• 検索結果がありません。

大学教育におけるアサーティブネス・トレーニングの実践

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大学教育におけるアサーティブネス・トレーニングの実践"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. 大 学 教 育 にお け る ア サ ー テ ィ ブ ネ ス1・ ト レ ー ニ ン グ の 実 践. 堀. 1.は. 田. 美. 保*. じめ に. ア サ ー テ ィ ブ ネ ス ・ ト レ ー ニ ン グ(assertivenesstraining)と. は、 個 々 人 の対 面 コ ミ ュニ. ケ ー シ ョ ン ス キ ル の 向 上 を 目 指 す ト レ ー ニ ン グ で あ り、 そ の 最 大 の 特 徴 は 人 権 尊 重 と い う 土 台 の 上 に構 築 され た プ ロ グ ラ ムだ と い う点 で あ る。 自分 の 要 求 や 意 見 、 感 情 を 、 相 手 の 権 利 を 侵 害 す る こ と な く、 誠 実 に 、 率 直 に 、 対 等 に 表 現 す る た め の ス キ ル 訓 練 で あ る 。 そ の 起 源 は 、 行 動 療 法 の 創 始 者 の ウ ォ ル ピ(Wolpe,Joseph)と 認 知 主 義 の 先 駆 者 で あ る ラ ザ ル ス(Lazarus,Arnold)に. 、 同 じ く行 動 療 法 に お け る. よ っ て 開 発 さ れ た プ ロ グ ラ ム で あ り、. 不 安 傾 向 の 高 い ク ラ イ エ ン トが 他 者 に 対 して 自 己 主 張 が で き る よ う に な る こ と を 目 的 と して い た(Alberti&Emmons,2008)。 mons,Michael)が. そ の 後 、 ア ル ベ ル テ ィ(Alberti,Robert)と. エ モ ン ズ(Em-. 、 ク ラ イ ア ン トへ の 療 法 現 場 で の 自 己 主 張 ト レ ー ニ ン グ を 、 一 般 の 人 々 が. よ り一 層 健 康 に な る た め の 教 育 の 一 環 、 サ イ コ エ デ ュ ケ ー シ ョ ン(psycho-education)と 発 展 さ せ た(菅. 沼 、2002)。. 彼 ら の 著 書"YourPerfectRight(1970/2008)"は. して. 、アサ ーテ ィ. ブ ネ ス の バ イ ブ ル と して 、 現 在 な お 版 を 重 ね て い る 。 1970年 代 以 降 、 ア サ ー テ ィ ブ ネ ス ・ ト レー ニ ン グ は よ り一 層 、 療 法 の 場 か ら 外 へ 外 へ と 実 践 の 場 を 広 げ て い っ た2。 現 在 の 「ア サ ー テ ィ ブ ネ ス ・ ト レ ー ニ ン グ 」 へ の 変 容 に は ア メ リ カ に お け る 社 会 的 動 き が 関 わ っ て い る 。1960年. 代 に その 最 盛 期 を 迎 え た 公 民 権 運 動 、 そ の 後 の 女 性. 解 放 運 動 に お い て 、 社 会 的 弱 者 が 自 らの 要 求 、 意 見 、 感 情 を ど の よ う に 表 明 す れ ば 、 優 勢 集 団. *近 畿 大 学 文 芸 学 部 文 化 学 科 准 教 授 1日. 本 で は 「ア サ ー テ ィ ブ ネ ス 」 で は な く 「ア サ ー シ ョ ン(assertion)」. れ も 、"assert"に. 由 来 す る 語 で あ る が 、 菅 沼(2002)は. と称 す る もの も多 い 。 い ず. 、 後 者 は 「限 り な く 離 れ て い る も の が 近 づ く. 運 動 、 と い っ た 意 味 の 名 詞(p.9)」 で あ り、 前 者 は 「そ の 世 界 を 意 味 」 し、 「自 他 が と も に 大 事 に さ れ た 、 と い う 実 感 を 持 て る 勝 ち 負 け の な い 関 係 性 を 意 味 す る 言 葉(p.8)」 と し て い る。 こ の こ と を 踏 ま え る と 、筆 者 は 、単 に 一 人 の 個 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス キ ル で は な く、そ れ を1つ. の 道 具 と し て 「他. 者 と 対 等 な 関 係 を 構 築 す る た め の 理 論 と 実 践 」 と 位 置 づ け て い る た め 、 「ア サ ー テ ィ ブ ネ ス 」 と い う 語 を 用 い て い る。 2現 在 も 、 療 法 と して の ト レ ー ニ ン グ は 行 わ れ て い る 。 菅 沼(2002)は ピ ー 」 と 呼 び 、 「ア サ ー シ ョ ン ・ ト レ ー ニ ン グ 」 と 区 別 し て い る 。. 75. それを. 「ア サ ー シ ョ ン ・セ ラ.

(2) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). の メ ンバ ー に 声 が 届 くの か が 模 索 さ れ る 中 、 利 用 さ れ た の が ア サ ー テ ィ ブ ネ ス ・ ト レー ニ ン グ で あ っ た(沢. 崎 ・平 木 、2005)。. そ の 後 、1980年. 代 に は ヨ ー ロ ッパ へ と 広 が り、1990年. 代 にな っ. て 日本 に紹 介 され る よ う にな っ た。 現 在 、 日 本 に お い て 、 ア サ ー テ ィ ブ ネ ス ・ ト レ ー ニ ン グ(以. 降. 「AT」. と 略 す)は. 、企業人、. 医 療 従 事 者 、 福 祉 ・保 健 ・援 助 職 、 自 治 体 職 員 、 教 育 関 係 者 と い っ た 人 々 へ の 研 修 、 あ る い は 女 性 や 障 が い 者 を 対 象 と し た 市 民 講 座 と して 数 多 く実 施 さ れ て い る 。 筆 者 が 活 動 に 関 わ っ て い る 「特 定 非 営 利 活 動 法 人 ア サ ー テ ィ ブ ジ ャ パ ン 」 も そ の よ う な 研 修 ・講 座 の 開 催 、 担 当 講 師 の 養 成 を 通 じて 、 ア サ ー テ ィ ブ ネ ス を 広 げ る 活 動 を 行 っ て い る 団 体 で あ り、 日 本 で は 代 表 的 な も の の1つ. で あ る 。2005年. 度 に は7,300人 、 以 降 毎 年8,500人. 前 後 が 当 団体 の研 修 を受 講 して い る。. こ の よ う な 成 人 に 対 す る 社 会 教 育 ・人 権 教 育 と い う 枠 組 み 以 外 に 、 近 年 次 第 に 関 心 を 持 た れ て い る の が 教 育 現 場 で の 実 践 で あ る 。 北 米 や ヨ ー ロ ッパ で は す で に 数 多 く の 著 書 が 小 学 生 や テ ィ ー ンエ ー ジ ャ ー 向 け に 出 版 さ れ て い る 。 小 学 生 向 け に つ い て は 、 児 童 の レ ジ リエ ン ス 、 情 緒 的 ・社 会 的 幸 福 感 、 児 童 間 の 親 密 性 の 向 上 に(た. と え ばBrunskill,2006)、. ま たテ ィー ン. エ ー ジ ャ ー 向 け に つ い て は 、 い じ め 、 性 的 暴 行 、 セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラ ス メ ン ト、 虐 待 な ど か ら 身 を 守 る た め(た. と え ばRoberts,2001)、. 飲 酒 、 ドラ ッ グ な ど へ の 誘 い を 断 る た め 、 さ ら に は. 人 生 の 選 択 を 自 分 自 身 で 行 う た め 、 自 己 信 頼 を 高 め る た め(た 2000)に. と え ばPalmer&Froehner,. 有 効 な トレーニ ン グ と され て い る。. 近 年 、 日本 の 教 育 現 場 で も、 子 ど も た ちの 対 人 関 係 調 整 能 力 の 低 下 が 懸 念 され る 中、 アサ ー テ ィ ブ ネ ス が 注 目 を 集 め て き て い る 。 教 育 現 場 で のATの. 実 施状 況全 体 を把握 で き るま と. ま っ た 資 料 は 今 の と こ ろ 見 当 た らな い が 、 実 践 報 告 は 散 在 す る(た 2002;黒. 木 、2005)。. 小 学 生 に 対 す るATは. と え ば 、 鈴 木 、2005;豊. 、 「話 す 」 「聴 く」 態 度 、 集 団 生 活 の た め の 言 語 に. よ る 意 思 疎 通 力 、 ポ ジ テ ィ ブ な 自 己 ・他 者 理 解 な ど の 向 上 に 効 果 が あ る と さ れ る(黒 2005)。 沢 崎(2002)は. 田、. 木、. 、 い じ め 、 引 き こ も り な ど 子 ど も を 取 り巻 く 問 題 の 多 く は 、 自 己 主 張. と い う 観 点 か らみ る と 、 「「非 主 張 的 を よ し と す る 伝 統 的 文 化 』 に 「攻 撃 的 な 価 値 観 』 が 接 木 さ れ た 状 態(p.20)」. と 形 容 して い る 。 そ して 、 相 手 の 尊 重 か 自 分 の 尊 重 か と い う 選 択 か ら 抜 け 出. る た め の 別 の 形 と して 、 自 他 尊 重 で あ る ア サ ー テ ィ ブ ネ ス が 子 ど も た ち に 必 要 で あ る と 論 じて い る 。 中 学 生 に 対 し て は 、ATが. 人 間 関 係 に お け る葛 藤 へ の心 理 的援 助 、 あ るい は 予 防 的 カ ウ. ン セ リ ン グ 教 育(黒. 木 、2005)、. 自 己 開 示 能 力 ・ 自 己 表 現 力 育 成 の た め の 意 識 的 実 践 の 場(尾. 上 ・材 木 、2002)と. い う位 置 づ けで 導 入 され て い る。. 76.

(3) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. 一 方 、本 稿 で取 り上 げ た い大 学 で のATの. 実 践 とな る と、 それ 自体 の 存 在 は確 認 され て は い. るが3、 実 践 の 詳 細 の 報 告 や プ ロ グ ラ ム の検 討 とな る と、 唯 一 、 堀 川 ・柴 山(2006)が. 検 索で. き た程 度 で あ る。 そ の 理 由 と して 、 大 学 生 は 「成 人 」 と して 捉 え られ て お り、 あ え て 「教 育 」 と い う枠 組 み に入 れ られ る こ とが 未 だ に少 な い こ と、 あ る い は大 学 教 育 の 内部 が これ まで 公 開 され 検 討 の 対 象 にな る こ とが 少 な か っ た と い う こ と に よ るの か も しれ な い。 近 年 、 大 学 にお け るFDの. 推 進 が要 請 さ れ て い る とは い え、 小 中学 校 な どで 行 わ れ て い る よ うな 授 業 研 究 や 情 報. 交 換 が 大 学 教 員 の 間 で 行 わ れ る こ と は、 まだ 多 くはな い と い う事 情 が あ るの か も しれ な い。 ま た、 大 学 で のATの. 多 くが 学 生 相 談 室 主 催 で あ る こ と も、 関 わ って い るの か も しれ な い。. 大 学 生 は ほ ぼ 「成 人 」 で あ る と は言 う もの の 、 大 学 で の 実 践 は、 社 会 教 育 や 職 員 ・社 員 研 修 と は その 環 境 は大 き く異 な る もの で あ り、 ま た教 育 現 場 と い って も、 小 学 校 や 中学 校 と は受 講 者 が 抱 え る発 達 課 題 は ま った く異 な る4。 そ れ ぞれ の場 や受 講 者 の 特 徴 を考 え る と、 当然 な が ら実 施 方 法 や 留 意 点 な ど は大 き く異 な る はず で あ る。 筆 者 は、 近 畿 大 学 文 芸 学 部 文 化 学 科 の カ リキ ュ ラ ム 内 に お いて4年 間ATを ム 内で のATの. 実 施 して きた 。 本 稿 で は、 ま ず、 最 初 に大 学 の カ リキ ュ ラ. 実 践 事 例 の 報 告 を行 う。 その 上 で 、大 学 生 に対 してATを. 行 う こ との 意 義 は何. か 、 ま た実 践 に あ た って 留 意 す べ き点 は何 か 、 今 後 どの よ うな 改 善 が 必 要 か を 整 理 ・検 討 す る こ と を 目的 と した い。. 2.大. 学 に お け るAT実. 践の報告. 「文 化 情 報 発 信 実 習A」 とい う科 目名 の も と、4年 間ATを. 実 施 して きた 。 この 科 目 は、2004. 年 度 に文 化 学 科 の カ リキ ュ ラ ム改 正 を行 っ た際 に、 現 代 文 化 コー スの 実 習 科 目の1つ. と して 組. み 込 まれ た。 現 代 文 化 コー ス に は、 「女 性 学 」 「自 由 と権 利 」 な ど、 人 権 に関 す る思 想 的 議 論 に つ い て の 科 目が含 まれ て お り、 そ の よ うな 科 目に 関 連 す る専 門 科 目 と して 位 置 づ け られ て い る5。. 3東 京 大 学 、 首 都 大 学 、 立 教 大 学 、 國 學 院 大 學 、 専 修 大 学 な どで は学 生 相 談 室 の 主 催 で 、 法 政 大 学 で は 「学 生 支 援GP」 内 で、ATが 実 施 さ れ て い る。 4こ こで は、 「大 学 生 」 と は、 現 時 点 で は大 学 生 の 多 数 を 占め る、 「高 校 卒 業 後 す ぐに 入 学 して く る学 生 」 を 指 して い る。 実 際 に、 本 実 習 の 受 講 生 の 年 齢 は19歳 か ら22歳 ま で の 範 囲 にお さ ま る。 5文 化 学 科 の カ リキ ュ ラ ム体 制 上 、 歴 史 系 お よび 心 理 系 の 他 コー スか らの 受 講 も可 能 で あ り、 実 際 に 現 代 文 化 コー ス以 外 の 履 修 者 も若 干 い る。. 77.

(4) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). 実習への参加状況 4年 間 の 実 習 へ の 参 加 状 況 を 表1に. ま と め た。 学 科 自体 女 子 学 生 が 過 半 数 を 占 め る こ と も あ. り、 受 講 者 数 も男 子 学 生 数 が 女 子 学 生 数 を 超 え る こ と はな か っ た。 また 、3回 生 で の 履 修 も あ る が 、2回. 生 が 多 数 を 占 め る。. 表1実. 習への参加者 単 位 修 得 者 数*. 年. 度. *註. 15 6 17 14 52. 32. 10. 2回 生3回. 生. 合計. 12 6 6 10 34. 12 6. 2U り乙. 計. 男性. 0. 限目 限目 限目 限目. 女性. 0. 合. 2008. 水 曜5時 水 曜5時 水 曜4時 火 曜3時. 履修者数 農U ∩) 9乙 り4. 2007. 前期 前期 前期 後期. 帯. ∩U ∩) -1占 -. 2006. 間. 農U 6. 2005. 時. 12. 8. 42. 12. 実 習 科 目 で あ り毎 回 の参 加 を 前 提 と して お り、 正 当 な理 由(病 気 な ど)に よ る欠 席 が3回 を 超 え る 場 合 に は、 単 位 は認 め て い な い。 よ って、 これ らの 数 は プ ロ グ ラ ム ほ ぼ全 体 に参 加 した者 と して 示 した 。. 表2半 回. 期(15週)で. の プ ログ ラ ム 内容. 題. 目. 1. オ リエ ンテ ー シ ョ ン. 2. 自分 自身 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンを振 り返 る ア サ ー テ ィブ ネ ス ・ トレー ニ ング の基 本 的考 え方 を知 る ア サ ー テ ィブ ネ ス に お け る権 利 につ い て考 え る. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15. 自分 自身 の権 利 につ い て考 え る 「 気 持 ち」 の扱 わ れ方 ・扱 い方 につ い て考 え て み る 「 率 直 に頼 む」 を や って み る そ の1 「 率 直 に頼 む」 を や って み る そ の2 「 率 直 に頼 む」 を や って み る そ の3 「NOを 伝 え る」 を や って み る そ の1 「NOを 伝 え る」 を や って み る そ の2 「ほ め る ・ほ め られ る」 を や って み る 否 定 的 な メ ッセ ー ジへ の対 処 を知 る ま とめ&「 こ れ か ら」 を考 え る レポ ー ト作 成 ・提 出. プ ロ グ ラム 内 容 各 回 の テ ー マ を 表2に. 示 し た 。ATで. は、 ロー ル プ レイ が トレー ニ ン グの 中核 に据 え られ て. い るが 、 その ロ ール プ レイ に段 階 を 追 って 慣 れ て い くと い う流 れ と、 理 論 か ら実 践 へ と い う流. れ で プ ロ グ ラ ム15回 が 組 み 立 て られ て い る。 受 講 生 に は、 互 い に支 え 合 う学 びの 場 を 形 成 して い き た い 旨 を伝 え 、 最 初 の 数 回 で は、 話 され る個 々人 の 体 験 や 感 想 は実 習 時 間 以 外 に は触 れ な. 78.

(5) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. い こ と 、 そ れ ら の 内 容 に つ い て の 守 秘 義 務 、 発 言 拒 否 権 な ど に つ い て 絶 え ず 確 認 を と りつ つ 、 実 習 の 時 間 自 体 が ア サ ー テ ィ ブ で 安 全 な 場 と して 機 能 す る よ う 十 分 に 配 慮 した 。 授 業 外 で も 参 加 同 士 の 交 流 が あ り、 そ れ が 長 期 に わ た る 可 能 性 も あ る た め 、 特 に 強 調 して お くべ き 点 で あ る 。 授 業 時 間 は90分 で あ る が 、 最 初 に ア イ ス ブ レ ー キ ン グ や 復 習 の 時 間 を10分 程 度 、 最 後 に ク ロ ー ジ ン グ(ま. と め と 感 想)を10分. 程 度 と る た め 、 以 下 に 説 明 す る 各 回 の プ ロ グ ラ ム は 約70分. で 実 施 さ れ た も の で 、 お お よ そ3∼4の. ワ ー クが 組 まれ て い る。 な お 、 実 習 内で 行 う ワー クの. ほ と ん ど は 、(1)個 人 で 考 え た り、 思 い 出 し た り し て シ ー トに 記 入 す る 作 業(個. 人 ワ ー ク)、(2). 二 人 組 あ る い は 三 人 組 で の ワ ー ク(ペ. ア ワ ー ク ・小 グ ル ー プ ワ ー ク)、(3)ペ ア 、 グ ル ー プ で 話. し た こ と の 全 体 へ の 報 告(シ. い う 流 れ で 進 め ら れ る 。 ま た 、 各 回 に 「気 づ き ノ ー ト」. ェ ア)と. と い う シ ー トを 配 布 して 、 そ の 日 の 実 習 で 感 じ た こ と を 書 き 入 れ 、14回 分 綴 っ て お く よ う に 指 示 して い る 。 た だ し、 こ れ は あ く ま で 個 人 の 学 び の 記 録 で あ り、 担 当 者 に よ る チ ェ ッ ク は 行 な わ な い。 以 下 に 各 回 の ワ ー ク の 内 容 と 目 的 を 簡 単 に 紹 介 して い く。. ①. オ リエ ン テ ー シ ョ ン アサ ー テ ィ ブネ ス と は何 か 、 その 概 要 お よ び本 実 習 の 進 め方 、 評 価 方 法 な ど につ いて 説 明 す. る 。 本 実 習 で は 体 験 型 の 学 習 が 主 と な る こ と を 伝 え た 上 で 、 オ リエ ン テ ー シ ョ ン に 出 席 し よ う と思 っ た理 由 につ いて ペ ア ワー クを 行 い、 その 後 シ ェ アす る。 この こ とで 、 実 習 の 進 め方 の 雰 囲 気 を体 験 す る。. ②. 自 分 自 身 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 振 り返 る 実 習 時 間 内で 呼 び合 うニ ックネ ー ムを 考 え 、 自 己紹 介 を 行 う。 ニ ックネ ー ムの 使 用 は場 の 雰. 囲 気 を 緩 和 す る だ け で は な く、 自 分 が 呼 ば れ て 心 地 よ い と す る も の を 自 ら 決 定 し、 伝 え る 、 と い う 自 己 主 張 の 第 一 歩 と 位 置 づ け られ る 。 次 に 、 各 自 が 日 頃 の 自 分 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 振 り返 り、 得 意 ・不 得 意 な 部 分 に つ い て 考 え て み る 。 振 り返 り に 用 い る 項 目 は ア サ ー テ ィ ブ な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 具 体 的 リ ス トで あ り(「 人 と違 っ た 意 見 や 感 じ を も っ て い る と き 、 『私 は 違 う と 思 う 』 「私 の 考 え 方 は 違 う』 と言 え る 」 な ど23項 目)、 振 り返 り と 同 時 に 、 ア サ ー テ ィ ブ で あ れ ば 何 が で き る の か の 紹 介 を 兼 ね て い る 。 第3の. ワ ー ク と し て 、 日常 的 に よ く見 か け る コ. ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンパ タ ー ン と して 、 攻 撃 型 ・受 身 型 ・操 作 型 を 紹 介 し(表3を. 79. 参 照 の こ と)、.

(6) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). 自 分 自 身 や 周 囲 の 人 々 の パ タ ー ン を 振 り返 る 。 そ の 上 で 、 第4の. パ タ ー ン と して の ア サ ー テ ィ. ブ ネ ス と は何 を ど の よ う に伝 え る こ と で あ る の か の 説 明 を 行 う。 最 後 に、 自己 の. 「人 間 関 係. マ ッ プ 」 を 作 成 す る こ と で 、 自 己 の 周 囲 の 人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 振 り返 る 。. 表3コ パ ター ン. 自己尊重 相手尊重. 直接性. 威圧性. ○. ×. ○. ○. ×. ○. ×. ×. 言 語 上 あ るい は表 面 的 には 相 手 に同 意 し な が ら、 非 言 語 レベ ル な どで 裏 メ ッセ ー ×orO ジを 使 い 相 手 を 操 作 す るパ ター ン. ×. ×. ○. ○. ○. ×. 自分 の 感 情 、 要 求 、 意 見 が 正 しい もの と して 相 手 を 攻 撃 す るパ ター ン. (Aggressive). 自分 の 感 情 、 要 求 、 意 見 を 言 い出 す こ と が で きず 、 相 手 の 要 求 を 受 け入 れ て しま うパ ター ン. 受身型 (Nonassertive). 操作型 (Manipulative). アサ ー テ ィ ブネ ス. ③. 容. コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンを 勝 ち 負 け で考 え 、. 攻撃型. (Assertive). 内. ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・パ タ ー ン. 自分 の 要 求 や 意 見 、 感 情 を 、 相 手 の 権 利 を 侵 害 す る こ と な く、 誠 実 に、 率 直 に、 対 等 に 表 現 す るパ ター ン. ○. ア サ ー テ ィ ブ ネ ス ・ ト レー ニ ン グ の 基 本 的 考 え 方 を 知 る ア サ ー テ ィ ブ ネ ス の 理 論 的 部 分 の 説 明 を 行 う 。 「誠 実 ・率 直 ・対 等 ・自 己 責 任 」 と い う4つ. の 柱 を 説 明 し、 そ れ ら と 前 回 見 た4つ 次 に 、ATの. の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンパ タ ー ン との対 応 を 考 え て み る。. 基 本 的 ト レ ー ニ ン グ 方 法 で あ る ロ ー ル プ レ イ の 意 義 を 説 明 す る。 そ の 上 で 、 ロ ー. ル プ レ イ の 第 一 歩 と して. 「聴 い て い る よ う で 聴 い て い な い 」 姿 勢 を 各 ペ ア で そ れ ぞ れ 演 じて み. る 。 「聴 い て も ら え な い 」 こ と の 居 心 地 の 悪 さ を 体 験 し た 後 で 「リ ス ニ ン グ ・ブ ロ ッ ク6」 を 説 明 し、 「聴 く」 た め の ポ イ ン トを 押 さ え る。 そ の 後. 「聴 く」 姿 勢 で ロ ー ル プ レ イ を 行 い 、 コ ミ. ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て 「聴 く」 こ と の 重 要 性 を 確 認 し、 今 後 の 実 習 の 中 で 互 い に 「聴 き 」 「聴 い て も らえ る 」 場 づ く りが で き る よ う 意 識 を 向 け さ せ る 。. ④. アサ ー テ ィ ブネ ス に お け る権 利 につ いて 考 え る 最 初 に 、 理 性 感 情 行 動 療 法(Rational-EmotiveandBehavioralTherapy)の. イ ラ シ ョナ ル ・. 6傾 聴 を 妨 げ る もの と して 、 田上(2000)が ま とめ た 無 意 識 的 な 思 考 パ ター ンの リス トで あ る。 た と え ば、 人 が 話 して い る と き に 「頭 の 中 で 自分 と相 手 とを 比 較 す る」、 相 手 が 何 か につ い て批 判 を して いた り、 怒 って い る と き に 「相 手 を な だ め る」 な どで あ る。. 80.

(7) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. ビ リー フ につ いて 説 明 を 行 う。 これ は、 アサ ー テ ィ ブ にな れ な い理 由の1つ 、 自己 の 要 求 や 感 情 の 自 己受 容 と その 表 現 を 禁 じる よ うな 「マ ス ト思 考 」 を 確 認 す る こ とを 目的 と して い る。 そ の 上 で 、 要 求 ・感 情 の 自 己受 容 の 権 利 お よ び それ らの 表 現 の 権 利 で あ る アサ ー テ ィ ブネ ス にお け る 「私 た ちの 権 利 」を 原文 で 紹 介 し(表4を. 参 照)、 それ らの 翻 訳 作 業 を グル ー プで 行 う。 自. 分 た ち 自身 の 言 葉 で 表 現 す る努 力 を通 して 、 こ こで い う権 利 が 何 を意 味 す るの か 、 時 間 を か け て 向 き合 う こ と を 目的 と して い る。. 表4ア. サ ー テ ィブ ネ ス にお ける 権 利. 11havetherighttostatemyownneedsandsetmyownprioritiesasapersonindependentof anyrolesthatImayassumeinmylife. 21havetherighttobetreatedwiththerespectasanintelligent,capableandequalhuman being。. 3. Ihavether. ghttoexpressmyfeelings.. 4. Ihavether. ghttoexpressmyopinionsandvalues.. 5. Ihavether. ghttosay`yes'or`no'formyself.. 6. Ihavether. 7. Ihavether. ghttomakemistakes. ghttochangemymind.. 8. Ihavether. 9. Ihavether. 10. Ihavether. 11. Ihavether. ghttodeclineresponsibilityforotherpeople'sproblems. ghttodealwithotherswithoutbeingdependentonthemforapproval.. 12. Ihavether. ghttochoosenottoassertmyself.. (1∼11に. ⑤. ghttosayIdon'tunderstand. ghttoaskforwhatIwant.. つ い て は 、Dickson(1982)、pp.29-36よ. り抜 粋 し整 理 。12は. ア サ ー テ ィ ブ ジ ャパ ン に よ る). 自分 自身 の 権 利 につ いて 考 え る 前 回 訳 出 した 「私 た ちの 権 利 」 を互 い に発 表 しあ い、 訳 の 点 検 を行 い、 さ ら にで き るだ け身. 近 な もの とな る よ う、 よ り良 い表 現 を 目指 し検 討 す る時 間 を と る。 そ の 後 、 アサ ー テ ィ ブネ ス の 歴 史 につ いて の 説 明 を 行 い、 アサ ー テ ィ ブネ スの 根 幹 に権 利 意 識 が 存 在 して い る こ とを 確 認 す る。 その 上 で 、 各 自が 自分 自身 で 特 に尊 重 し尊 重 され た い権 利 を選 び、 互 い にそ の 権 利 を 認 め合 う ロ ール プ レイを 行 う。 ま た、我 々の社 会 の 中 に実 在 す る 「押 し付 け」の一 例 と して、ジ ェ ンダ ー ・ス テ レオ タ イ プ につ いて 具 体 例 を 検 討 す る。. ⑥. 「気 持 ち」 の扱 わ れ方 ・扱 い方 につ い て考 え て み る アサ ー テ ィ ブ ネ ス に お け る権 利 を 実 際 に行 動 に移 す た めの 準 備 段 階 と して 、 我 々の 社 会 にお. け る感 情 へ の 対 処 につ いて 振 り返 る。 まず 、 感 情 と行 動 の 関 係 につ いて 考 え るた め に 「あ る行. 81.

(8) 近畿大学教育論叢. 動(た. 第21巻 第1号(2009・9). とえ ば 「い じめ る」)の 裏 に あ る感 情 」 お よ び 「あ る感 情(た. とえ ば 「悲 しみ」)か ら く. る行 動 」 を列 挙 して み る こ とで 、 その 関 係 の 多 様 性 につ いて 考 え る。 そ の 作 業 を 通 じて 「感 情 的 に な る こ と」 と 「感 情 を 表 現 す る こ と」 の 違 いを 学 ぶ 。 ま た、 現 代 社 会 にお け る感 情 の 扱 わ れ 方 につ いて 、 「感 情 管 理 」 「感 情 労 働 」 に関 す る社 会 学 ・心 理 学 の 研 究 知 見 を 紹 介 し、 各 自の 体 験 を振 り返 る。 最 後 に、自分 の感 情 表現(誰 に どの よ うな感 情 を伝 え て い る か伝 え て な い か) を振 り返 り、 その う ち 「感 謝 」 や 「愛 情 」 を 伝 え た いが 伝 え て いな い と い う事 例 を 選 び、 感 情 を伝 え る ロ ール プ レイを 行 う。 感 情 を 言 語 化 す る こ との 意 義 と ポ イ ン トを 確 認 す る。. ⑦. 「率 直 に 頼 む 」 を や っ て み る. そ の1. 比 較 的 小 さ な こ と だ が 伝 え ら れ て い な い 事 例(「 課 題 」 と 呼 ぶ)を. 各 自 で 書 き だ し、 現 在 は. ど の よ う に して い る の か 自 分 自 身 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン パ タ ー ン を 振 り返 る 。 次 に 、 担 当 者 が 準 備 し た 架 空 事 例 を1つ. 提 示 し て 、 攻 撃 型 、 受 身 型 、 操 作 型 の3つ. の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンパ. タ ー ンで あ れ ば ど の よ う に 伝 え る の か 、 小 グ ル ー プ で シ ナ リオ を 考 え ロ ー ル プ レ イ を や っ て み る 。 そ の 後 、 ア サ ー テ ィ ブ に 伝 え る た め の 課 題 の 整 理 の ポ イ ン ト(事 実 ・感 情 ・要 求/提 案) を 説 明 し、 シ ナ リオ を 再 度 作 成 す る 。 そ の シ ナ リオ で ロ ー ル プ レ イ を 行 い フ ィ ー ドバ ッ ク を 受 け る 中 で 、 事 実 を 客 観 的 ・具 体 的 に 整 理 す る こ と 、1(私)メ. ッセ ー ジ を 使 う こ と 、 要 求 の 的. を 絞 る こ と な ど を 学 ぶ 。 そ の 後 、 ア サ ー テ ィ ブ な 最 終 版 シ ナ リオ を 作 成 し、 各 小 グ ル ー プ で 全 員 が ロ ー ル プ レ イ を 行 い 、 初 回 版 と 最 終 版 と の 違 い を 身 体 感 覚 を 通 して 体 験 す る 。. ⑧. 「率 直 に 頼 む 」 を や っ て み る. そ の2. 各 自 が 自 分 自 身 の 課 題 を 整 理 す る 。 自 分 自 身 の 課 題 で ロ ー ル プ レ イ を 行 う 理 由(身. 体的感覚. の 体 験 の 重 要 性 、 フ ィ ー ドバ ッ ク の 効 果 、 表 現 して み る こ と で の 感 情 ・要 求 の 整 理 な ど)を. 確. 認 す る 。 ま ず は 感 情 の 言 語 化 に 焦 点 を 当 て る た め 、 自 分 の 課 題 に お け る 「事 実 」 に 対 す る 「感 情 」(「不 安 で あ る 」 「困 っ て い る 」 な ど)あ. る い は 伝 え よ う と し て い る 瞬 間 の 感 情(「 言 い 出 し. に く い 」 「こ ん な こ と言 っ て 失 礼 で は な い か 」 な ど の 戸 惑 い や 不 安)と. 、 「話 を した い 」 と い う. 要 求 の み を 伝 え る ロ ー ル プ レ イ を 各 自 が や っ て み る 。 そ の 後 、 受 講 生 か ら 出 さ れ た 課 題 か ら1 つ 選 び 、 ロ ー ル プ レ イ の デ モ ン ス ト レー シ ョ ン を 行 う 。 そ の 際 に 、 ア サ ー テ ィ ブ に 伝 え る た め の5つ. の ポ イ ン ト(要 求 の 的 を 絞 り 具 体 的 な も の に す る 、 立 ち 戻 る 、 感 情 を 言 語 化 す る 、 ボ. デ ィ ラ ン ゲ ー ジ に 注 意 す る 、 相 手 へ の 理 解 を 言 語 化 す る)を. 82. 紹 介 す る。 また 、 ロー ル プ レイ に.

(9) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. 対 す る フ ィ ー ドバ ッ ク の ポ イ ン トを 説 明 し、 改 善 で き る 点 と して 行 為 者 本 人 が 理 解 し、 変 容 を 試 み られ る よ う な 具 体 的 な 提 案 を す る よ う 注 意 す る 。 そ の こ と が こ の 場 で の ア サ ー テ ィ ブ ネ ス の 実 践 で あ る こ と も 告 げ 、 互 い に フ ィ ー ドバ ッ ク を 行 う 、 数 回 ロ ー ル プ レ イ を 繰 り返 し、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 変 化 の プ ロ セ ス に 共 に 立 ち 会 う 。. ⑨. 「率 直 に 頼 む 」 を や っ て み る. そ の3. 前 回 の デ モ ン ス ト レ ー シ ョ ン で み た ロ ー ル プ レ イ の 手 順 の 確 認 、 お よ び フ ィ ー ドバ ッ ク を す る と き の ポ イ ン トの 確 認 を 行 っ た 後 に 、 小 グ ル ー プ に 分 か れ 、 各 自 が 順 に 自 分 自 身 の 課 題 で ロ ー ル プ レ イ を 行 う 。 フ ィ ー ドバ ッ ク を 受 け な が ら、 ロ ー ル プ レ イ を3、4回. 繰 り返 し、 練 習. す る。. ⑩. 「NOを. 伝 え る」 を や って み る. 各 自 が 自 分 自身 の 「NOを. 伝 え る」 課 題 を 考 え る 。NOと. こ と を 確 認 し、 何 に 対 し てNOな の 整 理 を 行 う 。NOを. そ の1 は 、 相 手 を 拒 絶 す る言 葉 で は な い. の か 、 的 を絞 る こ との重 要 性 を伝 え る。 そ の後 、 各 自の 課 題. 伝 え る と き の ポ イ ン トを 説 明 し た 上 で 、 課 題 を1つ. 選 び ロ ー ル プ レイ の. デ モ ンス トレー シ ョンを 行 う。. ⑪. 「NOを. 伝 え る」 を や って み る. そ の2. 小 グ ル ー プ で 、 各 自 が 自 分 の 課 題 で ロ ー ル プ レ イ を 行 い 、 フ ィ ー ドバ ッ ク を 受 け る 。 数 回 繰 り返 し、 ア サ ー テ ィ ブ なNOの. ⑫. 練 習 を 行 う。. 「ほ め る ・ほ め ら れ る 」 を や っ て み る これ まで の. 「ほ め られ た 体 験 」 を 振 り返 り、 ほ め 言 葉 が 与 え る 影 響 に つ い て 考 え て み る 。 プ. ラ ス の フ ィ ー ドバ ッ ク と して の. 「ほ め 言 葉 」 を ア サ ー テ ィ ブ に 伝 え る こ と 、 受 け 取 る こ と を 練. 習 す る。 まず は、 自分 自身 につ いて の. 「ほ め 言 葉 」 を 書 き 出 し、 自 分 自 身 で 表 現 して み る 。 次. に 、 そ れ ら を 他 者 か ら言 わ れ た と き に ど う 受 け 取 る の か 、 ポ イ ン トを 説 明 した 後 に 、 各 自 の 事 例 を使 って 練 習 を行 う。 ま た、 ほ め る側 は、 誠 実 で あ る こ と、 簡 潔 で あ る こ と、 具 体 的 で あ る こ と と い う ポ イ ン トを 確 認 す る 。. 83.

(10) 近畿大学教育論叢. ⑬. 第21巻 第1号(2009・9). 否 定 的 な メ ッセ ー ジへ の 対 処 を 知 る い わ ゆ る 「批 判 」 を 受 けた と き に、 そ の場 で の 最 小 限 の対 処 を どの よ うに行 え ば い い の か、. 簡 単 に ポ イ ン トを説 明 す る。 時 間 的 な 制 約 も あ り、 ま た、 批 判 へ の 対 処 は比 較 的 難 易 度 の 高 い テ ー マで あ る た め に、 こ こで は ロ ール プ レイ は行 わ ず 、 簡 単 な 説 明 に と ど め る。. ⑭. ま と め&「 これ か ら」 を 考 え る これ まで の 実 習 で 学 び、 体 験 した こ とを 振 り返 り、 さ らに アサ ー テ ィ ブネ ス と 自己 信 頼 との. 関 係 に つ い て 説 明 を 行 う。 自己信 頼 を 高 め る方 法 に つ い て 紹 介 を行 い、 そ の 中 の1つ. と して、. 各 自が 今 後 の 目標 や 夢 につ いて 考 え て み る こ とで 、 長 期 的 な 展 望 を も ちそ れ に向 か って 行 動 す る こ と を意 識 す る時 間 を 持 つ 。 ま た、 アサ ー テ ィ ブネ ス は問 題 解 決 に と って 万 能 で はな く、 単 に1つ の 道 具 で あ る こ と、 現 実 の 場 面 で アサ ー テ ィ ブ にな る こ とで 「波 が 立 つ 」 可 能 性 の あ る こ と な どの 注 意 を 伝 え、 今 後 の ア サ ー テ ィ ブ ネ ス の 使 い 方 につ い て 説 明 す る。 実 習 の最 後 の ワ ー ク と して 、 自分 自身 を 自分 の 大 切 な 親 友 と位 置 づ け、 その 親 友 へ の 手 紙 を 書 く。 封 印 した 上 で 、 担 当者 が 預 か り、 各 自が 希 望 す る時 期(多. くは1年 、2年 後 、 あ る い は卒 業 時 な ど)に. 投 函 す る。. ⑮. レ ポ ー ト作 成 ・提 出 本 実 習 に 対 す る フ ィ ー ドバ ッ ク を 匿 名 で 作 成 し、 感 想 な ど と と も に 提 出 す る 。. 3.大. 学 に お け るAT実. 践 の 意 義 お よ び 留 意 点 ・問 題 点. 次 に、 大 学 教 育 に お い てATを. 実 践 す る意 義 を 検 討 し、 そ れ ゆ え に留 意 す るべ き点 は何 か、. あ る い は今 後 検 討 を 要 す る問 題 点 は何 か につ いて 整 理 して い き た い。 様 々な 現 場 で の 実 践 は、 参 加 の 自主 性 、 参 加 に よ る報 酬 の 有 無 、 参 加 費 の 高 低 な ど参 加 形 態 に お いて 異 な るが 、 これ らは参 加 者 の 動 機 づ けを 左 右 す る。 あ る い は参 加 者 の 多 様 性 、 参 加 者 同士 の 関 係 性 の 相 違 は、 参 加 者 の 自 己開 示 に関 わ って くる。 大 学 の カ リキ ュ ラ ム 内で の 実 践 に つ いて 言 え ば、 履 修 は 自 由、 継 続 も 自 由、 しか し単 位 と い う報 酬 が あ る、 参 加 者 同士 が 既 知 で あ る者 ・未 知 で あ る者 が 入 り混 じって い る、 トレー ニ ン グの 場 以 外 で も関 係 が あ るな どの 特 徴 が あ る。 こ う い っ た点 で も 「大 学 教 育 の カ リキ ュ ラ ム 内で の 実 践 」 の 特 殊 性 を 論 じる こ とが で き るが 、 それ につ いて は ま た別 の 機 会 を 待 つ こ と と して 、 こ こで は、 大 学 生 で あ る こ と に 由来. 84.

(11) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. す る発 達 心 理 学 的 特 徴 か ら、 大 学 教 育 に お け るATの. 表5参. 対. 象. 友人 バ イ ト上 司 親 店員 家 族(親 以 外) 近所 恋人 その他. 内. 意 義 、 留 意 点 、 問 題 点 を 考 え た い。. 加 者 によ る ロー ル プ レイ の 課 題(課 題 総 数=74). 容. 具. 体. 例. 援助の断 り 誘いの断 り その他の要求 スケ ジ ュー ル 調 整. 夜 中 や 長 電 話 の 相 談 や ノー ト貸 与 な どの 断 り 飲 み 会 や イ ベ ン ト参 加 の 断 りな ど 丁 寧 な 対 応 の 要 求 、 話 し方 な どの 改 善 な ど シ フ トの 断 り、 休 み の 申 し 出、 待 遇 の 変 更 、 な ど. 保護の断 り セ ー ル ス、 案 内 の 断 り. 部 屋 の 片 づ けの 断 り、 一 人 暮 ら しの 許 可 の 要 求 、 な ど カ ッ トハ ウ スで の 追 加,応 対 な どの 断 り 怒 鳴 りや ち ょ っか い の 断 り、 な ど. 接 し方 の 要 求 迷惑行為の改善の要求 過 ご し方 の 提 案. 夜 中 の 騒 音 、 自転 車 の 置 き方 、 駐 車 場 利 用 な どの 改 善 テ レ ビを 消 す 、 外 へ 出 るな どの 要 求 ゼ ミの 移 動 の 断 り. 比率 95 81 617 176 162 149 54 54 41 14. 現 代 に お け る大 学 生 の ほ とん ど は、 発 達 段 階 上 で いえ ば、 社 会 的 自立 を 目前 に控 え た 青 年 期 後 期 に あ た る。 尾 崎(2001)に. よ る と、 この 段 階 に お け る発 達 課 題 と して 取 り上 げ られ て きた. もの は、 親 や 大 人 か らの 自立 、 同世 代 の 者 との 成 熟 した関 係 の 構 築 、 職 業 的 社 会 化 ・将 来 設 計 、 自分 な りの 価 値 観 の 確 立 とい っ た もの だ とい う。 表5は4年. 間 の 実 習 で 受 講 者 か ら出 され た. ロ ール プ レイの 課 題 を 分 類 した もの で あ るが 、 友 人 関 連 が 最 も多 く、 親 へ の 要 求 、 バ イ ト先 の 上 司 へ の 要 求 ・断 りが 続 き、 先 述 した、 親 か らの 自立 、 友 人 関 係 の 構 築 、 職 業 的 社 会 化 と い う 3つ の 発 達 課 題 と対 応 す る。 以 下 で は、 青 年 期 後 期 と い う発 達 的 視 点 と現 代 社 会 と い う視 点 の 両 者 を含 み な が ら、 これ ら3点 に沿 って大 学 に お け るAT実. 践 の意 義 、留 意 点 、 問 題 点 を 指 摘. して い き た い。. 大 学 生 の 友 人 関 係:親 密 さを 求 め な が らの も どか しさ 先 述 した よ う に、 受 講 者 が 出 して くる ロ ール プ レイ課 題 で 最 も多 いの は、 友 人 に関 す る もの で あ る。 中で も、 「夜 中 の電 話 相 談 を 断 る」 とい うの は頻 繁 に 出 され る課 題 で あ る。 「時 間 的 に は長 く話 につ き あ って い るが、実 は話 を 聞 か ない で別 の こ とを して い る」 「相 手 に共 感 して い る よ う な返 事 を して い るが 実 は長 話 に うん ざ り して い る」 と い っ た状 況 で も会 話 を 切 り上 げ る こ と が で きな い。 課 題 を 出 した本 人 以 外 の 受 講 生 も一 様 に 「あ る あ る」 「そ れ って た いへ ん や よ な」 と う なず く様 子 を 見 て い る と、 この よ うな 状 況 は、 生 活 時 間 が 比 較 的 多 様 で 自由 で あ る た め、 特 に大 学 生 に と って 日常 的 場 面 で あ る こ とが 推 測 で き る。 自分 は実 は不 快 感 や 困 惑 感 を 抱 いて い る に も関 わ らず 、 「相 手 の こ とを 考 え る あ ま り」 伝 え る こ と が で き な い と い う構 造 で あ り、. 85.

(12) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). 友 人 に関 わ る他 の 課 題 も類 似 した もの が 多 い。 岡 田(2007)は. 、 上 掲 の 課 題 例 に あ る よ うな 、 互 い に傷 つ け あわ な い よ う に相 手 に気 を 遣 う. で あ っ た り、 あ る い は表 面 的 で 快 活 な 関 係 を 求 め た り、 相 手 か ら低 い評 価 を 受 けな い よ う警 戒 す る傾 向 に あ る者 を 「現 代 的 友 人 関 係 を と る群 」 と して い る。 ただ し、 他 方 で は、 従 来 の 青 年 観 に合 致 す る よ うな 、 親 密 で 内面 を開 示 し人 格 的 共 鳴 や 同一 視 を もた らす 「内面 的 友 人 関 係 を と る群 」 も あ り、 友 人 関 係 と い う点 で 現 代 の 大 学 生 は大 き く2群 に分 か れ る と い う。 「現 代 的 友 人 関 係 を と る群 」 は 複 雑 化 した社 会 で は 適 応 的 とす る考 え 方 もで き る か も しれ な いが 、 や は り、 「内 面 的友 人 関 係 を と る群 」 に比 べ て 、 自尊 感 情 得 点 が 低 く、 人 格 障害 的 な 意 味 で よ り不 適 応 的 で あ る と い う研 究 結 果 が 示 され て い る(岡 田、2007)。 これ ま で心 理 学 で は、 青 年 期 の 「内面 的 友 人 関 係 」 が 心 理 的 安 定 を も た ら し、 新 たな 自己 概 念 の 獲 得 と健 康 な 成 熟 を 促進 す る とい った有意 義性 を示す 知見 が蓄積 され て きてお り(た とえ ば、西平 、1990;松. 井、1990)、. 親 密 な 「内面 的 友 人 関 係 」 を 築 くこ と は、 現 代 社 会 と いえ ど も重 要 で あ る と いえ るだ ろ う。 そ して 実 際 の と こ ろ、 学 生 自身 も、 互 いの 個 性 を 尊 重 しつ つ 、 互 い に 自分 の 意 見 を き ちん と 言 い た いな ど、 「相 互 尊 重 」 の欲 求 が男 女 と も高 く(榎 本 、2000)、 互 い に意 見 を 言 い合 う こ と を望 ん で い る と い う傾 向 が 報 告 され て い る(和 田、1996)。 ま た、 久 木 山(2005)に 友 人 関 係 形 態 と して 「浅 く」 よ り も 「深 く」 を 理 想 とす る大 学 生 は89.4%(n=398)に. お い て も、. 発 達 的 に、 佐 藤(2004)は. 上 る。. 、 中学 生 、 高 校 生 、 大 学 生 の 友 人 関 係 の 変 化 を 、 防 衛 的 浅 い関 わ り. か ら積 極 的 深 い関 わ りへ 、 広 く全 方 向 的 な 関 わ りか ら狭 い選 択 的 ・限 定 的 関 わ りへ 、 と い う2 つ の 軸 で ま と めて い る。 この よ うな 知 見 か ら言 え る こ と は、 大 学 生 の 中 に は、 中学 ・高 校 時 代 に お け る様 々な 経 験 の 結 果 、 親 密 な 関 係 にな る こ と に躊 躇 した り、 相 手 を 傷 つ けな い よ うな 行 動 を と って い る者 が い る もの の 、 実 は相 互 尊 重 、 率 直 な コ ミュニ ケー シ ョン と い った 、 ま さ に アサ ー テ ィ ブ な関 係 の 構 築 を 望 ん で い る者 は少 な くな い と い う こ とで あ る。 そ の 望 む 方 向 に進 め る よ う後 押 しを す る た め にATの. 中 で 必 要 な こ と は、 「い い人 間 関係 」 と 「対 等 性 」 とい う. 2つ の 概 念 につ いて 改 めて 考 え る機 会 を 受 講 生 に提 供 す る こ とだ ろ う。 まず 、 「い い 人 間 関 係 」 と は 「誰 とで も仲 の い い関 係 」 で は な い と い う こ とをATの. 中で明. 示 す る こ とで あ る。 距 離 を置 く相 手 も いれ ば、 そ うで はな い相 手 も い る。 誰 と どれ だ けの 距 離 を置 くの か 、 ま た、 た とえ 親 密 な 相 手 で あ っ た と して も 自分 と相 手 の 間 の ど こ に境 界 線 を 引 く の か 、 自分 が 守 る領 域 は ど こな の か を 、 試 行 錯 誤 を しな が らで も 自己 決 定 す る こ との 意 義 を 話 し合 う機 会 を 作 る こ とが必 要 で あ る。 ま た、 「い い人 間 関係 」 が 「同 じ価 値 観 を 共 有 して い る. 86.

(13) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. 関 係 」 と は限 らな い こ と、 む しろ 「異 な る価 値 観 を 認 め合 う関 係 」 が もた らす 意 義 につ いて 考 え て み る ワ ー クが 必 要 で あ る。 特 に 同年 代 の 友 人 は、 家 族 に はな い異 質 性 を 有 す る存 在 で あ り、 新 た な考 え 方 や 生 き方 を 互 い に知 る こ と に よ って 、 それ ぞ れ が 人 生 観 や 価 値 観 を 広 げ る と い う モ デ ル機 能 を 発 揮 す る と され る(松 井 、1990)。 ア サ ー テ ィブ ネ ス は 、 互 い の異 質 性 、 社 会 の 多 様 性 の 中で 個 々が どの よ う に共 存 す るか を模 索 す る試 み で も あ り、 そ の 点 を 受 講 生 の 身 近 な 人 間 関 係 の 中 で考 え る 時 間 を十 分 に と った プ ロ グ ラム が必 要 で あ ろ う。 た とえ ば 、 友 人 にNO を伝 え る こ と は何 を も た らす の か につ いて の デ ィ ス カ ッシ ョンが 一例 で あ る。 社 会 に参 入 す る と、 た とえ ば仕 事 上 な ど、 価 値 観 が 異 な るが つ き あわ ね ばな らな い相 手 も 出て くるが 、 そ の 前 の 大 学 生 の 段 階 で 、 人 との 適 切 な 距 離 の 取 り方 を 学 ん で お くこ と は将 来 の 人 間 関 係 構 築 に と っ て 役 立 つ と考 え る。 次 に、 「対 等 性 」 とい う概 念 の 掘 り下 げ で あ る。 先 に 挙 げ た 「夜 中 の携 帯 相 談 」 の 課 題 は、 その 概 念 を再 考 す る格 好 の テ ー マで あ る。 延 々 と話 につ き あ って しま うの は 「相 手 が 困 って い るか ら」 「可 哀 そ うだ か ら」 とい う理 由 に は、 「相 手 に対 して 、 そ して 自分 に対 して 不 誠 実 で あ る」 と い う視 点 はな い。 先 述 した よ う に、 うん ざ り して しま い、 相 手 の 話 を 真 剣 に聴 けて いな い に も拘 らず 「相 手 の 相 談 を 聞 いて い る」 態 度 その もの が 相 手 に不 誠 実 で あ る こ と は も ち ろん の こ と、「切 って寝 た い」「こ ち ら も困 って い る」と い う 自分 の 感 情 や 欲 求 に も誠 実 で はな い。 そ の 点 を確 認 す る必 要 が あ る。 さ らに、 「聴 い て 『あ げ て い る』」 と い う態 度 の 傲 慢 さ に も気 付 く べ き点 で あ る。 これ らにつ いて は デ ィ ス カ ッシ ョンの 中で 受 講 生 自身 が 気 づ く場 合 も あ る。 そ こで 、 も う一 歩 踏 み 込 み 「聞 いて あ げな けれ ば、 その 人 が ど うな るか わ か らな い」 と い う考 え は いわ ゆ る 「非 合 理 な 思 い こみ 」 の 可 能 性 が 高 い こ と、 そ して 「相 手 が 弱 い人 間 、 自分 で は ど う しよ う もで きな い人 間 だ 」 と い う見 方 が そ こ に は潜 ん で お り、 それ は相 手 を 見 下 す 非 対 等 な 態 度 で あ る 可 能 性 が 高 い こ とま で 気 付 か せ る こ とが 大 切 で あ る。 「深 いつ き あ い」 とい う もの を構 築 した いの で あれ ば、 その 不 誠 実 さ、 傲 慢 さ、 非 対 等 性 を見 直 す 必 要 性 が あ る こ と は フ ァ シ リテ ー タ ーが 必 ず 何 らか の 形 で 場 に 出 し、受講 者 の 中 に 「波 」を 立 て る こ とが 求 め られ る。 そ こで 再 び アサ ー テ ィ ブネ ス に お け る 「権 利 」 に立 ち戻 り、 自 らの 状 況 と関 連 付 け させ る こ とで 対 等 と は何 か につ いて の 理 解 が 深 ま るだ ろ う。 さ らに、自分 の不 誠 実 な 態度 が これ ま で 「問題 」 を生 じさせ て い た と い う、「問題 」に対 す る 自分 の 責 任 部 分 に言 及 す る こ とが よ り対 等 性 の 高 い アサ ー テ ィ ブ な コ ミュニ ケ ー シ ョ ンとな る こ とを 学 ぶ こ と も必 要 で あ る。 相 手 が 話 し続 け るだ けで な く、 自分 が 聞 き続 けて い る こ とで 、 長 電 話 が 成 立 す るの で あ る。. 87.

(14) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). 大 学 生 の 親 子 関 係:「 追 い つ き か け た者 」 と して の対 等 感 覚 青 年 期 の 親 子 関 係 につ いて 、 落 合 ・佐 藤(1996)は. 、 高 校 生 あ た りを 転 機 と して 、 大 学 生 に. な る と、 「親 が子 を危 険 か ら守 る親 子 関係 」 は大 幅 に減 り、 「子 が 親 か ら信 頼 ・承 認 され て い る 親 子 関係 」 が よ くみ られ る と して い る。 ま た、 「親 が 子 を頼 りに す る関 係 」 も見 られ 始 め、 最 終 的 に は 「対 等 な 親 子 関 係 」 とな り、 その 時 点 で 心 理 的 離 乳 を遂 げ る とす る。 小 高(1998)も. 、. 親 に反 発 を感 じ親 と距 離 を 置 く 「離 反 的 な 親 子 関 係 」 か ら、 親 を 一 人 の 人 間 と して 認 めか つ 親 に尊 敬 ・感 謝 の 念 を 抱 く 「対 等 な 関係 」 へ の 発 達 変 化 を心 理 的 離 乳 の過 程 と して 挙 げて い る。 た だ し、 依 存 か ら独 立 へ と い う プ ロセ ス は直 線 的 に移 行 す るわ けで はな く、 む しろ両 者 の 葛 藤 を抱 え た ま ま、 か つ 前 進 と後 退 を 繰 り返 して の 、 時 間 を か け た移 行 で あ る。 親 との 依 存 一 独 立 の 葛 藤 の 解 決 を模 索 す る過 程 で 、 自律 性 が 発 達 す る と され て い る(井 上 、1995)。 その よ うな 理 論 的 見 解 を踏 まえ て 大 学 生 を見 る と、 確 か に親 か らの 自立 を 果 た して い る生 活 領 域 が あ る一 方 で 、 大 学 生 は依 然 と して 親 の 保 護 下 に あ る こ とが 改 めて わ か る。 た とえ ば、 大 学 受 験 と い う親 子 に と って の1つ. の ゴー ル を達 成 した 後、 大 学 生 は 時 間 的 自 由 を 得 て 生 活 の. ペ ー スが 変 わ り、 活 動 範 囲 も広 が り束 縛 が 少 な くな る。 ま た、 遊 びや 旅 行 、 フ ァ ッシ ョンや 趣 味 な ど 自分 自身 の 活 動 費 につ いて は アル バ イ トで 稼 ぐな ど、 経 済 的 自立 が 可 能 とな る。 た だ し、 ほ と ん どの場 合 は 親 に学 費 を 出 して も らい、 ま た生 活 費 を 入 れ る と い う こ と も ほ とん ど な い。 親 は、 大 学 で の 成 績 や 日頃 の 学 習 態 度 につ いて は あ ま り情 報 を得 よ う とす る こ と もな いが 、 留 年 とな る と関 わ って くる。 進 路 や 就 職 に関 して 自分 で も方 向 性 は持 って い る もの の 、 親 に相 談 す る ケ ー スが 多 い。 つ ま り、 発 達 心 理 学 的 に は大 学 生 は青 年 期 後 期 と され るが 、 少 な くと も受 講 生 で あ る2、3回. 生 に と って 、 依 存 と独 立 の 共 存 や 両 者 の 葛 藤 と い う こ とが 親 子 関 係 の あ り. 様 と言 え る。 に も拘 らず 、 特 に子 ど も側 で あ る大 学 生 の認 知 に は バ イ ア ス が 見 られ る。 た と え ば、 平 石 (2007)は 、 青 年 と親 との 関 係 を 相 互 の言 語 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンか ら分 析 を 行 って い る が、 大 学 生 は親 との 結 合 性 は高 校 生 よ りも高 くな って お り、 親 の 信 念 や 感 情 を 尊 重 した り、 親 の 考 え を発 展 させ る た めの 承 認 や 励 ま しと い っ た応 答 は よ り多 い と い う。 青 年 期 の 前 期 や 中期 で は い っ たん 離 れ た親 子 関 係 だ が 、 後 期 で は再 び結 びつ き を取 り戻 し、 仲 間 の よ うな 相 互 的 関 係 に 至 る と い う傾 向が 認 め られ た と い う。 ただ し、 大 学 生 は高 校 生 に比 べ る と、 親 に 自己 主 張 が で き、 自分 の 見 解 は親 の それ と は異 な る こ とを 告 げ る こ とが で き る と報 告 す る傾 向 が よ り高 いが 、 会 話 分 析 に よ る と実 際 に行 動 レベ ル で は高 校 生 と違 い はな い。 つ ま り、 親 と対 等 な 関 わ り方 を. 88.

(15) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. して い る と思 って は い るが まだ で きて いな い状 態 と言 え る。 ATに. お い て 受 講 生 が 出 して くる親 へ の課 題 は 「部 屋 の片 づ け」 や 「友 人 関 係 へ の 口 だ し」. な ど をや めて ほ しい と い う要 求 だ が 、ロー ル プ レイ を進 め て い くう ちに、「大 人 と して み て ほ し い」 と い う要 求 が 出て くる こ とが しば しばで あ る。 受 講 生 の ロ ール プ レイを 見 て い る と、 この よ うな 要 求 に は、 「大 人 に見 られ て 当然 で あ る の に、 見 られ て い な い」 とい う現 実 把 握 が あ り、 そ こ に不 満 感 が あ る。 ロ ール プ レイを 進 めて い くと、 ど う して も その 不 満 感 や あ る い は焦 燥 感 か ら攻 撃 性 が 垣 間 見 られ 、 コ ミュニ ケ ー シ ョンが 勝 ち負 けの ス タ ン ス にな って い る こ とが 多 い。 これ は、大 学 生 に 限 らず 一 般 的 にATの. 初 期 段 階 に 陥 りが ち な こ とで あ る が、 夫 婦 や 親 子 な ど. 一 定 の 「歴 史 」 が あ る問 題 を 一 気 に解 決 しよ う、 と い う性 急 な 姿 勢 にな りが ちで あ る。 大 学 生 の 場 合 、 それ まで20年 あ ま りを か けて 、 依 存 や 反 抗 、 愛 着 や 回 避 と い った こ とを 複 雑 に絡 ませ て き た 自分 と親 との 関 係 は一 気 に解 決 で き る もの で はな い。 ま た、 あ る意 味 「追 いつ いて きた 者 」 で あ るか らこ そ、 それ まで の 「下 」 か ら 「上 」 に立 と う とす るが た め に、 自分 が 要 求 す る 権 利 を行 使 す る こ と にの み 意 識 が 集 中 し、 相 手 も 同時 に権 利 を 有 す る こ と に気 づ き、 さ ら に 自 分 の責 任 を 引 き受 け る こ とが ま だ ま だ で きな い。 した が って 、ATの. 中 で は、 課 題 と して 出 し. た問 題 の 解 決 その もの を 目指 す の で はな く、 まず は、 ゆ っ く りと問 題 解 決 を め ざ して い くた め に 「今 後 話 し合 いの 場 を 持 つ 」 と い う要 求 にか え て ロ ール プ レイを 行 う よ う介 入 す る こ とが ま ず 必 要 で あ る。 その 上 で 、親 と対 等 な 関係 を築 くた め の方 向 と して、「感 謝 を伝 え る こ と」「耳 を傾 け る こ と」 を まず 実 践 す る こ とを 伝 え る。 池 田(2006)に. よ る と、 大 学 生 にな る と、 親 に対 して 負 担 を か. けて い る こ とへ の 申 し訳 な さ と い っ た 自責 的 心 理 状 態 が 減 り、 援 助 して くれ る こ とへ の 感 謝 の 気 持 ちが 大 き くな る と い う。 そ して 、 この よ うな 充 足 的 な 心 理 状 態 に お いて 、 親 との 新 しい関 係 を構 築 して お り、 それ が 親 か らの 自立 の 指 標 の1つ で あ る こ とを 示 唆 して い る。 受 講 生 に尋 ね て み る と、 その 感 情 は確 か に抱 いて い る よ うだ が 、 その 表 現 とな る と実 行 で きて い る者 は少 な い。 「照 れ く さい 」 と い う想 い も言 語 化 しな が ら も、 感 謝 の 気 持 ち を率 直 に伝 え る こ と が、 親 との 対 等 な コ ミュニ ケ ー シ ョ ンの1つ で あ る こ とを 理 解 し体 験 す る こ とが 必 要 で あ る。 ま た、 傾 聴 は、ATの. 中 で は 大 人 が 年 齢 の 低 い子 ど も と対 等 に な る た あ に ま ず す べ き こ と と. 7た とえ ば アサ ー テ ィ ブ ジ ャパ ンが 行 うATで は、 思 春 期 以 下 の子 ど もに 対 す る ロー ル プ レイ は 通 常 は行 わ な い。 な ぜ な らば 、 圧 倒 的 に大 人 が 力 を 持 って お り、 要 求 を 相 手 に 伝 え つ つ 対 等 で あ る こ とは 非 常 に難 し い た め に 、 講座 の 練 習 と して は と り あ げ な い。 そ の よ うな 課 題 に は、 「ま ず は聴 く こ と」 を 提 案 す る。. 89.

(16) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). して 提 案 さ れ る こ とで あ る が7、 攻 撃 的 に な りが ち な者 が対 等 性 を 築 くた め の実 践 と して 有 効 で あ る。 大 学 生 の 場 合 、 親 の 話 に耳 を 傾 けて み る とい う こ と は、 「追 い つ い た者 」 が攻 撃 的 に な らず 対 等 に な る た め に効 果 的 な 実 践 で あ る。 堀 田(2002)は. 大 学 生 が 親 か ら過 去 につ いて の. 語 りを聞 くこ とが 、 親 世 代 イ メ ー ジ と ど う関 わ って い るか につ いて 検 討 を 加 え て い るが 、 そ の 調 査 に お け る大 学 生 に よ る回 答 に は、 親 との 「対 等 な 関 係 」 へ の 発 達 変 化 の 兆 しを 示 す ケ ー ス が 見 られ た とい う。 た とえ ば、 「… … 父 と母 は 自分 の 経 験 か ら得 た知 識 や 考 え 方 で一 生 懸 命 育 て て くれ た。 で もや は り、 両 親 が 育 っ た環 境 と私 の それ で は(多 分 他 の 家 よ りも)か け離 れ て い るの で 、 中、 高 校 生 の 頃 は本 当 に よ くぶ つ か っ た し、 悩 ん だ 。 で も、 父 と母 か ら、 育 った 環 境 や 経 験 した事 を聞 き、想 像 す る事 で、理 解 で き る よ うに な った。 … …(女 子)」 とい う感 想 は、 親 の 語 りに耳 を傾 け る 中で 、 異 な る価 値 観 や 習 慣 を もつ 親 を 一一 人 の 人 間 と して 認 めか つ 親 に尊 敬 ・感 謝 の 念 を抱 く 「対 等 な 関 係 」 へ の 変 化 を示 す もの と言 え るだ ろ う。 大 学 生 に と って 「昔 の 若 者 」 と して の 親 に よ る語 りは、 仕 事 、 結 婚 、 育 児 な ど、 まだ 自分 た ちの 世 代 は経 験 して い な いが 、 自分 が 近 い将 来 直 面 す る よ うな 問 題 につ いて 、 親 が 昔 、 自分 た ち と 同 じよ うな 問 題 に 直 面 した と き に、 何 を考 え 、 何 を感 じ、 どの よ うな 行 動 を と っ たの か と い う情 報 で あ る。 そ れ は将 来 選 択 に と って 有 用 で あ るだ けで はな く、 自分 と 同 じ立 場 に あ った 親 に想 いを 馳 せ る機 会 を与 え る もの で あ り、 親 との 対 等 な 関 係 の 構 築 へ とつ な が る可 能 性 を 秘 めて い る。. 大 学 生 の 将 来 設 計:あ ATの. い ま いな 目標. プ ロ グ ラ ム に は 、 自 己 信 頼 を 高 め る た め に 、 人 生 の 短 期 ・長 期 目標 を リス トア ッ プ し. そ の 実 現 の た め に 必 要 な こ と は 何 か を 考 え る と い う ワ ー ク が あ る 。 近 年 多 くの 大 学 で 取 り入 れ られ て い る 就 職 に 向 け て の キ ャ リ ア デ ザ イ ン 教 育 に お い て も 類 似 した ワ ー ク が あ り、 両 者 と も 将 来 設 計 を 促 す と い う 点 で は 共 通 して い る 。 しか し、ATで. は 、ATな. ら で は の 視 点 で 、学 生 か. ら社 会 人 へ と 一 歩 を 踏 み 出 す 準 備 に 貢 献 で き る と 考 え る 。 た だ し、 現 在 のATの. プ ロ グ ラ ムで. は そ の 点 が 不 十 分 で あ り、 最 後 に こ こ で 論 じ る こ と の 多 く は 、 今 後 の 検 討 課 題 と 言 え る 。 溝 上(2004)は. 、1990年. 代 以 降 の 青 年 に よ る 人 生 形 成 の 仕 方 を 、 「イ ン サ イ ド ・ア ウ ト」 と. い う 言 葉 で 表 して い る 。 そ れ 以 前 の 時 代 に は 「よ り上 へ 上 へ 」と い う社 会 に お け る 価 値 観 、 レー ル に 沿 っ て 、 若 者 は 大 人 社 会 へ と参 入 して い た 。 自 己 の 外 に す で に あ る も の(ア. ウ トサ イ ド). が 優 先 で あ る と い う 意 味 で そ の よ う な 生 き 方 は 「ア ウ トサ イ ド ・イ ン 」 と 命 名 さ れ て い る 。 そ れ と は 逆 に 、 「イ ン サ イ ド ・ア ウ ト」 と は 、 自 身 の や り た い こ と(イ. 90. ン サ イ ド)を. 出発 点 と し.

(17) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. て 大 人 社 会 に参 入 す る生 き方 を 指 す 。 前 者 が 心 理 社 会 的 同一一 性 の 形 成 に優 先 順 位 を 置 くの に対 して 、後 者 で は 自己 同一 性 の形 成 に優 先 順 位 を置 い て い る とい う。 そ して、 この 「イ ンサ イ ド・ ア ウ ト」 と い う現 代 の 大 学 生 の 生 き方 の 問 題 点 の 一 つ と して 、 将 来 の 目標 は漠 然 と持 って い る もの の 具 体 的 な 形 にで きな い実 態 を 溝 上(2004)は. 指 摘 して い る。 筆 者 自身 、 学 生 と接 す る 中. で 「人 の 役 に た ち た い」 「子 ど も と関 わ りた い」 「人 と接 す る仕 事 が した い」 と い う声 を よ く耳 にす る。 それ が 具 体 的 に ど う い う仕 事 な の か を 尋 ね る と 「まだ 、 その あた りは分 か らな い」 と い う答 え が 返 って くる こ とが 非 常 に多 い。 就 職 活 動 を 通 して それ が 明 確 にな って い くの だ ろ う と い う予 想 は高 確 率 で はず れ る。 就 職 活 動 が 始 ま っ た こ ろ にな る と当 初 の 目標 は跡 か た もな く な っ て お り、 「次 の セ ミナ ー 来 週 い け る と こ探 して い ま す」 と、 受 か る と こ ろ、 面 接 して くれ る と こ ろ に進 む こ と とな り、 た ち ま ち被 選 別 者 の 立 場 で 活 動 す る こ と にな る。 イ ンサ イ ドか ら 出発 して い る よ うで 、 そ こが あ い ま いな た め に、 実 は 出発 さえ で きて いな いケ ー スが か な りの 数 に上 るの が 現 状 の よ う に思 え る。 アサ ー テ ィ ブネ スで は、 自分 が 望 む 状 況 を 簡 潔 に具 体 的 に表 現 す る こ とを 徹 底 して 訓 練 す る。 私 た ち は、 他 者 に 対 して 「よ くな い 点」 に つ いて は言 え る よ う に な って も、 「で は ど う した ら い いの か 」 と い う具 体 的 な 改 善 策 を 伝 え る こ とが で きな い と い う場 合 が 多 い。 問 題 を 指 摘 す る 以 上 、 その 解 決 策 に向 か って 考 え る責 任 は 自分 に あ る。 まず は 「ほん と う に 自分 が 何 を 求 めて い るの か 」 を 自 己 に誠 実 に尋 ね る こ とか ら始 ま り、 次 に それ を簡 潔 に具 体 的 に表 現 す る こ と に な る。 アサ ー テ ィ ブネ ス は、 コ ミュニ ケー シ ョンの 技 法 で は あ るが 、 人 と向 き合 う前 に、 自己 に 向 き合 う た め の ツ ー ル で もあ る。ATで. は、 自 己 の感 情 や要 求 に誠 実 に 向 き合 い 、 具 体 的 な. 形 に整 理 す る こ と を トレー ニ ン グす る。 受 講 生 の 学 年 か ら考 え て 、 就 職 活 動 に突 入 して 被 選 別 側 とな る前 に、 その ス キル を 身 につ け る い い機 会 だ と言 え よ う。 ま た、 「イ ンサ イ ド ・ア ウ ト」 の 生 き方 の た め に は、 自己 と 向 き合 い つ つ 、 他 者 に 向 か って 言 語 表 現 す る こ と も重 要 で あ る。 溝 上(2004)は. 「イ ンサ イ ド ・ア ウ ト」 の 生 き方 の 困 難 さを. 指 摘 した上 で、 そ れ を 推 し進 め るた め の 重 要 な作 業 と して 、 「聞 き手 に 向 か って 物 語 化 す る こ と」 を挙 げて い る。 現 代 の 学 生 は人 生 や 将 来 の 問 題 を 話 しあ う と い った 、 いわ ゆ る 「マ ジな 話 を本 気 です る」 機 会 を あ ま り持 た な い とい う。ATは. 普 段 とは異 な る コ ミュニ ケ ー シ ョン に挑. 戦 し、 その 感 覚 を体 験 して み る実 験 的 場 で あ る。 限 られ た時 間 と空 間 の 中で あ るか ら こそ 、 い つ も と は異 な る コ ミュニ ケ ー シ ョ ンを 取 りや す くな る。 学 年 や 年 齢 や 性 別 を 超 え て 、 対 等 に意 見 を交 換 で き る場 と して、 夢 に つ い て 具 体 的 に率 直 に語 り合 う場 と して、ATを. 91. 機 能 させ る こ.

(18) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). と も大 学 教 育 で の 実 践 と して 重 要 で あ ろ う。 最 後 に、社 会 へ 視 線 を 向 け る と い う こ とが 大 学 教 育 にお け るATに 述 べ た い と思 う。 大 学 で のAT実. は求 め られ て い る こ とを. 践 報 告 を行 って い る堀 川 ・柴 山(2006)は. 、ATを. 主 に個 人. の 自己 開 示 ス キ ル の トレー ニ ング と して そ の 意 義 を 提 唱 して い る。 確 か に、ATは. コ ミ ュニ. ケ ー シ ョ ンス キル の 訓 練 で は あ るが 、 大 学 に お いて 、 それ も た とえ ば学 生 相 談 室 な ど に よ る主 催 で は な く、 大 学 の カ リキ ュ ラ ム 内で の 実 践 で あ るか らに は、 個 人 の コ ミュニ ケ ー シ ョンの 改 善 を超 え て 、 社 会 問 題 に関 わ る こ と、 その 解 決 の た め に個 人 が 貢 献 す る こ と、 そ の 能 力 の 開 発 と い う視 点 が 今 後 組 み 込 まれ るべ きだ ろ う。 個 々人 が アサ ー テ ィ ブ にな る こ とで 、 社 会 変 化 と して 何 が 起 き るの か を と も に考 え る ワ ー クの 開 発 が 望 まれ る。 通 常 のATで. は、課 題 を 思 い 出. して も らう た め に、 対 象 者 に該 当 しそ うな 課 題 を 事 例 と して 提 示 す るが 、 逆 に、 受 講 者 が 現 在 は直 面 して そ う にな い課 題 例 を積 極 的 に紹 介 す る こ とで 、 社 会 で は 「大 人 」 た ちが どの よ うな 問 題 に巻 き込 まれ るの か につ いて も情 報 提 供 す る こ とが 可 能 で あ る。 た と え ば、 職 場 の 中で の役 割、 雇 用 状 態(正 規 と非 正 規)、 年 齢 、 性 別 、 経 験 に よ る上 下 関 係 に よ る抑 圧 と い っ た課 題 を紹 介 す る こ とで 、 格 差 社 会 の 中で 、 き ちん と要 求 が 伝 え られ る こ との 重 要 性 につ いて 考 え る こ とが で き る。 島本(2003、2008)は. 、 不 況 の 中、 雇 用 破 壊 が 進 み 、. 弱 い立 場 で 働 か ざ るを 得 な い人 々が 増 え 、 職 場 で もの を い う 自 由が 奪 わ れ て い る実 態 を 暴 きだ して い る。 さ らに、 その こ と と社 会 の そ こ ご こで 発 言 の 自 由が 奪 わ れ 、 平 和 が 破 壊 され る こ と との 距 離 が ご くわ ず か で あ る こ とを 警 告 して い る。 実 際 、 表5で 見 た よ う にバ イ ト先 の 上 司 に 対 す る課 題 は頻 繁 に 出 され る もの の1つ で あ り、 大 学 生 はす で に職 場 で 声 を 発 す る こ とが で き な い体 験 は も って い る。 ただ し、 生 活 依 存 度 と い う点 で は、 学 生 を本 業 とす る アル バ イ トと い う地 位 で は その 脅 威 は まだ 低 い。 主 張 しや す さ と い う点 で ハ ー ドル の よ り低 い今 の 段 階 で 、 現 在 の プ ロ グ ラ ム に あ る よ うな 要 求 を 伝 え る術 を 試 して み る こ と も も ち ろん 役 立 つ 。 が 、 さ ら に、 自分 の 課 題 が 将 来 的 に どの よ う にな るの か 、 それ が 孕 ん で い る社 会 問 題 性 につ いて 考 え る ワー ク を取 り入 れ て い くこ とが 今 後 の プ ロ グ ラ ム構 築 に お け る課 題 の ひ とつ で あ ろ う。 この よ うな 雇 用 の 問 題 だ けで はな く、 自 己主 張 と い う観 点 か ら、 医 療 、 福 祉 、 教 育 、 行 政 な ど多 くの 現 場 で の 課 題 につ いて 考 え る機 会 の 提 供 が 望 まれ る。. 4.ま. とめ. 以 上 、大 学教 育 に お け るATの. 実 践 に つ い て 、 こ れ ま で を振 り返 り、 今 後 の 方 向 性 を 模 索 し. 92.

(19) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. て み た。 受 講 者 か らの 感 想 に は、 頭 の 中だ けで はな く、 実 際 に声 に 出 して 体 を 使 って 試 して み る こ と の 難 しさ、 恥 ず か しさな どが 多 く挙 げ られ て い たが 、 同時 に、 それ を 人 前 で や りき った 達 成 感 や その 感 覚 の 新 鮮 さな どが 述 べ られ て い た。 ま た具 体 的 に フ ィ ー ドバ ックす る こ との 難 しさ と 大 切 さ、 自分 に 向 き合 う 「しん ど さ」 と それ か ら得 られ た発 見 な ど、 戸 惑 いな が ら も普 段 はや らな い こ と をす る実 験 の 場 と して の 効 果 は あ っ た よ う に思 う。 今 後 、 実 践 者 間 で の 情 報 交 換 を 進 めな が ら、 よ り有 意 義 な プ ロ グ ラ ムを 提 供 で き る よ う にな る こ とを 期 待 した い。. 参考文献 Alberti,R.&Emmons,M.(1970/2008).}b岬. 飽 吻 αR∫g伽,A∬8π'v8η8∬ αη4E卿 α1め吻}b灘. 五㌍ αη4R61磁oη5伽5(9疏64.).ImpactPublishers:CA. Brunskill,K.(2006).E肋. 侃dηgCo屍mg¢R68p8α. 侃4A∬6π'レ8η8∬.PaulChapmanPublish-. ing:London. Dickson,A.(1982).、4wo配 榎 本 淳 子(2000).青. αη ∫ ηyo配rowηr∫8h'.QuartetBooks:London. 年 期 の 友 人 関 係 に お け る 欲 求 と 感 情 ・活 動 と の 関 連. 教育心理学 研究、. 48、444-453. 久 木 山 健 一(2005).青. 年 期 の社 会 的 ス キ ル改 善 意 欲 に 関す る検 討. 発 達 心 理 学 研 究 、16、59-. 71. 黒 木 幸 敏(2005).中. 学 校 教 育 と ア サ ー シ ョ ン ・ ト レー ニ ン グ. ト レ ー ニ ン グ:そ 小 高 恵(1998).青. の現代的意味. 現 代 の エ ス プ リvol.450至. 平 木 典 子(編)ア. サ ー シ ョン ・. 文 堂pp.48-59.. 年 期 後 期 に お け る 青 年 の 親 へ の 態 度 ・行 動 に つ い て の 因 子 分 析 的 研 究. 教. 育 心 理 学 研 究 、46、333-342. 平 石 賢 二(2007).青. 年 期 の親 子 間 コ ミュニ ケ ー シ ョ ン. 堀 川 徳 子 ・柴 山 謙 二(2006).現 いて. 代 の 大 学 生 に対 す るア サ ー シ ョ ン ・ トレー ニ ング の効 果 につ. 熊 本 大 学 教 育 学 部 紀 要.人. 堀 田 美 保(2002).若 の 関 連 性.社 池 田 幸 恭(2006).青. ナ カ ニ シ ヤ 出 版.. 文 科 学 、55、73-83.. 者 が 抱 く世 代 間 格 差 感 ・世 代 イ メ ー ジ と 親 か ら の 過 去 に つ い て の 語 り と 会 心 理 学 研 究 、17、83-96. 年 期 に お け る母 親 に対 す る感 謝 の心 理 状 態 の分 析. 487-497.. 93. 教 育 心 理 学 研 究 、54、.

(20) 近畿大学教育論叢. 第21巻 第1号(2009・9). 井 上 忠 典(1995).大. 学 生 に お け る 親 と の 依 存 一 独 立 の 葛 藤 と 自我 同 一 性 の 関 連 性 に つ い て. 筑 波 大 学 心 理 学 研 究 、17、163-173. 松 井 豊(1990).友 ク. 人関係 の機能. 斉 藤 耕 二 ・菊 池 章 夫(編. 著)社. 会化 の心理学. ハ ン ドブ ッ. 川 島 書 店pp.283-296.. 溝 上 慎 一(2004).現. 代 大 学 生 論:ユ. 西 平 直 喜(1990).成. 人 に な る こ と:成. 落 合 良 行 ・佐 藤 有 耕(1996).親. ニ バ ー シ テ ィ ・ブ ル ー の 風 に 揺 れ る 育史心理学 か ら. 日本 放 送 出 版 協 会. 東 京 大 学 出版 会. 子 関 係 の 変 化 か ら見 た 心 理 的 離 乳 へ の 過 程 の 分 析. 教育 心理. 学 研 究 、44、11-22. 岡 田 努(2007).大 て.パ. 学 生 に お け る 友 人 関 係 の 類 型 と 、適 応 及 び 自 己 の 諸 側 面 の 発 達 の 関 連 に つ い. ー ソ ナ リ テ ィ 研 究 、15、135-148.. 尾 上 友 宏 ・材 木 定(2002).中. 学 校 に お け る ア サ ー シ ョ ン ・ トレー ニ ン グ①. と して の ア サ ー シ ョ ン ・ ト レ ー ニ ン グ めの アサ ー シ ョン 尾 崎 仁 美(2001).大 き 方:大. 人 間 教 育 の一 環. 園 田 雅 代 ・中 釜 洋 子 ・沢 崎 俊 之(編. 著)教. 師のた. 金 子 書 房pp.152-168.. 学 生 の 将 来 の 見 通 し と適 当 と の 関 連.溝. 学 生 固 有 の 意 味 世 界 に迫 る大 学 生 心 理 学. Palmer,P.&Froehner,M.A.P.(2000).伽. 上 慎 一(編)大. 学 生 の 自己 と生. ナ カ ニ シ ヤ 出 版pp.167-196.. ηE5'8α η2η4E4"∫oη!43θ. 堀 舵c∫'oη配α朋 α1和r. yo醐8α ぬ1∫5.ImpactPublishers:CA. Roberts,A.(2001).3罐 (園 田 雅 代(監 ム. 距6η,P∂w6吻ZA〃6rη α"レ85'oWo16ηcaRaincoastBooks:Canada. 訳)(2006).自. 分 を守 る力 を 育 て る一 セ ー フ テ ィー ンの 暴 力 防 止 プ ロ グ ラ. 金 子 書 房). 佐 藤 有 耕(2004).関 つ く青 少 年 の 心. 係 性 の 病 理 の 諸 相:友. 人 関係. サ ー シ ョ ン ・ トレー ニ ン グ の考 え 方 と歴 史. ア サ ー シ ョ ン ・ト レ ー ニ ン グ:そ の 現 代 的 意 味. (編 著)教. 著)傷. つ け傷. 北 大 路 書 房pp.42-49.. 沢 崎 達 夫 ・平 木 典 子(2005).ア. 沢 崎 俊 之(2002).教. 伊 藤 美 奈 子 ・宮 下 一 博(編. 現 代 の エ ス プ リvol.450至. 育 現 場 の 特 徴 と ア サ ー シ ョ ンの必 要性. 師のためのアサー ション. 平 木 典 子(編) 文 堂pp.30-36.. 園 田 雅 代 ・中 釜 洋 子 ・沢 崎 俊 之. 金 子 書 房pp.11-28.. 島 本 慈 子(2003).ル. ポ解 雇 一 この 国 で い ま起 き て い る こ と. 島 本 慈 子(2008).ル. ポ 労 働 と戦 争 一 こ の 国 の い ま と未 来. 菅 沼 憲 治(2002).セ. ル フ ア サ ー シ ョ ン ト レ ー ニ ン グ:疲. 94. 岩波新書. 岩波新書 れ な い人 生 を送 る た め に. 東 京 図書.

(21) 大 学 教 育 に お け る アサ ー テ ィ ブネ ス ・ トレー ニ ン グの 実 践. 鈴 木 教 夫(2005).小. 学 校 教 育 と ア サ ー シ ョ ン ・ ト レー ニ ン グ. ト レ ー ニ ン グ:そ. の現代的意味. 現 代 の エ ス プ リvol.450至. 平 木 典 子(編)ア 文 堂pp.37-47.. 田 上 時 子(2000).子. ど も との コ ミュニ ケ ー シ ョ ンス キ ル. 豊 田 英 昭(2002).小. 学 校 に お け る ア サ ー シ ョ ン ・ ト レ ー ニ ン グ①. 活 用 し た 実 践 例.園. 田 雅 代 ・中 釜 洋 子 ・沢 崎 俊 之(編. サ ー シ ョン ・. 築地書館. 著)教. 「総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 に. 師 の た めの アサ ー シ ョン. 金. 子 書 房pp.115-133. 和 田 実(1996).同 232-237.. 性 へ の 友 人 関 係 期 待 と 年 齢 ・性 ・性 役 割 同 一 性 と の 関 連. 心 理 学 研 究 、67、.

(22)

参照

関連したドキュメント

向老期に分けられる。成人看護学では第二次性徴の出現がみられる思春期を含めず 18 歳前後から

当第1四半期連結累計期間における当社グループの業績は、買収した企業の寄与により売上高7,827百万円(前

副校長の配置については、全体を統括する校長1名、小学校の教育課程(前期課

西が丘地区 西が丘一丁目、西が丘二丁目、赤羽西三丁目及び赤羽西四丁目各地内 隅田川沿川地区 隅田川の区域及び隅田川の両側からそれぞれ

一方、Fig.4には、下腿部前面及び後面におけ る筋厚の変化を各年齢でプロットした。下腿部で は、前面及び後面ともに中学生期における変化が Fig.3  Longitudinal changes

❸今年も『エコノフォーラム 21』第 23 号が発行されました。つまり 23 年 間の長きにわって、みなさん方の多く

認知症診断前後の、空白の期間における心理面・生活面への早期からの

区分 授業科目の名称 講義等の内容 備考.. 文 化