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半月板損傷に対する体外衝撃波治療法の治療経験

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Academic year: 2021

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半月板症状が疑われる症例に対してESWTを施 行した。半月板変性断裂例は男性6例、女性1 例の計7例、平均年齢は39歳であった。単純X 線画像上、関節症性変化はK-L分類 grade 1以下 で、下肢アライメント異常を認めない症例で、 MRI画 像 上 で 骨 髄 病 変(bone marrow lesion) がなく、ロッキングを呈するようなバケツ柄断 裂等を伴わない、変性断裂であり、縫合が困難 と考えられた症例を対象とした。 半月板縫合術後の疼痛遺残例は、男性2例、 女 性 4 例 の 計 6 例、 平 均 年 齢24歳 で あ っ た。 当施設では半月板単独損傷の場合、半月板縫合 術後5ヶ月での競技復帰を目標としている。通 常の術後プロトコルでは術後1ヶ月間は患側非 荷重、その後全荷重を許可し、術後3ヶ月から 4ヶ月でランニングや7割ダッシュ等をリハビ リテーションプログラムの中で行っている。ラ ンニングやダッシュ開始後疼痛が残存し、関節 水腫はあっても軽度で、MRI画像上明らかな再 断裂を認めないにも関わらず縫合部付近の疼痛 が遺残している症例を対象とした。 治療方法 体 外 衝 撃 波 装 置 はDUOLITHⓇ SD1(STORZ MEDICAL AG、 ス イ ス Thurgau州 Tägerwilen) はじめに

体外衝撃波治療法(Extracorporeal shock wave therapy= 以 下ESWT) は、1990年 代 よ り 欧 米 を中心に普及している。対象は主にアスリート で、低侵襲で安全かつ有効な治療法として認め られている。本邦では、2012年より難治性足 底腱膜炎に対して保険収載された。また、足底 腱膜炎だけでなく筋腱付着部症、シンスプリン ト、及び疲労骨折などに対する有用性も多数報 告されている1)。 当施設では2016年10月より 整形外科外来にて導入した。本学倫理委員会の 承認を得て、足底腱膜炎に加えて筋腱付着部 症、疲労骨折に対する治療を開始した。半月板 損傷に対しては変性が強く縫合術が適応外と判 断された症例や、縫合術後の疼痛遺残例に対し て本学倫理委員会の承認を得た後、2017年5 月よりESWTによる治療を開始した。 目 的 本研究の目的は、半月板由来の疼痛に対する ESWTの治療成績を検討することである。 対 象 2017年5月から2019年6月までの期間に、 弾発現象や大腿脛骨関節裂隙部の運動時痛など 東北膝関節研究会会誌 Vol. 29 (2020)

半月板損傷に対する体外衝撃波治療法の治療経験

公立大学法人福島県立医科大学医学部 整形外科学講座

園 部   樹  立 石   琢  小 平 俊 介

吉 田 勝 浩  紺 野 慎 一

Key words: Sports injury(スポーツ外傷) Meniscus(半月板)

Extracorporeal shock wave therapy(体外衝撃波治療法)

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は半分以下まで改善した。疼痛が遺残した1例 (表1、No 4)に対しては、初回照射から6ヶ 月で手術を行った。術中所見では、内側半月板 中節から後節にかけての水平断裂が認められ、 脛骨側がL字状に断裂していた。断端の変性が 強く縫合困難と判断して、部分切除術を行っ た。術後に疼痛は軽快した。 半月板縫合術後の遺残疼痛例の、NRSは治療 前は平均4.5、治療後は平均0.8であった。疼痛 遺残例6例中5例でNRSは半分以下まで改善し た。 疼痛が遺残した1例(表2、No 4) は初 回照射から3ヶ月で手術を行った。術中所見 では、前回手術時にall-inside法で縫合された内 側半月板がL字状に再断裂していた。Fibrin clot を使用した。 照射部位は、 普段感じている痛 みの部位の周囲で、疼痛が再現される部位と した。 出力はSchmitzらの報告6)に準じて、 我 慢できる最大の出力(0.35mJ/mm2(平方ミリ メートル)以内)で2000発または3000発照射 した。症状が残存し治療の継続を希望した症 例には、1週間〜2週間の間隔をおいて複数 回照射した。評価項目は治療前後のNumerical Rating Scale(NRS)とし、治療開始後から3ヶ 月後に評価した。 結  果 半月板変性断裂例のNRSは治療前は平均5.6、 治療後は平均1.6であった。 7例中6例でNRS 表2 結果−縫合術後の遺残疼痛例− No.4⇒Flap状の再断裂であったため、Inside-out法で再縫合し、治癒した。 年齢 性別 断裂形態 術式 治療回数 治療前NRS 治療後NRS No1 40歳 女性 MM水平断裂 MM縫合(Inside-out法) 1回 3 0 No2 13歳 女性 ACL損傷 +MM縦断裂 ACLR+MM縫合(All-inside法) 6回 5 0 No3 17歳 女性 ACL損傷 +MM+LM ACLR+MMR(inside-out)法 +LMR(inside-out法) 1回 (MM) 4 1 No4 18歳 女性 MM縦断裂 MMR(All-inside法) 6回 5 4 No5 26歳 男性 LM複合断裂 LMR(Inside-out法) 5回 6 0 No6 28歳 男性 MM水平断裂 MMR(Inside-out法) 4回 4 0 表1 結果−変性断裂例− No.4⇒治療開始後6ヶ月で、半月板部分切除術施行 年齢 性別 断裂形態 治療回数 治療前NRS 治療後NRS No1 42歳 男性 MM水平断裂 5回 6 2 No2 40歳 男性 MM水平断裂 2回 4 0 No3 44歳 男性 MM複合断裂 1回 5 2 No4 41歳 男性 MM水平断裂 5回 7 4 No5 45歳 男性 MM水平断裂 3回 5 1 No6 22歳 女性 MM水平断裂 3回 4 0 No7 43歳 男性 MM複合断裂 5回 8 2 東北膝関節研究会会誌 Vol. 29 (2020) 28

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れた。本研究の結果より、bone marrow lesion やOAが否定され、半月板損傷由来の疼痛を認 める症例において、本治療は一定の除痛効果を 有すると考えられた。本研究の限界は症例数が 少なく、コントロール群が存在しないため統計 学的評価が不十分であること、ESWT施行後の MRIによる画像評価をほとんどの症例で行えて いないこと、長期成績が不明であることが挙げ られる。今後症例数を増やし、さらなる検討を 行う予定である。 ま と め ① 半月板由来の症状に対するESWTの治療成 績を検討した。 ② ESWTは、半月板由来の疼痛に対して一定 の除痛効果が得られた。 ③ 半月板縫合術が適応外となるような半月 板損傷に対する治療の一助となると考えられ た。 文 献

1)Ching J et al:Extracorporeal shockwave therapy in musculoskeletal disorders. Journal of Orthopaedic Surgery and Research 2012; 7:11

2)Ji-Hyun L et al:The effects of extracorporeal shock wave therapy on the pain and function of patients with degenerative knee arthritis. J Phys Ther Sci. 2017;29:536-538

3)Narasaki K et al.:effect of extracorporeal shock waves on callus formation during bone lengthening. J orthop Sci 2003;8:474-481 4)Ohtori S et al:Shock wave application to rat

skin induces degeneration and reinnervation of sensory nerve fibers. Neurosci Lett 2001; 315:57-60

5)Rompe P et al:Dose-relatedeffects of shockwaves on rabbit tendo Achillis:a sonographic and histlogical study. J Bone Joint を併用したinside-out法で再縫合を行い、 その 後半月板症状は消失しMRI画像上で再断裂はな く、縫合部の治癒が認められた。 考 察 ESWTには、大きく分けて3つの作用が報告 されている。1つ目は骨に対する作用である。 ESWTを 骨 に 施 行 す る こ と に よ り、 皮 質 骨 の microfractureや骨膜下出血、膜性骨化、内軟骨 化骨化が促進され、照射部の骨癒合を促進させ る。また、骨形成性サイトカインの発現も上昇 させる効果があるとされている3)。2つ目に神 経に対する作用である。ESWTは、自由神経終 末および無髄神経線維を選択的に破壊し、照射 部に除痛効果をもたらす。また、脊髄後根神経 節において疼痛伝達物質の伝導抑制作用を有す るとされている4)。3つ目は腱に対する作用で ある。ESWTは、腱に対して血管新生、コラー ゲン産生の促進、MMP(マトリックスメタプ ロテアーゼ)やIL(インターロイキン)の発現 を抑制することで除痛効果と組織修復を促すと されている5) 本治療の副作用として、骨端線早期閉鎖の可 能性があることや、照射部位周囲の皮内出血、 筋肉内出血、bone marrow lesion等が挙げられ る。治療を行う際は、副作用の出現に十分注意 し照射を行う必要がある。今回、我々が渉猟し 得た限り、半月板由来の症状に対するESWTの 作用・効果についての報告は、確認できなかっ た。 変形性膝関節症に対するESWTの効果として は、照射部位周囲の血流改善による軟部組織の 修復や7)、自由神経終末の破壊による除痛効果 が報告されている2)。今回の研究における半月 板損傷例においても同様の効果が期待される。 治療開始直後に即時効果が得られた症例では、 ESWT照射により半月板辺縁や周囲滑膜の自由 神経終末が破壊され、疼痛が軽減したと考えら 半月板損傷に対する体外衝撃波治療法の治療経験 29

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Surg Br 1998;80-B:546-552

6)Schmitz C, et al:Efficacy and safety of extracorporeal shock wave therapy for orthopedic conditions: a systematic review on studies listed in the PEDro database. Br Med Bull 2015;116:115-138

7)Volkan Y et al:Efficacy of extracorporeal shockwave therapy and low-intensity pulsed ultrasound in a rat knee osteoarthritis model:A randomized controlled trial. Eur J Rheumatol 2017;4:104-108

東北膝関節研究会会誌 Vol. 29 (2020)

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