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薬用作物トウキの収穫適期推定プログラムの開発

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Academic year: 2021

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(1)

薬用作物トウキの収穫適期推定プログラムの開発

井上 聡*

, †

・甲村浩之**・五十嵐元子***・横井直人****・諸橋修一*****・野本英司******

由井秀紀*******・田村隆幸********・安永 真*********・白石 豊**********

加藤晶子*・矢野孝喜*・菱田敦之***

,

***********

*国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 **県立広島大学 ***国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ****秋田県農業試験場 *****新潟県農業総合研究所 中山間地農業技術センター ******新潟県魚沼地域振興局農業振興部 *******長野県野菜花き試験場佐久支場 ********富山県薬事総合研究開発センター *********山口県農林総合技術センター **********愛媛県農林水産研究所 ***********東京農業大学

Development of program for estimating optimum harvest date of medicinal plant Angelica acutiloba

Satoshi INOUE*, †, Hiroyuki KOHMURA**, Motoko IGARASHI***, Naoto YOKOI****, Shuuichi MOROHASHI*****, Eiji NOMOTO******,

Hideki YUI*******, Takayuki TAMURA********, Makoto YASUNAGA*********, Yutaka SHIRAISHI**********,

Masako KATO*, Takayoshi YANO* and Atsuyuki HISHIDA***, ***********

*National Agriculture and Food Research Organization **Prefectural University of Hiroshima

***National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition ****Akita Prefectural Agricultural Experiment Station

*****Niigata Agricultural Research Institute Moutain Agricultural Technology

******Agricultural Promotion Department, Uonuma Regional Promotion Bureau, Niigata Prefectural Government *******Nagano Vegetable and Ornamental Crops Experiment Station Saku Branch

********Toyama Prefectural Institute for Pharmaceutical Research *********Yamaguchi Prefectural Agriculture & Forestry General Technology Center

**********Ehime Research Institute of Agriculture, Forestry and Fisheries ***********Tokyo University of Agriculture

Abstract

 To evaluate growth and develop a growth model of the medicinal plant Angelica acutiloba, we grew plants of one cultivar in one nursery at nine sites in Honshu and Shikoku, Japan, from 2016 to 2018. The collected data thus reflect differences in growing environment. The model estimates root dry weight and root head diameter from the number of days at the preferred growing temperature range between lower and upper limits based on the daily mean air temperature, and incorporates growth suppression by high temperatures in summer 2018. It was used to develop a program for estimating the optimum harvest date at any location in Honshu and Shikoku from Agro-Meteorological Grid Square Data of NARO.  Key words: Angelica acutiloba, The Agro-Meteorological Grid Square Data of NARO, The optimum harvest date  キーワード:トウキ,メッシュ農業気象データ,収穫適期

 2020 年 10 月 7 日 受付,2020 年 12 月 28 日 受理  †Corresponding author: [email protected]

 DOI:10.2480/cib.J-21-065









1. はじめに

トウキ(Angelica acutiloba (Siebold & Zucc.) Kitag.)は, セリ科の多年生植物である。第十七改正日本薬局方では, トウキおよびホッカイトウキ(A. acutiloba var. sugiyamae Hikino)の根は生薬「当帰(トウキ)」の原料として利用 される。当帰は婦人薬等の多くの漢方処方に配合される重 要な医薬品原料である。 トウキは,古来より山城国(京都府南東部)で栽培さ れ,後に大深(奈良県五條市)でも栽培され良品とされて きたが,現在は北海道を含む国内の広範囲で栽培されてい る。トウキ栽培での先行研究では,寺西・吉田(1988)は, 土壌要因と生育の関係を調査し適切な肥培管理をすれば土 質を選ばないことを明らかにした。川岡(1997; 1998)は, トウキの発芽率,開花株率を調査した。浅尾(2010)は, 苗の根茎や根長管理によって抽苔率を抑えられることを示 した。頼ら(1992)は,グロースキャビネットを用いて栽 培試験を行い,定温処理の場合 20℃での地下部の成長が 最大であること,日較差処理の場合,昼 25/ 夜 15℃区で 最大であり,昼 30/ 夜 20℃区ではそれより 5% 有意に小さ いことを示した。









(2)

以上のような研究事例はあるが,野外での栽培条件下に おける気象要因を用いた詳細な生育解析研究はなく,トウ キを新規作物として導入するにあたり,実際に現地で栽培 してみなければ現地での気象の適応性や栽培時期の目安が 分からなかった。近年,薬用作物の栽培機運が高まり,農 林水産省委託研究プロジェクト「薬用作物の国内生産拡大 に向けた技術の開発」がスタートした。薬用作物の品目ご とに研究が実施され,トウキについても後述する国内 9 地 点での連絡試験が実施された。連絡試験では,同一条件で 育苗された同一系統の苗を用いており,その生育差は各試 験地間の環境条件の差によると考えられるため,各試験地 の気象データ推定値を用いて生育解析を行った。さらに, 本研究での生育解析結果を生産現場で活用するため,トウ キ収穫適期推定プログラムを開発した。

2. 方  法

2.1 栽培試験 本研究で使用したトウキの栽培試験は,本州および四国 地方の 9 地点で,2016 年から 2018 年までの 3 年間行った。 各試験地の位置,各栽培期間の定植日,収穫日を表 1 に示 す。2018 年には,同一定植日での栽培期間の違いによる 根の生育の違いを見るため,一部の試験地では複数回の収 穫を行い,計 30 データセットを得た。 各試験地(実施機関,実施場所)は,秋田(秋田県農業 試験場,秋田県秋田市),新潟(新潟県農業総合研究所, 新潟県長岡市),長野(長野県野菜花き試験場佐久支場, 長野県小諸市),富山(富山県薬事総合研究開発センター 薬用植物指導センター,富山県上市町),茨城(国立研究 開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以後,農研機 構)次世代作物開発研究センター,茨城県つくば市),広 島(県立広島大学庄原キャンパス,広島県庄原市),山口 (山口県農林総合技術センター,山口県山口市),香川(農 研機構西日本農業研究センター,香川県善通寺市),愛媛(愛 媛県農林水産研究所,愛媛県松山市)である。 供試材料は,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研 究所薬用植物資源研究センター北海道研究部にて慣行法に 従い育苗された,根頭径約 5 mm の苗を使用した。 栽植方法は,畝幅 70 cm,株間 30 cm の 1 条植えであ る。施肥方法は,基肥として IB 化成 S1 号(10-10-10)を 100 kg/10 a 全面施肥によって施用した。収穫調査において 6 ~ 12 サンプル採取し,収穫物は根頭径を測定し,地上 部と地下部(根)に切り分け,根は水道水で洗浄した後, 通風乾燥機(80℃)で恒量に達するまで乾燥して根の乾燥 重量を求めた。 2.2 気象データ 気象データは,農研機構にて開発されたメッシュ農業気 象データ(大野ら, 2016)を使用した。これは,気象庁アメ ダス観測地点気象データを,一辺約 1 km の国土地域基準 メッシュ(国土数値情報 3 次メッシュ)形式で空間補間し た推定値である。日平均気温の場合,データ取得前日まで は観測値,当日および 26 日先まで予報値,それ以降は平 表 1. 栽培地点および定植・収穫年月日. 地点 緯度 経度 標高 (m) 栽培年 - 期間 定植日 収穫日 秋田 39.581653 140.197362 30.0 2016 年 6 月 7 日 10 月 31 日 2017 年 5 月 1 日 11 月 1 日 2018 年 -1 5 月 1 日 10 月 15 日 2018 年 -2 5 月 1 日 11 月 1 日 2018 年 -3 5 月 1 日 11 月 20 日 新潟 37.285 138.8504 132.0 2016 年2017 年 6 月 8 日5 月 1 日 10 月 27 日10 月 30 日 2018 年 5 月 1 日 10 月 26 日 長野 36.299821 138.394866 807.0 2016 年2017 年 6 月 9 日5 月 9 日 10 月 28 日10 月 31 日 2018 年 4 月 27 日 10 月 30 日 富山 36.717591 137.387649 61.9 2016 年2017 年 6 月 12 日5 月 9 日 10 月 28 日10 月 31 日 2018 年-1 4 月 27 日 10 月 26 日 2018 年-2 4 月 27 日 12 月 11 日 茨城 36.03045 140.100842 22.4 2017 年2018 年 4 月 26 日4 月 26 日 10 月 30 日11 月 6 日 広島 34.826587 132.97643 315.9 2016 年 6 月 8 日 10 月 27 日 2017 年 5 月 1 日 10 月 31 日 2018 年-1 4 月 27 日 10 月 30 日 2018 年-2 4 月 27 日 11 月 29 日 山口 34.162869 131.524546 58.2 2016 年2017 年 6 月 7 日5 月 1 日 10 月 26 日10 月 31 日 2018 年 4 月 27 日 10 月 31 日 香川 34.23151 133.774904 24.2 2016 年2017 年 6 月 27 日5 月 1 日 10 月 26 日10 月 31 日 愛媛 33.97744 132.800562 28.4 2016 年 6 月 10 日 10 月 31 日 2017 年 5 月 1 日 11 月 2 日 2018 年-1 4 月 27 日 10 月 31 日 2018 年-2 4 月 27 日 12 月 20 日

(3)

年値に基づくメッシュデータがシームレスに接続されてい る。生育モデル解析では,2016 年から 2018 年における観 測値に基づく日平均気温メッシュデータを使用した。収穫 適期推定プログラムにおいては,データセットの存在する 任意の年次での計算が可能である。なお 2016 年は閏年であ り,年次比較の際に 2 月 29 日のデータを削除して使用した。 2.3 解析手法 収穫調査結果を目的変数,日平均気温データを説明変数 とする回帰分析によって,生育モデルを求めた。植物の成 長は一般的に,日平均気温を用いた基準温度以上の有効積 算気温で説明できる。しかし 2018 年は猛暑年であり,夏 季に顕著な生育停滞が見られた。そこで,下限温度(基準 温度)に加えて生育の上限温度を設定し,両温度間を生育 好適温度帯と定義した。そして(1)式の通り,定植日翌 日から収穫日前日まで積算生育好適温度帯日数を計算し, 変数とした。 H-1 Xi =1 (if TL ≤ T ≤ TH ) X =

Xi

{

(1) i =P+1 Xi = 0 (if T < TL or TH < T ) ただし,X は生育好適温度帯日数(日),P は定植日(通日), H は収穫日(通日),TL は下限温度(℃),TH は上限温度 (℃),T は i 日における日平均気温(℃)。 根の乾燥重量を目的変数,栽培期間中の生育好適温度帯 日数を説明変数として回帰分析を行った。下限温度は草本 植物に一般的な 5℃および 10℃の 2 種類を検討した。上限 温度は 1℃毎に設定し,線形および非線形関数(多項式, 累乗,指数,対数)モデルを用いて回帰分析を行い,全て の上限温度・下限温度・モデルの組み合わせについて情 報量基準(AIC)および二乗平方根誤差(RMSE)を調べ, 最小となる組み合わせを用いることにした。根頭径は参考 データとして,根の乾燥重量で採用した上限温度での生育 好適温度帯日数を説明変数とする線形回帰分析を行った。 解析には統計解析言語 R を使用した。

3. 結  果

各地の各栽培期間における生育結果を図 1 に示す。 生育結果について,東日本の寒冷地では温暖地に比べ て比較的良好であった。年次間比較では,定植日が遅い 2016 年は,比較的根の乾燥重量が小さかった。2017 年は 良好に生育したが,2018 年は生育不良であった。収穫日 を遅らせて生育期間を延ばした結果,根の乾燥重量は増加 傾向が見られた。 根の乾燥重量を目的変数,栽培期間中の生育好適温度帯 日数を説明変数として探索的に回帰分析を行った結果,下 限温度を 5℃,上限温度を 26℃とし,累乗関数モデル(2)式 を得た。(2)式についてAICは246.03,RMSEは13.22であり, 他の非線形モデルや線形関数モデルより値が小さかった。 Y1 = 1.62 × 10-5 X2.93 (2) ただし,Y1は根の乾燥重量(g / 株)。 根の乾燥重量の推定結果を図 2 に示す。同様に根頭径を 目的変数,生育好適温度帯を説明変数として回帰分析を 行った結果,以下の線形関数モデル(3)式で最適な結果を 得た。(3)式について,係数は 0.1% 有意であり,決定係 数は 0.64,RMSE は 5.5 であったため,これを推定式とし て採用した。 Y2 = 0.28 X -5.40 (if Y2 > 0) (3) ただし,Y2は根頭径(cm)。 根頭径の推定結果を図 3 に示す。 図 1. 各地点の各栽培期間における根の乾燥重量(上段) および根頭径(下段).エラーバーは標準誤差,括弧内 はサンプル数を示す. 図 2. 生育好適温度帯日数と根乾燥重量の関係. 破線は(2)式. 生育好適温度帯日数(日) 根乾燥重量(g/ 株) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 50 100 150 200

(4)

3月1日 4月1日 7月1日 9月1日 1 1月1日 1 2月1日 愛 媛 香 川 山 口 広 島 茨 城 富 山 長 野 新 潟 秋 田

4. 考  察

2018 年は全国的に記録的な猛暑年であった。気象庁 (2019)によると,熊谷にて 41.1℃の国内観測記録歴代 1 位の高温を記録し,特に東日本では,春の平均気温,夏の 平均気温ともに 1946 年以降で最も高温となった。その結 果,各試験地にて夏季に顕著な生育停滞が観察され,一般 的な有効積算気温を用いたモデルでは生育結果を説明する ことが出来なかった。そこで本研究では,生育好適温度帯 日数の概念を導入し,高温による生育停滞をモデルに組み 入れることにした。今まで,トウキでの生育停滞が問題 にならなかったのは,2018 年ほど猛暑ではなかったため, 高温による生育停滞現象が顕著に現れてこなかったためと 考えられる。本研究では上限温度を 26℃としたが,これ は頼ら(1992)によるグロースキャビネットでの日較差試 験における昼 25/ 夜 15℃区より昼 30/ 夜 20℃区での成長 が小さかった結果と合致する。メッシュ農業気象データに おける平年値は 1981 年から 2010 年までの 30 年間の平均 値であり,7 月から 8 月までの各試験地を平均して 2018 年の試験地平均値と比較すると,気温が 1.83℃上昇した結 果となった。数値実験による気候変動将来予測においても 気温上昇が予測されているため,今後も高温による生育停 滞が生じる可能性が高く,その影響を組み込んだモデルに よる生育予測は引き続き必要であると考えられる。生育モ デルは,根頭径について線形モデルとし,根の乾燥重量に ついては非線形の累乗モデルを採用した。根頭径は根の生 育に対する 1 次元の評価であるのに対し,根の乾燥重量は 3 次元の評価となり,生育好適温度帯での生育期間が延び るにしたがって根の乾燥重量は急激に増加すると考えられ るため,このモデル選択は妥当であると考えた。 各試験地の 2016 年,2017 年,2018 年および平年の日平 均気温が生育好適温度帯に該当する暦日を図 4 に示す。 寒冷地である秋田,新潟,長野,富山では 4 月以降に生 育好適温度帯日が安定し,11 月中旬まで続く。温暖な茨城, 山口,香川,愛媛では,3 月以降に安定した生育好適気温 帯となり,12 月過ぎまで続く。一方,これらの温暖な地 域では夏季に高温のため生育好適気温帯から外れる日が長 期間生じた。広島県庄原市は,県内での高冷地であり,両 者の中間の様子を示した。 各試験地の4月から 10 月までおよび年間の生育好適温 度帯日の積算日数を図 5 に示す。 寒冷地である秋田,新潟,長野,富山では,4 月から 10 月までで約 170 日に達し,年間を通じても 250 日には届き にくい。そして,これらの地域は季節積雪地でもあり,長 期積雪が続く間は栽培できない。トウキには,霜や低温に よる生育障害が生じないことが知られており,以上から, 図 4. 各栽培試験地における日平均気温が生育好適温度帯 に該当する暦日(灰色).  各地点について左から 2016 年,2017 年,2018 年,平年. 図 5. 各試験地の年ごとの生育好適温度帯日数. 図 3. 生育好適温度帯日数と根頭径の関係. 破線は(3)式. 生育好適温度帯日数(日) 根頭径(mm) 60 50 40 30 20 10 0 0 50 100 150 200

(5)

これら寒冷地では,春の消雪後速やかに定植し,次の積雪 期間が始まる前までに栽培期間をできるだけ長くとること が肝要である。 一方,温暖な茨城,山口,香川,愛媛では近年,4 月か ら 10 月だけでは 170 日に達しない場合が多い。これは, 寒冷地での栽培と同様の栽培期間では,夏季高温による生 育停滞の影響のため減収となることを示す。これら温暖な 地域では積雪も生じないことから,より早期である 3 月頃 に定植を行い,晩秋の 11 月末頃を収穫期として,栽培期 間を前後に延ばす必要がある。 以上の結果を用いて,本州,四国における異なる気候で の栽培支援のため,トウキ収穫適期推定プログラムを開発 した(農研機構職務作成プログラム 機構 -K18)。画面を 図 6 に示す。 これは,マイクロソフト社表計算ソフトエクセルを使用 し,農研機構メッシュ農業気象データに基づき,計算を 希望する任意地点における収穫適期を推定計算するもの である。希望する地点の位置(緯度,経度),目標とする 根の乾燥重量,定植年月日を入力し,「データ取得」ボタ ンをクリックすると,前述したモデル計算によって「収穫 適期年月日」を出力するものである。画面上には,計算年 の根の乾燥重量の推移と同時に日平均気温や積雪深の推移 も同時に表示する。そのため,寒冷地での利用時には,計 算当年の消雪日を推定(予測)して,定植可能時期を知る ことが可能になる。また,入力した目標とする根の乾燥重 量から収穫適期を推定し,その時期の気温や積雪状況を知 ることができる。一方,温暖地での利用時には,計算当年 のグラフから生育停滞時期を確認し,定植日を様々に設定 して目標とする根の乾燥重量の達成に向けた栽培期間のシ ミュレーションを行うことができる。計算当年ばかりでな く過去年の気温や積雪深に基づく定植時期,収穫時期の試 算を行うことも可能となる。プログラムの利用について は,農研機構本部特許ライセンスチームが問い合わせ窓口 (http://www.naro.affrc.go.jp/inquiry/program.html)となっている。

5.摘  要

セリ科の多年生植物であり,根が生薬原料となるトウキ (Angelica acutiloba (Siebold & Zucc.) Kitag.)を用いて,本 州・四国の国内 9 地点で連絡試験を実施した。連絡試験で 得られた根の乾燥重量および根頭径と,試験地の農研機構 メッシュ農業気象データの日平均気温の関係を調べた。夏 季高温時の生育停滞が見られたため,下限温度・上限温度 を設定し,両温度間を生育好適温度帯と定義して解析を 行った。収穫調査結果を目的変数,定植から収穫までの生 育好適温度帯の積算日数を説明変数とする回帰分析を行 い,根の乾燥重量,根頭径の生育モデルを得た。各地の生 育好適温度帯の暦日を調べると,以下のことが確認できた。 寒冷地では 4 月以降に生育好適温度帯日が安定し,11 月 中旬まで続く。寒冷地は季節積雪地でもあり,長期積雪が 続く間は栽培できない。高収量を得るためには,春の消雪 後速やかに定植し,次の積雪期間が始まる前までに栽培期 間をできるだけ長くとる必要がある。一方,温暖地では, 3 月以降に安定した生育好適気温帯となり 12 月過ぎまで 続くが,夏季に高温のため生育好適気温帯から外れる日が 長期間生じる。温暖地では,寒冷地より早期に定植を行い, より遅く収穫を行う必要がある。これら異なる気候地域で の栽培支援のため,トウキ収穫適期推定プログラムを開発 した。本州および四国地方を対象とし,任意の地点や年に 定植日を設定すると農研機構メッシュ農業気象データを読 み込んで生育モデル計算を行う。目標とする根の乾燥重量 の達成に向けた収穫適期推定や栽培期間のシミュレーショ ンを行うことができる。

謝  辞

本研究は,農林水産省委託プロジェクト「薬用作物の国 内生産拡大に向けた技術の開発」により実施した。

引用文献

浅尾浩史, 2010: ヤマトトウキの発芽と抽苔に及ぼす要因. 奈良県農業総合センター研究報告 41, 34-35. 川岡信吾, 1997: 薬用植物トウキ種子の発芽促進. 奈良県農 業試験場研究報告 28, 47-48. 川岡信吾, 1998: 薬用植物オオブカトウキの切り花の可能 性. 奈良県農業試験場研究報告 29, 28-29. 気象庁, 2019: 2018 年の日本の天候. https://www.jma.go.jp/jma/ press/1901/04b/tenko2018.html (アクセス日 : 2020/09/25). 頼宏亮・林文音・元田義春・菊地信・三木太平・田辺猛, 1992: トウキ(当帰)の生産ならびに品質向上に関する 研究(第 2 報)温度環境の相違がトウキの生育, 生理, 収 量および品質に及ぼす影響. 生薬学雑誌 46, 328-338. 大野宏之・佐々木華織・大原源二・中園 江, 2016: 実況 値と数値予報, 平年値を組み合わせたメッシュ気温・降 水量データの作成. 生物と気象 16, 71-79. 寺西雅弘・吉田幸雄, 1988: 薬用植物栽培地の土壌調査試験 (第 2 報)-1987 年度トウキ栽培地における土壌要因と生 育の関係について-. 富山県薬事研究所所報 15, 122-126. 図 6. トウキ収穫適期推定プログラム画面.

参照

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