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《修論報告》子どもたちのコミュニケーション行為へ向けた動機の形成について~国語科の授業を通して~

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Academic year: 2021

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(1)横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 《修論報告》. 子どもたちのコミュニケーション行為へ向けた動機の形成について ~国語科の授業を通して~ 根本 大暉 1、研究の目的と章構成 本研究は、子どもたちのコミュニケーション行 為へ向けた動機を形成する国語科の授業を理論的 な側面から構想することを目的としたものであ る。 この目的を達成するため、本研究は社会構成主 義(social constructionism)の認識論的立場を 採用することで、子どもたちのコミュニケーショ ンに纏わる「現実」を言葉によって構成されたも のとして捉え、言葉の在り方を変化させることで そうした「現実」を変革する可能性を提示した。 本研究は上記の認識論的立場に基づき、序章と 終章を含めた全五章を通して議論を進めた。章構 成は下記の通りである。. を、大澤(1996)や本田(2005)などの社会学の 領域における先行研究を整理することで確認し、 それらを踏まえ、社会と子どもたちのコミュニケ ーションの関係という視座から、国語科における コミュニケーション教育がどのような課題を抱え ているのか考察を行った。結果として、以下の二 点が課題として明らかになった。一つ目は、「他 者」 (1)の存在を視野に入れたコミュニケーショ ン教育の不足である。二つ目は、子どもたちのコ ミュニケーションに対する不安を解消する具体的 な方法が明らかになっていないことである。 第二章では、第一章で明らかになった課題の 内、二点目の課題を克服するため、子どもたちの コミュニケーションに対する不安を解消する国語 の授業を構想した。第二章では、特に文学の授業 の可能性に注目し、議論を進めた。そのため、文 学の授業が子どもたちのコミュニケーションをめ ぐる問題をどのように解決できるのかということ を、これまでの諸領域における先行研究に基づ き、理論的な側面から考察を行った。考察の中で は、ローゼンブラットの「交流理論」に依りなが ら、学習者の「読む」という行為を、学習者とテ クストの相互行為として位置づけた。最終的に、 それらの考察を踏まえ、子どもたちのコミュニケ ーションに対する不安を長期的な視座から解消す る文学の授業として、(1)自己のイデオロギー に即した「読み」を形成する段階-(2)テクス トに内包されたイデオロギーに即した「読み」を 形成する段階-(3)(1)で形成した「読み」と (2)で形成した「読み」とを関係付ける段階と いう、三段階の活動からなる「内面化されたイデ オロギーを逆照射する文学の授業」を提示した。 第三章では、子どもたちのコミュニケーション に対する不安を解消する国語の授業を、短期的な 視座から構想した。第三章では、特に「キャラ」 という概念に注目しながら、議論を進めた。その ため、第二章と同様に、「キャラ」という概念が 子どもたちのコミュニケーションをめぐる問題を どのように解決することにつながるのかというこ とを、これまでの諸領域における先行研究に基づ きながら、理論的な側面から考察を行った。考察 の中では、土井(2009)や斎藤(2011)を参照す ることで、「キャラ」コミュニケーションが子ど もたちのコミュニケーションに対する不安への対 処方法として機能する可能性が明らかになるとと もに、「キャラ」が固定化してしまうという問題. 序. 章 本研究の目的と概要 研究の目的/研究の方法/主要用語の定義 第一章 国語科におけるコミュニケーション教育 の課題 現在の社会状況/コミュニケーションとイデ オロギー/コミュニケーションに含まれる存在 否定の危険性/これまでの国語科におけるコミ ュニケーション教育/国語科におけるコミュニ ケーション教育の課題 第二章「コミュニケーション至上主義」に抗う文 学教育 文化・歴史的活動論および拡張的学習/活動 理論とイデオロギー/イデオロギー教育として の文学教育/「生成」の教育としての文学教育/ ローゼンブラットの「交流理論」とバンクスの 「多文化教育」/内面化されたイデオロギーを 逆照射する文学の授業 第三章 自己防衛策としての「キャラ」 「キャラ」コミュニケーション/コミュニケ ーションに対する不安の適応/「キャラ」コミ ュニケーションの問題点とその克服/「キャ ラ」に固定化を解消する国語科の授業 終 章 本研究のまとめと課題 本研究のまとめ/本研究の課題 2、研究の内容と結果 序章と終章を除いた、全三章における議論の内 容とその結果は下記の通りである。 第一章では、国語科におけるコミュニケーショ ン教育の抱える今日的な課題を明らかにした。第 一章では、子どもたちが身を置く現在の社会状況 149.

(2) 横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 点が明らかになった。そのため、これまで主に心 理学の領域において個人の性格の表象として捉え られてきた「キャラ」を、社会構成主義の立場か ら言葉によって作り出されるものと捉えることで 「キャラ」の固定化を解消する方法を提示した。 最終的に、それらの考察を踏まえ、「キャラ」が 決定される過程をイデオロギーとディスコースの 関係の中に捉え、それらを変革する方法として、 教師の「キャラ」を分析する授業を提示した。 3、成果と課題 本研究は、子どもたちのコミュニケーションに 対する不安を解消する方法を、「内面化されたイ デオロギーを逆照射する文学の授業」、教師の 「キャラ」について考える授業という形で提示し た。本研究の成果は、そうした国語科の授業を構 想するという形で、子どもたちのコミュニケーシ ョンに対する不安を解消する方法を長期的・短期 的視座から明らかにしたことである。 対して、本研究に残された課題は、教科教育学 としての国語科に求められる臨床性が欠如してい ることである。つまり、本研究を通して構想した 国語科の授業を、学校現場でどのように実践する のか、また実践できるのかということが課題とし て横たわっている。こうした臨床性に関わる課題 を克服するためには、本研究が構想した授業を実 践することを通して、その理論を修正・補強する ことが必要となる。 4、引用・参考文献 大澤真幸(1996)『虚構の時代の果て』、筑摩書 房 柄谷行人(1992)『探求Ⅰ』、講談社芸術文庫 斎藤環(2011)『キャラクター精神分析』、ちく ま文庫 土井隆義(2009)『キャラ化する/される若者 排 除型社会における新たな人間像』、岩波書店 本田由紀(2005)『多元化する「能力」と日本社 会 ハイパー・メリトクラシー化のなか で』、NTT 出版 【注】 (1)本研究で用いる「他者」という用語は、柄 谷行人(1992)が示した「他者」の定義に依拠し ている。柄谷は、ウィトゲンシュタイン(Ludwig Josef Johann Wittgenstein)の「言語ゲーム」 の概念をもとに、「他者」を「言語ゲーム(規 則)を異にする者」と定義した。本研究では、言 語ゲームを規定するものをイデオロギーと捉えた 上で、この柄谷の「他者」の定義に基づいて、 「他者」を「自分と異なるイデオロギーに所属す る存在」として定義した。 150.

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