Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
メタルコアの印象手順について教えてください。
Author(s)
三穂, 乙暁; 佐藤, 亨
Journal
歯科学報, 112(2): 142-144
URL
http://hdl.handle.net/10130/2720
Right
メタルコアとは,支台築造に用いる鋳造体のこと で,崩壊した歯冠部を補綴装置が装着できる支台歯 形態に整え,失った歯の機能を回復させることを臨 床上の目的とする。支台築造にはさまざまな方法が あるが,歯質の崩壊程度に合わせ適切な方法の選択 と,処置とが行われなければ歯根破折やクラウンの 脱落といったトラブルの原因ともなる。そこで築造 窩洞形成と印象方法を中心に間接法による支台築造 法について解説する。 1.築造窩洞形成 支台築造は,カリエスなどにより崩壊した歯に成 形材料や鋳造体,既製ポストなどを用いて理想的な 形態を付与し,補綴装置の適合性を向上させるため に行う。失活歯の場合,軟化象牙質を除去し根管処 置が終了した歯に直接法または間接法を用いて築造 を行うが,歯冠崩壊の程度が大きく根管内にポスト を用いた保持が必要となる場合には,主に間接法に よるメタルコアが用いられる。この場合,ポストの 太さや方向,残存歯質の量などが重要となる。以下 に築造窩洞形成についてまとめる。 ① 先ず,最終補綴装置の支台歯概形形成を行う。 ② ポスト孔の太さは根の断面外形に相似形で,外 形の1/3程度とする。 ③ ポスト孔の深さは歯根の長さの2/3程度で,少 なくとも歯冠長と同程度とする。 ④ ポスト孔のテーパーは2∼3度とする。 ⑤ 前歯や小臼歯などで単根の場合には,回転防止 溝をつける。 ⑥ 薄い窩壁は高さを低くし,厚さを1mm 程度確 保する。 ⑦ 適合性を高めるために面取りを行う。 上記の条件を満たし,全周囲に十分な(1mm 以 上)のフェルールが取れる場合には最終補綴物によ る帯環効果が期待できる。また,(図1)に示すよう に歯冠部の歯質が歯肉縁に近い場合には即時重合レ ジンを用いたキャップや,ストッピング,電気メ
臨床のヒント
Q&A
クラウンブリッジ補綴学系
Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯 科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本 学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基 礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼す る場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆 様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会ま でeメールかファックスで依頼していただきたいと存じ ます。必ずご期待に添えることと思います。今号はメタ ルコアの印象手順に関する質問です。Question
メタルコアの印象手順について教えてください。Answer
図1 窩縁が歯肉縁に近い症例 142 歯科学報 Vol.112,No.2(2012) ― 66 ―ス,綿糸などを用いて歯肉を排除し縁下まで印象を 採る。この他にも,(図2)に示すように複数根管で ポスト孔が平行ではない場合には分割コアを用い る。 2.印象採得 築造窩洞形成された歯質は,内側性と外側性の形 成面やポスト孔などを含み,形態が複雑なため細部 に及ぶ印象採得は大変難しい。このため一般的な印 象法と異なりいくつか注意すべき点がある。 ① ポスト孔内に印象材を注入するときは,レンツ ロや先端の細いシリンジを用いる。(図3) ② ポスト孔内部の印象は裏打ちが無く変形するの で,細く長い場合には補強材を用いる。 ③ ポスト孔部の印象は石膏を注ぐときにも変形す る可能性があり注意深く取り扱う。 ゴム質印象材を用いる場合には,ポスト孔内部に 先端の細いシリンジを用いて印象材を少量流し込ん だ後,レンツロを回転させ内面に充満させる。レン ツロは回転させながら引き出し不足している部分に は印象材を追加,その上からトレーに盛った印象材 を覆いかぶせる。 寒天とアルジネート印象材の連合印象の場合に は,シリンジを用いてポスト孔内部に寒天を充満さ せアルジネートを用いて印象を採る。弾性ひずみが 大きい印象材は壊れずにひずむことが出来るが,自 らの重みで変形し,またポスト孔部のように細長い 印象は石膏の重みでも変形をする。このためポスト 孔内部の印象には補強材を挿入する場合もある。ま た,窩縁が歯肉縁に近く縁下の印象が難しい時に は,コアの印象においても個歯トレーを使用する場 合がある。 印象材の硬化後は速やかに口腔内から撤去する が,このときの操作により変形の量が左右される。 撤去方向はできるだけポスト孔と平行にすることが 望ましいが,ポスト孔が平行でない場合や形成が内 側と外側に及び複雑なことなどから印象材の変形は 避けられない。しかし,永久ひずみの少ない印象材 を用いることにより残留した変形量は少なくするこ とが出来る。また,細部の印象を採るためには親水 性は欠かせない要因となる。ここで大きく関係して くるのが(表1)に示される弾性印象材の理工学的諸 性質となる。 最近のシリコーンゴム印象材は成分の調整により 親水性が向上し流れの良いものが開発されている。 また,シリンジチップの先も改良され使い勝手の良 いものがあるので必要に応じて選択を行う。 表1 弾性印象材の理工学的諸性質の比較 永 久 歪み!% 弾 性 歪み!% 寸 法 安定性 細 部 再現性 ポリサルファイドゴム 2∼4 6∼9 良 良 シリコーンゴム 0.5∼ 1.5 5∼6 おおむ ね 良 良 ビニルシリコーンゴム 0.1∼ 0.5 2∼10 良 良 寒 天 1 8∼9 劣 おおむ ね 良 図2 ポスト孔の平行性が取れない症例の印象 図3 左から2つずつ,レンツロ,先の細いゴム質印象材 用シリンジの先端,寒天用シリンジの先端 歯科学報 Vol.112,No.2(2012) 143 ― 67 ―
3.支台歯形態の回復 築造窩洞の印象を行う場合,片顎トレーや回転ト レーなど局所の印象のみを採ることが往々にして見 受けられるが,大型のブリッジのように支台歯の方 向や対合歯とのクリアランスの情報が必要な場合に は,歯列全体を印象に取り込み,対合歯の印象と咬 合記録を採り咬合器にマウントする必要がある。こ れを怠ると製作されたコアを口腔内に装着した後に 仕上げの形成をする量が増え,場合によっては再製 作となりかねない。先にも述べたように支台歯の築 造窩洞形成は先ず最終補綴物の概形形成を行い,築 造後は出来るだけ形成量を減らすことを心がけるべ きである。 Answer:三穂乙暁,佐藤 亨 東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座 文 献 1)佐藤 亨,羽賀通夫,腰原 好:クラウンブリッジ補綴 学.学建書院,第3版:62∼64,2007. 2)石橋寛二,川添堯彬,川和忠治,福島俊士,三浦宏之, 矢谷博文[偏]:クラウンブリッジ補綴学,医歯薬出版株 式会社,第4版:107∼205,2010. 3)小田 豊[偏]:新編歯科理工学,学建書院,第3版: 58∼85,2003. 144 歯科学報 Vol.112,No.2(2012) ― 68 ―