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顔写真に対する単純接触効果とその妨害因

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Academic year: 2021

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(1)Title. 顔写真に対する単純接触効果とその妨害因. Author(s). 戸田, 弘二; 小笠原, 里恵; 田辺, 育実; 山嵜, 千尋. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 60(1): 295-303. Issue Date. 2009-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1005. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第60巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.60,No.1. 平成21年8月 August,2009. 顔写真に対する単純接触効果とその妨害因1 戸田 弘二・小笠原里恵・田辺 育実・山寄 千尋 北海道教育大学札幌枚心理学第5研究室. TheMereExposureEfftctinFacialPhotographsand RelatedInterference Factors TODAKoji,OGASAWARARie,TANABEIkumiandYAMAZAKIChihiro DepartmentofPsychology,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究では,対象への単純なくり返し接触がその対象に対する好意度を高めるという単純接触仮説につい て2種類の顔写真(正像と鏡像)を用いることで検討し,加えて単純接触効果を妨げる要因について探索す ることを目的とした。単純接触効果が顔写真においても認められるならば,対象人物本人は鏡像を対象人物 の友人は正像を好むと予想される。被験者は大学生,大学院生とその同性の友人の男女計80名である。実験 の結果,女性でのみ対象人物の友人の選好において単純接触効果が見られたが,それ以外では単純接触効果 は見られなかった。また,単純接触効果を妨害する要因について検討したところ,対象人物本人の選好には 男性の公的自己意識と新奇性欲求が,対象人物の友人の選好には女性の新奇性欲求がそれぞれ関連している ことがわかった。これらの結果と内省報告から,公的自己意識の自己中心的機能や評価対象への注目度が単 純接触効果に影響を与えているのではないかと考察された。. Keywords:単純接触効果,正像,鏡像,公的自己意識,新奇性欲求. 問 題 最近,アメリカ合衆国に初の黒人大統領が誕生. ムの中に自らの広告を仕込むという戦略があっ た。Figurelに見られるように,テレビゲームの 中に自らの顔写真を入れることによって民衆から. した。バラク・オバマ氏である。彼はどのように. の幅広い支持を得ようとしたのである。この戦略. 黒人というハンディを克服し,民衆に支持された. は単純接触効果(mereexposureeffect)によっ. のだろうか。彼の選挙対策の一つに,テレビゲー. て説明することができる。単純接触効果とは,対. 1 本論文は平成20年度心理学応用実験ⅡEにおいて第1著者の指導のもとに行った研究成果を,第1著者が執筆し直したも のである。. 295.

(3) 戸田 弘二・小笠原里恵・田辺 育実・山寄 千尋. 象への単純なくり返し接触がその対象に対する好. 象人物本人が確かに鏡像の方を見慣れていて,そ. 意度を高める現象のことをいう(宮本・太田,. の友人は正俊の方を見慣れていることがこの結果. 2008)。. の原因になっているかについての検討がなされて いないこと等があげられる。そこで長田・伊藤・ 船橋(1988)はMitaら(1977)にならって,こ れらの問題点を考慮した同様の実験を行った。そ の結果,友人が対象人物の顔写真を見た場合は普 段見慣れている正像を好むことが確認された。そ して実際に正像をより見慣れていると感じている. ことも確認され,見慣れたものを好むという単純 接触仮説の妥当性が検証された。しかし一方で, 対象人物本人に自分の顔写真を見せた場合,女性 二一−ざ ̄ ̄−. ﹂−.. J■ ̄.i一ヽラ. ■. ・一、. 11﹂﹂﹁﹂勇. 二二. iニニ. 「 Figurelゲームの中の広告(CNETNews,2008). においては仮説どおり鏡像をより好むという結果 が得られたが,男性においては32名中19名の者が 仮説とは逆に正像を好むという結果になった。こ のことについて長田ら(1988)は次のような原因. Zajonc(1968)はこの単純接触効果を実証す. を考察している。まず男性は一般に鏡を見る頻度. るため,次のような実験を行った。ミシガン州立. が女性よりも少ないことから,正像を見慣れるこ. 大学の卒業アルバムから抜き出した12枚の写真を. とと鏡像を見慣れることが括抗しやすいのではな. 使って,それらの写真に対する好意度を測定した。. いかということである。また,鏡でいつも見慣れ. 写真を見る回数は0回,1回,2回,5回,10回,. ている自分の顔が嫌いで,むしろ見慣れていない. 25回の6条件とし,各条件に2枚ずつの写真が割. 正像の方が「写真写りがよい」として好意を抱く. り当てられた。その結果,写真の提示回数と好意. ことも考えられる。さらに,他人から見られてい. 皮との間には止の関係があり,見る回数が増える. る自分を強く意識し,良く見せようとする自己呈. ほど写真の内容に関係なく単純に好意が増加して. 示が強く作用すれば,他者から見られている自分. いることが示された。. である正像が好ましいものになっていく可能性が. さらにMita,Dermer,&Knight(1977)は, 人間の顔が正中線をはさんで左右が微妙に異なる ことに着日し,対象人物の顔写真として,ネガを. 普通に焼き付けた正像の写真とネガを裏返して焼. ある,というのである。 “他人から見られている自分を強く意識するこ と’’に関する心理学的な構成概念に公的自己意識. (publicself−COnSCiousness)がある。公的自己. き付けた鏡像の写真とを用意し,単純接触仮説の. 意識とは,“他者から直接観察される自己側面(例. 妥当性を検討した。この仮説に従えば,対象人物. えば,行動スタイル,しぐさ,容姿)に注意を向. の友人は通常対象人物を直接見ることが多いので. けやすい傾向’’と定義されている(Buss,1980)。. 正像写真を好み,対象人物本人は通常自分の顔は. そして公的自己意識が高いほど他者からの肯定的. 鏡を通して見ることが多いので鏡像写真をより好. 評価を得ようとして自己呈示的反応が強まること. むであろうとの予測が成り立つ。Mitaら(1977). が指摘されている(例えば,押見,1992)。また,. は女子学生を対象人物として実験を行い,仮説ど. Hass(1984)は「額にEを書く手続き」を用い. おりの結果が得られることを明らかにした。. て公的自己意識の高い群の方が外部の観察者側か. しかし,Mitaら(1977)の研究の問題点とし. ら見て「E」と見える描き方をすることを報告し. て男性については検討されていないこと,また対. ている。このことは,公的自己意識が高いほど他. 296.

(4) 顔写真に対する単純接触効果とその妨害因. 者の視点から物事を認識することを意味してお. 要因を探ることを第二の目的とした。. り,公的自己意識の高さが単純接触効果を妨害し ているともいえよう。 方 法. 以上の妨害因以外にも,対象人物本人が自分の 顔を見慣れていない場合も考えられる。つまり, 対象人物が最近,顔の印象が大きく変わるような ことをした場合などである(例えば,髪型を変え た,コンタクトにした,等)。. さらに,対象人物が普段見慣れているものより も,適度に目新しいもの,新奇なものに惹かれて. 被験者. 北海道内の国立大学の大学生・大学院生80名 (男性40名,女性40名)。平均年齢は20.7歳(SD =1.73)。 手続き. 同性の友人同士がペアとなって実験に参加し. しまうという特性を持っている場合も考えられ. た。実験室では隣り合わせに座ってもらった。実. る。例えばHunt(1965)によれば,興味は最適. 験者も2名で二人の被験者と向かい合わせに座っ. 不適合水準(optimalincongruitylevels)で最も. た。まず,実験の手順を説明した後に,デジタル. 高まることが指摘されている。つまり刺激に対す. カメラで被験者二人の写真を撮り,その写真を2. る興味はその刺激が既有の知識とまったく同じで. 台のノートパソコンに別々に取り込んで,正像と. も,大きくかけ離れていても高まらないのであり,. 鏡像の写真刺激を作成した。そして実験者は各被. 適度に不適合である場合に最も高まるという。こ. 験者に本人の2枚の写真刺激を提示し,どちらの. れと同様に普段見慣れた自分の顔よりも少し違っ. 写真がより好きかを口頭で問い,記録を取った。. ている鏡像を選好する傾向があるのではないか。. 2枚の写真の違いについては被験者に知らせな. そしてそのような傾向は刺激欲求(sensation. かった。次いで,実験者はパソコンを交換し,友. Seeking;Zuckerman,Eysenck,&Eysenck, 人の2枚の写真に関してどちらが好きかを口頭で 1978)のように時間的に安定したパーソナリティ. 問い,記録を取った。また,どちらの写真をより. 特性なのかもしれない。そこで,本研究ではこの. 見慣れているかについても同様の方法で測定し. ような特性を新奇性欲求と名づけて,新奇性欲求. た。その後,各被験者に内省報告を口頭で求め,. が高いものは,単純接触効果が表れにくいのでは. 最後に質問紙への回答をしてもらった。. ないかと考えた。. 材 料. 一方,友人の選好における単純接触効果を妨害. (1)刺激 デジタルカメラで撮った被験者の顔写真. する要因としては,上記の新奇性欲求の他に,対. をパソコンに取り込み,そのままの写真を正像,. 象人物と友人の接触の程度が影響するかもしれな. 左右反転させた写真を鏡像とした。そして,この. い。例えば,知り合って間もない関係であったり,. 2枚の写真をランダムに左右に配置したものを実. 普段ほとんど接触していない関係であったりすれ. 験刺激とした。写真はカラーで,15cm xllcm. ば,その友人は対象人物の現在の顔を見慣れてい. である。. ないために,単純接触効果は表れにくいものと思. (2)質問紙. われる。 以上より,本研究では,長出ら(1988)にならっ. ①鏡および写真との接触頻度 鏡や写真を普段 どれくらい見るかについて,5項目作成した(「毎. て,対象人物の顔写真を2種類(正像と鏡像)用. 日鏡を見ている」,「鏡を普段持ち歩いている」,「よ. 意し,単純接触仮説の妥当性を検討することを第. く自分の写真を見る」,「周りの人と比べて自分は. 一の目的とした。次いで,単純接触仮説に合致し. 良く鏡を見ている方だと思う」,「アルバムをよく. ない選好をするものと合致した選好をするものを. 見る」)。回答形式は「よくあてはまる」(6点). 比較することによって,単純接触効果を妨害する. から「全くあてはまらない」(1点)の6件法で. 297.

(5) 戸田 弘二・小笠原里恵・田辺 育実・山寄 千尋. 検討するため,男女別に友人による判断と本人に. ある。 (彰自分の顔の評価 自分の顔の評価について,. よる判断それぞれで,正俊と鏡像のどちらを好む. 4項目作成した(「自分の顔が好きである」,「自. かについてx2検定を行った。その結果をTablel. 分の顔は魅力的だと思う」,「自分の顔に自信があ. に示す。対象人物の友人による選好では,女性に. る」,「自分の表情は豊かだと思う」)。回答形式は. おいてのみ単純接触仮説の予測どおり正像をより. 「よくあてはまる」(6点)から「全くあてはま らない」(1点)の6件法である。. ③最近の外見の変化に関する項目 最近の外見 の変化について,6項目作成した(「髪を切った(染. 好むとする者が有意に多かった(ズ2りノ=ユ2.JO, ♪<.仇〃)。一方,男性では40名中,25名が正像 をより好むとしているが有意差は見られなかった. (ズキュノ=2.50,〃.5.)。また,対象人物本人の判. めた)」,「メガネを変えた(コンタクトにした)」,. 断を見ると,男女ともにそれぞれ40名中,21名が. 「ヒゲを剃った(生やした)」,「化粧の仕方を変. 鏡像の方をより好んでいたが,有意な差は見られ. えた」,「眉毛を整えた」,「その他(具体的に)」)。. なかった(男性ズ2りノ=0.JO,〃.ざ.;女性ズ2りノ. 回答形式は複数回答法である。. =0.JO,玖5.)。. ④新奇性欲求項目 目新しいものに対する欲求 について,10項目作成した(「イメチェンをよく. Tablel正像と鏡像のどちらが好きか. Ⅳ 正像 鏡像 ズ2値. する」,「目新しいものが好きだ」など。Table4 参照)。回答形式は「とてもよくあてはまる」(5. 点)から「全くあてはまらない」(1点)の5件. 対象人物の友人に 男性 40 25 15 2・50 よる判断. 女性 40 31 9 12.10***. 対象人物本人に 男性 40 19 21 0・10. 法である。. ⑤公的自己意識尺度 菅原(1984)の自意識尺 度の中から公的自意識に関する11項目を選択して. よる判断. 女性 40 19 21 0.10. *** p<.001. 使用した(「自分が他人にどう思われているのか 気になる」,「世間体など気にならない」など)。. 次に,実際に被験者が正俊と鏡像のどちらの顔. 回答形式は「とてもよくあてはまる」(5点)か. 写真をより見慣れているかを示した結果が. ら「全くあてはまらない」(1点)の5件法である。. Table2である。対象人物の友人では,男女とも. ⑥友人と知り合ってからの期間 一緒に実験に. に正像をより見慣れているとする者が有意に多. 参加した友人と知り合ってからの期間を年月数で. かった(男性ズキュノ=4.β0,♪<.05;女性ズ2りノ. 尋ね,月数に換算した。. =丘40,♪<.05)。一方,対象人物本人では,男. ⑦友人と会う頻度 一緒に実験に参加した友人. 性は鏡像の方が見慣れているとする者が多いとい. と普段会う頻度を,「ほぼ毎日」,「週2∼3回」,「週. う有意な傾向差が見られたが(ズキュノ=3.60,♪<. 1回」,「月2∼3回」,「数ヶ月に1回以下」の中. .Jの,女性には有意差はみられなかった(ズ2りノ. から一つを選択してもらった。. =0.JO,〃.ざ.)。. 実験日時・場所. 2008年11月中旬∼12月下旬にかけて,札幌校の. Table2 正像と鏡像のどちらを見慣れているか. Ⅳ 正像 鏡像 xg値. 行動分析室で行った。. 対象人物の友人に 男性 40 27 13 4・90* よる判断. 結 果 単純接触仮説の妥当性. まず,目的1に挙げた単純接触仮説の安当性を. 298. 女性 40 28 12 6.40*. 対象人物本人に 男性 4014 26 3・60† よる判断. †p<.10,*p<∴05. 女性 40 2119. 0.10.

(6) 顔写真に対する単純接触効果とその妨害因. そこで,対象人物の友人では正俊をより見慣れ. ②顔の評価 顔の評価に関する4項目の信頼性. ているとした者,また対象人物本人では鏡像をよ. 分析を行った。その結果,「自分の表情は豊かだ. り見慣れているとした者だけについて,どちらの. と思う」がα係数を下げていたので,この項目. 顔写真を選好しているかを見てみると,Table3. を削除し,計3項目の合計点を用いた。3項目に. のようになる。今度は,対象人物の友人による判. よる信頼性はα=.β9と十分な値が得られた。. 断では,より見慣れているとする正像を選好して. 得点が高いほど,自分の顔を好意的に捉えている. いる者が男女とも有意に多かった(男性ズキュノ=. ことを意味する。. 4.4β,♪<.05;女性ズキュノ=J729,♪<.OJ)。一. ③公的自己意識 逆転項目を修正し,11項目の. 方,対象人物本人の判断では男女ともに見慣れて. 信頼性分析を行ったところ,α=.β6と十分な. いるとする鏡像を選好している者が多かったが,. 値が得られたので,11項目の合計点を公的自意識. 有意差は認められなかった(男性ズキュノ=2.46,. 得点とした。得点が高いほど公的自己意識が高い. 〃.ざ.;女性ズキュノ=0.4ろ〃.5.)。すなわち,対象人. ことを意味する。. 物の正像を見慣れている友人の場合は男女とも単. ④新奇性欲求 新奇性欲求に関する10項目を用. 純接触効果が認められたが,対象人物本人の場合. いて主因子法による因子分析を行った。固有値の. は鏡像を見慣れていても単純接触効果は確認され. 変化は3.40,1.93,1.05,…というものであり,. なかった。. 2因子構造が妥当であると考えられた。そこで再 度2因子を仮定して主因子法・Promax回転によ. Table3 見慣れていると回答した写真に対する選好. Ⅳ 正像 鏡像 x∠値 対象人物の友人に 男性 27 19 よる判断. 女性 28 25 3 17.29***. 対象人物本人に 男性 26 よる判断. 8 4・48*. 9 17 2・24. 女性19. 8 11 0.47. る因子分析を行った。その結果,どちらの因子に も充分な負荷量を示さなかった「毎日同じ格好で はつまらない」を分析から除外し,再度主因子法・. Promax回転による因子分析を行った。Promax 回転後の最終的な因子パターンと因子間相関を Table4に示す。. *p<.05,***p<.001 Table4 新奇性欲求尺度の因子分析結果 (主因子法・Promax回転後). 単純接触効果の妨害因 (1)変数の作成. 目的2に挙げた単純接触効果を妨害する要因を 検討するために,以下の変数を作成した。. Ⅰ. 項 目 内 容. 新製品が出ると欲しくなる. Ⅲ. .915 −.160. 『新しい』つて言葉に弱い. .759 .037. 目新しいものが好きだ. .754 −.019. を普段持ち歩いている」,「周りの人と比べて自分. いつも見ているものは飽きてしまう. .498 .134. はよく鏡を見ている方だと思う」の3項目の平均. イメチェンをよくする. .349 .243. 値を鏡得点,「よく自分の写真を見る」,「アルバ. 新しいことに挑戦するのが好きだ. −.011 .872. ムをよく見る」の2項目の平均値を写真得点とし. 環境の変化を楽しめる. −.079 .754. た。いずれの得点も,値が大きいほど鏡をよくみ. いつも新鮮な気持ちでいたい. .271 .488. ている,または写真をよく見ていることを意味す. 知らない場所に行くとワクワクする. .005 .459. る。普段鏡を見る頻度の方が写真を見る頻度より. 因子間相関. ①鏡得点・写真得点「毎日鏡をみている」,「鏡. Ⅰ−Ⅲ. .248. も多いとすれば,鏡得点が低いほど,また写真得. 点が高いほど正俊を見る頻度と鏡像を見る頻度が 括抗していると考えられる。. 第Ⅰ因子は5項目で構成されており,「新製品 が出ると欲しくなる」,「『新しい』つて言葉に弱い」. 299.

(7) 戸田 弘二・小笠原里恵・田辺 育実・山寄 千尋. など,新しいものに対する志向性を内容とする項. 2.(ば,♪<.ノの。つまり,男性では本人が自分の. 目に高い負荷量を示していた。そこで「新しいも. 顔を選好する場合,鏡像を選んだ群の方が,正俊. のに対する志向性」因子と命名した。第Ⅲ因子は. を選んだ群よりも公的自己意識が高い傾向にある. 4項目で構成されており,「新しいことに挑戦す. ことがわかった。これは,問題で述べた予想とは. るのが好きだ」,「環境の変化を楽しめる」など,. 反対の結果であった。また,刺激に対する志向性. 刺激に対する志向性を内容とする項目に高い負荷. にも有意な傾向差がみられた(毎身=J.β2,♪<. 量を示していた。そこで「刺激に対する志向性」. .Jの。つまり,正像を選んだ群の方が,鏡像を選. 因子と命名した。. んだ群よりも刺激に対する志向性が高い傾向に. 内的整合性を検討するために下位尺度のα係. あった。これは問題で述べた予想を支持するもの. 数を算出したところ,「新しいものに対する志向. であった。. ②友人の選好に影響する要因 対象人物が友人. 性」でα=.β0,「刺激に対する志向性」でα=. .74と十分な値が得られた。そこで各項目の合計. の顔を選好する場合について,正俊を選んだ群と. 点をそれぞれ,新しいものに対する志向性得点,. 鏡像を選んだ群の間で各変数の平均値を比較し. 刺激に対する志向性得点とした。いずれも得点が. た。その結果をTable6に示す。なお,ここまで. 高いほど,各志向性が強いことを意味する。. の分析では長田ら(1988)に習い,友人による対. (2)単純接触効果の妨害因. 象人物の顔写真の選好を用いてきたが,ここでの 分析には対象人物による友人の顔写真の選好を用. ①本人の選好に影響する要因 対象人物本人に よる自分の顔の選好について,正像を選んだ群と,. いることとした。本人のパーソナリティや友人と. 鏡像を選んだ群の間で各変数の平均値を比較した. の接触の程度が友人の顔写真の選好にどのように. (Table5参照)。その結果,男性においてのみ公. 影響しているのかを検討するためである。f検定 の結果,女性においてのみ新しいものに対する志. 的自己意識に有意な傾向差がみられた(毎身=. Table5 本人が評価した本人の好きな顔に関する影響因 男 本人評価 正像 鏡得点. 性. A「 平均値 19. 5β. 2.86. 印象変化. 公的自己意識. 新しいものに対する志向性. 刺激に対する志向性. †p<・10. 300. 吉備. 0.80. A「 平均値. 性 5β. 吉備. 19. 4.16. 0.71. 21. 4.37. 0.92. 19. 2.42. 0.67. 21. 2.43. 0.93. 19. 7.16. 2.91. 21. 6.81. 19. 0.74. 0.87. 21. 0.86. 0.73. 0.22. 鏡像. 21. 2.92. 正像. 19. 1.79 0.77. 0.93. 0.79. 0.68. 写真得点. 顔の評価. 女. 鏡像. 21. 1.95 0.74. 正像. 19. 7.05 2.70. 0.03. 0.52 鏡像. 21. 7.52. 3.01. 正像. 19. 0.95. 0.78. 0.37 3.08. 0.67. 鏡像. 21. 正像. 19. 鏡像. 21 37.95. 正像. 19 11.21 3.52. 0.76 33.68. 0.94 6.15. 2.02†. 7.13. 0.48 19. 39.47. 7.49. 1.57 21. 42.90. 6.38. 19. 12.37. 3.24. 21. 14.14. 4.85. 19. 13.16. 2.57. 21. 14.33. 0.57. 鏡像. 21 11.95. 正像. 19 15.68. 鏡像. 21 14.00. 4.63 2.31 3.39. 1.82†. 1.37. 1.10 4.12.

(8) 顔写真に対する単純接触効果とその妨害因 Table6 本人が評価した友人の好きな顔に関する影響因 男. 性. 女. 本人評価 ∧「 平均値 5β 正像. 25. 11.64. 吉備 4.30. ∧「 平均値 5β 吉備 31. 12.39. 3.83. 9. 16.44. 4.13. 31. 13.06. 3.08. 9. 16.22. 3.83. 31. 27.26. 12.69. 9. 25.56. 0.08. 新しいものに対する志向性. 刺激に対する志向性. 性. 鏡像. 15. 11.53. 3.91. 正像. 25. 14.32. 2.97. 2.75**. 1.31. 知り合ってからの期間. 鏡像. 15. 15.60. 3.02. 正像. 25. 18.80. 13.72. 2.57*. 1.31 鏡像. 15. 24.53. 12.98. 正像. 25. 4.20. 0.87. 0.37 31. 10.78. 4.16. 0.93. 0.85. 接触頻度 鏡像. 15. 3.93. 1.10. 0.13 9. 4.11. 1.17. *p<.05,**p<.01. 向性と刺激に対する志向性で有意差がみられた (それぞれ,毎邸=2.75,♪<.OJ,毎邸=2.5ろ♪. で長田ら(1988)の結果と一致した。しかし,男 性における対象人物の友人と女性における対象人. <.〃5)。すなわち,女性では友人の顔を選好す. 物本人では単純接触仮説が支持されなかった点で. る場合,鏡像を選んだ群の方が,正像を選んだ群. 長田ら(1988)の結果と一致しなかった。. よりも新しいものに対する志向性,刺激に対する. まず,男性における対象人物の友人による選好. 志向性が有意に高いことがわかった。これは問題. で仮説が支持されなかった原因を考察する。友人. で述べた予想を支持するものであった。. の正像を見慣れていると答えた男性のみに限定し て分析したところ単純接触効果が確認されたが, 全体では確認されなかった。このことから,男性. 考 察 単純接触仮説の妥当性. 本研究では,長田ら(1988)にならって,対象. はそもそも友人の顔を見慣れていない者が多いの ではないだろうか。内省報告でも「いつもきちん と見ていないのかもしれない」,「友人の(写真). 人物の顔写真を2種類(正像と鏡像)用意し,単. は自分の(写真)よりどっちが見慣れているのか. 純接触仮説の妥当性を検討することを第一の目的. 考えてしまった」などという回答があり,男性は. とした。単純接触仮説に従えば,対象人物本人に. 友人の顔にあまり注目していないことが考えられ. 自分の顔写真を見せた場合は鏡像を選好し,対象. る。. 人物の友人が対象人物の顔写真を見た場合は正像 を選好すると予想される。. 長田ら(1988)の結果では,対象人物の友人に. 一方,女性における本人の選好で単純接触効果 が見られなかったのは,長田ら(1988)の時代に 比べると,デジタルカメラの普及やカメラ付き携. よる選好では男女とも単純接触効果が確認され,. 帯電話の流行により,いつでも写真を撮ることが. 対象人物本人では女性にのみ単純接触効果が確認. でき,自分の正像を見る機会が増えたという時代. された。一方,本研究では,女性における対象人. 背景の違いが考えられる。そのため,正俊と鏡像. 物の友人による選好以外では単純接触効果は確認. を見る機会が括抗し,単純接触効果が起こらな. されなかった。本研究の結果を長田ら(1988)の. かった可能性がある。実際,女性では自分の鏡像. 結果と比較すると,女性における対象人物の友人. を見慣れているとする者(19人)と正像を見慣れ. では単純接触仮説が支持され,男性における対象. ている者(21人)が他の対象以上に括抗している。. 人物本人では単純接触仮説が支持されなかった点. 自分の正俊を見る機会の多さと後述する自分の外. 301.

(9) 戸田 弘二・小笠原里恵・田辺 育実・山寄 千尋. 見への強い違和感が単純接触効果の発現を妨げた. 方がいい」,「見慣れていないほうがおもしろかっ. ものと思われる。. た」というような普段見慣れていない写真を好意 的に評価している報告があった。. 単純接触効果を妨害する要因. 単純接触効果を妨害する要因を探ることを第二. 一方,男性における対象人物の友人において新 奇性欲求が妨害因とならなかったのは,「友人の. の目的とした。すなわち,対象人物本人の選好に. 写真は違和感がなかった」,「いつも人の顔をちゃ. おいて鏡像ではなく正像を好んだ者は鏡得点が低. んと見ていない」といった報告に代表されるよう. く,写真得点が高い,また顔の評価得点が低く,. に,友人の外見に対する注目度が低く,どちらの. 印象変化得点が高い,公的自己意識得点が高く,. 友人の顔が見慣れているか判断がつかないため. 新しいものに対する志向性得点,刺激に対する志. に,新奇性欲求が単純接触効果に影響しなかった. 向性得点いずれも高いと予想した。また,友人の. と考えられる。. 選好において正俊ではなく鏡像を好む者は新しい. また,女性における対象人物本人において新奇. ものに対する志向性得点,刺激に対する志向性得. 性欲求が妨害因とならなかったのは,「想像以上. 点が高く,知り合ってからの期間は短く,接触頻. に自分は変な顔だった」,「友人の(写真)は普通. 度が少ないと予想した。その結果,公的自己意識. だが,自分の(写真)はどちらも変だった」,「い. 得点と新しいものに対する志向性得点,刺激に対. つもと違う」等の報告にあるように自分の写真に. する志向性得点において関連が認められた。. 対する強い違和感が正像にも鏡像にも認められて. (1)公的自己意識 男性において自分の顔を選好. おり,どちらの写真も最適不適合水準を超えてし. する場合,予想とは反対に鏡像を選好する群の方. まったためではないかと思われる。すなわち,女. が正像を選好する群よりも公的自己意識が高い傾. 性は自分自身の外見に対して比較的明瞭なイメー. 向にあった。この原因の一つとしては,予想自体. ジを持っているが,そのイメージは必ずしも静止. が妥当でなかった可能性が考えられる。押見・坂. 画像としての写真とは一致しない。このため,正. 井(2002)によると,公的自己意識の高い人は基. 俊に対しても鏡像に対しても強い違和感を持って. 本的には自己中心性の高い行動を示すが,不慣れ. しまったのではないか。. な状況だと非自己中心性の高い行動を示すとい. 以上の考察から,評価対象への注目度によって. う。本研究では,対象者に友人同士で実験に参加. 外見の変化に対する好ましさ評定が異なるのでは. してもらい,実験刺激を作成している間は漫画を. ないかと推測される。すなわち,評価対象への注. 読ませるなど,終始,リラックスした状況で実験. 目度が低い場合(男性の友人評価)は,そもそも. を行った。このことが実験状況への慣れをもたら. 変化に気付きにくいことから変化を好ましく捉え. し,公的自己意識の自己中心的機能(自分の視点. る性質(新奇性欲求)があっても好ましさ評価は. からものを見ること)が現れたものと考えられる。. 高まらない。一方,注目度が極めて高い場合(女. (2)新奇性欲求 男性では自分の顔を選好する場. 性の本人評価)は,既存のイメージとのギャップ. 合,正像を選好した群の方が鏡像を選好した群よ. から少しの変化を過大に捉え,好ましい変化域を. りも刺激に対する志向性が高い傾向に,女性では. 超えてしまうことから,好ましさ評定が高まらな. 友人の顔を選好する場合,鏡像を選好する群の方. い。中程度の注目度(男性の本人評価と女性の友. が正像を選好する群よりも新しいものに対する志. 人評価)の場合に,新奇性欲求が機能して好まし. 向性,刺激に対する志向性が有意に高いことがわ. さ評価が高まるという逆U字型の関連が想定さ. かった。すなわち,新奇性欲求が高いほど,単純. れるのである(Figure2参照)。. 接触効果が現れないという予想通りの結果となっ た。実際,内省報告においても「見慣れていない. 302.

(10) 顔写真に対する単純接触効果とその妨害因. 好ましさの評価. 引用文献. Buss,A.H.(1980).SeLf−COnSCiousnessandsocialanxie秒, San Francisco:Frccmann.. CNETNews(2008).ObamaadappearsinXbox360car racinggame.くhttp://news.cnet.com/8301−13578 3−10066307−38.html〉(2008年10月14日). Hass,R.G.(1984).Perspective taking and self− 注目度 低 男友人 男本人・女友人 女本人 高. awareness:DrawinganEonyourforehead.Journal q/飽和0〃αJ砂α〃d50Cオα7月げCゐ0わg)′,46,788−798.. Hunt,J.McV.(1965).Intrinsicmotivationanditsrolein Figure2 見慣れない顔写真に対する好ましさの評価. psychologicaldevelopment.InD.Levine(Ed.),Nib− rashasymposiumonmotivation.Vol.13.Lincoln,NE:. 本研究の問題点としては,友人と一緒に実験を 行っているにも関わらず口頭で回答を求めたため に,写真を選好する際に友人の回答が聞こえてし まい,友人の考えに本人の回答が左右されてし まった可能性があるということである。このため, 内省報告でも比較的似た内容になってしまった。. 今後は,友人の回答が聞こえないようにする工夫 が必要である。 それでも,男性における対象人物本人において,. 公的自己意識が単純接触効果の妨げになっている ということは興味深い結果である。今後は慣れた 状況と不慣れな状況において,公的自己意識が単 純接触効果に及ぼす影響について検討する必要が ある。また,評価する対象によって新奇性欲求が. 単純接触効果を妨害したりしなかったりするとい うことも示唆された。つまり,同じ変化でも,注. 意の程度によって変化の評価が異なることが考え られるので,注意の程度による変化の評価につい. UniversityofNebraskaPress.pp.189−282. Mita,T.H.,Dermer,M.,&Knight,J.(1977).Reversedfa− Cialimagesandthemere−eXpOSurehypothesis.Jour− 〃〟Jq/飽和0〃〟J砂α〃d50Cオα7月げCゐ0わg)′,35,597−601. 宮本聴介・太田信夫(2008).単純凛触効果研究の最前線. 北大路書房 長田雅喜・伊藤義美・舟橋厚(1988).正像と鏡像の顔写 真による単純接触効果の検討 名古屋大学教養部紀要, 32,101−107. 押見輝男(1992).自分を見つめる自分一自己フォーカス の社会心理学−サイエンス社 押見輝男・坂井剛(2002).公的自己意識の自己中心性に ついて一額にEを描く一立教大学心理学研究,44, 1319. 菅原健介(1984).自意識尺度(self−COnSCiousnessscale) 日本語版作成の試み心理学研究,55,184−188. Zajonc,R.B.(1968).Attitudinaleffectsofmereexpo−. Sure.JournalqfPersonalityandSocialPsychology 腸〃0卯砂ゐ5頑ゆJg∽ゼ〃f,9,1−27.. Zuckerman,M.,Eysenck,S.,&Eysenck,H.J.(1978).. Sensation seekingin England and America: Cross−Cultural,age,andsexcomparisons.Journalq/ C鋸椚沼地g甜ねCJオ〃オc(77月町C加わ幻′,46(1),139−149.. ても検討する必要がある。さらに今回は,普段見. 慣れているものよりも適度に目新しいもの,新奇. (戸田 弘二 札幌校教授). なものに惹かれるというパーソナリティ特性を想. (小笠原里恵 札幌校学部生). 定し,これを新奇性欲求と名づけて検討した。し. (田辺 育実 札幌校学部生). かし,この構成概念についての理論的検討は行っ. (山寄 千尋 札幌校学部生). ていない。刺激欲求や最適不適合水準などの類似 の構成概念との関連や弁別性などを整理し,再び 尺度構成をし直す必要があるだろう。. 303.

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参照

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