IRUCAA@TDC : 片側性唇顎口蓋裂矯正治療患者の頭部X線規格写真分析による下口唇突出に関する検討
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(2) 455. 唐 著片側性唇顎口蓋裂矯正治療患者の頭部Ⅹ線塊格写真分析による 下口唇突出に関する検討 氏 家 貢 紀 坂 本 輝 雄 西 井 康 野 嶋 邦 彦 原 崎 守 弘 - 色 泰 成 東京歯科大学歯科矯正学講座 (主任:一色泰成教授) 年1月31日受付) 年3月14日受理). 抄 録:本研究は,片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者の矯正治療前後における側貌欧組織形態 と,下顎前歯の舌側移動に対応する下唇の変化を調べることを酎勺とし,破裂を伴わない反対唆合 患者と比較検討を行った。その結果,唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者は健常反対唆合患者と比較し て,治療前では側貌軟組織における上下顎の後退が認められ,口唇形態は下唇の突出が著明であっ た。治療後では,歯牙の移動に伴う上下唇の変化が認められたが,下顎前歯の舌側移動に対応する 下唇の後退室は少なく,硬組織に対する欧組織の反応が小さかった.よって,唇顎口蓋裂を伴う反 対唆合患者の矯if.治療では,側貌軟組織の審美的な改善は健常反対唆合患者に比べ困難であること が示唆された。 キーワード:片側性唇顎口蓋裂,反対唆合,側貌軟組織,口唇形態. 緒 旨. 唇顎口蓋裂患者における矯正治療の目的とし て は機能的唆合の再建,正常な対人関係 を得るための能力付与,良好な顔貌形態の回復を 挙げている。矯正治療を行うことにより唆合を改 善し,唄噴機能を改善することはむろんのこと, 口唇の形態を変化させ,側貌の美的調和を獲得 することは患者の精神心理面へ好影響を与える ことにつながる。唇顎目蓋裂患者における側貌 軟組織形態の特徴として,中顔面の陥巨孔 顧部 の前方突出,上唇の後退と下唇の突出が認められ る 。不適切な口唇形成術や頑回の口唇修. 別刷請求先: 〒 千葉市美浜区貢砂 東京歯科大学歯科矯正学講座 氏家貢紀. 正術によって,著しい廠痕を生じると,上唇は緊 張し后平となる傾向がある。また下唇は膨隆ない し外反して,上下唇は著明な不均衡を示す。特 に,反対唆合を伴う唇顎口蓋裂患者においては下 唇の前方突出は顕著であり,矯正治療を行って被 蓋が改善したにもかかわらず,依然として下唇の 突出が認められることが多い。この下口唇突出の 容貌改善のため,唇顎口蓋裂患者における矯正治 療前後の側貌軟組織形態を知ることは,今後の矯 正治療における牽容を考える上で,またより望ま しい結果を得る上で重要である。 そこで本研究では片側性唇顎口蓋裂を伴う反対 嘆合患者の矯正治療前後における側貌軟組織形態 と,下顎前歯の舌側移動に対応する口唇の変化を 調べることを主たる目的として,破裂を伴わない. -- 39 -.
(3) 456. 氏家,他:口蓋裂矯正患者の下口唇突出に関する検討. 反対唆合患者における矯正治療前後のそれらと比 較し,検討した。. 資料とした側貌頭部Ⅹ線塊格写貢について,軟 組織および硬組織のトレースを行い,計測点とし. 牽料および方法. て硬組織17点,軟組織6点の合計23点を設定し た。 (1)硬組織計測点. 1.資料 被験者は東京歯科大学千葉病院矯正歯科に来院 した,片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者(以. ① :トルコ按中央. 下C群と略す)14症例(男10症例,女4症例,初診 時平均年献9歳3ケ月,動的治療終了時平均年麻. ② 鼻骨前頭縫合最前点 ③ 骨外耳遺上縁 ④ 眼嵩骨縁最下点. 16歳6ケ月)と破裂を伴わない反対唆合患者(以下 R群と略す)12症例(男4症例,女8症例,初診時. ⑤ 前鼻麻と歯槽縁間の正中 矢状断面上の最深点. 平均年麻10歳7ケ月,動的治療終了時平均年麻15 歳6ケ月)である。これらは下顎に叢生がなく, 前歯部の被蓋改善のために下顎第1小臼歯を便宜. ⑥ :下竃酎吉倉部の前縁と歯槽 縁問の正中矢状断面上の最深点. 抜歯してエッジワイズ法により矯正治療を行い, 上顎に関しては叢生の除去および大臼歯関係の改 善のために第1小臼歯を便宜抜歯して矯正治療を 行った症例と非抜歯にて矯正治療を行った症例が 混在している。各々の矯正治療前後に撮影した側 貌頭部Ⅹ線規格写貢を資料とした0 2.頭部Ⅹ線塊格写貢分析 1)計測点(図1). ⑦ Ⅹi:下顎枝の幾何学的な中心点で,下 顎孔の位置に相当する点8) ⑧ 上顎中切歯切端 ⑨ - 上顎中切歯根端 ⑲ 下顎中切歯切端 ⑪ 下顎中切歯根端 ⑫ 顧隆起上縁 ⑬ 下顎骨顧隆起の最突 出点 硬組織計測点 OS(Sella turcia) @N(Nasion) ③ @Or(Orbitale) ⑤ ⑥ ⑦Ⅹi ⑧ @Ula(Ul-apex) ⑲ @Lla(Ll-apex) @Pm(Protuberance menti) ⑬ ⑱ ⑮ ㊨ @Ar(Articulare) 軟組織計測点 OG(Glabella) OCm(Columella) OSn(SubnIISElle) OLs(Labium superius) ㊨ OPogs(soft tissue Pogonion). 図1衰貢郭Ⅹ線規格写真分析に用いた計剃点 -40 -.
(4) 歯科学報. 457. ⑥ 硬組織. ⑭ :顔面平面と下顎下縁 平面のなす角の二等分線が顧隆起骨縁と交 わる点. Pogを通りF H平面に平行な恵線が外皮 と交わる点 2)基準乎面. ⑮ 下顎結合部の矢状断面 上の最下方点. ① SN平面 : Sと Nを結ぶ平面. ⑯ 下顎枝後縁平面と下顎下 縁平面のなす角の二等分線が下顎角骨縁と 交わる点. ② F H平面 とPを結ぶ平面 ③ 下顎下縁平面 Meを通る下顎下縁への接線. ⑰ :下顎関節突起後縁と 外頭蓋底の交点 (2)欧組織計測点 ① 前頭部外形線でF H平. ④ 顔面平面 :Nとpogを 結ぶ平面. 面に対する前方最突出点 ② を通る直線が鼻. ⑤ とPmを結んだ下顎 骨体軸 ⑥ 下顎枝後縁平面 を通る下顎枝後縁への接線 3)計測項目. 下部外形線と接する点 ③ :鼻上唇移行部外形線 の最深点 ④ 上唇部外形線 でF H平面の垂線と接する点(上唇鼻突出 点). 以下に示す硬組織14項目,欧組織7項目の計21 項目の距離計測および角度計測を行った。 (1)硬組織(図2). ⑤ 下唇部外形線 でF H平面の垂線と接する点(下唇鼻突出. (i)骨格系 ① 平面と顔面平面の なす角. 点). (i)骨格系 ① ② @Mandibular plane @Y-axis ⑤SNA ⑥SNB ⑦ANB ⑧ ⑨ 歯牙系 @Interincisal @Ul to FH ⑫ @Ll to Mandibular plane @IJl to Xi-Pm. 図2 頭郭Ⅹ線規格写真分析に用いた硬組織計測項目 -- 41 -.
(5) 458. 氏家,他:口蓋裂矯正患者の下口唇突出に関する検討. ② :NIAと のなす補 角, Aが顔面平面より前を正とする ③ 平面と下顎下 縁平面のなす角度 ④ 平面と のなす角度 ⑤ のなす角. (2)軟組織(図3) ① と のなす角度 ② を通るFH平面の垂 とSnの距離 ③ :. ⑥ のなす角 ⑦ を結んだ線とN-Bを結ん だ線がなす角度 ⑧ :下顎下縁平面と下顎枝 後縁平面のなす角 ⑨ : FH平面と下顎枝後縁 平面のなす角 歯牙系 ① 上下顎中切歯歯軸の交差角 ② : FH平面と上顎中切歯歯 軸のなす角 ③ 平面と下顎中切歯歯 軸のなす角 ④ 下顎中切 歯歯軸と下顎下縁平面のなす角 ⑤ 主 を通るⅩ主Pm からの垂歯とL l問の距離(図4). Gを通るF H平面の垂線と の距離 ④ SnとSn-Lsのなす角度 ⑤ :Snと を結んだ線とLs問の 距離 ⑥ と を結んだ線とLi問の 距離 ⑦ - を通る からの垂線とLi問の距離(図4) 4)計測方法 各計測項目について矯正分析システム (Cephalometric AtoZ, YASUNAGA Laboを用いて計測を行った。 5)検討項目 各計測結果について平均値および標準偏差を算. OG-SNIPogs(Facial convexity angle) OGISn(Maxillary prognathism) OGIPogs(Mandibular prognathism ) 1 ; 1 1再 OLs to Sn-Pogs(Upper lip protrusion) 01Ji to Sn-Pogs(Lower lip protruslOn) OLi to Xi-Pm. 図3 頭部Ⅹ線塊格写貢分析に用いた欧組織計測項目 -42 -.
(6) 歯科学報. 459. 下顎前歯の移動量とF唇の移動量との関係に ついて 検定を行うにあたり,各計測値を正雄確率紙に て検討した結果,正塊分布に従うとは言えなかっ たので,ノンパラメトリック検定を用いた。すな わち,各群について矯止治療前後の差の検定には の符号付順位和検定,また治療前およ び治療後における両君羊の差の検定には の検定を用いた。なお,検定はすべて 有意水準5%とし,統計処理には統計解析ソフト ウェア 社). 図4 下唇と下顎前歯の移動量に対する計測項目 出し,以下の内容について検討した。. を使用した。また,矯正治療による下顎前歯お よび下唇の移動量は,治療前後における Ⅹ主 の計測値より算出し,杏. (1)片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者と破 裂を伴わない反対唆合患者の矯正治療前にお ける硬軟組織形態の比較. 群における数値を比較検討した。 (図4). (2)片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者と破 裂を伴わない反対唆舎患者の矯正治療後にお ける硬軟組織形態の比較. 結 果 1.片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者と破裂. (3)片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者にお ける矯正治疲前後の硬軟組織形態の比較. を伴わない反対唆合患者の矯正治療前における 比較. (4)破裂を伴わない反対唆合患者における矯正 治療前後の硬軟組織形態の比較. 1)硬組織分析結果(表1) C群はR群と比較して SNBにおいて有意に小さい値を示し,上下顎. (5)片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者と破 裂を伴わない反対唆合患者の矯正治療による. の後退が認められた。また. 表1 硬組織分析結果 C再. 治療前. 治療後. M ean l S .D .. M ean I SID I. M Can I S lD .. M Can I S -D .. 8 3. 8. 3. 8. 83 l7. 2. 3. 6. 8. 3 .5. ③. 3 1. 5. 6 .4. 言〕-0. @ Y-axis (つ. 6 3. 4. 4 l8. 65 .9. ⑤. 73- 8. 3 .4. @ SNB(o). 74. 3. 4 .1. -. l. ⑦. C群前とR群前 C群後とR君羊後 C群前とC群後 R酎前とR離後. 治療後. ㊨ @ Convexlty (0 ). 有意差検定. R嘉 羊. 治療前. 0l 5 1 32. 9. S. Gonlalangle (o ). 78. 7. ⑨ @ InterlnCISal (o ). 1 5工 7. 〕`〕 -. 3. 9. 89. g. 4 .0. 卓亘 誉. 3言. **. **. 2. 6. 6 .3. l. 5. 6 .6. 負.S .. 負.S.. 6. 4. 26. 5. 4 .2. 2 7. 0. 4 .7. n .S .. 、. 4. 5. 59. 7. 〕`=. 6 0. 4. :‖. `. ★`. 73 . 1. 4. 5. 80 .3. 4. 8. 8 1. 1. 4 .4. ◆◆. ◆◆. 73 . 5. 〕言. 8l l4. 5. 0. 8工 0. 4 .1. **. ◆◆. .‖. 3. 2. 1 .0. 2l 8. 0. 2. 2 .3. n .S .. n lS .. 柄. 卓つ. 13 0. 1. 5. 6. 126 .8. 5. 7. 1 25. 5. 吾∴. ◆. n ▼S .. 十千. 82 l 9. 4. 3. 79 .7. 5. 2. 81. 5. 4 .4. n lS .. m S.. 16 .1. 12 9. 6. つ .I. 128 l2. 9. 7. 1 32. 2. 8 .8. ◆◆. 負.S .. 10 」. 1仕. 6. 8 .0. 113 .3. 8. 0. 1 18. 4. 6.7. 日. 8. ⑪. 90 .6. ⑫. 甘 言. 8 .6. 6上2. 10 .3. 6 工5. 9. 3. 70- 6. 8.3. n .S .. .. ⑬. 86 .1. 6 .9. 8 5- 8. 7 .2. 92 .0. 丁` 3. 82. 5. ∴6. n .S .. a .S .. 8 .7. 2 .6. l l. 1. 3 .0. 7.9. 3. 1. 12 .7. 5▼2. n lS .. n .S .. ⑭. l. -. 各群間での有意水準 : く5% 招: - 43 -.
(7) 氏家,他:口蓋裂矯正患者の下目酋突出に関する検討. 460. は有意に大きく,下顎骨は開大していたo. ていた。口唇の形態としては は有 意に大きい値を示し,下唇の突出が認められた。. 歯牙系では が有意に小さく,著し い上顎前歯の舌側傾斜が認められ. 3.片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者におけ る矯正治療前後の比較. も有意に大きい値を示した。 2)欧組織分析結果(表2) C群とR群と比較して. 1)硬組織分析結果(表1) は2. 80減少していたが. の項目にお いて,有意に小さい値を示し,上下顎に相当する. は2. 50 は と有意に増加し, 下顎骨の関大を認めた。歯牙系では. 炊組織の後退が認められた。 は小さい値を は大. が210の増加に伴い は Oと有意 に減少し,上顎前歯の唇側傾斜は上唇の形態に良. きい値を示し,口唇の形態として上唇が後退する 傾向を示した。. い影響を与えた。 主Pmは の後 退を認め,下唇の後退に関与している。 2)軟組織分析結果(表2) は0.80. 2.片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者と破裂 を伴わない反対唆合患者の矯正治療後における 比較. は の増加. 1)硬組織分析結果(表1). は0.30の減少を示したが,側貌軟組織形態とし て著明な変化は認められなかった。 は と有意に増加. C群はR群と比較して,治療前と同様にFaが有意に小さく,上下 顎の後退を示した。また. は は. は有意に大きく,下顎骨の開大を認め た。歯牙系では とも. 9.90と有意に減少し,口唇の形態においては有意 な変化を認めた。. に有意に小さい値を示し,上顎前歯は舌側傾斜 を,下顎前歯は唇側傾斜を示した0 2)軟組織分析結果(表2). 4.破裂を伴わない反対唆合患者における矯正治. C群はR群と比較して,治療前と同様に. ANBは と有意に増加し,上顎骨の前方成 長が認められた。 は 増加して. 療前後の比較 1)硬組織分析結果(表1). Maxillary prognathism, Mandibular pr0において,有意に小さい値を示し,治. いたが は の滅少を示し,下 顎骨の関大する傾向は少なかった。歯牙系におい. 療後においても上下顎に相当する軟組織は後退し. 表2 軟組織分析結果 C群. R群. 治廃前 M Can ". .D l. M ean ". -D l. 有意差検定. 治酎 Tj. 治療後. M ean l S.D l. M ean j S .D .. C君羊前とR群前. C茸徹とR君羊後. C官揃とC群後 R君揃とR君後. 6.6. 4. 2. 7 .2. 5つ. 7. 1. 6. 6. 5 .4. a .S `. ∩.S .. 負.S .. 3 .3. 3.7. 2. 9. 4 .2. 4 .6. 3 .6. 6. 2. 3 .2. ◆◆. 出. 負.S .. -. 8 -5. 8.0. 8. 9. 7. 4. 2 .9. 8-8. 4. 2. 7 .0. *♯. 目. n .S.. 0 Nasolabial angle (mm). 115. 6. l l.4. 10 5. 7. 8- 2. 110 l9. l l.0. 1 11. 7. 6言. 負.S .. a .S .. .千. 負. 0 L'押e上 uSニLm U. 5. 1. 2 l8. 6. 4. 2. 7. 6 .2. 2 .0. 5. 7. 2. 0. n .S .. n .S .. ◆. m. 0 LL服 庸 二l. 8. 0. ニ3. 信. 3. 4. 7 .2. 2 .1. 4. 3. 1. 9. n .S .. n .S .. 0 LltOXl-Pm (mm). 9. 2. 2 .8. 8. 5. 三` 6. I- 5. 3 .2. 4. 0. 2. 7. a .S .. 棉. 0 MlL主.四 五 二二【1\. a. 3 .4 -. a. n. 0 Facial convexity (つ 0 Mx. prognathlSm (mm). 治痴後. *. 辛. .. 負.S.. i. 各群問での有意水準 出: pく1% 一44 -.
(8) 歯科学報. 461. ては は と有意に増加し,上顎. 被験者は,下顎前歯の吉例移動に対応する下唇. 前歯の唇側傾斜を は9. 10と有意に 増加 は と有意 に減少し,下顎前歯の舌側傾斜を認めた。. の後退室の検討のため,下顎前歯に叢生がなく, 前歯部の被蓋改善のために下顎第1小臼歯を便宜. 2)軟組織分析結果(表2) は0.80 は0.4の増加 は0.30の減少を示したが,側貌軟組織 形態として著明な変化は認められなかった。 は と有意に増加, は. は9.90と有意に減少し,口唇の形態におい ては有意な変化を認めた。. 抜歯して矯正治療を行った症例を選択した。上顎 に関しては叢産の除去および大臼歯関係の改善の ために第1小臼歯を便宜抜歯して治療を行った症 例と,上下顎骨の前後的位置関係の不正の程度が 強く非抜歯にて治療を行った症例が混在し,抜歯 に関する蓋準は設けなかった。なお,口蓋裂を伴 う反対唆合患者に関しては,口唇の2次的な修正 術を行った症例は除外した。側貌軟組織におけ る計測点および計測項目は らの tissue cephalometric analysis for orthogna-. 5.片側性酋顎口蓋裂を伴う反対唆合患者と破裂. から引用した。治療前後の下顎前. を伴わない反対唆合患者の矯正治療による下顎 前歯の移動量と下唇の移動量との関係について (表3). 歯と下唇の突出室の計測については,反対唆合患 者の治療期間が長期にわたることから成長による 影響を考慮する必要があった。そのため, Pmを. C群のIIF顎前歯の舌側への移動量は平均2. 4 mm,それに伴う下唇の後退室は平均 で. 通る の垂直と下顎前歯の切端の距離と, 同様に計測した下顎前縁との距離を用いた。 Ⅹi. あり, R群の下顎前歯の舌側への移動量は平均 それに伴う下唇の後退量は平均 であった。各群において下顎前歯の舌側への移動. ポイントは幾何学的に求めた下顎枝の中心であ り,角轄1」学的には下顎孔の位置に相当し,その形. 量を1とすると,それに伴う下唇の後退室はC群 は 群は であり, C群はR群に比べ53 %の後退量を示した. 考 察. 態変化において相対的に安定した部分であると考 えられる ポイントは下顎結合部の正中矢 状断面状の前縁で解剖学的にはオトガイ隆起の 上縁を示し,下顎骨の成長に伴う形態変化に影響 されない安定した部分と考えられている. 1.研究方法について 本研究では片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患. Pmは下顎骨の長さを表し,下顎骨の絶対的な大 きさを表現するだけでなく,下顎骨における重ね 合わせの蓋準平面として用いられ歯牙移動の評価. 者14症例と,破裂を伴わない反対唆合患者12症例 の側貌頭部Ⅹ線塊格写貢を資料として,矯正治療. に役立っている。以上の計測点を用いることで, 成長による影響の少ない安定した計測値を得るこ. 前後における側貌軟組織形態の比較と,被蓋改善 に伴う下顎前歯の移動量とそれに連動する下唇の 移動量について計測を行ったO. とができたと考えられる。 2.計測結果について 1 )片側性唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者と破裂 を伴わない反対唆合患者の矯正治療前後におけ る軟組織側貌形態の比較について. 表3 下顎前歯および下唇の移動量. 唇顎口蓋裂患者の形態的特徴として,上顎骨 劣成長,上顔面高短小,下顎枝高短小,下顎角 関大,上顎前歯の舌側傾斜などが認められてい る3)魂)0本研究のC群の矯正治療前における硬組 45-.
(9) 462. 氏家,他:口蓋裂矯正患者の卜口唇突出に関する検討. 織分析結果においても, R群と比較し上上下顎骨. 口唇の形態が上下顎前歯に影響を受けることは. の後迫,下顎骨の関大,上顎前歯の舌側傾斜が認 められ,今までの報吾と一致した所見が得られ. 数多く幸屋菖されている。 は非抜歯の矯 正治療では側貌の調和が待られない症例があった. た。そして,側貌欧組織の形態としては上下顎骨 に相当する軟組織の突出が少なく,置線的な側貌. ことから,抜歯治癖の蓋準と治疲法を発表し, "側貌の調和に対して下顎中切歯の歯軸が大きな. 形態を示した。口唇部においては,上唇は口唇形 成術の戚痕による緊張のため,その突出は小さく. 影響を有する''と述べ,矯正診断において下顎 中切歯歯軸を重視した。また は矯. 后辛であり,これに対し下唇の突出は大きく融転 し,上下唇の不均衡が強く認められた。 矯正治療による変化として,成長朗における被. 正治療で下唇に影響を与えるのは上下中切歯, であると報害している。白. 裂を伴わない反対唆合患者は,前歯被蓋の改善に より上等貢骨の成長が促進されると述べられてい. 井13)は口唇部を中心とした欧組織と,これに対応 する歯牙硬組織は極めて高い相関を示し,上唇と 下唇では卜唇の方が歯牙硬組織との関連性が高. る ように,本研究轟吾栗においてもR群の治療 後の上顎膏は,治療前と比較してわずかに前方位. く,下唇の形態は上下中切歯 などが影響を与えると報害している。与五択14)は. を示し,その成長が認められた。しかし, C群で は治療前に比べ後退する傾向を示し,口蓋裂患者. 上下唇の突出度は各々中切歯の突出度と相関があ り,また下唇の突出度且上顎中切歯の突出度と相. の上顎骨の成長は,前歯被蓋の改善という機能的 な環境変化に影響されないとする糖塚10)らの見解 と一致した。下顎骨においては, R群では前方へ. 関があり,これらのうち下顎と上顎中切歯との相 関が鼻も高かったと報害している。また石沢15)も 上顎中切歯切端は下唇に覆われており,これら二. 成長する傾向を示したが, C群では前方成長は認 められず,ド顎骨は関大していた。そして,その. 者の問に緊密な関係があると述べている。 本研究では下顎前歯の移動量に対応するF:唇の. 軟組織側貌形態として, C群では上下顎骨に相当 する炊組織の著明な変化は認められず,治療前と 同様に直線的な側貌形態を示した。被蓋改善に伴. 移動量を算出した。ド顎前歯の後退室を1とする と,それに伴うド唇の後退量はC群は 群 は であり, C群はR群の53%の後退室であっ. い,ド唇は後退したものの, R群と比べその値は 小さく,正被蓋の獲待は下顎骨の関大とヒ顎前. た。卜つ尋の突出量が上顎中切歯と相関が高いなら ば, C群がR群に比べて下唇の後退量が少ない理. 歯の唇側傾斜によるものであった。上顎前歯の 唇側傾斜により,上唇の突出および. 由のひとっとして,治療に伴う上顎中切歯の唇側 傾斜が考えられる。. の減少が認められ,上唇部の形態が改善さ れたO しかしながら,下唇の後退量が少ないため に前実感は残存し,直線的な側貌形態によってそ. C群はR群に比べ矯正治療に伴う口唇形態の変 化が少なく,下唇が突出する傾向にあり,側貌に おける美的調和の獲得は困柴であるo 唇顎口蓋. の突出がより強調されている。 R群においては, 上下顎骨に相当する軟組織は共に治療前と比較し. 裂症例において下唇が突出を示す原因につい ては,骨格的な上下顎の後退だけでなく,口輸筋. て前方位を示し,上下顎および側貌形態としての 突出度は増加した。 iE被蓋甘ド顎前歯の後退に よって獲得されるため,その後退室も多く,従っ. の連続性の欠如,日呼吸,舌習癖,異常嘩下など に関連する問題も多く. て下唇が後退し,顧都の前方成長も影響して良好 な側貌形態が得られた。. 関係している。そして,上下酋不均衡は下唇だけ ではなく,上唇の形態も影響している。上唇部に おける欠損の形態や範囲は様々であるが,術後に. 2 )下顎前歯の移動量とF唇の移動量との関係に ついて. より緊張の少ない上唇を形成する手術法を選択す ることは,顎顔面の成長発育や矯正治療の効果 46.
(10) 歯科学報. 463. および治癒後の安定性により良い結果をもたらす こととなる.また,緊張の強い上唇に対しては下. 参 考 文 献 1) 01in, W. H. : Orthodontic treatment in different sta ∴ sciplinary Management of Cleft Lip and Palate, ed. by Bardach, J. and Morris H L" pp.649-. 唇を含む手術的整容として 法の適応や, の応用を計り, 唆合の建設ばかりでなく整容的な配慮を治疲計画 の中に積極的に取り込む必要があると考えられ る。. っ っ. 2)高橋庄二郎:口唇裂・口蓋裂の基礎と臨床,日本歯 科評論社 3)許 為勇,鮎瀬節子,滝葎良之,他:反対唆合治療 前後における片側性唇顎口蓋裂と非破裂患者との歯顎 顔面形態の比較-混合歯列斯において-,目n蓋誌,. 結 論. 12:. 唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者の矯正治療前後 における側貌軟組織形態と,下顎前歯の移動に対. 4)開口武司:片側性唇顎口蓋裂患者の顎顔面頭蓋の形 態-頭部Ⅹ線規格写貢による研究-,口病誌. 応する下唇の変化を調べることを目的として,破 裂を伴わない反対唆合患者における矯正治療前後. 5)林 勲:片側性唇・顎・口蓋裂の顎・顔面頭蓋の 成長-頭部Ⅹ線規格写貢法による研究-,目矯歯誌,. のそれらと比較検討を行った。被験者は前歯部の 被蓋改善のために下顎第1小臼歯を便宜抜歯して. 6)皆葉寿樹:唇顎口蓋裂患者における顔面頭蓋の成長 発育ならびに頚椎異常に関する研究,歯科学報. 矯正治療を行った,片側性唇顎口蓋裂を伴う反対 唆合患者14症例と破裂を伴わない反対唆舎患者12 症例である。それらの矯正治疲前後における側貌. 7)北村 隆:歯科矯正治療を受けた片側性完全唇・顎 ・口蓋裂患者の頭蓋・顔面の成長一側方頭部Ⅹ線塊格 写貢による経年的研究∼, E]口蓋誌. 頭部Ⅹ線塊格写真を用いて,角度および距離計測 を行い,以下の結論を得た。. 8)根津 浩,永田賢司:歯科矯正学rバイオプログ レッシブの臨床」,ロッキーマウンテン・モリタ社, 3. 375-390, 1971.. 34 : 33-65, 1975.. 1269-1318, 1972.. 1982.. 1.矯正治療前において,唇顎口蓋裂を伴う反 対唆合患者は破裂を伴わない反対唆合患者と比較 して,上下顎部の側貌欧組織の後退が認められ た。口唇の形態としては,上唇の突出は小さく, 下唇の突出が著明であった。. 5-41, 1988. 9) Harry L. 1egam, Dos, Dallas ; and Charles J. Burstone, DDS, MS, Farmington, Conn. : Soft tissue. cephalometric. analys上s. for. orthognathic. sul甘、lT, tT 二「, 」4-715上. 2.矯正治療後において,唇顎口蓋裂を伴う反 対唆合患者は上顎前歯の唇側傾斜に伴う上唇の突 出,下顎前歯の後退に伴う下唇の後退が認められ た。側貌軟組織形態としては上下顎部が後退し, 治療前と比較して著明な変化は認められなかっ た。 3.下顎前歯の舌側移動に対応する下唇の後退 量は,唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者は破裂を伴 わない反対唆合患者の約5割であり,唇顎口蓋裂 を伴う反対唆合患者は硬組織に対する軟組織の反 応が小さかった。 以上より,唇顎口蓋裂を伴う反対唆合患者にお ける矯正治療後の側貌軟組織の審美的な改善は, 破裂を伴わない反対唆合患者に比べ困兼であると 示唆された。. 10)糖塚嘉穂,三谷英夫ほか:思春期最大成長期以前に おける前歯正常被蓋の成立が上顎骨の成長,上顔面形 態に及ぼす影響についてI-「片側性唇顎口蓋裂患者と非 裂反対唆合者との経年的比較-,日日蓋誌, 16 : 120 -129, 1991.. 1D Tweed, C. H. : The frank fort-mandibular plane angle in orthodntic diagnosis, Ciassifcation, treatment planing, and prognosis, Amer. J. Orthodont" 32 : 175-230, 1946. 12) Bloom, A. T. : Perioralprofile changes in orthodontic treatment, Amer. J. Orthodont., 上. 13)白井俊雄:口腔周囲における硬軟組織側貌形態の比 較検討について,歯学, 62: 14)与五択文夫:頭部Ⅹ線規格写真による側貌における 硬組織と軟組織の関連性について,目矯正歯会誌, 28 : 33-60, 1969.. 15)石沢命久,高田富三男:口唇形態と前歯並びに前 歯々槽傾斜度間に存在する相互関係に関する研究,冒 矯正歯会誌. - 47 -.
(11) 464. 氏家,他:口蓋裂矯正患者の下口唇突出に関する検討 Evaluation of lower lip protrusion using lateral cephalometrics in unilateral cleft lip and palate patients before and after orthodontic treatment ∴ \KA ,Y. I. Kunihiko NoJTMA, Morihiro HARAZAKT, Yasushige IssHIKT Department of Orthodontics, Tokyo Denta_1 College (Chairman : Prof. Yasushige Isshiki) Key words / cleft lip and palate-anterior crossbue-soft tissue profile-lip form. This study lnVeStlgated soft tissue changes during orthodontic treatment in patients with anterior crossbite UCLP (unilateral cleft lip and palate) and lower lip changes corresponded to lingual movement of lower incisors. We compared UCLP with non CLP. Results showed that before treatment, the soft tissue profile of UCLP demonstrated retrusion of the soft tissue corresponding to the maxilla and mandible, and the lower lip protruded slgnificantly. After treatment, upper and lower lips changed with incisor movement. However, lower lip retraction with incisor lingual movement in UCLP was less than that in non CLP. It suggested that UCLP's lower lip retraction were inferior to non CLP, and reaction of soft = W野e I I Therefore, it was suggested that improvement of soft tissue profile after orthodontic treatment is more difficult to obtain in UCLP than in non CLP. (The ShihLua Gahuho, loo : 455-464, 2000). 一48一.
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