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中部地域部会の報告

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Academic year: 2021

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人 口 学 研 究(第56号)2020.9 109 標準化を用いた東京特別区の都心回帰の分析枠組みを札幌市の人口移動に適用したものである。 分析結果からは主に以下の3点が明らかとなった 1. モビリティ比(間接標準化によって年齢構造の影響を取り除いた人口移動傾向)が2010年以降に大 きく上昇しているのは,道内からの転入と道外への転出であり,女性の方が男性よりも上昇幅が大 きい。 2. 1999年から2018年までの札幌市の転入超過数の拡大に対してプラスに寄与していたのは,ほぼ道内 からの転入モビリティ要因のみであった。 3. 移動数の変化の要因分解を2000~05年,2005~10年,2010~15年の3つの期間で実施したところ, 道内移動では2005~10年以降に,道外移動では2010~15年以降に転入超過数の拡大に対して,転出 モビリティ低下から転入モビリティ上昇への構造的転換が見られた。道内人口の札幌一極集中の加 速傾向といえる。 いずれの移動類型においても人口構造の変化(若年人口減,高齢人口増)は,今後も札幌市の人口移 動数に対してマイナスに寄与し続けることが決定的である。それに対し,道内からの転入と道外への転 出でのモビリティ上昇がともに女性で大きいことから,今後の人口移動数の変化は女性のモビリティ変 動に大きく依存すると考えられることも同時に示されている。こうした結果からは,人口移動パターン の変化を的確に捉えるにはモビリティに着目した分析が必要であることを表すとともに,転入超過数の 拡大を図るのではなく,その縮小(または転出超過への転換)への政策対応の必要性を主張する根拠と なる考えられる点が,本研究の展開可能性といえる。  【引用】小池司朗(2017)「東京都区部における「都心回帰」の人口学的分析」『人口学研究』第53号 , pp.23-45

中部地域部会の報告

(2019年12月7日/名古屋市) 2019年度の中部地域部会は2019年12月7日(土)の14時から17時半まで,名古屋市の中京大学を会場 として開催された。参加者は報告者を含めて8名であり,4件の報告があった。地域の人口移動,結婚 支援,外国人口,アジア諸国の少子化と多様なテーマについて報告され,活発な議論が行われた。報告 者ならびに報告タイトルは以下の通りである。 松田茂樹(中京大学)

プログラム

1.丸山洋平(札幌市立大学)「福井県高浜町の人口移動と家族形成−原発関係労働者の就業移動の影響」 2.工藤 豪(日本大学)「地方自治体の結婚支援における特徴と課題」 3.佐々井司(国立社会保障・人口問題研究所)「外国人人口の動向と多文化共生の地域づくりに関す る一考察」 4.松田茂樹(中京大学)「アジア諸国における少子化の特徴と背景要因」

報告要旨

第1報告:丸山洋平(札幌市立大学)「福井県高浜町の人口移動と家族形成−原発関係労働者の就業移 動の影響」

 “Migration and Family Formation in Takahama-town, Fukui Prefecture: Influence of Migration of Workers Related to Nuclear-Power Plant” Yohei MARUYAMA(Sapporo City University) 福井県高浜町の2つの課題に着目する。1つは原発自治体であり,関西電力および関連会社の労働者 移動があるために移住者を把握できない点である。これにより地方版総合戦略に掲げた移住者に関する

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地域部会報告 110 事業評価が困難になっている。また,原発再稼働や廃炉等の方針によって移動数の変化が見込まれるた め,蓋然性のある将来人口推計が難しいという課題もある。もう1つの課題は,4町村による合併自治 体であり,現在も旧町村境界によって4地区(高浜地区,和田地区,青郷地区,内浦地区)に分かれ, 人口動態にも差異がある点である。そのために現高浜町全体の知見だけでは説得的な行政運営が困難と いう課題を抱えている。 こうした課題に対する基礎的知見を得ることを目的とし,本報告ではまず,コーホート別に4地区の 人口移動パターンを分析した。その結果,以下のように各地区の特徴が把握された。高浜地区は若年人 口の流出が大きく,UIJターンはあるが出生時シェアの水準までは回復しない。和田地区は明確な母子 の流出がある一方で,男性の残留または単身労働者の流入があり,中年層性比が高い。青郷地区は若年 人口の流出は大きいが,少なからずファミリー層の流入がある。内浦地区は若年人口の流出が大きいこ とに加え,UIJターンがほとんどなく,世代交代ができない状態を継続してしまっている。 このうち,和田地区に関電関係の社宅があることから,同地区に有配偶単身者(単身赴任者)が多い のではないかと考え,その実態を国勢調査のオーダーメイド集計を用いて検討した。その結果,高浜町 全体として40~50歳代の有配偶性比が高く,男子年齢別有配偶単独世帯主率が非常に高いことが明らか となった。また,有配偶単独世帯主の男性の57.7%が「住宅以外に住む一般世帯」に属しており,社宅 等に居住していると推察された。IPF法による収束計算で地域別の年齢別有配偶単独世帯主男性を推計 したところ,15~64歳の有配偶単独世帯主率が高いのは,和田地区内でも関電関係の社宅のある一部地 域に限定されることが示された。 こうした分析結果からは,和田地区からは母子が流出し,父のみ残留するという世帯形成パターンが 推察される。また,そうした単身赴任者は一部地域に集住し,町内全体に影響を与えるような居住形態 ではないことも同時に明らかとなった。 第2報告:工藤 豪(日本大学)「地方自治体の結婚支援における特徴と課題」

“Feature and Issue on Marriage Support by Local Government”, Takeshi KUDO(Nihon University) 本報告の目的・意義としては二つあり,まず各自治体(県・市町村)で行われている結婚支援の取り 組みを整理し,共通する特徴や課題を析出するとともに,共有すべき情報を把握することが必要である と考える。これまで十分になされていないと思われる。もう一つは,調査者は実地調査の中でヒアリン グを行う(教えていただく)だけでなく,被調査者(話者)に何か還元していくという姿勢をもつべき であり,そのための基礎資料としたい。結婚支援を担当されている職員の方々にとっては,他自治体が どのような取り組みを行い,どのような効果・課題を認識しているのかを把握したいという意向をもっ ており,それに応えていくことで,今後の結婚支援の効果的な取り組みの実施に寄与できるものと考える。 このような問題意識のもと,本報告では,主に,JSPS科研費「結婚・離婚・再婚の動向と日本社会 の変容に関する包括的研究(代表 岩澤美帆)基盤研究(A)平成25~29年度」の中で実施した,秋田県, 岩手県,福島県,茨城県,静岡県,兵庫県,熊本県での調査結果について整理し,特徴・課題として以 下のことを取り上げた。 第一に,「登録者・参加者における性比の偏り」である。例えば,茨城県では男性の登録者・参加者 が女性に比べて著しく多いのに対し,兵庫県では女性の登録者・参加者が男性に比べて著しく多くなっ ており,結婚市場という視点でみると多い方の性にとって結婚難が生じやすい環境である。第二に,「地 理的に不利な立地の市町村」の存在である。秋田県の県北地域や岩手県の東北本線沿いから離れた地域 ではマッチング時に相手から選択されにくい(好まれにくい),また県庁所在地から遠く離れた地域で はイベント等への参加者が集まりにくいという課題を抱えやすい。そのため,“県” という範囲に限定 しない視点や生活圏(文化圏)として地域を把握する視点が求められ,実際,秋田県鹿角市は隣接する 青森県田子町と連携して取り組んでおり,福島県矢祭町などはR118地域結婚活動協議会を形成してい る。第三に,「20歳代の参加者が少ないという状況」である。少子化対策として行っている以上,自治 体としては若い世代により多く参加してほしいという部分がある。また,20歳代前半の平均希望結婚年 齢は20歳代後半で長期的に変わっていない(出生動向基本調査)ことを鑑みると,ライフプラン教育の

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人 口 学 研 究(第56号)2020.9 111 推進・拡充が必要ではないだろうか。

第3報告:佐々井司(国立社会保障・人口問題研究所)「外国人人口の動向と多文化共生の地域づくり に関する一考察」

 “The analysis on recent trends of foreign population in Japan”

Tsukasa SASAI (National Institute of Population and Social Security Research) 2018(平成30)年12月,「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立・ 公布された。この改定により新たな在留資格「特定技能」の創設,出入国在留管理庁の設置等が行われ ることとなった。外国人関連制度が変わりつつあるなか,わが国の人口動態がどのように変化してきた のかを定量的に検証する。 わが国の外国人人口は増加傾向にある。国勢調査と人口推計によって把握されている外国人人人口は 200万人超,日本に在留する外国人,ならびに住民票登録のある外国人人口は250万人を超える。過去5 年間で50万人以上増加したことになる。 わが国における外国人人口は,20歳代,30歳代の若年人口に傾倒しており,20歳代では男性が,30歳 代後半から50歳代にかけては女性が相対的に多くなっている。地理的分布の特徴として,外国人人口の 半数以上が首都圏と愛知県,大阪府に,70%以上が上位10都府県に集住していることが挙げあれる。近 年では北海道や宮城県における人口増加も顕著である。 総人口に占める外国人人口割合は,日本全体では約2%,最も高い東京都や愛知県でも3%台である。 外国人人口は日本人人口と総人口が多い地域に居住する傾向がみられる。 国籍別には,中国が対外国人総数の30%,韓国が20%を占め,続いてフィリピン,ベトナム,南米出 身の外国人が多くなっている。ただし,中国は東日本大震災後の例外を除きほぼ一貫して増加して居る のに対し,韓国は1990年頃から逆に一貫して減少傾向にあることから,中国が韓国を上回ったのは2008 年以降である。一方,日系外国人の就労を認める「定住者」の在留資格が新設された1990年以降に急増 した南米出身の外国人は,2008年のリーマンショック以降激減している。東日本大震災以降の外国人人 口急増には,ベトナム,ネパールといったいわゆるニューカマーと,中国,フィリピン等のアジア諸国・ 地域の人口増が大きく寄与している。 在留資格別には一般永住者が約3割,特別永住者を含む永住者全体が4割強を占める。永住者が堅調 に増加傾向にある一方,近年増加する外国人人口の多くが留学や技能実習の在留資格で入国している。 多文化共生を考えるうえでは在留資格の今後の推移が注目される。 第4報告:松田茂樹(中京大学)「アジア諸国における少子化の特徴と背景要因」

“Low fertility and its background in Asia” Shigeki MATSUDA(Chukyo University) 日本を含む東・東南アジアの先進国・新興国(以下「アジア諸国」)では,少子化が進行している。 現在各国の出生率は,少子化が問題視されてきた欧州諸国よりも総じて低くなっている。 今日アジア諸国で進行している少子化は,欧州諸国が経験したものと特徴と背景要因が異なる。欧州 の少子化は「第2の人口転換」の一部として捉えられている。出生率低下に加えて,同棲や婚外子も広 まった。その背景要因にはさまざまなものがあるが,特に人々の価値観が物質主義から脱物質主義へと ポストモダン的に変化したことが,この人口転換を促したとされる。一方,アジア諸国では,同棲や婚 外子は広まっていないため,未婚化は少子化に直結している。加えて,結婚した夫婦がもうける子ども 数も減少している。アジア諸国におけるこれらの人口学的特徴は,この地域が「圧縮された近代」を経 験したことと関連している。 アジア諸国における少子化の背景要因も欧州諸国のそれとは異なる。既存研究をふまえると,アジア 諸国に低出生率をもたらしているある程度共通する<4大要因>(仮説)として,(1)若年雇用の劣化, (2)急速な高学歴化と家庭の教育費負担の重さ,(3)女性にとっての仕事と子育ての両立の難しさ, (4)家族規範が強くて物質主義的な価値観の存在,を導くことができる。 報告者らは,この理論枠組みをと仮説を用いて,日本,韓国,シンガポールについて各国の公的統計

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地域部会報告 112 資料および個人を対象にした調査データの分析等を行なった。われわれが得た主な知見は次のとおりで ある。(1) 若年雇用の劣化は,特に日本と韓国において男性の未婚化をすすめた。 (2) 教育費の負担 は,日本と韓国の出生力を抑制している。(3) 仕事と子育ての両立の難しさが未婚化・少子化を引き 起こしていることを支持する結果はえられなかった。(4) 価値観については,個人が結婚生活よりも 自身のスペック競争(最終学歴,職業的地位)に重きを置く価値観を内面化しており,それが出生率を 引き下げている可能性がある。

第 81 回九州地域部会

(2019年9月1日/佐賀県佐賀市) 第81回九州地域部会は,2019年9月1日(日)14時00分から16時00分まで,西九州大学健康福祉学部 井上俊孝特命教授のお世話により西九州大学健康支援センターで開催された。報告者を含め合計7名の 参加があり,活発な議論が行われた。プログラムと要旨報告は以下の通りである。 草野洋介(西九州大学健康栄養学部)

プログラム

1.草野洋介(西九州大学)長崎県の健康寿命延伸のために 2.久野一恵(西九州大学)超高齢化社会への挑戦~フレイル予防のための栄養教育を実施してみまし た 3.蔡国喜 (長崎県環境保健研究センター) 高齢化と日和見感染のリスク(長崎県におけるレジオネラ 症の発生状況から) 4.佐藤龍三郎(中央大学)少子化社会のセクシュアリティ

報告要旨

第1報告:草野洋介(西九州大学)長崎県の健康寿命延伸のために  “What to do to extend healthy life expectancy in Nagasaki Prefecture?”

 Yosuke KUSANO (Department of Health and Nutrition Sciences, Faculty of Health and Nutrition Sciences, Nishikyushu University)

わが国の健康寿命は2010年(平成22年)に初めて具体的な推計値を公表し男性が70.42歳,女性が 73.62歳であった。これは国民生活基礎調査の「あなたは現在健康上の問題で日常生活に影響がありま すか」という質問項目に基づいて算定され,同年の平均寿命と男性9.22年女性12.77年の差がある。 では健康寿命に影響する要因は何なのだろうか。 健康寿命の定義は健康日本21(第二次)では「日常生活に制限のない期間の平均」とされている,こ の「日常生活に影響」とは狭義の日常生活動作(ADL)だけでなく社会生活を営む機能への影響を意 味している。したがって健康寿命と最も関係する要因は介護保険において「要介護・要支援になった原 因」長年1位を保ってきた脳血管疾患と考えられてきたが,近年認知症が1位となった。また4位の関 節疾患と5位の骨折・転倒を合わせロコモティブ・シンドロームとしてとらえるなら認知症を上回り1 位となる。しかも健康寿命の低下とより関係しているといえる「要支援」の原因は関節疾患と骨折・転 倒を合わると全体の三分の一を占める。 以上より健康寿命の延伸には,認知症,ロコモティブシンドローム,脳血管疾患の対策が重要と考え られる。 長崎県の健康寿命は2010年が男性45位,女性39位 2013年男性29位,女性40位,2016年男性30位,女 性28位であった。長崎県健康長寿日本一プロジェクトチームの解析では低順位である長崎県の健康寿命 を阻害する要因として循環器疾患による入院患者ワースト1位,収縮期血圧ワースト一位,野菜摂取量

参照

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