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新借地借家法における借地権の性格 一一「改正」過程と「定期借地権化」の論理一一

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(1)

入 量A E冊 説

V

新借地借家法にむける借地権の性格

l

﹁改正﹂過程と﹁定期借地権化﹂の論理││

士 口

281一一『奈良法学会雑誌』第8巻3・4号 (1996年3月〉 目 次 一 は じ め に 二当初の存続期間について 三更新後の存続期間について 四建物の滅失・再築と借地権の存続期間 五結びに代えて 1 1 1 新法の解釈と政策的観点││ t工

め 新借地借家法(以下では﹁新法﹂とする)が施行されてから早くも数年が経過した。この新法の立法過程では、 法務省はもとより、不動産業界および法律学研究者や実務家等によって立法論やその前提としての政策論とくに都市 的土地利用の在り方の問題やそこにおける借地法制の課題などをめぐって多くの議論がかわされたことは記憶に新し 付

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第 8巻 3・4号一一282 ぃ。この借地・借家法﹁改正﹂問題は、わが国の高度成長期以降における社会の工業化・都市化やそれにともなう都 市への人口集中が都市における土地利用のあり方に大きな影響を与えていたことのみならず、折しもバブルによる地 価高騰によって住宅問題をふくむわが国の都市的土地利用における諸問題の顕在化とからみつつ、 八

0

年代後半から 九

0

年代にかけての現代民法学における最重要論点の一つとなったといってよいであろう o もちろんさまざまな議論 を経て新法が施行された現在においても、今回の借地・借家法﹁改正﹂の立法論的妥当性や﹁改正﹂のもつ社会的意 味を批判的に検討する作業がなお重要であることはいうまでもない。しかしその妥当性はともあれ、新法が制定施行 されたという事実をふまえた場合、右にあげた課題とともにまたその課題とも関連しつつ、新法の解釈に関する議論 が今後ますます重要となってこよう。いいかえれば、我が国における都市的土地利用のあり方をめぐる議論は、新法 の解釈という新たな土俵においても展開されなければならない段階にあるといえるのである。 本稿は、このような観点から、八新借地借家法における普通借地権の性格

V

という問題について検討をくわえ 七) ょうとするものである。周知のように、今回の借地・借家法﹁改正﹂では様々の点について従来の借地法の内容に変 更がくわえられたが、そこでは新しい借地権の類型である定期借地権の導入とともに、従来からの借地権(これを先 の定期借地権との関係で︿普通借地権﹀という)についてもその存続期間や正当事由制度をふくむ更新制度などが大 幅な変更をうけた。その変更点はおよそ以下のようになっている。 ①まず当初の存続期間について、新法は一律に三

O

年(ただしこれより長期の期聞を定める特約は有効とされる) と し た ( 三 条 ) 。 ここでは堅固・非堅固という建物の構造的区別による存続期間の違いを廃止し、期間の定めの ない場合の存続期間および期間の定めのある場合の約定最短期間をすべて三

O

年 に 統 一 し た 。

(3)

②期間満了時における更新制度については、法定更新制度の適用を建物が存在する場合に限定した(新法五条二 項 ) 。 建物が存在しない場合にも、土地の使用継続によって借地権が更新されることは ゆえに、旧法のように、 なくなった。そして更新における﹁正当事由﹂の内容を明確化した(新法六条)。 ③更新後の存続期間については、長期の特約がない限り、第一回目の更新から二

O

年、二回目の更新以降は一

O

年 と し た ( 新 法 四 条 ) 。 283一一新借地借家法における借地擦の性格 ④建物の朽廃による借地権消波の制度を廃止し、建物誠失の場合に二克化した。 ⑤建物が誠失した場合の扱いについては、当初の存続期間における滅失と更新後のそれとを区別し、まず、当初の 存続期聞における滅失の場合、再築について借地権設定者の承諾があれば承諾もしくは築造のいずれか早い日か ら 二

0

年間の期間延長があり、承諾がなければ期間延長はないとした(新法七条)。これに対し、更新後の存続 期間における滅失の場合、残存期間を越える建物の再築には借地権設定者の承諾を要するとし、承諾なしに再築 R -A ? " -J

JIJJ 可L 借 した場合、三ヶ月の猶予期聞をおいて、借地権設定者は解約権を取得するとした(新法八条二項)。 地権者の申し立てがあれば、裁判所は、非訴事件手続きによって、承諾に代わる許可を付与することができると し た ( 新 法 一 八 条 ) 。 このような変更を受けた普通借地権の性格については、従来基本的には旧借地法における借地権を承継したものと 理解されてきた。しかし最近この普通借地権の性格について上記とは異なる見解が有力に主張されている。この見解 によれば、新法における普通借地権は、﹁旧法上のそれと明確に性格を異にする﹂ものであり﹁その実質において定 期借地権化﹂したものと理解されるべきだというのである。ここで﹁定期借地権化﹂とは、新法において、形式的に

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第8巻 3・4号一一284 は普通借地権は更新制度を有し定期借地権は更新制度のないものとなっていることを前提としつつ、実質的には﹁普 通借地権もまた法定ないし約定の存続期聞をもって基本的に終了すべき借地権であって、当初期間については土地保 有権としての権能(再築権)を認められるが、その満了後は更新であれ再築承認を理由とする伸長であれ、建物が残 存するかぎりでの敷地利用権として余後的に存続が認められるにとどまる﹂とする理解を指している。この見解によ ﹁従来型﹂の普通借地権を原則的形態とし定期借地権を例外的形態と位置づけるのではなく、普通借地権が実 れ ば 、 質的に﹁定期借地権化﹂したことによって新法の借地権は全体が定期借地権的性格のものとなったとし、逆にいわゆ る定期借地権もそのような意味での普通借地権のバリエlションにすぎないと位置づけることになる。 つ ま り 新 法 は 、 全体として定期借地権にシフトしその八定期性借地権の二類型

V

として︿いわゆる定期借地権﹀と︿ファジーな定期 借地権としての普通借地権﹀があると理解するわけである。このように新法において普通借地権が﹁定期借地権化﹂ したとする見解は、新法の基本的な構成に関する考え方を大きく変えることを意味している。さらにまた、そのこと は、たんに新法の抽象的な構造理解の問題にとどまらず、具体的問題についても無視できない影響を与える可能性が たとえば新法六条に規定される更新制度における﹁正当事由﹂の解釈において、これを基本的には旧 あ る 。 そ れ は 、 法四条一一項のそれと同様に解釈するのではなく、むしろ普通借地権が﹁定期借地権化﹂していることを確認する方向 で、誤解を恐れずにいうならば結果的には従来よりは更新を制限する方向で解釈するという形で現れてくることにな ろう。また新法における普通借地権の存続期間等に関する規定は、今回の﹁改正﹂問題の議論の過程で最終的には既 存借地関係に制度上影響を与えないこととなり、立法担当者もそのように説明している。じかし、当初の議論では既 存の借地関係は暫時解消されるべきものとする考え方が前提とされていたことを考えあわせるとき、新法における普 通借地権を︿定期借地権のヴァリエーション﹀とみることは、今後の裁判所における既存借地関係に関する解釈に影

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響を与えないともいえないであろう。 そうであるとすれば、普通借地権の﹁定期借地権化﹂は、借地権全体の存続保障を弱めていくという可能性があり、 それは借地法制の在り方を従来のそれから大きく旋回させることを意味しているといえる。しかし普通借地権をめぐ る今回の﹁改正﹂は、そのような内容を持つものであったのだろうか。この見解の意味するところが重要なだけに、 その解釈論としての妥当性は慎重に吟味される必要があろう。 そこで本稿では、普通借地権に関する﹁改正﹂過程をたどることによって、新法が普通借地権に関して行った 変更の意味を①当初の存続期間、②更新後の存続期間、③建物の誠失と再築の場合について検討し、新法における普 通借地権がなお基本的には﹁従来型の借地権﹂と理解されるべきことを明らかにしたい。 白 当初の存続期間について 285一一新借地借家法における借地権の性格 当初の存続期間について、旧法は、期間の定めのない場合、堅固の建物については六

O

年、非堅固の建物につ い て は 三

O

年とし、当事者が期間の定めを行う場合には、その最短期間を、堅固の建物については一ニ

O

年、非堅固の 建物については二

O

年と規定する。ただしこの期間内でも、建物が朽廃した場合には、借地権は消滅する(旧法二条 ) 0 付 新法はこれを一律に三

O

年(ただしこれより長期の期聞を定める特約は有効とされる)とする(新法三条)。 旧法と 比較すれば、ここでは①堅固・非堅固という建物の構造的区別による存続期間の違いを廃止し、②期間の定めのない 場合の存続期間および期間の定めのある場合の約定最短期間をすべて三

O

年に統一したこと、③法的存続期間の適用 される建物がその期間満了前に朽廃した場合に借地権が消滅する制度(旧法二条一一項但書)を廃止したこと、が変更 点 で あ る 。

(6)

第8巻 3・4号一一286 このような変更は、すでに法務省民事局参事官室﹃借地・借家法改正に関する問題点﹄ ﹃問題点﹄として引用する)でも一訴されていたものであり、法務省民事局参事官室﹃借地法・借家法改正要綱試案﹄ (以下では﹃試案﹄として引用する)では条文の体裁の点を除けばほぽ新法と同一の規定となってい ( 一 九 八 五 年 ) ( 以 下 で は ( 一 九 八 九 年 ) た。そして同じ法務省民事局参事官室による﹃﹁借地法・借家法改正要綱試案﹂の説明﹄(以下では﹃試案の説明﹄と まず堅固・非堅固の取り扱い上の区別を露止した根拠については、①現在の建物建築の実 して引用する)によれば、 際においては、堅固の建物と非堅固の建物とが、社会的・経済的な耐周年数の点でもまた築造のための投下資本の金 額の点でも、大きな差がなくなっていること、②また当事者意思の推定による存続期間の設定としても、堅固・非堅 その存続期間の長短について客観的な判断をすることが容易でないこと、があ げられている。③さらに法定存続期間と約定最短存続期間との一律化の点については、立案担当者によれば、旧法で 固という建物の種類・構造のみから、 も堅固の建物について実際上意味を持っていたのが約定最短期間の一ニ

O

年であったことが示すように、今日の借地契 約において期間に関する約定がない場合はほとんどなく、今後においてもその事情は変わらないと考えられることか ら、あえて約定最短期間と区別してこれと異なる法定存続期間を設定する意味は薄いこと、④さらに旧法では法定最 短期間よりわずかでも短い存続期聞を定めた場合(たとえば堅固の建物についてご一

O

年 よ り 短 い 二 九 年 と し た 場 合 ) 、 その存続期間が法定最短期間どうりの存続期聞を定めた場合より著しく長くなる(前記の場合六

O

年となる)という 不合理を回避することができること、という理由があげられている。 以上のように新法が建物の構造による区分を廃止し、法定存続期間と約定最短期間を一律化したことは、おお むね﹁無用な複雑さの除去・合理化﹂として肯定的に評価されている。しかし普通借地権が﹁定期借地権化﹂したと 仁) する見解との関係では、存続期間の長さがなぜまたいかなる意味で一ニ

O

年なのかという点が重要である。この点に関

(7)

して﹃試案の説明﹄は次のように述べている。すなわち存続期間は、 ﹁契約の更新の拒絶に正当事由の存在が要件と なっており、存続期聞が満了してもその時点で借地関係が原則として終了するという構造がとられていないことを考 慮すると、約定最短期間は、建物所有による土地の利用関係に必要な安定性を一応保障できる期間として設定される べ き で あ ろ う 。 ﹂ という。そして堅固の建物について旧法の定める約定最短期間が三

O

年であり、実際にもこれが一 般的に機能してきたことからみても、また一般の建物の社会的・経済的耐用年数という点からみても、一応の安定性 を保証する期間としては三

O

年が相当であるとしているのであ浦山つまり当初の存続期間三

O

年は、右の引用に見ら れるように入当初の存続期間満了によって借地権が終了するという原則的構造がないことを前提として設定された期 聞すなわち正当事由による更新制度の存在を前提とした期間

V

という趣旨のものなのである。同様に、立案担当者も、 287一一新借地借家法における借地権の性格 一方では建物の社会的・経済的耐用年数からすればコニ

O

年が一応の安定性を保障する存続期間として相当である﹂ としつつ、他方では正当事由制度の導入以前(昭和二ハ年改正以前)では、建物の寿命が尽きるまで存続させること が当事者意思であると推測して長期の存続期聞を定める意味があったが、正当事由制度によって﹁当事者双方の事情 に応じて契約の更新がされていく法制度になった後は、期間の長さを建物の寿命と結びつけて考える必然性は薄れ た﹂としていることから、原田氏が指適しているように、当初の存続期間の性格は﹁建物の社会的・経済的な耐周年 数を考慮しつつも、他方では、その期間の経過後に正当事由制度の適用を受ける更新がなされうることを前提とした うえで、当初に必要な一応の安定性を確定的に保証しうる期間﹂と理解すべきであろう。もちろんこの﹁一応の安定 性を保証する期間﹂という表現は、他方で更新後の借地関係を﹁安定性が一応保障された後の問題﹂と捉えることを 意味してもいるが、この面のみを見ることが、 一面的な理解であることはすでに述べたことから指摘できよう。

(8)

第8巻 3・4号一一288 更新後の存続期間について 付 更新後の存続期間に関する変更は、今回の﹁改正﹂事業の中でも重要なポイントといえるので、以下でもやや 詳しく検討することにしたい。 旧法においては、借地権の更新については合意更新(旧法五条)のほかに、法定更新制度があった。それに よれば、①当初の存続期間満了時に建物が現存している場合には、借地人は更新請求権を行使することができ、その ま ず 、 場合建物が朽廃しない限り、更新後の存続期間は堅固の建物については三

O

年、非堅固の建物についてはニ

O

年とさ れており、この際、借地権設定者が更新を阻止するためには、借地人の更新請求に対して遅滞なく意義を述べるとと もに﹁正当事由﹂を備えなければならないとされていた(旧法四条)。 ②また借地権消滅後の土地の使用継続に対し て借地権設定者が遅滞なく意義を述べなかった場合も、全契約と同一条件で借地権が設定されたことになり、土地所 有者が遅滞なく異議を述べたとしても、建物が現存している場合にはさらに﹁正当事由﹂を要すると規定されていた ( 旧 法 六 条 ) 0 これに対して新法は、旧法の正当事出方式による法定更新制度を期間満了時の借地関係取り扱いの基本的方式とし つぎのような変更を行った。すなわち①更新後の法定最短存続期聞を一律に第一回目の更新につい て は 維 持 し つ つ 、 ②法定更新制度の適用を建物が現存する場合 に限定し、建物がない場合における借地権者の土地使用継続による更新の可能性を否定した(新法五条二項)。 て 二

O

年、第二回目以降の更新については一

O

年 と し た ( 新 法 四 条 ) 。 ③ ② において、転借地権者の土地使用継続を借地権者本人のそれとみなす規定をおいた(新法五条三項)。④﹁正当事由﹂ 規定の内容を﹁明確化﹂した(新法六条)。

(9)

これらのうち②については、更新請求が建物の現存する場合に限定されていることとの均衡が考慮されたことと、 旧法でも建物が存在しなければ借地権者は正当事由なく更新を拒絶しうるのであるから実質的に旧法と変わらないと いえる。③も転借地人がいる場合の関係を明確にしたものであり問題がない。また④の点は本稿との関係でも重要な 問題を含むが、ここではとくに①の点について、この期間の変更の意味をどう理解すべきかという問題について考え てみることにしたい。 当事由が備わり次第いつでも借地契約の解約を申し入れることができるとされていたが、それに対する反対意見等が この点について、稲本氏は、 まず﹃問題点﹄の段階では、土地所有者は当初の存続期間が経過した後には、正 考 慮 さ れ 、 ﹃試案﹄以降に更新後の存続期聞が一

O

年とされた経緯があり、この点からすれば﹁当初存続期間プラス 289 新借地借家法における借地権の性格 α ( α 日正当の事由が備わるまでの暫定期間)という基本発想が審議会の内外の意見を考慮して一

O

年まで伸長され たのであってその逆(旧法の一ニ

O

年または二

O

年 を 一

O

年まで縮減)ではない﹂といは v つまり稲本氏は、更新後の 期間に関する﹁改正﹂過程においては、更新後の借地は期間の定めなきものとして正当事由が備わりしだい借地権設 定者からいつでも解約申し入れできるとする発想があり、これが借地権の安定性への配慮から暫時修正されていった ものと理解しているのである。 ﹁定期借地権化﹂を支持すると思われるそのほかの論者も、国会による論議を経て ﹁ 試 案 ﹂ で は 一

O

年とされていた第一回目の更新後の期間が﹁新法﹂では二

O

年に変更されたことの意味をどのよう に考えるかという点について違いはあっても、基本的な考え方は先の稲本氏と同一と考えてよいであ瓜)ぅ。そこで本 稿でも、この問題に関する﹁改正﹂過程の内容を検討し、先のような理解の仕方の妥当性を検討してみよう。 法務省民事局参事官室が作成した﹃問題点﹄と﹃﹁借地・借家法改正に関する問題点﹂の説明﹄(以下では﹃問 題点の説明﹄として引用する)は、法制審議会民法部会財産法小委員会が借地・借家法﹁改正﹂問題を本格的に審議 目

(10)

第8巻 3・4号一一290 するに先立って、関係各界の意見を聞くため、問題点を整理し説明をくわえたものである。 ﹃問題点﹄は、議論され るべき論点のみを整理したものであるが、 ﹃問題点の説明﹄の中では今回の改正問題を検討する際の基本的観点が次 のように述べられている。そこではまず現行法制定時と今日とでは、たとえば人工の都市集中・地価高騰・借地借家 関係の多様化など、現行法の方策が前提としている土地住宅事情を中心とする経済社会情勢が著しく変化したことが 指摘され、そのことが現行法の方策と現実の要請との聞のずれや現実の取引に対する対応の不十分さを生み出してい るとし、それ故に変化した社会的背景を前提に﹁貸主と借主との権利義務関係をどのように規律して両者のバランス をとるべきか﹂という観点から﹁現行法が当事者間の利益の調整のために適当であるとして採っている方策﹂を見直 すことが必要となっていると問題状況が説明されている。そのうえで﹃問題点の説明﹄は、 ﹁ここ数年来、借地方式 による宅地の供給の促進及び都市における土地の有効利用といった観点から、借地法及び借家法の見直しをすべきで ある、との意見が強く主張されている。﹂としつつも、﹁しかし、このたび開始された審議は、民事基本法である両法 の基本的理念に基づいて、独自の立場で行われるものであって、右のような要請に応.するという観点のみから行われ るものではない。﹂と指摘し、﹁その審議は、今日及び将来の社会情勢の下において、当事者双方の立場から見て、そ の公平な利害の調整の在り方はどのようなものであるべきか、という観点から行われるものである。﹂と述べている。 このような﹃問題点の説明﹄の内容からすると、すでに原田氏によって指摘されているように、①土地住宅事情の変 化と多様化に伴う現行法と実態とのずれの合理的調整という民事基本法固有の課題を重視し、②都市近郊における宅 地供給を促進しうる新しい借地制度の整備や@市街地再開発の推進に対応した既存借地借家関係の解消という政策的 要請に対しては慎重に距離を置くというのが、現行法﹁見直し﹂への立案当局の基本的スタンスであったといえよう。 もちろん借地・借家法の在り方が土地住宅政策や都市政策にも関連してくることはある意味では当然のことであり、

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立案担当者もその点を認めていた。しかしそのことを認めたうえで、立案担当者が、 ﹁借地・借家法は、本質的には 契約当事者間の権利義務関係の調整のための法規範で、土地有効利用に焦点をあて、この目的のため直接役立たせる ア プ

p

l

チを導入することには無理がある。﹂と指摘し、﹁見直しの目的や手法が一般的な土地問題の解決のための行 政的な施策と面をことにすることが審議の前提となっていた﹂と述べていることも、前記のようなスタンスの現れと ハ

m v

い え よ う 。 以上のように立案担当者の基本的スタンスを理解し、そのような観点から﹃問題点﹄の内容を見た場合、そこ には当事者の合理的利益調整の方式として二つの方式が提案されていたと見ることができる。すなわち、 + ι

同 ﹃ 問 題 点 ﹄ 29b一新借地借家法における借地権の性格 ﹁借地権の存続期聞が経過したときは、更新をする旨の合意がさ れた場合を除き、借地権は、期間の定めがないものとして存続するものとし、土地所有者は、正当事由が備わったと と 問 題 を 提 示 す る 。 ﹁最初の存続期間経過後の借地権﹂に関して、 きは、解約の申し入れをすることができるものとするとの考えがあるが、どうか。﹂ ﹃ 問 題 点 の 説明﹄によれば、これは﹁土地所有者と借地権者の利害の合理的な調整の在り方として、最初の(約定による)存続 期間の経過によって借地権者の土地利用が最低限確保された後の借地関係については、正当事由を具備した時点にお いて随時これを解消することができることとすべきものではないか、との考え方﹂の当否を問うものであるという。 しかし﹃問題点の説明﹄は、すぐその後でこのような﹁考え方を採ると、借地関係の終了の問題を柔軟に処理するこ とができる、という利点がある反面、最初の期間経過後の借地権を不安定なものにする、という問題がある。﹂ と この考え方の問題点をあわせて指摘している。そしてこの間題点に対応するために次のような方策を提示する。その 一つは﹁解約申入期間の確保﹂である。この点については民法六一七条一項一号にいう土地賃貸借の場合の一年をよ り長期化する可能性を示唆する。もう一つは﹁明け渡し猶予の制度﹂である。これは解約申し入れ期間の確保にかさ

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第8巻3・4号ー-292 ねて、借地権者が土地明け渡しによって生活に著しい困難を生ずるなどの﹁特別の事情がある場合﹂に、裁判所の判 断によって明け渡しに相当の期限を許容しうる制度の導入を意味する。このように﹁問題点﹄では、合理的利益調整 の方式の一つとして、︿当初の存続期間の後は土地所有者が正当事由を具備した時点で借地契約を解約しうるとの前 提に立ちつつ、解約申入期間の確保と明渡し猶予制度の導入によって借地人の利益を考慮し、両者のバランスを調整 するという方式﹀が示されていると言える。 しかし﹃問題点﹄は、他方で、このような方式を﹁採用しない場合において、更新後の存続期間は、どうすべき白 と問題を提起している。そして、 ﹃問題点の説明﹄ではさらに右に見たような方式を指して﹁もしこのような考え方 を採用しないものとすれば、すなわち現行の更新方式を維持するものとすれば更新後の借地権の存続期間の問題とな る 。 ﹂ と し 、 さらに﹁この点について現行法五条一項は、建物の堅固、非堅固の区別に従い、一二

O

年又はニ

O

年と規 定している。そこでこの考え方を維持しつつ一本文の考え方を採るとすれば、更新後の存続期間も三

O

年とすること になろうが、当初の約定期聞が満了した後における存続期間としては、もっと短期、たとえば二

O

年程度で足りると

( n )

する考え方もありえよう。﹂と述べているのである。このように﹃問題点﹄は、先にみた方式とは異なる方式として、 八現行更新制度を維持する方向で更新後の存続期聞を短期化するという調整方式﹀をも同時に提示しているのである。 従って以上をまとめてみれば、﹃問題点﹄においては、更新後の借地人と借地権設定者との合理的利益調整の方式 として、①現行更新制度を採用せず正当事由があれば借地権設定者はいつでも解約を成し得るという前提に立ち、解 約申し入れ期間と明け渡し猶予制度によって借地人の利益を考慮するという方式、および②現行更新制度を維持しつ つ借地人に更新請求権と期間保障を与えるという前提に立ち、その期聞を現行法より短期に設定することによ tっ て 解 約申し入れの機会を短期化し、そのことにより借地権設定者の利益を考慮するという方式、という二つの方式が提示

(13)

されていたと言えるのである。 国 ﹃問題点﹄の内容を以上のように理解できるとすれば、この後の経緯はどのように見ることができるであろうか。 ﹃試案﹄が作成された。そこでは、更新後の借地権の存続期間 ( お ) は、長期の合意がないかぎり更新の時から起算して一

O

年とされた。この﹃試案﹄の意味について、稲本氏は先に見 先の﹃問題点﹄に関して様々の議論がなされた後、 たように、更新後には借地権設定者が正当事由を備えれば臨時借地契約を解消しうるという考え方を基本に、その正 当事由が備わるまでの暫定期間を、審議会内外の意見を考慮して一

O

年に伸長されたものと捉えている。しかし本稿 のように﹃問題点﹄が当事者の合理的利益調整の方法として二つの方式を提示し、各界の意見を求めたものであると いう認識に立つ場合には、この﹃試案﹄の規定の意味についても、稲本氏とは異なる理解も可能ではないかと考える。 以下ではこの点を検討しよう。 293一一新借地借家法における借地権の性格 ﹃試案﹄と同時に公にされた﹃試案の説明﹄にも、 ﹃問題点﹄で示されていた二つの方式が﹃試案﹄の趣旨を説明 まず現行法の更新制度の内容が説明された後に、 一方ではで﹂ するための前提として述べられている。その中では、 のような現行法の仕組みを維持し、建物の堅固・非堅固の区分が廃止されることにだけ対処する方針に基づき、最初 の存続期間である三

O

年との均衡を考慮しつつ、契約更新後の存続期間を三

O

年又は三

O

年に一本化することが相当 ﹁それは、土地所有者と借地権者の利害の合理的な調整 であるとする立場はあり得る。﹂ とする。しかし他方では、 の在り方としては適当でなく、最初の存続期聞が満了することにより借地権者の建物所有による土地利用を一応確保 した後の借地関係については、土地所有者が正当事由を具備した時点において随時これを解消することができること ( 辺 ) と い う 。 とすべきではないかとの批判的な立場があり得る。﹂ の 形 成 段 階 で も 、 ﹃問題点﹄の場 このように ﹃ 試 案 ﹄ 合と同様に、借地権者と借地権設定者との合理的利害調整の方法として、 一方では現行更新制度を維持する方向での

(14)

第 8巻 3・4号一一294 調整方式と、他方では更新後については正当事由具備により随時借地権を解消しうるという方向での調整方式という、 ﹃ 試 案 の 説 明 ﹄ で は 、 二つの方式が念頭に置かれていたことが確認できる。その上に立って、 ﹃試案﹄の立場が次の ように位置づけられている。すなわち前者の方式は、 ﹁常に借地権の存続期闘が満了するちょうどその時点で正当事 由を備える場合でなければ借地関係を終了させることができない﹂ことになり当事者関係を合理的かっ柔軟に調整す るという期待に適合しない。しかし他方、後者の方式では、﹁借地関係が相当程度不安定なものになる﹂。そこで﹃試 案﹄は、この両者の﹁中間の解決策﹂として、 ﹁借地関係の安定は維持しつつ、土地所有者が借地関係を終了させる ことができるものとして与えられる機会の偶然性を緩和する方向﹂をとり、その結果﹁更新後の存続期聞を一

O

年 ﹂ ( お ) としたというのである。以上のような﹃試案﹄の記述からすると、 ﹃試案﹄が更新後の存続期間を一

O

年としたこと は、形式的に先に見た二つの方式の﹁中間﹂を採ったのでなく、借地関係の安定性に配慮するという観点から基本的 に現行法の更新制度を維持するという立場に立ちつつ、単に堅固・非堅固の区分廃止による期間の一本化だけでは短 期を採用しても二

O

年 に な る の で 、 さらに正当事由による解約が可能となる﹁機会の偶然性をより緩和する方向﹂で、 その期間を二

O

年 か ら 一

O

年に短縮したものと理解できる。この意味で﹃試案﹄の立場は、八現行更新制度を維持す る方式を採用することを前提とする緩和的調整という意味での中間的解決策

V

であるとみることができよう。結局、 法制審議会は、この﹃試案﹄を﹁借地法・借家法改正要綱﹂として答申し、これが﹁借地借家法案﹂として平成三年 ﹁ 常 に 一

O

年ごとに更新 三月一九日に第二一

O

回国会に提出されたのである。この﹁法案﹂は、その国会において、 における正当事由の有無について判断するものとすることは、借地人の負担が過大となり、 ひいては居住権の安定性 を損なうおそれ﹂があることから、最初の更新後の期間のみ二

O

年とするという修正案が提出され、これが承認され ︹ お ) たことから新法四条が現在の形で成立したのである。

(15)

そこでつぎの問題は、この国会での修正の意味をどのように理解するかという点にある。この点について、稲 本氏は、この修正の結果﹁新法の性格は複雑となり様々な評価が可能となる﹂とするのみであるが、この問題を検討 同 した藤井氏は次のように指摘する。すなわち、氏は、今回の﹁改正﹂では、﹁﹁問題点﹂から﹁法案﹂まで、更新後の 存続期間の規定を借地関係の解消に向けて規制しようとしてきた﹂として稲本氏と共通の認識に立ちつつ、この修正 により﹁第二回目の更新時に正当事由が具備するのは、偶然性に大きくかかることとなり、それだけ借地権の存続保 障が強いものとなった。﹂と理解し、その結果第一回目の更新の規定は﹁借地権の存続期間保障に向けた規定であり、 存続を保障された旧法の借地権の性格を一回だけ残すものとなった﹂のに対して、 ﹁第二回目以降の借地権について ( 訂 ) は、存続期聞を短くして、現行法とは逆に借地権の解消に向ける構造になっている﹂という。しかし、 ﹁ 法 案 ﹂ と な 295一一新借地借家法における借地権の性格 った﹃試案﹄の内容を本稿のように理解できるとするならば、国会での修正は、現行の更新制度を維持しつつそこに おける﹁機会の偶然性を緩和する﹂ため一

O

年に短期化された更新後の存続期間について、八借地権の安定性とそれ に基づく居住の安定性に配慮し、その短期化の行き過ぎを是正したもの

V

と理解できる。従ってその修正は、現行の 更新制度を維持しつつ当事者聞の合理的利益調整を達成するという方式の枠内での調整にすぎず、第一回目の更新と 第二回目以降の更新とで利益調整の基本的方式を変更するような意味を持つものではないといえよう。国会での審議 において、先に示した﹃試案﹄の基本的考え方について変更をくわえることや、第一回目の更新期間と第二回目の更 新期間との性格の違いについて、何ら議論されていないことも、以上のような理解の傍証となろう。

建物の滅失・再築と借地権の存続期間 付 建物の滅失及び再築に伴う借地権の取り扱いについては、今回の﹁改正﹂過程において普通借地権に関して最

(16)

第8巻 3・4号一一296 も大きな変更がくわえられた部分であり、 また稲本氏もその﹁定期借地権化﹂の根拠として重視されている部分でも あ る 。 建物再築については、建物が誠失した後にその借地権の存続期聞を越えて存続する建物を再築する場合が問題とな る。この場合、旧法では、再築に際して借地権設定者が異議を述べなかったときには、建物滅失の日から、堅固の建 物の場合には三

O

年また非堅固の建物の場合には二

O

年(ただし残存期間のほうが長い場合はそれによる)、借地権 は存続する。借地権設定者が異議を述べたにもかかわらず建物が再築された場合には、元の借地権の存続期間の経過 によって、当該借地権は消滅する(旧法七条)。そしてこの場合、建物が現存する限り、期間満了時に借地人は更新 請求権を行使しうるが(旧法四条一項、六条の類推適用)、借地権設定者の更新拒絶における﹁正当事由﹂の判断に ハ咽岨) おいて、再築に対して異議を述べたことが考慮されるべき一つの要素となるとされている。

t

以上のような旧法の内容に関して、 ﹃問題点﹄は﹁借地権の消滅前に建物が滅失した場合における借地関係に ついて、新たな法律上の措置を講ずることが必要か。必要であるとすれば、 ( m U ﹀ 題を提起しているが、 どのような措置を講ずるべきか。﹂ と 問 象的に指摘するのみで、 ﹃問題点の説明﹄においても、これが﹁借地権の本質にかかわる重要な問題﹂であることを抽 ︹ 羽 ) ﹁具体的な改正の方向﹂は例示されていない。これが具体化されたのは﹃試案﹄においてで ある。そこでは、①旧法上、期間の定めのない借地権の場合従ってその存続期間が法律の規定による場合には、その 四 条 = 一 項 、 五 条 、 六 存続期間中に借地上の建物が﹁朽廃﹂した場合借地権は消滅するものとされていた(旧法二条、 条一項)が、この制度を廃止し、﹁朽廃﹂の場合を建物の﹁滅失﹂の場合に一括した。そして、②﹁建物所有による 土地の利用関係に必要な安定性を一応保障できる期間として設定された最初の存続期間中の建物誠失と、その期聞が 過ぎた後の建物滅失とは、同一に論じられないところがある。﹂として、 旧法とは異なり、最初の存続期間中の誠失

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とその後の誠失とを区別して取り扱うこととした。このような前提の下に﹃試案﹄は次のようになっている。 まず当初の存続期聞における建物誠失の場合、借地権は消滅せず、借地人は建物を再築できるが、問題は残存 期聞を越えて存続しうる建物が建築される場合に設定される期間である。﹃試案﹄によれば、土地所有者が遅滞なく ) 噌 E 4 ( 異議を述べた場合には、借地権は当初の残存期間存続することになり、その満了時にはまた正当事由による更新の問 題となる。しかし土地所有者が異議を述べなかった場合には、建物誠失の日から二

O

年の存続期間となる(ただし残 存期聞がこれより長いときはそれによる﹀。﹃試案の説明﹄によれば、以上の部分は、 ﹁建物所有による土地の利用関 ﹁ 現 行 法 の 仕 組 297一一新借地借家法における借地権の性格 係に必要な安定性を一応保障できる期間として最初の存続期聞が設定されていること﹂を考慮して、 みを基本的には維持すべき﹂という立場から構成された、と説明されている。事実、堅固・非堅固の区別を廃止した こと、滅失後の存続期聞を二

O

年としたこと以外は、旧法と同一である。この点は、旧法上新たに定められる借地権 の存続期間は、更新後の法定存続期間と同一にされているが、この考え方によれば新法の場合更新後の法定存続期間 は 一

O

年ということになってしまい、新たに建物が建築された後の存続期間としてこれをそのままあてはめることは 適当でないとして、ニ

O

年とされたものである。したがってこの点は、旧法の構造を変更する意味は持たないといっ て (2) よ し 、 で あ ろ う つぎに更新後の存続期間における建物滅失の場合、いずれの当事者も解約申し入れができる(地上権の場合に ( 叫 品 ﹀ はその消誠請求ができる﹀。ただし土地所有者から解約申し入れ等をする場合には、正当事由の存在が要件となる。こ れは﹁既に建物所有による土地の利用関係に必要な安定性が一応保障された後の問題として、最初の存続期間中に建 物が滅失した場合と異なり、もはや借地関係を終了させても不合理ではない。﹂という理由による。 問題は、借地人が建物の再築を望む場合に、それと土地所有者の契約解消の機会の確保とをどのように調整す

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第8巻 3・4号一一一298 るかである。この点﹃試案﹄においては、 るとの考慮から﹂、次のような仕組みとなった。①まず土地所有者の解約申し入れ等は、旧建物の滅失から六ヶ月が経 ﹁事前調整に重きを置くと解決に長期を要するなど実際上の困難が強すぎ 過し、借地権者が新建物の建築に着手した場合には、行えないものとし、権利行使期間に制限を付けた。②次に、有 効な解約申し入れ等がない場合(①の期間内に解約申し入れ等が行われなかった場合もしくはそれが行われても正当 事由のない場合)、建物が再築されたときには、新たな存続期間は一

O

年とされる。これは、﹁更新後の存続期間が一

O

年とされていることを考慮して﹂設定されたもので、 ﹁新築建物についての借地権の存続期間としてはやや短いが、 期間の満了時に借地権が常に消滅するわけではなく、更新後の法律関係として、土地所有者が、 い わ ば 一

O

年ごとに 正当事由を要件に借地関係の終了を求めることができる機会が与えられる関係となるにすぎないから、事情に応じた 解決を期待する仕組みとして不合理とはいえまい。﹂という趣旨であると説明されている。 ﹂のような﹃試案﹄の内容に関しては、 ﹁当初の存続期間中は原則として借地権者にとって再築は自由とし、更新 後は不自由とする構成になり、更新後の存続期間は現存する特定の建物を所有するための権利と捉えられた﹂とする ︹ 叩 拍 ) 評価がある。これは木稿一でもみたように、更新後の普通借地権を基本的に﹁定期借地権化﹂したものとして理解す る方向での評価である。確かに右での引用からも、このような理解につながり得るような表現が見られるし、とくに 更新後の借地関係においては土地所有者の意思が反映しやすくなったことも事実であろう。しかし、建物の滅失と再 築という場面における借地人と土地所有者間との合理的利益調整の方式という観点で見れば、①当初の存続期間にお ける再築の場合のみならず、更新後の期間における再築の場合についても、解約申し入れ等には正当事由制度が維持 されていること、②そしてその解約申し入れ等をなしうる機会については、 一般的な更新後の期間の場合に解約申し 入れの﹁機会の偶然性を緩和する方向﹂が採用されその期間が一

O

年に短縮されたこととのバランスを意識しておな

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じ 一

O

年としていること、③しかし﹁この点については、新たに建物が建てられたのであるから、最初の存続期間中 に建物が滅失し、再築された場合と同様、新たに定められる存続期間は、二

O

年とすべきであるとの考えからもあり得 るであろう。﹂と述べているように、八偶然性の緩和の程度﹀によってその場面に応じた当事者間の利益調整を達成し ょうとしていること、④また更新後の建物の滅失と再築という場面は新法の構造の点から見ても一般的な更新後の存 続期間という問題の限定された領域に属するものと位置づけられること、等の諸点から考えて、前節でみたような一 般的な更新後の存続期間に関する利益調整の方式つまり八現行の更新制度を維持しつつその枠の中で正当事由主張の 機会の偶然性を緩和する方向で両当事者の合理的利益調整を図るという方式﹀は、更新後の建物滅失と再築の場合に ついても基本的に維持されていると考えられる。また﹃試案﹄が、土地所有者の解約申し入れ等の期聞を六ヶ月に限 定し、その聞に有効な解約申し入れ等がない場合には、建物再築によって自動的に存続期聞が延長されるとしている 299一一新借地借家法における借地権の性格 点も、﹃試案﹄が﹁更新後については、あたかも存続期間は建物誠失までのものとする仕組みに変えた﹂という立場か ら理解していくよりも、上に述べたような更新を前提とした利益調整方式の一環として理解していくほうがより整合 的ではないかと思われる。 白 しかし以上のような﹃試案﹄の内容は、結局新法において大きく変更されている。新法の内容は次のようにな ペ〉 (1) て し 、 る

当初の存続期間内に建物が滅失し、借地権者がその残存期聞を越えて存続しうる建物を再築した場合、その再 築について、①借地権設定者の承諾があれば、借地権は、承諾の日又は建物築造の臼のいずれか早い日から二

0

年間 延長される(残存期聞がそれより長い場合はまたは当事者がそれより長い期聞を合意した場合はそれによる)。 し②承諾のない場合には、存続期間は延長されず、当初の存続期間満了時における更新の成否つまり正当事由の問題 し 七、

(20)

第 8巻 3・4号 300 となる ( 新 法 七 条 一 項 ) 0 そして③借地権者が借地権設定者に再築の通知をしたにもかかわらず、その到達後二ヶ月 以内に借地権設定者が異議を述べなかった場合、借地権設定者の承諾が擬制される(新法七条二項)。 以上の規定は、旧法と比較すると、まず肋再築によって延長される期聞を、堅固・非堅固の区分が廃止されたこ とにともない前記の﹃試案﹄と同様に一律二

O

年にしたことが異なるが、この点は前記﹃試案﹄と同様の趣旨であり、 基本的に目法の構造を変更するものではない。また的延長期間の起算点を承諾があった日または建物が再築された 日のいずれか早い日とされたことは、旧法のように起算点を﹁滅失の日﹂としたのでは、通常滅失から再築まである 程度の期間があることから﹁再築の日﹂を起算点とすべきであるとの批判がある一方、借地権設定者の承諾が先行し ( 剖 ﹀ た場合に再築を引き延ばすことができるのも不合理である、という理由による。従ってこの点も技術的適正化といえ るものであり、基木構造にかかわる問題ではない。そして肋借地権者の再築通知到達後二ヶ月の経過によって承諾 が擬制される点は、これによって借地権者は再築工事着手前に借地権設定者の承諾の有無を確定できることになり、 他方借地権設定者も知らぬ聞に再築による期間延長が行われることがなくなることを趣旨としており、問題はあろう が、旧法の基本構造を変更するほどの意味は持たないと考えられる。したがって仲本稿の観点からみて、最も大き な 変 更 点 は 、 旧法では借地権設定者の﹁異議のないこと﹂が期間延長の要件であったのに対して、新法では﹁承諾の あること﹂がその要件となっていることであろう。しかしこの﹁承諾﹂は、あくまで期間延長の要件にすぎず、建物 再築の要件ではない。したがって新法においても、借地権者は、承諾を求めることなくまた設定者の異議がある場合 でも、建物の再築自体は自由に行うことができる。ただその場合には期間の延長がないので、当初の期間満了時に更 新の問題となるにすぎない。この更新制度は旧法と同じ制度であって、借地権設定者は更新拒絶に正当事由が必要と なる。また先に見た、二ヶ月の経過によって承諾を擬制する制度も、当初の存続期間中は借地権者に再築の権利があ

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ることを前提としていると考えられることから、新法七条については、立案担当者がいうように、 構造は維持されている﹂といってよいであろう。承諾を要件とする本条の基本的な趣旨は、できるだけ再築前に当事 者間で事前の協議を行わせることによって建物再築をめぐる総合的な利益調整を行わせようとする点にあるのである。 ﹁旧法の基本的な つ 臼 きく異なっているのみでなく、普通借地権の﹁定期借地権化﹂を主張する見解が特に重視している点でもある。 新法では、更新後の建物の滅失と再築の場合について、①まず借地権者が、残存期間を越えて存続しうる建物を再 以上の場合に対して、更新後の期間における建物の滅失と再築の場合に関する借地関係の処理は﹁試案﹄と大 築するには借地権設定者の承諾を要する。そして②承諾を得て再築した場合、借地権の存続期間は二

O

年延長される (新法七条一一項)。他方③承諾を得ずに再築した場合には、 一ヶ月の猶予期聞をおいて、借地権設定者に解約権が認 301-新借地借家法における借地権の性格 められる(新法人条二項)。ただし④借地権者は、再築について﹁やむを得ない事情﹂があるにもかかわらず、借地権 設定者の承諾が得られない場合には、非訴事件手続によって裁判所が付与しうる承諾に代わる許可を求めることがで (新法一八条)。⑤もし借地権者が、建物滅失後に再築を望まない場合は、 一ヶ月の猶予期聞をおいて借地権を き る 解約しうる(新法八条一項)。等の点が規定されている。 すでに見たように、新法は、当初の存続期間中の建物の滅失と再築については、基本的には借地権者の再築権の承 認と正当事由による更新制度を維持しつつ (その意味で旧法の基本的構造は維持しつつ)、 両当事者の合理的利益調 整を図ろうとするものであった。しかし﹁借地権の当初の存続期間中と異なり、契約の更新後は、 一応の安定性が確 保された後の関係として、両当事者の実情に応じ適宜のタイミングで借地関係が解消されることがありうるものとす ベく、当事者双方の事情を汲んで柔軟に権利調整をする機会を設ける仕組みとするとの基本的な考え方に基づき、契 約の更新後に建物が誠失した場合に、建物を再築しようとする借地権者と借地関係を解消しようとする借地権設定者

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第 8巻3・4号一一302 と立案担当者がのべているよ勾

r

、 新法においては、切ま との関係を調整しやすい仕組みをとることにしている。﹂ ず当初の存続期間の場合と更新後の場合とを明確に区別していること、的そして後者の場合について、前者の場合と は異なるより柔軟な権利調整の仕組みを導入すること、が示されている。問題は、その仕組みがどのような趣旨のも の か と い う 点 に あ る 。 この点について、①新法八条が借地権設定者の﹁承諾﹂を期間延長を伴う︿再築の要件﹀としていること、②その 要件を欠く再築の場合、借地権設定者に解約権が発生すること、@この解約に正当事由は必要でないこと、などから、 更新後の建物誠失の場合に再築が可能かどうかつまり借地権が存続しうるか否かは、もっぱら借地権設定者の意思に かかるものと理解し、従ってこの場合に借地権は原則として消滅させられうるものであり、ただ④例外的に﹁やむを 得ない事情のある場合﹂のみ裁判所によって代諾許可が与えられるにすぎないと理解するとすれば、これは、普通借 地権の﹁定期借地権化﹂を主張する根拠となってこよう。もしこのような理解が妥当とすれば、実際に建物の建て替 えが問題となるのは通常更新後の場合が多いと考えられることから、これら新法の規定が持つ意味は非常に大きく、 ま た 問 題 も 多 い 。 しかし先の﹃試案﹄と比べても大きく変更された新法の内容を見ると、以上のような理解の仕方では、必ずしも説 明が容易でない部分があるように思われる。この﹃試案﹄から﹁新法﹂への変更の意味については、普通借地権が新 法において﹁定期借地権化﹂したとする見解は、あまり詳しく述べていない。おそらく改正過程の流れの捉え方から 見て、更新後の借地権を特定の建物所有を目的とする権利すなわち敷地利用権として再編するという傾向が顕著にな っていく過程(つまりは﹁定期借地権化﹂の過程)として、 ﹃試案﹄から﹁新法﹂への変化を理解することになろう。 確かにこのような立場からは、 ﹃試案﹄において八異議のないことが期間延長の要件﹀であったものを、 ﹁ 新 法 ﹂ に

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おいて八承諾のあることが再築の要件﹀とされたことを説明しやすい。そして裁判所による代諾許可制度は﹁例外的 救済措置﹂あるいは例外的に代諾が苧えられた場合に借地権設定者の負担を補填する﹁再調整の仕組一伎と説明され ることになろう。たしかに代諾許可は、再築することに対する﹁やむを得ない事情﹂が存在するにもかかわらず借地 権設定者が承諾をしない場合にあたえられる(新法人条一項)と規定されており、この﹁やむを得ない事情﹂という 表現からすると﹁例外的﹂ととられやすい面があるのみならず、立案担当者もそのような表現を使っているところが ( H 世 ﹀ あ る 。 し か し 、 ﹃試案﹄において、更新後に建物が滅失した場合、 いつでも解約申し入れが可能であるがそれが正当 事由制度によって審査される構成になっていたものが、何故﹁新法﹂では、非訴事件手続きを持ってする裁判所の代 諾許可制度に変更されたのか。︿正当事由制度﹀と︿代諾許可制度﹀とは相当に内容が異なっており、とくに後者で は、たとえば、①新法一八条二項が﹁やむを得ない事情﹂の判断基準として挙げている要素を見れば、そこでは﹁借 303一一新借地借家法における借地権の性格 地権者が土地の使用を必要とする事情﹂はもとより、 (建物が誠失してしまっているのか存在してい ﹁ 建 物 の 現 況 ﹂ るのか、後者の場合にはどのような現状にあるのかという点)、﹁建物の誠失があった場合には滅失に至った事情﹂、 ﹁その他一切の事情﹂と規定し、非常に広範な事情が考慮されうるようになっていること、②新法一八条一項は、裁 判所が﹁当事者の公平を図るために﹂、 財産上の給付のみでなく、 借地権に付与する期間の設定やその他の借地条件 の変更など借地権の内容に関する広範な調整権限を裁判所に与えていること、そしてとくに@この代諾許可制度が、 建物がまだ滅失していない(多くは立て替え前の)段階でも利用しうるとされていること、などの点で裁判所に認め られる権限とその制度において考慮される事情の範囲およびその制度の利用範囲が、 ﹁例外的救済﹂としては広範で あるように思われる。また④一八条二項によって考慮される﹁一切の事情﹂においては、当然借地権設定者の承諾拒 ハ日制) 否にどの程度正当性があるかも重要な判断要素となると考えられること、⑤さらに一八条一項にいう﹁財産上の給

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第 8巻 3・4号一一304 付﹂は、実質的には更新料を意味すると解されるが、そうであるとすればこれが法制度化されたこともこの再築の許 ( 必 ) 可を容易にする要素と考えられることからも、代諾許可制度を一概に﹁例外的救済措置﹂と捉えることに疑問が生じ ト 4A ノ 。 ではなぜこのような代諾許可制度が導入されたのか、 いいかえればこの点に関する﹃試案﹄から新法への変更はい かなる意味を持つものと理解されるべきか。まず﹃試案の説明﹄によれば、 ﹃試案﹄の段階では、借地権者が再築を 望む場合に土地所有者の解約の機会確保との調整方法として、﹁事前調整に重きを置くと解決に長期を要するなど実 際上の困難が強すぎるとの考慮から﹂、﹁筒明な仕組み﹂として解約権の行使期聞を六ヶ月間に制限するという制度を ( 抑 制 ) 導入したとされており、この段階では当事者の利益調整の方式として八事前調整の方式﹀はとられていなかった。こ の﹃試案﹄から﹁改正要綱﹂を経て新法にいたる過程でどのような議論の下に、前記のような変更が行われたかとい う点は、その議論自体が公表されておらず不明である。しかし立案担当者は、新法の解説の中で、 ﹁試案﹄の考え方 について﹁建物の滅失としては、実際には借地権者による建替えが圧倒的な割合を占めるにもかかわらず、この場合 に、権利調整を事前に行うことを断念し、建物取り壊し後に行われる裁判にゆだねるとするところに問題が残ってい た。そして法制審議会においては、権利調整を借地非訴事件をもって行なう方式に切り換えることとしたのである。﹂ (泊四﹀ と述べている。ここに指摘されているように、更新後の建物再築について﹁新法﹂が﹃試案﹄内容をおおはばに変更 ﹃試案﹄において断念されていた事前の利益調整を重視し、これを非訴事件手続きによって行お した重要な理由は、 うとしたことにあったと考えられる。 ではその理由と目的はどのような点にあったのか。やや長い、が、重要なポイントなので引用しよう。 ﹁現行法七条においては、契約の更新後であっても借地権者が建物を再築することは自由であり、その反面、借地

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権設定者がこれにたいして異議を述べれば、存続期間は延長されず、その後の存続期間の満了時に正当事由の有無を 判断するについての一考慮要素にすぎないと解されている。したがって、当事者の権利調整は、建物が再築されてか ら時聞が経過した残存期間の満了時に行われることとなり、的確なタイミングとは言いがたい場合が少なくないであ ろうと考えられる。借地権者にとっても、建物を再築するに当たっては、その後の存続期間の満了時に更新がないか もしれないとのリスグを負っていることになる。当事者の権利義務関係を決めるのであれば、建物がないその時点が 適当なタイミングであるといわざるをえない。そこで、建物がなくなった時点で以後の借地関係を存続させるのが相 当であるかどうかを決めることができるようにするため、新法では、借地権者が建物を再築するについては、借地権 設定者の承諾を要するものとして第一次的には当事者の合意に従うこととしってそのような合意が成立しない場合 305一一新借地借家法における借地権の性格 には、借地権者の申立により、裁判所が、非訴事件手続きを持って、諸般の事情を考慮し、 存続期間を延長するか、その時点で再築を認めず、事実上、借地関係を終了するか﹂を判定して、再築を相当と認め る場合には、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができるものとしているのである(一八日常)﹂ 同様のことは、借地権の存続期聞に関する変更の﹁概要﹂を説明する部分においてより明快に述べられている。 すなわちそこでは新法が承諾を再築の要件としたことを指して、﹁この仕組みは、契約の更新後においては、建物 が誠失した場合に借主による再築をただ困難ならしめることを目的とするというものではない。むしろ、建て替えを 含めて、できるかぎりよいタイミングで権利関係を裁判所により調整してもらう方向に持っていくことをそのねらい とするものである。そのことは、第一一一に、借主は、更新後の期間中に建物を再築しようとする場合に、貸主が再築の 承諾をすべきであるにもかかわらずこれを拒否しているときは、裁判所に貸主の承諾に代わる許可を求めることがで 門 町 四 ) きるものとし、そのための特別の手続を設けたことにしめされているよという。 ﹁再築を認め、借地権の

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第 8 巻 3 ・ 4 号~306 以上のように新法の基本的方針は、更新後の借地権を﹁定期借地権化﹂することによって﹁敷地利用権に再編する こと﹂にあったのではなく、むしろ更新後の建物再築という場面における両当事者の合理的利益調整の方式として 八借地非訴事件手続きによる事前の権利調整という方式(代諾許可制度)を採用すること

V

であったと考えられる。 そうであるからこそ、新法は、この制度を建物誠失(借地権者自身による取り壊しを含む)の前にも利用しうるもの とし、また裁判所に財産的給付のみでなく借地条件や借地期間などの借地関係の内容を広範かつ柔軟に調整しうる権 限を与えているのである。 新法における基本的方針を以上のように理解できるとすれば、新法が更新後の再築の要件として借地権設定者の ﹁承諾﹂を採用したことも、先に見た見解とは異なる解釈が可能となろう。右の引用にもあるように、新法が承諾を 再築の要件としたことは、 ﹁できるかぎりよいタイミングで権利関係を裁判所により調整してもらう方向に持ってい くことをそのねらいとするものであるよと立案担当者も述べているように、 それは、借地権の延長をもっぱら借地 権設定者の意向に係らせようとするものではなく、 ︽承諾を再築の要件とすることによって事前に借地権者と借地権 設定者を接触させ、両当事者および裁判所による事前調整の機会を確保する︾という点にその主眼があると見ること が で き よ う 。 つまり新法が、承諾を再築の要件としたことは、再築の可否をもっぱら土地所有者の意思に係らせると いう意味での再築の絶対的要件なのではなく、むしろ︽土地所有者の意思と借地権者の再築の必要性とを事前に調整 する機会を確保するための手段︾たる意味合いが強いのである。とすれば、この手段をとらなかった場合はどのよう に処理されるべきか。この承諾及びそれに代わる裁判所の代諾を得、ずに再築がなされた場合、そのことは事前調整の 機会を確保する義務の履行を怠ったものとして、借地権設定者に解約権の発生する可能性がある(新法人条二項)。こ の判断は継続的契約関係に関する信頼関係理論の適用を受けることになろう。そして、当該の無断再築が信頼関係を

(27)

破壊するものか否かの判断においては、それが﹁原則として信頼関係を破壊していると評価﹂するのではな

q v

借地 権者が代諾許可手続きを採らなかった事情を考慮しつつ、﹁再築許可の裁判を申し立てたならば明らかに許可が得ら れたであろうような場合﹂には信頼関係破壊にはいたらないと解釈する余地は残されているのではないだろう時計 五 結 び に 代 え て │ ! 新 法 の 解 釈 と 政 策 的 観 点 │ │ 最後に、以上の検討結果をまとめ、残された課題について若干のコメントをしておきたい。 307一一新借地借家法における借地権の性格 本論での検討によれば、結論として、普通借地権に関する﹁改正﹂過程から確認できる新法の規範内容は、①基本 的には、正当事由制度を含む旧法上の更新制度を維持しつつ、更新後の期聞を短縮化し解約申し入れの機会の偶然性 を緩和することによって、借地人と土地所有者との合理的利益調整を図る方式を採用するとともに、②更新後の建物 再築の場面では、とくに再築後の権利関係を明確にするために、裁判所による事前の総合的な権利調整という方式を 採用したもの、と見ることができる。すなわち、新法における普通借地権は、全体としては従来の借地権の枠組みの 延長上に現在の社会情勢に対応する新たな利益調整の方式を模索したものであり、それが﹁定期借地権化﹂したとす る見解が主張するところの、八普通借地権も当初の存続期間終了後は基本的に消滅すべきものであり例外としてその 期聞が延長される場合があるにすぎない﹀という実質的な評価基準は、少なくとも﹁改正﹂過程の議論からみるかぎ り新法には組み込まれていないといえよう。その意味でそれはなお基本的に八従来型の借地権﹀と理解されるべきも ﹁改正﹂過程の議論の中には、実質的な定期借地権化という理解を許すような部分があるが、 それはただ更新後の建物再築の場面において裁判所がなしうる利益調整が制度上柔軟かつ広範なものとなったことに の と い え る 。 た し か に 、 よって、抽象的には借地権を終了させうる可能性が高くなっているということであるにすぎず、実際にもそのように

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第8巻 3・4号一一308 なるか否かは、もっぱらこの制度の運用の仕方いかんに係ウているといわなければならない。今回の﹁改正﹂過程を 見るかぎり、この制度の運用の方向を決定するような実質的な評価基準は提示されておらずまたそのような問題がと くに議論されたわけでもない。この意味で、現在の土地住宅事情をふくむ社会情勢に対応した民事法としての権利調 一貫して維持されたというべきであろう。 整のあり方を考えるという立法の基本的スタンスは、 しかしながら、新法における普通借地権に関する規定の意味を以上のように理解することは、逆に我々に対して次 のような課題を提起することになろう。すなわち、新法が当事者の合理的利益調整の方式を設定したにすぎないもの であるということは、普通借地権が﹁定期借地権化﹂したとする見解の主張するような評価基準を積極的に排除する ことまで意味しておらず、右に示したような調整方式の枠内においてその運用を導くためにいかなる評価基準が設定 されるべきかは、なお課題として残されているという点である。さらにこのことは、新法における権利調整方式が、 裁判所に対して広範な裁量的権限を与えるものとなっていることから、その権限行使をコントロールするという観点 からも重要な課題とならざるを得ない。もちろんこの点は、都市的土地利用の在り方にかかわる都市政策や住宅政策 にも密接に関連し、またそこにおいて民事法たる借地借家法がいかなる役割を担うべきかという問題をも検討する必 要があり、本稿が対象としたような新法の解釈論というレベルでのみ議論しうる問題ではない。しかし、旧法におけ る議論においても、借地権の保障という問題は、 たんに建物に対する投下資本の保障という観点からのみ論じられて きたのではなく、その背景にそれを通じて実現される居住や生活の安定という社会法的観点が設定されていたことが 示すように、真に公共性を担いうるような解釈論を構成するための政策目的と評価基準の定立こそが本質的な問題で 円 一 叫 ) あるといわなければならない。この意味では、本稿でとりあげた稲本氏の見解についても、さらに掘り下げた検討が なされるべきであろう。ここではもはや詳しくとりあげることはできないが、新法の解釈論を含む稲本理論の全体的

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賞与は、一般に夏期一時金、年末一時金と言うように毎月

借受人は、第 18

遮音壁の色については工夫する余地 があると思うが、一般的な工業製品