― 幼 児 の 生 活 リ ズ ム と 食 習 慣 に 関 す る 一 考 察 ―
掛
塚
芳
子
は じ め に 幼児の身体発育は,乳児期についで盛んであ り,知能 ・情緒 ・社会性な どの精神発達がめ ざましく,食生活の面では食事 の自立がで きる時期 であることは周知の ことである。 また, 仁Ⅰ我の発達 とともに食物に対す る好 き嫌いが芽ばえ,む ら食い ・小 食 ・食欲不振 ・ 偏食 な どが乳児期 よ り更 に強 くなる傾向が有 り,その対処方法を誤 まると固定化 しやすい と 云われてい る。 幼児期は,生活そ れ自身が教 育であるか ら,毎 日の生活 捧論 の中で基寛
的な生活習 慣を身 につけ る大切 な時期で もある。 幼児の食生活指導について指針 となるような資料は, 日本小児保健学会や 日本栄養改 善学 会 などで多 く報告 されてい るが,今後は,幼児の生活行動内容の分折 と生活指導を含めた栄 養教育 の具体的な方法を確立す ることが大 切だ と考 える。 私共は幼児期 の食生活に関す る研究の一環 として,
第 3報で幼稚園児の食習慣 についてそ の実態を報告 した。 長野県内の保育園児の食生活に関する研究 で胡桃沢氏 (他15名)は, 食生活上問題 が あ る と思われ る園児においてほ就寝時間 ・起床時問 ともに遅 く,夕食後のおやつを多 く摂取 し朝 食前に も間食を摂取 しているな ど,起床か ら就寝 まで不規則に一 日中食べ ものを 口に してい ると報告 している。 私共が報告 した第3報 の実態調査で,幼児の食欲不振や間食の摂取状況な どが,幼児 の生 活 リズム と深い関わ りがあるのではないか と考察 されたので,資料を再び分析 した結果,多 少の考察を得たので被告す る。 方 法 調査方法 .項 目 ・対 象 弓明日は第3報 の通 りであ る。すなわち,長野県内の北信地区の幼 稚園児を対象に し,昭和57年10月実施 した ものであ る。 資料 は,回答のあ った667名車∴ 記入不備 な どを除 き498名 (3才児50名, 4才児 129名, 5才児192名, 6才児127名)について分析 を行 った ものであ る。 分折 内容は,起床時問 と就寝時問 と年 令の関係 (分散分折), 朝食 までの時間 と食欲 の有 無,起床時問 と朝食の所用時間 と家族 と一緒に輿 食 しているか ど うかの問題,起床時間 と朝 食 の欠食 と間食 の摂取状況,就寝時問 と朝食の食欲 との関係, また,就寝時間 と夕食後 の間 食 の摂取状況 との関係な どについて分折 した ものであ る。結果 お よび考察 蓑 1
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起床時間 と就寝時間 と年令目し
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2
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100.0)表2 分 散 分 析 表
Facter SquareSum °eg.ofFree. Unbiased Variance RatioofVariamce
A 1271.36 4 317.840 34.7667… B 1795.66 4 448.915 49.1042叫 C 405.32 3 135.107 14.7785* * AB 1590.94 16 99.4338 10.8765料 AC 302.48 12 25,2067 2.75721 BC 455.38 12 37.9483 4.15095** E 438.82 48 9.14209 Tota1 6259.96 99 A (起宋時間) B (就寝時間) C (年令) **p<0.01 起床時問は,午前7時∼ 7時30分が一番多 く,その前後30分の間にほ とん どが起床 してい る. また,就寝時間は,午後9時∼ 9時30分が一番多 く,二見氏 (他6名)の東京都内 の 幼 稚園児 の起床 ・就寝時間調査報告 よ りそれぞれ30分早い傾 向がみ られた。 岡村氏 (他15名)の長野県内の保育園児 の起床 ・就寝時間調査報告 よ り,起床 ・就 寝 時 問 ともに30分遅い傾向がみ られ,地域差や保育園 (所) と幼椎園の差 が考察 され る。 なお,分散分折 の結果,表2の通 りであ る。起床時問 と就寝時問,就寝時問 と年令 の間に は有意差が認め られた。 しか し起床時間 と年 令の間には有意差は認め られなか った。
2
.
起床時間 と朝食までの時間 ・食欲の有無 起床か ら朝食 までの時間のゆ と りは,表3の通 りである。 また,起床時間別 に朝食 までの 時間を5-10分以内,10分∼20分以内, 20分以上 と別けてその割合を グラフに表わ したのが 図1である。図で明 らかな ように起床後10分以内で朝食を摂取す る幼児 の割合は,起床時間 が遅 くなるに従 って増加 し,反面,起床後20分以上 のゆ と りを特 って朝食を摂取す る幼児 の 割合は起床時間が遅 くなるに従 って減少 し,両者 の間には有意差が認め られた.P< 0.01 また,起床時問 と食欲 の有無については,図2の通 りである。食欲が有 りよく食べ ると答 えた幼児の割合は,起床時間が遅 くなるに従 って低下 し,図1と同様な傾 向がみ られた。 表3 起床時問と朝食までの時間( )%
言
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痔
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6 :3。∼ I 7 ‥。。∼ i 7 :3。∼ i 8 :。。∼ F 計 ヽ-ヽーノ \t. 0 5 5 0 8 1 1 8 .し
.し .し 0 5 22 \I \I ヽI 3 7 0 4 5 0 1 8 ( .∫_ \ .し 5 8 2 1 9 ヽーノ . ヽI ヽ一 5 3 2 4 0 5 1 3 5 し ′_\ ′.\ 2 7 2 3 6 21 Eid lid lid 6 4 0 9 7 3 1 3 4 iZq iZq n一㌧ 1 0 6 2 4 4 ヽ-ノ ヽJ 4 4 2 1 6 2 2 4 3 ( ( .ー\ 6 3 9 1 計 I 27(100・0)1 115 (100・0)1221(100・0)i107( 10010)I 28図1 起床時問 と朝食までの時間
6
:
0
0
- 6
:
3
0
-
7:00- 7:30- 8:
0
0
-図2 起床時間 と食欲の有無6
:
0
0
- 6:30- 7:00- 7:30- 8:00-3.
起 床 時間 と豪族 と一緒 に食事 をす る度 合 ・朝 食 に用 す る時間 図3 起床時間と家族 と一緒に食事をす る度合 図4 起床時間 と朝食に用する時間 50 こ こ家族と一紙 ' つ家族と別が多い ヽ 6:00- 6:30- 7:00- 7:30- 8:00- 6:00- 6:30- 7:00- 7:30- 8:00-家族 と一緒に食事をす る割合は,朝食では図3の通 りである。 午前6時 ごろ起床す る幼児の77.8%は家族 と一緒 に食事をす ることが多い と答えてい る。 ところが
,7
時3
0
分 ごろの起床では4
3
.
9
%
とな り, 8
時以降起床す る幼児では7
5
%
が,家族 と別 に食事をす ることが多い と答えてい るoP<0
.
0
1
また,朝食に用す る時間は図4に示す通 りである。1
5
分∼3
0
分以上かけてゆ っくりと喫食 している幼児の割合は,起床時問が遅 くなるに従 って減少 し, 5分か ら1
0
分で朝食をす まし てい る割合が増加 し,両者 の間には有意差が認め られたo
P<0
.
0
1
4
.
起床時間 と朝食の喫食状況 ・朝食前の間食の喫食状況 起床時問が午前6
時 ごろの幼児は,9
6
%
が毎 日きちん と朝 食を と り,8
時以降起床す る幼 児の約5
0
%
は,週に何回か欠食す ることがわか った。そ して,それ らの問には存意差 を認め た。P<0
.
0
1
また,朝食前の間食の摂取状況をみ ると,間食をいつ も摂取あるいは ときどき食べ ると答 えた幼児の割合が,午前6
時 ごろ起床す る幼児が,2
6
.
9
%
に対 して,6
時3
0
分 ごろ起床す る 幼児が1
2
.
4
%,7
時 ごろ起床す る幼児1
7
.
5
%,7
時3
0
分 ごろ起床す る幼児1
1
.
3
%
と減少傾 向 にあ り,8
時以降起床す る幼児が4
6
.
4
%
と急激に増加 してい る。そ して, これ らの間には, 有意差が認め られたO
メ,<0
.
0
1
図5 起床時間と朝食の喫食状況 図6 起床時間と朝食前の間食の喫食状況 こ こしない 二 二吹良する ・ ⊃欠食することあり 6:00- 6:30- 7:00- 7:30- 8:0 0-C 3す る / \ 「 、 ∵ / 6:00- 6:30- 7:00- 7:30- 8:00-5
.
就寝時間 と朝食 の食欲 の状 況 ・夕食後 の間食の摂取状 況 就寝時間 と翌朝 の食欲 の有無 につ いてみ る と, 8時∼ 9時 まで に就 寝す る幼児では欠食者 (ほ とん ど食べ ない)が4.4% に対 し, 9時 ∼10時就 寝者 で9.9% , 10時 以降 に就 寝者 で21.9 % と増加 し,反面, よ く食べ る幼児 の割合 は,31.9% ,23.5% , 15.6% と逆 に減少傾 向を示 し,両者 の間 に有意差 が認め られた。♪
<0.05 なお,夕食後 の間食 の摂取状況 を表4,図8に示 したが, 8時∼ 9時 ごろ就 寝す る幼 児で は, ときどき食 べ る又 は いつ も食べ る幼 児 の割合が10% 未満で あ るのに対 し, 10時 以降就寝 す る幼 児 の75%が, とき どき又 はいつ も間食 を契食 してい る事実 がわか った。 表4 就寝時間と夕食後の間食の摂取状況( )%
何 も食 べ ない ときどき食べる い つ も食 べ る % gL-l
, '. 1 0 0 0 0 0 0 5 5 ./ _t、/
4 4 0 ) \ ノ ) 5 0 5 0 9 0 5 3 1 _.\ L L 3 1 1 5 4 1 1、. 1I 、1 9 一4 0 1 6 2 3 5 1 L L L O 1 0 8 4 3 1 Eid qid Eid 5 9 6 7 5 6 2 5 1 L L L 8 7 7 2 5 1 ヽI ヽー ヽ . 0 0 0 5 0 5 2 5 2 iZq qtp dZq 8 6 8 1 図7 就寝時間と朝食の食欲の状況 図8 就寝時問と夕食後の間食の摂取状況 こ こ食欲あり c J食欲なし 20:
00-
20:30- 21:00- 21:30- 22:00 -20:
00-
20:30- 21:00- 21:30- 22:00 -要 約 幼 児期 の食生活 に関す る研究 の一環 として,幼児 の生活 リズムが,食欲 や間食 の摂取状況 な どに及 ぼす影 響 につ いて分 折 した結果 お よび考察 を要約 す る と次 の通 りであ る。(1)幼児においては,起床時間 と就寝時問は深い関わ りがあ り,年令が低い3才児が特 に影 響を受けやすい ことがわか った。従 って,就寝時間が遅 くなることが,起床時間を遅 くす る 原因 と考え られ る。 また, 同 じ時期に調査 した二見氏 (他5名)の東京都内の幼稚園児の起 床 ・就寝時間 よ りも, 本調査結果では30分ずつそれぞれ早い。 更に, 岡村氏 (他15名)の長 野県内の保育園児の起床 ・就寝時間調査 よ り,それぞれ30分ずつ遅いO これ筆 も 登園時間 や地域差,母親 の就業状況な どに よる差 と考察 され る。 (2) 起床時間 と朝食の食欲状況や朝食 までの時間のゆ と りは,起床時問が早い程ゆ と りが有 り
,8
時以降に起床す るグループでは,起床後5-1
0
分で食事 に臨み,食欲 も他のグループ よ り急激に減少 し,家族 と別 々に食事 を してい る幼児が75% と増加 しているO また,食事 も欠食す ることが多 くな り,食事時間 も5-10分で終了 してい る割合が多 く, 他 のグループと有意差が認め られ る。 (3) 朝食前 の間食の摂取については,起床時問が早 いグループ (6時 ごろ起床す る)では, 間食をす る割合が26.9%と比較的高い傾 向が見 られ,朝食 までの時間が長過 ぎることも幼児 に とっては,朝食が待 ちきれずお菓子な どを摂取す るチ ャンスにな ってい ることがわか る。 更に, 7時30分 ごろ起床す る比較的遅い グループでは朝食 までに長い時間がないためか間食 をす る割合が一番低 く,欠食をす る割合 も低い結果か ら明 らかな よ うに,幼児に とって朝食 前 の間食は幣害であると考 え られ る。なお,特別 な場合 どうして もその必要 のあ る と き に は,食事 に替わ る栄養 のバ ランスのよい食 品を選択す ることが大切であ る0 起床時問が8時以降になる幼児 のグループでは,前 に述べた ように朝食の欠食度合 も多 く その上食欲 も無い場合が多いのに反 し,間食 の摂取割合は他 のグループを抜いて高い. この ことは以外な結果であ ったが,幼児は一度に多量 の食物摂取が困難 なために,食事を きちん としない とい うことがその原因であると考察 され る。 (4) 就寝時問 と翌 日の食欲 の状況については,就寝時問が9時30分を過 ぎると翌 日の朝食 に 影響を及ぼす傾 向があ ることがわか った。 この ことは前 に も述べた ように就寝時問が遅 くな ることが,起床時間を遅 らせてい る原因であるため と考 え られ る。 (5) 就寝時問 と夕食後 の間食 の摂取割合は,就寝時問が8時30分を過 ぎる頃か ら高い値 を示 し, 9時以降就寝す る幼児の60%以上は間食を摂取 してい る。 このことは,夕食後の時間が 長いため と考 え られ る。 以上 の ことか ら,幼稚園児においてほ,起床時間が早い とい うことは一般的に朝食 までの 時間のゆ と りが有 り,食欲 も有 りゆ っく りと食事がで きるとい うことで良好であ るが,朝食 までの時間が長過 ぎる場合には間食の摂取 につなが り,食生活上 は好 ましくない と考 える。 また,就寝時間が遅い場合に も翌 日の起床時間が遅 くなると同時に,夕食後 の時間が当然 長 くなるので間食摂取 につなが り,翌朝 の食欲に影響す ることが考 え られ,幼児では生活 リ ズムに ともな う契食 リズムが有 るように思われ る。従 って,朝食前 に間食を させ ることは不 必要であるばか りでな く弊害であると考 える。 古 くか ら 「早寝,早起 きは三文 の徳 」 と云われ,生活習慣づけの諺 として も親 しまれて きたが,現代社会 においては,一般的に生活行動は夜型 に移行 し,従 って幼児 の生活 ])ズムも そ の影響 を受けてい るよ うに思われ る。 幼児期 は,個体差 が大 き く同年齢,同性別 といえ どもその差 が大 きいので規律化す ること はむづか しい。 しか し本調査結果 におい ては,食生活指導 の上か ら,午後9時頃 までには就 寝 し,午前7時30分頃 までにほ起床す る (で きる) よ うな習慣 づけが必要 ではないか と考察 す る。先に も述べた通 り特別 な幼児 については,その ことが困難 であ る場合 もあ る と思 う。 NHKの生活時間調査 は全 国的 な規模 で行われてい るが,幼児 については報告がない。今 回 の調査を通 して,私共は流動性 のあ る幼児 の生活内容 を も う一度 しっか りと見極 め ること の必要性 を痛感 した。食生活 の問題点 として母親 たちは "食欲不振""小食''"遊 び食べ"な どをあげて必配 してい るのが現実 であ る。 これ等 には,生理学的 また心理学的 な検討 も必要 と思 うが,幼児 の毎 日の生活行動 を見守 り,検討 してみ ることで解決がで きる場合が多いの ではないか と考 え る。 教育者 は原則的 な ことは示唆 で きるが,幼児 においては身近かに生活を共に してい る母親 を中心 とした家族 の人 々こそ真 の教育者 であ ると信 じてい る。「食べ な さい