Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
味覚障害の検査と対処
Author(s)
田﨑, 雅和
Journal
歯科学報, 111(2): 148-149
URL
http://hdl.handle.net/10130/2383
カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説
東京歯科大学千葉病院味覚異常外来に来院する患
者は毎年増加傾向にある。来院する患者の年齢層は
50代から急増する。これは高齢者人口の急増あるい
は患者の食生活に対する意識の高まりから,当科へ
の来院数が増えているものと思われる。
味覚障害の判定には味覚閾値を検査する主観的な
検査として,いくつかの方法が行われている。簡易
検査として電気味覚検査(味細胞を直接電気刺激し,
閾値を検査する)やソルセイブテスト(塩味感応試
験)などがある。また濾紙ディスクをつかった検査
法は時間を要するが健康保険点数(300点)の請求が
できる。濾紙ディスク法は四基本味(図1)を直径5
mm の濾紙に滴下し,それを舌前,舌後,軟口蓋部
の3ヶ所,左右合計6ヶ所に乗せ,濾紙を乗せた部
位での四基本味の閾値を調べる検査である。
一方,客観的な検査として血液検査が挙げられる。
これは血清中の亜鉛,銅,鉄を調べるものである。
この理由は味細胞のターンオーバーに亜鉛が関与す
るからである。味覚閾値が高い患者で銅値と鉄値が
低い患者はあまり多くないが,亜鉛値は基準値より
低いか,基準値の下限の患者が多い。このような患
者には亜鉛製剤を服用してもらうことになる。内科
や耳鼻咽喉科では味覚検査をすることなく,図2に
示す亜鉛含有胃潰瘍治療剤であるプロマック錠剤
(図2)を処方する。しかし歯科では処方できないた
め,市販の栄養補助食品であるサプリメント(図3)
を服用してもらうことになる。食品からの1日の亜
鉛摂取量は15mg である,日本人の平均的な摂取量
は約10mg といわれている。高齢者は食事量も減少
していることから,半分量しか摂取していないのが
現状と思われる。このことから長期間7.5mg の服
用を行ってもらっている。また亜鉛の吸収にビタミ
ン C が有効であることから,ビタミン C との併用
も効果があるものと思われる。亜鉛は牡蠣(13.5mg
/100g)に多く含まれており,牡蠣を100g 食すると
一日分量の亜鉛が補給できる。生牡蠣にレモンをか
けて食することは理にかなっているのかもしれな
い。
唾液分泌量減少も味覚障害の原因となることか
ら,口腔乾燥を訴える患者には唾液分泌量の検査を
行っている(図4)。当科では3分間のワックス咀嚼
時の唾液分泌量を指標としている。味覚障害を訴え
る患者の中で,唾液分泌量の少ない(1ml/1分以
下)患者はあまり多くない。しかし味覚障害患者の
多くは唾液分泌量の減少が原因ともいわれており,
唾液分泌量の少ない患者には唾液マッサージや漢方
薬の服用も勧めている。
舌苔の存在も味覚障害の原因となるので,舌苔が
認められる患者には舌ブラシの使用を勧めている。
またカンジタ症も味覚障害を誘発することがあるた
め,カンジタ症の疑いがある患者にはカンジダ検査
を行っている。検査で陽性(図5)であればファンギ
ソンシロップ(図6)を服用してもらうことになる。
味覚検査は時間(約1時間程度)を要するため,来
院前に必ず予約をお願いいたします。予約電話番号
は043(270)3920(臨床検査室)です。嗅覚障害により
味覚閾値が変化するため,風邪や花粉症のときは正
しい結果が得られません。また味覚検査当日は検査
まで喫煙をお控えいただいております。なお初診時,
服用中の薬剤の情報(おくすり手帳など)を必ず持参
されるようご指導ください。
文 献
1)田 雅和:味覚障害と味覚検査.日本歯科医師会雑誌,
63:372∼382,2010.
味覚障害の検査と対処
田
雅 和
東京歯科大学生理学講座
図1 濾紙ディスク法で使用する四基本味 図2 プロマック錠剤
図3 亜鉛含有製剤
図6 カンジダ治療薬
図5 カンジダ検査陽性所見
図4 唾液分泌量の測定