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アメリカにおける「De Facto Merger Doctrine」の比較法的考察(一) : とりわけ、企業承継者責任構成による資産譲渡会社債権者保護機能についての概要と日本会社法22条(および商法17条)への示唆について: 沖縄地域学リポジトリ

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Author(s)

仲宗根, 京子

Citation

沖縄大学法経学部紀要 = Okinawa University JOURNAL

OF LAW & ECONOMICS(21): 13-20

Issue Date

2014-03-24

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/18223

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目次 一、はじめに 二、比較対象についての両国の法制度の現状と問題点  1、アメリカ合衆国において会社を規律する法体系とその合併法理について   (一)会社を規律する法体系とその合併法理一般について   (二)特別の債権者保護法理について  2、日本の合併およびその他の組織再編行為の規律について   (一)合併について   (二)会社分割について   (三)事業譲渡について  3、日本の会社法立法の歴史と今日的潮流について(以上までが(一)、本稿) 三、アメリカの事実上の合併法理” de facto merger doctrine “について

 1、” de facto merger doctrine “ 誕生の背景と2つの機能

 2、Successor Liabilities(企業承継者責任)の全体像とde facto merger doctrine  3、本稿が対象とする会社債権者保護機能についての各州の裁判例とその評価  4、最近の判例に見られる傾向

四、結びに換えて(日本法への示唆) 【論文】

専 門 分 野:商法、会社法、保険法

キーワード:de facto merger doctrine、企業承継者責任、会社法22条・商法17条、商法におけ る債権者保護

Comparative Study of “De Fact Merger Doctrine” in the United States - In the context of protection for deccendding corporate creditors in business transfers -

仲宗根 京 子*

 Kyoko NAKASONE

アメリカにおける「De Facto Merger Doctrine」の比較法的考察(一)

   とりわけ、企業承継者責任構成による資産譲渡会社債権者保護機能についての

概要と日本会社法22条(および商法17条)への示唆について   

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一、はじめに  詐害的会社分割・事業譲渡に関する改正論議は国会議決の見通しを以て一応の決着がついたか に思われる(注1)。しかしながら、承継されない債務の債権者の保護の必要性は、現行法及び 改正案が想定した要件が認められる場面に限定されるべきものかについては、今回の改正議論に おいては正面から取り上げられておらず、事業譲渡における譲渡会社債権者保護に関する会社法 22条・商法17条及び会社分割の場合に承継されない債務についての規律も温存された。  すなわち、改正試案の効果についてみても、会22条などの全額責任とは異なり、承継された財 産の価格の限度であり、法選択における新たな不均衡問題も浮上してくる可能性がある。また、 温存された会社法22条・商法17条自体についてみると、譲受会社としてはより重い責任を避けた ければ商号続用を避けたり免責登記を得ればいいとされるが、そのような効果の違いに合理性が あるものかの疑問は依然として残る。  また、翻って債権者保護一般の問題と捉え直すと、保護類型としては、事前の手続的規制(少 なくとも公告による情報の事前開示)に依るべきか、詐害行為取消しや法人格否認の法理・企業 承継者責任に依るべきか、あるいは、取締役の責任(会社法429条)や不法行為責任などの事後 責任に依るべきかを、様々な事例を想定しつつ具体的利益状況から検証する必要性もあるであろ う。最低資本金制度が撤廃された今日、会社債権者保護の要は、情報開示と現実の会社資産の充 実にあるとも言われている。  債務会社が複数の事業部門を運営していいたことにより有していたリスクヘッジ機能が再編に より失われる等、再編当時には詐害性が認められずとも、潜在的には再編行為によって債権者を 害するリスクが増したと評価できる場合もあるし、現行規定の文言を見る限り、「商号続用」や「免 責登記」といった譲受会社(人)側にキャスティングボードが委ねられている要件だけで債権者 保護の範囲が画されることに、会社債権者保護法理としての合理性がどこまであるのかも検討の 余地がある(注2)。         以前、拙稿において、「22条1項は、「商号続用」という要件を充たしているがために、包括承 継に近い法律関係が形成されている場合について、包括承継に類する関係を規定している、とい うような評価が可能なのではないかと考える(除斥期間にかかるまでは重畳的な債務承継という 点で、厳密には包括承継とは異なっているが)。なぜなら、譲受会社の「商号続用」という要件は、 商号を引き継いで営業活動を継続すれば、合併にみられるのと同様な人格の承継(営業主体の同 一性)が推認されることを示したものと解されるからである。」と無謀な解釈論を試みたことが あった(注3)が、アメリカにおける事実上の合併法理を分析してみると、大陸法の影響が深い 日本法とは沿革的にはあまり関係がないが、日本法の議論の実質とその発想において近いものを 感じる。また、後述するように、日本法へのアメリカ法の影響力は避けて通れない存在となって きている。    そこで本稿においては、企業再編が隆盛で、従ってまた債権者保護のための判例等の法理につ いても多様かつ豊富な蓄積があるアメリカの法理について紹介し、上記の問題意識についての示 唆を求めて、若干の比較法的分析を試みたい。

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二、比較対象についての両国の法制度の現状と問題点  1、アメリカ合衆国において会社を規律する法体系とその合併法理について   (一)会社を規律する法体系とその合併法理一般について  アメリカ合衆国において会社を規律する法体系としては、18世紀後半から、会社設立許可書を 付与する、各州の会社法とコモン・ロー(common law、判例法)及びエクイティ(衡平法、注4) が混在する状態が続いている(各州は事業免許税の歳入を増やすべくより多くの設立(または再 設立)を促すため会社の要望に応える内容の会社法を運用する強力なインセンティヴを有し、そ れに最も成功している州としてデラウエア州が有名である)。  従って、会社を巡る関係の1つである合併に関し、合併能力の授権や消滅会社債権者への承継 者責任を含む(州によってはそのような規定が充実していない会社法も散在し、それゆえに事実 上の合併理論のような様々な法理がその隙間を埋めるよう必要となるのである)効果を規律する 法規範としても、設立された地の州会社法とコモンローおよびエクイティー、特別な保護法理が 想定される。消滅会社の債権者がコモン・ロー上の救済によっては十分に保護されない場合には じめてエクイティ上の救済を援用することができるというエクイティの補充性の原則がある。な を、それら特別の保護法理の根拠については、三において外国の論考を紹介しつつ後述したい。  (その他、上場会社等を規制する34年法(Securities Exchange Act of 1934.15 U.S.C §78a et seq.)や、サーベンスオックスレー法(SOX法)などがある。)

  ア メ リ カ に お け る 合 併 及 び 組 織 再 編 の 手 法 と し て は、 吸 収 合 併(merger) と 新 設 合 併 (consolidation)および、株式譲渡(share transfer)、資産譲渡(asset transfer)がある。資

産譲渡は、日本の事業(営業)譲渡のように有機的一体として機能するものと個々の資産との 双方を対象としているが、会社資産の全てもしくは実質的に全て(all or substantially all of property and assets)の譲渡に株主の同意が原則として要件とされる州法が散見されること(デ ラウエア州法271条(a))や、個々の資産毎に譲渡手続や対抗要件具備が必要である点は、日本 法と似ている(注5)。  消滅会社の債権者が存続会社・新設会社に履行請求や損害賠償責任を追及した場合に、消滅会 社の債務や責任が、存続会社や消滅会社のそれになるか争われるのは、当事者間に合意がなく、 上記のような授権法がそれらの規定を欠く場合である。そこで、債権者保護の為の特別な法理が 必要となってくる。   (二)特別の債権者保護法理について  この点については、詳細な先行研究をされておられる柴田和史教授の論稿(参考文献2)を参 考にさせていただいた。教授は、多くの州において合併対価として株式や社債のみならず、現金、 財産、権利さらに存続会社の株式や証券までも認められるに至ったアメリカ法の沿革について分 析され、現在では存続会社は消滅会社の株主にその所有する株式の経済的価値を他の経済的価値 あるものによって保証するという法理が確立している、と評価されている。また、合併対価が株 式に限定されないため、当時会社のそれよりも合併後の会社の負債総額が大きくなったり、純資 産合計額が小さくなる可能性を指摘し、アメリカにおける会社債権者債権者保護制度を詳細に検 討しておられる。それによると、アメリカ法においては19世紀中葉から20世紀初等にかけて、包 括承継の効果を規定しない不備な合併能力授権法が多く制定され、当時の裁判所が葛藤し、包括

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承継の効果を認めていく判例法が形成された。  その理論構成としては、第一に、消滅会社と存続会社・新設会社とが同一であるとする理 論、第二に明示又は黙示の債務引受があるとする理論、第三に信託財産の理論(Trust Fund Doctrine),第四に詐欺行為または詐欺的譲渡の理論を挙げておられる。エクイティ手続を利用 して信託財産の理論を適用すると、責任の範囲としては 消滅会社から承継した財産の総額が限 度になるという問題、および消滅会社の債権者は当該承継財産に対しエクイティ上の優先弁済権 を得るのではないかという問題を生ずると指摘される。そして、この点については2つの立場が あるが、いずれも、前述のエクイティの補充性の原則を認めており、詳細については、三で触れ たい(注6)。  2、日本の合併および本稿で分析対象とする会社分割、事業譲渡の規律について   (一)合併(会社法2条27~28条)について、  吸収合併(同法2条27号)と、新設合併(同条28号)がある。合併の法的効果として、解散す る会社が清算手続を経ないで消滅しつつ(よって消滅会社にとっては解散の1場面となる、同法 271条4号)、社員の地位及び債権者・債務者に対する権利義務が包括的に存続会社又は新設会社 に承継される。  では、平成17年会社法制定前後で日本の合併法理はどう変わったのか。  会社法制定前は、消滅会社の株主に対し存続会社の株式を交付しない合併は認められないとい うのが通説であったが、アメリカなど外国からの圧力や機動的な事業再構築・買収を可能とする 組織再編行為手法の多様化の要請により、産業活力の再生および産業活動の確信に関する特別措 置法(平成15年改正)が認定計画に従う株式会社の合併につき消滅会社株主に対し「特定金銭等」 (外国会社株式を含む)を交付することができる旨の規定を設け、平成17年制定会社法に至って「対 価の柔軟化」が実現した。  三角合併で言えば、存続会社Bが、消滅会社Aに対して、B自身の株式ではなく、その有する 親会社Cの株式を対価として交付できるようになる。これにより、海外の親会社が、日本国内に 有する子会社を通じて、現金を用いず、自社株だけで日本企業を買収する事が可能になった。 また、新設合併においては、必ず(少なくとも一方の会社に)新設会社の株式を交付しなければ ならないが、吸収合併の場合には、金銭・存続会社の親会社株式等、存続会社の株式・社債・新 株予約権・新株予約権付社債以外の財産を交付することが認められるに至った(注7)。このこ とは他方で、日本においても、アメリカにおけると同様な債権者保護の要請が強く浮上すること をも意味する。   (二)会社分割(会社法2条29号30号)について  株式会社または合同会社が、その事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割後他 の会社(承継会社)または分割により設立する会社(設立会社)に承継させる行為をいう。   会社分割により移転されずに残る債務については債務者の変更はないが、債権の引き当てとな る会社財産は変動する。従って、法は、合併の場合と同様、債権者異議制度を設けている(会社 法789条1項2項、799条1項2項、810条1項2項)。異議を述べた債権者には、弁済・担保提供・ 弁済用材産の信託のいずれかをしなければならないが、会社を分割してもその債権者を害するお

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それが無い場合は、そのような対応は不要とされている(789条5項、799条5項、810条5項)。  他方、吸収分割または共同新設分割においては、分割条件次第では、分割会社が移転した純資 産の価値に等しい対価を取得できないことがあり、その場合には、その債権者の債権回収の危険 が増大する。しかし、移転された事業等の過小評価は、事業の譲渡においても生ずる問題で、事 業の譲渡に債権者の異議手続がないこととの均衡等を理由に、分割会社の債権者となる者は、債 権者異議手続の対象外とされている(注8)。  江頭憲治朗教授は以上のような通説的認識を踏まえて、このような取り残される会社債権者 保護の方法について、難波孝一氏の「会社分割の濫用を巡る諸問題」(判例タイムス1337号20頁 [2012])を参考に、以下のように分析されておられる。  現実に分割会社の債権者に損害が生じた場合、かりに「債務の履行の見込み」のない会社分割 であることが会社分割の無効事由であるとしても、債権者異議手続の対象でない会社分割の債権 者には、無効の訴えの原告適格がない(840頁注3)。そこで、会社分割の債権者の救済として ① 当該会社分割が詐害行為(民法424)に当たるとして分割会社の債権者による取消しを認 める(大阪高判平成21年12月22日金法1916号108頁、東京高判平成22年10月27日金判1355 号42頁) ② 当該会社分割が否認(破160条)の対象になるとして分割会社の破産管財人による否認権 の行使を認める(福岡地判平成21年11月27日金法1911号84頁) ③ 設立会社が法人格否認の法理に基づき分割会社の債権者に対し債務を負うことを認める (福岡地判平成22年1月14日金判1364号42頁、東京地判平成22年7月22日金法1921号117頁、 福岡地判平成23年2月17日金判1364号31頁) ④ 承継会社・設立会社に会社22条1項に基づく責任を認める   (最判平成20年6月10日判事2014号150頁)   等の措置ががとられた例がある   (三)事業譲渡について  そもそも取引法上の契約にすぎない営業譲渡では、譲渡会社が依然として債務を負うので、従 前の債務者が消滅する合併のような包括承継における債権者保護手続は、必要ないと解されてき た。しかし、会社債権者の唯一の引当てとなる会社財産の中から営業にとって重要な財産が不相 当な対価で流出してしまえば、現実には債権の満足が得られない虞も生じ得る。  他方で会社法22条商法17条が、「商号続用」を専らの要件として債務全額についての法定弁済 責任を定めるが、免責登記により免れ得るものとなっている。  そして、一で述べたように、詐害的な会社分割や事業譲渡についての改正試案との関連で、  法適用の不均衡問題も予想され得る。  3、日本の会社法立法の歴史と今日的潮流について  岩原紳作教授は戦後50年余りの会社法立法の歴史について、「昭和23年の株式分割払込制度の 廃止、昭和25年の取締役会制度や代表訴訟制度の導入等に始まり、平成11年の株式交換制度の導 入まで、殆どが会社法のアメリカ化であった。しかしそれは明治の会社法創世期に継受したドイ ツ会社法の基本的枠組みは温存したまま、アメリカ会社法の諸制度を接ぎ木的に導入するという

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歴史だったように思われる。」と振り返られた後、(しかしながら)「資本制度等の会社法の根本 原則については、あくまでドイツ法的な原則が維持されていた。ところが、ここ数年の改正は、 今まで盤石であったドイツ法的な原則を、アメリカ法的な考えにより崩そうとしているように見 える。特に、会社法の要をなす会社債権者保護のための資本制度等に揺らぎが見られる。たとえ ば、平成6年商法改正においては、自己株式取得禁止原則の緩和が行われ、平成9年商法改正に おいては、会社合併の際の知れたる債権者に対する個別催告が不要とされた(改正前商法412条 1項但書)。平成10年の償却特例法改正では、資本準備金を原資とする自己株式の取得・償却が 認められた。平成11年商法改正の株式交換では債権者保護手続が設けられなかった。」とつづら れておられる。このような、戦後日本の規制緩和の歩みは、グローバル化経済における会社経営 の効率化、機動性確保にとって、避けて通れない潮流であったのであろう。  更に同教授は、「(途中略)またこれは、会社法の規制の仕方を事前規制から事後救済へ転換さ せるということも意味している。ドイツ法やわが商法において会社債権者保護手続を整備してい るのは、会社債権者が害されてから事後的に救済を与えるのではなく、事前に会社債権者を害す るような会社行為が行われないようにしたものである。会社債権者保護手続きを弱めることは、 事後的な救済に頼らざるを得ないことになる。(途中略)さらに、そもそも会社法上の債権者保 護や株主保護の規制を緩和し、彼等は保護を受けたければ会社と契約を結ぶ等して自衛すべきだ という思想も強まっている。先に紹介したような会社法を任意規定と解する主張は、このような 思想の1つの表現である。(途中略)。このような変化は、単に制度のアメリカ化というに止まら ず、経済・社会のあり方が、19世紀ないし20世紀ドイツ的ないしヨーロッパ大陸的な、官僚が主 導する、組織を中心とするかちっとした仕組みから、アメリカにおけるような、市場および司法 制度を中心とする、フレキシブルな仕組みに変化する一過程と言い得るのもしれない」と分析さ れた(注9)。  アメリカにおいては、経営の機動性を高めつつも会社債権者保護の為に、各州会社法以外にも、 様々な手当を判例法・衡平法上で蓄積している。上記の事前規制緩和が時代の要請だとすればこ のような複合的重畳的な権利救済の道を模索するアメリカの取組を比較法的に分析することは、 上記潮流の中にある日本法の解釈論あるいは立法論にとって有益と考える。  そこで、一で述べたような問題意識から、三以下においては特に、会社法22条・商法17条の 解釈論および立法論的考察に有用と考えられる、アメリカにおける企業承継者責任(successor liabilities)の1つとしての事実上の合併理論” de facto merger doctrine “について、アメリカ の研究者や実務家の、若干の最近の論稿を紹介しつつ分析したい。  (未完)           * 沖縄大学法経学部 非常勤講師 中央大学大学院博士後期課程在籍 (注1)平成26年度の通常国会で成立が見込まれる改正試案の内容については、http://www. moj.go.jp/MINJI/minji07-00138.html. p6~7を参照。 (注2)リスクヘッジ機能低下については江頭憲治朗教授がかねてより指摘なされている(参考 文献4、844頁)。また拙稿「会社法22条および商法17条の規律についての一考察~詐害

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的会社分割及び事業譲渡についての改正試案から残された周辺領域と、会社法22条およ び商法17条に託されるべき課題について~」19頁~22頁、沖縄大学法経学部紀要第19号 11頁~ 24頁所収、2013年3月。 (注3)沖縄大学紀要13号25頁~36頁所収。 (注4)参考文献6、6頁~7頁、13頁脚注14)、コモンローとともに英米法の歴史的淵源をな す法。中世において国王裁判所が運用したコモンローでは救済が得られないタイプの 事件であっても、正義と衡平の見地から救済が与えられるべきと考えたものは大法官 (Lord Chancellor)に請願し、事件毎に裁量によって救済が与えられた。田中英夫編『英 米法辞典』302頁、東京大学出版会。 (注5)八代英樹「米国ビジネス法実務ハンドブック」194頁、中央経済社、2003年。なお、デ ラウエア会社法の2005年、2013年の改正法には留意を要する。 (注6)参考文献2の(四)936頁、包括承継を認める理論構成について941頁~961頁。 (注7)参考文献4、796頁脚注(6)。現金のみを対価とする吸収合併の場合には、公示価格に とどまらず合併のシナジー効果まで要求される傾向にあるとされている。  平成17年会社法制定前の通説的見解として、大隅健一郎『会社合併の本質』「会社法の 諸問題【新版】」390頁、1983年、有信堂。規定の文言・沿革などに照らし交付金合併等 が認められるとする見解として、柴田和史「合併法理の再構成(六)」法学協会雑誌107 巻1号60頁、1990年。 対価の柔軟化は他方で、閉鎖的な会社における少数派排除(squeeze-out)に利用され 得る弊害があるとの指摘がある(中東正文「企業結合・企業統治・企業金融」146頁、 1999年、信山社)。この点に関して、合併無効の訴えを活用すべき場合や制度濫用から 少数派を救済する法理等の必要性が指摘されている(参考文献4、782頁 注(3)、 821頁 注(1))。適格合併と扱われないことによる税法上の不利益(税法2条12号の8) も指摘されている。 (注8)参考文献4、845頁。 (注9)参考文献8、上記発言は主に6~7頁。なお、同脚注(27)では、そのような視点か らの会社債権者保護の必要性の緻密な分析として、金本良嗣=藤田友敬「株主の有限 責任と債権者保護」、および三輪芳郎=神田秀樹=柳川範之編・会社の経済学(平成10 年)の191頁以下を参照に挙げておられる。また、神作裕之「株式会社の営業譲渡等に 係る規律の構造と展望」p130~136、「落合誠一先生還暦記念・商事法への提言」P125 ~P172収録、商事法務、2004年も、営業譲渡に関連する近時の立法の動向について詳 細に検討されている。 参考文献 1,落合誠一『商号続用営業譲受人の責任』「法学教室2004年6月号(№285)」25~31頁、有斐 閣、2004年。 2,柴田和史「合併法理の再構成(一)」法学協会雑誌104巻12号1頁~34頁、同「合併法理の再 構成(四)」法学協会雑誌105巻7号1頁~ 74頁、1989年。

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3,松井智予「会社法による債権者保護の構造(一)―企業組織再編取引を題材として―」法学 協会雑誌121巻3号346頁~433頁、同「会社法による債権者保護の構造(二)―企業組織再 編取引を題材として―」法学協会雑誌121巻7号346頁~433頁、同「会社法による債権者保 護の構造(三)―企業組織再編取引を題材として―」法学協会雑誌121巻11号346頁~433頁、 同「会社法による債権者保護の構造(四)―企業組織再編取引を題材として―」法学協会雑 誌122巻1号1頁~94頁。 4,江頭憲治郎「株式会社法第4版」、有斐閣、2011年。 5,山下眞弘「営業譲渡の法理」、1997年。同「営業譲渡・譲受の理論と実際」信山出版、2001 年にも詳細な分析がなされている。 6,カーティス・J・ミルハウプト編著 「米国会社法」、有斐閣、2009年。 7,前田修志「会社分割における債権者保護制度の基本的視点」『企業結合法の現代的課題と展 開[田村淳之介先生古希記念]』221頁~、商事法務、2002年。 8,岩原紳作『日本私法学会シンポジウム資料 会社法改正 1会社法改正の回雇と展望』、商 事法務1569号4~16頁所収、商事法務、2000年。 9,北村雅史、会社法コンメンタール1、江頭憲治郎編、210~227頁、商事法、2008年。 10,アーサー・R・ピント、ダグラス・M・ブランソン共著、米田保晴監訳「アメリカ会社法」、 レクシスネクシス・ジャパン、2012年。       11,宇田一明「営業譲渡法の研究」、中央経済社、1993年。 12,中東正文「資産譲渡における企業承継者責任-製造物責任を中心として-」『比較会社法研 究 奥島孝康教授還暦記念論文集 第1巻』201頁~ 218頁、成文堂、1999年。

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