中枢神経機能障害による言語発達遅滞と診断された児童のケース研究
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(2) . 中枢神経機能障害による言語発達遅帯と 診断された児童のケース研究. 上. 谷. 宣. 正. 1. は じ め に. t 中枢神経機能障害児の研究は, 頓r rne r e rau s s ,H.およ び S ,A.Aに よ って先鞭がつけられた. 彼等 l d i K ten i i は Go s t t t ) 患者は, 特異な心理 rauma cdemen a , . が成人の脳損傷者つまり外傷性痴呆 (. 学的特性を示す. それには、 患者によ って独特な特殊な障害と, どの患者も共通して示す一般障害. ion と があ る. 一 般 障 害 に は 次 の よ う な も の があ る. 1) 破局 的 反 応 ( t ) catas rophi creact , 2) 過. 度の秩序正 しさ(excessiveorderliness),. i 3) 固 執 性(perseverat on), 4) 具 体 的 行 動(concrete ior igi behav f i ),5) 図 - 地 の 混 乱 と刺 激 へ の 強 制 的 反応 ( re ‐ onandforcedrespon ‐ groundconfus. imu sivenesstos l i t ). , ということを見い出した研究に刺激されて, 自分達の研究を始めた. in ld) ( 1 )脳障害児 (Brain‐ juredchi. Werner t raus s ,H. お よびS ,A.A.等は, 初め精神薄弱 児について研究した. 精神薄弱児を脳に障. 害のない遺伝性もしくは家族性の内因性精神薄弱児と, 脳に障害のある外因性精神薄弱児に分け, l ds i t 外因性精神薄弱児は, Go e n ,K.が脳損傷成人で見い出した一般障害とほぼ同じものを示すこと. を実証した. 3 ( ) St raus s ,A.A. らは, 後に外因性精神薄弱児にかえて, 脳障害児という呼び方をし, 「脳障害児 とは出生前, 出生後に, 脳に損傷をうけたり, 伝染病に冒されたりした子どもである. そのような 器質的な損傷の後遺症として, 運動神経系の障害があらわれることもあるし, あらわれないことも ある, しかし, 脳障害児は知覚, 思考および情緒的な行動 を1 つ, または重 複 して示 すことに な. る, これらの障害は特殊な検査によって証明することができる. これらの障害は, 正常な学習過程 を妨げたりする.そこで特別な教育方法が,これらの特殊な障害を治療するために工夫されてきた.」 と定義した. 対象児も精神薄弱児だけでなく, 脳性まひ児や, 知能は正常だが特異な行動を示す子 どもおよび脳損傷の徴候を示すろう児にまで拡げた. さらに, 彼等は, 脳障害児は他の障害児また. は普通児と同じ方法では十分な教育はできないとして, 脳障害児独自の教育方法を創り出した. そ の後, 脳障害児と診断された子どもも病理解剖学的所見が必ずしも見付かるわけではないし, 脳障 害児ということば自体, 永久に良く ならない子どもという響きを与えるということで, 1 960年代に i b d f i i i l なって, 微細脳障害 (m nma ran ysuncton)と い う 語 が 多く 用 い ら れ る よ う に な っ た. ion ima lbrain dysfunct ) ( 2 )微細脳 障害(mi n. i ISoc i ipp l i ldrenandAdul logi tsと, 公 衆 衛 生 局 の Neuro アメ リ カ の Nat ona etyforCr edCh cal. and Sensory Di sease Servi ces Pr og ram の共同委員会においてまとめられた定義は次のようなも ionsyndrome)と は, 知 能 は ほ と ん ど正 常 か ima lbraindysfusct の である.「微細脳障害症候群(mi n 177.
(3) . 上. 谷. 宵. 正. 正常以上でありながら, いろいろな程度の学習や行動の異常があり, しかも中枢神経機能のかたよ dev i i t り( )を伴うものをいう. この中枢神経機能のかたよりにより, 認知, 概念化, 言語, 記銘, a on 注意の集中, 衝動の制御, 運動機能の障害のいくつかが組み合わさってあらわれるものである.」 4 }は 微細脳障害の特徴を次の6項目にまとめている 鈴木 ( 1979 )( , . 1) 出生前, 周生期あるいは出生後に脳障害を推定しうる既往歴がある. ionspan),あ る い は 固 執(persevera hype i tent ‐ 2) 多動性( t )で注意の集中が短く(shortat rac ve. ion)の 傾 向 が 強 か っ た り 衝 動 の コ ン ト ロ ー ル( impu l t l ivecont )が でき な い な ど, 本 症 に 特 有 と み ro s , tern を示す ら れ る 行 動 の pat .. l i i d t 3) 運動の面 でぎこちなく( ) )の障害がある. しかし古典的神経学 c u r n s r coo na on y ,共同運動( “sofゼ neurolo i ”mi ls ign) が あ る. ご 的所見は証明されず, いわゆる神経学的微症状 ( r o no gca i lpe i 4) 認知の障害があり, ことに視覚認知( t )とこれに関する諸機能の障害が特徴で s ua r ep v c on あ る.. l i i i l i i t 5) 学習の障害( )がみられる. この中でとくに強調されているのは読字困難 ea rn ngd sab e s . また幼児期には言語発達障. l i h l ne i i f f i l (dys t t t exia)で あ る が, 算数困難( )を示すものもある a r cd cu y. 害のあるものが多い. いずれにしても, 明らかな知能障害のあるものは除外する. 6) 脳波にて異常波を示す. ただしてんかん発作のあるものは一応除外する.. 微細脳障害の定義は基本的には脳障害のそれと大して変らないが, 知能をほぼ平均, 平均, 平均 以上と限定し, 低IQ 者を除外したところに特徴がある. ( 5 )は次のように l 脳障害という譜に代えて,微細脳障害という語を用いる理由をTa rnopo ( ) 197 6 . ,L ima l 述べている.「『微細な』(mi )という語は,脳性まひによる状態とを区別しているし,症状のわか n f i dy t りにくい捕えどころのない性質を示している. 『機能障害』( )という語は, 遺伝性, 発達 unc s on b i 性あるいは他の偏異といっ た傷害をも包含する. また↓ 『脳』( )という語は, 主として障害を受 ra n. けている器官を示している.」 しかし, 鈴木 ( 197 ) も述べているように, もともと脳には っきりした病理解剖学的所見が見い 9. 出さ れず, ただ神経学的微症状によ っ てのみ, 脳に障害があると主張していること事態矛盾を含ん でいる. 微細という前置詞を付けても, 脳障害といっていることには変りがなく, 親に不安を与え. る. 原因論的研究方法をとる医学の分野では, この微細脳障害という語は受け入れられ定着してき ているが, 現在ある状態像そのものを大切に考える教育学や心理学の分野 では, この語はあまり受 け入れられず,1 963年 Ki rk が主張して以来,学習障害児ということばを主として用いるようになっ た,. l ing Di i i t i l d wi th Learn ) es ( )学習障害児( sabi 3 ch. 学習障害ということばは, いろいろな人がいろいろな立場から定義しているが, もっとも一般的 に用いられているのは, アメリカの公法91-320 , 1969年特殊学習障害法で採用されているもので 2 { }か ら引用 すると 「特別な学習障害をもっている子どもとは 話しことばや ある.Mye ) 1 976 r sら( , 文字を理解したり使用 したりする際に含まれる基本的な心理過程で, 1つないしそれ以上の障害を. 示す子ども である. 例えば, 聞く,話す,考える,読む,綴る,計算するといった障害である. そして, それらは,知覚障害,脳障害,微細脳障害, 失語症, 発達性失語症などによるものを含んでいる. し. かし視覚障害, 聴覚障害, 運動障害, 精神遅滞, 情緒障害, 環境不全が一次性の障害となっ ている ものを含めない,」で, この定義では, . 脳障害や微細脳障害の定義のような原因についての言及はな い. ただ状態像についてのみ述べている. しかも, 伝統的障害状態である盲, 聾, 肢体不自由, 精. 神薄弱,情緒障害が一次障害の場合は学習障害児の中に含めていない.学習障害が主で他の障害が付 178.
(4) . 言語発達遅滞児のケース研究. 随している者は学習 障害児である.. 学習障害児の特性 で最も一般的に認められているものに ついて Faas LA ( 1横 次のように ( 976 ) , , . .1. ま と め て い る.. 1) 知能 ①平均. ②ほぼ平均 ③平均以上 2) 活動レベル ①多動 ②活動が少なすぎる 3) 注意の障害 ①注意の集中が短い ②固執性を示す 4) 運動の障害 ①協応動作がうまくいなない ②触覚-筋肉運動感覚が障害さ れている 5) 視知覚の障害 ①視知覚弁別能力に障害がある ②視覚的図-地知覚の障害をも つ ③物の一部を見て全体が類推できない ④視覚記憶が障害されている 6) 聴覚の障害 ①聴覚弁別能力に障害がある ②音を聞いてそ の意味がわからない ②聴覚的図-地知 覚の障害をも つ ④ことばの一部の 音を聞いただけ ででは全体が類推 できない ⑤聴覚記憶に障害をもつ 7) 言語の障害. ①言語発達遅滞 ②単語を使って文法通りの文や句が作れない 8) 勉強態度 勉強を組織だててすることができない ゆっくりしか できない しばしば方向をまちがえる , .. 不注意である.. 9) 社 会-情緒的行動の障害 ①衝動的 ②爆発的 ③社会的能力が平均以上である ④気分が変動 しやすい. 1 0 ) 方向性の障害 ①空間的な方向性に障害をもつ ②時間的な方向性に障害をもつ 179.
(5) . 上. 谷. 宣. 正. 1 1 ) 学習における障害 読みや算数, 書字に障害をもつ る原因について, Faas 学習障害の原因については定義では言及していないが, 可能性のあ, .A. ,し ,. 1 }は 次の 7 つ を あ げて い る (1976 ){ ,. ①発達遅滞 ②神経学的障害 ③教育学的欠陥 ④神経アレルギー症候群. ⑤栄養不良及びビタミン欠乏. ⑥中枢神経障害 ⑦微細脳障害 以上のように, 中枢神経障害児の呼び方は歴史的にいろいろ変わって, 現在は 多くの人が学習障 害児と呼ぶようになっ ている. その障害の状態は, 単独障害であることは非常に少ない. 多くの場 合, 障害は重 複している. 中枢神経機能障害による言語遅滞という場合, 言語だけの障害でなく,. 視知覚, 聴知覚, 触覚, 運動感覚, 方向感覚などの感覚-知覚面や行動面に も障害をもつことが多 い. さらに読字障害, 書字障害, 算数障害などを伴っている場合が多い. 中枢神経機能障害による 言語発達遅滞児の言語訓練をしようとする場 合, 言語の面だけでなく, そういった面についても配 慮しなければならないであろう. 本論文は,1977年9月より1981年7月まで, 北海道教育大学函館分校特 殊教育研究室で, 筆者が 担当した中枢神経機能障害による言語発達遅滞と診断さ れた児童に試みた, 言語を主とした訓練の 経過と, そこで生じたいくつかの問題点について 述べている.. 2. 実態把握 0年12月19 日 1) 氏名:H, H, 性別:男児 生年月日:197 2) 障害:中枢神経機能障害による言語発達遅滞 3)生育歴 母 親32歳, 父 親33歳 の と き の 子, 長 子, 翌 年 と 翌々 年 続 け て 弟 と 妹 が産 ま れて い る が, 2 人共正常. 母親は正常者. 父親は片足に障 害があるが, 事故によるもので遺伝的な問題はない. 本 児を懐妊中, 母親は病気もせず, つわりも普通 で, 別にこれといって変わったところはなかっ た. 函館市内の病院で分娩, 満期正常出産であったが, 分娩時, 吸引器を使用. 出産時吸引した場所に 小さな傷があっ たが, 医師は大したことは ないと言って, 取り合ってはく れなかっ た. 母親はこの 0g で, 黄痘はなかった. 時脳に傷を受けたの ではないかと疑っている. 出産時の体重は2,90 首の座り, はいはい, つかまり立ちの時期は正常 で, 始歩も1歳2 ヶ月 で正常 であった. 流挺が 1歳に なる頃から目立ち始めた. ことばの発達では, バーという声は比較的早くから出し始めたが, 1歳に なっても, それ以上の声は出すようには ならなかっ た. 2歳になって 「ンマ」 と言えるよう になっ た. 食物についても, 動物の馬についても 「ンマ」 と言っ た. 3歳になっ ても 「ンマ」 以外 声が出ないので心配になり, 3 歳時検診で相談したところ, 北大病院へ行って検査を受けるよう言 われた. 3歳6 ヶ月の時, 北大病院へ行ったが何ともないと言われた. 4歳になっ てもまだ「ンマ」 以外言えないので, 児童相談所へ行き 相談する. 大森小学校の言語障害児学級を紹介され, 行く が, 180.
(6) . 言語発達遅滞児のケース研究. 本児が泣きわめいて訓練を全く 受けようと しなかったため, 1~ 2 回行った がそのままやめ てし ま っ た.. 5歳の年の4月から10月まで大沼の季節保育所に入る.保育所では,ことばが出ないということ以 外では, 別に問題はなかった. その年の10月, 友人に紹介されて, 東京医科歯科大学病院で診察を. 受 け た. 10 月から1 ヶ月ごとに計6回通っ た. 1回目は種々の検査 で, 2回目に行っ 時初めて言語. 中枢機能障害による言語遅滞だと告げられた, その時, 「知能は正常 で, 脳波もだいたいき れいだ.」 と言われたと, 母親は話している. 4回目に舌小帯の手術を受けた, それまで舌が外に全く出てこ. なかったが, 手術後出るようになった.. 6歳の4月, 大沼小学校普通学級に入学. 母親の強い要望に従っ たものと思われる. その年の9 月, 再び東京医科歯科大学病院を訪れ, 耳鼻科と歯科と言語言声科にかかっ た. この時, 歯の治療. を受け, 「このまま普通学級で勉強した方がよい.」 と告げられたと母親は話している. 母親は, 特 殊学級に入れられることをひどく恐れていたが, 現在5年生になっても普通学級に在籍している,. 既往症は特にない. 4歳の時ストー ブ で左手を火傷し, 小指が曲がっ たままで伸びなく なっ た. 医師に話すと, 大きく なって手術すればよいと言われた. 6歳の夏, プー ルに連れて行って水につ けた途端, ひきつけたようになっ たが, それまでには, そのような経験はなかった, 4) 行動観察. 1977 年 9月 28 日初回面接 母親に連れられてやって来た 室に入っ て来た時から物怖じした様子 , . は全く 見られなかっ た. 終始落ち着きがなく, 室内にあるものをあれこ れい じり回して いた. ソ フ ァ ー に 座 ら せ る と, 一 刻 も じ っ と 座 っ て い ず, 寝 こ ろ ん でい た り 立 ち 上 が っ て み た り し た. 母 親 に 注意 さ れ る と, 少 し の 間 座 っ て い る が, 足は, ば た ば たさ せ て い た.. 手は無器用 でひもが結べず, ボタンも大きなものなら十分時間をかけてかけはずしは できるが,. 小 さ なも の は, 時 間 を か け て も で き な い. そ の た め, 靴 は マ ジ ッ ク バ ン ドの つ い た物 を用 い, 服 は. なるべく ボタンのないものを着ているとのこと. 拍手をさせると右手と左手がリズミカ ルには動か ず, ぎこちない打ち方をする. 目は右と左とが時々 異なる動き方をする. 少し上下方向に斜視がある. 流槌がひどい. 注意してもうまく飲み込めない. ボタボタと落ちる. 母親が注意した時だけぬぐ. う. 自分の意志でぬ ぐう様子は見られない. 口はいつも半開きになっている. 上唇と下唇を合わさせようとしても, なかなか合わない. 一生 懸命力を入れてやっ と合っ た. 歯は, 上歯と下歯をかみ合わすと, 前の方がlcm もすいてしまう, 頭と下顎に手を置いて, 思い切り押しても合わない, 下顎は上下方向には意志 でもって動かすこと はできるが, 連続的に動かすことはできない. 1回動かすごとに間が必要である, チュ ーインガム をかましてもうまくかめず, 1~ 2 回かんだと思っ たら, 飲み込んでしまっ ている. 左右, 前後方 向には全く意志で動かすことができない. 舌は前方へは突き出すことができるが,速く 出し入れすることは できない, 舌先 で上唇,左右の. 唇をなめることはできない.舌の形を変えることもできない. いつも丸まっ たような形をしている. 言語は, こちらの言っていることは理解でき, 「鉛筆を持って来て下さい.」 と言えば, 持っ て来 る. 発音できる音は, ア, オ, マ, バ, ボ, であるが, 不完全である. 発音したいという気持ちは あ る のか, いつ も 母 親 に 何 か 語り か け て い る. しか し全く 了 解 でき な い. 他 人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ. ンは, 専 ら ジ ェ ス チ ャ ー に 頼 っ て い る. ジ ェ ス チ ャ ー を 用 い ると, か な り 自 分 の 意 志 を 他 人 に 伝 え る こ と が でき る.. 181.
(7) . 上. 谷 官. 正. 5) 問題点 本児の生育歴, 行動観察から, 行動面にも多動, 被転導性, 手の無器用さ等の問題はあるが, 6 歳になっ ても全く話しことばを用いてのコミュニケーショ ンができないということが最も大きな問 題だと言える. 言語能力は6 歳までに上達 しないと, 現状では, その後もずっ と良くならない場合が多いと言わ れているように,6歳過 ぎからの言語訓練は遅すぎるかもしれないが,ほおっておくと学業の面へ の 影響も大きくなると思われるので, 週1回30分ずつ, 言語を中心に訓練することにした. 6) 訓練の方針 ①本人が現在獲得している音を中心に訓練する. ②できるだけ単語や文の形で訓練する. ③進んで訓練に参加するようしむける.. ④話をすることに興味が持てるようにする.. ⑤家庭で運動の協応力などを養っ てもらう. ⑥訓練経過はできるだけ母親にフィ ー ドバックする. ⑦訓練時間は1回3 0分とする.. 3. 言語訓練の経過 1) 1 977年1 0月から12月 実物の バッ ト, ボール, 帽子およ びベ ンチ, ブタ, ビン等の絵カー ドを用意した. 初めボールを. 示し, 「ボール」と発音してみせ, 模倣するように促した. 「ボー」と発音したらボールを投げてやっ た. 投げ返してきたところで又, 「ボー」と発音させ, この動作 を繰り返した. 本児は初めボールを うまく受け取ることができなかっ たが, だんだんできるようになっ た. それと同時に, 投げること も少しずつ できるようになっ た.12月ま でには,「ボ-」とはっきり言えるようになった. 次に, バ ッ トを持って 「バッ ト」 と発音し模倣するよう促した. 「バ ツ」 と発音できたら, バッ トを渡してボー 2月までには, 「バツ」とうまく発音できるようになっ た. ボールを投げてやっ ルを投げてやっ た. 1. ても バッ トにはほとんど当たらなかっ た. それでも本人は非常に喜んでいた, 帽子は本児のかぶっ て来たのを取り上げて 「ボーシ」 と発音してみせ, 「ボー」 と模倣したら返してやっ た. ベ ンチ, ブ. タ, ビンは, 絵カー ドを見せて発音の訓練をした.訓練の結果,1977年12月の終りまでには,「ボー」 「バツ」 「バ~ン」「ビ~ン」「べ~ン」 がはっきり発音できるようになっ た.. この間家では, 毎日マラソンをするように言っておいた. 母親の報告 では, 毎日少しずつ走っ て いる. 初めはうまく走れなかっ たのが, 3 ヶ 月 た つ と, だ い ぶ う まく 走 れ る よ う に な っ た と の こ と. 978年3月 2) 19 78年1月から1 パオ テの定着をはかっていっ た. テ音の訓練を開始すると共に, バイ パイ テの訓練. 「パン」 「パ ンツ」 「パー マ」「プー ル」 「アンポン」「ピンチ」「ピーナツ」「ペン」「ペンチ」 を中 心に発音練習した, テになってもあまり パイ テは難しく, すくにバキテになっ てしまう. バキ ,やかましく言わず, 少しず つ テの中間くらいの発音ができるように なっ た. 直していっ た. 3月の終わりには, パ行とバオ. 182.
(8) . 言語発達遅滞児のケース研究. バキ テの訓練 「ぼく」「バケツ」「バン ド」「バナナ」「バッ タ」「バラ」「バカ」「バス」「ボタン」「ビール」「ビー ズ」「べんとう」など, 語藁が少しでも増すように訓練した 19 . 78年3月末には, バ, ビ, ブ, ベ, ボ, ア, イ, ウ, エ, オ が だ い た い 発 音 でき る よう に な っ た こ の 頃 数 に 興 味 を 持 ち 1 ~10 まで . , 唱えようとするが, 了解できるようには発音できない. 5を 「ボ」 と発音し この音だけが了解可 ,. 能. 3)1978年4月から8月 前の期間ま では, 母親と一緒の場所で訓練していたが, あまりにも手悪さや悪ふざけが多いの で , 本人だけを別の部屋に連れて行っ て訓練するようにした. 母親と一緒にいる時と比べて だいぶ落 , ち着いて訓練にのって来るようになった,3度ほど防音室 で訓練してみたが 特別の効果はなかった , の でよ した.. パキテと バキ テ音を1つの単語の中に 2つ持っていることばの訓練を開始した 「パパ」「パパ」「ピン . ポン」「パープー」「ポパイ」「パイ プ」「バンビ」等を今まで練習した単語に加えて訓 練した 「パパ」 . 「パパ」 は比較的早く発音できるよう になっ たが, 「ピンポン」 を発音させようとすると 「ピンホ , ン」 あるいは 「ヒンポン」 となり, 一方がうまく唇を合わせて発音 できると, 他方は唇が合わない と い う 風 だ っ た.. 数唱の訓練も続け, 少しずつ言えるようになってきた. 家では縄飛びを始めた.初めは全く できなかったが,1~2回飛べるようになったと報告がありた . 4) 19 78年9月から1 97 9年3月 パ行, バキ テの含まれる比較的長い単語の練習を開始した. 「アンポンタン」「パンボン パン」「ブル ドーザ」「ブルドッ グ」 テと混ざっ た発音であるが, だいぶパ行らしく なってき , 相変らずパ行とバキ た. 本児は 「パパ」 というのを発音したがらない, 家でいつも 「おとうさん」 と呼んでいるので , 「おとうさん」 と言いかえる. それもだいぶ了解できるようになっ た . 訓練開始前lcm も離れていた上歯と下歯が, かみ合わすとくっ つくようになった . 流挺は少しもよく ならない. 母親も一番気にしている. この時期から, 家庭で自転車に乗る訓練. を始 め た. マ ラ ソ ン は 続 け て い る, 走 る ス タイ ル が良く なり, ス ピー ドも つ い て l km くらいは走. れるようになっ たと報告があった. 5) 1 979年4月から8月. 学校生活も2年が過 ぎて3年目に入っ た. ひらがながだいたいわかるよう になったので 黒板に , 板書して読ませる訓練を開始 した. これまで訓練して発音できるようになった単語を板書して読ま. せた. だいだい読める. パ行はますますパキテらしくなってきた 注意すると 「ピンポン」 も 「ポパイ」も正しく発音でき , . るようになっ たが, まだ注意しないと 「ヒンポン」 あるいは 「ピンホン」 になっ てしまう . この時期の終りまでにアキテ テ , マイ , ナ行, パキテ , バキテがだいたい発 音できるようになっ た. 学級 でもだいぶ会話ができるようになっ たと言っている. 走る力は他の子どもに互して走れるま でになっ た. 運動会もびりにならないよう になっ た 自転 . 車にも乗れるようになった. 6)1 979年9月から1 980年3月. 1年生程度で読める簡単な絵本を読ませた. 本人は一生懸命読んでいる風であるが, 少しも了解 できない. 単語カー ドに書いて読ませてみた, 単語だとだいだい了解できる. 単語ではほぼ了解可 能な程度に発音できるのに文章になると全く了解不能になる.その原因は どこにあるか探っ てみた . 183.
(9) . 上. 谷. 宜. 正. 単語カー ドを見せて発音さ せ, その意味を聞いてみた. 「ガラス」 というカー ドを見せ発音させ, 何のことかと問うと, 手を拡げて「カーカー」と言う. 本人は「カラス」と間違っている. 「カガミ」 というカー ドを見せ, 同じく質問してみた. 今度は自分の髪をつかんで示した. このように, 他の. カー ドでも目で見て発音しただけでは意味がつかめない.筆者が発音してやると,その意味がわかっ た.自分 の 発 し た 音 が ち ゃ ん と 耳 に フ ィ ー ドバ ッ ク さ れ て い な い の では な い か と 思 い,マ イ ク ロ フ ォ. ンとイ ヤホンを用いて, 本児の発音している音を直接耳にフィ ー ドバッ クしてやったが結果は同じ であ っ た.. この期間の1月から学校でスキー練習を始めた. ひと冬でだいぶ滑れるようになっ たと母親から. 報告があっ た. 7)1980年4月から8月 4年生になっ てクラ ブ活動が始まり, 訓練に来ない日が多くなり, 一 ヶ月に1回くらいしか顔を 出さなくなっ た. 単語カー ドを使って発音訓練を続けると同時に,その意味も言わせる訓練を行なっ た.単語によっ ては字を見て意味の了解できるものもあるが, 相変わらず意味のわからない単語が多い. その場合 も筆者が発音してやるとす ぐ意味を了解した.. この頃急におしゃべ りが多くなっ た. こちらがわからない顔 をすると, わかるまで何回も何回も 発音し直すようになっ た. 母親は, この頃本児がやたらと「こ れ何」「あれ何」と聞いてくるように. なっ たと言っている. 単語がかなり発音できるようになっ たため, 会話に興味をもっ て来たの では ないだろうか. しかしまだ, 1つ1つの単語に区切っ てやるとはっきりと発音できるが, 文章にな. ると了解不能の発音をするという状態である.. テ この時期までに発音できるように なっ た音は, アキ , バキテ , ナオテ , ハ行, マ行, パキテ . 単独では 発音できないが単語の中でならそれらしく発音できる音は, 力行, サ行, タ行, ヤ行, ガ行. 全く 発音できない音はワとラ行である. このようにほとんどの音は発音でき, ごまかしながらも単語な らほぼ発音できるようになっ た. しかし文章に なると全ての音が鼻にぬけてしまう. 8)1 980年9月から1981年7月. 月に1度顔を出すか出さないかにかったので, 一応しめくくりとして, 諸検査をして実態を把握. しておくことにした.. 4. 諸検査結果 これまでに単語ならかなり了解 できるほ どに発音できるようになったの で, かなりのテストが実 施可能になっ た. それで, 田中ビネー検査. WISC検査, 絵画語藁発達検査, フロスティッ グ視 知覚発達検査, ITPA 検査を実施した.. 1) 知能検査結果 68 ) 田中ビネー検査結果を図1に示す. M.A (6歳8ヶ月) , IQ ( . 基底年令4歳, 上限年令7歳 であっ た. 迷路, 左右の弁別, 打数かぞえ, 逆唱, 文の記憶, 物の共通点, 頭文字の同 じ単語とい. う項目ができなかっ た.. ) 70 ) 71 WISC知能検査結果は, 言語性IQ( , 全I Q(68)であ っ た. プ ロ フ ィ ー , 動作性IQ( ルは図2に示す. プロフィ ールを見ると, 言語性の一般的理解, 動作性の符号問題, 迷路問題の得 点が低い. 184.
(10) . 言語発達遅滞児のケース研究 年令 番 号. 問. 題. 合 格. 4 数 4 念 概 4 5 左 右の 弁 別. 各1分 2回完 4/4 3/3. 4 6 反 対 類 推. 4/4. 4 7 ひ も とお し. 各2分 2/2. 4 8 物 の 差 異. 1/3. 4 9 絵 の 不 合 理仰 5 0 ひ し 形 模 写 5 1 打 数 か ぞえ. 2/3 1/3 2/3. 5 2 3 数 詞逆 唱. 1/3. 3 関 係 類 推 才5. 2/3. 4 5 迷. 路. 材 料. 5 4 理. 7. 才. 解. 2/3. 5 5 文 の 記 憶. 1/2. 5 6 曜 日 の 名. 4/4. 5 7 物の共 通点. 2/3. 5 5 頭文字の同じ単語. 各3 0秒 基準. 5 9 4数詞の逆唱. 1/3. 6 0 話 の不 合 理. 1/2. 図1. 容. お. よ. び. 記. 用具1 4. 基準のとおりにできればよい. 用具3. 2 3 6 1 0 左の手 右の目 左の耳 飾り )ひよこは小さい, にわとりは……” 野原は明るい , 森の中は…… 雪は白い, 炭は…… ジェット機は速い , 船は…… 鉄は重い, 綿は……. 才. 6. 内. 用具4. 用具1 4 用具1 4. □ 0 0 [コ 0 0 0 [コ 0 ○ □ ○ □ 0 0 仁コ 0 [コ 0 ○ □ 。. 録. 分 分. 秒 秒. 犬と鳥 自動車と飛行機 木の板とガラス のこぎり 片ちんば ひなたぼっこ ( 1 ) 2 ( ) ( 3 ) 扇 げ ” )2 7 5 8 (例)3-1-2 2-9-5 8-1‐6 5一7-3 犬は4本足 , 鳥は…… 魚は水の中を泳ぐ ・…・ , 飛行機は・ ラジオは耳で聞く, 新聞は…… もしどこかヘ行G途中で , 電車に…… もしあなたが, お母さんのお使いで…… 友だちが川に落ちておぼれている…… (例)大きな子ども 花子は, お人形にきれいな着物を, つくって やりました。 . 太郎は, 長い鶴を渡って, 海の方へ行きました。 1週間の曜日の名 金曜日の前の曜日 火曜日の前の曜日 木曜日の前の曜日 お日さまとお月さま ばちとすずめ ごはんとおかず (例)力ぃ…・ ・柿 , 傘, 悲しい, 固い, 帰る。 あ…… さ…… ま・…“ や…… (例)5ーーー4 -8『 5一 ”I冊 ”3 9★ +1-7‐ 一4 3 7- -2一 ‐9 ひとりの男の人が両手をポケットに, .…, ある人がこんな話をしました。 わたしの家から……. 田中ビネー検査結果. 2) 絵画語桑発達検査結果 絵画語集発達検査 の結果は, 図3に示す, 語桑年令は 8歳4 ヶ月 で, C .Aよ り約2 歳遅 れて い. る.. 3) フロスティ ッ グ視知覚発達検査結果 フロスティ ッ グ視知覚発達検査結果は表1に示す 平均知覚年令は5歳4ヶ月 で C . , .A と比べる と5歳も遅れていることがわかる, 最も遅れているのは 空間における位置と 知覚の運動 の協応 , , で, それぞれ4歳と4歳6ヶ月の能力しかない. 視知覚の中 で最も発達しているのは形の恒常性で , 7歳3 ヶ 月 であ る. 4) ITPA検査結果. I TPA検査結果は図4と表2に示す 言語学習年令は6歳1ヶ月 で CA より4歳4ヶ月 氏い . , . , 185.
(11) . 上 谷 宣 正. プ ロ 7 イ. ー. ル. 92 0 61 71 81 31 51 21 41 ol l1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 91 ー11 . ・ r1 , ー11’11 書 事 壷 f 圭11 1 一 般 的 知 識. 言語. 2 ‐ 一般 的 理 解. 性 検 査. 3 算. 数. 問. 題. 4 類. 似. 問. 題. 5 単. 語. 問. 題. 6 (数 日 昌 問 題). 動 作 性 検 査. 7 絵 画 完 成 8 絵. 画. 配. 列. 9 棟 木 模 様 ー0 組み 合わせ問 題 =. 符. 号. 問. 題. 12 (迷 路 問 題). WISC 検査結果 プロフィ ー ル. 図2. ページ 組 I 2. 点. 7 7. 3. 8. 4. 3. 5. 4 今 S. 6 7 8 9 lo 11 12. 3 2. 4. &擾. 絵画語い発達検査診 断プロフィール なまぇ. 宅 わ ぉんな. H H. 学校(図)名. ねん. ばん. 検査年月日 昭和 S6年 4 月 2 日. 2月2?日 生 年 月 日 昭和 4ぶ年ー ′0 顔 3 月. 生活年齢 実施法. 覇諺 集団式 頓. 締 1 L竃旗 3月. 2 l. 0 0 7 13 4r. 検査者. o t2 以と o 3 Q一i ? 書誌?一弘“ i i i怒 追 認 ぶん’. 46 ー璽h訂. こ1 7! 81 ol 21 3・ 61 92 0 l1 51 0 1 2 3 4 5 6 7 8 91 ・. i-- 一 …撞講論議」 一 鑑 識ヒゴi鯖菌蓋 ii. 輪面繕い発遇検査- - 1 陵. . E L ー 1 T 0 ト , ←〕 ー “ 〒ー ‘ .. m 州 .醐 o 脇 照臨き ; ▼ :照 臨; さ : r’ 覆& , 1 1 ;爾● = 幻- ¥ ゴーl . ・ 2 - .. 馴脚. 図3 絵画語い発達検査結果. 186. <み.
(12) . 言語発達遅滞児のケース研究. M.A との差はみられない 図4のプロフィ ー ルを見ると 絵の理解は年令相応に発達しているが . , , 他は劣っている. M.A と比べても, ことばの表現, 文の構成, 絵さがし 数の記憶は劣っ ている , . 表2から水準別に見ると, 自動水準の方が表象水準より1歳10ケ月高い 回路別にみると 視覚- . , 運動回路の方が, 聴覚-音声回路より2歳高い. 過程別にみると, 受容過程が最も高く表現過程が 最も低い, -TPAプロフィ ール用紙 発. 年. 達. 暦. 年. 令. 他の検査. 学習 田 中ピ 年 令眼 ネ ぬ. 年 令. 受容能力. 絵 と の ば の 理 理解 解. 帆 10 ‐6 lo ‐0 9 ‐ 6 9 ‐O 8 ‐6 8‐O ‐6 7 7 ‐0 6 ‐6 6-O 5‐ 6 ‐O 5 4 ‐6 4‐O 3 ‐6 ‐O 3. I 象. 表. T 水. 連合能力. 絵. と ば の 類 推. の 類 推. P 準. A. 得 自. 点 動. 水. 現. 成. 憶. し. 人. / /. ′. I. \ \. ′/. し. t t t t t. 、 、 t t t t. し. ′. \\ \. 八. / / /. /\ / \. 、 t ′ t t\. \. \. \/ V. 価 点 器. 憶. ▼ 、 t t. / 」 \. 評. 準. 表現能力 構成能力 配列記憶能力 絵 動 文 数 形 と 作 さ の の の ば の の 記 記 が 表現 構 表. 「. / / / \ー /. 「\. ・. 6 4 60 56 5 2 48 44 4 0 36 3 2 28 24 20 16 1 2 8 4. 図4 1TPA 検査結果 プロフィ ール. 表1. フロステ ッ グ視知覚発達検査 結果. 表2 1TPA検査結果. 知 覚 年 齢 知覚と運動の協応 図形と素地 形の恒常性 空間における位置 空間関係 平 均. 4 -6 5- ‐6 7 -3 4 -O 5- ‐3 5 -4. 年齢得点 水 準 表 象 自 動 回 路 聴覚-音声 視覚-運動 過 程 受 容 連 合 表 現. 6 -11 5 -I. 指. 数 66 45. 5- -2. 50. 7-2. 69. 8- ‐10. 85. 6-4. 61. 5-6. 53. 187.
(13) . 上. 谷. 宣. 正. 5. 考. 察. 言語訓練は バ行, パ行を中心に発音できる音をできるだけ増やし, 表現語桑数を増大させていく 方法をとっ た. この方法が最上であったかどうかわからないが, 発音できる音, 表現語桑数共に著 しい増加 があっ た. 4年間の訓練の結果, ワ音とラ音を除き, 曲りなりにも発音できるようになり,. 単語の形では, かなりはっ きり発音することができるようになっ た. しかし文章になるとまだ了解 不能で今後は文章の形での言語訓練が必要と思われる. なお単語の発音も注意しないと, 全ての音 が通鼻音化しやしいので, 今後もその点には気をつけて訓練する 必要がある.. 他人が発音したことばの意味はわかるが, 文字で書かれたものを自分で読んだ場合意味がつかめ ない. 読字障害が疑われる. これに対する訓練は, 今回の訓練の 主目的ではなかっ たので, 集中的. 訓練は行わなかった. 学校教育における読字能力のはたす役割は大変大きいの で, これからの課題 だ と い え る.. 本児のIQ は田中ビネー検査結果も, WISC 検査結果もよく似ており,68前後で, 軽度の精神薄弱 の範囲にある. 下位検査 プロフィ ールにアンバランスがあり, WISC の一般的理解が他に 比べてた いへん低い. これは, 他の検査項目は, 単語で反応すればすむが, この項目は文章で反応しないと いけないことが1つの大きな理由になっているものと考えられる. 同じく WISC の下位検査の符号 問題, 迷路問題が低いのは, 手の不器用さが反影しているものと考えられる. 田中ビネー検査, およびITPA の数の記憶が劣っているのは, 短期記憶力の障害が疑われる. さ らに田中ビネー検査の打数か ぞえができなかっ たのは, ITPA で聴覚-音声回路が悪かったのと関. 係があるものと考えられる. 田中ビネーの左右弁別 ができなかっ たのは, フロスティッ グ視知覚発 達検査の空間における位置の得点が低いことと関係し,ラテラリティ ーの未発達を示す,視知覚発達 は全般的に遅滞しており,多動性,被転導性に影響を与えているものと考えられる.ラテラリティ ー, 方向性等視知覚能力を発達させるためにも, マラソン, 自転車乗り, 縄飛び, スキーは良い運動 で あると思う. 本児の語桑能力は語桑検査およ びITPA 検査結果から内言語能力はおよそ8歳で, 表現語桑能力. は 3 歳 と い え る.. 本児は現在普通学級に在籍しているが, 表現語薬能力が3歳しかなく, 視知覚能力も5歳, 知能 も68という状態から考えて,適切な処置とは考えられない.しかし特殊学級なら良いとはいえない. 本児のような障害をもっ た児童のための特別なプロブラムを用意したコースが望ほ れる.. 引用文献 PL,:Learn ing Di l i i i f f l i t t 1. Faas sabi es ency Based APProach n . ,L. ,ComPe , Houghton ハ互 ,1976 【 1 l l M h d f L i D i d S d E d i i W i l 1976 t t 2. M s : e o s o r e a r n n s o r e r e c o n o n s e yer g y . . . . ,P ,Hammi ,D.D. , , , , inen 3, St ionofthe Bra i ln i l d ton iur raus s ogyandEducat n ‐ edCh rat ,A,A, ,Leht ,L,E,:Psychopathol ,Grun & St ,. 19 47(伊藤隆二・角本順次・訳:脳障害児の精神病理と教育, 福村出版, 197 9 ). 4. 鈴木昌樹=微細脳障害, 川島書房, 1 9 79 . i l i i i i l and n ‘ l ln danagement l l ing Di t 5. Tanopo sab es roduct on to Educat ona edi ca es . ,lnt ,L ,:Learn , Char. Thomas 969 6 7 ,1 ,(中野善達・小出進・堅田明義 訳編:学習障害児の心理と指導. 日本文化科学社, 19 ,). 188.
(14) . 言語発達遅滞児のケース研究. 参考 文 献 1. 旭出学園教育研究所;ITPA 言語学習能力診断検査, 日本版, 日本文化科学社, 1 97 3 , i l l 2, Cru di Schoo c く shank, W,M,:Th land Commun i iv e Braiルlnjured Chi n Home ty ;SyraCuse Un s , ,Pres , 1 9 6 7(伊藤隆二・中野善達・訳編:脳障害児の心理と教育, 誠信書房,) 3. 飯鉢和子・鈴木陽子・茂木茂八:日本版フロスティッ グ視知覚発達検査 日本文化科学社 1 77 , , 9 . 4. 入枝俗・上谷宣正:精神薄弱児の知覚-運動能力調査(その1)-調査の目的と方法 北海道教育大学紀要(第 , 一部 C) , 29 巻1 号, 201~210 , l Jりand Myk ing Di 5, Johnson t i l i i ebus iona t IPr inc ip l sab es i eSandPract ,D, ces , 日,Rり:Learn ,Educat ,Grun &. S 967 t t t r a on ,1 ,(森永良子・上村菊朗共訳:学習能力の障害-心理神経学的診断と治療教育-, 日本文化科学社, ) 1975. l ingu i ic Learni 6. Ki rk t l i i rk i t i i s ng Di iv sabi es sand Remed .A. at on ,S , Ki ,い,D. ,:Psycho , Diagnos .of , Un. l l l i i 1 n。 sPr e s s .(三木安正・上野一彦・越智啓子 共訳:ITPA による学習能力障害の診断と治療, 日本文 ,197 化科学社, 197 ) 4 7. 上出弘之・伊藤隆二:ことばの問題をもつ子ども 福村出版 1 8 0 , , 9 8. 川村秀忠;学習障害-その発見と取り組み-, 慶応通信 1 9 7 7 , . 小鴨英夫・林邦雄・綱村池夫・武田洋:学習障害児の治療教育, 学苑社, 1 97 8 , 1 0 7 3 . 文部省:言語障害教育の手びき;東山書房, 19 ,, 1 1 9 5 7 . 大和田健次郎・中西靖子・:聴こえとことばの障害 第2版, 医学書院, 1 , I S C 1 2 児玉省・品川不二郎:W 知能診断検査1 4年改訂版 9 5 日本文化科学社 , , . 1 3 70年新訂版, 田研出版 , 田中教育研究所:田研・田中ピネー知能検査19 1 4 0 . 田口恒夫:言語発達の病理, 医学書院, 197 . 1 5 . 上野一彦・撫尾知信・飯尾喜「郎:絵画語い発達検査, 日本文化科学社, 1978 l l i i ldren wi i i 16. Wi f i th Spec f f i l i i ion ams t t c Learn 1974 ng Di cu es .F. ,J ,:Ch ,Second Ed ,Pergamon Press , ,. (上野一彦・内山勉 訳編:学習障害児, 日本文化科学社, 19 7 9 ) ,. 17. Wo i l l 1964 (船 山 美奈子・秋 吉 紀 子 od ce ‐Ha ,N,E.:DelayedSpeechandLanguageDevelopment ,Prent ,. 言語発達の遅れ, 日本文化科学社, 1 ) 96 8 1 8. 山口俊郎:発達性失語症, 教育と医学, 28巻7 04~7 10 9 1 79 . 横山正幸 編:乳幼児の言語指導, 北大路書房, 19 .. 訳:. (本学講 師・ 函 館分校). 189.
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