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不飽和砂質地盤の地震時沈下特性に関する研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 北爪 貴史 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第383号 学 位 授 与 年 月 日 平成28年9月27日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 環境社会創成工学専攻 学 位 論 文 題 目 不飽和砂質地盤の地震時沈下特性に関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 末 次 忠 司 教 授 鈴 木 猛 康 教 授 平 山 公 明 准教授 後 藤 聡 准教授 齊 藤 成 彦 准教授 吉 田 純 司

学位論文内容の要旨

近年頻発する巨大地震により不飽和地盤の沈下による被害が顕在化してきている.従来 あまり顧みられてこなかった不飽和地盤の地震時沈下現象のメカニズムを解明すること, そしてその推定手法を提案し実務設計に適用することを目的として本研究を実施した.主 な検討項目は次の3 点である. ① 不飽和砂質地盤が地震時に生じる沈下の主要因である繰返しせん断による体積収縮 量の定量化とメカニズムの考察 ② 沈下量推定手法の提案とその適用性の確認 ③ 沈下量推定手法の性能設計への応用事例の提示 上記の検討に先立ち,既往の研究を概観した.地震時の地盤沈下については従来,液状 化を起因とした場合が注目されてきたことから,既往研究の大部分は地下水位以下の飽和 地盤を対象としている.一方,本研究のテーマである不飽和地盤の地震時沈下という現象 については,これまであまり注目されてきていない. 飽和地盤の地震時挙動(動的挙動)に関する既往研究では,液状化現象を対象としてきた ことから,繰返しせん断試験を行う場合の試験条件は非排水条件で行われてきた.不飽和 地盤を対象とした場合においても,既往研究では非排水条件下での繰返しせん断試験が行

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われている.その理由としては,不飽和地盤に対しても地震時の液状化の懸念が考えられ てきたこと,また,液状化に対する抵抗を上昇させるための方策としての地盤の不飽和化 を目的とする研究が主に行われていることによる. こうした既往研究に対し,本研究では,液状化に起因しない不飽和地盤の沈下現象を対 象としている.したがって,繰返しせん断試験を実施する際は,地盤中の間隙水が移動す るものと仮定した排水条件のもとで行っている. ①飽和砂質地盤の繰返しせん断による体積収縮量の定量化と地震時沈下メカニズムの考察 不飽和砂質地盤の地震時沈下特性あるいは体積収縮特性について,中空円筒供試体を用 いた室内の繰返しせん断試験と土槽内の試料を振動台上で加振した実験を実施し,それら の結果・データから,不飽和砂質地盤が地震時に生じる沈下の主要因である繰返しせん断 による体積収縮量の定量化とメカニズムに関する考察を行った.得られた主な知見を以下 に示す. 不飽和砂質土試料に対する中空ねじり排水繰返しせん断試験結果より,繰返し回数が 増加するに従ってせん断剛性が大きくなり,せん断ひずみの発生量は徐々に小さくな ること,体積ひずみはせん断ひずみの変化に対応して載荷初期に急増し,繰返し回数 が大きくなってからは単調増加すること,といった不飽和砂質土の繰返しせん断過程 における体積収縮特性を定量的に把握した. 非排水条件下の飽和地盤では,繰返しせん断荷重を受けることにより剛性低下を生じ るのに対し,排水条件下の不飽和地盤では,繰返しせん断荷重を受けることにより剛 性硬化(密実化)を生じて体積収縮する,という相違が明確になった. 振動台実験における加速度と加振後の沈下量,飽和度および破壊形態の関係を考察し た結果からは,不飽和地盤の破壊形態を分岐させる飽和度の閾値が存在すること,不 飽和地盤は空気をトラップした状態で液状化に至ること,不飽和地盤の平均的な初期 飽和度と初期乾燥密度を事前に把握しておくことで,地震後の破壊形態がおおよそ判 断可能であること,などが判明した. ②沈下量推定手法の提案とその適用性の確認 不飽和砂質土試料に対する中空ねじり排水繰返しせん断試験で得られた体積収縮特性と 地震応答解析および累積損傷度解析を用いて不飽和地盤の地震時沈下量を推定する手法を 提案した.提案手法を用いて得られた地盤沈下量の推定結果が,実際の地震で生じた実測 沈下量と整合すること,さらに,観測地震動波形を模擬した不規則せん断荷重を直接供試 体に入力した中空ねじり排水試験で試料に生じた体積ひずみともほぼ一致することを示し, 提案手法の妥当性を確認した.

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12 種類の異なる特性を有する人工地震動を入力して算出した推定沈下量などを分析した 結果から,提案する推定手法は,最大加速度のような地震動の諸量を示す点の情報だけで なく,継続時間や加速度振幅の時間変動といった時間軸上の情報を加味した推定が行える こと,推定沈下量と相関の高い地震動指標はSI 値であること,などがわかった. また,本提案手法の適用限界を明示した.構造物が近接する地点の沈下量については本 提案手法では評価できない.構造物際で生じる主働すべり破壊も加味した地盤の沈下量評 価を行うためには,構造物と地盤との地震時相互作用を考慮した推定手法が必要である. ③沈下量推定手法の性能設計への応用事例の提示 提案した不飽和砂質地盤の地震時沈下量推定手法が設計に用いられることを鑑み,地盤 の物理特性のばらつき(偶然的不確実さ)を加味した信頼性解析を実施し,任意に規定した 限界状態ごとの損傷度曲線を算定した.沈下量推定に重要な地震応答解析手法の相違によ るモデル化誤差(認識論的不確実さ)をも含めた損傷度曲線を算定し,地震動の大きさに応 じて生じる不飽和砂質地盤の地震時沈下量の確率論的な評価事例を示すとともに,地震外 力の規模に応じた沈下量の推定精度について考察した. これらの損傷度曲線からは,地震力が大きくなるほど沈下量推定結果のばらつきが大き くなることが明らかとなった.これは,各種構造物の検討・評価・照査などにおいては, 地震力が大きくなるほど安全率や変位・変形量などの各種指標の推定精度が低下すること を示唆している.このように,損傷度曲線による確率論的な地震時沈下量評価手法は,施 設や地盤構造物などの性能を定量的に明示するとともに,その推定結果に関する精度を示 すことが可能である.本研究で示した地盤性能の確率論的評価方法は,施設管理や安全設 計,安全規制などの広い分野における意思決定を支援するツールとして活用できるものと 考えられる.

論文審査結果の要旨

従来,地震時の地盤沈下は,液状化を起因とした場合が注目されていた.そのため地盤 構造物の耐震設計や評価においては,地下水で飽和した状態を仮定して行われることが多 かった.一般に,不飽和地盤の地震時沈下自体が認識されていなかったか,認識されてい ても非常に小さいものであるとし,各種施設や構造物に支障や問題が生じるとは考えられ ていなかった. しかし,2007 年新潟県中越沖地震の際に,原子力発電所内の不飽和埋戻し地盤が沈下し, 機器や配管系の損傷や変圧器の火災が生じたことにより,不飽和地盤の地震時沈下現象が

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注目されるところとなった.その後,2008 年岩手・宮城内陸地震や 2011 年東北地方太平 洋沖地震においても,不飽和地盤の地震時沈下による各種施設の被災事例が報告されてい る. 本学位論文は,従来あまり顧みられてこなかった不飽和地盤の地震時沈下現象のメカニ ズムを実験的および解析的に解明すること,そしてその推定手法を提案し実務設計に適用 することを目的とした研究である.主な検討項目は次の3 点である. ① 不飽和砂質地盤が地震時に生じる沈下の主要因である繰返しせん断による体積収縮 量の定量化とメカニズムの考察 ② 沈下量推定手法の提案とその適用性の確認 ③ 沈下量推定手法の性能設計への応用事例の提示 これらの3点について,実験および解析的な研究成果が報告された. 上記の検討に先立ち,既往の研究が概観された.地震時の地盤沈下については従来,液 状化を起因とした場合が注目されてきたことから,既往研究の大部分は地下水位以下の飽 和地盤を対象としている.一方,本研究のテーマである不飽和地盤の地震時沈下という現 象については,これまであまり注目されてきていない. ①においては,不飽和砂質土試料に対する中空ねじり排水繰返しせん断試験結果より, 繰返し回数が増加するに従ってせん断剛性が大きくなり,せん断ひずみの発生量は徐々に 小さくなること,体積ひずみはせん断ひずみの変化に対応して載荷初期に急増し,繰返し 回数が大きくなってからは単調増加すること,といった不飽和砂質土の繰返しせん断過程 における体積収縮特性を定量的に把握し,定式化した.このような定式化はこれまでに全 く行われていなかった成果である. ②においては,①の成果を用いて不飽和地盤の地震時沈下量を推定する手法を提案した. 提案手法を用いて得られた地盤沈下量の推定結果が,実際の地震で生じた実測沈下量と整 合すること,さらに,観測地震動波形を模擬した不規則せん断荷重を直接供試体に入力し た中空ねじり排水試験で試料に生じた体積ひずみともほぼ一致することを示し,提案手法 の妥当性を確認した.このような提案手法もこれまでにない手法である. ③においては,地盤の物理特性のばらつき(偶然的不確実さ)および沈下量推定に重要な 地震応答解析手法の相違によるモデル化誤差(認識論的不確実さ)を加味した損傷度曲線を 算定し,地震動の大きさに応じて生じる不飽和砂質地盤の地震時沈下量の確率論的な評価 事例を示すとともに,地震外力の規模に応じた沈下量の推定精度について考察した. 論文審査会(公聴会)においては,審査委員ならびに聴講者から様々な質問が出された

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が,これらに対して的確な回答がなされ,申請者が背景を含めて研究内容を十分に理解し ていることが示された.また,公聴会前の1ケ月程度の期間中に事前に各論文審査委員か ら指摘された事項に関しては,修正表を作成して説明し,審査員の了解が得られた. 以上より,本論文は工学的貢献度・有用性の観点から,山梨大学大学院医学工学総合教 育部環境社会創生工学専攻の博士(工学)の学位論文として十分に相応しいレベルに達して いることから,審査委員全員一致で合格と判断した.

参照

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