双曲型2次曲線関数の整数問題への応用
–オイラーの公式の一般化と2次曲線関数の応用例– 高村 明∗ 概 要 三角関数や双曲線関数は,円や双曲線をパラメトライズする関数である.研究紀要 [1] では三角関数や双 曲線関数を一般化し,2次曲線上の点をパラメトライズする2次曲線関数を求め,加法定理が成り立つこと を示した.そして,研究紀要 [2] では楕円型2次曲線関数の整数論への応用を示した.このノートでは,双 曲線上の有理点を求める問題と,双曲線関数や双曲型2次曲線関数との関係を調べる.そして,加法定理か ら導かれる2倍角の公式から双曲線上の有理点を求めるパラメータ公式を導くことが出来ることを示す.1
はじめに
三角関数(cos θ, sin θ)は,円x2+ y2 = 1をパラメトライズする関数であり,加法定理が存在する.また,双 曲線関数(cosh θ, sinh θ)も,双曲線x2− y2= 1をパラメトライズする関数である.また,双曲線関数には加 法定理が存在し,パラメータは面積を表すという幾何学的な意味を持っている.研究紀要[1]で,三角関数と 双曲線関数をつなぐ2次曲線関数を導入した.そして,この2次曲線関数には加法定理が存在し,パラメータ は面積という意味を持っていることを示した.ここでは,この研究紀要[1]の結果を少し振り返ろう.2次曲 線x2− axy + by2 = 1 (D = a2− 4b)上の点を(c(θ), s(θ))とすると,これらの関数を2次曲線関数と呼ぶ.具 体的には c(θ) = e √ Dθ/2+ e−√Dθ/2 2 + a(e√Dθ/2− e−√Dθ/2) 2√D s(θ) = e√Dθ/2− e−√Dθ/2 √ D で与える.これらの関数は2次曲線の方程式 c2(θ) − ac(θ)s(θ) + bs2(θ) = 1 ↔ c(θ) −bs(θ) s(θ) c(θ) − as(θ) = 1 を満たす.D < 0の時は楕円を,D > 0の時は双曲線を表す.この関数は,加法定理 c(α + β) = c(α)c(β) − bs(α)s(β) s(α + β) = c(α)s(β) + s(α)c(β) − as(α)s(β) を満たす.また,この加法定理は,行列を使って c(α + β) −bs(α + β) s(α + β) c(α + β) − as(α + β) = c(α) −bs(α) s(α) c(α) − as(α) c(β) −bs(β) s(β) c(β) − as(β) と表すことが出来る.これらの2次曲線関数は,a = 0, b = 1の時には三角関数を,a = 0, b = −1の時には 双曲線関数を表している.また,研究紀要[2]では,楕円型2次曲線関数の整数問題へ応用した.1つの角が 60◦になるアイゼンシュタイン三角形の辺が整数になる問題と楕円型2次曲線関数との関連性を考察し,楕円 型2次曲線関数の加法定理からアイゼンシュタイン三角形の3辺が求められることを示した. このノートでは,双曲型2次曲線関数を例として取り上げ,整数問題へ応用する.最初に双曲線上の有理点 を求める幾何学的な方法を復習する.そして,双曲線上の有理点を求めるパラメータ公式を導く.また,双曲 型2次曲線関数の具体例を考察し,整数問題へ応用する.加法定理から得られる2倍角の公式を双曲線上の有 理点を求める問題に応用する.そして,双曲線上の有利点を求める幾何学的な方法と双曲型2次曲線関数の2 倍角の公式とで同じ結果になることを示す. ∗教授(一般学科)2
双曲線上の有理点を求める問題
この章では,2種類の双曲線を取り上げ,双曲線上の有理点を幾何学的に求める.これら2種類の双曲線は, 双曲線関数と双曲型2次曲線関数によってパラメトライズ出来るような曲線として選んでいる.これは,有理 点を求める幾何学的な問題と2種類の関数との関連性を調べたいからである. 2.1 有理点を求める幾何学的方法 この節では,双曲線x2−y2 = 1上の有理点P (x, y)を幾何学的に求める.点B(−1, 0)と双曲線上の点P (x, y) は両方とも有理点なので,それを結ぶ直線の傾きは有理数になる.逆に,B(−1, 0)を通り,傾きが有理数であ る直線と双曲線との交点は有理点になる.したがって,B(−1, 0)を通り,傾きが有理数である直線と双曲線と の交点を求めれば,双曲線上のすべての有理点を求めたことになる.直線の傾きをtとすると,双曲線との交 点は x2− y2 = 1 (2.1) y = t(x + 1) (2.2) で与えられる.これを図示すると O x y P (x, y) B(−1, 0) A(1, 0) (2.2)を(2.1)に代入してyを消去すると x2− t2(x + 1)2 = 1 となり,因数分解すると (x + 1)(x − 1 − t2(x + 1)) = 0 となる.これより,交点P (x, y)の座標は P (x, y) = 1 + t 2 1 − t2, 2t 1 − t2 (2.3) が得られる.傾きtは有理数なので,これを t = n m (2.4) とすると,(2.4)を(2.3)に代入すると x = m 2+ n2 m2− n2 y = 2mn m2− n2となる.これらは双曲線x2− y2 = 1上の点なので,これに代入すると m2+ n2 m2− n2 2 − m2mn2− n2 2 = 1 となる.分母を払うと,多項式の恒等式 (m2+ n2)2− (2mn)2 = (m2− n2)2 (2.5) が得られる.双曲線x2− y2= 1上の有理点は,tを有理数として(2.3)によって表される. 2.2 双曲線上の有理点を求める問題に対する別の例 この節では,双曲線2x2+ 5xy − 3y2 = 2上の有理点を幾何学的に導く.前の節の議論と同様に,点B(−1, 0) と双曲線上の点P (x, y)は両方とも有理点なので,それを結ぶ直線の傾きは有理数になる.逆に,B(−1, 0)を 通り,傾きが有理数である直線と双曲線との交点は有理点になる.したがって,B(−1, 0)を通り,傾きが有理 数である直線と双曲線との交点を求めれば,双曲線上のすべての有理点を求めたことになる.直線の傾きをt とすると,双曲線との交点は x2+5 2xy − 3 2y 2 = 1 (2.6) y = t(x + 1) (2.7) で与えられる.これを図示すると O x y A(1, 0) B(−1, 0) P (x, y) (2.7)を(2.6)に代入してyを消去すると 2x2+ 5tx(x + 1) − 3t2(x + 1)2 = 2 展開して整理すると (2 + 5t − 3t2)x2+ (5t − 6t2)x − 3t2− 2 = 0 となる.これは因数分解できて (x + 1)((2 + 5t − 3t2)x − 3t2− 2) = 0 となる.これより P (x, y) = 2 + 3t 2 2 + 5t − 3t2, 4t + 5t2 2 + 5t − 3t2 (2.8)
となる.双曲線x2+ 5xy/2 − 3y2/2 = 1を満たすので, 2 + 3t2 2 + 5t− 3t2 2 +5 2· 2 + 3t2 2 + 5t− 3t2 · 4t + 5t2 2 + 5t− 3t2 − 3 2 4t + 5t2 2 + 5t− 3t2 2 = 1 が成立することを意味している.分母を払うと 2 + 3t2 2+ 5 2(2 + 3t 2)(4t + 5t2 ) −32(4t + 5t2)2 = (2 + 5t − 3t2)2 (2.9) となり,傾きtは有理数なので, t = n m (2.10) として,(2.10)を(2.9)に代入して分母を払うと,2変数の恒等式 2(2m2+ 3n2)2+ 5(2m2+ 3n2)(4mn + 5n2) − 3(4mn + 5n2)2 = 2(2m2+ 5mn − 3n2)2 (2.11) が得られる.双曲線2x2+ 5xy − 3y2 = 2上の有理点は,tを有理数として(2.8)によって表される.
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整数問題への双曲線関数の応用
この章では,双曲線関数を復習し,それを整数問題へ応用する.また,双曲線関数には加法定理や2倍角の 公式が成立する.そして,加法定理から導かれる2倍角の公式により,前の章で求めた有理点を求める公式 (2.5)と同じ結果を導くことができることを示す. 3.1 双曲線関数 この節では,双曲線関数を復習する.双曲線x2− y2 = 1上の点(x, y)をパラメトライズする双曲線関数 (cosh θ, sinh θ)は cosh θ = 1 2 e θ+ e−θ (3.1) sinh θ = 1 2 e θ− e−θ (3.2) で定義される.これらの関数は cosh2θ − sinh2θ = 1 (3.3) を満たすため,双曲線x2− y2 = 1上の点(x, y)をパラメトライズできる.この条件は行列式を使うと cosh θ sinh θ sinh θ cosh θ = 1 と表される.また,双曲線関数(3.1)と(3.2)は,加法定理cosh(α + β) = cosh α cosh β + sinh α sinh β (3.4) sinh(α + β) = cosh α sinh β + sinh α sinh β (3.5)
を満たす.この加法定理は,行列を使って cosh(α + β) sinh(α + β) sinh(α + β) cosh(α + β) = cosh α sinh α sinh α cosh α cosh β sinh β sinh β cosh β (3.6)
と表される.また,双曲線関数(3.1)と(3.2)は,連立微分方程式 d dθcosh θ = sinh θ (3.7) d dθsinh θ = cosh θ (3.8) を満たす.双曲線関数のパラメータは次のような扇形の面積を表す. O y x A(1, 0) P (cosh θ, sinh θ)
双曲線x2− y2 = 1上の点をP(cosh θ, sinh θ)として扇形OAPの
面積をグリーンの定理を使って計算すると,(3.7)と(3.8),さらに (3.3)から,扇形OAPの面積Sは S = 1 2 θ 0 xdy dθ − y dx dθ dθ = 1 2 θ 0 cosh θ d dθ sinh θ − sinh θ d dθ cosh θ dθ = 1 2 θ 0 (cosh2θ − sinh2θ)dθ = θ 2 となる.双曲線関数のパラメータθは曲線の長さではなく面積を表 している. 以上のことから,双曲線関数(cosh θ, sinh θ)は双曲線x2− y2= 1上の点(x, y)をパラメトライズし,パラメー タは扇形の面積を表し,加法定理を満たすことがわかる. 3.2 2倍角の公式 この節では,加法定理をつかって2倍角の公式を導く.そして,2倍角の公式を使って,双曲線上の有理点 とその幾何学的な意味を調べる.(3.4)と(3.5)より
cosh 2θ = cosh2θ + sinh2θ (3.9) sinh 2θ = 2 sinh θ cosh θ (3.10)
である.2倍角の公式は,(3.6)から行列を使うと cosh 2θ sinh 2θ sinh 2θ cosh 2θ = cosh θ sinh θ sinh θ cosh θ 2 と表すことが出来る.双曲線上x2− y2 = 1の有理点を P (x, y) = 5 4, 3 4 とすると,2倍角の公式で得られる有理点は
cosh 2θ = cosh2θ + sinh2θ = 5 4 2 + 3 4 2 = 25 16 + 9 16 = 17 8 sinh 2θ = 2 sinh θ cosh θ = 2 ·5
4· 3 4 = 15 8 より Q(x, y) = 17 8 , 15 8 である.図示すると
O y x A(1, 0) P 54,34 Q 178 ,158 図の斜線部分の2つの面積に関して 扇形OAPの面積=扇形OPQの面積 が成立している.これが2倍角の公式とその幾何学的な意味である. 3.3 双曲線上の有理点を表すパラメータ公式 この節では,2倍角の公式の応用として,双曲線上の有理点を表すパラメータ公式との関連性を考察する. 2倍角の公式(3.9)と(3.10)を再度書くと
cosh 2θ = cosh2θ + sinh2θ (3.11) sinh 2θ = 2 sinh θ cosh θ (3.12)
となる.今,2倍角の公式で結びついた双曲線上の2点を
P (cosh θ, sinh θ), Q(cosh 2θ, sinh 2θ)
とすると,2倍角の公式(3.11)と(3.12)から
BQの傾き = sinh 2θ cosh 2θ + 1 =
2 sinh θ cosh θ
cosh2θ + sinh2θ + cosh2θ − sinh2θ = 2 sinh θ cosh θ 2 cosh2θ = sinh θ cosh θ = OPの傾き となるので,線分BQとOPは平行 BQ // OP となる.これを図示すると O x y P (cosh θ, sinh θ) Q(cosh 2θ, sinh 2θ) B(−1, 0) A(1, 0)
である.Q(cosh 2θ, sinh 2θ)は双曲線上の点なので,2倍角の公式(3.11)と(3.12)より
(cosh2θ + sinh2θ)2− (2 sinh θ cosh θ)2= 1
が成立する.両辺をcosh4θで割り,OPの傾きを tanh θ = sinh θ cosh θ とすると,これは (1 + tanh2θ)2− (2 tanh θ)2 = 1 cosh4θ (3.13) となる.また,P (cosh θ, sinh θ)は双曲線上の点なので cosh2θ − sinh2θ = 1 が成り立つ.この両辺をcosh2θで割り算すると 1 − tanh2θ = 1 cosh2θ (3.14) となる.(3.13)と(3.14)より,
(1 + tanh2θ)2− (2 tanh θ)2 = (1 − tanh2θ)2
が得られる.OPの傾きは有理数なので tanh θ = n m として分母を払うと,2変数の恒等式 (m2+ n2)2− (2mn)2 = (m2− n2)2 が得られる.これは(2.5)と同じである.
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オイラーの公式の一般化と双曲型2次曲線関数
研究紀要[1]では,オイラーの公式を一般化することで2次曲線関数を導入した.2次曲線関数は楕円型と 双曲型の2種類あり,この章では,双曲型2次曲線関数を復習する.オイラーの公式は虚数単位iを通して指 数関数と三角関数を繋ぐ公式であるが,虚数単位iとは異なる数(行列)を通して指数関数から双曲型2次曲 線関数を定義する.この章では,双曲型2次曲線関数の具体例を与えるために,余因子行列を使う方法と行列 を対角化する方法の2通りを紹介する. 4.1 オイラーの公式の一般化による双曲型2次曲線関数 この節では,オイラーの公式の一般化を通して,双曲型2次曲線関数の具多的な例を与える.そして,双曲 型2次曲線関数の満たす関係式や加法定理,微分方程式を導く.最初に,普通のオイラーの公式はである.虚数単位iは i2 = −1 (4.2) を満たす.行列Iを I = 0 −1 1 0 (4.3) とすると,これは I2 = −E (4.4) を満たす.虚数単位iの2次方程式(4.2)と行列Iの2次方程式(4.4)は同じであるから,Iは虚数単位iの行 列表現と考えることが出来る.これを使うと,行列版のオイラーの公式
eIθ = E cos θ + I sin θ (4.5)
が得られる.行列版のオイラーの公式(4.5)は虚数単位iの行列表示(4.3)を通して,普通のオイラーの公式 (4.1)を行列の関係式に書き直したものである.この行列版のオイラーの公式を一般化することで,双曲型の 2次曲線関数を導入する.行列版のオイラーの公式(4.4)の一般化を eAθ = Ef (θ) + Ag(θ) (4.6) とする.この式でf (θ)とg(θ)を定義する.ここで,Aを A = 0 3/2 1 5/2 (4.7) とする.Aとしてこのような行列を取ったが,行列要素の数字に特別な意味はない.行列Aはケーリー・ハミ ルトンの定理より 2A2− 5A − 3E = 0 (4.8) を満たす.Aが満たす2次方程式(4.8)は,Iの満たす2次方程式(4.4)と異なっている.オイラーの公式の一 般化(4.6)が成り立つ理由は,左辺の指数関数をテイラー展開して2次のケーリー・ハミルトンの定理(4.8)を 使い,次数を小さくして行き1次まで下げられるからである. 4.2 余因子行列による方法 この節では,余因子行列の方法を使って,一般化されたオイラーの公式から双曲型2次曲線関数を定義し, 加法定理や双曲型2次曲線関数が満たす連立微分方程式を導く.式(4.7)で定義される行列Aの余因子行列を ˜ A = 5/2 −3/2 −1 0 (4.9) とすると,余因子行列A˜は,ケーリー・ハミルトンの定理より 2 ˜A2− 5 ˜A − 3E = 0 (4.10)
を満たす.この2次方程式(4.10)はAの満たす方程式(4.8)と同じである事に注意しよう.したがって,余因 子行列に対しても,オイラーの公式の一般化
eAθ˜ = Ef (θ) + ˜Ag(θ) (4.11)
が成立する.(4.6)と(4.11)の積を取ると
eAθeAθ˜ = (Ef (θ) + Ag(θ))(Ef (θ) + ˜Ag(θ))
より,右辺を展開すると
e(A+ ˜A)θ = Ef2(θ) + (A + ˜A)f (θ)g(θ) + A ˜Ag2(θ) (4.12)
となる.また,(4.7)と(4.9)より A + ˜A = 5 2E (4.13) A ˜A = −3 2E (4.14) が成立する.これは2次方程式の解と係数の関係の行列版である.これら(4.13)と(4.14)を使うと(4.12)は e5θ/2 = f (θ)2+ 5 2f (θ)g(θ) − 3 2g(θ) 2 (4.15) となる.これより c(θ) = e−5θ/4f (θ) (4.16) s(θ) = e−5θ/4g(θ) (4.17) とすると,(4.15)からc(θ)とs(θ)は双曲線の方程式 2c(θ)2+ 5c(θ)s(θ) − 3s(θ)2= 2 (4.18) を満たす.この条件(4.18)は行列式を使うと c(θ) 3s(θ)/2 s(θ) c(θ) + 5s(θ)/2 = 1 と表せる.(4.18)が双曲線を表しているので,新しい関数c(θ)とs(θ)を双曲型2次曲線関数と呼ぶ.次に加 法定理を導く.指数法則
eA(α+β) = eAαeAβ (4.19)
の左辺と右辺を計算する.オイラーの公式の一般化(4.6)から
eA(α+β)= Ef (α + β) + Ag(α + β) (4.20)
が成立する.また(4.6)から
が成立するので,右辺を展開すると
eAαeAβ = Ef (α)f (β) + A(f (α)g(β) + f (α)g(α)) + A2g(α)g(β)
= Ef (α)f (β) + A(f (α)g(β) + f (α)g(α)) + 5 2A + 3 2E g(α)g(β) = E f (α)f (β) + 3 2g(α)g(β) + A f (α)g(β) + f (α)g(α) + 5 2g(α)g(β) (4.22) となる.(4.21)と(4.22)は指数法則(4.19)から等しいので,加法定理 f (α + β) = f (α)f (β) + 3g(α)g(β)/2 g(α + β) = f (α)g(β) + g(α)f (β) + 5g(α)g(β)/2 が得られる.(4.16)と(4.17)で定義した双曲型2次曲線関数c(α), s(α)に対しても同じ加法定理 c(α + β) = c(α)c(β) + 3s(α)s(β)/2 (4.23) s(α + β) = c(α)s(β) + s(α)c(β) + 5s(α)s(β)/2 (4.24) が成り立つ.この加法定理は,行列を使って c(α + β) 3s(α + β)/2 s(α + β) c(α + β) + 5s(α + β)/2 = c(α) 3s(α)/2 s(α) c(α) + 5s(α)/2 c(β) 3s(β)/2 s(β) c(β) + 5s(β)/2 (4.25) と表すことができる.次に,双曲型2次曲線関数が満たす微分方程式を求めよう.一般化されたオイラーの公 式(4.6)の両辺を微分すると AeAθ = Edf (θ) dθ + A dg(θ) dθ (4.26) が得られる.一方,左辺は(4.8)から
AeAθ = A(Ef (θ) + Ag(θ)) = Af (θ) + 5 2A + 3 2E g(θ) = 3 2g(θ)E + f (θ) + 5 2g(θ) A (4.27) と計算できる.(4.26)と(4.27)を比較すると df dθ = 3 2g (4.28) dg dθ = f + 5 2g (4.29) が得られる.これから,(4.28)と(4.29)の両辺にe−5θ/4をかけると e−5θ/4df dθ = 3 2e −5θ/4g e−5θ/4dg dθ = e −5θ/4f + 5 2e −5θ/4g となるので,左辺を式変形すると d dθ(e −5θ/4f (θ)) + 5 4e −5θ/4f (θ) = 3 2e −5θ/4g(θ) d dθ(e −5θ/4g(θ)) +5 4e −5θ/4g(θ) = e−5θ/4f (θ) +5 2e −5θ/4g(θ) となる.さらに整理して,(4.16)と(4.17)より,双曲型2次曲線関数が満たす連立微分方程式 dc dθ = − 5 4c + 3 2s (4.30) ds dθ = c + 5 4s (4.31) が得られる.
4.3 行列の対角化による方法 この節では,一般化されたオイラーの公式を行列の対角化による方法で再考察する.そして,双曲型2次曲 線関数が満たす加法定理や連立微分方程式を再度導く.オイラーの公式の一般化を再度書くと eAθ = Ef (θ) + Ag(θ) (4.32) である.ここで,Aを A = 0 3/2 1 5/2 (4.33) とする.行列Aの固有値は |A − λE| = −λ 3/2 1 5/2 − λ = λ 2 −52λ −32 = (λ − 3) λ +12 = 0 より λ = 3, −12 (4.34) である.固有ベクトルは 0 3/2 1 5/2 1 2 = 3 1 2 (4.35) 0 3/2 1 5/2 1 −1/3 = − 1 2 1 −1/3 (4.36) より,λ1 = 3の固有ベクトルは(1, 2),λ2= −1/2の固有ベクトルは(1, −1/3)である.したがって,(4.33)の 行列Aは,対角化行列 P = 1 1 2 −1/3 を使うと A = P 3 0 0 −1/2 P −1 (4.37) と対角化できる.オイラーの公式の一般化(4.32)を対角化すると eλθ = f (θ) + λg(θ) (4.38) となる.λの2つの解(4.34)を(4.38)に代入すると e3θ = f (θ) + 3g(θ) (4.39) e−θ/2 = f (θ) − g(θ)/2 (4.40) となる.2つの関数f (θ), g(θ)は,この連立方程式により定義される関数である.(4.39)と(4.40)より f (θ) = 1 7(e 3θ+ 6e−θ/2) (4.41) g(θ) = 2 7(e 3θ− e−θ/2) (4.42)
である.また,(4.39)と(4.40)の積を取ると e5θ/2 = (f (θ) + 3g(θ))(f (θ) − g(θ)/2) となる.右辺を展開すると e5θ/2 = f (θ)2+ 5 2f (θ)g(θ) − 3 2g(θ) 2 が成り立つ.(4.16)と(4.17)より双曲線の方程式 2c(θ)2+ 5c(θ)s(θ) − 3s(θ)2= 2 (4.43) を満たす.これは(4.18)と同じである.この条件は行列式を使うと c(θ) 3s(θ)/2 s(θ) c(θ) + 5s(θ)/2 = 1 と表すことが出来る.新しい関数c(θ)とs(θ)は,(4.41),(4.42)と(4.16),(4.17)より c(θ) = 1 7(e 7θ/4+ 6e−7θ/4) = cosh(7θ/4) − 5 7sinh(7θ/4) (4.44) s(θ) = 2 7(e 7θ/4 − e−7θ/4) = 4 7sinh(7θ/4) (4.45) と計算できる.(4.43)は双曲線を表しているので,これらを双曲型2次曲線関数と呼ぶ.次に,双曲型2次曲 線関数の加法定理を導く.指数関数の加法定理 e3αe3β= e3(α+β) に,(4.39)を使うと (f (α) + 3g(α))(f (β) + 3g(β)) = f (α + β) + 3g(α + β) が成立する.左辺を展開すると f (α)f (β) + 3(f (α)g(β) + g(α)f (β)) + 9g(α)g(β) = f (α + β) + 3g(α + β) (4.46) となる.また,指数関数の加法定理 e−α/2e−β/2= e−(α+β)/2 に,(4.40)を使うと (f (α) − g(α)/2)(f(β) − g(β)/2) = f(α + β) − g(α + β)/2 が成立する.左辺を展開すると f (α)f (β) − (f(α)g(β) + g(α)f(β))/2 + g(α)g(β)/4 = f(α + β) − g(α + β)/2 (4.47) となる.(4.46)と(4.47)から,加法定理 f (α + β) = f (α)f (β) + 3g(α)g(β)/2 g(α + β) = f (α)g(β) + g(α)f (β) + 5g(α)g(β)/2
が得られる.(4.16)と(4.17)で定義したc(α), s(α)に対しても同じ加法定理 c(α + β) = c(α)c(β) + 3s(α)s(β)/2 (4.48) s(α + β) = c(α)s(β) + s(α)c(β) + 5s(α)s(β)/2 (4.49) が成り立つ.この加法定理は,行列を使って c(α + β) 3s(α + β)/2 s(α + β) c(α + β) + 5s(α + β)/2 = c(α) 3s(α)/2 s(α) c(α) + 5s(α)/2 c(β) 3s(β)/2 s(β) c(β) + 5s(β)/2 と表すことができる.双曲型2次曲線関数の微分方程式を導く.最初に,f (θ), g(θ)は,(4.39)と(4.40),すな わち f (θ) + 3g(θ) = e3θ (4.50) f (θ) − g(θ)/2 = e−θ/2 (4.51) で定義したので,これを出発点に取ろう.(4.50)と(4.51)の両辺をθで微分すると df dθ + 3 dg dθ = 3e 3θ = 3(f + 3g) df dθ − 1 2 dg dθ = − 1 2e −θ/2= −1 2(f − g/2) となる.これらより,連立微分方程式 df dθ = 3 2g dg dθ = f + 5 2g が得られる.前と同じ式変形により連立微分方程式 dc dθ = − 5 4c + 3 2s ds dθ = c + 5 4s が得られる.これらの微分方程式は(4.30)や(4.31)と同じである. 4.4 双曲型2次曲線関数のパラメータの意味 この節では,双曲型2次曲線関数のパラメータの幾何学的な意味を考察する.双曲線 2x2+ 5xy − 3y2 = 2 (4.52) に関して,扇形OAPの面積をグリーンの定理を使って計算する.図示すると O y x A(1, 0) 2x2+ 5xy − 3y2= 2 P (x, y)
である.双曲線上の点をP (x, y) = P (c(θ), s(θ))とすると,(4.30)と(4.31)より 扇形OAPの面積 = θ/2 0 xdy dθ − y dx dθ dθ = θ/2 0 c(θ) c(θ) + 5 4s(θ) − s(θ) − 5 4c(θ) + 3 2s(θ) dθ = θ/2 0 c(θ)2+5 2c(θ)s(θ) − 3 2s(θ) 2 dθ = θ/2 0 dθ = θ 2 となる.双曲型2次曲線関数のパラメータθは曲線の長さではなく面積を表している.
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双曲型2次曲線関数の2倍角の公式と整数問題への応用
この章では,双曲型2次曲線関数の幾何学的な意味を復習する.また,この双曲型2次曲線関数には加法定 理が成立し,2倍角の公式も成り立つ.そして,この2倍角の公式を整数問題へ応用し,前の章で求めた有理 点を求める公式(2.11)と同じ結果を導けることを示す. 5.1 双曲型2次曲線関数の2倍角の公式と整数問題への応用 この節では,双曲型2次曲線関数の加法定理を使って2倍角の公式を導く.そして,2倍角の公式を使っ て,双曲線上の有理点とその幾何学的な意味を調べる.双曲型2次曲線関数の加法定理(4.23)と(4.24)より, α = β = θ とすると c(2θ) = c2(θ) +3 2s 2(θ) (5.1) s(2θ) = 2s(θ)c(θ) + 5 2s 2(θ) (5.2) である.2倍角の公式は,行列を使って c(2θ) 3s(2θ)/2 s(2θ) c(2θ) + 5s(2θ)/2 = c(θ) 3s(θ)/2 s(θ) c(θ) + 5s(θ)/2 2 と表すことが出来る.双曲線上2x2+ 5xy − 3y2= 2の有理点を P (x, y) = 7 10, 17 30 とすると,2倍角の公式で得られる有理点は c(2θ) = c2(θ) + 3 2s 2(θ) = 7 10 2 +3 2 17 30 2 = 49 100+ 289 600= 583 600 s(2θ) = 2s(θ)c(θ) + 5 2s 2 (θ) = 2 ·107 ·1730 +5 2 17 30 2 = 119 150+ 1445 1800 = 2873 1800 より Q(x, y) = 583 600, 2873 1800 である.図示するとO y x A(1, 0) 2x2+ 5xy − 3y2 = 2 P 107,1730 Q 583600,28731800 となる.図の斜線部分の2つの面積に関して 扇形OAPの面積=扇形OPQの面積 が成立している.これが2倍角の公式とその幾何学的な意味である. 5.2 双曲線上の有理点を表すパラメータ公式 この節では,2倍角の公式の応用として,双曲線上の有理点を表すパラメータ公式との関連性を考察する. 2倍角の公式(5.1)と(5.2)を再度書くと c(2θ) = c2(θ) +3 2s 2(θ) (5.3) s(2θ) = 2s(θ)c(θ) + 5 2s 2(θ) (5.4) である.今,双曲線上の点を P (c(θ), s(θ)), Q(c(2θ), s(2θ)) とすると,2倍角の公式(5.3)と(5.4)と関係式(4.18)から BQの傾き = s(2θ) c(2θ) + 1 = 2s(θ)c(θ) + 5s2(θ)/2 c2(θ) + 3s2(θ)/2 + c(θ)2+ 5c(θ)s(θ)/2 − 3s(θ)2/2 = s(θ)(2c(θ) + 5s(θ)/2) c(θ)(2c(θ) + 5s(θ)/2) = s(θ) c(θ) = OPの傾き となるので,線分BQとOPは平行 BQ // OP となる.これを図示すると
O x y A(1, 0) B(−1, 0) P (c(θ), s(θ)) Q(c(2θ), s(2θ)) である.Q(c(2θ), s(2θ))は双曲線の方程式(4.52)を満たし,さらに2倍角の公式(5.3)と(5.4)を使うと c2(θ) +3 2s 2(θ) 2+5 2 c 2(θ) +3 2s 2(θ) 2c(θ)s(θ) +5 2s 2 (θ) − 32 2c(θ)s(θ) + 5 2s 2(θ) 2= 1 (5.5) が成立する.両辺をc4(θ)で割り,OPの傾きを t(θ) = s(θ) c(θ) とすると,(5.5)は 1 +3 2t 2(θ) 2+5 2 1 + 3 2t 2(θ) 2t(θ) + 5 2t 2 (θ) − 32 2t(θ) + 5 2t 2(θ) 2 = 1 c4(θ) (5.6) となる.また,P (c(θ), s(θ))は双曲線上の点なので c2(θ) +5 2c(θ)s(θ) − 3 2s 2(θ) = 1 を満たし,両辺をc4(x)で割り算すると 1 +5 2t(θ) − 3 2t 2(θ) = 1 c2(θ) (5.7) が成り立つ.(5.6)と(5.7)より, 1 +3 2t 2(θ) 2+ 5 2 1 + 3 2t 2(θ) 2t(θ) + 5 2t 2 (θ) −32 2t(θ) + 5 2t 2(θ) 2= 1 +5 2t(θ) − 3 2t 2(θ) 2 が得られる.OPの傾きは有理数なので t(θ) = n m とすると,2変数の恒等式 2(2m2+ 3n2)2+ 5(2m2+ 3n2)(4mn + 5n2) − 3(4mn + 5n2)2 = 2(2m2+ 5mn − 3n2)2 が得られる.これは(2.11)と同じである.