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「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響

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(1)「中小企業の会計に関する研究会報告書」の                  内容と影響 櫛 部 幸 子 Ⅰ Ⅱ. 序 論 中小企業の会計に関する研究会 1 委員構成 2 討議内容 Ⅲ 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の概要 1 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の構成 2 「中小企業とその会計を巡る現状と課題」の概要  「中小企業を巡る現状」の概要  「中小企業の会計を巡る動向」の概要  「検討にあたって(課題と前提など)」の概要  「税務と中小企業の会計について」の概要  「中小企業の会計と記帳について」の概要  「計算書類のインターネット公開について」の概要  「諸外国の中小企業の会計」の概要  「中小企業の会計」の概要 Ⅳ 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の影響 1 日本税理士会連合会の対応 2 日本公認会計士協会の対応 Ⅴ 結 論. Ⅰ. 序 論.  我が国において、中小企業の数は全企業数の9 9.7パーセント 1)を占めている。 それにもかかわらず、中小企業の現状に即した適切な統一された会計基準は長年 にわたって存在しなかった。そのため、中小企業については、制度会計の基準で 1)経済産業省・中小企業庁ホームページ。http://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq26.html. 77.

(2) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 ある商法(現・会社法)基準、証券取引法(現・金融商品取引法)基準、税法基準 のうち、商法の枠組みの中で確定決算主義に基づく税法を中心とする会計が行わ れてきた。  しかし、中小企業が金融機関等の信頼を得て円滑に資金調達を行い、自社の経 営状況を経営者自身が把握するためには、適切な会計基準に基づいた会計・開示 を行うことが必要である。この現状を鑑み、 2002年には中小企業庁により「中小 企業の会計に関する研究会」が設立され、中小企業に適切な会計基準を作成しよ うという動きが始まることとなった。  これは後に、中小企業庁、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会の歩み寄 りと企業会計基準委員会( ASBJ )の参画により策定された我が国における中小企 業の会計基準ともいうべき「中小企業の会計に関する指針」の策定へとつながっ た。  本稿では、中小企業の会計基準策定を巡る最初の動きとして「中小企業の会計 に関する研究会」の発足とそこでの検討内容について最初に記述し、次に「中小 企業の会計に関する研究会」により報告された「中小企業の会計に関する研究会 報告書」の策定経緯を述べることとする。そして、 「中小企業の会計に関する研究 会報告書」の概要と、これを受けた日本税理士会連合会および日本公認会計士協 会の対応について述べる。  なお、 「中小企業の会計に関する研究会」が開かれ検討されていた2002年当 時、商法による会計規定はあったが、その後に改正会社法が制定されるに至った。 そこで、本稿では、会社法という名称ではなく、 20 0 2年の当時に合わせて商法 という名称を使用する。また、中小企業庁「中小企業の会計に関する研究会」は、対 象となる会社を中小企業とし、日本税理士会連合会「中小企業会計基準研究会報 告書」と日本公認会計士協会「中小会社の会計のあり方に関する研究報告」は、対 象となる会社を中小会社としている。本稿においてもこれに準ずるものとする。. Ⅱ. 中小企業の会計に関する研究会. 1 委員構成  20 02年、経済産業省中小企業庁に「中小企業の会計に関する研究会」が設置さ れた。この研究会は、図表1に示す委員から構成されていた 2)。 2)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会報告書」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0002888/1/020628cyusyoukaikei.pdf#search=‘平 成14年   中小企業の会計に関する研究会’にもとづき、一部筆者が編集した。. 78.

(3) 櫛 部 幸 子 図表1 中小企業の会計に関する研究会委員等名簿 (敬称略、五十音順) 座 長 小川 英次(中京大学学長(中小企業政策審議会企業制度部会長)) 委 員 植松  敏(日本商工会議所専務理事) 上村 達男(早稲田大学法学部教授) 江頭憲治郎(東京大学大学院法学政治学研究科教授(中小企業政策審議会委員)) 尾崎 安央(早稲田大学法学部教授) 加古 宜士(早稲田大学商学部教授) 河 照行(甲南大学経営学部教授) 古賀 智敏(神戸大学大学院経営学研究科教授) 品川 芳宣(筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授) 武田 隆二(大阪学院大学流通科学部教授) 万代 勝信(一橋大学大学院商学研究科教授) 弥永 真生(筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授)   専門委員 坪田 秀治(日本商工会議所産業政策部長) 橋本 一美(全国中小企業団体中央会企画部長) 引馬  滋( CRD 運営協議会代表理事) 宮口 定雄(日本税理士会連合会専務理事) 柳澤 義一(日本公認会計士協会理事) 田辺 . 剛(みずほ銀行主計部次長). 田島洋一郎(多摩中央信用金庫主任調査役(全国信用金庫協会)) 荒波 辰也(商工組合中央金庫総合企画部主計室長) 中桐 則昭(東京中小企業投資育成株式会社公開支援室長) 城所 弘明(城所公認会計士事務所税理士・公認会計士) 坂本 孝司(坂本孝司会計事務所税理士) 平川 忠雄(平川税務会計事務所税理士) 佐藤 . 卓(中小企業診断士).   オブザーバー 太田洋法務省民事局付 濱克彦法務省民事局付   経済産業省中小企業庁 久郷達也事業環境部長 東良信審議官 北川慎介事業環境部財務課長 安楽岡武事業環境部財務課課長補佐 佐藤孝弘事業環境部財務課調査係長. 79.

(4) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響  図表1から明らかなように、委員として研究者11名、日本商工会議所専務理事 が選任されるとともに、専門委員として日本税理士会連合会専務理事、日本公認 会計士協会理事、銀行、商工組合中央金庫関係者、全国中小企業団体中央会企画 部長、中小企業診断士、税理士、公認会計士、CRD 運営協議会代表理事、東京 中小企業投資育成株式会社公開支援室長が選任されている。また、オブザーバー として法務省民事局付2名、経済産業省中小企業庁からも5名が選出されるなど、 中小企業会計に携わる様々な人々によって、意見交換が行なわれた。   2 討議内容  この中小企業の会計に関する研究会は計7回行なわれた。各回の議事の概要を まとめたものが図表2である。 図表2 中小企業の会計に関する研究会 回. 開催日. 議事の概要. 第1回 3). ・研究会開催の趣旨説明 ・委員、専門委員からの意見表明 2002年 ・中小企業向け会計基準の重要性 3月11日 ・企業会計基準との関係 ・中小企業会計を考える上での留意点. 第2回 4). ・諸外国中小企業の会計について ・計算書類のインターネット公開について 2002年 ・中小企業会計の実態と問題点、負担軽減について 3月29日 ・研究会での議論の対象について ・中小企業の会計のあり方. 第3回 5). 2002年 4月22日. 第4回 6). 2002年 ・事務局による税務と中小企業の会計についての説明 5月10日 ・中小企業の会計(各論)の検討. 第5回 7). 2002年 ・事務局による中小企業の記帳についての説明 5月22日 ・中小企業の会計 ( 各論 ) の検討. ・事務局による公開企業の会計の動向についての説明 ・日本税理士会連合会・日本公認会計士協会代表による「中小企業の会計 のあり方」についてのプレゼンテーション ・専門委員による「中小企業の取引先・債権者の立場から必要な会計情報」 についてのプレゼンテーション. 3)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第1回 議事要旨」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000306/ 4)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第2回 議事要旨」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000332/ 5)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第3回 議事要旨」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/00003406/ 6)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第4回 議事要旨」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000366/ 7)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第5回 議事要旨」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000367/. 80.

(5) 櫛 部 幸 子 第6回 8). 2002年 6月7日. ・事務局による中小企業の会計についての説明 ・中小企業の会計 ( 総論・各論 ) の検討. 第7回 9). 2002年 ・事務局による中小企業の会計についての説明 6月21日 ・中小企業の会計 ( 総論・各論 ) の検討. (経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会議事要旨」をもと に筆者作成。 ).  計7回の研究会において、中小企業会計を巡る動向として、商法の公正なる会 計慣行に基づく計算書類作成義務と税法における確定決算主義との兼ね合いの検 討、計算書類の記帳方法の検討なども行なわれている。また、中小企業向けの会 計の重要性と、商法上の小会社を対象にしてこの議論を進めることを述べ、諸外 国の中小企業会計に関する調査結果についての説明と検討が行なわれている。さ らに、退職給付会計、金融商品会計、棚卸資産の強制評価減など具体的な会計処 理についての検討も行なわれている。  その後、第7回の研究会において承認された「中小企業の会計に関する研究会 報告書」が、 2 0 02年6月28日にプレスリリースされた。  中小企業庁は「中小企業が、担保や保証に過度に頼らずに資金調達を行い、ま た、新たな取引先の信頼を確保するためには、財務諸表の質の向上が重要です。 こうした観点から、中小企業庁では、平成14年(2 0 02年) 6月の研究会におい て、株式公開を当面目指さない商法上の小会社を念頭に「中小企業の会計」をとり 1 0) まとめました。 」 とし、この「中小企業の会計に関する研究会報告書」において. 記されている「中小企業の会計」に準拠した財務諸表作成が、中小企業の発展に つながると述べている。  このプレスリリースでは、 「中小企業の会計に関する研究会報告書」において対 象となる中小企業の定義を明確にし、さらに中小企業の資金調達に役立ち、信頼 性の確保に役立てるために策定されたものであるということが強調された。. Ⅲ 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の概要 1 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の構成  中小企業の会計に関する研究会報告書の構成は図表3に示すとおりである11)。 8)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第6回 議事要旨」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000390/ 9)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第7回 議事要旨」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000393/ 10)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会報告書」 、前掲ホームページ。 11)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会報告書」 、前掲ホームページ。. 81.

(6) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 図表3 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の構成 【はじめに】 【中小企業とその会計を巡る現状と課題】 Ⅰ . 中小企業を巡る現況                           (頁) 1 .中小企業を巡る環境の構造的変化 …………………………………………… 4  2 .変化への対応 …………………………………………………………………… 13  Ⅱ . 中小企業の会計を巡る動向 1 .中小会社の会計を規制する諸法律の関係 …………………………………… 18  2 .商法の抜本改正の影響 ………………………………………………………… 21  3 .公開会社における新会計基準の導入 ………………………………………… 23  4 .税務と企業会計の乖離 ………………………………………………………… 28  5 .中小企業からみた会計の現状 ………………………………………………… 28  Ⅲ . 検討にあたって(課題と前提など) 1 .検討するべき課題 ……………………………………………………………… 29  2 .今回の検討対象とする会社の規模・範囲 …………………………………… 29  3 .検討に当たっての留意点 ……………………………………………………… 32  Ⅳ . 税務と中小企業の会計について 1 .確定決算主義について ………………………………………………………… 35  2 .税法と企業会計の乖離傾向について ………………………………………… 38  3 .中小企業の会計と税法との関係について …………………………………… 41  Ⅴ . 中小企業の会計と記帳について ………………………………………………… 45  Ⅵ . 計算書類のインターネット公開について 1 .制度の概要 ……………………………………………………………………… 51  2 .インターネット公開の促進へ向けて ………………………………………… 53  Ⅶ . 諸外国の中小企業の会計 1 .イギリスの動向 ………………………………………………………………… 54  2 .ドイツの動向 …………………………………………………………………… 58  3 .アメリカの動向 ………………………………………………………………… 60  4 .その他国際的な動向 …………………………………………………………… 61  5 .概 括 …………………………………………………………………………… 61  Ⅷ . 中小企業の会計のあり方に関して ……………………………………………… 63  【中小企業の会計】 Ⅰ . 中小企業の会計(総論) ………………………………………………………… 66  Ⅱ . 中小企業の会計(各論) ………………………………………………………… 74  Ⅲ . 記 帳 …………………………………………………………………………… 105  Ⅳ . 計算書類の開示 ………………………………………………………………… 107  【参考資料編】 参考 1 中小企業の会計に関する研究会出席者名簿 ……………………………… 110  参考 2 中小企業の会計に関する研究会開催実績 ………………………………… 111  参考 3 企業規模別にみた資産・負債・資本の状況 ……………………………… 112  参考 4 商法・企業会計基準・税法比較表 ………………………………………… 126  参考 5 小規模会社に対する財務報告基準2002年6月版 ………………………… 245     ( Financial Reporting Standard for Smaller Entities )     (英国会計基準委員会) 参考 6 ドイツ商法典(238条∼330条)1996年7月版 ……………………………… 305  参考 7 現金主義又は税法基準による財務諸表の作成・開示の方法 … … … … … 362      ( Preparing and Reporting on Cash- and Tax-basis Financial Statements )    (米国公認会計士協会). 82.

(7) 櫛 部 幸 子  この報告書には、 「中小企業とその会計を巡る現状と課題」と、それを踏まえて 「中小企業の会計」が記されている。前向きな中小企業や経営革新に取り組む中 小企業が新たな取引先の拡大や資金調達の拡大を図る上で信頼性のある計算書類 が有用であること、商法改正で商法上の公告(ディスクロージャー)がインター ネット利用によりコスト面からも現実的になってきたこと、また、公開会社に対 して証券取引法に基づく新会計基準が相次いで導入されている現状を踏まえ、中 小企業への適用をどう考えるべきかが検討されている。そして、望ましい中小企 業の会計のあり方を検討している。  さらに、具体的に「中小企業の会計」を取りまとめるに至った経緯として、Ⅰ では、中小企業をめぐる現状、中小企業をめぐる環境の変化を図表などを用いて 詳しく説明し、中小企業の資金調達が困難な状況をもとりあげている。Ⅱでは、 中小企業の会計を規制する諸法律をとりあげ、中小企業の会計の現状を述べてい る。Ⅲでは、今後検討すべき課題として、成長発展を目指す中小企業が新たな取 引先の開拓や資金調達の多様化を目指すためには、適切な計算書類を作成し、そ れを積極的に開示することが今後一層有用となること、経営者の経営方針の決定 や経営状態の把握の観点からも計算書類が重要であることを述べている。また、 前提として、今回の検討の主たる対象は資本金1億円以下の株式会社(商法特例法 上の小会社)で、外部監査が義務付けられておらず、当面の株式公開を念頭に置 いていない中小企業を想定していることを述べている。Ⅳでは、税法における中 小企業の会計をとりあげ、法人税法における確定決算主義を説明している。Ⅴで は、商法、法人税法両者の記帳についてとりあげており、Ⅵでは、インターネッ ト公開の促進に向けての対応をとりあげている。またⅦでは、イギリス、ドイツ、 アメリカの中小企業会計の動向が述べられている。Ⅷでは、 「中小企業の会計」が 変革の時期にあることを述べている。  以下において、その具体的内容を説明する。. 2  「中小企業とその会計を巡る現状と課題」の概要   「中小企業を巡る現状」の概要 1 2)  我が国の中小企業は、約5 00万社(2002年現在) あり、その経営実態は多様. 12)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会報告書」 、前掲ホームページ。. 83.

(8) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 である。まず、中小企業の定義として以下のように述べられている。  中小企業基本法における「中小企業」とは、資本金3億円以下又は常時雇用する 従業員3 00人以下の会社、及び従業員3 00人以下の個人企業を指す13)。ただし、 卸売業の場合は資本金1億円以下又は従業員100人以下、小売業の場合は資本金 0万 円 以 下 又 は 従 業 員50人 以 下、サ ー ビ ス 業 の 場 合 は 資 本 金5,00 0万 円 以 5,00 下又は従業員1 0 0人以下のものとしている。  また、この中小企業の会計に関する研究会報告書を作成する際に重視した商法 の規定においては、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律により、 大会社とは資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社、小会社と は資本金1億円以下で負債総額200億円未満の株式会社であるとしている14)。 よって、これのどちらにも当てはまらない会社が中会社となる。  さらに、ここでは中小企業を巡る現状や問題点が指摘されており、中小企業経 営者における経営上の問題として、景気低迷と資金調達の困難さがとりあげられ ている。  すなわち、経済の停滞の長期化により中小企業が過去の資金の蓄積を費消して しまい、さらに、ニーズが多様化し高度化する中、新分野にチャレンジしなけれ ば取り残されてしまうことなどである。  経営資金調達面の問題点としては、地価の下落による従来型の土地担保による 資金調達が限界に達したことからメインバンク中心の資金調達が困難となってい ること、金融機関の中小企業への貸出規模が縮小傾向にあることなどを原因とし た資金調達の難しさが述べられている。  そのため、中小企業の資金調達に役立ち、この問題点が解消される手助けとな るべく、中小企業の会計に関する審議が行われ、この報告書が作成されたもので あると考えられる。  さらに、図表4により、中小企業の資金繰り状況が明らかにされている。. 13)中小企業基本法第2条。 14)商法特例法第2 2条第1項。. 84.

(9) 櫛 部 幸 子 図表4 規模別の資金調達構造比較(2000年度) 〔中小企業は金融機関借入に依存〕. (出所 経済産業省・中小企業庁「中小企業の会計に関する研究会報告書 2002年」 ).  図表4においてわかることは、中小企業の自己資本比率が低く、長期借入金比 率が高いことである。自己資本比率が低いことにより、中小企業においては銀行 等からの借り入れが資金調達方法の中心となっているという経営状態がわかる。 しかし、バブル崩壊以降急激な地価の下落を背景に、土地を担保とした銀行から の借入による資金調達が困難な現状があり、さらなる経営困難に陥ることが予想 される。  また、近年、下請中小企業数の減少傾向がみられる15)。これは、中小企業の経 営状況が改善され独立した企業が増えたというわけではない。むしろ、経済のグ ローバル化に伴い人件費の安い海外企業による下請受注が増加したことや、大企 業による自社内での生産に伴い下請けの打ち切りが行われたことなどが要因では ないかと考えられる。  中小企業のさらなる過酷な状況が浮き彫りとなっているといえよう。. 15)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会報告書」 、前掲ホームページ。. 85.

(10) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 図表5 経営革新への取組の有無による成長率の違い 〔取組企業と非取組企業に明確な差〕. (出所 経済産業省・中小企業庁「中小企業の会計に関する研究会報告書 2002年」 ).  図表5から、中小企業の経営においては、経済の構造的変化への対応のため、 積極的に経営革新、ひいては技術革新・イノベーションに取り組む必要性にせま られていることがわかる。しかし、資金調達ができなければ、技術革新から取り 残されていくこととなるであろう。そこで、円滑な借入による資金調達を行うべ く、中小企業の経営の実力や取引リスクが、取引先や資金調達先に適正に判断さ れるために、この報告書における「中小企業の会計」に準拠した財務諸表の作成が 必要であることはいうまでもないであろう。  さらに、この適正な財務諸表は、中小企業経営者による経営状態の把握にも役 立つものである。.   「中小企業の会計を巡る動向」の概要  次に、 「中小企業の会計を巡る動向」として、中小企業の会計を規制する諸法令 について以下のように述べられている16)。  中小企業の会計は、商法と税法により規定されている。全ての会社は、商法に 基づき計算書類を作成する義務があり、その作成方法は、 「公正なる会計慣行を 斟酌すべし(商法第32条第2項) 」とされているが、商法上の中小会社において、 商法の計算規定の解釈の幅が広いことに加え、商法上の「公正なる会計慣行」とは 何かが中小企業側にとって十分明確になっていない現状がある。さらに、我が国 16)経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会報告書」 、前掲ホームページ。. 86.

(11) 櫛 部 幸 子 の税法は、商法上の計算書類を課税所得の算定の基礎とする確定決算主義を採用 しているため、中小企業は、会社の法的制度としての商法の枠組みの中で、税法 に影響された実務を行っている。  法人税法では、法人税法第2 2条第4項において「当該事業年度の収益の額及び 前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計 算されるものとする。」とされている。これは、課税所得の計算が商法上の確定し た決算による企業会計上の利益計算を基礎に導かれるものであることを意味して おり、確定決算主義を示しているものであると考えられる。また、法人税法第74 条において、 「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二ヶ月以内に、確定 した決算に基づき各事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額等を記載 した申告書を提出しなければならない」としている。ここでの確定した決算とは、 商法上の確定決算であり、これも確定決算主義を示すものであると考えられる。  しかし、人手の少ない中小企業においては、この「一般に公正妥当と認められ る会計処理の基準」を法人税取扱通達そのものと解し17)、あらかじめ税法の規定 を考慮した処理を行い、手間を省いている現状がある。また、税法が定める所得 計算を行なわなければ極めて高い割合によって更正処分による課税の是正または 刑罰が課せられるという現状もあり18)、初めから税法基準による会計処理を行っ ているものと考えられる。 図表6 中小企業の会計を規制する諸法律. (出所 経済産業省・中小企業庁「中小企業の会計に関する研究会報告書 2002年」 ) 17)武田隆二編『中小会社の会計』中央経済社、 2 00 3年、 5 2頁。 18)武田隆二編、前掲書、 52頁。. 87.

(12) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響  ここで問題となるのは、商法における「公正なる会計慣行」と、法人税法上の 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の関係である。図表6に見られる ように、商法上の「公正なる会計慣行」と法人税法上の「一般に公正妥当と認めら れる会計処理の基準」とは、確定決算主義を通じて相互に関係があるものと考え られる。確定決算主義は、商法上の確定決算に基づき課税所得を計算して申告す ることであるため、法人税法は商法に依存している関係にあると考えられ、法人 税法に規定が無いもので商法に規定があるような場合であれば、商法上の処理を 行って課税所得を計算することが行われている現状がある。.    「検討にあたって(課題と前提など)」の概要  ここでの検討すべき課題は、「成長発展を目指す中小会社が、新たな取引先の 開拓や資金調達の多様化を目指すため、適切な計算書類を作成し、それを積極的 に開示することが有用であるが、中小会社が何に依拠して会計実務を行うべきか を、中小企業経営者側は明確に認識していないことである。」とされている。  そこで、商法上の計算書類における会計のあり方が、中小企業の現実を踏ま え、中小企業と債権者と株主にとって望ましい方向で行なわれるよう検討されて いる。  まず、今回の対象とする会社の規模・範囲は、非公開で株式公開を目指さない 商法上の小会社の会計としている(図表7参照) 。これは、今回の報告書における 主たる目的が「商法に規律されている中小企業の会計のあり方の検討」であるこ とから、検討の範囲も商法の考え方(資本金区分)を参考とするのが適切であり、 外部監査が義務付けられていない小会社を検討の対象とすることが適切であると 考えられるからである。小会社であっても株式公開を目指している企業(ベン チャー企業等)は、 「将来の資金調達に資するよう、公開会社と同様の会計基準に 基づくことが適切である」とし、今回の検討の対象外としている。  また、商法上の中会社は、企業規模が相対的に大きく、将来上場していく可能 性も高く、 20 0 2年通常国会の商法改正により、公認会計士監査を受けた中会社 は、商法特例法上の大会社並のメリットを受けられるようになったことも踏ま え、今回の検討の対象外としている。. 88.

(13) 櫛 部 幸 子 図表7 「中小企業の会計に関する研究会報告書」における検討の対象. (出所 経済産業省・中小企業庁「中小企業の会計に関する研究会報告書 2002年」 ).  さらに、中小企業の会計を検討する留意点として、法制度面においては、中小 企業における計算書類は、「商法に基づく」計算書類であると述べている。これ は、小会社は、商法上外部監査を義務付けられておらず、また計算書類の表示に 関しても商法上小会社向け軽減措置の明確な基準があり、また商法施行規則第27 条第1項において注記の省略が認められているからであるとしている。  また、実態面における留意点としては、中小企業が会計にかけるコストには限 界があること、会計に充てることが可能な資金的・人的資源が乏しいことをとり あげ、中小企業の現実や実態を踏まえる必要があるとしている。中小企業の実態 は、大企業に比して、債権者や株主の数が通常は極めて少なく、株主の移動も少 ない。また、中小企業は極めて多種多様であり、 「全ての中小企業に関して一律 な議論を行い、対応を求めていくよりも、前向きな事業者の積極的取組みを支援 し、促進することが重要である。」としている。.   「税務と中小企業の会計について」の概要  ここでは、中小企業の会計実務上大きな関わりを有している税務について、商 法の枠組みの中で検討している。  まず、中小企業は、確定決算主義を採用している。ここでの確定した決算とは、 株主総会において計算書類が承認されたことを意味しており、具体的には確定し 89.

(14) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 た商法上の利益であると解される。よって法人税法上の課税所得は、商法上の計 算書類に記載された当期利益に、税法の規定に従った加算減算等を行い、決定さ れることとなる。  確定決算主義の利点としては以下のことがあげられている。まず、「商法と税 法の共通部分について、共通の処理を行なうことによる真実性の保証ができる」 こと、また、課税の安定性という観点においても「商法上の計算書類と税法上の 計算書類が分離されておれば、商事上の利益はより大きく、税務上の所得はより 小さくなるような会計処理を選ぶことが可能となるが、両者の結合を維持するこ とにより、課税所得が不当に減少することを防ぐことになる」ということ、そし て、何よりも確定決算主義により「作成する計算書類が一つで済む」ことであると している。  しかし、近年、税法と企業会計が乖離傾向にあるといわれ、中小企業の会計に おけるこの二つの兼ね合いが問題となっていることは事実である。政府税制調査 1 9) 会法人課税小委員会報告(1996年11月) において、「税法において、適正な課. 税の実現という税法固有の考え方から、商法・企業会計原則と異なった取扱いを 行う場合があることは当然である。」とし、 「法人税の課税所得は、今後とも、商 法・企業会計原則に則った会計処理に基づいて算定することを基本としつつも、 適正な課税を行う観点から、必要に応じ、商法・企業会計原則における会計処理 と異なった取扱いとすることが適切と考える。」としている。  このように、従来の税法と企業会計の調整という前提が崩れてきているなか、 税法中心の中小企業の会計実務のあり方、税法と企業会計原則の乖離による企業 側の負担増などが課題となると指摘している。事実、現行の中小企業の会計実務 は、あらかじめ税法を想定して計算書類の作成を行っており、税法と企業会計の 乖離が進めば、益々税法中心に中小企業の会計が行われるものと考えられる。  また、法人税法における「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」と企 業会計原則について、「客観的な規範性をもつ公正妥当な会計処理の基準という 意味であり、必ずしも企業会計原則のような明文化された特定の基準を指すもの ではなく、企業会計原則以外の他の会計慣行をも含むとともに、企業会計原則で あっても解釈上採用し得ない場合もあり得る20)。」とし、税法と企業会計原則と 19) 「政府税制調査会法人課税小委員会報告(平成8年11月) 」。 http://www.kantei.go.jp/jp/zeicho-up/1216honbun1-4.html 20) 「法人税更正処分等取消請求控訴事件」大阪高裁、 19 91年1 2月1 9日。 http://www.oft.co.jp/02-2/033-4/h-31219-6125.html. 90.

(15) 櫛 部 幸 子 の関係を、判例に基づいて述べている。  さらに、この報告書のなかでは、企業会計原則や確立した会計慣行が決して網 羅的であるとはいえず、そのために具体的で詳細な規定を有する税法やその解釈 が中小企業の会計実務を決定してきていることが強調されている。商法、税法、 企業会計原則のそれぞれが、会計実務に関して制度間の調整を積極的に図ってこ なかった結果として、中小企業は、具体性、利便性を有する税法を軸として会計 処理を考えざるを得ない現状があることが述べられている。.   「中小企業の会計と記帳について」の概要  中小企業の会計に関して、日常の取引一切を正確に記帳し、企業の状況を正し く把握しようという点では商法も税法も共通である。商法は、 「営業上の財産及 び損益の状況を明らかにするため、整然かつ明瞭に記録した会計帳簿を作成する こと」、 「1 0年間保存すること」を求めている。また、法人税法も、 「取引を複式 簿記の原則により記載すること」、「仕訳帳には取引の発生順に取引の年月日・内 容・勘定科目・金額を記載すること」、「総勘定元帳にはその勘定ごとに記載の年 月日・相手方勘定科目・金額を記載すること」を求めている。これは、中小企業 行政においても、記帳の重要性が認識されているものであると考えられる。.   「計算書類のインターネット公開について」の概要  さらに、 200 2年4月1日より、商法上すべての会社に義務付けられている計 算書類の公開について、自社ホームページ等によるインターネット公開が認めら れることとなり、公開にかかる費用が低くなったことを受けて、中小企業団体、 中小企業行政は、インターネット公開を積極的に促進することを述べている。具 体策として、全国中小企業団体中央会においては、自社ホームページを持たない 企業や掲載する余裕がない企業に対して、中央会のホームページへの掲載の代行 サービスを実施することなどをあげている。  このインターネット公開は、 2001年臨時国会における商法改正により、すべ ての株式会社に義務付けられている「計算書類の公告(商法第283条)」について、 従来の新聞、官報による公告に加え、自社ホームページによる公開が認められる こととなり、中小会社にとっても容易に計算書類を開示できることとなったもの である。  確かに、これからの中小企業経営において、取引先や金融機関等からの信頼を 得るために、適正な計算書類の作成とディスクロージャーが重要となると考えら 91.

(16) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 れるが、非公開の中小企業が、信頼を得るためにどのような会計基準に基づいて 計算書類を作成すればよいのかはまだはっきりしておらず、インターネット公開 に際しても、どのような計算書類であればよいのかという疑問が生じる。そこ で、なおさらこの「中小企業の会計」の必要性が出てくるのではないかと考えるも のである。  そもそも中小企業の会計は、外部監査を目的としてはおらず、財務諸表作成に 経費をかけることができないのが現状である。中小企業に公開会社と全く同様の 基準に基づいた計算書類の作成を求めることは、コスト面からみても極めて厳し く、同時に、中小企業経営者としてもそれほどのベネフィットが見出しうるかど うかが疑問である。このコスト・ベネフィットの兼ね合いが、今後の中小企業の 会計基準の普及の鍵となると考えるものである。.   「諸外国の中小企業の会計」の概要  ここでは、諸外国における中小企業の会計があげられている。  欧州委員会においては、 2005年までに EU 加盟国の「公開会社の連結財務諸 表」について、国際財務報告基準( International Financial Reporting Standards ) に基づいた作成を義務づけるとしたが、非公開会社については各国の判断にゆだ ねるとしている。その中で、EU 加盟国は、中小企業の会計基準をどのように対 応させるかを問題としている。  イ ギ リ ス で は、 1997年 に 中 小 企 業 向 け 会 計 基 準( Financial Reporting. Standard for Smaller Entities )が制定されている。そこでの対象会社は、売上高 2 80万ポンド(約5億3千万円)以下、総資産1 40万ポンド(約2億6千万円)以 下、従業員50人以下の3条件のうち2条件をみたす会社法上の小会社としてい る。  ドイツでは、公開会社の連結計算書類に関しては、 200 5年以降、IAS21)の強制 適用を予定している。非公開会社の連結計算書類に関しては、ドイツ会計基準委 員会により IAS を配慮した中小企業の会計基準が作成されており、 20 05年以 降、IAS との選択適用を認めるとしている。  アメリカでは、計算書類の利用者のニーズに応じた会計の処理方法が採用され ており、会計基準は多種多様である。GAAP( Generally Accepted Accounting. Principles )に基づくものから、その他包括的基準( Other Comprehensive Basis 21)国際会計基準( International Accounting Standards )の略。現在は国際財務報告基準( International Financial Reporting Standards )に改称されている。. 92.

(17) 櫛 部 幸 子. of Accounting )という税法主義、また現金主義、修正現金主義に基づくものま で、様々な会計基準があり、企業がどの基準を採用するかを判断している。  ま た そ の 他 の 国 際 的 な 動 向 と し て、国 際 会 計 基 準 審 議 会( International 15の調査項目の一つとして、中小企 Accounting Standards Board )においても、 業の会計基準が会議にとりあげられていること、カナダにおいても2 0 0 1年に非 公開会社向け会計基準が設定されたことが述べられている。.   「中小企業の会計」の概要  ここでは、具体的な会計処理が示されている。「中小企業の会計(総論)」、 「中 小企業の会計(各論)」、「記帳」、「計算書類の開示」において、中小企業における 特徴的な会計処理、記帳、開示方法が具体的に述べられている。. Ⅳ 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の影響 1 日本税理士会連合会の対応  日本税理士会連合会では、中小企業庁における「中小企業の会計に関する研究 会報告書」を受け、実務において対応できるようにするための研究機関として「中 小会社会計基準研究会」を設置し(図表8参照)、「中小会社会計基準研究会報告 書」を作成した22)。 図表8 「中小会社会計基準研究会」委員名簿 座 長. 品川 芳宣(筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授) 池  淳一(税理士) 岩下 忠吾(税理士) 植田  卓(税理士) 上村 達男(早稲田大学法学部教授) 熊谷 眞人(税理士) 小池 正明(税理士) 古賀 智敏(神戸大学大学院経営学研究科教授) 杉田 宗久(税理士) 宮口 定雄(税理士) 弥永 真生(筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授) 山田 俊一(税理士). (出所  「中小会社会計基準研究会報告書」 ) 22) 「中小会社会計基準研究会報告書」 。http://www.zeikei.co.jp/Topics/chusyou.htm. 93.

(18) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響  「中小会社会計基準研究会」では、中小企業の会計基準の必要性について、以下 のように述べている23)。   「2 00 2年の商法改正を受け、中小会社が商法に準拠した会計処理を具体的に行 うに当たっては、中小会社に対するニーズの特殊性、下請取引構造の変化、計算 書類のインターネットによる公開、電子商取引の進展等に対応が必要である。そ のためには、中小会社の経営実態を明らかにし、適時・適切な情報開示を行いつ つ、資金調達の多様化や取引先の拡大に対応していくための具体的な会計基準を 設定することが必要である。」としている。  さらに、中小会社会計基準の実務対応部分を「運用指針」とし、税理士が遵守 することを求めている。   2 日本公認会計士協会の対応  中小企業庁における「中小企業の会計に関する研究会報告書」とほぼ同時期 に、日本公認会計士協会は「中小会社の会計のあり方に関する研究報告(経過報 2 4) 告) 」を公表し、その後2 00 3年6月に最終報告を公表した。そこでは、以下の. ように述べられている。  「2 0 02年の商法改正による電磁的な方法により、中小会社の計算書類も容易に 公告できるようになり、不特定多数の者によって閲覧可能になったことから、統 一された会計基準によりそれらの計算書類が作成される必要性が生じたことに対 する公認会計士協会の考え方を示すものである。基本的な考え方として、適正な 計算書類を作成するための会計基準は会社の規模に関係なく一つであるとして、 必要に応じ、中小会社の特性を考慮して適用方法には簡便法等を認めるというも のである。」 2 5)  また、その後の「中小会社の会計のあり方に関する研究報告(最終報告) 」で. は、「Ⅰ 中小会社の会計のあり方について」において中小会社の範囲や特性及び 包括的な結論等をまとめ、 「Ⅱ 個別項目の会計処理」において個別の勘定科目や 取引に関する会計処理の方法等についてまとめ、「Ⅲ 参考資料」において商法等 において要求されていなくても、中小会社が自発的に計算書類のディスクロー ジャーをより充実する場合の参考に供する目的で、各種開示関係書類の記載例や 23) 「中小会社会計基準研究会報告書」 、前掲ホームページ。 24) 「中小会社会計基準研究会報告書」 、前掲ホームページ。 25)日本公認会計士協会ホームページ「中小会社の会計のあり方に関する研究報告(最終報告) 」。 http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_588.html. 94.

(19) 櫛 部 幸 子 ひな型を掲載している。これは、中小会社が強制的に準拠すべき会計基準を示し ているものではなく、その財政状態及び経営成績を適正に表示する場合のガイド ラインとなるよう取りまとめを行ったものであり、実務の参考とされることを期 待すると述べている。. Ⅴ. 結 論.  本稿では、我が国における中小企業の会計基準ともいうべき「中小企業の会計 に関する指針」策定へとつながった最初の動きである、中小企業庁による「中小企 業の会計に関する研究会」の発足、「中小企業の会計に関する研究会報告書」の概 要、およびこの報告書の策定経緯を述べた。  この報告書では、中小企業についての明確な定義が示されている。基本的には 商法における小会社を対象としており、将来上場を目指す会社を対象外としてい る。つまり、従業員数等による企業規模における対象分類ではなく、資本金と将 来の上場可能性の有無が判断の基準となっている。  この段階では、確定決算主義の名のもとに税法による会計処理を行い、納税目 的でのみ財務諸表を作成しようとする中小企業に対し、一石を投じるべくこのよ うな動きが生じたのであろうと考えられる。  つまり、経営者が企業の業績を把握せず、納税のみを目的とする消極的な中小 企業経営の財務諸表の作成状況が、日本経済の衰退を助長させることとなったと いう考えがその根底にあったのではないだろうか。  中小企業の経営者における経営状態の把握、銀行等融資の円滑化に役立てると いう目的を掲げたこの報告書は、単なる中小企業の会計基準というだけではな く、中小企業の経営や発展を助け、中小企業の地位の向上、ひいては日本の経済 の発展につながるものと期待して策定されたのではないかと考えられる。  すなわちバブル経済破綻以降の我が国においては、銀行等における不動産を担 保とする融資に限界が生じてきている。また新興経済国の急激な発展により、我 が国の中小企業経営が脅かされている現状もある。このような中で、不動産を担 保とせず融資を受ける場合に信頼性の担保となりうる、また中小企業の経営状況 に即した中小企業が適用しやすい会計基準の必要性が非常に高いものであるとの 判断からこのような動きがあったものと考えられる。  日本税理士会連合会は、 「中小会社会計基準研究会」を設置し、中小企業の経営 95.

(20) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 に即した具体的な会計基準を設定する必要性を認識している。また、日本公認会 計士協会においても、中小企業庁における「中小企業の会計に関する研究会報告 書」とほぼ同時期に、「中小会社の会計のあり方に関する研究報告」を出し、中小 会社の特性を考慮した、会計基準や会計処理の必要性を唱えている。  しかし、この三者における中小企業の会計基準には、具体的な会計処理の違い が多々あり、どの会計処理を優先するのか、どの目的を優先するのかという混乱 が生じることは必須であり、結局のところは、納税目的における財務諸表作成に 戻ることも考えられる。この「中小企業の会計に関する研究会報告書」における会 計基準を適用するには、かなりの実務上の混乱が予想された。  そこで、更なるステップとして、この三者の会計処理の違いを踏まえたうえで、 三者の歩み寄りによる「中小企業の会計に関する指針」策定へとつながることに なったと考えられる。. (筆者は、関西学院大学大学院博士課程後期課程1年). 96.

(21) 櫛 部 幸 子 参考文献. 武田隆二編『中小会社の会計』中央経済社、 2003年。. 参考ウェブページ. 経済産業省・中小企業庁ホームページ。http://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq26.html. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会報告書」。 http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0002888/1/020628cyusyoukaikei.pdf#search =' 平成1 4年 中小企業の会計に関する研究会. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第1回議 事要旨」 。http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000306/. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第2回議 事要旨」 。http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000332/. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第3回議 事要旨」 。http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/00003406/. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第4回議 事要旨」 。http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000366/. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第5回議 事要旨」 。http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000367/. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第6回議 事要旨」 。http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/0000390/. 経済産業省・中小企業庁ホームページ「中小企業の会計に関する研究会第7回議 事要旨」 。http://www.meti.go.jp/kohosys/gather/00003 93/ 97.

(22) 「中小企業の会計に関する研究会報告書」の内容と影響 「政府税制調査会法人課税小委員会報告(平成8年11月)」。           http://www.kantei.go.jp/jp/zeicho-up/1216honbun1-4.html. 「法人税更正処分等取消請求控訴事件」大阪高裁、 1 991年1 2月19日。       http://www.oft.co.jp/02-2/033-4/h-31219-6125.html. 「中小会社会計基準研究会報告書」。http://www.zeikei.co.jp/Topics/chusyou.htm. 日本公認会計士協会ホームページ「中小会社の会計のあり方に関する研究報告 (経過報告) 」。http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_5 93.html. 日本公認会計士協会ホームページ「中小会社の会計のあり方に関する研究報告 (最終報告) 」。http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_5 88.html. 98.

(23)

参照

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