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未成年の子が婚姻する場合 原則として父母双方の同意を要するが 父母の一方が同意しない場合 父母の一方が知れない場合や死亡した場合 又はその意思を表示できない場合は 他の一方の同意で足りる (737ⅠⅡ) 結局 父母のどちらか一方の同意で足りる 父母がいない場合でも 未成年後見人の同意を得ることを要し

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民法Ⅲ 【第四編 親族】 《第一章 総則》 ◇ 親族とは、①六親等内の血族、②配偶者、③三親等内の姻族をいう(725)。 ⇒配偶者の甥・姪は三親等の姻族であり、親族であるが、その甥・姪の配偶者は姻族の配偶 者にすぎず、親族にあたらない。 ◇ 縁組前の養子の子と養親との間には法定血族関係は生じない(727,大判昭7.5.11)。 ◇ 生存配偶者の姻族関係終了の意思表示には期間制限はない(728)。 ◇ 姻族関係終了の意思表示と死後離縁 姻 族 関 係 の 終 了 死 後 離 縁 方 式 戸籍法上の届出 戸籍法上の届出 家裁の許可 不要 要(811Ⅵ) 原則:復氏せず 原則:復氏する(816Ⅰ) 復 氏 例外:戸籍法上の届出によりい 例外:縁組期間が7年を超える場合、離縁の日 復氏可(751Ⅰ) から 以内に戸籍法上の届出により つでも 3ヵ月 縁組みの際の氏を称すること可(816Ⅱ) ※生存配偶者の姻族関係終了の意思表示と復氏とは何の関係もなく、姻族関係を終了させず に復氏することも、また復氏せずに姻族関係を終了することもできる。 ◇ 姻族関係の終了と復氏 離 婚 一 方 の 死 亡 原則:復氏する(767Ⅰ) 原則:復氏せず 復 氏 例外:離婚後3ヵ月以内の戸籍法上の 例外:戸籍法上の届出によりいつでも復氏 届出により離婚時の氏を称する 可(751Ⅰ) こと可(767Ⅱ) 姻族関係 当然に終了する(728) 意思表示により終了する(728Ⅱ) ※生存配偶者が再婚しても存続する 《第二章 婚姻》 〈第一節 婚姻の成立〉 (第一款 婚姻の要件) ◇ 直系血族又は三親等内の傍系血族は婚姻することができない。但し、養子と養方の傍系血 族との間では三親等内でも婚姻可(734)。

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◇ 未成年の子が婚姻する場合、原則として父母双方の同意を要するが、父母の一方が同意し ない場合、父母の一方が知れない場合や死亡した場合、又はその意思を表示できない場合は、 他の一方の同意で足りる(737ⅠⅡ)。 ⇒結局、父母のどちらか一方の同意で足りる。 ※父母がいない場合でも、未成年後見人の同意を得ることを要しない(昭23.5.8民977号)。 ◇ 未成年の子が婚姻する場合、父母が親権を辞任しているときであっても、その父母の同意を 要する。 (第二款 婚姻の無効及び取消) ◇ 取消権者 取消事由 不適齢婚 重 婚 待婚期間内の 近 親 婚 詐欺・強迫 (731) (732) 婚姻(733) (734~735) (747Ⅰ) ①各当事者 ①後婚の当事者 ①各当事者 ①各当事者 ①表意当事者 取消権者 ②親族 ②後婚の親族 ②親族 ②親族 (747Ⅰ) (744) ③検察官 ③検察官 ③検察官 ③検察官 ④前婚の配偶者 ④前配偶者 ◇ 不適齢婚の場合、離婚・婚姻の取消の際に婚姻適齢に達している者については成年擬制 の効果は失われないが、離婚・婚姻の取消の際にも不適齢の者については成年擬制の効果 は失われる(昭30.5.28民二60号)。 ◇ 配偶者の一方が、他方配偶者に無断で協議離婚届出書を作成し、戸籍係員に提出した後 他者と婚姻したとき、当該婚姻は、無効な協議離婚後になされた婚姻である以上、重婚に該当 し、他方配偶者は、協議離婚の無効を確認する審判又は判決の確定前であっても、その婚姻 の取消を請求することができる(744、最判昭53.3.9、732参照)。 ◇ 婚姻適齢に達した未成年者が父母の同意を得ずになした婚姻は、取り消すことができない (744反対解釈、737)。 ⇒父母が詐欺により同意をしたときでも婚姻の取消不可。 ◇ 不適齢者は、適齢に達した後でも、追認した場合を除いて、その後3カ月間は、裁判所に取 消を請求できる(745)。 〈第二節 婚姻の効力〉 ◇ 夫婦間で締結された契約は、婚姻中は、夫婦の一方からこれを取消すことができるが、夫婦 関係が形式的には継続していても実質的には破綻している場合には、夫婦間の契約であるこ とを理由に取消すことはできない(754、最判昭42.2.2)。 ⇔夫婦間でした贈与契約につき、夫婦間の取消権が認められない場合であっても、履行が終 わっていない部分については書面によらない贈与として取り消すことができる(550)。

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〈第三節 夫婦財産制〉 (第一款 総則) ◇ 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、こ れを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない(756)。 ◇ 夫婦財産契約は、婚姻の届出後に変更することはできないが、他の一方の財産を管理する 夫婦の一方の管理が失当であったためにその財産を危うくしたときは、他の一方は、自ら管理 をすることを家庭裁判所に請求することができる(758ⅠⅡ)。 (第二款 法定財産制) 〈第四節 離婚〉 (第一款 協議上の離婚) ◇ 他方配偶者に協議離婚届出書の提出を委託した配偶者の一方が、その後翻意し、その旨 を戸籍係員に表示している場合には、相手方に対する翻意の表示又は届出解除がなされてな くても、当該協議離婚届では無効である(最判昭34.8.7)。 ◇ 協議離婚の取消は、一般の法律行為の取消が相手方に対する意思表示で足りるのとは異 なり、必ず裁判によることを要する(764、747Ⅰ)。 ◇ 内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に財産分与の規定を類推適用することは、 準婚的法律関係の保護に適することから認められる(最決平12.3.10)。 (第二款 裁判上の離婚) ◇ 婚姻関係を破綻せしめた配偶者は、他方配偶者が同居を拒み扶助しなかったとしても、悪 意の遺棄を理由に裁判上の離婚請求不可(770Ⅰ②、最判昭39.9.17)。 ⇔有責配偶者からなされた離婚請求であっても、婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合 には、認容される余地がある(最大判昭62.9.2)。 ◇ 配偶者の一方が他方配偶者の3年以上の生死不明を理由にした離婚の訴えが認められた 場合、後に他方配偶者が生還しても、その他方配偶者は、離婚の取消を請求することはできな い(770Ⅰ③)。 ⇔失踪宣告における失踪の取消し(32) ◇ 裁判離婚は、判決の確定によって効力を生ずる。

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《第二章 親子》 〈第一節 実子〉 ◇ 嫡出子=婚姻中に懐胎した子(772Ⅰ) 要 件 訴 え 婚 姻成 立の 日か ら200日後、 推定が及ぶ 又 は 婚 姻 の 解 消 も し く は 取 消 嫡出否認の訴え(775) 嫡出子 か ら300日以内に生まれた子 推 定 さ れ る (772Ⅱ、嫡出推定) 嫡出子 嫡出推定期間内に生まれた子 推定が及ば であるが、妻が夫によって懐胎 親子関係不存在確認の訴え ない嫡出子 することが不可能な場合 推定されない嫡出子 婚姻成立の日から200日以内 親子関係不存在確認の訴え に生まれた子 二重推定が及ぶ場合 嫡出推定が重複する場合 父を定める訴え(773) ◇ 各種の訴え 嫡出否認の訴え 親 子関 係 不存在 確認 の 父を定める訴え (775) 訴え (773) ①夫 提訴権者 ②その子の為に相続権を害 利害関係人 子・母・前夫・後夫 さ れ る 者 、 そ の 他 夫 の 三 親等内の血族 ①子又は親権を行う母 ①確認を求める当事者 ①子また母 相手方 ②特別代理人 ② 当 事 者 の 一 方 が 死 亡 ② 子 及 び 母 が 原 告 の した場合には検察官 ときは前夫と後夫が 共同被告 提訴期間 出生を知ったときから1年 なし なし (777) 消滅事由 承認(776) なし なし ◇ 父を定める訴えは、嫡出推定が二重に働く場合にのみに認められる(773)。 ◇ 父が嫡出推定を受ける子の嫡出性を争うには嫡出否認の訴え(775)によらなければならな いが、嫡出推定を受けない子に対しては、親子関係不存在確認の訴えによる(大判昭15.9. 20、昭26.6.27民甲1332号)。

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◇ 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知ったときから1年内にこれを提起しなければならない が、夫が成年被後見人である場合には、その期間は、後見開始の審判の取消後、夫が子の出 生を知ったときからこれを起算する(777、778)。 ⇔失踪宣告を受けた夫の失踪期間中に妻が産んだ子(推定されない嫡出子)に対し、その夫 は、失踪宣告の取消後、その子の出生を知ったときから1年を経過した場合でも、親子関係 不存在確認の訴えにより父子関係を争うことができる。 ◇ 任意認知は戸籍の届出という方式によらなければならない要式行為であって、この届出によ って効力を生じる創設的届出である(781)。 ⇔強制認知は、判決の確定によってその効力を生じ、戸籍の届出は報告的届出である。 ◇ 認知の意思に基づきその届出を他者に委託した者が、届出時において意識を喪失し、その 後死亡した場合でも、その認知は有効に成立する。 ⇒認知意思は原則として届出時において必要であるが、届出時に認知者が意識を喪失してい ても、届出書受理以前に翻意をするなどの特段の事情がない限り、認知は有効に成立する (最判昭54.3.30)。 ◇ 父が、嫡出でない子について嫡出子出生届又は非嫡出子出生届をした場合、各届は認知 届としての効力を有する(781、最判昭53.2.24) ⇔嫡出子出生届は嫡出性の承認にはあたらず、これによって嫡出否認権を失うものではない。 ◇ 婚姻中の妻が夫以外の男との間にもうけた子(夫の嫡出子と推定される)について、その男 は、夫による嫡出否認の訴えが認められた後でなければ、認知することができない。 ※認知できない場合 ①他人の嫡出子と推定される実子 ②他人の特別養子となった実子 ◇ 無効な認知がなされたときは、子その他利害関係人は、認知に対し反対の事実を主張する ことができる(786)。 ⇒期間限定の定めはない。 ⇔利害関係人は、再審によらない限り、強制認知に対し反対の事実を主張することはできない (最判昭28.6.26)。 ◇ 非嫡出子が戸籍上他人の嫡出子として記載されていても非嫡出子であることに変わりはなく、 嫡出推定を受ける場合でない限り、戸籍はそのままで、実親に対して直ちに認知の訴えをする ことができる(787、最判昭49.10.11)。 ◇ 胎児の母は、子が出生しない限り法定代理人とはなり得ないので、認知の訴えを提起するこ とはできない(787、大判明32.1.12、昭25.1.7民甲22号)。 ⇔父は、子が胎児であるときでも、母の承諾を得て、任意認知することができる(783Ⅰ)。

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◇ 認知の訴えの提訴期間は、父又は母の死亡が客観的に明らかになった時から3年以内であ る(787但書、最判昭57.3.19)。 ⇒父(又母)の死亡後に認知の訴えを提起する場合の被告人は、相続人ではなく、検察官であ る(人訴32Ⅱ、2Ⅱ) ◇ 準正 婚姻準正 すでに父が認知した子(非嫡出子)は、父母の婚姻によって、婚姻の時か ら嫡出子の身分を取得する(789Ⅰ)。 認知準正 未だ父の認知を受けていない子の父母が婚姻した後、父が認知した子は (法文は『認知の時』)から嫡出子の身分を取得する(789Ⅱ)。 婚姻の時 ※離婚後の認知でも準正は生ずる(昭25.12.28民甲3358号)。 ◇ 子が既に死亡している場合でも、婚姻準正及び認知準正が認められる(789Ⅲ)。 ⇔死亡した子に直系卑属がいる場合に限り、認知することができる(783Ⅱ)。 ◇ 子の氏の変更 父又は母と氏を異にする場合 家裁の許可要(791Ⅰ) 父母と氏を異にする場合 家裁の許可不要(791Ⅱ) ◇ 準正によって嫡出子の身分を取得した者は、父母の婚姻中に限り戸籍法上の届出によって 父母の氏を称することができる(791Ⅱ)。 ※790条は生来嫡出子のみに適用され、婚姻届又は認知届によって当然に父母の氏を称す るわけではない ◇ 縁組をした養子が離縁をすることなく実親夫婦の氏へ変更することは、養親の同意や家庭裁 判所の許可があったとしてもできない(791Ⅰ、昭26.1.23民甲20号)。 ◇ 15歳未満の子が氏を変更するときは、法定代理人が代わってこれを行う(791Ⅲ)。 ※15歳以上の未成年者が氏を変更する場合、法定代理人の同意を得ることを要しない。 ◇ 未成年の時に氏を変更した者は、成年に達した後1年内に限り、従前の氏へ変更することが でき、この場合において家庭裁判所の許可は不要(791Ⅳ)。 ※15歳以上の未成年が自らの意思により氏を変更した場合も同じ。 ◇ 身分行為能力をして満15歳とされている場合 ①氏の変更(791Ⅲ) ②養子縁組(797Ⅰ) ③離縁(811Ⅱ、815) ④遺言(961)

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〈第二節 養子〉 (第一款 縁組の要件) ◇ 養子縁組の要件 ①当事者の縁組意思(実質的意思)の合致 ②養親となる者が成年者(婚姻擬制を含む)であること(792) ③養子となる者が尊属又は年長者でないこと(793) ④後見人が被後見人を養子とするに場合には家裁の許可があること(794) ※後見人が成年に達している被後見人を養子とする場合でも家裁の許可要 ⑤配偶者のある者が単独で養親又は養子となる場合には配偶者の同意要(796Ⅰ) ⇒配偶者のある者が配偶者の未成年の嫡出子を養子とする場合には、単独ですること ができるが、配偶者の同意が必要。 ※配偶者が意思表示をすることができない場合には不要(796Ⅱ)。 ◇ 未成年養子縁組の特則 ①原則として、夫婦共同で縁組をすることを要する(795本文)。 ⇔配偶者の嫡出子を養子とする場合、又は②配偶者が意思表示をすることができない 場合には、単独で縁組可(795但書) ⇔既に血縁関係のある父又は母との関係においても嫡出子たる身分を取得させる必要 があるため、配偶者の非嫡出子を養子とするときも、原則どおり夫婦共同縁組となる。 ②自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合を除き、家裁の許可があること(798) ⇔離縁する場合には家裁の許可は不要 ◇ 父は、認知した自己の非嫡出子を養子とすることができる(793参照)。 ◇ 養子となる者が15歳未満の場合には法定代理人による代諾縁組がなされる。この場合にお いて、父母の一方が親権者(法定代理人)で、他方が監護権者であるときは、代諾縁組につき 監護権者の同意が必要(797)。 ⇒養子となる者が15歳以上で意思能力を有する場合は本人の意思表示に基づいて縁組をす ることができる。父母の同意は不要。 ⇒15歳以上で意思能力を有しない者は、当事者の意思の合致による縁組も代諾縁組もするこ とができない。 ◇ 胎児を他人の養子とすることはできない(1の3参照)。 ◇ 他人夫婦の子として虚偽の出生届をした後、その戸籍上の父母の代諾によって養子縁組が なされた場合、縁組の効力は生じない(大判昭13.7.27)。 ⇒養子が縁組能力を有する満15歳に達した後は、養子は当該縁組を追認することができる。 この場合、無権代理の追認に関する民法116条の類推により、縁組は『提出の時』に遡って 有効となる(最判昭27.10.3)。

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(第二款 縁組の無効及び取消) ◇ 養親が養子縁組無効の訴えを提起する場合、養子を被告とする(大阪高判昭34.7.31)。 ◇ 配偶者のある者が、他方配偶者の同意を得ずに、成年者を養子とした場合、この縁組は取り 消すことができるが、取消権者は、縁組の同意をしていない他方配偶者のみである(806の2)。 ◇ 養子縁組の取消し(804~808) 取消権者 取消権が消滅する場合 養親が未成年者で ①養親 ①養親が成年に達した後6カ月経過したとき ある縁組 ②養親の法定代理人 ②養親が成年に達した後追認したとき 養子が尊属又は年 ①各当事者 長者である縁組 ②各当事者の親族 後 見 人 ・ 被 後 見 人 ①養子 ①管理の計算終了後6カ月経過したとき 間の無許可縁組 ②養子の実方の親族 ②管理の計算終了後養子が追認したとき 他方配偶者の同意 同 意 し て いな い 他方 ①他方配偶者が養子を知ったときから6カ月 を欠く縁組 配偶者 経過したとき ②他方配偶者が追認をしたとき 監護者の同意を欠 同 意 し て いな い 養子 ①監護者が追認をしたとき く縁組 の父母たる監護者 ②養子が15歳に達した後6カ月経過したとき ③養子が15歳に達した後追認をしたとき 養子が未成年者の ①養子 無許可縁組 ②養子の実方の親族 養子が成年に達した後6カ月経過したとき ③縁組代諾者 詐 欺 ・ 強 迫 に よ る 詐 欺 ・ 強 迫 を 受 け た ①当事者が詐欺を発見し、強迫を免れた後6 縁組 当事者 カ月経過したとき ②当事者が詐欺を発見し、強迫を免れた後 追認したとき (第三款 縁組の効力) ◇ 養子は、縁組の日(戸籍法の届出時)から、養親の嫡出子たる身分を取得する(809)。 ※特別養子についても同じ。但し、特別養子は家裁の審判によって成立する(817の2)。 ◇ 夫婦の一方が他人の養子となった場合の氏 ①婚姻によって氏を改めなかった者が養子となった場合 ⇒夫婦双方が養親の氏を称する(810本文) ②婚姻によって氏を改めた者が養子となった場合 ⇒氏の変更は生じない(810但書)

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(第四款 離縁) ◇ 養親夫婦が未成年者と離縁する場合にも、縁組の場合と同様、原則として、夫婦が共同でし なければならない(811の2)。 ⇔離縁以前に、養親夫婦が離婚していた場合は、その一方のみと離縁することができる。 ◇ 養子と養親とが協議離縁するときは家庭裁判所の許可は不要であるが、養子又は養親の一 方が死亡した後に離縁をするときは、家庭裁判所の許可が必要である(811Ⅵ)。 ⇒協議離縁・死後離縁いずれの場合も戸籍の届出によってなす要式契約であり、その効果は 戸籍の届出の時から生じる(812、739Ⅰ)。 ◇ 離縁をした養子が離縁の際に称していた氏を続称するには、縁組期間が7年を超え、かつ、 離縁後3ヵ月内に届出をしなければならない(816Ⅱ)。 (第五款 特別養子) ◇ 特別養子と普通養子 特 別 養 子 普 通 養 子 成 立 養親となる者の申立に基づく家裁の審判 当事者の合意に基づく届出 ①配偶者のある者(817の3) 成年者であること 25歳以上 20歳以上 養 親 の 要 件 ②一方が 、他方が (817の4) 原則:6歳未満 ①養親より年長でないこと 養 子 の 要 件 例外:6歳に達する前から養親となる者の監 ②養親の尊属でないこと 護養育を受けていた場合は8歳に達 (793) するまで可 実父母の同意 必 要 原則:不要 例外:代諾縁組(797) 実親による監護が著しく困難又は不適当、 なし 成 立 条 件 その他特別な事情がある場合に、子の為に 特に必要があると認められるとき(817の7) 試験養育期間 6カ月以上(817の8) なし 実親との関係 終了する(817の9) 終了しない 離 縁 養子、実父母又は検察官の請求に基づく 当事者双方の協議又は裁判 家裁の審判(817の10) ◇ 特別養子縁組は、養親となる者の申立てによる家庭裁判所の審判によって成立し、また、効 力も生じる(817の2Ⅰ)。 ※嫡出子たる身分は戸籍法の届出によって取得する。 ◇ 特別養子縁組は、審判による縁組であるから、被後見養子や未成年養子における家庭裁判 所の許可は不要である(817の2Ⅱ)。

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◇ 特別養子縁組は、実親と養子との親子関係を遮断するため、縁組後は実親が養子を認知す ることはできない(817の9)。 ◇ 特別養子縁組の場合、養子が成年に達した後は離縁をすることができない(817の10Ⅱ)。 ◇ 特別養子縁組においては、養親が死亡した場合であっても、養子は死後離縁をすることが できない(817の10Ⅱ参照)。 ◇ 他人の養子となった者が、更に他人の特別養子となった後に、その特別養子縁組の離縁が 成立した場合でも、先の養親子関係が再び生じることはない(817の11)。 ⇔離縁により、実親との親族関係は復活する。 《第四章 親権》 〈第一節 総則〉 ◇ 子の出生前に父母が離婚した場合、原則として母が親権を行使するが、子の出生後に父母 の協議又は審判によりに父を親権者と定めることができる(819Ⅲ)。 ⇔子の出生後に離婚した場合、親権者の変更は裁判所がこれを行う(819Ⅵ)。 ◇ 子が胎児である間に親権者の指定をなすことは許されない。 〈第二節 親権の効力〉 ◇ 親権者が、子を代理する権限を濫用した場合において、相手方が濫用の事実を知り又知り 得べかりしときは、93条但書の類推適用により、その行為の効果は子に帰属しないが、親権者 の代理行為は、利益相反行為に該当しない限り広範な裁量に委ねられており、親権者が子を 代理して子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、親権者に子を代理す る権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情がない限り、濫用には該当 しない(824、最判平4.12.10)。 ◇ 利益相反行為かどうかは、親権者が子を代理してした行為自体を外形的・客観的に考察し て判断され、親権者の動機・意図をもって判断されない(826、最判昭42.4.18)。 ⇒第三者の金銭債務について親権者が自ら連帯保証をするとともに、子の代理人として同一 の債務について連帯保証をし、かつ親権者と子が共有する不動産に抵当権を設定する行 為は、利益相反行為に該当する(最判昭43.10.8)。 ⇔他人の債務の保証のため、親権者とその親権に服する子とが共に物上保証人となること は、利益相反行為に該当しない(昭和37.10.9民甲2819号)。 ◇ 親権の濫用 親権者が利益相反行為をなした場合 権限踰越表見代理(110) 外形上、利益相反行為ではないが、親権者の意図が 心裡留保(93) 子の利益を害する場合

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◇ 親権者が特別代理人の選任なくして利益相反行為をした場合、当該行為は無権代理行為 となる(大判昭11.8.7)。 〈第三節 親権の喪失〉 ◇ 親権喪失の宣告の請求権者は、この親族、検察官及び児童相談所所長であり、子自身には 認められていない(834、児童福祉法33の6)。 ◇ 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又 は管理権を辞することができる(837Ⅰ)。 ◇ 親権を辞した父又は母は、その事由が止んだときは、家庭裁判所の許可を得て、親権を回 復することができる(837Ⅱ)。 ※戸籍の届出によってその効果が生じる。 《第五章 後見》 〈第一節 後見の開始〉 ◇ 親権者が心神喪失の状況にあるが後見開始の審判を受けていない場合でも、未成年者に 対する後見が開始する(838①、大阪家審昭43.12.23、札幌家審昭56.3.16)。 ⇔親権者自身に対する後見は、後見開始の審判を受けて初めて開始される(838②)。 ◇ 養親の死亡は縁組関係の終了をもたらさないため、実親の親権が回復することはなく、後見 が開始する(838①)。 ◇ 父母の親権に服する未成年者の女性から生まれた子に対しては、その女性の父母が親権を 代理行使する(833)ため、後見は開始しない。 〈第二節 後見の機関〉 (第一款 後見人) ◇ 未成年者に対し最後に親権を行う者は、管理権を有しない者は別として、遺言により未成年 後見人を指定することができる(839Ⅰ)が、自己の死亡後に未成年後見人となる者の指定を 家庭裁判所に請求することはできない。 ◇ 成年後見人が選任されている場合でも、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年後 見人、成年被後見人若しくはその親族その他利害関係人の請求によって又は職権で、更に成 年後見人を選任することができる(843Ⅲ)。 ⇔未成年後見人は1人でなければならない(842)。 ◇ 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で成年後見人を選任する(843Ⅰ)。 ※夫婦の一方が後見開始の審判を受けた場合でも、他方配偶者が当然に成年後見人となる わけではない(平11改正)。

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◇ 法人も成年後見人となることができ、これを目的とする寄附行為も有効(843Ⅳ括弧書) ◇ 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭 裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求によって、又は職 権で、これを解任することができる(846)。 ⇔後見人については、親権者の場合の財産管理権喪失の制度(835)は存しない。 ◇ 後見人の欠格事由(847) ①未成年者及び破産者 ②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 ③被後見人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族 ④行方の知れない者 (第二款 後見監督人) ◇ 後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない(850)。 (第三款 後見の事務) ◇ 成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又 は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる(859の2Ⅰ)。 ※第三者の意思表示はそのうちの1人に対してすれば足りる(859の2Ⅲ)。 ◇ 成年後見人は、成年被後見人の債務を担保するために、その居住の用に供する建物及び その敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分 をするには、家庭裁判所の許可を得ることを要する(859の3)。 〈第四節 後見の終了〉 《第六章 扶養》 ◇ 扶養義務者(877) 原則:要扶養者の①直系血族及び②兄弟姉妹 例外:家庭裁判所は特別な事情がある場合には三親等内の親族間においても扶養の義 務を負わせることができる。 ※第一扶養義務者が要扶養者を扶養する資力を有しない場合に限られない。 ◇ 法律上の扶養義務者の具体的な扶養義務発生の要件 ①要扶養者の扶養の必要性 ②扶養義務者の扶養可能性 ③要扶養者の請求 ◇ 要扶養者が扶養を要する状態となった後でも、要扶養者から請求を受けない限り、法律上の 扶養義務者に、具体的な扶養義務は発生しない(大判明34.10.3)。

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◇ 現に扶養している扶養義務者の意に反して扶養権利者(要扶養者)を扶養した他の扶養義 務者であっても、既に支出した扶養料を請求することができる(最判昭26.2.13)。 ◇ 扶養義務者がその義務を履行しないまま扶養権利者が死亡した場合には、その相続人は 扶養義務者に対し未払いの扶養料を請求することができる。 ⇒扶養請求権は、一身専属権にあたり、相続の対象とはならないが、家庭裁判所の審判によ って既に発生し未払いとなっている過去の扶養料については、通常の金銭債権であって相 続の対象となる(大判明37.7.18)。 ◇ 扶養の方法は当事者間の協議で、協議が調わないときは家庭裁判所の審判により決定され るのであり、扶養義務者は、引取扶養と給付扶養のいずれかを選択することはできない(879)。 【第五編 相続】 《第一章 総則》 ◇ 相続回復請求の当事者 原告適格者 ①真正相続人及びその法定代理人 ②相続分の譲受人 ⇔相続回復請求権は一身専属権であり、真正相続人の相続人は真正 相続人の相続回復請求権を相続することはできず、相続人は自己固 有の相続回復請求権を行使することができる。 ※但し、相続回復請求権の20年の消滅時効の起算点は、当初の相 続開始時である。 被告適格者 善意かつ合理的理由のある相続侵害者(表見相続人) ⇒真正相続人の相続回復請求権に対して、被告適格者は相続回復請 求権の短期消滅時効を主張することができる。 ※但し、被告適格者は相続回復請求権が時効消滅するまで相続財産 の取得時効の主張不可。 被告不適格者 ①悪意又は合理的理由のない相続侵害者 ②相続侵害者(善意かつ合理的理由のある相続侵害者を含む)からの 相続財産を譲り受けた第三者 ⇒真正相続人は、被告不適格者に対して相続回復請求権を行使するこ とができず、所有権に基づく返還請求をすることになる。従って、被告 不適格者は真正相続人からの返還請求に対して、相続回復請求権の 短期消滅時効を主張することができい。 ※但し、被告不適格者は取得時効の主張可。 ◇ 相続回復請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知ったとき から5年で時効消滅する(884)。 ※除斥期間(判例は時効であるとしている)は相続開始の時から20年。

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◇ 相続回復請求権は一身専属権であり、相続の対象とはならないが、相続回復請求権者が相 続回復請求権を行使せずに死亡した場合、相続人は自己固有の相続回復請求権として行使 することができる(大判大7.4.9)。 ※数次相続の場合でも新たに侵害が発生しているわけではないので、20年の消滅時効の起 算点は、当初の相続開始時である(最判昭39.2.27)。 ◇ 相続回復請求権の短期消滅時効が完成している場合には、真正相続人からの相続回復請 求に対して、表見相続人は、消滅時効を援用してこれを排斥することができるが、表見相続人 が真正相続人の相続権を害することにつき悪意又は有過失の場合には、短期消滅時効を主 張することはできない(884、最大判昭53.12.20)。 ※表見相続人には他の共同相続人も含まれる。 ※悪意の表見相続人からの善意の特定承継人も884条の短期消滅時効の援用不可(最判平 7.12.5)。 《第二章 相続人》 ◇ 被相続人から廃除された後に被廃除者の養子となった者も、被廃除者を代襲して相続人と なることができる(887Ⅱ) ◇ 相続欠格事由(891) ①故意に被相続人又は相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ 又は至らせようとしたために刑に処せられた者 ※傷害致死や執行猶予の場合は含まれないが、殺人予備は含まれる ②被相続人が殺害されたことを知りながらこれを告発又は告訴しなかった者(その者に是 非の弁別がない場合、又は殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族の場合を除く) ※既に捜査が開始され告訴・告発の必要がない場合には相続欠格事由にあたらない (大判昭7.11.4)。 ③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取消し又はこれを 変更することを妨げた者 ④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取消させ又はこ れを変更させた者 ⑤相続に関する被相続人の遺言を偽造、変造、破棄又は隠匿した者 ※遺言書を破棄又は隠匿した場合であっても、不当な利益を目的とするものでなかっ たときは相続欠格事由にあたらない(最判平9.1.28)。 ◇ 遺留分を有する推定相続人の廃除又は廃除の取消は家庭裁判所の審判の確定によって効 力を生じる(892、893)。 ⇒被相続人の意思表示によって効力を生ずるのではない。

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《第三章 相続の効力》 〈第一節 総則〉 ◇ 相続による占有の承継の場合でも、承継人(相続人)は自己の占有のみを主張することがで きる(896、最判昭37.5.18、187Ⅰ参照)。 ◇ 遺留分減殺請求権は、相続法上の権利であって広義の身分権の一種に属するが、財産法 的色彩が強く、相続の対象となる。 ◇ 内縁関係の不当破棄に基づく慰謝料請求は、これによって当然に発生するものであり、しか も発生したその債権は単純な金銭債権であり、相続の対象となる(大判昭7.7.8)。 ◇ 離婚をした夫婦の一方の相続人は、生前に被相続人によって相手方に対して請求された財 産分与請求権を相続し、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる(名古 屋高決昭27.7.3)。 ◇ 扶養請求権は、身分法上の権利であって被相続人のみに帰属する一身専属権に当たり、 相続の対象とはならないが、被相続人の請求によって既に発生し未払いとなっている過去の扶 養料については、単純な金銭債権であり、相続の対象となる(大判明37.7.18)。 ◇ 連帯債務者の1人が死亡し、その相続人が数人ある場合、相続人は被相続人の債務を分割 して承継し、各自その承継した範囲内において、本来の債務者と共に連帯債務者となる(899、 最判昭34.6.19)。 ⇒連帯保証についても同じ ◇ 継続的な取引契約から生ずる将来の不特定な債務の保証(信用保証・根保証)ついて、限 度額及び保証期間の定めのあるものに限って相続性が肯定される(899、最判昭37.11.9)。 ⇔賃貸借契約から将来発生する賃料債務の保証は、相続性が肯定される(大判昭9.1.30)。 ◇ 身元保証においては、保証人は労務者との人的つながりから保証を引き受けたという、一身 専属的性格を有し、その相続性は原則として否定されている(899、大判昭2.7.4)。 ◇ 遺産に属する債権 遺産に属する不可分な特定債権については、債権者たる共同相続人全員 不可分債権 が共同して履行を請求できるほか、各共同相続人が単独で全員のために 履行を請求することもできる(428、429、最判昭42.8.25)。 可分債権 各共同相続人に分割されたものが帰属する(最判昭29.4.8)。

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〈第二節 相続分〉 ◇ 相続分(900①②③) 現行 第一順位相続 配偶者2分の1、子2分の1 (S56.1.1~) 第二順位相続 配偶者3分の2、直系尊属3分の1 第三順位相続 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1 旧民法 第一順位相続 配偶者3分の1、子3分の2 (~S55.12.31) 第二順位相続 配偶者2分の1、直系尊属2分の1 第三順位相続 配偶者3分の2、兄弟姉妹3分の1 ◇ 被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉 妹の相続分は、父母双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1である(900④)。 ◇ 特定遺贈を受けた相続人は、遺贈を受けた財産の価額が法定相続分を下回っている場合 には、法定相続分に達するまで他の相続財産を取得することができる。 ⇔相続分の指定を受けた相続人の財産の価額が法定相続分を下回っていても、相続分の指 定によって法定相続分に関する規定が廃除されるので、その差額を相続財産から受けること ができず、自己の遺留分が侵害されない限り、指定された相続分に従って相続財産を取得 できるにとどまる(902Ⅰ)。 ◇ 被相続人が、遺言で共同相続人の1人についてのみ相続分を指定した場合には、他の共同 相続人の相続分は、法定相続分の規定によって定まる(902Ⅱ)。 ◇ 寄与分権者は相続人に限られ、内縁の妻や廃除された者、相続欠格者および包括受遺者 は寄与分権を有しない。(904の2Ⅰ)。 ◇ 被相続人は、遺言で特定の相続人の寄与分を指定することはできない(904の2ⅠⅡ)。 ◇ 特別受益者・寄与者の具体的相続分の算定方法 ①特別受益者の具体的相続分(903Ⅰ) =(相続開始時の財産+特別受益-寄与分)×法定相続分-特別受益 ②寄与者の具体的相続分(904の2Ⅰ) =(相続開始時の財産+特別受益-寄与分)×法定相続分+寄与分 〈第三節 遺産の分割〉 ◇ 包括受遺者や相続分の譲受人も遺産分割の当事者となる(990、大阪高決昭54.7.6)。 ◇ 被相続人が相続分の指定について遺言をした場合でも、共同相続人は、協議により当該指 定と異なる割合の遺産分割をすることができる。

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◇ 分割協議が調わないとき、又は協議できないときは分割を家庭裁判所に請求できるが、この 場合、『特別の事由』ある時は期間を定めて審判で遺産分割を禁止することができる(907Ⅲ)。 ⇒家庭裁判所は、分割禁止の審判後、事情の変更が認められるときは、相続人の申立により、 いつでも分割禁止の審判を取消又は変更することができる(家審規112Ⅰ)。 ◇ 遺産分割協議によって分割禁止を定めた場合でも、共同相続人全員の同意があれば、当 該分割禁止期間内であっても、分割をすることができる。 ◇ 遺産分割の対象となるものは、被相続人が有していた積極財産だけであり、消極財産たる債 務(可分債務を含む)は、相続開始と同時に、共同相続人に、その相続分に応じて当然分割承 継される(東京高判昭37.4.13)。 ⇒債権者は、法定相続分に応じて請求しても、指定された相続分に応じて請求してもよいし、 又特別受益者等がある場合には、具体的相続分に応じて請求することもできる。 ※債権者の承諾があれば、債務についての遺産分割も可能 ⇒抵当権の債務者変更の登記において、遺産分割を登記原因とすることができる。 ◇ 被相続人は遺言で5年を超えない期間内の分割を禁止することができる(908)。 ⇒この期間は更新することができない。 ◇ 債務不履行を理由として遺産分割協議を解除することは、909条本文により遡及効を有する 遺産の再分割を余儀なくされ法的安定を害するため、することはできない(最判平1.2.9)。 ⇔合意解除によって第三者の権利を害することはできないので、共同相続人全員で、その分 割協議を合意解除することは、法律上、当然に妨げられるものではない(最判平2.9.27)。 相続開始 ◇ 共同相続人の1人が遺産分割によって取得した財産に瑕疵があるときは、それが に生じたものであっても、他の共同相続人は売主と同じく担保責任を負う(911)。 後 ※但し、遺産分割後に生じたものについては担保責任を負わない。 ◇ 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産分割によって受けた債権に ついて、当然に分割当時における債務者の資力を担保する(912Ⅰ)。 ※共同相続人が連帯して担保する必要はない。 ⇔債権売買においては、特約がない限り売主は担保責任を負わない(569Ⅰ)。 《第四章 相続の承認及び放棄》 〈第一節 総則〉 ◇ 相続の承認及び放棄は、相続人が自己のために相続の開始があったこと、すなわち被相続 人の死亡の事実及びこれにより自己が相続人となった事実を知った時から3ヵ月以内にしなけ ればならない(915、大決大15.8.3)。 ⇒相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常認識し得べき時から起 算するべきである(最判昭59.4.27)。

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◇ 熟慮期間は、各相続人ごとに進行するから、共同相続人のうちの一部につき熟慮期間が経 過しても、他の共同相続人は、各自の熟慮期間が経過していなければ、相続の承認及び放棄 をすることができる。 ◇ 相続人たる被保佐人は、保佐人の同意又はこれに代わる裁判所の許可を得なければ、単独 で有効な相続放棄をすることができない(12Ⅰ⑥・Ⅲ)。 ◇ 相続の承認・放棄の取消 原則:相続の承認・放棄は、熟慮期間内でも取り消すことはできない(919Ⅰ)。 例外:民法第一編総則及び親族編の規定による取消は認められる(919Ⅱ本文)。 ⇒追認をすることができる時から6ヵ月、承認・放棄の時から10年を経過したときは その取消権は消滅する(919Ⅱ但書)。 ※親族編の規定による取消とは、後見監督人の同意なき後見人の代理又は同意に よって相続の承認・放棄がなされた場合(865、864、867) 〈第二節 承認〉 (第一款 単純承認) ◇ 相続人が相続財産の全部又は一部を602条に定められている期間を超えて賃貸したときは、 その相続人は単純承認したものとみなす(921①、法定単純承認) ⇔相続人が相続開始の事実を知り又は確実に予想しながら被相続人の財産を処分した場合 でなければ、法定単純承認とはならない(最判昭42.4.27)。 ◇ 法定単純承認たる相続財産の全部又は一部の処分行為には、処分意思が必要であり、相 続人、相続財産に属する家屋を失火により焼失させた場合でも、相続放棄をすることができる。 ◇ 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、財産の全部若しくは一部を隠匿し、ひそかにこ れを浪費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかった場合は、その相続人は単純承認 したものとみなされる(921③)。 ⇔相続人が放棄をしたことにより新たに相続人となったものが承認をした後は、放棄をした相続 人が単純承認したものとみなされることはない(同但書)。 (第二款 限定承認) 〈第三節 放棄〉 ◇ 相続人が被相続人の債権者を害する目的で相続を放棄したとしても、被相続人の債権者は、 その相続の放棄を詐害行為として取り消すことはできない(最判昭49.9.20、424参照)。

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《第五章 財産の分離》 ◇財産分離 第一種財産分離(941Ⅰ) 第二種財産分離(944Ⅰ) 相続人の固有財産が債務超過の場合 相続財産が債務超過の場合に、相続に 趣 旨 に、相続による混同により、被相続人の よる 混同 によ り、相続人 の債権 者が 不 債権者や受遺者が不利益を受けないよ 利益を受けないようにするため うにするため 請求権者 相続債権者(被相続人の債権者) 相続人の債権者 受遺者 相続開始時から3カ月以内又は相続財 相続人が 限定 承認をす ることが できる 産と相続人の固有財産と混同しない間 間又は相続財産と相続人の固有財産と ※相続開始から3カ月以内であれば、 混同しない間 期 間 相続財産と相続人の固有財産とが混 合している場合でも請求可 ※相続財産と相続人の固有財産と混同 しない間は3カ月経過後も可 ◇ 財産の分離が命じられた場合、相続人は相続財産を自由に処分することができなくなるが、 不動産についてこれを第三者に対抗するためには、処分制限の登記を要する(945)。 《第六章 相続人の不存在》 ◇ 被相続人に相続人がいない場合でも、相続財産全部の包括受遺者がいるときは、相続財産 法人は成立しない(951、最判平9.9.12)。 ◇ 相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記 がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続をすることができない (957、最判平11.1.21)。 ◇ 特別縁故者に対して相続財産の一部を分与した後に、相続人である旨の申し出をした者は、 その残余財産についても相続権を主張することはできない(958の2)。 《第七章 遺言》 〈第一節 総則〉 ◇ 満15歳に達した者は遺言をすることができる(961)。 ◇ 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又は後見人の配偶者もしくは直系卑属の利 益となるべき遺言をしたときは、その遺言は無効である(966Ⅰ)。 ⇒後見人が被後見人の直系血族、配偶者又は兄弟姉妹のときはこの限りではない(966Ⅱ)。 ◇ 相続欠格事由に該当する者は、同時に受遺能力も失う(965)

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〈第二節 遺言の方式〉 (第一款 普通の方式) ◇ 遺言の方式 立会人 筆者 署名・捺印 日付 検認・確認 自筆証書遺言 不要 本人 本人 必要 検認要 普 (968Ⅰ) 検認不要 通 公正証書遺言 証人2人以上 公証人 本人・証人・公証人 必要 方 (969) 式 秘密証書遺言 公 証 人 1 人 ・ 誰 で も 本 人 及 び 封 紙 に は 必要 検認要 (970) 証人2人以上 可 本人・証人・公証人 危 一般危急時遺言 証人3人以上 証 人 の 各証人 不要 検認要 急 (976) 1人 確認要 特 時 難船危急時遺言 証人2人以上 証 人 の 各証人 不要 検認要 別 遺 (979) 1人 確認要 方 隔 伝染病隔離者遺言 警 察 官 1 人 ・ 本人 本人・筆者・証人 必要 検認要 確認不要 式 絶 (977) 証人1人以上 地 在船者遺言 船長又は事務 本人 本人・筆者・証人 必要 検認要 確認不要 遺 (978) 員1人・証人2 言 人以上 ◇ 氏又は名のみ記載されている自筆証書遺言も、遺言者が何人であるかを知ることができ、他 人と混同を生じないときは、有効である(968Ⅰ、大判大4.7.3)。 ◇ 自筆証書遺言の訂正は、遺言者が訂正箇所を指示し、これを変更した旨を附記してこれに 署名をし、かつ、訂正箇所に押印しなければならない(968Ⅱ)。 ⇒訂正箇所に押印の代わりに署名がなされていても、その訂正は無効である。 ◇ 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復したときにおいて遺言をするには、医師2 人以上の立会が必要(973Ⅰ)。 ◇ 証人及び立会人の欠格事由(974) ①未成年者 ②推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族 ③公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び雇人 ※平成11年度の改正により、禁治産者・準禁治産者は削除された。 ◇ 視覚障害者も公正証書遺言に立会う証人としての適格を有する(974、最判昭55.12.4)。

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◇ 遺言でなし得る行為 遺言のみでなし得る行為(生前行為ではなし得ない) 生前行為でもなし得る行為 ①未成年後見人の指定(839) ①認知(781) ②未成年後見監督人の指定(848) ②推定相続人の廃除及びその取消 ③相続分の指定又は指定の委託(902) (893、894) ④遺産分割方法の指定又は指定の委託(908前段) ③特別受益者の相続分の指定 ⑤遺産分割の禁止(908後段) (903Ⅲ) ⑥共同相続人間の担保責任の指定 (914) ④寄附行為(41Ⅱ) ⑦遺言執行者の指定又は指定の委託(1006) ⑤信託(信託法2)etc ⑧遺贈の減殺方法の指定(1034但書) ⑨遺贈(964) ◇ 遺言でなしえない行為 ①推定相続人についての保佐開始の審判の申立て ②受贈者に対する遺留分減殺の順序の変更 (第二款 特別の遺言) 〈第三節 遺言の効力〉 ◇ 特定遺贈の受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄をすることができる(986Ⅰ)。 ⇔包括受遺者については、相続人の規定が準用されるため、自己のために相続の開始があっ たことを知ったときから3カ月以内(990、915Ⅰ)。 ◇ 被相続人が相続財産に属さない権利を特に遺贈の目的とした場合、遺贈義務者は、その権 利を取得して受遺者に移転する義務を負う(997)。 ※特定遺贈の目的たる権利が、遺言者の死亡時において相続財産に属さない場合には、原 則として遺贈の効力は生じない(996本文)。 ◇ 被相続人が不特定物を遺贈の目的とした場合、目的物に瑕疵があるときは、遺贈義務者は 瑕疵がない物に代えることを要する(998Ⅱ)。 ⇔特定物遺贈の目的物に瑕疵があっても、遺贈義務者は担保責任を負わない。 〈第四節 遺言の執行〉 ◇ 公正証書遺言以外の遺言は、家庭裁判所の検認を受けることを要するが、検認は遺言の効 力要件ではなく、検認を受けない遺言が無効となるものではない(1004、大判大4.1.16)。 ◇ 相続人が、遺言執行者に指定された者に対し、相当の期間を定め、その期間内に就職を承 諾するか否かを確答すべき旨を催告したにもかかわらず、返答をしないときは、就職を承諾し たものとみなされる(1008)。

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◇ 遺言執行者の欠格事由は、未成年者及び破産者のみであり、その他、その資格に制限はな く、法人であっても、遺言執行者となることができる(1009)。 ⇒相続人であっても、相続人の廃除等、遺言の執行が当該相続人の利益と相反しない限り、 遺言執行者となることができる(通説)。 ◇ 遺言事項中遺言執行者を必要とする場合 ①推定相続人の廃除(893) ②廃除の取消(894Ⅱ) ③認知(781Ⅱ、戸64) ⇒以上の場合において、遺言書に遺言執行者に関する記載がないときは、利害関係人 の請求により、家庭裁判所が遺言執行者を選任する(1010)。 ⇔後見人の指定に基づく、後見開始の届出は後見人によって行われる(戸81) ◇ 遺言執行者があるときは、その者によって遺言が公正に執行されることを担保するため、相 続人は相続財産の管理処分権を失い、相続人が相続財産についてした処分行為は絶対的に 無効である(1013、大判昭5.6.16)。 ⇔被相続人が特定不動産を遺贈する遺言をした場合において、その遺言執行者を選任したと きであっても、相続人が他の不動産についてした処分は無効とはならない(1314)。 ◇ 遺言者が相続財産に属する不動産を遺贈し、遺言執行者を指定した場合には、相続人が その遺言執行者が就職する前に当該不動産に抵当権を設定しても無効であり、受遺者は、登 記なくして抵当権者に対抗することができる(1013、最判昭62.4.23)。 〈第五節 遺言の取消〉 ◇ 遺言が詐欺又は強迫によりなされた場合には、瑕疵ある意思表示をした遺言者及びその承 継人(相続人)は遺言を取り消すことができる(96Ⅰ、120)。 ◇ 抵触遺言又は抵触行為が詐欺又は強迫によりなされた場合を除き、当該抵触遺言又は抵 触行為が撤回又は取消されても前の遺言は復活しない(1025)。 ⇔第一遺言を撤回した第二遺言又は第一遺言と抵触する第一遺言を故意に破棄した場合に は、第一遺言は復活すると解されている 《第八章 遺留分》 ◇ 法定遺留分(1028) 直系尊属のみが相続人の場合 被相続人の財産の3分の1 その他の場合 被相続人の財産の2分の1

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◇ 遺留分算定の基礎となる財産の算出方法(1029Ⅰ、1030) 被相続人の相続開始時における積極財産 +特別受益分(理由及び時期を問わない) +相続開始前1年以内の贈与(当事者双方悪意の場合は時期を問わない) +不相当な対価をもってなされた有償行為(当事者双方悪意の場合のみ) -債務 =遺留分算定の基礎となる財産 ◇ 個別的遺留分の算出方法 遺留分算定の基礎となる財産×法定遺留分×法定相続分=個別的遺留分 ◇ 受贈者は、遺留分権利者から減殺請求に対し、取得時効を援用してその目的物の返還を免 れることはできない(1031、最判平11.6.24)。 ◇ 遺留分減殺の順序 ①遺贈と贈与の間では、遺贈を先に減殺する(1033) ②複数の遺贈の間では、目的の価額の割合に応じて減殺する(1034) ⇒遺言により遺贈の減殺方法につき別段の指定可(1034但書) ③複数の贈与の間では、後の贈与を先に減殺する(1035) ※特別受益は遺留分減殺の対象とはならない。 ◇ 減殺を受けるべき受贈者が無資力であるときは、遺留分権利者が損失を負担する(1037)。 ◇ 遺留分減殺請求は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったこ とを知ったときから1年間で時効消滅する(1042前段)。 ⇒『減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った』時とは、贈与又は遺贈の事実を認知した だけでは足りず、それが減殺できるものであることを知った時である(最判昭57.11.12)。 ※除斥期間は相続開始より10年間(1042後段) ◇ 家庭裁判所の許可を受ければ、相続開始前でも遺留分の放棄可(1043Ⅰ)。 ⇔相続・遺贈の放棄 ◇ 特別受益としての贈与が遺留分を害するときは、それが相続開始前1年より前になされたも のであっても、特段の事情がない限り、遺留分減殺の対象となる(最判平10.3.24)。

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