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〈巻頭言〉改正医療法の経緯と真意

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Academic year: 2021

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改正医療法の経緯と真意

法医学教室所属長 司法解剖鑑定医 虐待児鑑定医

信 二

昨年,平成27年10月1日から医療事故調査制度として医療法が一 部改正されました(以後,改正医療法と呼びます).本雑誌会員の皆 様の中には既にご存知の方も多いと思いますが,その経緯や真意等 は明確におわかり出ない方も,また多いと思いますので,この場をお 借りして,お伝えしたいと思います.改正医療法に至る 革として, ざっくりですが主な事件名として1999年1月,横浜市大医学部附属 病院,同年2月,都立広尾病院での患者取り違え事件,21世紀に入っ て2004年12月福島県立大野病院産科医逮捕事件,2007年愛知県力士 暴行事件,犬山中央病院医師誤診事件があります.上記にあげた事件 で問題点は3つあります.まず「患者取り違え」というヒューマンエ ラーが当時,多数発生しました.死亡者まで出てしまいました.まだ「医療安全」という言葉が なじんでいない時代ですね.2つ目は術中死で医師が傷害致死被疑事件容疑者として逮捕され 以後,ハイリスクな標榜,例えば,産科医や小児科医や外科系の医師やそれらへの志望者の激減, 廃業を招きました.そして3つ目は不審死の疑いのある力士を病死とし異状死の届け出をしな かった医師法21条つまり異状死体の届け出違反です.特に3点目については医師法33条の2に より罰金刑が科せられることが知られ大変問題となりました.都立広尾病院事件裁判では医師 法21条違反と判決が下されましたが東京都側は異状死体の届け出は当方にとって不利益であ り,その際は黙秘できる権利の発動として「自己負罪拒否特権」日本国憲法第38条に反すると無 罪を主張しましたが最高裁は,それを認めず医師法21条での異状死体の届け出は合憲と判断さ れ結審しました.結果,日本医師会は激震し,「医療の崩壊・医療の萎縮」を招いたとして,こ のままでは医療先進国日本として医療の水準を維持することが困難として医師法21条の改正或 いは廃止を国に要望しましたが法務省は門前払いでした.そこで医師の理念や定義や業務や資 格や等の詳細な取り決めをする医師法ではなく医療の様々な規定が定められている(例えば当 該医療機関の管理者が云々……等)医療法,特に第6条を改正して全国統一のガイドラインを作 成し,民主党与党時代,一時凍結となった本制度が自民党与党になり,このたびの運びとなった のです.さて今までお話ししましたところで既に気付かれた方もいると思いますが医師につい ての法律である医師法にテコ入れできず医療法を改正したということは医療機関の管理者につ いて,いろいろ問われるということで院内突然死が発生した時に居合わした医師については規

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制が無いということを意味します.つまり改正医療法の主たる目的は,医療機関内で起こったこ とで,あくまで「一つのケース」であり,つまり医療安全を確保するために医療事故の再発防止 を行うことで責任の追及や 争解決を目的とするものではないということなのです.当初の草 案作成つまり大網案ではアカウンタビリティー(説明責任)に焦点が当てられていましたが本件 ガイドライン発足時には消滅しています…. それでは,ここからは具体的に,一問一答形式でできるだけわかりやすくこの医療事故調査制 度(改正医療法)についてお答えいたします.まずこの制度の対象とはどのようなものかですが 下図を添付します.この表に示しますように○中のあくまで当該管理者が予期しなかったもの のみが本制度の対象と限局されますが,①療養に関するもの②転倒・転落に関するもの(例えば 来院時や院内でのエレベーター踏み外しなど)③嚥下に関するもの(例えば食事介助中の誤嚥な ど)④患者の隔離・身体的拘束/身体抑制にあっては「管理事故」として規定されており医療事 故とは別のカテゴリーであり本制度の対象外となります.余談ですが,ある新聞記事で堂々と 「医療事故調査制度始まる」との題名で誤嚥を誇らしげに記載していましたが,その記者が誤遠 ですね.次の一問一答に移ります.本制度の報告を怠ればどうなるかですが医師法でしたら異状 死体の届け出義務違反は33条の2で罰則が生じましたが本制度では報告義務を履行しなくても 全く罰則はありません.この無罰性も今回制度の大きな特徴です.ちなみに異状死体とは外表上 異常変化を認める死体と現在は定義されています.そして最後に,この制度の正しい理解はなに かですが,あくまで報告システムであり今後の学習のためにあり非懲罰性・秘匿性を原則に本報 告は独立性を持つことを理念としています.医療関係者が医療従事者として自らを恥じること なく仁術発揮するためのシステムです.しか し結びとして一言,本制度はどちらかという とご遺族置き去り感が否めません.よって医 療サイドとご遺族サイドがうまく人間関係 を築くことができるかが最優先課題です.よ ってヒューマンエラーを起こす前に患者さ ん側と医療側に心が通う信頼関係があれば, この制度を 用することは不要と思います ので会員の皆様も日々のほほえみと挨拶を 心がけてはいかがですか.以上 信 二

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