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2016 年度 卒 業 論 文
「バルジ光からのマゴリアン関係図の作成」
総合理工学科 物理学系
13s1-060
中村 將星
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要旨
本論では、銀河とその中にある巨大ブラックホールの関係の図を作成した。 これまでの観測により、ブラックホールと母銀河のバルジの質量の間には比例的関係があることが確 認されており、その関係はマゴリアン関係と呼ばれている。このことから巨大ブラックホールと銀河 はともに進化(共進化)していると考えられるが、銀河内のブラックホールと銀河のバルジとではス ケールが大きく異なり、この二つがどうやって進化してきたのか、いまだに解明されてない。 この関係の存在は共進化を考えるうえでとても重要なものだが、今回はバルジの質量ではなく、観測 からバルジの光度を求め、それらのデータからマゴリアン関係の作成を試みた。 研究前の段階では、お互い比例して、マゴリアン関係とほぼ同じような図ができると予想された。 研究結果では、予想通り、マゴリアン関係と同様の図が得られた。これは銀河内のバルジの質量が光 の量と比例関係にあることから間接的にマゴリアン関係の関係図を作成できたと考えられる。3
目次
・第 1 章 研究の前に 1.1 銀河 1.2 ブラックホール 1.3 共進化 ・第 2 章 準備 2.1 観測器具、解析ソフト 2.2 観測の手順 2.3 等級について 2.4 理論 -1 ポグソンの定理 -2 ポグソンの式 -3 光度計算 ・第 3 章 銀河の観測 3.1 観測銀河の紹介 3.2 バルジ光のエネルギー 3.3 観測結果 ・第 4 章 結論 4.1 結果の比較 4.2 問題点と将来の課題 ・謝辞 ・参考文献4
はじめに
ここでは簡単に本文の紹介をする。まず第 1 章では、今回の研究内容において重要な銀河 とブラックホールについてまとめた。一度は耳にしたことがある人も、知っている人も、ど ういうものかここでもう一度確認してほしい。次に第 2 章ではこの研究で使った器具、また 研究手順やどのような理論が用いられたか紹介していく。第 3 章では、観測した銀河からど のような結果が得られたかを書いている。第 4 章ではグラフの比較や研究結果がどのような こと示しているのかをまとめた。5
第1章 研究の前に
1.1. 銀河
さまざまな星や星間物質などを含む巨大な天体である銀河。銀河はこれらを重力によって拘束して 成り立っており、その銀河の質量の 90%が暗黒物質でできていると考えられている。銀河の種類は一 般的に渦巻銀河と楕円銀河の二つに分類されており、渦巻き銀河はバルジと呼ばれる銀河中心部の球 状のふくらみとそれを取り囲む円盤部分から構成される。それに比べ、楕円銀河の構造はシンプルで 渦巻銀河の中のバルジと非常によく似た構造をしている。(本論では楕円銀河を「バルジ」として取 り扱うことにする)また、最近の研究で、そのほとんどの銀河の中心には、太陽の 10 万倍~10 億 倍の質量 ( 1 太陽質量 = 2×10^30kg) を持つ巨大ブラックホールが存在することがほぼ確定して いる。1.2. ブラックホール
ブラックホールとは、光が抜け出せなくなるほどの強い重力を持つ天体のことを言う。この天体は アインシュタインの一般相対性理論から予言される。相対性理論では、重力が時空の歪みとして表さ れる。ブラックホールは、非常に強い重力場により光でも抜け出すことができない時空領域のことで ある。よってこれはブラックホールがそこからは何も抜け出せないことを意味している。しかし、昔 は、未知の天体で理論上でしか存在していなかったブラックホールが、現在では、観測技術の発達に よって現実の宇宙に実在する天体であることが広く認知されている。これまでブラックホールについ ての多くの研究の結果、宇宙の様々な活動現象として重要な役割を果たしていることが明らかになっ た。中でも銀河の中心には巨大なブラックホールが存在していることが発見され、さらに最近ではそ れが銀河と共に進化している(共進化)という観測的な示唆が得られたのである。1.3. 共進化
共進化とは、その名の通り、共に進化していったという考えである。上記で述べたとおり、銀河と 銀河内の巨大ブラックホールは共進化していると考えられており、銀河内のバルジとブラックホール の質量での関係をグラフで表すと、きれいな比例した関係が浮かんでくるのである(マゴリアン関係)。 両者の大きさは約 10 桁も異なっており、なぜこのような驚くべき関係があるのか大きな問題として 注目されたのである。この関係から、ブラックホールと銀河がお互いに何らかの影響を与えつつ進化 してきたことが示唆される。6
今回はこの関係図をブラックホールの質量とバルジの光度で作成していく。
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第2章 準備
2.1. 観測器具 解析ソフト
40cm 望遠鏡 CCD カメラ ステラナビゲータ ステライメージ 解析ソフトマカリ 以上の器具およびソフトを使う。2.2. 観測の手順
大学の 40 ㎝望遠鏡と CCD カメラを使い、目標天体である銀河を 100 枚撮影する。その観測した銀河 を、ステライメージで、画像の合成を行う。次にステラナビゲータを用いて、銀河の近くの星の等級 を調べ、画像処理ソフトマカリを用いて、標準星とバルジのカウント値を調べる。そのデータを使っ て計算し、バルジの光度を導く。これらの手順を観測する銀河についてすべて行い、その光度とブラ ックホールの質量から図の作成を行う。ただし、ブラックホールの質量は本校では求めることが、困 難なため、既知データを使用する。2.3. 等級について
等級には見かけの等級 (apparent magnitude)と対等級 (absolute magnitude)があるが、本論では、 絶対等級は扱わないので、ここでは見かけの等級の説明だけをする。見かけの等級は、地球から見た 時の天体の見かけの明るさを示す指標である。 本来は同じ明るさの天体であっても、近距離にある ものの見かけの明るさは明るく、遠方にあるものは暗く見える。 また、近距離であっても非常に暗 い天体や、遠距離で非常に明るい天体を比較した場合は、遠距離にある天体の方が明るく見える事が あり、このような見かけの明るさの指標となるのが見かけの等級である。
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2.4. 理論
2.4.1 ポグソンの定義
現在まで使われている等級の定義を決定したのは、イギリスの天文学者のノーマン・ロバート・ポ グソン (Norman Robert Pogson)である。ポグソンは 1 等星の明るさは 6 等星の 100 倍であり、1 等級 ごとの明るさの違いは 1001/5倍であると定義した。1001/5 = 2.511886432... となるため、1 等級ごと の違いはおよそ 2.512 倍に相当するということになる。このポグソンによる等級の定義によって、等 級は定量的に評価出来るようになり、1〜6 以外の等級、例えば 6 より大きな等級や 0, 負の値の等級、 整数値の間の小数値を持つ等級も表すことができるようになった。また、見かけの等級の比較の際に しばしば出てくる数値である 1001/5の事は、ポグソンに因んでポグソン比 (Pogson's ratio)と呼ば れる。
2.4.2 ポグソンの式
ポグソンが等級の定義を定めた事で、天体の見かけの明るさから等級を計算が可能となった。 こ こでは、等級はどのように決まるか見ていく。 ポグソンの定義では、等級が 1 異なるごとに明るさは 1001/5倍異なるが、 等級が x 異なる場合、 明るさは 100x/5異なることになる。 1 等星と 6 等星の等級の違いは 6-1=5 等級になり、明るさの違 いは 1005/5 =1001 =100 倍となり、定義通りである。 ここで、星 1 と星 2 の明るさを比較することを考える。 星 1 からのフラックスを F1、星 2 からの フラックスを F2とする。このフラックスというのは、見かけの明るさに対応するもので,地上の観測 装置で、単位面積当たり、単位時間当たりに受け取る、星からの放射エネルギーである。 また、星 1 の等級をm等、星 2 の等級をM等とする。この場合、星 1 と星 2 の等級差はm-Mなので、明るさの 差は(100
1 5⁄)
(M−m) となり、これは書き換えると100
(M−m) 5⁄ となる。 一方、フラックスからの明るさの比は F1/F2と書くことができるので、𝐹
1𝐹
2= 100
(M−m) 5⁄ となることが分かる。 この式の両辺の対数をとると、𝑙𝑜𝑔 (
𝐹
1𝐹
2) = 𝑙𝑜𝑔100
(𝑀−𝑚)/5 になる。 また、対数をとった式の右辺は、𝑙𝑜𝑔100
(𝑀−𝑚)/5=
1
5
(𝑀 − 𝑚)𝑙𝑜𝑔100 =
2
5
(𝑀 − 𝑚)
9 と変形でき、よって式は
𝑀 − 𝑚 =
5
2
𝑙𝑜𝑔(
𝐹
1𝐹
2)
となり、書き換えると𝑚 − 𝑀 = −
5
2
𝑙𝑜𝑔 (
𝐹
1𝐹
2)
= −2.5𝑙𝑜𝑔(
𝐹
1𝐹
2)
となる。 このように、2 つの天体の等級と明るさを関係付ける式を導出することができた。 星 1 の等級をm、明るさ(フラックス)を F1、星 2 の等級をM、明るさ(フラックス)を F2とした場合、 以下のような関係式が成り立つ。𝑚 − 𝑀 = −2.5𝑙𝑜𝑔(
𝐹
1𝐹
2)
今回はこのMの部分を 0 等級𝐹0、mの部分を標準星𝐹𝑠𝑡𝑎𝑟とするとm = −2.5log(
𝐹
𝑠𝑡𝑎𝑟𝐹
0)
となる。 ただし (𝐹0=2.48 ∗ 10−8𝐽𝑠−1𝑚−2)※1 とする。 以下本論では(2.7)式をポグソンの式と呼ぶ。 ※1 理科年表より2.4.3 光度計算
次に光度を求める計算式を紹介する。光度とは、ある天体が単位時間に放出しているエネルギーで あり、ある天体の光度を𝐿𝑏とすると、その天体からDだけ離れた位置でのフラックスはF =
𝐿
𝑏4𝜋𝐷
2 で表される。 またこの式を光度𝐿𝑏について変形すると𝐿
𝑏= 4π𝐷
2𝐹
b となる。 以下本論では光度を求めるときに上記の式を使用する。 以上、今回は上記の 2 つの式を使ってバルジの光度を求めていくことにする。10
第3章 銀河の観測
3.1. 観測銀河の紹介
今回、大学内の 40 センチ望遠鏡と冷却 CCD カメラ BN-52E にて、目標天体の観測を行った。撮影す る前に CCD カメラを取り付けるが、その際、冷却を行う。これは CCD カメラの熱で電流が生じノイズ が残ってしまうのだが、冷却はそのノイズを減らす役割がある。なるべく目標天体を同じ条件で撮影 できるよう、今回は撮影時に冷却温度を 0 度にし、撮影枚数を 100 枚に設定した。また、観測対象の 銀河は以下のものである。・
NGC224(M31)
・NGC253
・NGC1068(M77)
・
NGC3031(m81)
・NGC3115
・NGC3368(M96)
・NGC3379(M105)
この中で NGC3379(M105)は楕円銀河であるが、第一章で述べたように渦巻銀河のバルジの特性が似 ていることからこれらの銀河は全体を「バルジ」として取り扱うことにする。3.2. バルジ光のエネルギー
以下の画像は V フィルターで撮影した M77 である(図 3-1)。1 枚の画像にするため、撮影した 100 枚の画像をコンポジット(合成)した。これは画像を合成していくことで銀河が浮かび上がっていき、 また、画像が滑らかになる役割がある。その後、銀河を見やすくするために明るさを調整する(図 3-2)。 次にバルジの光度を求めるため、画像処理ソフトマカリを用いるが、その前にステライメージで近 くの星の等級を調べておく必要がある(図 3-2)。その等級を調べた星が標準星となり、バルジのフ ラックス(明るさ)をマカリで測定する標準星とバルジのカウント値から比較して間接的に求めるた めである。 標準星のフラックス:バルジのフラックス=標準星のカウント値:バルジのカウント値 その後、バルジの範囲を正確に決定するために、銀河に線を引き、光の量が高くなり始めている場 所を探し、そこをバルジとする(図 3-3)。このバルジの範囲の決定をあいまいに行うと、測光結果 に大きなばらつきが出てしまい、光度が正しく求められない。よってこのバルジの範囲を決定は正確 に行う必要がある。範囲を決定し終えた後、測光を行う。測光とは、被写体の明るさを測ることを指 すが。マカリでは、画像上で指定した半径内のカウント値を積算してから背景光を減算する「開口測11
光」で測光を行う。そこからカウント値をエクセル上に出力する(図 3-4)。このデータから第 2 章の 式より光度を算出する。
図 3-1 渦巻銀河 NGC1068(M77)
12 図 3-3 画像処理マカリ 図 3-4 測光結果
3.3. 観測結果
観測銀河について計算処理を行った結果、図 3-5 のような結果になった。またこのデータからマゴリ アン関係図を作成したところ、図 3-6 のような関係図になった。ブラックホール質量は論文 Graham & Scott(2013)によるものを引用した。縦軸は中心の巨大ブラックホール質量、横軸はバルジ質量を表 示。両軸とも 対数軸であり、実線は累乗近似で表した。13 図3-5 カウント値をまとめたエクセルの図 図 3-6 ブラックホールの質量とバルジの光度でのマゴリアン関係 M31 NGC253 M77 M81 NGC3115 M96 M105
0.05
0.5
5
0.2
2
log
𝑀
𝑏ℎ[
10
^
8𝑀
⊙]
log 𝐿10^36 [𝐽/𝑠]
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第4章 結論
4.1.結果の比較
観測した銀河のサンプルは少ないが、バルジの光度からでもマゴリアン関係の図が書けた。この図の 関係から銀河とブラックホールには、相関関係があることがわかる。ここでのブラックホールの質量 は Graham & Scott(2013)のデータを引用した。図 4-1 は Graham & Scott(2013)のデータから今回の 観測銀河のサンプルだけ抽出したものである。関係図を比較すると銀河の位置関係はよく似ている。 これはバルジの等級と光度が比例していることから、比較の図と同じような関係のグラフが作成でき たと予想される。また、図 4-2 は自分の観測結果と Graham & Scott(2013)のデータの光度を比較した グラフである。この図から本研究で求めたバルジ光度は Graham & Scott(2013)と比較して、系統的に 0.6 倍となっていることがわかる。
図 4-1 (Graham & Scott,2013)のデータの一部 M31 NGC253 M77 M81 NGC3115 M96 M105
0.05
0.5
5
0.4
4
log
𝑀
𝑏ℎ[
10
^
8𝑀
⊙]
log 𝐿10^36 [𝐽/𝑠]
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図 4-2 本研究と(Graham & Scott,2013)のデータの比較
4.2. 問題点と将来の課題
今回のグラフの作成は成功したが、時期や望遠鏡のスペックの問題からブラックホール質量のダイ ナミックレンジが 2 桁と、狭い範囲での関係図になってしまった。まだまだサンプルが足りずもっと 多くの銀河で、このようなきれいな比例のグラフができたかは疑問である。また共進化の関係性はこ のグラフだけからでは言い切ることができず、あくまでも共進化の可能性の一つの素材に過ぎない。 まだブラックホールと銀河の共進化は決定的な裏付けは確認されていないが、将来的に、これらの関 係が明らかになれば、まだまだ未知であるブラックホールを知る大きな一歩になるだろう。今後、研 究者たちがこれらの関係について解明してくれることに期待したい。y = 0.6395x + 0.1019
0
1
2
3
4
0
2
4
6
本論文のデータ
𝐿10
^
36[
𝐽/
𝑠]
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謝辞
この研究を遂行するにあたり,終始温かく見守って頂き、また丁寧に指導して下さった井上先生、 小野寺先生、日比野先生に深く感謝いたします。井上先生は,日頃から研究の進み具合を気にかけて 下さいました。有り難うございます。不慣れな望遠鏡に途方に暮れる私に的確な助言と激励をくださ った日比野先生、小野寺先生には,感謝の念が絶えません。調査のあり方や考察の方法など、細部に わたるご指導をいただきました。本当に有り難うございました。そして天文学研究室の学部生,院生 の多大な協力と刺激を受けなければ、本研究に対する姿勢を得ることができませんでした。研究をや り遂げることができたのは多くの人たちのおかげです。ここに感謝いたします。17
参考文献
・(Graham & Scott,2013)THE ASTROPHYSICAL JOURNAL,764:151,2013 ・天文年鑑 2017 誠文堂新光社
・理科年表平成 28 年 丸善出版株式会社
・AstroArts https://www.astroarts.co.jp/alacarte/messier/intro3-j.shtml ・巨大ブラックホールと宇宙 丸善出版株式会社