社 フォーデック
「ファースト・コール・サプライヤーで
あり続けるのが私たちの願いです」
代表取締役社長 沖本光旦
さん 広々とした打ち合わせスペース。「フェース・トゥ・フェースのコ ミュニケーション」のための場のひとつだ 今年7月に開催した「オフィストレンドフェア」には、過去最高となる1700名以上の来場者が集った。 OA機器や文具、オフィス家具などの展示スペースの他、フォーデックの実行委員会が企画した、 クイズコーナーやカフェ、展示即売コーナーといったコーナーも用意され、来場者を楽しませたきず
なのマーケ
ティ
ン
グ
文具、紙製品、事務用品、OA機器、オフィ ス家具、ファンシー商品、ギフト商品などの 販売から、事務所や店舗の企画・設計・施 行、ネットワークソリューションまで、オフィ スの環境づくりや、オフィスソリューション をトータルに行っている。株式会社フォーデック
込める環境づくりにも力を入れていきたい と現在制度を整えています」メ
ー
カ
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、販
売
店
、ユ
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輪
を
広
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全
体
を
活
性
化
メーカーや販売会社との信頼やきずなを 深 め、 業 界 全 体 を 活 性 化 さ せ た い―
。 フ ォーデックでは、その思いを具現化するた めに、取り扱い商材である O A 機器やオフ ィ ス 家 具、 文 具 の 総 合 的 な 展 示 フ ェ ア『 オ フ ィ ス ト レ ン ド フ ェ ア 』を 9年 前 に 企 画 し、 例 年 1400 ~ 1500 人 の 来 場 者 を 集 めるフェアの運営を一手に担ってきた。 「販売店を通じて商品を提供する私どもの 業態上、ユーザーさまと直接接する機会が ほとんどなかった。そこで、接点を持つ機 会を設け、ユーザーさまが何に興味を持ち、 どんなことに困っておられるかを知る場を つくろうと考えたのがフェアを企画したき っ か け で す 」と、 フ ェ ア の 実 行 委 員 長 を 務 める専務取締役の田坂啓治さんは話す。 例年会場では、メーカーや販売店、ユー ザーが活発に意見を交換し合う光景が各所 で見られる。 7月に行われるこのフェアの 準備のため、 4月から文具や O A 機器、オ フィス家具などの各セクションから選出さ れた実行委員会のメンバーは週一度の会合 を行う。通常業務と並行して行うフェア準 備業務にかかる負担は決して少なくない。 「こうした負担を考えれば、ビジネス的に 結果が見えづらいフェアを続けていくこと は疑問視されるかもしれない。しかし、長 く続けていくことで、必ず成果は現れてく るはず」 と田坂さんは熱を込めて語った。 販売店がユーザーに商品を実際に見せな がら情報を提供したり、提案したりするこ とで、メーカーと販売店、ユーザーの輪が 広がる。そうした交流の場をビジネスにつ な げ、 広 島 か ら 中 国 四 国、 そ し て 業 界 全 体 を 盛 り 上 げ て い く の が 目 標 だ と い う 。 こ う し た 機 会 を 通 じ て「 私 た ち の 社 会 貢 献の姿勢を社内外に積極的に見せていくこ と も 大 切 」と 声 を 揃 え て 語 っ た 沖 本 社 長 と 田坂専務。業界全体のきずなを深め、広島 の 街 を 元 気 に―
。 そ の 熱 意 が 同 社 の た ゆ まぬ努力の原動力となっている。 呼び掛けている。その際に、スローガンと して折に触れて社員に語ってきた言葉があ る。 そ れ は、 お 客 さ ま に と っ て の「 フ ァ ー ス ト・ コ ー ル・ サ プ ラ イ ヤ ー」 に な る こ と である。 「ファースト・コール・サプライヤーとは、 『 こ こ に 任 せ た ら 大 丈 夫 』 だ と お 客 さ ま に 信頼していただき、何かあったときに一番 に相談してもらえる存在のこと。相談を持 ちかけられたら、常に最良の提案をしよう と、社員には語りかけてきました」 そのために大切にしているのが、フェー ス・トゥ・フェースのコミュニケーション。 時代が変わっても、人と人とが顔を合わせ、 心を通わせ合う関係の重要性は変わらない というのが、沖本社長の持論だ。 「社員には、いつも相手にとってベストを 尽くすこと。そして、たとえ何か問題が発 生した際も他責にすることなく、自分に何 ができるかを真っ先に考えることが信頼を 得ることにつながると伝えています」 顧客の信頼を高めようと、社内体制の強 化も進めている。昨年には、支社制から事 業本部制へと大幅な変革にも着手。その狙 い を「 専 門 性 の 追 求 」 と「 顧 客 満 足 の 向 上 」 だと沖本社長は説明する。 「多様化するユーザーのニーズにベストを 尽くして応じるには、より一層高いソリュ ーション力が求められます。事業本部制に することで、 O A 機器や文具、家具など、 それぞれの事業部でより専門性を持った人 材を育てることができると考えました。事 業部ごとに、社員がより快適に仕事に打ち キヤノン製品をはじめとする O A 機器や オフィス家具、文具の販売を通じて、オフ ィス空間の総合的なソリューションを展開 するフォーデック。広島など中国四国 7県 に拠点を置き、地域に密着した営業活動を 行 う。 社 名「 フ ォ ー デ ッ ク 」 は、 同 社 が 掲 げる企業理念がベースになっている。 「 F O R は『 F O R y o u o n d e m a n d ( お 客 さ ま の 要 望 に お 応 え す る )』 、 D は『 D e s i g n ( 企 画・ 設 計・ プ ラ ン・ デ ザ イ ン )』 、 E は 『 E x c e l l e n t ( 全 て に お い て 最 高 に ベ ス ト な 仕事) 』、 C は『 C o m m u n i c a t i o n (人と人との コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン )』 を 意 味 し ま す。 お 客さまにとって最適なプランを創り上げ、 信 頼 さ れ る 企 業 を 目 指 し て い ま す 」と 代 表 取締役社長の沖本光旦さん。 この理念を社員全員で共有するため、同 社では毎年 2回、沖本社長自ら行動方針をフ
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●本社/広島市西区商工センター6-9-39 ●設立/1998年11月(創業1940年) ●資本金/2億7566万5500円 ●従業員数253名(2013年現在) http://www.fordec.co.jp/ 代表取締役社長の沖本光旦さん(右)と専務取締役の田坂啓治さん(左)imaging
S
未知なる世界
写真家
竹沢うるま
さ
ん
EOS 5D MarkⅢ EOS 5D MarkⅡ EF24-70mm F2.8L II USM 〝 自 分 の 写 真 〟を 撮 ら な け れ ば な ら な い。 だ が、 〝 自 分 の 写 真 〟と は 何 か。 竹 沢 う る ま に し か 撮 れ な い 写 真 と は