資本ストック調整原理とジュグラーサイクルのメカ
ニズム
著者
村田 治
雑誌名
経済学論究
巻
62
号
3
ページ
83-108
発行年
2008-12-25
URL
http://hdl.handle.net/10236/6539
資本ストック調整原理と
ジュグラーサイクルのメカニズム
A Theoretical Model of the Juglar Cycle
村 田 治
The purpose of this paper is to clarify the mechanism of the Juglar cycle. To do this, we first show the existence of Juglar cycle in terms of the GDP growth rate and the capital stock growth rate in the post-war period in Japan. Then, we set up a model which can explain the behavior of the GDP growth rate and the capital stock growth rate.In order to present a theoretical explanation on this cyclical relation, we set up the model with the capital stock adjustment principle and the constant coefficient production function.
Osamu Murata
JEL:E22, E32
キーワード:ジュグラーサイクル、資本ストック調整原理、内生的景気循環論、リミット サイクル、固定係数型生産関数
Key words: Juglar cycle, capital stock adjustment principle, endogenous busi-ness cycle theory, limit cycle, constant coefficient production function
はじめに
ジュグラーサイクル(設備投資循環)について、これまで、十分な理論的 メカニズムが与えられてきたとは言い難い状況にある。この点について、村田 (2007b)(2008a)(2008b)においては、GDP成長率、および設備投資比率の 推移を資本係数の変動によって説明し、実証データによって裏付けられた1)。 しかしながら、村田(2008a)においては、ジュグラーサイクルのメカニズム 1) 村田(2007b)(2008a)においては、このほか設備投資関数の推計や GDP 成長率と資本ストッ ク成長率のジュグラー循環を導出している。に関しては簡単な説明が与えられたに過ぎず、必ずしも理論的に明らかではな い。また、村田(2007a)においては、循環メカニズムが理論的に分析されてい るが、資本ストック調整原理と新古典派生産関数の併用がなされるなど、整合 的なモデルとは言いがたいものであった2)。 本稿の目的は、村田(2008a)(2008b)によって検出されたGDP成長率、資 本ストック成長率、資本係数等の動きを資本ストック調整原理と固定係数型生 産関数を前提とした理論モデルによって説明し、さらには、ジュグラーサイク ルのメカニズムを明らかにすることにある。その意味で、本稿は、村田(2008b) の実証分析の理論モデルであり、また、村田(2007a)をより整合的なモデルに したものと位置づけられる。 まず、第1節では、村田(2008a)(2008b)の分析結果を簡単に紹介し、本稿 の分析目的を明確にしたい。第2節では、資本ストック調整原理と固定係数型 生産関数を前提としたマクロモデルを提示する。第3節では、モデルの動学的 性質を明らかにしリミットサイクルの存在を示す。第4節においては、ジュグ ラーサイクルの循環メカニズムが説明され、第5節では、GDP成長率、資本 ストック成長率、資本係数等の変動が導出され、第1節での実証データとの比 較がなされる。
1. 戦後日本のジュグラーサイクル
本節では、戦後のわが国におけるジュグラーサイクルの存在を実証データで 示し、次節以降における分析の問題意識を明確にする。 (1) GDP成長率のジュグラーサイクル まず、第1図には、トレンド除去後のGDP成長率と資本ストック成長率 のジュグラーサイクル、および、実際の資本係数の必要資本係数に対する比率 (以下、必要資本係数比率と呼ぶ)の推移が描かれている3)。ここで、 GDP成 2) 村田(1999)においても、資本ストック調整原理を用いて GDP の循環的変動を理論的に導いて いるが、生産関数や資本ストックの生産能力効果が捨象されているなど、7∼10 年周期のジュ グラーサイクルの説明としては不十分なものとなっている。 3) GDP 成長率および資本ストック成長率のジュグラーサイクルの求め方は、村田(2007b)を参 照されたい。長率と資本ストック成長率のトレンド線は3次多項式を仮定して求められてい る。トレンド曲線はそれぞれ、 GDP 成長率= 9.204869 + 0.031258t− 0.00123t2+ (4.55E−06)t3 (1) 資本ストック成長率= 7.145479+0.199481t−0.00265t2+(7.72E−06)t3(2) と表される。さらに、資本係数のトレンド曲線を必要資本係数のトレンドとみ なし、 v = 0.54661 exp(0.0076t) (3) で表されている4)。また、資本係数の必要資本係数に対する比率を R(K/Y ) とし、 R(K/Y ) = ((K/Y )/v) (4) と定義する5)。 第 1 図 GDP 成長率、資本ストック成長率、および必要資本係数比率 㪄㪊 㪄㪉㪅㪌 㪄㪉 㪄㪈㪅㪌 㪄㪈 㪄㪇㪅㪌 㪇 㪇㪅㪌 㪈 㪈㪅㪌 㪉 㪈㪐㪍㪉㪈㪐㪍㪊㪈㪐㪍㪋㪈㪐㪍㪌㪈㪐㪍㪍㪈㪐㪍㪎㪈㪐㪍㪏㪈㪐㪍㪐㪈㪐㪎㪇㪈㪐㪎㪈㪈㪐㪎㪉㪈㪐㪎㪊㪈㪐㪎㪋㪈㪐㪎㪌㪈㪐㪎㪍㪈㪐㪎㪎㪈㪐㪎㪏㪈㪐㪎㪐㪈㪐㪏㪇㪈㪐㪏㪈㪈㪐㪏㪉㪈㪐㪏㪊㪈㪐㪏㪋㪈㪐㪏㪌㪈㪐㪏㪍㪈㪐㪏㪎㪈㪐㪏㪏㪈㪐㪏㪐㪈㪐㪐㪇㪈㪐㪐㪈㪈㪐㪐㪉㪈㪐㪐㪊㪈㪐㪐㪋㪈㪐㪐㪌㪈㪐㪐㪍 㪞 㪛 㪧 䈫 ⾗ ᧄ 䉴 䊃 䉾 䉪 䈱 ᚑ 㐳 ₸ 㪄㪇㪅㪇㪍 㪄㪇㪅㪇㪌 㪄㪇㪅㪇㪋 㪄㪇㪅㪇㪊 㪄㪇㪅㪇㪉 㪄㪇㪅㪇㪈 㪇㪅㪇㪇 㪇㪅㪇㪈 㪇㪅㪇㪉 㪇㪅㪇㪊 㪇㪅㪇㪋 㪇㪅㪇㪌 ᔅ ⷐ ⾗ ᧄ ଥ ᢙ Ყ ₸ ⾗ᧄ䉴䊃䉾䉪ᚑ㐳₸ 㪞㪛㪧ᚑ㐳₸ ᔅⷐ⾗ᧄଥᢙᲧ₸ 4) したがって、年率換算にすると、資本係数は平均 3% で成長していることがわかる。 5) この必要資本係数比率((K/Y )/v)が 1 より大きい場合は資本過剰を意味し、1 より小さい場 合は資本不足を意味する。
第1図から、GDP成長率の変動に少し遅れて資本ストック成長率が推移し ていることが読み取れよう。また、資本ストック成長率と必要資本係数比率が 逆サイクルになっていることもわかろう。第1図から、GDP成長率のジュグ ラーサイクルの谷と山を求めると第1表のようになる。この第1表からわか るように、戦後のジュグラーサイクルの周期は、谷と谷の間では8.94年、山 と山の間では平均8.3年となっている。 第 1 表 GDP 成長率ジュグラーサイクルの周期 ⼱ ጊ ⼱ ⼱ߣ⼱ߩᦼ㑆 ጊߣጊߩᦼ㑆 66ᐕΣ 70ᐕΣ 74ᐕΦ 8.75ᐕ 10.75ᐕ 74ᐕΦ 80ᐕΦ 84ᐕΣ 9.25ᐕ 8ᐕ 84ᐕΣ 88ᐕΦ 95ᐕΣ 11ᐕ ޓޓ 9.25ᐕ 95ᐕΣ 98ᐕΣ 01ᐕΦ 6.75ᐕ (2) GDP成長率、資本ストック成長率、稼働率、および設備投資伸び率 第1図からは、GDP成長率、資本ストック成長率、および資本係数の動き は一定の規則性をもっているように思われる。さらに、この点を明らかにする ために、第2図には、第1表で示されたジュグラーサイクルのうち、95年の 谷から01年の谷までの一循環について、GDP成長率と資本ストック成長率 のジュグラーサイクルの循環図を描いてある6)。 この図から明らかなように、GDP成長率と資本ストック成長率の間には循 環的な関係が存在する。まさに、このGDP成長率と資本ストック成長率の循 6) これ以外のジュグラーサイクルの循環図については、村田(2007b)(2008a)を参照されたい。
第 2 図 資本ストック成長率と GDP 成長率の循環(95 年∼01 年) 㪄㪉 㪄㪈㪅㪌 㪄㪈 㪄㪇㪅㪌 㪇 㪇㪅㪌 㪈 㪄㪈 㪄㪇㪅㪏 㪄㪇㪅㪍 㪄㪇㪅㪋 㪄㪇㪅㪉 㪇 ⾗ᧄ䉴䊃䉾䉪ᚑ㐳₸ 㪞 㪛 㪧 ᚑ 㐳 ₸ 環関係を理論モデルによって説明することが本稿の目的である。上でも述べた ように、資本ストック調整原理は固定係数型生産関数と整合的である。固定係 数型生産関数において重要な役割を果たす稼働率と必要資本係数比率との関係 を図示したのが第3図である。 第 3 図 必要資本係数比率と稼働率のジュグラーサイクル 㪄㪇㪅㪇㪏 㪄㪇㪅㪇㪍 㪄㪇㪅㪇㪋 㪄㪇㪅㪇㪉 㪇 㪇㪅㪇㪉 㪇㪅㪇㪋 㪇㪅㪇㪍 㪇㪅㪇㪏 㪉 㪍 㪐 㪈 㪊 㪍 㪐 㪈 㪋 㪍 㪐 㪈 㪌 㪍 㪐 㪈 㪍 㪍 㪐 㪈 㪎 㪍 㪐 㪈 㪏 㪍 㪐 㪈 㪐 㪍 㪐 㪈 㪇 㪎 㪐 㪈 㪈 㪎 㪐 㪈 㪉 㪎 㪐 㪈 㪊 㪎 㪐 㪈 㪋 㪎 㪐 㪈 㪌 㪎 㪐 㪈 㪍 㪎 㪐 㪈 㪈㪐 㪎 㪎 㪈㪐 㪏 㪎 㪈㪐㪎㪐 㪇 㪏 㪐 㪈 㪈 㪏 㪐 㪈 㪈㪐 㪉 㪏 㪈㪐 㪊 㪏 㪈㪐㪏㪋㪈㪐㪏㪌㪈㪐㪏㪍㪈㪐㪏㪎㪈㪐㪏㪏㪈㪐㪏㪐㪈㪐㪐㪇㪈㪐㪐㪈㪈㪐㪐㪉㪈㪐㪐㪊㪈㪐㪐㪋㪈㪐㪐㪌㪈㪐㪐㪍 㪎 㪐 㪐 㪈 ᔅⷐ⾗ᧄଥᢙᲧ₸ Ⓙ₸
この図から明らかなように、稼働率と必要資本係数比率は逆サイクルとなっ ている7)。この関係を理論的に明らかにすることも本稿の目的の一つである。
2. ジュグラーサイクルの理論モデル
本稿の目的は、上でも述べたように、GDP成長率と資本ストック成長率の 循環関係等を理論モデルによって説明することである。そこで、本節では、資 本ストック調整原理を用いたマクロモデルを提示する8)。以下のモデルで用い られる記号は次の通りである。 Y:GDP、Yd:総需要、K:資本ストック、e:稼働率、C:消費、c:限界 消費性向、B:基礎消費、I:設備投資(純投資)、v:必要資本係数、KW:必 要資本ストック。 (1) 資本ストックと稼働率の決定 まず、現在の生産に必要な必要資本ストックKWは、生産量と必要資本係 数vによって KW = vY (5) と表される。この必要資本ストックKWに比べて実際の資本ストックKが過 剰である場合には資本ストックの稼働率を下げ、また、不足している場合には 稼働率を上げて生産が行われると考えられるので、現実の資本ストックKと 必要資本ストックKW の間には KW = eK (6) の関係が存在する。上式を(5)式に代入すると、固定係数型生産関数 Y = eK/v (7) が得られる。次に、総需要は消費と設備投資から構成されているとして、 7) 稼働率と必要資本係数比率の相関係数は -0.824 と高い値となっている。 8) 以下のモデルの基本的枠組みは村田(2007a)による。しかしながら、上でも述べたように、村 田(2007a)においては、資本ストック調整原理と新古典派生産関数が併用されており、整合的 なモデルとなっていないという欠点を持っている。Yd= C + I (8) と仮定する9)。また、消費関数は、限界消費性向を c、基礎消費をBとすると C = cY + B (9) と表せる。ここで、設備投資が資本ストック調整原理にしたがって、現在の生 産に必要な必要資本ストックKW と現実の資本ストックKの乖離を調整する 形で行われるとすると I = ˙K = λ(KW− K)、 λ > 0 (10) と表される10)。 さらに、需給ギャップによって稼働率が調整されると仮定し、その調整は有 効需要の原理にしたがって総需要の大きさに依存して行われるとしよう。ただ し、稼働率の調整には遅れがあるとし、総需要とのギャップの一定割合だけが 調整されると考え ˙e = β(Yd− Y )、 β > 0 (11) と仮定する。次に、この経済の均衡を考えよう。˙e = 0および(8)(11)式を考 慮すると Y = C + I (12) を得、また、K = 0˙ および(6)(10)式を考慮すると e = 1 (13) となる。つまり、この経済の均衡では、生産量は総需要と等しくなり、稼働率 は1となり、資本ストックは必要資本ストックに等しい状態と表される。この 経済の均衡資本ストックと均衡稼働率をそれぞれK∗、e∗と表すと、(6)(7)式 と(9)(10)(12)(13)式より K∗= v 1− cB (14) e∗= 1 (15) 9) 単純化のため、政府と海外部門は存在しないものと仮定する。 10) 資本減耗はないものと仮定する。したがって、粗投資と純投資の区別はない。
と表される。また、生産関数(7)式より、均衡生産量Y∗は Y∗= 1 1− cB (16) と求まる。 (2) 資本ストックの調整 ここで、資本ストックの調整について考えよう。上で述べた I = ˙K = λ(KW−K)、 λ > 0 (10) のような、資本ストック調整原理における調整ラグとしては、設備投資計画の 時間的なラグ、資本ストックの調整コストの存在、設備投資の完成までのラ グ、企業家のアニマルスピリットなどいくつかが考えられるが、ここでは調整 コストに焦点を当てる。(10)式で表される資本ストックの調整は、現実の資 本ストックと必要資本ストックに乖離がある場合、その乖離のλの割合だけ 設備投資を行ない、この乖離を埋めることを意味する。もしλが一定である ならば、現在の資本ストックと必要資本ストックの乖離がどのような大きさで あれ、その一定割合の資本ストックの調整が行なわれることを意味している。 つまり、必要とされる設備投資の大きさがどのような大きさであれ、必ず実行 されることを意味している。しかしながら、企業が設備投資を行うにあたって は、投資資金の調達コスト、投資プロジェクトのための人員の配置転換に関わ るコスト、あるいは企業の営業利益の圧迫などさまざまな形での調整コストが かかると考えられる。このように考えた場合、現実の資本ストックと必要資本 ストックの乖離の一定割合が絶えず投資されるとは考えられない。むしろ、こ の乖離が大きくなればなるほど、さまざまなコストや制約のために、この乖離 に対する実行可能な投資の比率は小さくなると考えられる。逆に、資本ストッ クを削減する場合、実際は、純投資は設備の陳腐化に伴う廃棄額を上回ってマ イナスになることはできないため、現実の資本ストックが必要資本ストックを 大きく上回るほど、両者の乖離に対する資本ストックの削減比率λは小さくな ると考えられる。さらに、単純化のために、資本ストックを増加させる場合と 削減する場合とでλの動きは対称的であると仮定しよう。つまり、現在の資
本ストックKと必要資本ストックKWの乖離が大きくなるにしたがいλの値 は小さくなり、逆に、この乖離が小さくなるとλの値は大きくなると考える。 また、λには上限があるとし、 0 < λ≤ λM と仮定しよう11)。さらに、この λとKW− Kの関係を関数として表現すると λ = φ(KW− K)、φ0(KW− K) ≷ 0 as KW − K ≶ 0、 φ(0) = λM、φ(KW− K) = φ(−(KW− K))、φ(∞) = φ(−∞) = 0 (17) と表すことができる。ここで、(6)式を考慮すると、 KW− K ≶ 0、 ⇔ e− 1 ≶ 0 (18) であるので、(17)式は λ = λ(e)、 λ0(e)≷ 0 as e ≶ 1、 λ(1) = λM、 λ(0) = λL λ(∞) = 0、 λ(1 + ε) = λ(1− ε) ただし、ε > 0 (19) と表すことができる。さらに、われわれは単純化のために、(19)式の関数を
λ(e) = λMexp{−(e − 1)
2 /σ2}、 ただし、σ2> 2 (20) と特定化しよう。上式より、 λ(1) = λM (21) および、 λ(0) = λ(2) = λMexp{−1/σ 2} = λ L (22) を得る。ここで、われわれは λL< (1− c)/v < λM (23) を仮定しよう12)。さらに、 λ(e) = (1− c)/vとなる稼働率eを λ(el) = λ(em) = (1− c)/v、 ただし、 el< 1 < em (24) とおく。これらを図示したのが第4図である。以下においては、(20)式と第 4図を前提として分析を行おう。 11) この λ の上限 λMはかなり大きな値であると仮定しよう。また、λMの上限についての仮定を 外し λM=∞ と仮定しても、以下の分析の定性的な結果は変わらない。 12) 実際、与えられた c と v に対して、(23) 式を満たすように λMと σ の値を選ぶことができる。
第 4 図 稼働率と調整係数 e em el ¸M ¸L ¸ 1 2 0 v 1-c
3. 位相図とリミットサイクル
本節では、稼働率と資本ストックの動学的な動きを考察する。 (1) 稼働率と資本ストックの位相図 まず、稼働率の動き分析するために、投資関数について見てみる。投資関数 (10)式は、(19)式を考慮すると I = ˙K = λ(e)(e− 1)K (25) となる。上式と(7)(8)(9)(11)式より、˙e = 0線を求め、K = B/{(1 − c)e/v − λ(e)(e − 1)} = g(e) (26)
と表そう。ここで、˙e = 0線が正象限にあるための条件として (1− c)e/v − λ(e)(e − 1) > 0 (27) を仮定しよう13)。さらに、 g(0) = B/λL (28) g(1) = vB/(1− c) (29) g(2) = B/{2(1 − c)/v − λL} (30) 13) 後述べるように、この仮定はそれほど強い仮定ではない。
と求まり、さらに、(23)式を考慮するなら g(0) > g(1) > g(2) (31) を得る14)。次に、 ˙e = 0線の傾きを求めると、(26)式より dK de =− { (1− c)/v − λ(e) − λ0(e)(e− 1)}B [(1− c)e/v − λ(e)(e − 1)]2 (32) を得る。ここで、˙e = 0線の傾きがゼロ、言い換えれば λ(e) + λ0(e)(e− 1) = (1 − c)/v (33) となる稼働率eを求めよう15)。いま、(33)式を満たし1より小さい稼働率e をeaとするなら、(20)式よりλ0(ea) > 0となるので、λ0(ea)(ea− 1) < 0 を得る。同様に、(33)式を満たし1より大きい稼働率eをebとするなら、 λ0(eb)(eb− 1) < 0となる。よって、(24)(33)式と第4図を考慮するなら、 el< ea< 1 < eb< em (34) を得る16)。ここで、 λ(e) + λ0(e)(e− 1) > (1 − c)/v ただし、ea< e < eb (35) λ(e) + λ0(e)(e− 1) < (1 − c)/v ただし、e < ea、eb< e (36) を仮定しよう。この(35)(36)式の仮定により、ea< e < ebにおいては ˙e = 0 線の傾きはプラスとなり、e < ea、eb< eにおいてはマイナスとなる17)。 実際、(32)式より dK de ˛ ˛ ˛ ˛ e=0 =− {(1− c)/v − λL+ λ 0(0)}B (λL)2 < 0 18) (37) 14) 簡単な計算によって、(28)∼(30) 式から (31) 式を得る。 15) (33) 式が成立するなら、(32) 式より ˙e = 0 線の傾きはゼロとなる。 16) el< eaについて証明しておく。
いま、el≥ eaが成立しているとすると、λ0(ea)(ea− 1) < 0、λ0(e) > 0、および (24) 式
より、
λ(ea) + λ0(ea)(ea− 1) < λ(ea)≤ λ(el) = (1− c)/v
となり、(33) 式が満たされない。よって、(33) 式が成立するためには、el< eaでなければな
らない。eb< emについても同様に証明できる。
17) (35)(36) 式の仮定により、 ˙e = 0 線の傾きがゼロとなる点は ea、ebの 2 点だけとなる。
18) (23) 式より、(1− c)/v − λL> 0 となり、また、(20) 式より λ0(0) > 0 であるので、(37)
dK de ˛ ˛ ˛ ˛ e=1 =− {(1− c)/v − λM}B {(1−c)/v}2 > 0 19) (38) dK de ˛ ˛ ˛ ˛ e=2 =− {(1− c)/v − λL− λ 0(2)}B {(1 − c)/v − λL}2 < 0 20) (39) となり、さらに、(20)(26)式を考慮すると lim e →∞g(e) = 0 (40) を得る。また、(24)(26)式を考慮すると g(el) = g(em) = vB/(1− c) (41) を得る。よって、(26)∼(32)式、(37)∼(41)式より、˙e = 0線は第5図のよ うに描ける。 第 5 図 ˙e = 0 線の形状 e.= 0線 ea eb em el 1 2 0 K e 1-c vB 2(1-c)v-¸L B ¸L B 次に、K = 0˙ 線を求めると、(25)式より e = 1 (13) 19) (23) 式より、(1− c)/v − λM< 0 であるので、(38) 式を得る。 20) (23) 式より、(1− c)/v − λL> 0 となり 、また、(20) 式より λ0(2) < 0 であるので、(39) 式を得る。
を得る。ここで、K = 0˙ 線の右側では、K < eK = KWが成立し 21)、実際の資 本ストックが必要資本ストックを下回り資本不足となっている。逆に、K = 0˙ 線の左側では、K > eK = KWが成立し資本過剰の状態となっている。これを 図示したのが第6図である。例えば、第6図のP点においては、資本ストック はKp、稼働率はepである。よって、必要資本ストックKW はKW = Kpep となり、長方形0 KpP epの面積で表される。他方、実際の資本ストックKp はKp= Kp× 1であるので、長方形0 KpQ 1で表され、必要資本ストックの 方が実際の資本ストックを上回っていることがわかる。 第 6 図 ˙K = 0 線と資本ストックの過不足 P Q K ep Kp e 1 0 K= 0. 線 (2) 極限閉軌道の存在 ここで、稼働率と資本ストックの動きを見ておこう。まず、稼働率について は、(7)∼(9)式、(11)(25)式を考慮すると
˙e = β[(c− 1)eK/v + λ(e)(e − 1)K + B] (42)
となる。これより、
21) K = 0 線の右側では 1 < e であり、必要資本ストックの定義 (6) 式より、K < eK = K˙ W を得る。
∂ ˙e/∂K =−β[(1−c)e/v− λ(e)(e−1)] (43) となり、(27)式より(42)式の括弧の中はプラスであるので22)、 ∂ ˙e/∂K < 0 (44) を得る。よって、˙e = 0線より上側では稼働率eは減少し、下側では増加して いることがわかる。また、(25)式より、e = 1より左側では資本ストックは減 少し、右側では増加していることがわかる。さらに、この経済には極限閉軌道 (リミットサイクル)が存在し、稼働率と資本ストックはこの軌道上を一定の 周期で循環する動きが生じる23)。この稼働率と資本ストックの動きを図に示 したのが第7図である。 第 7 図 稼働率と資本ストックの循環 e = 0. 線 a b c d K e 1 2 0 K= 0. 線 v B 1-c 22) 厳密には、計算によって (27) 式が成立するための十分条件は、 (1− c)eb/v− λ(eb)(eb− 1) > 0
と求められるので、(27) 式は極めて緩い仮定であると言える。
4. 稼働率と資本ストックの循環メカニズム
本節では、各循環局面における、稼働率、資本ストック、および必要資本係 数比率等の動きを概観し、あわせて、その循環メカニズムについて考察しよう。 (1) 循環局面における稼働率と資本ストックの動き 以下では、稼働率と資本ストックに焦点を合わせて、各循環局面の性格を第 7図を用いて分析しよう。まず、稼働率は第7図からもわかるように、a点か ら減少し始めc点で最小となり、c点から増加しa点で最大となる。同様に、 資本ストックはa点においては増加し続けており、b点に達すると最大とな る。その後、減少しd点で最小となる。また、a点では均衡資本ストックK∗ (= vB/(1− c))より大きく、c点では均衡資本ストックK∗より小さいこと がわかる。以上の考察から、稼働率と資本ストックの時系列的な動きを描くと 第8図のようになる。 第 8 図 稼働率と資本ストックの推移 a b c d a t 1 e a b c d a t v B 1-c K(2) 循環メカニズム 次に、われわれのモデルにおける循環メカニズムを考察しよう。いま、経済 が第7図のa点にあるとしよう。この点では、GDPと総需要が等しく稼働率 は最大値となっている。他方、第6図からわかるように、資本ストックは必要 資本ストックに不足しており、設備投資はプラスとなり資本ストックも増加し 続けている。この資本ストックの増加によって、a点ではGDPは増加し続け ている24)。しかしながら、資本ストックの増加は必要資本ストックとの乖離を 小さくし、設備投資が低下し始め、それによって総需要が減少し稼働率の低下 が始まる。この稼働率の低下によって、やがてGDPは減少に向かう25)。この GDPの減少は必要資本ストックを低下させ、資本ストックの増加とあいまっ て設備投資をさらに低下させ、b点において設備投資(純投資)はゼロとなる。 設備投資がゼロであるため資本ストックは増加しない一方で、GDPが減少し 続けるため必要資本ストックが低下し、これによって資本過剰が生じる。この ためb点を通過すると、設備投資(純投資)はマイナスとなる。このことは 総需要の一層の低下を意味し、稼働率はますます低下することになる。他方、 b点を過ぎると、資本ストックは減少し始めるため、稼働率の低下と相まって GDPが急速に低下していく。このGDPの低下は消費を低下させるが、限界 消費性向が1より小さいためGDPほど消費は低下しない。さらに、(20)式 や第4図からもわかるように、稼働率が大きく低下するとλが小さくなるた め設備投資の低下が緩和されるようになる。これらの消費と設備投資の低下 の緩和によって、総需要の低下が徐々に小さくなり、やがて、c点で総需要と GDPが等しくなり稼働率の低下が止まる。 このc点では、GDPと総需要は均衡しているが、資本ストックは必要資本 ストックを上回っており、相変わらず資本過剰が生じている。したがって、設 備投資はマイナスで資本ストックは減少し続けており、このことが生産関数を 通じてGDPを低下させる。しかし、c点を過ぎると、資本ストックの減少は 24) 生産関数 (7) 式より、資本ストックの増加は GDP の増加をもたらす。 25) 資本ストックは増加し続けているが、稼働率の低下が大きくなると (7) 式より GDP は減少し 始める。
必要資本ストックとの乖離を小さくするため26)、設備投資の低下が小さくなり 総需要の低下はGDPの低下を下回るようになり、稼働率が上昇に転じる。こ の稼働率の上昇が資本ストックの低下を相殺してGDPが増加に転じる。この GDPの増加は必要資本ストックを上昇させ、資本ストックの減少とあいまっ て、設備投資の低下をさらに小さくし、d点において設備投資(純投資)はゼ ロとなる。d点では、設備投資がゼロであるため資本ストックは増加しない。 他方、GDPが増加し続けているために必要資本ストックが上昇し、資本不足 が生じるようになる。このためd点を過ぎると、設備投資(純投資)はプラ スとなる。このことは一層の総需要の上昇を意味し、稼働率が上昇していく。 この稼働率の上昇と資本ストックの増加が相まってGDPは急速に増加してい き、資本ストックと必要資本ストックの乖離が大きくなっていく。このGDP の増加は消費を上昇させるが、限界消費性向が1より小さいためGDPほど消 費は上昇しない。他方、(20)式と第4図からわかるように、稼働率が1より 大きくなっていくとλが小さくなるため設備投資の上昇が緩和される。これ らの消費と設備投資の上昇の緩和は総需要の上昇を緩和し、これがGDPの増 加を抑えることになる。やがて、経済はa点で再び総需要とGDPが等しくな る。以上が、この経済の循環メカニズムである。
5. GDP 成長率、資本ストック成長率、および必要資本係数比率の
変動
以上の分析から、資本ストックと稼働率が循環運動を行うことが示され、ま た、各経済変数の時系列的動きと循環メカニズムも明らかになった。本節で は、これらの結果から、GDP成長率、資本ストック成長率、および必要資本 係数比率の動きを抽出する27)。 26) 言い換えれば、稼働率が 1 に近づいていく。 27) 本節での GDP 成長率や資本ストック成長率は、村田(2007b)(2008a)におけるトレンド除去 後の変数に対応していると考えられる。(1) 資本ストック成長率、稼働率変化率、およびGDP成長率
まず、資本ストック成長率は(25)式より
˙
K/K = λ(e)(e− 1) (45)
となるので、
∂( ˙K/K)/∂e = λ(e) + λ0(e)(e− 1) > 0 (46)
を得る28)。これより、˙
K/Kはeの単調増加関数となり、 ˙
K/K = h(e)、 h0(e) = λ(e) + λ0(e)(e− 1) > 0 (47)
と表され、K/K˙ とeの動きが同じであることがわかる。つまり、資本ストッ ク成長率は第7図のa点で最大となり、b点でゼロになる29)。また、 c点で資 本ストック成長率は最小となり、d点で成長率はゼロとなる。次に、稼働率の 変化率はa点とc点でゼロとなり、b点で最小となり、d点で最大となること がわかる。この資本ストック成長率と稼働率の変化率の時系列グラフを描いた のが第9図である。 次に、GDP成長率についてみてみよう。生産関数(7)式より ˙ Y Y = ˙e e+ ˙ K K − ˙v v (48) となる。つまり、GDP成長率は資本ストック成長率と稼働率の変化率を加え 必要資本係数のトレンド変化率を差し引いたものである。ここで、必要資本係 数のトレンド変化率は(3)式より0.76%で一定であることを考慮して、(48)式 と資本ストック成長率と稼働率変化率の時系列グラフ(第9図)からGDP成 長率の時系列グラフを作図すると、第10図のように描ける。均衡資本ストッ クや均衡GDPが、あるトレンドで変化していることを考慮すると30)、第 9図 や第10図の資本ストック成長率やGDP成長率はトレンド成長率からの乖離 として解釈できる。 28) (20) 式より、σ2> 2 を考慮すると、0 < e < 2 の範囲においては λ(e) + λ0(e)(e− 1) = λ Mexp{−(e − 1) 2/σ2}{σ2− 2(e − 1)2}/σ2 > λMexp{−(e − 1) 2/σ2}(σ2− 2)/σ2> 0 となる。 29) (45) 式より、e = 1 のとき、 ˙K/K = 0 となる。 30) 実際、わが国の資本ストックや GDP は一定のトレンドで成長している。
第 9 図 資本ストック成長率と稼働率変化率 a b c d a t K K . 0 a b c d a t e e . 0 第 10 図 GDP 成長率の推移 Y Y . j a b i c d j a t 0
(2) GDP成長率、資本ストック成長率、および必要資本係数比率の動き 次に、(4)式で示される必要資本係数比率R(K/Y )の動きについて見てみ よう。(7)式の固定係数型生産関数を考慮するなら R(K/Y ) = 1/e (49) となり、必要資本係数比率は稼働率と逆の動きをすることがわかる。したがっ て、必要資本係数比率は、a点で最小となりb点で1となる。さらに、c点で 最大となり、d点で再び1となる。この稼働率と必要資本係数比率の時系列的 な動きをグラフにすると第11図のようになる。第3図と比較するなら、この グラフが現実のデータの動きを良く捉えていることがわかろう。 第 11 図 稼働率と必要資本係数比率の推移 a e b c d a e b t R(K Y ) R(K Y ) 1 ここまでの分析から明らかになった、GDP成長率、資本ストック成長率、 および必要資本係数比率の推移を時系列グラフにすると第12図のようになる。 この第12図からわかるように、GDP成長率に遅れて資本ストック成長率が 変動し、また、必要資本係数比率の動きは資本ストック成長率の動きと逆サイ クルになっている。これらのGDP成長率、資本ストック成長率、必要資本係 数比率の動きは、第1図の現実のデータから導かれたグラフと同じリード・ラ グ関係を持っている。このことから、われわれのモデルがジュグラーサイクル の理論モデルとなっていることが理解できる。この点を確認するために、第 12図のGDP成長率と資本ストック成長率の動きを、Y /Y˙ −K/K˙ 平面に描
第 12 図 GDP 成長率、資本ストック成長率、必要資本係数比率の推移 a b j i c d j a t 0 䇭 KK . Y Y . R(K Y ) くと第13図のように描ける。 この第13図におけるGDP成長率と資本ストック成長率の動きを第2図に おける実際のデータによる動きと比べると、同じ動きであるこことがわかる。 以上のことから、われわれのモデルが現実のGDP成長率、資本ストック成 第 13 図 GDP 成長率−資本ストック成長率循環 K K . 0 0 Y Y . d i j a b c
長率、必要資本係数比率、および稼働率の時系列的な動きをほぼ完全に説明で きていると言えよう。
おわりに
これまでの分析の結果を整理すると次のように言える。まず、現実のGDP 成長率、資本ストック成長率、および必要資本係数比率のジュグラーサイクル の動きについて、われわれの理論モデルは、ほぼ完全にその変動を説明するこ とができた。この理論モデルの基礎にあるのは資本ストック調整原理であり、 その意味で、戦後のわが国のジュグラーサイクルは資本ストック調整原理で説 明できることが理論的、実証的に明らかになったと言える。さらに、その際、 資本ストック調整原理と整合的な固定係数型生産関数を用いて分析がなされ、 稼働率と必要資本係数比率の逆サイクルを導いた点も一つの貢献であろう。ま た、これまで明確でなかった、ジュグラーサイクルの循環メカニズムについて、 理論的に解明したことも本稿の大きな特長である。その際、固定係数型生産関 数によって資本ストックの生産能力効果を明示的に組み込んだモデルによって 循環メカニズムを明らかにしたことが、ジュグラーサイクルの現実データに対 する説明力を高めたと言える。数学付録
この数学付録は、極限閉軌道(リミットサイクル)の存在をPoincar´e=Bendixson の定理を用いて証明することが目的である。そのためまず初めに、Poincar´e= Bendixsonの定理を示しておこう31)。 Poincar´e=Bendixsonの定理 開集合∆上で定義された二次元自励系31) Coddington and Levinson(1972, p.394)の Theorem2.1 の Corollary、笠原(1982, p.154)の定理 30.8 などを参照されたい。
˙ x1= g(x1、x2) (A-1) ˙ x2= g(x1、x2) (A-2) において、ある正の半軌道γ+が∆の有界閉集合Ωに含まれ、か つΩ内に均衡点が存在しないならば、Ω内にリミットサイクルが 存在する。 さて、われわれのモデルにおいて、上の(A-1)(A-2)式で表される二次元自 励系は、次の二つの微分方程式の体系 ˙
K = λ(e)(e− 1)K、 λ(e) > 0 (A-3)
˙e = β[{(c − 1)e/v + λ(e)(e − 1)}K + B]、 β > 0 (A-4)
とみなすことができ、また、開集合∆は ∆ ={(e、K)│e > 0、K > 0} と定義できる。ここで、第14図のように e = 2 (A-5) と ˙e = 0線の交点をAとし、このA点の正の半軌道γA+がK =˙ 線と交わ る点をBとする32)。次に、 B点からの正の半軌道γB+が ˙e =線と交わる点 をDとする。さらに、D点からの正の半軌道γD+がK =˙ 線と交わる点をF 点とする。このF点から水平線を引き、A点の負の半軌道γA−と交わる点を H 点とする。このようにして作られたABDF Hで囲まれた領域は有界閉集 合であり、これをΩLと表す。 次に、二次元自励系(A-3)(A-4)式を均衡点(e∗、K∗)の開近傍V (e∗、K∗) において線形化すると ˙ K ˙e ! = 0 λMK −β(1 − c)/v β{λM− (1 − c)/v}K ! K− K∗ e− e∗ ! (A-6) 32) 二次元自励系の微分方程式における正の半軌道とは、ある点を始点とする解経路の中で時間の進 行と共に描かれる解経路のことをいう。逆に、負の半軌道とは時間が逆転する際に描かれる解経 路を意味している。
第 14 図 リミットサイクル K e 1 2 0 K= 0. 線 B A D H F e = 0. 線 となり、上式の係数行列をJとおくと det. J = β(1− c)λMK/v > 0 (A-7) trace J = β{λM− (1 − c)/v}K > 0 (A-8) を得る。よって、均衡点(e∗、K∗)の開近傍V (e∗、K∗)においては、二次元 自励系(A-3)(A-3)式は不安定であることがわかる。ここで、均衡点(e∗、K∗) を含みかつ開近傍V (e∗、K∗)に包含される開集合ΩSを ΩS= VS(e∗、K∗)⊂ V (e∗、K∗) (A-9) と定義する。このΩS内では当然のことながら二次元自励系は不安定であるた め、ΩSに属さない任意の点での正の半軌道がΩS内に入ることはない。 最後に、われわれは次のように定義される集合Ωを考えよう。 Ω = ΩL− ΩS (A-10) この集合Ωは明らかに有界閉集合であり、かつΩには均衡点が含まれていな
い。しかも、このΩの任意の点を始点とする正の半軌道はΩに含まれる33)。 以上のことから、われわれの体系がPoincar´e=Bendixsonの定理の前提条件を 満たすことが分かり、リミットサイクルの存在が証明される。
参考文献
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村田 治(2007b)、「資本ストックの調整と設備投資循環」、『経済学論究』、第 61 巻、第 2 号。 村田 治(2008a)、「設備投資循環の理論と実証」、『景気とサイクル』、景気循環学 会、第 45 号。 村田 治(2008b)、「資本ストックの調整と稼働率」、『経済学論究』、第 62 巻、第 2 号。 嶋中雄二(1996)、『メジャー・サイクル』、東洋経済新報社。 篠原三代平(1994)、『戦後 50 年の景気循環』、日本経済新聞社。 田原昭四(1998)、『日本と世界の景気循環』、東洋経済新報社。