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我が国における知的障害者及び発達障害者の行動問題に関わる調査研究の動向と課題─支援体制や介入方法を中心に─

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要 旨  他害や自傷などの行動問題を示す知的障害者や発達障害者への支援体制や介入方法が 報告されている.本稿では,2013 年 3 月までに発表され,行動問題を示す知的障害者 や発達障害者への支援体制や介入方法を示唆した調査研究の成果を概観し,今後の課題 について考察した.  調査研究は,「学校」「幼稚園・保育所」「福祉施設」の3 つの場面で実施されており, 2003 年以降では,発達障害者を対象とした研究が中心となっていた.また,支援体制 や介入方法は,「対象者への働きかけ」「職場全体での取り組み」「関係機関・関係者と の連携」の3 つの観点に整理をすることができた.  今後の研究課題として,①行動問題を示す知的障害者への支援体制や介入方法につい ての調査研究の実施,②「対象者への働きかけ」「職場全体での取り組み」「関係機関・ 関係者との連携」の3 つの観点に関わる調査項目の開発,③支援体制や介入方法の成果 までを含めた調査研究の必要性を示唆した. キーワード:知的障害者や発達障害者,行動問題,調査研究,支援体制や介入方法,       レビュー

 Ⅰ.はじめに

 知的障害者や発達障害者の生活を支える福祉サービスは,ここ数年の間に大きく変化してきて いる.福祉サービスは,これまで「措置制度」に代表されるように都道府県・政令指定都市が行 〈研究ノート〉

我が国における知的障害者及び発達障害者の

行動問題に関わる調査研究の動向と課題

  

支援体制や介入方法を中心に   

村 田 泰 弘 

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政処分として対象者に与えるものであった.しかし,2003 年 4 月にスタートした「支援費制度」 では,利用者が福祉サービスを選択・利用できるようになった.その後,「支援費制度」は,「障 害者自立支援法」,「障害者総合支援法」へと形を変えていくものの,「利用者が福祉サービスを 選択し,利用する」という原則は受け継がれている.  知的障害者や発達障害者が福祉サービスを選択し,利用できるようになることで,選択される 側である福祉施設が自らのサービス内容を見直す必要性に迫られるようになった.つまり,「施 設・職員主体のサービス」から「利用者主体のサービス」への転換である.福祉施設には,知的 障害者や発達障害者が事務作業や軽作業,レクリエーション活動などを通じての社会貢献や地域 住民とのつながりをもてるような活動参加の機会を提供し,そこにおける支援の充実が求められ ていると考える(村田・村中 2011).  福祉施設における知的障害者や発達障害者の活動参加の機会とそこにおける支援の充実を妨げ るものとして,知的障害者や発達障害者の示す行動問題(challenging behavior)がある.現在 では,問題行動(problem behavior)よりも,行動問題(challenging behavior)の用語が多く 使用される.前者の問題行動では,行動それ自体の問題性が強調されるが,後者の行動問題で は,行動そのものや,行動を示す対象者が問題ではなく,行動を引き起こし維持されている支援 環境のあり方が問題とされている(藤原 1995).  福祉施設で問題性の高い行動問題の反応型(topography)として,他者を叩く・噛むなどの 他害行動,自分の手を噛む・頭を叩くなどの自傷行動,窓ガラスを割る・ドアを壊すなどの破壊 行動などがある.福祉施設では,こうした行動問題を示す対象者への活動参加を支える支援の必 要性を感じながらも,その具体的な方策につまずいていることが多く,結果として,対象者の作 業や外出,他者との交流などといった様々な活動機会に制限がもたらされている(倉光他 2005).こうした制限は,対象者のライフスタイルの固定化につながり,彼らの生活の質 (Quality of Life)を低下させていることが示唆されている(平澤・藤原 2001;久田 1993;黒 木・納富 2005;Knoster & Kincaid 2007:304;山根他 2004).そのため,知的障害者や発達障害 者の行動問題の改善は,早急に求められる課題の一つになるのではないだろうか.   知的障害者や発達障害者の行動問題の改善を試みる研究は,対象者の生活場面に実際に介入す る事例研究だけではなく,複数の福祉施設や学校などに対して行動問題に関わるアンケートを行 う調査研究からも報告されている.調査研究のねらいは,対象者の行動問題の実態を把握したう えで支援体制や介入方法を検討する必要があるからであろう.我が国における知的障害者や発達 障害者の示す行動問題に関わる調査研究をレビューしてみると,石井(2005)のような福祉施設 を利用する知的障害者の行動問題の要因に関わる研究をはじめ,知的障害者や自閉症者の行動問 題に対する親のストレスに関わる研究(坂口・別府 2007), 知的障害者の性に関わる行動問題の 研究(堀内他 1994;大久保・井上 2008;篠崎・古川 1993)などが認められる.最近では,自閉

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 こうした調査研究の中には,福祉施設や学校現場などにおける対象者の行動問題に対して,実 際にどのような支援体制を整備しているのか,どのように介入しているのかの介入方法まで調べ たものが報告されている.例えば,橋本他(1988)は知的障害児者施設の他害や自傷,常同行動 などの行動問題を示す15 歳以上の入所者 468 名の担当職員に介入方法について質問紙調査をし ている.また,小笠原・守屋(2005)は知的障害養護学校の奇声や他傷,自傷などを示す児童 460 名の学級担任に介入方法に関する質問紙調査を行った.最近では,澤田他(2011)が高等学 校の他生徒とのトラブルやコミュニケーションが取れないなどの行動問題を示す発達障害の生徒 への支援体制や介入方法について質問紙調査をしている.  このように,知的障害者や発達障害者の示す行動問題への支援体制や介入方法に関わる調査研 究が行われている.しかし,こうした研究内容について整理した展望論文は見当たらない.これ を整理することで,今後,知的障害者や発達障害者の行動問題への支援体制や介入方法における 実態把握の調査研究を行うために必要な調査項目やその内容などについての示唆が得られると考 えられる.  本稿では,2013 年 3 月までに発表され,行動問題への支援体制や介入方法について検討して いる調査研究を概観する.そして,調査の対象者,行動問題,回答者,調査場面,分析手段,支 援体制や介入方法を中心に整理し,今後の課題を明らかにする.

 Ⅱ.文献検索の方法

 最初に,コンピュータによる文献検索を行った.文献検索では,国立情報学研究所論文情報ナ ビゲータ(CiNii)のデータベースを使用した.「行動問題・問題行動・挑戦的行動」,「知的障 害・自閉症・発達障害」,「調査研究」のキーワードを組み合わせて2013 年 3 月までを検索した. 加えて,学会誌と紀要及びそれらの引用文献を含めた98 編を抽出した.その後,抽出した 98 編 を通読し,学会誌または紀要で,実際に知的障害者や発達障害者の行動問題に関わる調査研究を 行っている43 編を抽出した.最後に,抽出した 43 編の中から,研究の目的に関連する行動問題 への支援体制や介入方法を示唆した12 編を分析対象とした.  

 Ⅲ.行動問題への支援体制や介入方法

 1.概要  表1 は,行動問題への支援体制や介入方法について検討した研究 12 編を整理したものである. 表1 では,調査した場面から,①学校(5 編),②保育所・幼稚園(4 編),③福祉施設(3 編) の3 つの観点に分類した.

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表1 行動問題への支援体制や介入方法 観点 著者 対象者 対象者の行動問題 回答者 調査場面 分析手段 支援体制や介入方法 学校 澤田他(2011) 発達障害 16 ~ 18 歳 31 名 話しがかみ合わずコミュニ ケーションが取れない,学 習内容を理解するうえで特 に困難が見られた,友人と のトラブルをしばしば起こ す   岐阜県立高等学 校73 校 の 教 育 相談担当者また はコーディネー ター 73 名 高等学校 13 の 選 択 項目から複 数回答 【対象者への働きかけ】 教育相談 【職場全体での取り組み】 学校全体での実態把握,校内 委員会の実施,ケース会議, 教科担当者会議での情報共有 や支援方針の検討,障害理解 を深める研修 【関係機関・関係者との連携】 医療機関・特別支援学校との 連携,スクールカウンセラー などとの連携  相澤・本郷(2010) 発達障害の 疑い 6 ~ 9 歳 386 名 他のことが気になって教師 の話を最後まで聞けない, 集団場面より一対一の方が 集中できる,具体的に指示 がないと理解が難しい,不 得意なことに取り組もうと しない,いけないと分かっ ているのについやってしま う,好きなことには集中す る,手足をそわそわ動かし たりきょろきょろする,活 動の中に入れない,友だち にちょっかいをだす,一度 主張し始めるとなかなか自 分の考えを変えない 宮城県内の発達 障害児がいる公 立 小 学 校99 校 の学級担任 386 名 小学校(第 1 ~ 3 学年) 4 つのカテ ゴリーの各 9 つの選択 項目から複 数回答 【対象者への働きかけ】 席の配置など対象児のおかれ ている環境に配慮している, 休み時間等に教師が一緒に遊 ぶ,助け合い・教え合い学習 を取り入れている,対象児の 課題の量を調節する,対象児 の行動に他児が過敏に反応し ないように配慮する,対象児 とのつきあい方を具体的に話 す 【関係機関・関係者との連携】 保護者と個別の面談を行い共 通理解を深めている 竹村(2009) 発達障害の 疑い 7 ~ 12 歳 252 名 授業や課題 に取り 組めな い,暴力・他児へのちょっ か い, 集 団 行 動 が と れ な い,習癖,パニックを起こ す 茨城県内の小学 校39 校 通 常 学 級担任 375 名 小学校 7 つの選択 項目から複 数回答 【対象者への働きかけ】 個別的対応を行う,声かけを する,様子をみる,他児に働 きかける 【職場全体での取り組み】 校内で連携をとる 【関係機関・関係者との連携】 保護者と連携をとる 清水他(2006) 知 的 障 害, 自閉症, 発 達障害 13 ~ 15 歳 5070 名 自傷,他傷,粗暴な行動, 衝動的・興奮行動,多動, 寡動,拒否的行動,強迫的 行動,性に関する行動,奇 声・異食 北海道・東北・ 関東・中部地方 (一部)の知的 障害養護学校の 養護教諭 268 名 知的障害養 護学校中学 部 自由記述の 内 容 か ら KJ 法 に よ りコード化 【対象者への働きかけ】 保健室を気持ちの切り替えの 場として提供,面談や相談の 機会の提供 【職場全体での取り組み】 担任へのアドバイス 【関係機関・関係者との連携】 主治医への報告をまとめる 小笠原・守屋(2005) 知的障害 7 ~ 12 歳 460 名 奇 声, 他 傷, 自 傷, 物 壊 し,逸脱 東京都立の知的 障 害 養 護 学 校 11 校 の 各 学 級 担任 回答者数の記述 なし 知的障害養 護学校 自由記述の 内 容 か ら KJ 法 に よ りコード化 【対象者への働きかけ】 注意,叱責,気持ちを落ち着 かせ る, スキ ンシ ップ を図 る,簡単な要求のサインやこ とばの指導,行動問題の生起 に対して直接的なかかわりを 行わずその行動に対して反応 しない  保育所・幼稚園 前田他(2010) 発達障害  1 ~ 6 歳 170 名 コミュニケーション困難, 想像性の欠如・こだわり, 対 人 関 係( 愛 着 行 動 ) 困 難,集団行動困難,感覚過 敏, 基 本 的 生 活 習 慣 の 問 題, 姿 勢・ 運 動 発 達 の 問 題,パニック・多動・不注 意 沖 縄 県3 市 76 保育所の保育士 546 名 保育所 自由記述の 内 容 か ら KJ 法 に よ りコード化 【対象者への働きかけ】 情緒の安定に関する支援,言 語及びコミュニケーションに 関す る支 援,保 育の 基本 姿 勢,対人関係支援,基本的生 活習慣支援,運動発達支援 【職場全体での取り組み】 保育士の配置,園内情報共有 【関係機関・関係者との連携】 関係職種との連携,保護者と の情報共有,保護者への関わ り,社会資源の紹介

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平澤他(2005) 発達障害の 疑い 0 ~ 6 歳 782 名   集団活動に関する問題,こ とばに関する問題,動きに 関する問題,興奮状態・癇 癪・情緒不安,指示に従わ ない K市内143 ヵ所 の保育所の担任 保育士 回答者数の記述 なし 保育所 9 項目から 複数回答 【対象者への働きかけ】 促し方を変える,原因に基づ く対応,良い行動を教える, 叱る,制止,環境設定,離れ る,連れだし   【職場全体での取り組み】 保育士の加配 本郷他(2004) 発達障害の 疑い 0 ~ 6 歳 対象者数の 記述なし 他児とのトラブルが多い, 落ち着きがない,状況の変 化にうまく対応できない, ルール違反をすることが多 い A 市 内 153 ヵ 所の保育所・幼 稚園の保育士と 幼稚園教諭 153 名 保育所・幼 稚園 13 項 目 の 項目毎に5 件法による リッカート スケールに よる回答 【職場全体での取り組み】 クラス担任と所長(主任・副 園長)で話し合いの場をも つ,職員全体で話し合いの場 を持つ 【関係機関・関係者との連携】 専門機関と連絡をとる,専門 機関を紹介する,専門機関へ 同行する,行政機関と連絡を とる,小学校と連絡をとる, 保護者の思いを受け止める, 定期的な話し合いの機会を持 つ,子どもの状態を正確に伝 える,家庭での接し方につい て助言する,しばらく様子を 見守る 本郷他(2003) 発達障害の 疑い 0 ~ 6 歳 141 名 対人的トラブル,落ち着き がない,状況への順応性の 低さ,ルール違反,いけな いとわかっているのについ ついやってしまう,他児に ちょっかいを出す,周りの 子どもにつられて騒いでし まう,一度怒るとなかなか おさまらない  A 市 内 58 ヶ 所 の保育所の保育 士 回答者数の記述 なし 保育所 11 項 目 の 項目毎に5 件法による リッカート スケールに よる回答 【対象者への働きかけ】 集団から逸脱した時には注意 する,ルールをしっかり教え る,行動問題が出現しないよ うに目を光らせる,席の場所 などを考慮する,集団をなる べく落ち着かせるようにす る,他の子どもたちとの遊び の機会を多くする,子どもの 好きな遊びの機会を多くす る,子どもの気分を壊さない ようにやさしく対応する,な るべく注意しないようにす る,小集団グループをつくる 【職場全体での取り組み】 他の保育者の協力を得る 福祉施設 栗林・阿部(2010) 知 的 障 害 , 自閉症, 発 達障害 5 ~ 18 歳 37 名 身辺処理の未確立,自傷, 他傷,物投げ・破壊.落ち 着きない,大声・奇声,常 同行動,こだわり,人前で 裸になる,逸脱,異食,癇 癪,排泄物遊び,他の人と 交流しない 富山県内の障害 のある子どもを 利 用 し て い る 24 事 業 所 の 代 表者 24 名 児 童 デ イ サービス事 業所 自由記述の 内 容 か ら KJ 法 に よ りコード化 【対象者への働きかけ】 おさまるまで待つ・ほってお く,行動問題の原因となる対 象を遠ざける,代償になるも の を与 える, 言葉 で注 意す る,側に付きその行動を止め る 小笠原・松島(1992) 知 的 障 害 , 脳 性 麻 痺, て ん か ん, 視 力 障 害, 小頭症 0 ~ 19 歳 28 名 自 傷, 他 傷, 脱 衣, 易 興 奮,奇声・興奮 東 海 北 陸 管 内 14 ヵ 所 の 国 立 療養所重障児病 棟の担当職員 回答者数の記述 なし 国立療養所 重症心身障 害児病棟 7 つの選択 項目から複 数回答 【対象者への働きかけ】 個別療育,投薬,集団療育, 抑制・保護,行動療法,心理 療法 【関係機関・関係者との連携】 家族への働きかけ 橋本他(1988) 知 的 障 害, 自閉症 15 歳以上 468 名 対 人 関 係 の 障 害, 常 同 行 動,こだわり,奇声,課題 に対する拒否,睡眠問題, 強 迫 性 不 機 嫌, 自 傷, 他 害,突発的行為 北海道内130 ヵ 所の精神薄弱児 者施設の担当職 員 回答者数の記述 なし 知的障害児 者施設(知 的障害児通 園施設, 重 症心身障害 児施設を除 く) 26 の 選 択 項目から複 数回答 【対象者への働きかけ】 施設全体を通して対象者の興 味ある課題の設定や指導の工 夫などによって改善をはか る,他障害との混合集団の中 で自閉症状の改善を考える, 作業指導を通して改善をはか る,自閉症状の改善をはかる のではなく社会適応能力や良 い行動の強化,ゆとりをもっ た対応 【職場全体での取り組み】 指導員の知識・技術の向上

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 表1 を中心に,対象者の属性や障害種,行動問題,回答者の属性,調査場面,分析手段,支援 体制や介入方法の概要について述べる.対象者の属性について,年齢の範囲は0 ~ 6 歳の乳幼児 (平澤他 2005;本郷他 2003;2004)から 15 歳以上の青年や成年(橋本他 1988)まで幅広かった. 障害種では,発達障害や発達障害の疑いのある対象者が12 編中 7 編であった.他には,知的障 害や知的障害を併せ持つ対象者が12 編中 3 編(小笠原・松島 1992;小笠原・守屋 2005;橋本 他 1988),知的障害や発達障害を対象としたものが 12 編中 2 編(栗林・阿部 2010;清水他 2006)であった.  対象者が示す行動問題では,コミュニケーションが取れない,授業や課題に取り組めない,集 団行動できない,ルール違反,多動,逸脱,パニック,他児へのちょっかい,身辺処理の未確 立,自傷,他傷,物投げ・破壊,大声・奇声,常同行動などが認められた.  調査場面では,学校場面が小学校と知的障害養護学校が2 編ずつ,高等学校(澤田他 2011) が1 編であった.他は,保育所・幼稚園が 4 編,福祉施設が 3 編であった.調査対象数は 28 名 (小笠原・松島 1992)から 5070 名(清水他 2006)と幅広かった.  回答者の属性では,対象者の学級担任や支援者が12 編中 10 編,養護教諭(清水他 2006),教 育相談担当者・コーディネーター(澤田他 2011)が 1 編ずつであった.回答者数は 24 名(栗 林・阿部 2010)から 386 名(相澤・本郷 2010)であった.記述がなかったものが 12 編中 5 編 であった.  支援体制や介入方法の分析方法では,予想される複数の支援体制や介入方法に関わる調査項目 の中から該当するものを複数選択してもらうものが12 編中 6 編,自由記述の内容を KJ 法によっ て集約するものが12 編中 4 編であった.他には,本郷他(2003;2004)のように,予想される 支援体制や介入方法に関わる調査項目に対して5 件法のリッカートスケールで回答するものが 12 編中 2 編であった.  支援体制や介入方法では,その内容を「対象者への働きかけ」「職場全体での取り組み」「関係 機関・関係者との連携」の3 つのカテゴリーに整理した.「対象者への働きかけ」が 12 編中 11 編で最も多かった.次いで,「職場全体での取り組み」が12 編中 8 編,「関係機関・関係者との 連携」が7 編であった.澤田他(2011)や竹村(2009)などのように 3 つのカテゴリーについて 報告しているものが12 編中 4 編認められた.次に,「学校」「保育所・幼稚園」「福祉施設」の観 点ごとに代表的な論文について紹介し,研究成果について概観する.    2.学校  対象者の年齢範囲は6 ~ 18 歳で,小学生や中学生,高校生まで対象とされていた.障害種で は,発達障害や発達障害の疑いが5 編中 3 編であった.他には,知的障害(小笠原・守屋 2005),知的障害や発達障害の複数の対象者としたもの(清水他 2006)が 1 編ずつであった.

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害養護学校では主に他傷,自傷,破壊行動,奇声,異食,性に関する行動であった.高等学校で は話しがかみ合わずコミュニケーションが取れない,学習内容を理解するうえで特に困難が見ら れた,友人とのトラブルをしばしば起こすであった.  調査場面は小学校,知的障害養護学校,高等学校であった.分析手段は,予想される複数の支 援体制や介入方法に関わる調査項目の中から該当するものを複数選択してもらうものが5 編中 3 編,自由記述の内容をKJ 法によって集約するものが 2 編であった.  支援体制や介入方法では,「対象者への働きかけ」が5 編全てに認められた.「関係機関・関係 者との連携」が5 編中 4 編,「職場全体での取り組み」が 3 編であった.3 つのカテゴリーにつ いて報告されていたものは5 編中 3 編(澤田他 2011;清水他 2006;竹村 2009)であった.澤田 他(2011)や竹村(2009)のように支援体制や介入方法の成果について述べられている論文が認 められた.    3.保育所・幼稚園  対象者の年齢範囲は0 ~ 6 歳までの乳幼児を対象としていた.障害種では,発達障害や発達障 害の疑いが4 編中 4 編であった.対象者が示す行動問題では,コミュニケーション困難,集団行 動困難,基本的生活習慣の問題,ことばや動きに関する問題,癇癪,他児とのトラブル,ルール 違反,落ち着きがない,他児へのちょっかいであった.  分析手段は,予想される支援体制や介入方法に関わる調査項目に対して5 件法のリッカートス ケールで回答するものが4 編中 2 編であった.他には,自由記述の内容を KJ 法によって集約す るもの(前田他 2010),予想される複数の支援体制や介入方法に関わる質問項目の中から該当す るものを複数選択してもらうもの(平澤他 2005)が 1 編ずつであった.  支援体制や介入方法では,「職場全体での取り組み」が4 編全てに認められた.「対象者への働 きかけ」が4 編中 3 編,「関係機関・関係者との連携」が 4 編中 2 編であった.3 つのカテゴリー について報告されていたものは4 編中 1 編(前田他 2010)であった.支援体制や介入方法の成 果について述べられている論文は1 編(平澤他 2005)認められた.    4.福祉施設  対象者の年齢範囲は5 歳以上の幼児や児童,青年,成年を対象としていた.障害種では,知的 障害や自閉症(橋本他 1988),知的障害や発達障害(栗林・阿部 2010),知的障害や脳性麻痺, てんかん,視力障害,小頭症(小笠原・松島 1992)のある対象者とした論文が 1 編ずつであっ た.  対象者が示す行動問題について,児童デイサービス事業所では身辺処理の未確立,自傷,他 傷,物投げ・破壊,落ち着きない,大声・奇声,常同行動,こだわり,人前で裸になる,逸脱, 異食,癇癪,排泄物遊び,他の人と交流しない(栗林・阿部 2010)であった.重症心身障害児 病棟では自傷,他傷,脱衣,易興奮,奇声・興奮(小笠原・松島 1992),知的障害児者施設では

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対人関係の障害,常同行動,こだわり,奇声,課題に対する拒否,睡眠問題,強迫性不機嫌,自 傷,他害,突発的行為(橋本他 1988)であった.  分析手段は,自由記述の内容をKJ 法によって集約するもの(栗林・阿部 2010),予想される 複数の支援体制や介入方法に関わる調査項目の中から該当するものを複数選択してもらうもの (橋本他 1998;小笠原・松島 1992)であった.支援体制や介入方法では,「対象者への働きかけ」 が3 編全てに認められた.「関係機関・関係者との連携」(小笠原・松島 1992)と「職場全体で の取り組み」(橋本他 1998)が 1 編ずつであった.支援体制や介入方法の成果については,小笠 原・松島(1992)が家族への働きかけの成果は改善が 0 例,非改善が 1 例であった.他には個別 療法や投薬,集団療法など6 項目に対する成果について述べられていた.    

 Ⅳ.研究成果のまとめと今後の課題

 前述してきたように,行動問題を示す知的障害者や発達障害者への調査研究では,学校,保育 所・幼稚園,福祉施設の各場面において,行動問題を示す対象者への支援体制や介入方法が示唆 されている.支援体制や介入方法を大別すると,「対象者への働きかけ」「職場全体での取り組 み」「関係機関・関係者との連携」の3 つが挙げられる.こうした成果を踏まえて,今後の研究 課題について,以下に述べていく.    1.行動問題を示す知的障害者への支援体制や介入方法に関する調査項目の開発  行動問題を示す知的障害者や発達障害者への支援体制や介入方法に関わる調査研究が認められ た.特に,2003 年以降では,発達障害,あるいは発達障害の疑いのある乳幼児や児童・生徒を 対象とする調査研究が12 編中 7 編であった.発達障害と他の障害を含めた調査研究も含めると 12 編中 9 編になり,発達障害を対象とした研究が盛んに行われていることが示唆された.これ は,2005 年に施行された「発達障害者支援法」や同年に中央教育審議会から出された「特別支 援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」が一つのきっかけとなり,学校や保育 所・幼稚園における発達障害児者に注目が集まったからではないかと考えられる.一方で,知的 障害者の支援体制や介入方法についての研究は,12 編中 3 編(橋本他 1988;小笠原・松島 1992;小笠原・守屋 2005)のみであり,小笠原・守屋(2005)以降は見当たらない.今後も, 行動問題を示す発達障害者を対象とした支援体制や介入方法の研究の蓄積は必要であろう.加え て,福祉分野や教育分野で多く見られる知的障害者にも目を向け,彼らの示す行動問題への支援 体制や介入方法を明らかにするための調査研究が今後求められると考えられる.  知的障害者の示す行動問題への支援体制や介入方法の調査研究の実施には,調査項目の開発が

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場全体での取り組み」では,職員間の連携(本郷他 2003;前田他 2010;澤田他 2011;竹村 2009),障害理解を深める研修(橋本他 1988;澤田他 2011),「③関係機関・関係者との連携」 では,保護者との情報共有(相澤・本郷 2010;前田他 2010),専門機関や専門職との連携(本 郷他 2004;澤田他 2011)などが認められる.今後は①,②,③の観点を基本とし,そこで示唆 されている支援体制や介入方法に関わる調査項目の開発とそれに基づいた調査研究の蓄積が研究 課題として求められると言えよう.    2.支援体制や介入方法に対する成果の検討  行動問題を示す知的障害者や発達障害者に対する支援体制や介入方法については,「対象者へ の働きかけ」,「職場全体での取り組み」,「関係機関・関係者との連携」の3 つが示唆された.一 方で,対象者に実施した支援体制や介入方法がどのような成果を導いたのかについて示した調査 研究は僅かであった(平澤他 2005;小笠原・松島 1992;澤田他 2011;竹村 2009).行動問題を 示す対象者への具体的な支援体制や介入方法が,対象者にどのような影響をもたらしたのかを明 らかにすることは,支援体制や介入方法の有効性を検討するうえで重要になると思われる.その ためには,支援体制や介入方法の成果を評価するための方法の検討が必要であると考えられる.  支援体制や介入方法の成果を検討している研究として,竹村(2009)は,「教師の対応時にお ける児童の反応」という調査項目を用いて成果を検討している.同様に,「支援の効果」(平澤他 2005),「問題行動への対応の成果」(小笠原・松島 1992)がある.平澤他(2005)や小笠原・松 島(1992),竹村(2009)は,支援体制や介入方法の成果の内容に関わらず幅広く分析対象とし ている.一方で,澤田他(2011)は,対象者の行動問題の改善が認められた事例(以下,成功事 例)を分析対象としている.澤田他(2011)のように,成功事例を分析対象とすることで,より 効果的な支援体制や介入方法の蓄積が容易になると思われる.平澤他(2005)や小笠原・松島 (1992),竹村(2009)のように,支援体制や介入方法に対する様々な成果を問うような調査研究 に加えて,澤田他(2011)のように成功事例を分析対象とする調査研究の積み重ねが求められる と考えられる.さらに,澤田他(2011)が対象とした学校場面以外にも,保育所・幼稚園や福祉 施設まで範囲を広げて,成功事例からどのような支援体制や介入方法が,対象者の示す行動問題 の改善に有効なのかを検討することも今後の重要な研究課題になると言えるであろう. 文献 相澤雅文・本郷一夫(2010)「集団適応に困難さをかかえる児童とその支援に関する研究:小学校 1 年~ 3 年の学級担任への調査から」『LD 研究』19(2), 135-146. 藤原義博(1995)「指導にあたって知っておくべき基礎知識:教室で見られるさまざまな行動の障害」『発 達の遅れと教育』451, 8-11. 橋本勝利・伊藤則博・古川宇一・大場茂俊・寺尾孝士(1988)「北海道における成人期自閉症の実態:精 神薄弱児者施設のアンケート調査から」『情緒障害教育研究紀要』 7, 1-10. 平澤紀子・藤原義博(2012)「知的障害特別支援学校における自閉症生徒のコミュニケーション手段と問 題行動に関する調査研究」『発達障害研究』34(4), 417-426.

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平澤紀子・藤原義博・山根正夫(2005)「保育所・園における「気になる・困っている行動」を示す子ど もに関する調査研究 : 障害群からみた該当児の実態と保育者の対応および受けている支援から」『発達障 害研究』26(4), 256-267. 平澤紀子・藤原義博(2001)「養護学校高等部生徒の複数の集会場面における奇声の改善 : 学校場面に適合 した機能的アセスメントに基づく指導」『教育実践学論集』2, 51-61. 久田則夫(1993)「施設必要悪論からの脱皮:施設ケアにおけるインフォームド・コンセントの実践を目 指して」『社会福祉研究』56, 84-89. 本郷一夫・高橋千枝・平川昌宏・角張慶子・飯島典子・杉村僚子(2004)「「気になる」子どもの保護者支 援に関する調査研究」『教育ネットワーク研究室年報』4, 1-15. 本郷一夫・澤江幸則・鈴木智子・小泉嘉子・飯島典子(2003)「保育所における「気になる」子どもの行 動特徴と保育者の対応に関する調査研究」『発達障害研究』25(1), 50-61. 堀内桂・渡辺純・岡田督・岡本正子・前田志寿代・服部祥子(1994)「思春期を迎えた障害児の性の発達 (第2 報) : 一般的な問題行動との関連についての因子分析の試み」『大阪教育大学紀要 IV 教育科学』42 (2), 317-329. 石井裕紀子(2005)「滋賀県における「強度行動障害」への支援の現状と課題」『障害者問題研究』33(1), 36-43. 倉光晃子・園山繁樹・近藤真衣(2005)「入所施設においてひきこもりを示すダウン症者に対する介入: 機能的アセスメントに基づく支援の事例的検討」『福祉心理学研究』2(1), 48-58. 栗林睦美・阿部美穂子(2010)「富山型デイサービスにおける障害のある子どもたちの問題行動に関する 調査研究」『富山大学人間発達科学部紀要』4(2), 55-66. 黒木康代・納富恵子(2005)「長期間持続していた服濡らし・放尿の行動障害への包括的アプローチ:知 的障害者施設における実践を通して」『特殊教育学研究』43(1), 21-30.

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参照

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