溶岩層上の建築物における地下空洞の影響に関する検討(PDF:2.50MB) 筆者:保井美敏 海老澤弘道 手塚純一 金子治 成田修英 山本健史
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(2) 溶岩層上の建築物における地下空洞の影響に関する検討. 溶岩層上の建築物における地下空洞の影響に関する検討. 保井 美敏 *1 海老澤弘道 *2 手塚 純一 *2 金子 治 *1 成田 修英 *1 山本 健史 *1. 1.はじめに. 直荷重)ともに独立フーチング直下(常時・地震時水 平の基礎梁による荷重は基礎幅全体)に載荷している。 荷重の大きさを一覧にして表- 1 に示す。 地盤定数を表- 2(1)に示す。表層 1(盛土)と表 層 2(玉石層)は弾性材料とし溶岩層は D-min 法モデ 1) ル(非線形材料) を用いた。D-min 法モデルは図- 3 に示すモデルで非線形特性をあらわすパラメータは 表- 2(2)に示す設定とした。溶岩層の圧縮強度、 引張強度はボーリングコアによる岩石試験結果を用い た。充填材(エアミルク)は配合試験に基づいて変形 係数を、過去の実績に基づいてポアソン比を設定した。 解析はポアソン比と側圧係数が溶岩層の安全率に影 響を与えると考え、表- 3 に示す 3 ケースを実施した。 ケース 1 は溶岩層の材料 D-min 法モデルの初期ポア ソン比 0.25 として破壊時のポアソン比を 0.482)、ケー ス 2 は初期・破壊時ともポアソン比 0.48、ケース 3 は 自重解析時に表層は側圧係数を 0.5、溶岩層の側圧係 数を 1.0 として建物荷重解析はケース 1 と同じにした。 ケース 1、ケース 2 の自重応力解析はポアソン比から 求めた側圧係数を用いた。解析は自重解析(弾性解析) と建物荷重解析(非線形解析)による 2 ステップで行っ た。 2.2 解析結果 安全率は Mohr-Coulomb の破壊基準(C=3.4N/mm2、 φ =61.5°)を用いて図- 4 のとおり求めた。安全率は、 常時荷重 3 以上、 (常時+地震荷重時)1.5 以上確保す ることとした。. 免震レトロフィットにより耐震改修される建築物が 地下空洞を持つ溶岩層に直接基礎で支持されているこ とから、この地下空洞が支持力と入力地震動に与える 影響について、2 次元 FEM により解析的に検討を行っ た。支持力の検討では溶岩層のポアソン比および溶岩 層に作用する側圧の影響とその安全性について検討し た。 地下空洞は基礎から 1 ~ 2m 程度と 10m 程度の上 下 2 か所に存在している。一連の解析は上部の地下空 洞(以降、 「第 1 空洞」と称す)はエアミルクで充填し、 下部の地下空洞(以降、 「第 2 空洞」と称す)は空洞 のまま残す検討を行った。なお、エアミルクの物性に ついては設計時には実績に基づく値を用いていたが、 本解析では施行前に実施した試し練りの結果から設定 した値とし、一部、実設計とは異なる入力値を設定し ている。. 2.支持力に関する検討. 2.1 解析モデルと地盤定数 建物基礎と第 1 空洞・第 2 空洞の 2 つの地下空洞が 重なる代表的な位置関係を 2 次元 FEM 解析モデルに して図- 1 に示す。上部建物部分は、5 階建て部分の 高層部と 1 階建て部分の低層部からなっている。第 1 空洞はレーザー測量にて形状を詳細に計測しており、 この結果を基にモデル化した。 載荷荷重状態を図- 2 に示す。常時(長期)荷重、 地震時荷重(水平荷重および転倒モーメントによる鉛. 28.5m. 19.3m. 10.7m. ૐጀ. . 㜞ጀ . 4m. 5m. 1m. . 31.5m. ጀ㧝(⋓) ጀ 2㧔₹⍹ጀ㧕. 3m 3m. ╙㧝ⓨᵢలႯ᧚ ╙㧞ⓨᵢ. . 30m. ṁጤጀ. 24m. . 90m. . 図- 1 解析モデル *1 技術研究所 *2 構造設計部. 11-2.
(3) 戸田建設 技術研究報告 第36号. 低層棟. 高層棟 地震時鉛直荷重. 地震時水平荷重. 常時荷重 押し込み側. 浮き上がり側. 荷重の種類 常時荷重. 考慮している荷重 固定荷重+積載荷重 地震時転倒モーメン 地震時 地震時鉛直荷重 トによる変動軸力 荷重 地震時水平荷重 地震時層せん断力. 図- 2 荷重載荷状況 表- 1 荷重一覧 常時 変動軸力 地震時水平荷重 (kN/m2) (kN/m2) (kN/m2) 665 - 617 297 876 - 147 384 693 679 230 70 1 196 103 40 176. 通り芯 Y3 Y2 Y1 Y0' Y0. a. 表- 2(1) 材料定数一覧. ⎕უㄭធᐲ. 初期変形 初期 破壊時 材料 圧縮強度 引張強度 粘着力 係数 E0 ポア 変形 2 2 2 モデル(N/mm ) (N/mm ) (N/mm ) (kN/m2) ソン比 係数 表層1 1×106 0.25 弾性 表層 2 2×106 0.25 弾性 溶岩層 3×106 0.25 D-min 21 2.2 3.4 0.001×E0 充填材 6×105 0.25 弾性 -. 破壊時 ポア ソン比 0.48 -. 表- 2(2) 非線形特性一覧 破壊包絡線 指数 a 1. 非線形特性 指数 m 0.5. ゆるみ係数 k 2. 非線形特性 指数 n 0.25. 表- 3 解析ケース一覧 溶岩層 側圧係数 ケース 備考 ポアソン比 (自重解析時) 初期 0.25 ~ 1 ポアソン比より算定 基本ケース 破壊 0.48 初期 0.48 ~ 2 ポアソン比より算定 ポアソンの影響 破壊 0.48 表層は 0.5, 初期 0.25 ~ 3 側圧係数の影響 破壊 0.48 溶岩層は 1.0. τ (ో₸) = L/r. L c σt. φ. r σ3. σ1. (σ1+σ3)/2. σ. 図- 4 安全率の評価. 図- 3 D-min 法モデル概要 1). 11-3.
(4) 溶岩層上の建築物における地下空洞の影響に関する検討. 常時荷重と常時+地震時荷重での解析結果について、 最大主応力を各ケースで溶岩層の空洞周辺のみを抜き 出し図- 5 に示す。最大主応力(引張)はいずれのケー スもほぼ同様の大きさとなっており、ポアソン比や側 圧係数の影響はほとんどないといえる。常時荷重で最 大 0.8N/mm2(ケース 1,3) 、常時+地震時荷重で最大 1.2N/mm2(ケース 1,3)で事前の地盤調査で得られた 引 張 強 度 の 平 均 値( 常 時 荷 重 時 は 安 全 率 3 と し 1.1N/mm2、 常 時 + 地 震 時 は 安 全 率 1.5 と し 1.65N/mm2)以下となっている。. 図- 4 の方法で求めた安全率分布を各ケースで図- 6 に示す。図は溶岩層の空洞周辺のみを抜き出し、第 1 空洞充填材は白抜きで示している。いずれのケース も基礎と第 1 空洞の間で安全率は最小となっている。 最小安全率はいずれのケースでも同様な大きさとなっ ている。これらの最小安全率を一覧して表- 4 に示す。 最小安全率は常時荷重 3.0、常時+地震時荷重 2.0 とそ れぞれ設定した安全率の常時荷重 3.0、常時+地震時 荷重 1.5 以上となっており、安全性に特に問題ないと いえる。. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2. 1. 1.1. 0. C Ᏹᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߩන㧦0OO 㧕 D Ᏹᤨ⩄㊀㧗㔡ᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߩන㧦0OO 㧕 . ࠤࠬ ᒁᒛਥᔕജ . . . . . . . . . . . . . . 0.8. (N/mm2 ) 2. 1. 1.2. . . 0. . . (N/mm2 ). . . . 0. . 0.7. . 1.2. . . . 1. C Ᏹᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߩන㧦0OO 㧕 D Ᏹᤨ⩄㊀㧗㔡ᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߩන㧦0OO 㧕 ᒁᒛਥᔕജ . ࠤࠬ . . . 2. . . (N/mm2 ). . 0.8. . ᒁᒛਥᔕജ. . C Ᏹᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߩන㧦0OO 㧕 D Ᏹᤨ⩄㊀㧗㔡ᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߩන㧦0OO 㧕. ࠤࠬ 図- 5 最大主応力分布 分布図では最大主応力マイナス(圧縮)は 0 としている. 注). 11-4.
(5) 戸田建設 技術研究報告 第36号. . 3.0. 2.0. . C Ᏹᤨ⩄㊀㧔ᢙሼߪᦨዊో₸㧕 D Ᏹᤨ⩄㊀㧗㔡ᤨ⩄㊀㧔ᢙሼߪᦨዊో₸㧕 . ࠤࠬ 3.0 2.2 㧔ᢙሼߪᦨዊో₸㧕. C Ᏹᤨ⩄㊀ D Ᏹᤨ⩄㊀㧗㔡ᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߪᦨዊో₸㧕. ࠤࠬ . 3.0. 2.2. . . C Ᏹᤨ⩄㊀㧔ᢙሼߪᦨዊో₸㧕 D Ᏹᤨ⩄㊀㧗㔡ᤨ⩄㊀ 㧔ᢙሼߪᦨዊో₸㧕. ࠤࠬ 図- 6 安全率分布 表- 4 最小安全率一覧 ケース ケース 1 ケース 2 ケース 3. 常時 常時+地震時 常時 常時+地震時 常時 常時+地震時. 安全率 3.0 2.0 3.0 2.2 3.0 2.2. 11-5. 安全率の目標値 3 1.5 3 1.5 3 1.5.
(6) 溶岩層上の建築物における地下空洞の影響に関する検討. 3.入力地震動に関する検討. 洞の影響を受け、最大値で 15% 程度空洞有が大きく、 疑似速度応答スペクトルは 0.06 秒より短周期で空洞 有がやや大きくなっている程度である。 これらより、充填材のヤング係数が E=1000MN/m2 程度あれば水平動・上下動とも第 1 空洞を充填し第 2 空洞をそのままにする影響はないと考えられる。. 3.1 解析モデルと材料定数 静的解析同様、第 1 空洞を充填し、第 2 空洞をその ままに残すことの入力地震動に与える影響を動的 FEM 解析を用いて解析的に検討を行った。解析モデ ルを図- 7 に示す。上端は GL-5m の高層棟の基礎が 位置する深さとし、基礎部分は一体に挙動すると考え ら れ る こ と よ り、 剛 体 ビ ー ム を 設 置 し て い る。 GL-30 mから地震動を入力し地表の応答波形を求めた。 検討は解析モデルに示す検討対象位置と同じ深さ位置 の 1 次元解析結果(第 1 空洞、第 2 空洞とも存在しな い場合)を比較対象とすることで、第 1 空洞を充填し 第 2 空洞が存在する影響について検討した。 材料定数を表- 5 に示す。地盤剛性については、溶 岩層は事前に実施された PS 検層結果を用い、充填材 (エアミルク)は材料の歪依存性を考慮し静的試験か ら微小ひずみの値を求め 1000MN/m2 を設定した。ポ アソン比については、溶岩層は S 波速度と P 波速度 の関係より求め、充填材は 0.25 を設定した。 解析は 4 ケースで、水平動については告示波 3 波 (JMA-NS 位相、Elcentro-NS 位相、HACHINOHE-NS 位相) 、上下動については告示波 1 波(JMA 位相)で、 計 4 ケースを実施した 3.2 解析結果 解析結果を空洞無(1 次元解析)と空洞有(2 次元 解析)の応答波形(加速度波形)と疑似速度応答スペ クトルについて図- 8 ~ 11 に示す。ここで 「空洞無」 , は空洞を無視した 1 次元解析の結果、 「空洞有」は第 1 空洞を充填した状態(第 2 空洞は充填せず)での 2 次元解析の結果である。 図- 8 ~ 10 から明らかのように、水平動に関して は充填材の影響はほとんど受けず、最大値、疑似速度 応答スペクトルともほぼ同様となる。 一方、図- 11 の上下動の結果では上下動は若干空. 4.まとめ. 基礎直下の第 1 空洞をエアミルクで充填し、第 2 空 洞を残した溶岩層について、支持力に関する検討と入 力地震動への影響を 2 次元 FEM により検討し、以下 の結論を得た。 (1)支持力に関しては、ポアソン比や側圧係数の影 響を考慮しても、常時荷重に対し安全率 3 以上、常時 荷重+地震時荷重に対し安全率 1.5 以上となっており、 溶岩層は十分安全性を確保している。 (2)水平方向の入力地震動に関しては、最大値・疑 似速度応答スペクトルともほぼ同様で空洞の影響はほ とんどなかった。 (3)上下方向の入力地震動に関しては空洞の影響で 最大値がやや大きくなり・疑似速度応答スペクトルは 0.06 秒より短周期でやや差が生じている程度である。 参考文献. 1) 伊藤忠テクノソリューソンズ:理論マニュアル静的解 析、pp.134,2009 2) 地 盤 工 学 会: 設 計 用 地 盤 定 数 の 決 め 方 ― 岩 盤 編 ―、 pp.142-143、平成 20 年. 表- 5 材料一覧 ポア S波 P波 単位体積 変形係数 ソン 速度 速度 重量 (MN/m2) 比 (m/s) (m/s) (kN/m3) 溶岩層 3160 750 1700 22 0.38 充填材 1000 750 580 7 0.25 地盤. 剛体ビーム. 高層棟の範囲. 1次元出力位置(空洞無). 1 検討出力位置(空洞有). 第2空洞. 第1空洞充填材. 次 元 解 析. 地震動入力位置 図- 7 解析モデル. 11-6.
(7) Acceleration. HORIZONTAL ACCEL.. AT TOP OF LAYER 空洞無. Acc. (cm/s/s). 500. 1 (peak:- 389.5 cm/s/s). 0 -500 500. HORIZONTAL ACCEL.. AT NODAL空洞有 POINT. Acc. (cm/s/s). Acc. (cm/s/s). Acc. (cm/s/s). 戸田建設 技術研究報告 第36号. 286 (peak:- 398.3 cm/s/s). 0 -500. 0. 10. 20. 30 Time (sec). 40. 50. 500. -500. 60. Pseudo Velocity Response [cm/s]. Pseudo Velocity Response [cm/s]. HORIZONTAL ACCEL.. 10. 0. 10. 1. HORIZONTAL ACCEL.. 0. 10. 20. 30. 40. 50. AT NODAL POINT 空洞有. 60 Time (sec). 70. Acc. (cm/s/s). 1 (peak: 335.6 cm/s/s). 286 (peak: 342.6 cm/s/s). 80. 90. 100. 110. 120. 500. -500 500. 10. Period [sec]. 1. 10. VERTICAL ACCEL.. -500. 0. 10. 1 (peak: 174.2 cm/s/s). AT NODAL POINT 空洞有. 286 (peak:- 203.9 cm/s/s). 20. 30 Time (sec). 40. 60. 空洞無. 空洞有. 100. 10. 0.1. Period [sec]. 1. (b)擬似速度応答スペクトル. (b)擬似速度応答スペクトル. 50. (a)応答波形. 1 0.01. 10. AT TOP OF LAYER 空洞無. 0. Pseudo Velocity Response [cm/s]. Pseudo Velocity Response [cm/s]. 空洞有. 100. 1. Period [sec]. VERTICAL ACCEL.. 1000. 0.1. 空洞有. 0.1. Acceleration. (a)応答波形. 1 0.01. 60. 0. 1000. 空洞無. 50. (b)擬似速度応答スペクトル. 0 -500. 40. 図- 9 解析結果(水平:Elcentro-NS 位相). 0 -500 500. 30 Time (sec). 10. 1 0.01. Acc. (cm/s/s). Acc. (cm/s/s) Acc. (cm/s/s). 空洞無 AT TOP OF LAYER. HORIZONTAL ACCEL.. 286 (peak: 381.3 cm/s/s). 100. 10. 図- 8 解析結果(水平:JMA-NS 位相). Acceleration. 20. 空洞無. (b)擬似速度応答スペクトル. 500. 空洞有POINT AT NODAL. (a)応答波形. 100. Period [sec]. 1 (peak: 367.5 cm/s/s). 1000. 空洞有. 0.1. 空洞無 AT TOP OF LAYER. 0. (a)応答波形. 1 0.01. HORIZONTAL ACCEL.. -500 500. 1000. 空洞無. Acceleration. 0. 10. 図- 11 解析結果(上下:HACHINOHE-UD 位相). 図- 10 解析結果(水平:HACHINOHE-NS 位相). 11-7.
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