〈論文〉中小企業向け会計基準の策定のあり方に関する研究--2011年中国 「小企業会計準則」 を題材として
22
0
0
全文
(2) 第60巻. 1は. 第1号. じ. め. に. 企 業 会 計 制 度 に関 す る研 究 は,伝 統 的 に制 度 会 計 の 枠 組 み の 中で,す な わ ち会 社 法,金 融 商 品 取 引 法 等 の 法 制 度 を 前 提 と して,投 資 家 保 護 と い う観 点 か ら上 場 企 業 を 対 象 に展 開 され て き た。 その 理 由 は,株 式 会 社 の 総 数 に 占 め る上 場 企 業 の 割 合 は僅 少 で あ る に もか か わ らず,上 場 企 業 の 経 済 活 動 が 国 民 経 済 の 大 部 分 を 占 めて い るか らで あ り,国 民 経 済 の 中 核 を担 って い るの が 上 場 企 業 で あ る と い う こ と に あ る。 その よ うな 状 況 の も とで は,非 上 場 の 中小 企 業 の 利 害 関 係 者 は も っぱ ら銀 行 等 の 債 権 者 で あ り,企 業 会 計 原 則 や 税 法 基 準 を 適 用 して 会 計 処 理 が 行 わ れ て き た と い う こ とが 実 態 で あ り,外 部 報 告 に係 る問 題 を こ と さ ら議 論 す る こ と はな か っ た と考 え られ る。 しか し,近 年,経 済 環 境 の 急 激 な 変 化 に伴 って,国 民 経 済 全 体 を 活 性 化 す るた め に は, 中小 企 業 会 計 の 基 盤 強 化 を 通 じて 企 業 活 動 の 活 性 化 を 図 る こ とが 必 要 で あ る と認 識 され る よ う にな り,中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の 設 定 及 び整 備 が 急 務 で あ る と強 く指 摘 され る よ う に な って き た(1)。そ の理 由 は,公. 的 説 明 責 任 が な く規 模 的 に い え ば 中 小 規 模 の企 業(small. andmediumsizedentities)に. と って は,上 場 大 企 業 向 け の 会 計 基 準 は,加. 重な コス ト. 負 担 とな り,ま た税 務 会 計 志 向 の 会 計 処 理 に対 す るニ ー ズが あ る こ とか ら,そ の 適 用 の 合 理 性 や 妥 当性 が 積 極 的 に は認 め られ な い と い う点 に あ る。 この よ うな 状 況 を 踏 まえ て,国 2009年7月. 際会 計 基 準 審 議 会(以 下 で は,IASBと. 表 記 す る)は,. に 「中小 企 業 版IFRS」(IFRSforSmallandMedium-sizedEntities)を. 表 した。 中 国 で は,中 小 企 業 版IFRSの. 公 表 を受 け て,小 企 業 会 計 制 度(2)に替 わ る 中小 企. 業 の た めの 新 たな 会 計 基 準 設 定 の 必 要 性 が 認 識 され,2010年11月 開 草 案)」 が,そ. して2011年10月18日. た。 この よ う に,中. 公. に 「小 企 業 会 計 準 則(公. に は 「小 企 業 会 計 準 則 」 が正 式 に公 表 さ れ る に至 っ. 国 で は,「 企 業 会 計 準 則 一 基 本 準 則 」 が 会 計 基 準 の概 念 フ レー ム ワー. クの 役 割 を担 って お り,「企 業 会 計 準 則. 具 体 準 則 」 が上 場 企 業 に適 用 さ れ,「 小 企 業 会 計. 準 則 」 が 小 規 模 企 業 に適 用 され る よ う に制 度 改 正 が 行 わ れ た。 本 論 文 は,国 際 財 務 報 告 基 準(以 下 で は,IFRSと され,事. 表 記 す る)が 世 界120ケ 国 以 上 で 採 用. 実 上 の 世 界 標 準 の 会 計 基 準 と して 機 能 して い る現 状 を踏 ま え,IFRSの. 適用の妥. (1)河 峙 照 行(2008)「 『中 小 会 社 会 計 指 針 』 の 制 度 的 意 義 と課 題 」 『甲南 会 計 研 究 」 第2号,87頁 。 (2)小 企 業 会 計 制 度 は,2004年 に公 表 さ れ,「 外 部 か ら資 金 調 達 を行 わ ず,経 営 規 模 が 小 さい 」 小 企 業 に適 用 され,企 業 会 計 制 度 とは 異 な り,よ り簡 素 化 され た 会 計 処 理 を 許 容 す る制 度 で あ る。 134(134).
(3) 中小企業向 け会計基準の策定のあ り方 に関す る研究(朱) 当性 を有 しな い企 業,す な わ ち公 的 説 明 責 任 が な い 中小 規 模 の 企 業 の 会 計 基 準 の あ り方 に つ いて 研 究 す る こ とを 目的 とす る もの で あ る。 この よ うな 研 究 目的 に基 づ いて,本 論 文 は,ま ず,中 国 に お け る 中小 企 業 会 計 基 準 の 必 要 性 を明 らか にす る。 そ して,2011年. に公 表 され た 「小 企 業 会 計 準 則 」 の 内容 の 検 討 を 行. う。 そ れ を踏 ま え て,「 中小 企 業 版IFRS」 で,中 国 が 「中小 企 業 版IFRS」. と 中 国 の 「小 企 業 会 計 準 則 」 を比 較 した うえ. を導 入 せ ず,「 小 企 業 会 計 準 則 」 を 設 定 した 理 由を 解 明 す. る。 最 後 に,中 国 以 外 の 諸 外 国 に お け る 中小 企 業 に関 す る会 計 制 度 の 現 状 を 検 討 し,中 小 企 業 会 計 基 準 の 設 定 は いか に あ るべ きか を 検 討 しよ う とす る もの で あ る。. 皿. 1.中. 中国小企業会計準則制定の背景及 び体系. 国小企業会計準則制定の背景. まず,「 表1」 つ いてIASBと. を見 られ た い。 「表1」. は,中 国 に お け る 中小 企 業 会 計 の 制 度 化 の 経 緯 に. 日本 の 関連 規 定 等 と比較 した もの で あ る。 「表1」. 部 が2004年4月27日. に示 した よ う に,財 政. に公 表 した 「小 企 業 会 計 制 度 」 は,2005年1月1日. か ら,中 国 に設 立. した 「外 部 か ら資 金 調 達 を 行 わ ず,経 営 規 模 が 小 さ い」 小 企 業 に適 用 され た 。 しか し,「小 企 業 会 計 制 度 」 は企 業 現 場 へ の十 分 な普 及 は み られ な か った。 そ の原 因 は, 対 象 企 業 が 明確 に 規 定 され ず,基. 準 の 内容 が不 充 分 で あ り,「 小 企 業 会 計 制 度 」 の 「一,. 総 論 」 の ⇔ に お いて,本 制 度 の 規 定 に合 致 す る小 企 業 は,本 制 度 に よ る会 計 処 理 あ る い は 「企 業 会 計 制 度 」 に よ る会 計 処 理 の いず れ か を 選 択 で き る こ とが 明 記 され て い た こ と に あ る。 その た め,基 準 の 適 用 が 強 制 され ず,多. くの 小 企 業 は,企 業 会 計 制 度 さ ら に は 旧業 種. 別 会 計 制 度 を用 い,「 小 企 業 会 計 制 度 」 の導 入 が 進 ま なか っ た の で あ る。 政 府 部 門 は 小 企 業 会 計 制 度 の 適 用 状 況 につ いて 定 期 的 な 調 査 を 行 わ ず,ま 用 を求 め て い な か った。 さ ら に,多. た税 務 部 門 もそ の 制 度 の 強 制 適. くの小 企 業 は どの 会 計 制 度 を 適 用 す る こ とが 自社 に. と って 適 切 で あ るの か が わ か らな か っ た。 以 上 の よ うな こ とか ら 「小 企 業 会 計 制 度 」 の 実 務 に お け る導 入 は進 まず,当 該 小 企 業 会 計 制 度 の 実 際 的 効 果 は芳 し くな か った(3)。 その 一 方,2009年7月. に,IASBは. 「中小 企 業 版IFRS」. を 公 表 した 。 そ の よ うな 状 況. に鑑 み,中 国 は 中小 企 業 向 け会 計 基 準 の 策 定 に着 手 し,2010年11月1日 則(公 開 草 案)」 を 公 表 し,さ. (3)堺. 檀(2010)「. らに2011年10月18日. 小 企 業 会 計 準 則,何. 去 何 従?」. 135(135). に 「小 企 業 会 計 準. に 「小 企 業 会 計 準 則 」 を 公 表 した 。 こ. 「財 会 学 習 』2010年5月. 号,14頁. 。.
(4) 第60巻 れ は,2013年1月1日 2004年4月. 第1号. か ら 小 企 業 へ の 適 用 が 開 始 さ れ る 。 ま た,当. 該 施 行 日 を も っ て,. に 公 表 さ れ た 「小 企 業 会 計 制 度 」 は 廃 止 さ れ る こ と に な っ た(4)。. 表1中 中. 小企業会計の制度化の経緯. 国. 日. IASB. 本. 「中 小 企 業 の 会 計 」 研 究 プ ロ ジ ェ ク トの 立 ち上 げ. 1998年. ・「中 小 企 業 の 会 計 に 関 す 2002年. る研 究 会 報 告 書 」 ・「中 小 会 社 会 計 基 準 の 設. 「中 小 企 業 促 進 法 」. 定 に つ いて 」 「中 小企 業 版IFRS」 の決定. 2003年. 2004年. 討議資料 「中小企業の会計 基準に対す る予備的見解」. 「小 企 業 会 計 制 度 」 「個 人,私. 2005年. 営 な どの非公 有. 「中 小 企 業 の 会 計 に 関 す る. 制 経 済 発 展 の 奨 励,支 持 及 び 指導 に関す る若 干 の意 見 」. 指針」 公 開 草 案 「中 小 企 業 版 IFRSJ. 2007年. 2009年. の策 定. 「「中 小 会 社 の 会 計 の あ り方 に 関 す る研 究 報 告 」 に つ い て」. 「国 務 院 の 中 小 企 業 発 展 の さ らな る促 進 に関 す る若 干 の意見」. 「中 小 企 業 版IFRS」 ・「非 上 場 会 社 の 会 計 基 準. 2010年. 「小 企 業 会 計 準 則(公. 開草. に関す る懇談 会 ・報告 書 」 ・「中 小 企 業 の 会 計 に 関 す. 案)」. る研 究 会 ・中 間 報 告 書 」 2011年. 「中 小 企 業 の 会 計 に 関 す る. 「小 企 業 会 計 準 則 」. 基 本 要 領(案)」 「中 小 企 業 の 会 計 に 関 す る. 2012年. 出 典:胡. 2.中. 基本要領」 丹(2011,40頁. の 図 表5)を. 修 正 した も の で あ る 。. 国小企業会計準則の体系. 2011年 に公 表 され た 「小 企 業 会 計 準 則 」 は,総 則 に始 ま り,財 務 諸 表 の 構 成 要 素 に沿 っ た形 で全 体 が構 成 され た もの で あ る。 総 則 で は,「 小 企 業 会 計 準 則 」 の適 用 範 囲 に該 当 す る企 業 につ いて 下 の よ う に明 らか に して い る。 「小 企 業 会 計 準 則 」 は,中 国 の 「中小 企 業 劃 型 標 準 規 定 」 に準 拠 す る小 企 業 に適 用 す る。. (4)中. 国 財 政 部(2011)「. 小 企 業 会 計 準 則 」,33頁. 136(136). 。.
(5) 中小企業向 け会計基準の策定のあ り方 に関す る研究(朱) しか し,以 下 の3種 類 の 小 企 業 は適 用 され な い(5)。 ①. 企 業 の 株 式 あ る い は債 券 が 公 開 市 場 で 取 引 され て い る小 企 業 。. ②. 金 融 機 関 あ る い は その 他 の 金 融 の 性 質 を 有 して い る小 企 業 。. ③. 企 業 集 団 に お け る親 会 社 あ る い は子 会 社 。. 表2中. 国の中小企業の区分. 第1条 件. 第2条 件 中企業 (以下 の条件 を同時 に 満 たす場合). 中,小,超 小企業 (以下 の いず れ かの 条 件 を 満 たす 場 合). 従業員数 (人). 産業. 売上高 (万元). 農 ・林 ・牧 畜 ・漁 業. 工業. 20,000以 1,000以. 下. 建築業. 資産総額 (万元). 40,000以. 下. 80,000以. 下. 一 80,000以. 300超. 下. 200以 下. 40,000以. 下. 一. 20超. 300以 下. 20,000以. 下. 一. 50超. 下. 30,000以. 下. 一. 300超. 200以 下. 30,000以. 下. 一. 100超. 下. 30,000以. 下. 一. ホテル業. 300以 下. 10,000以. 下. 飲食業. 300以 下. 10,000以 100,000以. 倉蓄業 郵政業. 情報伝送業. 1,000以. 2,000以. 下. 情報技術 サー ビス業. 300以 下. 不動産開発業. 一. 不動産管理業 賃 借 ・商 務 サ ー ビス 業. 1,000以. その他業種. 10,000以 200,000以. 下. 5,000以. 一. 2,000超 6,000超. 小売業. 1,000以. 一. 500超. 卸売業. 運送業. 超小企業 (以下の いずれかの条件を 満 たす場合). 従業員数 売上高 資産総額 従業員数 売上高 資産総額 従業員数 (人) (万元) (万元) (人) (万元) (万元) (人). 一. 下. 小企業 (以下 の条件 を同時 に 満 たす場合). 50超 20超. 5,000超. 売上高 (万元). 資産総額 (万元). 50以 下. 300超. 一. 300超. 300超. 20以 下. 300以 下. 一. 300以 下. 300以 下. 一. 5超. 一. 10超. 100超. 10以 下. 100以 下. 3,000超. 一. 20超. 200超. 20以 下. 200以 下. 1,000超. 一. 20超. 100超. 20以 下. 100以 下. 300超. 2,000超. 一. 20超. 100超. 20以 下. 100以 下. 一. 100超. 2,000超. 一. 10超. 100超. 10以 下. 100以 下. 下. 一. 100超. 2,000超. 一. 10超. 100超. 一. 10以 下. 100以 下. 一. 下. 一. 100超. 1,000超. 一. 10超. 100超. 一. 10以 下. 100以 下. 一. 10超. 一. 下 下. 10,000以. 下. 300以 下. 一. 300以 下. 一. 120,000以. 100超. 5,000超. 500超. 1,000超. 下. 一. 1,000超. 一. 300超. 1,000超. 下. 100超. 一. 一. 5,000超 一. 一. 100超. 1,000以. 下. 50超. 10以 下. 50以 下. 一. 100超. 一. 100以 下. 100超. 500超. 100以 下. 500以 下. 10超. 8,000超. 5以 下. 1,000超. 10超. 2,000超. 100超. 10以 下. 2,000以. 下. 100以 下. 10以 下. 注. 工 業 は採 鉱 業,製 造 業,電 力,熱 力,ガ ス及 び 水 の 生 産 ・提 供 業 が 含 まれ,情 報 伝 送 業 は 通 信 に 関 す るサ ー ビ スが 含 まれ,そ の 他 業 種 は 科 学 研 究 及 び技 術 サ ー ビ ス業,水 利,環 境 及 び 公 共 設 備 管 理 業,住 民 サ ー ビ ス業,社 会 奉 仕,文 化,体 育 及 び娯 楽 業 な どが 含 まれ て お り,輸 送 業 は 鉄 道 輸 送 業 を 含 まな い。 出典:工 業 和 信 息 化 部,国 家 統 計 局,国 家 発 展 和 改 革 委 員 会,財 政 部(2011)を も と に作 成 した もの で あ る。. こ こで,中 国 財 政 部 の 「中小 企 業 劃 型標 準 規 定 」 に従 った産 業 分 類 と規 模 基 準 が 「表2」 に示 され て い る。 「表2」. は,「 中小 企 業 劃 型 標 準 規 定 」 に お いて 文 章 形 式 で 提 示 され て い. た基 準 を表 形 式 で 比 較 可 能 な よ う に筆 者 が ま と め た もの で あ る。 現 在,中 国 で は,登 録 企 業 総 数 は477万 社 に及 び,そ こ に 占め る小 企 業 の 割 合 は97.1%で あ る。 ま た,従 業 員 数 で は 53.0%を 占 めて い る。 さ らに,477万 社 の 売 上 高 に 占め る小 企 業 の 売 上 高 の 割 合 は39.3%で. (5)同. 上 資 料,1頁. 。. 137(137).
(6) 第60巻. 第1号. あ り,総 資 産 の割 合 は42.0%と な って い た(6)。 中国 に お け る分 類 の 特 徴 は産 業 ご と に規 模 基 準 が 異 な る点 で あ る。 第1条 件 と は,各 産 業 に規 定 され て い る従 業 員 数,売 上 高,資 産 総 額 の いず れ か の 条 件 を 満 た した場 合 に,当 該 企 業 は 中企 業,小 企 業,超 小 企 業 の 対 象 とな る。 次 に,中 企 業 と小 企 業 の 判 定 につ いて は,第2条. 件 で 規 定 され て い る従 業 員 数,売 上. 高,資 産 総 額 の 条 件 を す べ て 満 た した場 合 に,中 企 業 ま た は小 企 業 と して 分 類 され る。 さ らに,超 小 企 業 につ いて は,従 業 員 数,売 上 高,資 産 総 額 の いず れ か の 条 件 を 満 た した 場 合 に超 小 企 業 と判 定 され る。上 述 の よ う に,本 論 文 で検 討 して い る 「小 企 業 会 計 準 則 」 は, 「表2」. で規 定 され る小 企 業 に適 用 され る もの で あ る。. ま た,総 則 に は,「 小 企 業 会 計 準 則 」 と 「企 業 会 計 準 則 一 具 体 準 則 」 との 関係 が 明 確 に 示 さ れ て い る。 「小 企 業 会 計 準 則 」 の 適 用 範 囲 に該 当 し 「企 業 会 計 準 則 」 を適 用 して い な い小 企 業 は,「 小 企 業 会 計 準 則 」 が強 制 され る の で は な く,「 小 企 業 会 計 準 則 」 と 「企 業 会 計 準 則 」 の いず れ か の 会 計 基 準 の 選 択 が 認 め られ,そ れ に基 づ いた 継 続 的 な 会 計 処 理 を 行 う こ と と され て い る(7)。 ①. 「小 企 業 会 計 準 則 」 を選 択 した 小 企 業 に お い て,発 生 した 取 引 あ る い は事 項 につ い て 当該 準 則 に規 定 が な い場 合 は,当 該 企 業 は 「企 業 会 計 準 則 」 の 関 連 す る規 定 に基 づ いて 会 計 処 理 を 行 う。. ②. 「企 業 会 計 準 則 」 を選 択 した小 企 業 は,「 小 企 業 会 計 準 則 」 の 関 連 す る規 定 を 同時 に 適 用 す る こ と はで きな い。. ③. 「小 企 業 会 計 準 則 」 を選 択 した 小 企 業 は,株 式 ま た は債 券 の 公 開 発 行 を行 う場 合, 「企 業 会 計 準 則 」 の 適 用 に変 更 しな けれ ば な らな い。 経 営 規 模 あ る い は企 業 属 性 の 変 化 の た め,企 業 が 「小 企 業 会 計 準 則 」 の 規 定,す な わ ち,小 企 業 の 基 準 を 満 た さず, 大 中企 業 ま た は金 融 企 業 にな るな らば,「 企 業 会 計 準 則 」 を適 用 しな け れ ば な らな い。. ④. 「企 業 会 計 準 則 」 を適 用 して い る上 場 企 業,非. 上 場 の大 規 模 及 び 中規 模 企 業 な ら び. に小 企 業 は,「 小 企 業 会 計 準 則 」 を適 用 して は な らな い。 「小 企 業 会 計 準 則 」 を適 用 す る小 企 業 が,「 企 業 会 計 準 則」 に 変 更 す る場 合,「 企 業 会 計 準 則 第38号. 企 業 会 計 準 則 の 初 度 適 用 」 な らび に関 連 す る規 定 に準 拠 して 会 計 処 理 を 行. う(8>。 「小 企 業 会 計 準 則 」 の 内容 を見 る と,当 該 準 則 は そ れ ぞ れ 財 務 諸 表 の 構 成 要 素 で あ る資. (6)中. 国 財 政 部(2010b)「. 小 企 業 会 計 準 則(征. (7)中. 国 財 政 部(2011)前. 掲 資 料,1-2頁. (8)同. 上 資 料,2頁. 求 意 見 稿)起. 。. 。. 138(138). 草 説 明 」,93頁. 。.
(7) 中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の 策 定 の あ り方 に関 す る研 究(朱) 産 ・負 債 ・所 有 者 持 分 ・収 入(9)・費 用 ・利 益 の 定 義 や そ の 分 類 を 示 して い る 。 最 後 は,財. 務 諸 表 の 内容 や 開 示 につ いて 規 定 して い る。 それ を 一 覧 表 示 したの が 「表3」 で あ る。. 表3「 項. 目. 第1∼4条. 小企業会計準則」の内容. 内. 容. 第1章. 総則. 第2章. 資産⑩. 第5条. 資 産 とは,小 企 業 の 過 去 の 取 引 ま た は事 象 の結 果 と して 当該 企 業 が所 有 ま た は支 配 し, か つ,小 企 業 に経 済 的 便 益 を もた らす こ とが 予 想 され る資 源 を い う。. 第6条. 小 企 業 の 資産 は,取 得 原 価 に よ って 測 定 し,資 産 の減 損 引 当金 の計 上 は要 求 され な い 。. 第7∼15条. 流動資産. 第16条. 小 企 業 の 資 産 は,流 動 性 に照 ら して,流 動 資 産 と非 流 動 資 産 に区 分 され る。 非 流 動 資 産 は,長 期 債 券 投 資,長 期 持 分 投 資,固 定 資 産,生 産 性 生 物 資 産,無 形 資 産,及 び 長 期 前 払 費 用 な ど に分 類 され る。. 第17∼21条. 長期債券投資. 第22∼26条. 長期持分投資. 第27∼34条. 固定資産. 第35∼37条. 生産性生物資産. 第38∼42条. 無形資産. 第43∼44条. 長期前払費用 第3章. 負債. 第45条. 負 債 とは,小 企 業 にお け る過 去 の 取 引 あ るい は事 項 か ら生 じ,企 業 に 経 済 的 便 益 の 流 出を もた らす 可 能 性 が あ る現 在 の 義 務 を い う。 負 債 の 構 成 に つ い て,小 企 業 の 負 債 は 流 動 負 債 と非 流 動 負 債 に 分 類 され る。. 第46∼50条. 流動負債. 第51∼52条. 非流動負債 第4章. 第53条. 所有者持分. 所 有 者 持 分 と は,小 企 業 の 資 産 か ら負 債 を 控 除 した 後,所 有 者 が 保 有 す る残 りの 持 分 を い う。 小 企 業 の 所 有 者 持 分 に は,払 込 資 本 金(あ るい は株 主 資 本 金),資 本 剰 余 金, 利 益 剰 余 金 及 び 未 処 分 利 益 が 含 まれ る。. (9)中 国 の 「収 入 」 は 「収 益 」 を意 味 す る。 本 論 文 で は,「 小 企 業 会 計 準 則 」 の用 語 法 に 従 って 収 益 を 収 入 と表 記 して い る。 な お,当 該 準 則 の 中 で 「投 資 収 益 」 とい う用 語 が あ り,収 益 とは 純 額 の 積 極 的 差 額 概 念 を 意 味 して い る。 ⑩. 中 国 の 資 産 評 価 で 特 徴 を な して い る こ とは,期 末 評 価 にお い て 資 産 の 評 価 増 を 認 め て い る点 で あ る。 そ れ は,「 盤 盈(panying)」 と呼 ば れ る。 「盤 盈 」 とは,例 え ば,実 際 の 棚 卸 高 が 帳 簿 残 高 よ り多 い と き,そ の 原 因 を 調 査 して も不 明 の 場 合 は 「盤 盈 」 と して 処 理 す る。 「小 企 業 会 計 準 則 」 の 第 二 章 「流 動 資 産 」 で は次 の よ うな 規 定 が あ る。 「第 十 二 条 因 余 剰 棚 卸 資産 の 原 価 は,同 類 あ るい は類 似 す る棚 卸 資 産 の 市 場 価 格 あ る いは 見 積 も り に よ る評 価 額 に よ って 確 定 しな けれ ば な ら な い 。」 また,固 定 資 産 につ い て も同 様 の 規 定 が あ る。 「第 二 十 八 条 国 余 剰 固 定 資 産 の 原 価 につ い て は,同 類 あ る いは 類 似 す る固 定 資 産 の 市 場 価 格 か ら固 定 資 産 の 使 用 程 度 に よ って 見 積 減 価 償 却 費 を 控 除 した後 の残 高 に よ って,認 識 しな け れ ば な らな い。」 指 摘 す る ま で もな く,資 産 の 下 向 的 評 価 に関 す る規 定 が 流 動 資 産 と固 定 資 産 に つ い て 見 られ る(小 企 業 会 計 準 則 第 十 五 条,第 三 十 四 条)。 資 産 の 下 向 的 評 価 の こ とを 「盤 蔚(pankui)」 とい う。. 139(139).
(8) 第60巻. 第54条. 払込資本金. 第55条. 資本剰余金. 第56条. 利益剰余金. 第57条. 未処分利益. 第1号. 第5章. 第58条. 収入. 収 入 とは,小 企 業 の 日常 活 動 か ら生 じ,所 有 者 持 分 の 増 加 を もた らす,ま た,所 有 者 が 拠 出 した 資 本 と関 係 な い 経 済 的 便 益 の 総 流 入 を い い,通 常 は商 品 の 販 売 に よ る収 入 及 び 役 務 に よ る収 入 が これ に 属 す る。. 第58∼61条. 商 品 の 販 売 に よ る収 入. 第62∼63条. 役 務 に よ る収 入. 第64条. 商 品 の 販 売 と役 務 の 提 供 が 同 時 に生 じ る場 合 第6章. 第65∼66条. 費用. 費 用 とは,小 企 業 の 日常 生 活 か ら生 じ,所 有 者 持 分 の 減 少 を もた らす,所 有 者 に 利 益 の 分 配 と関 係 な い経 済 的 便 益 の 総 流 出を い う。 小 企 業 の 費 用 には,営 業 費 用,営 業 税 金 等,販 売 費 用,管 理 費 用,財 務 費 用 な どが 含 ま れ る。. 第7章. 利益及び利益分配. 第67条. 利 益 とは,小 企 業 の 一 定 期 間 にお け る経 営 成 績 で あ り,営 業 利 益,利 益 総 額 及 び 当 期 純 利 益 が これ に属 す る。. 第68条. 営業外収入. 第69条. 政府補助. 第70条. 営 業 外 支 出(ID. 第71条. 所得税費用. 第72条. 配当 第8章. 第73∼78条. 外貨業務. 小 企 業 の 外 貨 業 務 は,外 貨 建 取 引 及 び外 貨 建 財 務 諸 表 の 換 算 か ら構 成 され る。. 第9章. 財務報告. 第79条. 小 企 業 の 財 務 報 告 書 は,少 な くと も貸 借 対 照 表,損 益 計 算 書,キ 算 書,注 記 の 四 つ の 書 類 を 含 まな けれ ば な らな い 。. 第80∼85条. 貸 借 対 照 表,損. 第86∼88条. 注記及びその他. 第89∼90条. 出 典:中 国 財 政 部(2011)の. 益 計 算 書,キ. ャ ッ シ ュ ・フ ロー 計. ャ ッ シ ュ ・フ ロー 計 算 書. 第10章. 附則. 内 容 か ら ま とめ た もの で あ る。. qD中 国 の 「支 出」 は 「費 用 」 を意 味 す る。 本 論 文 で は, 「 小 企 業 会 計 準 則 」 の用 語 法 に 従 って 費 用 を 支 出 と表 記 して い る。. 140(140).
(9) 中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の 策 定 の あ り方 に関 す る研 究(朱). 皿. 1.中. 中小企業会計基準 の国際的比較分析. 小 企 業 版IFRS. 2009年7月. にIASBは,簡. 素 化 され た 会 計 基準 と して 「中小 企 業 版IFRS」. を公 表 した。. 当該 基 準 で規 定 さ れ る 中 小 企 業 と は,「 公 的説 明責 任 の な い 企 業」,か つ,「 外 部 の 財 務 諸 表 利 用 者 に 一 般 目的 財 務 諸 表 を 公 表 す る企 業 」 で あ る。 ま た,当 該 基 準 書 は,「 完 全 版 IFRS」. をベ ー ス に作 成 され て い るが,独 立 した基 準 体 系 で あ り,「 完 全版IFRS」. に比 べ. れ ば,典 型 的 な 中小 企 業 との 関 連 性 が 低 い項 目を 削 除 し,簡 易 な 選 択 肢 の み を 提 示 し,認 識 及 び測 定 の 簡 素 化 な どが 行 わ れ て い る。特 に,「 中 小 企 業 版IFRS」. は以 下 の 役 割 を 果 た. す こ と を 目的 と して い る⑫。 ①. 中小 企 業 の 財 務 諸 表 利 用 者 の た め に比 較 可 能 性 を 改 善 す る こ と. ②. 中小 企 業 の 財 務 諸 表 の 全 体 的 な 信 頼 性 を 高 め る こ と. ③. 国 内べ 一 スの 基 準 の 維 持 に伴 う相 当の コ ス トを 削 減 す る こ と. 「中小 企 業 版IFRS・. 結 論 の根 拠 」 に は 「中小 企 業 版IFRS」. が 設 定 され る理 由 は,次 の. よ う に述 べ られ て い る。 国 際 的 な 財 務 報 告 基 準 は,そ れ が 首 尾 一 貫 して 適 用 され れ ば,財 務 情 報 の 比 較 可 能 性 を 高 め る。 会 計 処 理 の 相 違 は,投 資 者,融 資 者 な どが 行 う比 較 を 曖 昧 にす る可 能 性 が あ る。 高 品 質 で 比 較 可 能 な 財 務 情 報 を 提 供 す る こ と に よ り,高 品 質 の 国 際 的 な 財 務 報 告 基 準 は,資 本 の 配 分 と価 格 設 定 の 効 率 性 を 高 め る。 これ は,負 債 また は資 本 の 提 供 者 だ けで な く,資 本 を 求 め る企 業 に も便 益 とな る。 つ ま り,資 本 コ ス トに影 響 す る コ ン プ ライ ア ンス ・コス ト及 び不 確 実 性 が除 去 され るか らで あ る。ま た,国 際 的 な基 準 は, 監 査 の 質 の 首 尾一 貫 性 を高 め,教 育 及 び訓練 を促 進 す る。国 際 的 な 財務 報 告 基 準 の便 益 は, 資 本 市 場 で 自 己の 証 券 が 取 引 され る企 業 に限 られ る もの で はな い(13)。 IASBの. 判 断 に よれ ば,中 小 企 業 及 び 中小 企 業 の財 務 諸 表 を利 用 す る人 々 は,1組 の 共 通. の 会 計 基 準 か ら便 益 を 受 け る こ とが で き る。 あ る国 で 作 成 され た 中小 企 業 の 財 務 諸 表 は, 以 下 の理 由 に よ り,異 な る国 の 間 で 比 較 可 能 で あ る こ とが 必 要 と され る と述 べ られ て い る⑭。 ①. ⑰. 金 融 機 関 は国 境 を 越 え て 貸 付 を 行 って お り,多 国 間 で 営 業 を して い る。 ほ とん どの. 「中 小 企 業 版IFRS」 の 役 割 は,ASBJの で あ る 。https://www.asb.or.jp/asb/asb. ⑱ASBJ(2009b)「 ω. 同 上 資 料,18頁. 関 連 ウ ェ ブ ペ ー ジ か ら 引 用 し た 。URLは,次. _j/iasb/standards/iasO90709/comments20090709.jsp 結 論 の 根 拠 ・中 小 企 業 向 け 国 際 財 務 報 告 基 準 」,18頁 。. 。. 141(141). の通 り.
(10) 第60巻. 第1号. 国 に お いて 中小 企 業 の 半 数 以 上(非 常 に小 規 模 な 企 業 を含 む)が 銀 行 融 資 を 受 けて い る。 銀 行 は,財 務 諸 表 に基 づ いて,貸 付 の 決 定 及 び契 約 条 件,金 利 を 決 定 す る。 ②. 売 手 は,財 貨 ま た はサ ー ビス を掛 売 りす る前 に,他 国 の 買 手 の 財 務 健 全 性 を 評 価 し た い と考 え る。. ③. 信 用 格 付 機 関 は,国 境 を越 え た画 一 的 な 格 付 の 策 定 を試 み て い る。 同様 に,多 国 間 で 営 業 す る銀 行 及 び その 他 の 機 関 は,信 用 格 付 機 関 と類 似 の 方 法 で 格 付 の 策 定 を す る こ とが 多 い。 報 告 され る財 務 情 報 は,格 付 プ ロセ ス に お いて 重 要 で あ る。. ④. 多 くの 中小 企 業 は,海 外 の 仕 入 先 を 有 して お り,持 続 可 能 な 長 期 の 事 業 関 係 の 見 込 み の 評 価 を,仕 入 先 の 財 務 諸 表 に基 づ いて 行 って い る。. ⑤. ベ ンチ ャ ー ・キ ャ ピタル は,国 境 を 越 え て 中小 企 業 に資 金 を 提 供 して い る。. ⑥. 多 くの 中小 企 業 に は,企 業 の 日常 の 経 営 に関 与 しな い外 部 の 投 資 家 が い る。 一 般 目 的 財 務 諸 表 の た めの 国 際 的 な 会 計 基 準 及 び その 結 果 と して 生 じる比 較 可 能 性 は,こ れ らの 外 部 の 投 資 家 が 企 業 と異 な る国 に い る場 合,及. び他 の 中小 企 業 に対 す る持 分 を 有. して い る場 合 に は,特 に重 要 で あ る。 「中小 企 業 版IFRS」. は 全35章 か ら構 成 され て い るが,こ の 中 の 第2章 は 「概 念 及 び全 般. 的 な原 則 」 を タ イ トル と して,本 4」 は,「 中小 企 業 版IFRS」. 基 準 の概 念 フ レー ム ワー クに 該 当 す る部 分 で あ る。 「表. の35章 の 内容 を 示 した もの で あ る。. 表4「. 中小 企 業 版IFRS」. の構 成 項 目. 第1章. 中小企業. 第15章. ジ ョイ ン ト ・ベ ン チ ャ ー に 対 す る 投 資. 第2章. 概念及 び全般的な原則. 第16章. 投資不動産. 第3章. 財務諸表の表示. 第17章. 有形固定資産. 第4章. 財務状態計算書. 第18章. のれん以外の無形資産. 第5章. 包括利益計算書及び損益計算書. 第19章. 企業結合及びのれん. 第6章. 持分変動計算書並び に損益及び剰余金 計算書. 第20章. 第7章. キ ャ ッシ ュ ・フ ロー 計 算 書. 第21章. 引当金及 び偶発事象. 第8章. 財務諸表の注記. 第22章. 負債及び資本. 第9章. 連結及 び個別財務諸表. 第23章. 収益. 第10章. 会 計 方 針,見 積 及 び 誤 謬. 第24章. 政府補助金. 第11章. 基礎的金融商品. 第25章. 借入費用. 第12章. そ の 他 の 金 融 商 品 に 関 す る事 項. 第26章. 株式報酬. 第13章. 棚卸資産. 第27章. 資産の減損. 第14章. 関連会社 に対す る投資. 第28章. 従業員給付. 142(142). リー ス.
(11) 中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の 策 定 の あ り方 に関 す る研 究(朱). 第29章. 法人所得税. 第33章. 関連当事者についての開示. 第30章. 外貨換算. 第34章. 専門的活動. 第31章. 超イ ンフレ. 第35章. 「SME基. 第32章. 後発事象. 出 典:ASBJ(2009a)に. 準 」 へ の移 行. よ り作成 さ れ た もの で あ る。. 2.「 中小 企 業 版IFRS」 こ こで は,IASBが. と 「小 企 業 会 計 準 則」 と の比 較 分 析. 公 表 した 「中小 企 業 版IFRS」. と 中国 の 「小 企 業 会 計 準 則 」 との 比. 較 分 析 を通 じて 両 基 準 の 差 異 を 闘 明 化 した い。 両 基 準 は 「表5」. に示 した よ う に い くつ か. の 差 異 が 存 在 して い る。. 表5「. 中小 企 業 版IFRS」. と 「 小 企 業 会 計 準 則 」 と の比 較. 小企業会計準則. 中小 企 業 版IFRS 金 融 機 関,供 給 業 者,格 付 機 関,顧 客,所 有 者 以 外 の 株 主. 徴 税 当 局,銀 行 等. 適用対象の画定基準. 質的基準. 質的基準 と量的基準の組み合せ. 概 念 フ レー ム ワ ー ク. 「完 全版IFRS」 か ら基 本 コ ンセ プ ト を 抽 出 し,そ れ が 概 念 フ レー ム ワー クを 形 作 る. 含 まれ て い な い. 財務諸表利用者. 「完 全版IFRS」 て い るが,1株. 内. 容. を ベ ー ス に作 成 され 当 た り利 益,中 間 財. ①. 務 報 告,セ グ メ ン ト報 告,売 却 目的 で保 有 す る非 流 動 資産 が 削 除 され た 。 ②. ・当 初 測 定:公 正 価 値 等 の 他 の 測 定 基 礎 に よ る当 初 認 識 を 要 求 して い る場 合 を 除 き,取 得 原 価 で 測 定 さ. 測. 定. れる ・事 後 測 定:測 定 対 象 に よ り,様 々 な 測定 属 性 が 利用 され る(例 え ば,. 財 務 諸 表 の構 成 要 素 で あ る資 産, 負 債,持 分,収 益 及 び 費 用 に 沿 っ た 形 で,各 構 成 要 素 の 会 計 処 理 を 示す。 企 業 結 合,リ ー ス 取 引,連 結 財 務 諸 表,関 連 当 事 者 開 示 な どの 項 目が 含 ま れ て い な い 。. 原 則 と して 取 得 原 価 (な お,余 剰 棚 卸 資 産 と余 剰 固定 資 産 の 評 価 は,市 場 価 格 も し くは 見 積 も りに よ る評 価 額 に よ って 行 われ る。 【注(1① 参 照 】). 取 得 原 価,公 正 価 値,償 却 原 価) ① ②. 財務諸表の開示 ③ ④ ⑤. 財政状態計算書 以 下 の いず れ か ・単 一 の 包 括 利 益 計 算 書 ・一 つ の 損 益 計 算 書 及 び 一 つ の 包. ① ② ③ ④. 貸借対照表 損益計算書 キ ャ ッ シ ュ ・フ ロー 計 算 書 注記. 括利益計算書 持分変動計算書 キ ャ ッシ ュ ・フ ロー 計 算 書 財務諸表注記. (1)適 用 対 象 の 画 定 基 準 国 や 時 代 が 異 な る と,中 小 企 業 の定 義 も相 違 す る。IASBの 143(143). 「中小 企 業 版IFRS」. は適.
(12) 第60巻. 第1号. 用 対 象 を 「公 的説 明 責 任 の な い企 業 」,か つ 「外 部 の財 務 諸 表 利 用 者 に一 般 目的財 務 諸 表 を公 表 す る企 業 」 と規 定 し,売 上 高,総 資 産,従 業 員 数 な どの 企 業 規 模 に関 す る言 及 は一 切 さ れ て い な い。 す な わ ち,適 用 対 象 の 画 定 は,「 量 的 基 準 」 で は な く,「 質 的基 準 」 に よ って 決 定 され て い る⑮。 そ の理 由 は,IASBが,IFRSは120以. 上 の 国 で 使 用 され て い る. こ と に留 意 し,そ れ らの 国 の す べ て に お いて 適 用 可 能 で 長 期 にわ た り有 効 とな る よ うな 規 模 につ いて の 数 値 の 判 定 の 開 発 は,実 行 可 能 で はな い と い う結 論 を 下 した た めで あ る。 こ れ は基 準 設 定 に対 す るIASBの. 全 般 的 な原 則 主 義 の ア プ ロ ー チ と整 合 的 で あ る(⑥ 。. それ に対 して,中 国 の 「小 企 業 会 計 準 則 」 は,小 企 業 を 「企 業 の 株 式 あ る い は債 券 が 公 開 市 場 で 取 引 され て い る小 企 業 」,「金 融 機 関 あ る い は その 他 の 金 融 の 性 質 を 有 して い る小 企 業 」 及 び 「企 業 集 団 の 親 会 社 ま た は子 会 社 」 を 除 い て,「 中 小 企 業 分 類 標 準 規 定」 に規 定 さ れ た小 企 業 の 基 準 に合 致 す る企 業 と規 定 した 。 した が って,「 小 企 業 会 計 準 則 」 は, 原 則 主 義 に基 づ く 「中小 企 業 版IFRS」. とは異 な り,「量 的基 準 」 と 「質 的基 準 」 の 組 み 合. せ に よ り,適 用 対 象 を設 定 して い るが,「 質 的 基 準 」 の み考 え る と,両 基 準 の適 用 対 象 は ほ ぼ 同 じ意 味 で はな いか と思 わ れ る。 ま た,「 中小 企 業 版IFRS」 「完 全 版IFRS」. は親 会 社 が 「完 全 版IFRS」. を利 用 して い る子 会 社,ま た は. を利 用 して い る連 結 企 業 集 団 の一 部 で あ る子 会 社 に対 して,当 該 子 会 社 が. 公 的 な 説 明 責 任 を 有 して いな い とす れ ば,子 会 社 自身 の財 務 諸 表 に 「中小 企 業 版IFRS」 を利 用 す る こ とが 認 め られ るの に対 して,中 国 に お いて 企 業 集 団 の 子 会 社 が 適 用 対 象 か ら 外 れ る と い うの も特 徴 で あ る と いえ る。 (2)内. 容. 「中小 企 業 版IFRS」. は,「 完 全 版IFRS」. か ら基 本 コ ンセ プ トを 抽 出 し,そ れ に基 づ い. て 概 念 フ レー ム ワー クが 形 成 され て い る。 しか し,「 小 企 業 会 計 準 則 」 は そ の よ うな 概 念 フ レー ム ワ ー クを 持 たな い。 両 基 準 の 分 量 か らみ る と,IASBの. 「中小 企 業 版IFRS」. は 中国 の 「小 企 業 会 計 準 則 」. よ り広 範 囲 で あ る こ とが 分 か っ た。 中国 の もの は,総 則 に始 ま り,財 務 諸 表 の 構 成 要 素 に 沿 っ た形 で,各 構 成 要 素 の 会 計 処 理 を 示 した もの で あ る。 企 業 結 合,リ ー ス取 引,連 結 財 務 諸 表,関 連 当事 者 開示 な どの特 殊 業 種 に 関す る基 準 は 「中小 企 業 版IFRS」. に含 まれ て. い る が,中 国 で は小 企 業 に と って 必 要 性 が 乏 し く,「 小 企 業 会 計 準 則 」 の構 成 に 組 み 込 ま. ⑮. 河 峙 照 行(2010)「 頁。 (6)ASBJ(2009b)前. 各 国 の 中 小 企 業 版IFRSの 掲 資 料,26頁. 。. 導 入 実 態 と課 題 」 『国 際会 計 研 究 学 会 年 報 』,221. 144(144).
(13) 中小企業向 け会計基準の策定のあ り方 に関す る研究(朱) れ て いな い。 な お,「 中 小 企 業 版IFRS」 え ば,1株. は,中 小企 業 に 目的適 合 性 を 有 さな い 問題 が 省 略 され た。 例. 当 た り利 益,中 間 財 務 報 告,セ. グ メ ン ト報 告 及 び売 却 目的 で 保 有 す る非 流 動 資. 産 が これ で あ る⑰。 ま た,資 産 の 減 損 につ いて,中 国 の 「小 企 業 会 計 準 則 」 に お いて,資 産 の 減 損 引 当 金 の 計 上 が 削 除 され,減 損 処 理 は 「企 業 所 得 税 法 」 に よ って,実 際 に発 生 す る場 合 の み 行 う。 その 理 由 は,小 企 業 の 規 模 を 考 え る上 に,資 産 の 価 値 が 小 さ いた め,資 産 の 減 損 は財 務 諸 表 に及 ぼす 影 響 が 小 さ いか らで あ る。 国 際 的 な視 点 か らみ る と,IASBが 企 業 版IFRS」 (3)測. 公 表 した 「中小. を含 む,多 数 の 国家 及 び地 域 は資 産 の減 損 処 理 が必 要 で あ る と指 摘 した(18)。. 定. 会 計 上 の測 定 に つ い て,「 中小 企 業 版IFRS」. で利 用 され る共 通 の測 定 基 礎 は,取. 得原. 価,償 却 原 価 及 び公 正 価 値 の 三 つ で あ る。 償 却 原 価 は,取 得 原 価 か ら導 き 出 され る。 償 却 原 価 は,資 産 ま た は負 債 の 現 在 の キ ャ ッシ ュ ・フ ロー で あ り,当 初 認 識 時 と当 初 認 識 後 の キ ャ ッシ ュ ・フ ロー の 現 在 価 値 を 求 め る た め に は,貨 幣 の 時 間 的 価 値 が 実 効 金 利 法 を 適 用 す る こ と に よ って 修 正 され る。 例 え ば,当 初 認 識 時 に,取 引 価 格 で 認 識 され た 基 本 的 金 融 資 産 は,償 却 原 価 が 測 定 基 礎 の 初 期 値 と して 当初 認 識 後 の 測 定 に用 い られ る⑲。 それ に対 して,中 国 で は,余 剰 棚 卸 資 産 と余 剰 固 定 資 産 の 評 価 に関 す る測 定 を 除 いて, 中小 企 業 に お け るす べ て の 会 計 処 理 を 取 得 原 価 で 測 定 す る こ と に限 定 され て い る。 (4)財 務 諸 表 の 開 示 財 務 諸 表 の 開 示 につ いて は,「 中 小 企 業 版IFRS」. で は,完 全 な一 組 の財 務 諸 表 は,財 政. 状 態 計 算 書,単 一 の 包 括 利 益 計 算 書 ま た は一 つ の 損 益 計 算 書 及 び一 つ の 包 括 利 益 計 算 書, 持 分 変 動 計 算 書,キ. ャ ッシ ュ ・フ ロー 計 算 書 及 び財 務 諸 表 注 記 か ら構 成 され る。 当 期 の 持. 分 の 変 動 が,純 損 益,配. 当金,誤 謬 及 び会 計 方 針 の 変 更 に しか 関 係 しな い場 合 に は,利 益. 剰 余 金 計 算 書 が 包 括 利 益 計 算 書 及 び持 分 変 動 計 算 書 に置 き換 え られ る⑳。 中国 で は,少 な くと も貸 借 対 照 表,損 益 計 算 書,キ. ャ ッシ ュ ・フ ロー 計 算 書 及 び注 記 を. 作 成 しな けれ ばな らな い。 持 分 変 動 計 算 書 の 作 成 は要 求 され て いな い⑫1)。. ⑰. 中 小 企 業 庁(2010)「. (18)聾 麗 華(2011)「 年 第2期,155頁. 会 計 基 準 の 国 際 化 を 巡 る 現 状 に つ い て 」,20頁. 。. 基 干 国 際 比 較 視 角 探 析 『小 企 業 会 計 準 則 』 征 求 意 見 稿 」 『黒 龍 江 対 外 経 貿 」2011 。. ⑲Mackenzie,Bruce(2011)ApplyingIFRSforSMEs,Wiley(河 ルIFRS』 中 央 経 済 社),19頁 。 ⑦①. 同 上 書,48-49頁. ⑳. 中 国 財 政 部(2011)前. 。 掲 資 料,28頁. 。. 145(145). 崎 照 行(2011)監. 訳. 「シ ン プ.
(14) 第60巻. 第1号. (5)比 較 分 析 の 小 括 上 記 の こ とか ら,IASB及. び 中国 に お け る 中小 企 業 会 計 基 準 はか な り大 きな 差 異 が 存 在. して い る こ とが 分 か っ た。 中国 で は,企 業 会 計 準 則 とIFRSと. の コ ンバ ー ジ ェ ン スが 積 極. 的 に推 進 され て い るの に対 して,な ぜ 中 国 は 「中 小企 業版IFRS」. を導 入 せ ず,「 小 企 業 会. 計 準 則 」 を作 成 す る のか 。 そ れ は,中 国 は,「 小 企 業 会 計 準 則 」 を 作 成 す る際 に,コ ス ト ・ ベ ネ フ ィ ッ トを 考 慮 した か ら で あ る⑳。 中 国 に お け る 中 小 企 業 に と って,「 中小 企 業 版 IFRS」. に含 ま れ る企 業 結 合,リ. ー ス取 引,連 結 財 務 諸 表,関 連 当事 者 開示 な どの基 準 は,. 必 要 性 が 乏 し く,ま た,高 度 な 会 計 的 知 識 を 有 す る従 業 員 の 雇 用 や 教 育 が 中小 企 業 に と っ て は過 重 の コ ス ト負 担 にな る こ とが 予 想 され る。 その よ うな 状 況 を 踏 まえ,中 国 財 政 部 か らその 理 由が 公 表 され て い る もの で はな いが, 中国 財 政 部 は 「中小 企 業 版IFRS」 計 準則 」 とIFRSの. を直 接 に採 用 す る必 要 は な い と判 断 し,中 国 「企 業 会. コ ンバ ー ジ ェ ンス を進 展 させ る とい う方 針 の 中 で,「 中小 企業 版IFRS」. へ の 対 応 を注 意 しつ つ も,中 国 に お け る小 企 業 の 状 況 を 考 慮 して 当 該 小 企 業 に適 用 で き る 会 計 基 準 を策 定 した もの と考 え られ る。. 3.中. 小企業会計基準の国際的動向. 2009年 に 「中小 企 業 版IFRS」. が 公 表 され た こ とを受 けて,各 国 で は,こ の 会 計 基 準 を. 国 内化 す べ きか ど うか が 議 論 され て き た。IASBに 年9月 現 在,80超. よれ ば,「 中小 企 業 版IFRS」. は,2012. の 国 や 地 域 が,そ の 採 用 ま た は採 用 計 画 を 表 明 して い る と指 摘 され て い. る㈱。 こ こで は,中 国 以 外 の 諸 外 国 に お い て 中小 企 業 向 け会 計 基 準 の設 定 が どの よ う に行 わ れ て い るの か につ いて,国 際 会 計 研 究 学 会 『研 究 グル ー プ報 告 』(最 終 報 告)⑳ に基 づ き 検 討 し,中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の設 定 の 特 徴 を 明 らか に した い。 「表6」 は,諸 いて 企 業 規 模 に よ って 適 用 され る会 計 基 準 の 階 層 構 造,及. び各 階 層 の 関 連 性 な ら び に各 国. に お いて 公 表 され た 中小 企 業 会 計 基 準 と 「中 小企 業版IFRS」 指 摘 す る まで もな く,IASBは,中 (2)万. 紅 波,劉. 春 燕(2010)「. 示 」 『財 会 月 刊 』2010年. 外 国 にお. の 関係 を示 した もの で あ る。. 小 企 業 の定 義 を規 模 基 準(資 本 金 基 準,売 上 高 基 準,. 我 国 中 小 企 業 会 計 準 則 制 定 問 題 探 討 一 基 干IFRSFORSMEs的. 第17期,88頁. 啓. 。. (23)IASB(2012)IFRSforSMEsFactSheet,IFRSFoundation,p.1. ま た,南 ア フ リ カ は 「中 小 企 業 版IFRS」. を い ち 早 く 採 用 し て お り,同. 度 を 解 説 し たApplyingIFRSforSMEs(Mackenzie,etal.2011)は,『. 国の中小企業会計制. シ ン プ ルIFRS」(河. 崎. 照 行 監 訳2011)と い う 書 名 で 日本 語 版 が 出 版 さ れ て い る 。 同 書 は,上 場大企業 向けの完全版 IFRSを 簡 素 化 した も の と は い え,日 本 の 中 小 会 計 要 領 と 比 較 す る と相 対 的 に 高 度 な 内 容 と な っ て い る。 ⑳. 国 際 会 計 研 究 学 会(2011)『 研 究 グ ル ー プ 報 告(最. 各 国 の 中 小 企 業 版IFRSの. 終 報 告)。. 146(146). 導 入 実 態 と課 題 』 国 際会 計 研 究 学 会 ・.
(15) 中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の 策 定 の あ り方 に関 す る研 究(朱). 従 業 員 数 基 準 等)に 基 づ い て 行 う こ とが 困 難 で あ る こ とか ら㈱,中 小 企 業 を 公 的説 明 責 任 が な く,か つ,外 部 利 用 者 に一 般 目的 財 務 諸 表 を 公 表 す る企 業 で あ る と定 義 して い る こ と は周 知 の と こ ろ で あ る⑳。 しか しな が ら,イ ギ リス で は規 模 別 の会 計 基 準 の 適 用 が 制 度 化 され て い る た め,そ. れ に合 わ せ て 「表6」 の よ う な 区分 を行 って い る。 した が って,「 表. 6」 に お け る大 規 模,中 規 模,小 規 模 の 区 分 は適 用 され る会 計 基 準 の 違 いを 示 す た めの 相 対 的 な 区 分 と して 用 いて い る。 会 計 基 準 を企 業 規 模 に基 づ い て 階層 別 に適 用 す る こ とに 関 連 して,「 表6」 び 日本 以 外 の 国 々 に お いて,「 中小 企 業 版IFRS」 て い る イ ギ リ ス,ア. メ リ カ,オ. では中国及. を ア ドプ シ ョンせ ず に独 自の 対 応 を 行 っ. ー ス トラ リ ア を 取 り上 げ て い る ⑳。 そ の 特 徴 を 摘 記 す れ ば,. 次 の よ う にな る。. ①. イ ギ リス は,中 規 模 企 業 に対 して は 「中規 模 企 業 に対 す る財 務 報 告 基 準(Financial ReportingStandardsforMedium-sizedEntities:FRSME)が. 適 用 さ れ,小. 規模. 企 業 に 対 し て は 「小 規 模 企 業 に 対 す る 財 務 報 告 基 準(FinancialReportingStandards forSmallerEntities:FRSSE)が. 適 用 さ れ,会. 計 基 準 は 規 模 別 に3層. 構 造 とな って. い る。. ②. ア メ リ カ で は,中. 小 企 業 に 対 して も原 則U.S.GAAP⑫. 向 けの 任意 の会 計 基 準 と して 「GAAP適. 金 基 準,修. 正 現 金 基 準,税. る ⑳。 な お,「 表6」. 小企業. 用 領 域 外 の包 括 的会 計 処 理 基 準(othercom一. prehensivebasesofaccounting:OCBOA)」 は,現. ∂が 適 用 さ れ る が,中. が 存 在 し て い る(29)。 当該 会 計 処理 基 準 法 基 準,そ. で は,OCBOAを. の 他 法 定 基 準 等 の 適 用 を 認 め る もの で あ. 明 示 せ ず,2012年. に ア メ リカ公 認 会 計 士 協 会 が. 飼IASB(2009),para。P9-P12. (6)Ibad.,para.1.2. ⑳. 国 際 会 計 研 究 学 会 の 研 究 グ ル ー プ 報 告 で は,欧. 米 諸 国:EU,ア. メ リ カ,カ. ナ ダ,イ. ギ リ ス,. ドィ ッ,フ ラ ン ス,ス ウ ェ ー デ ン,ア ジ ア ・オ セ ア ニ ア 諸 国:中 国,韓 国,台 湾,マ レ ー シ ア, フ ィ リ ピ ン,イ ン ドネ シ ア,シ ン ガ ポ ー ル,オ ー ス ト ラ リア の14力 国 ・1地 域 の 会 計 制 度 が 取 り 上 げ られ て い る。 (8)U.S.GAAP(GenerallyAcceptedAccountingPrinciples)は,権 関 に よ っ て 設 定 さ れ た 会 計 ル ー ル で あ り,長. 威 の あ る会 計 基 準 設 定 機 年 に わ た り会 計 実 務 にお い て 培 わ れ て きた 慣 習 とい. う 二 つ の 意 味 が あ る 。 北 イ リ ノ イ 大 学 のD.E.キ. エ ソ 教 授 ら は,U.S.GAAPを. 権威 の高い順に. 次 の 四 つ の グ ル ー プ に 分 類 し て い る 。 も っ と も 権 威 の 高 い グ ル ー プ に はFASB基 指 針,APB意 AICPA監. 見 書,AICPA会 査 ・会 計 指 針,AICPA参. 門 委 員 会 に よ る 指 針,AICPA会 AICPA会 計 解 釈 指 針,FASB実. 計 研 究 公 報 が 含 ま れ る 。 第2グ 考 意 見 書 が 含 ま れ る 。 第3グ. 田 公 司(2011)「. 術 公 報, 急問題専. 計 基 準 執 行 委 員 会 実 務 指 針 が 含 ま れ る 。 第4グ ルー プには 施 指 針,広 く普 及 し た 産 業 実 務 が 含 ま れ る 。 な お,財 務会計概. 念 ス テ イ トメ ン トは 会 計 基 準 を 設 定 す る 際 の ベ ー ス と な る も の で あ り,GAAPに さ れ る(安 藤 他(2007)「 会 計 学 大 辞 典(第5版)」,125頁)。 (29)池. 準書及 び解釈. ル ー プ に はFASB技 ル ー プ に はFASB緊. は含 まれ な い と. ア メ リ カ の 中 小 会 社 会 計 」 国 際 会 計 研 究 学 会 ・研 究 グ ル ー プ 報 告(最. 告)『 各 国 の 中 小 企 業 版IFRSの. 導 入 実 態 と 課 題 』 所 収,116頁. 。. (30)AICPA(2012)ProposedFinancialReportingFrameworkforSmall-andMedium-SizedEntities, ExposureDraft,preparedbytheAICPAFRFforSMEsTaskForce,p.4.. 147(147). 終報.
(16) 第60巻. 第1号. 討 議 資 料 と して 公 表 し た 中 小 企 業 の 財 務 報 告 フ レー ム ワ ー ク(31)を掲 記 して い る 。 す な. わ ち,ア メ リカ に お いて も任 意 の 適 用 で は あ るが,独. 自の 中小 企 業 会 計 基 準 を 設 定 す. る途 を選 ん で い る こ とが 理 解 で き る。 ③. オ ー ス トラ リ ア は,2005年. か らIFRSを. 会 計 基 準 審 議 会 は,「 中 小 企 業 版IFRS」. ア ドプ シ ョ ン して い る が,オ. ー ス トラ リ ア. を そ の ま ま 採 用 す る こ と は せ ず,オ. ー ス トラ. リア会 計 基 準 の 開 示 規 定 を 簡 素 化 した会 計 基 準 の 適 用 を 行 って お り,認 識 ・測 定 に関 す る会 計 基 準 は大 規 模 企 業 と区 別 な く適 用 され る。 以 上,要 約 す る な らば,中 小 企 業 向 け 会 計 基 準 の 策定 は,「 中小 企 業版IFRS」. を ア ドブ. シ ョ ンす る場 合 を 除 いて,大 規 模 企 業 向 け会 計 基 準 を 簡 素 化 す るパ ター ン,中 小 企 業 の 属 性 を考 慮 して 特 に会 計 基 準 を 策 定 す るパ タ ー ン,開 示 規 定 の み を 簡 素 化 す るパ ター ンの3 つ に大 別 す る こ とが で き る。 その よ うな パ タ ー ンは,会 計 基 準 を 独 自 に開 発 す る組 織 を 有 して い る 国 に お い て 行 わ れ て い る こ と が 理 解 で き,「 中 小 企 業 版IFRS」. を ア ドプ シ ョ ン し. て い る国 や 地 域 を 見 る と,ほ とん どが 発 展 途 上 国 で あ る勧。. 表6各. 国 にお ける 会 計 基 準 の 階 層 別 適 用. 会計基準の階層別適用 各階層の関連性及び中小企業会計基準 との 関係. 大規模企業向 け 中規模企業向 け 小規模企業向 け と 「中 小 企 業 版IFRS」 会計基準 会計基準 会計基準. 「中小 企 業版IFRS」 は 「完 全版IFRS」 の 簡 略 版 とな って い る。. 「 完 全 版IFRS」. 「中小 企 業 版IFRS」. 「 完 全 版IFRS」 また は. 「中小 企 業 会 計 指 針 」 また は. IFRS. 日本. 「企 業 会 計 基 準 」. 準 」 の 簡 略 版 と な って お り,「 中小 基 本 要 領 」はIFRSの 影 響 を 遮 断 して い る。. 「中 小 基 本 要 領 」. 「小 企 業 会 計 準 則 」 は 「企 業 会 計 準 則 」 と同 じ基 本準 則(概 念 フ レー ム ワー ク) に 準 拠 す る が,「 企 業 会 計 準 則 」 よ り. 「小 企 業 会 計 準. 「企 業 会 計 準 則 」※. 中国. 「中 小 企 業 会 計 指 針 」 は 「企 業 会 計 基. 則 」※. 簡 便 な 会 計 処 理 を 行 って い る。. (31)「 中 小 企 業 向 け 会 計 基 準 」 に つ い て,FASB及 が 設 置 し たPrivateCompanyCouncilに れ て い る が,本. 論 文 で は,AICPAが. (FRFforSMEs)を. びFAF(FinancialAccountingFoundation) お い てU.S.GAAPの. 簡 素 化 を検 討 す る こ とが 決 定 さ. 公 表 し た 「中 小 企 業 の 財 務 報 告 フ レ ー ム ワ ー ク(公. forSMEs」. ア メ リ カ の 中 小 企 業 向 け 会 計 基 準 と し て 取 り上 げ て い る 。 な お,こ は 最 終 決 定 さ れ て い る も の で は な い 。 「FRFforSMEs」. 念 フ レ ー ム ワ ー ク は,カ ク ・セ ク シ ョ ン1000)を. カ ナ ダ の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク に つ い て は,浦 浦 崎(1989)に が 質 的 特 性 の1つ. よ れ ば,カ. 崎(1989)が. ン ドブ ッ. に 明 記 さ れ て い る 。 な お,. 詳 細 に 論 じて い るの で 参 照 され た い 。. ナ ダ の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク の 特 徴 は そ の 質 的 特 性 に お い て,保. 守主義. と して 位 置 づ け られ て い る こ とで あ る。. (32)「 中 小 企 業 版IFRS」 SMEsFactSheet」. 開 草 案 の3頁. の 「FRF. にお い て 提 示 され て い る概. ナ ダ 勅 許 会 計 士 協 会 が 公 表 し た 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク(CICAハ 再 利 用 した も の で あ る こ と が,公. 開 草 案)」. を 採 用 ま た は 採 用 計 画 が あ る 国 や 地 域 は,IASBが に 記 載 さ れ て い る。. 148(148). 公 表 し た 「IFRSfor.
(17) 中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の 策 定 の あ り方 に関 す る研 究(朱). ①. EU版IFRS㈱. イ ギ リス. 「FRSME」. 「FRSSE」. 「FRSME」 は,「 中小企業版IFRS」 を 基 礎 に して い るが,こ れ を 完 全 に 採 択 した もの で はな く,会 社 法 の 会 計 規 定 や 税 務 等 との 調 整 が 図 られ, EU版IFRSと 一 貫 した 修 正 が 加 え ら れ て い る鱒 。. ②. 「FRSSE」. びFRSを. は,従. 「FRFforSMEs」. IFRS」. U.S.GAAP. よ. と 「中 小 企 業 版. の 間 に 類 似 性 が あ る もの の,. 「FRFforSMEs」 ア メ リカ. 来 のSSAPお. 簡 略 化 した もの で あ る絢。. は,ア. メ リカ の 伝. 統 的 な 会 計 処 理 方 法 と発 生 主 義 に 基 づ く課 税 所 得 計 算 を 調 和 させ た もの で あ り,中 小 企 業 の 所 有 者 や 経 営 者 の 共 通 す る情 報 ニ ー ズ を 満 た す た め に設 計 さ. 「FRFforSMEs」. れ た も の で あ る ㈹。 オ ー ス トラ リア オース ト. 会計基準. ラ リア. ※. (AASB Standards). 階 層 別 会 計 基 準(AASB2010a)・ 簡素 階層 別会 計基 準(AASB2010a)・ 化 され た 開 示 要 件(AASB2010b)が 簡 素 化 さ れ た 開 示 要 件 原 則 と して 簡 素 化 され た もの で あ り, (AASB2010b卿 要 求 さ れ る 開示 と 「中 小企 業 版IFRS」 と極 め て 類 似 して い る㈱。. 中国 で は,「 企 業 会 計 準 則 」 が2007年1月1日 か ら中 国 にお け る上 場 企 業 に強 制 され て い るが, 2008年 か ら,当 該 準 則 の 適 用 範 囲 が 中 央 国 有 企 業,商 業 銀 行 等 の 非 上 場 金 融 機 関,非 上 場 の 保 険 会 社 お よ び一 部 の地 方 国 有 企 業 ま で 拡 大 され,現 在,「 企 業 会 計 準 則 」 が 中国 に お け る大 部 分 の 大 中規 模 企 業 に実 施 され る こ と に な って い る。 したが って,「 表6」 で は,中 国 の 場 合 は,大 中 規模企業 が 「 企 業 会 計 準 則 」,小 規 模 企 業 が 「小 企 業 会 計 準 則 」 を 適 用 す る よ う に 区別 され て い る。. 注:中 国 の 「企 業 会 計 準 則 」 と 「小 企 業 会 計 準 則 」 は,中 国 の 法 体 系 に組 み 込 まれ た もの で あ り, 強 制 適 用 され る とい う点 で 他 の 国 々会 計 基 準 とそ の 性 格 を 異 に して い る。 詳 細 は,中 国 財 政 部 会 計 司(2008)「 企 業 会 計 準 則 講 解 」(第1章 基 本 準 則 の1頁)を 参 照 され た い 。. 「表6」. に 示 し た よ う に,先. 進 国 の 多 く は,「 中 小 企 業 版IFRS」. を そ の ま ま導 入 す る こ. と はな く,自 国 の 状 況 を 考 慮 した うえ で,中 小 企 業 の 会 計 基 準 を 設 定 して い る こ とが 現 状 で あ る と い え る 。 そ して,中. 小 企 業 の 会 計 基 準 の 編 成 方 法 と して,河. 崎(2011)は,次. の. 2つ の ア プ ロ ー チを 区 別 して 基 準 設 定 の あ り方 を 論 じて い る。. ㈱EU版IFRSと. は,連. 結 財 務 諸 表 の 作 成 に あ た っ てEUの. 承 認 を 受 け たIFRSを. 意 味 す る(齊. 野2011,143頁)。 ⑳. 齊 野 純 子(2011)「 究 グ ル ー プ 報 告(最. ㈱. 同 上 論 文,145頁. イ ギ リ ス に お け る 中 規 模 企 業 に 対 す る 財 務 報 告 基 準 」 国 際 会 計 研 究 学 会 ・研 終 報 告)『 各 国 の 中 小 企 業 版IFRSの. 導 入 実 態 と課 題 』 所 収,145頁. 。. 。. (36)AICPA(2012),p.4;para.1.01. ⑳. オ ー ス ト ラ リ ア に お い て は,AASBが2010年6月 リア 会 計 基 準 の 適 用 」(AASB2010a)を 公 表 し,デ. に 会 計 基 準AASB1053「 階層 別 オ ー ス トラ ィ フ ァ レ ン シ ャル ・ リポー テ ィ ン グの フ レー. ム ワ ー ク を 具 体 化 す る こ と と な っ た 。 そ の 結 果 と し て,オ 減 し た 会 計 基 準AASB2010-2「. ー ス ト ラ リア 会 計 基 準 の 開 示 規 定 を 削. 簡 素 化 開 示 要 件 か ら生 ず る 会 計 基 準 の 改 定 」(AASB2010b)を. 会. 社 階 層 別 に適 用 す る こ とを 決 定 した 。 ㈱. 浦 崎 直 浩(2011)「. オ ー ス トラ リア の デ ィ フ ァ レ ン シ ャル ・リポ ー テ ィ ング の 動 向」 国 際会 計. 研 究 学 会 ・研 究 グ ル ー プ 報 告(最 68頁 。. 終 報 告)『 各 国 の 中 小 企 業 版IFRSの. 149(149). 導 入 実 態 と 課 題 」 所 収,.
(18) 第60巻 ①. トップ ダ ウ ン ・ア プ ロー チ. ②. ボ トム ア ップ ・ア プ ロ ー チ. 第1号. 上 記 ① の 「トップ ダ ウ ン ・ア プ ロー チ」 と は,「 大 企 業 向 け会 計 基 準 」 か ら出 発 し,そ の 簡 素 化 に よ って 「中小 企 業 向 け会 計 基 準 」 を 形 成 す る ア プ ロ ー チを い う。 この ア プ ロー チで は,中 小 企 業 に固 有 の 会 計 処 理(簡 便 な 会 計 処 理 な ど)を 例 外 的 な 会 計 処 理 とみ る。 これ に対 して,上 記 ② の 「ボ トム ア ップ ・ア プ ロ ー チ」 と は,中 小 企 業 の 属 性 の 検 討 か ら 出発 し,中 小 企 業 に固 有 の 会 計 基 準 を 形 成 す る ア プ ロー チを い う。 この ア プ ロー チで は, 大 企 業 に 固有 の 会 計 処 理(連 結 会 計 や 退 職 給 付 会 計 な ど)を 例 外 的 な会 計 処 理 とみ る(39)。 この よ うな 編 成 方 法 に基 づ いて,各 国 に お け る 中小 企 業 向 け会 計 基 準 の 編 成 方 法 を 示 した もの が 「表7」 で あ る。. 表7各. 国 にお ける中小企業向 け会計基準の編成方法. ト ップダ ウ ン ・ア プ ロー チ 1. A. S. B. 本. 日. オ ー ス トラ リア. ボ トムア ップ ・ア プ ロー チ. 「中小 企 業 版IFRS」 「中小 企 業 会 計 指 針 」 階 層 別 会 計 基 準(AASB2010a)・. 簡. 素 化 され た 開 示 要 件(AASB2010b) イ. ギ. 「表7」. リ. ス. 中. 国. 日. 本. 「小 企 業 会 計 準 則 」 「中 小 基 本 要 領 」. ア メ リカ. 「FRFforSMEs」. イ ギ リス. 「FRSME」. 「FRSSE」. に 示 した よ う に,「 中 小 企 業 版IFRS」. は 「完 全 版IFRS」. の 簡 略 版 と して,「 ト ッ. プ ダ ウ ン ・ア プ ロ ー チ 」 を 採 用 して い る 。 オ ー ス トラ リ ア は,開. 示 規 定 の み を 簡 素 化 した. 会 計 基 準 を 適 用 して お り,「 ト ッ プ ダ ウ ン ・ア プ ロ ー チ 」 を 採 用 し て い る と い え る 。 そ れ に 対 して,中. 国 及 び ア メ リ カ は,中. 小 企 業 の 属 性 を 考 慮 して,中. 小 企 業 に固 有 の 会 計 基 準. を 積 み 上 げ 方 式 で 形 成 す る 「ボ トム ア ッ プ ・ア プ ロ ー チ 」 を 採 用 し,中 を 設 定 して い る 。 さ ら に,イ. ギ リ ス は,1997年. に 「FRSSE」. 「ト ッ プ ダ ウ ン ・ア プ ロ ー チ 」 を 指 向 し て い た が ㈲,2010年10月 さ れ た 「FRSME」(公 で あ る 。 同 様 に,日. 開 草 案)は 本 は,「. 業 会 計 指 針 」 を 公 表 し た 後,中. 小企業の会計基準. を制 定 した。 当 該 会 計 基 準 は に 中 規 模 企 業 に 対 して 公 表. 「ボ トム ア ッ フ゜・ア ブ゜ロ ー チ 」 に 則 して 作 成 さ れ た も の. ト ッ プ ダ ウ ン ・ア ブ゜ロ ー チ 」 に 基 づ い て,2005年. に 「中 小 企. 小 企 業 に 固 有 の 会 計 基 準 と して 有 効 に 機 能 す る た め に は,. 「ト ッ プ ダ ウ ン ・ア プ ロ ー チ 」 か ら 「ボ トム ア ッ プ ・ア プ ロ ー チ 」 へ の 転 換 が 要 請 さ れ,. (39)河 峙照 行(2011)「 日本 にお け る 『中 小 企 業 会 計 」 の 現 状 と 『中小 企業 版IFRS」 への対応」国 際 会 計 研 究 学 会 ・研 究 グ ル ー プ 報 告(最 終 報 告)「 各 国 の 中小 企 業版IFRSの 導 入 実 態 と課 題 』 所 収,197頁 。 (40)河 崎 照 行(2008)前 掲 論 文,93頁 。 150(150).
(19) 中小企業向 け会計基準の策定のあ り方 に関す る研究(朱) 2012年2月. に 「中小 基 本 要 領 」 を 公 表 す る に至 っ た。 以 上 の 主 要 諸 外 国 の 動 向 か ら理 解 で. き る よ う に,IFRSの. ア ドプ シ ョ ンの 流 れ の 中で,各. 国 は,中 小 企 業 と大 企 業 との 属 性 の. 相 違 を認 識 し,中 小 企 業 の 経 営 に と って 実 務 上 の 適 用 可 能 性 が あ る 「ボ トム ア ップ ・ア プ ロ ー チ」 を重 視 して い る と いえ る。. IVむ. 最 後 に,「 中小 企 業 版IFRS」. す. び. との比 較 検 討 に基 づ き,中 国 の 「小 企 業 会 計 準 則 」 の 特 徴. を今 一 度 要 約 し,今 後 の 研 究 課 題 を 検 討 す る こ とで む す び と した い。 ①. 「小 企 業 会 計 準 則 」 は,小 企 業 の属 性 か ら出 発 し,大 企 業 に固 有 の会 計 処 理 を 例 外 的 な会 計 処 理 と して,中 小 企 業 に 固 有 の会 計 基 準 を 編 成 す る 「ボ トム ア ップ ・ア プ ロ ー チ」 に基 づ いて 設 定 され た もの で あ る。. ②. 「小 企 業 会 計 準 則 」 の 適 用 対 象 の画 定 は,「 量 的 基 準 」 及 び 「質 的基 準 」 の 両 方 に よ って 決 定 され て い る。. ③. 「小 企 業 会 計 準 則 」 に準 拠 して 作 成 され る財 務 諸 表 は,銀. 行 等 の 債 権 者 及 び徴 税 当. 局 を主 な利 用 者 と して い る。 そ の た め,「 小 企 業 会 計 準 則 」 の 処 理 方 法 は税 法 と近 づ いて い る と いえ る。 ④. 会 計 上 の 測 定 につ いて,中 国 は コ ス ト ・ベ ネ フ ィ ッ トの 観 点 か ら考 慮 し,余 剰 棚 卸 資 産 と余 剰 固 定 資 産 の 評 価 に関 す る測 定 を 除 いて,中 小 企 業 にお け るす べ て の 会 計 処 理 を取 得 原 価 で 測 定 す る こ と に限 定 され て い る。. 以 上 に述 べ た よ う に,中 国 は 「中小 企 業 版IFRS」. を 導 入 せ ず,実 務 に適 用 で き る可 能. 性 が 高 い と考 え られ る会 計 基 準 を 策 定 した。 そ の一 方,日. 本 の 会 計 制 度 は,IFRS導. 入の. 問 題 を契 機 に,独 立 の 中小 企 業 会 計 基 準 を 策 定 して き た。 現 在,日 本 の 中小 企 業 の 会 計 基 準 と して,「 中 小 企 業 の会 計 に 関 す る指 針 」 及 び 「中小 企 業 の 会 計 に関 す る基 本 要 領 」 の 2つ の もの が 併 存 して い る。 繰 り返 す まで もな く,国 内資 本 市 場 で 資 金 調 達 や 事 業 展 開 を 主 た る 目的 と して い る 中小 企 業 に と って,IFRSの 小 企 業 版IFRS」. 導 入 か ら得 られ るベ ネ フ ィ ッ トは 限 られ て い る た め,各 国 は 「中. を参 照 しつ つ も,そ の 国 の 経 済 制 度,社 会 制 度,法 制 度 等 を 考 慮 して,. 独 自の 中小 企 業 会 計 基 準 を 設 定 し,そ れ らが 中小 企 業 経 営 に資 す る会 計 制 度 と して 普 及 す る こ とが 期 待 され る。 斎 藤(2008)に. よれ ば,情 報 の 比 較 可 能 性 を 高 めて 資 本 コ ス トを 削. 減 す るの に役 立 つ の は,基 準 で はな く実 務 の 統 一 で あ る。 い くら基 準 を 統 一 して も,そ れ 151(151).
(20) 第60巻. 第1号. を適 用 す る実 務 は ロー カル な 政 治 や 経 済 の 諸 要 因 に影 響 され,国 や 地 域 の 間 で 財 務 報 告 の 質 に重 要 な 違 いが 残 るの は避 け られ な い。 統 一 基 準 の 不 均 一 な 適 用 は,会 計 情 報 の 重 要 な 差 異 を基 準 の 差 異 よ りも奥 深 い不 透 明 な レベ ル に隠 匿 す る こ とで,国 境 を 越 え て 投 資 す る 人 々の 情 報 処 理 コ ス トを か え って 増 加 させ,基 準 の 統 一 か ら期 待 され る潜 在 的 な 便 益 を 帳 消 しにす る こ とに もな りか ね な い。す な わ ち,実 務 の ニ ー ズ に適 った 会 計基 準 で な け れ ば, 会 計 基 準 を統 一 して も その 採 用 が 進 まず 会 計 実 務 の 比 較 可 能 性 を 高 め る こ と に はつ な が ら な いか らで あ るω。 した が って,会. 計 基 準 の 実 務 上 の 適 切 性 か ら考 え る と,中 小 企 業 の 属. 性 か ら出発 し,会 計 基 準 を 編 成 す る ア プ ロー チで あ る 「ボ トム ア ップ ・ア プ ロー チ」 の 方 が 合 理 的 で あ る と考 え られ る。 しか し,こ の よ うな 主 張 は,決 (2012)が 指 摘 す る よ う に,IFRSは. してIFRSの. 存 在 意 義 を否 定 す る も の で は な い 。 河 崎. 国際 資 本 市 場 とい う,あ る種 の 「ロ ー カ ル な場 」 で 通. 用 す る会 計 基 準 にす ぎ な い とい う こ とで あ る吻。 す な わ ち,国 業 展 開 を図 る企 業 は,IFRSの. 際 資本 市 場 で 資 金 調 達 や 事. 導 入 を積 極 的 に推 進 す べ き で あ る。. ま た,日 本 の 「中小 企 業 の 会 計 に関 す る基 本 要 領 」 に して も 中国 の 「小 企 業 会 計 準 則 」 に して も,今 後,そ の 実 務 へ の 適 用 状 況 の 調 査 と そ こで 作 成 され る財 務 情 報 の 利 用 の 程 度 につ い て学 術 的 な検 証 を 行 う こ とが 求 め られ る㈹。 そ の よ うな学 術 的実 証 に よ って 会 計 基 準 の 実 務 に対 す る妥 当性 が 検 証 され,中 小 企 業 の 実 情 に即 した会 計 制 度 の 構 築 が よ り完 全 な もの とな る もの で あ る。 それ につ いて は,今 後 の 研 究 課 題 と した い。. 参. 考. 文. 献. 〈外 国 文 献> AASB(2010a)ApplicationofTiersofAustralianAccountingStandards,AASBStandard,AASB 1053,AustralianAccountingStandardsBoard. AASB(2010b)AmendmentstoAustralianAccountingStandardsarisingfromReducedDisclosureRequirements, AASBStandards,AASB2010-2,AustralianAccountingStandardsBoard.. ω. 会 計 基 準 の 統 一 が 会 計 実 務 の 統 一 を もた らす もの で な い点 につ い て は,斎 藤(2008)が 詳細に 論 じて い るの で 参 照 され た い(斎 藤2008,5頁)。 働 河 崎 照 行(2012)「IFRS(国 際 会 計 基 準)の 導 入 と 日本 の 対 応 一 会 計 文 化 の 「ロー カ ル 性 」 と 『中小 企 業 の 会 計 』 の 視 点 か ら一 」 『経 理 研 究 」 第56号,66頁 。 ㈱. 日本 で は,「 中 小 企 業 の会 計 に 関 す る基 本 要 領 」 に準 拠 して作 成 され る 中小 企 業 の計 算 書 類 に つ い て,税 理 士,税 理 士 法 人,公 認 会 計 士 及 び 監 査 法 人 に よ り当 該 指 針 の 準 拠 を 確 認 す るチ ェ ッ ク リス トが 提 出 され た 場 合 に お いて 信 用 保 証 協 会 の 保 証 料 率 の 割 引 が 認 め られ る中 小 企 業 会 計 割 引 制度 が あ る(大 阪府 中小 企業 信 用 保 証 協会 の ウ ェ ブペ ー ジ:http://www.cgc-osaka-fu.or.jp/ use/charge.html)。 また,ブ ラ ッ ク ウ ェル 他(1998)の 検 証 結 果 に よれ ば,任 意 に 外 部 監 査 を 受 けて い る 中小 企 業 は,外 部 監 査 を 受 けて い な い 企 業 と比 較 して 銀 行 か らの 借 入 金 利 が 低 くな る 傾 向 が 見 い だ され て い る。 152(152).
(21) 中 小 企 業 向 け会 計 基 準 の 策 定 の あ り方 に関 す る研 究(朱). AICPA(2012)ProposedFinancialReportingFrameworkforSma〃-andルTedium-SizedEntities,Exposure Draft,preparedbytheAICPAFRFforSMEsTaskForce. ASB(2008)FinancialReportingStandardforSmallerEntities(EffectiveApril2008),AccountingStandards Board。 ASB(2010a)FRED,TheFutureofFinancialReportingintheUKandRepublicoflreland,43Application ofFinancialReportingStandards,44FinancialReportingStandardsforMedium-sizedEntities,Part One:Explanation,AccountingStandardsBoard. ASB(2010b)FRED,TheFutureofFinancialReportingintheUKandRepublicoflreland,43Application ofFinancialReportingStandards,44FinancialReportingStandardsforMedium-sizedEntities,Part Two:DraftFinancialReporting,AccountingStandardsBoard. Blackwell,D.W.,T.R.Noland,andD.B.Winter(1998)Thevalueofauditorassurance:Evidentefromloanpricing.JournalofAccountingResearch36(1):57-70. IASB(2009)IFRSforSMEs,InternationalAccountingStandardsBoard. IASB(2012)IFRSforSMEsFactSheet,IFRSFoundation. Mackenzie,Bruce(2011)ApplyingIFRSforSMEs,Wiley(河. 崎 照 行(2011)監. 訳. 『 シ ン プ ルIFRS」. 中 央 経 済 社) 工 業 和 信 息 化 部,国. 家 統 計 局,国. 家 発 展 和 改 革 委 員 会,財. 政 部(2011)「. 中 小 企 業 劃 型 標 準 規 定 」(工. 信 部 聯 企 業(2011)300号)。 聾 麗 華(2011)「. 基 干 国 際 比 較 視 角 探 析. 2期,154-155頁 堺 檀(2010)「 万 紅 波,劉. 「小 企 業 会 計 準 則 」 征 求 意 見 稿 」 『黒 龍 江 対 外 経 貿 』2011年. 第. 。 小 企 業 会 計 準 則,何. 春 燕(2010)「. 会 月 刊 』2010年. 去 何 従?」. 第17期,86-88頁. 中 国 財 政 部(2008)「. 『財 会 学 習 』2010年5月. 号,13-16頁. 。. 我 国 中 小 企 業 会 計 準 則 制 定 問 題 探 討 一 基 干IFRSFORSMEs的. 啓 示 」 『財. 。. 企 業 会 計 準 則 講 解 」。. 中 国 財 政 部(2010a)「. 小 企 業 会 計 準 則(征. 求 意 見 稿)」 。. 中 国 財 政 部(2010b)「. 小 企 業 会 計 準 則(征. 求 意 見 稿)起. 中 国 財 政 部(2011)「. 草 説 明 」。. 小 企 業 会 計 準 則 」。. 〈和 文 献> ASBJ(2009a)「. 中小 企 業 向 け 国 際 財務 報 告 基 準 」。. ASBJ(2009b)「. 結 論 の 根 拠 ・中 小 企 業 向 け国 際 財 務 報 告 基 準」。. 安 藤 英 義,真 田忠 誓,伊 藤 邦 雄,廣 本 敏 郎(2007)編 池 田公 司(2011)「. 国 の 中 小 企 業 版IFRSの 浦 崎 直 浩(1989)「. 導 入 実 態 と課 題 」 所 収,115-119頁. 。. 」 「商 経 学 叢 」 第36巻 第1号,53-69頁. 。. オ ー ス トラ リア の デ ィフ ァ レ ン シ ャル ・ リポ ーテ ィ ン グ の動 向」 国 際 会 計 研 究 学. 会 ・研 究 グル ー プ報 告(最 終報 告)『 各 国 の 中小 企 業 版IFRSの 河 峙 照 行(2008)「. 導 入 実 態 と課 題 』所 収,63-72頁. 『中小 会 社 会 計 指 針 』 の制 度 的 意 義 と課 題 」 『甲南 会 計 研 究 」 第2号(加. 生 退 職 記 念 論 文 集),87-95頁. 。. 藤恭 彦先. 。. 河 崎 照 行(2010)「 各 国 の 中小 企 業 版IFRSの 河 崎 照 行(2011)「. 央経済社。. 財 務 諸 表 の 基 礎 概 念 一 カ ナ ダ 勅 許 会 計 士 協 会 の 『ハ ン ドブ ッ ク』・セ ク シ ョン1000. を 中 心 と して 浦 崎 直 浩(2011)「. 集代表 「 会 計 学 大辞 典(第5版)」,中. ア メ リカの 中 小 会 社 会 計 」 国 際 会 計 研 究 学 会 ・研 究 グル ー プ報 告(最 終 報 告)『 各. 導 入 実 態 と課 題 」『国 際 会 計 研 究 学 会 年 報 』,219-231頁 。. 日本 にお け る 『中小 企 業 会 計』 の現 状 と 「中小 企 業 版IFRS』. 研 究 学 会 ・研 究 グ ル ー プ報 告(最. 終 報 告)『 各 国 の 中小 企 業 版IFRSの. への対応」国際会計. 導 入 実 態 と課題 」 所 収,. 191-199頁 。 河 崎 照 行(2012)「IFRS(国. 際 会 計 基 準)の 導 入 と 日本 の 対 応 一 会 計 文 化 の 『ロー カ ル 性 」 と 『中 小. 企 業 の 会 計 』 の 視 点 か ら一 」 『経 理 研 究 」 第56号,57-67頁 金 融 庁(2012)「. 国 際 会 計 基 準(IFRS)に. http://www.fsa.go.jp/singi/singi. 。. 係 る討 議 資 料(4)」 _kigyou/siryou/soukai/20120229/02.pdf. 153(153).
関連したドキュメント
It is inappropriate to evaluate activities for establishment of industrial property rights in small and medium enterprises (SMEs)
また、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号
「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号
工事請負契約に関して、従来、「工事契約に関する会計基準」(企業会計基準第15号
笹川平和財団・海洋政策研究所では、持続可能な社会の実現に向けて必要な海洋政策に関する研究と して、2019 年度より
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」とい
継続企業の前提に関する注記に記載されているとおり、会社は、×年4月1日から×年3月 31
会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号