Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Expression of osteoclast-related cytokines in
mandibular invasion by gingival squamous cell
carcinoma
Author(s)
松原, 志津加
Journal
歯科学報, 113(1): 92-93
URL
http://hdl.handle.net/10130/3015
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 歯肉癌(扁平上皮癌)は解剖学的に顎骨に近接し,強い局所浸潤能を有しているため,容易に顎骨吸収を引き 起こすといわれている。通常治療にあたっては,術前のX線画像で顎骨吸収がみられる部位は腫瘍細胞によっ て顎骨が破壊されていると判断し,健常骨を含めた顎骨切除が余儀なく選択されることが多い。その結果,顎 骨の連続性が断たれ,患者の顎口腔機能は障害をきたし術後の QOL 維持に悪影響を及ぼす。一方,切除され た顎骨の病理組織学的診断から,術前の画像的な骨吸収部位が腫瘍細胞による骨浸潤像と必ずしも一致してい ないことが示されている。すなわち,歯肉癌には病理組織学的に顎骨浸潤をきたさないタイプも存在すること が報告されている。よって今後,術前にこのような歯肉癌の特性を見抜き,顎骨切除をどこまでの範囲に設定 するかが臨床上重要な問題となる。 本研究では,このような歯肉癌の顎骨浸潤過程を病理組織学的および分子生物学的に解析することを目的と した。すなわち病理組織学的な骨浸潤が破骨細胞性骨吸収によって発現することに着目し,破骨細胞活性化の 促進および抑制に関与するサイトカインの発現解析を行い,破骨細胞関連サイトカイン・ネットワークシステ ムの解明を試みた。 2.研 究 方 法 対象は2004年7月から2007年6月までの間に東京歯科大学千葉病院口腔外科を受診し,顎骨切除を施行した 下顎歯肉扁平上皮癌一次症例23例(男性14例,女性9例,平均年齢65.0歳)である。これらを術後病理標本を用 いて顎骨非浸潤群10例,顎骨浸潤群13例に分類した。解析したサイトカインは interleukin(IL)-1α,IL-1β, IL- 6, IL-11, tumor necrosis factor( TNF )-α , parathyroid hormone-related protein( PTHrP ), nuclear factor-kappa B(RANK),receptor activator of NF-κ B ligand(RANKL),osteoprotegerin(OPG)である。解 析方法はパラフィン標本を用いて免疫組織化学的染色法を行い,腫瘍細胞における各サイトカインの発現率を 評価した。また,手術標本より採取した検体から抽出した mRNA を用いて定量 real-time PCR(QRT-PCR)法 を行い,各サイトカインの mRNA 発現を定量的に観察した。統計処理には Mann-Whitney の U-test を用い た。 氏 名(本 籍) まつ ばら し ず か
松
原
志 津 加
(東京都) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1758 号(甲第1033号) 学 位 授 与 の 日 付 平成20年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Expression of osteoclast-related cytokines in mandibular invasion by gingival squamous cell carcinoma
掲 載 雑 誌 名 Oral Science International 第10巻 1号 20−24頁
論 文 審 査 委 員 (主査) 柴原 孝彦教授 (副査) 井上 孝教授 佐野 司教授 下野 正基教授 歯科学報 Vol.113,No.1(2013) 92 ― 92 ―
3.研究成績および考察 免疫組織化学的染色法では,IL-1α,IL-1β,IL-6,IL-11,PTHrP,RANK において顎骨浸潤群の方が有 意に発現率が増加していた。また,明らかな有意差は認めなかったが,TNF-α,RANKL でも顎骨浸潤群の方 が発現率が増加する傾向が見られ,OPG では顎骨非浸潤群の方が多い傾向が見られた。QRT-PCR 法では, 明らかな有意差は認めなかったが,IL-1α,IL-1β,IL-6,TNF-α,PTHrP,RANKL で顎骨浸潤群の方が mRNA の発現量が多い傾向が見られ,IL-11,RANK,OPG では発現が見られなかった。この両者の結果を考察する と,歯肉癌の破骨細胞性骨吸収には IL-1α,IL-1β,IL-6,TNF-α,PTHrP,RANKL が重要な役割を演じ ていることが示唆された。 4.結 論 歯肉癌による骨吸収には,病理組織学的に顎骨非浸潤群と顎骨浸潤群の2つのタイプが存在することが確認 された。また,IL-1α,IL-1β,IL-6,TNF-α,PTHrP,RANKL の発現が破骨細胞の活性化に関与し, OPG/RANK/RANKL システムが顎骨浸潤を司る重要なメカニズムである可能性が示唆された。 論 文 審 査 の 要 旨 歯肉癌(扁平上皮癌)は解剖学的に顎骨に近接し,強い局所浸潤能を有しているため,容易に顎骨吸収を引き 起こすといわれている。現在,顎骨浸潤範囲の評価は術前のX線画像に頼るところが大きいが,画像的な骨吸 収部位が腫瘍細胞による骨浸潤像と必ずしも一致していないことが示されている。すなわち,歯肉癌には病理 組織学的に顎骨浸潤をきたさないタイプも存在することが報告されており,術前にこのような歯肉癌の特性を 見抜くことが臨床上重要な問題となる。本研究では,病理組織学的な顎骨浸潤が破骨細胞性骨吸収によって発 現することに着目し,破骨細胞活性化の促進および抑制に関与するサイトカインの発現解析を免疫組織化学的 染色法および定量 real-time PCR(QRT-PCR)法を用いて行い,破骨細胞関連サイトカイン・ネットワークシス テムの解明を試みたものである。 本結果から,病理組織学的に顎骨非浸潤群と顎骨浸潤群の2つのタイプが存在することが確認された。ま た,破骨細胞関連サイトカインである IL-1α,IL-1β,IL-6,IL-11,TNF-α,PTHrP,RANK,RANKL,
OPG のうち,IL-1α,IL-1β,IL-6,TNF-α,PTHrP,RANKL の発現が破骨細胞の活性化を促進し,さら
に OPG/RANK/RANKL システムが顎骨浸潤を司る重要なメカニズムである可能性を示唆した。 本審査委員会では,1)検体の採取部位,2)免疫組織化学的染色標本の評価法,3)統計処理方法,4) mRNA の発現と免疫組織化学的染色標本の相同性などについての討論がなされたが,いずれも概ね妥当な回 答が得られた。また,論文の記述や図表に関してもいくつかの指摘がなされ,サイトカインの発現および内容 の記述,術前化学療法に関する記述および染色標本の修正を行った。 以上より,本研究で得られた結果は,今後の口腔外科学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与 に値するものと判定した。 歯科学報 Vol.113,No.1(2013) 93 ― 93 ―