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選択進路をジェンダー・フリーにしていく取り組みについて:「トライやる・ウィーク」の体験先選択を手がかりにして

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Academic year: 2021

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進路選択をジェンダー・フリーにしていく取り組みについて

−「トライやる・ウイーク」の体験先選択を手がかりにして− GenderFree Educationon Career Choice

−’’rryyaru・Week”atHyogoPrefectrure一 長谷川珠里(兵庫教育大学大学院) JuuriHASEGAWユ(HyogoUniversityofTbacherEducat.iongraduateschool) 荒木組幸(兵庫教育大学) NoriyukiARAKI(HyogoUniversityofrrbacherEducation) 「特性教育論」が根強く存在する学校は、ジェンダー「再生産の場」としての自覚に欠け、 ジェンダー・フリー教育の必要性が共通理解されにくい現状にある。本研究において、ジェ ンダー・フリーな進路選択を可能にするために、職業に対する「ジェンダー・バイアス」を 明らかにするとともに、その是正を図る教材を開発し、授業実践を通した是正効果について 実証的に検討した。進路選択という視点から「特性教育論」の問題点を自覚する事が学校を ジェンダー「再生産の場」から「是正の場」に、転換させる試みの1つになると結論した。 キーワード   ジェンダー・フリー教育、ジェンダー・バイアス、進路選択、是正 I.目的 学校はジェンダー再生産の場であると言わ れる。それを、朴木(1999)は、次のように述 べている。 1、学校の組織それ自体が性別役割分担モデル としてあるという問題 2、男女別の名簿や整列、行事の際の男女別役 割分担など、男女を2分する学校文化の問題 3、教科書、教材における固定的な性別役割分 担の記述の問題 4、男女によって微妙に異なる進路指導の問題 5、教育機会は形式的には男女同一であるが、 実質的には男女で異なるという問題 6、男女平等について具体的に学ぶ場の貧困と いう問題 がある。 また、教育機会の平等が確保されていても、 それが実質の平等になっていない事が多くある。 朴木は「男女によって教育の機会均等ではない 社会の中で生活してきた男女の選択や要求をそ のまま受け入れる事は、ジェンダー・バイアス の再生産、固定化につながる。現に存在してい 15 る社会の中で、男女がまったく同質・同量の機 会均等やさまざまな刺激、暗黙のメッセージを 享受できるような措置をとる事は、ほとんど不 可能である。そうであれば、学校は広い意味で の教育機会がすでに男女で不均等である事を前 提にして、不均等の是正を行う必要がある。」と 述べている。 そこで、本研究では、兵庫県で平成10年度 から行われている「トライやる・ウイーク」を 取り上げ、体験活動におけるジェンダー・バイ アスの問題点を明らかにし、「ジェンダー・バイ アス」の是正の方法について検討する。古田・ 住本(2000)は「『トライやる・ウイーク』は活 動の分野別にみると、職業体験(職場体験活動と 勤労生産活動)が約80%であることから、この 社会体験学習が進路指導でいう啓発的な経験に 相当すると考えることができる。」と述べる。文 部省(当時)も「トライやる・ウイーク」は進 路指導の概念として用いる「啓発的体験学習」 に該当するとしている。このように、本論文で は「トライやる・ウイーク」を「進路選択」を 考える指標とした。

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II.研究の方法 研究1平成12年度「トライやる・ウイーク」 の体験先調査 ①調査実施時期 2001年2月 ②調査実施数 兵庫県下6地域66校 男子3785人、女子3534人 この調査から「生徒が希望している体験先は、 すでに『ジェンダー・バイアス』がかかった状 態で選択している」という仮説1を立てた。 その仮説を実証するために、「職業につい て」という質問紙調査行った(表1)。 ③調査実施時期 2001年5月 ④調査実施対象者 兵庫県内A中学校2年生3 クラス、および兵庫県内B小学校1クラス、C小 学校2クラス、D小学校2クラス(いずれも小学 6年生) ⑤実施方法 授業時間の中で担当教諭に行ってもらい、有 効回答数は100%であった(一部、不備がある場合は後に確認 した)。 このうちA中学校2年生においては、事前に 行った質問紙調査と実際に選択した体験先とを 対応させて、「ジェンダー・バイアス」と「やっ てみたい」気持ちの関係を見る。 研究2 実験授業1「ジェンダー・バイアス」 是正の可能性を検討する。このためにモラルジ レンマ資料(「信二のトライやる・ウイーク」表 2)を教材開発した。 ⑥対象者 兵庫県A中学校2年生3クラス 実験群:オープンエンドのモラルジレンマ「信 二のトライやる・ウイーク」授業、荒木(1992) を行った1クラス 表1「職業について」という質問紙 し よ し    き よ つ 職  業  に  つ  い  て 車    線    書    亀 筋 (       ) ゎ 。.い これ 1 ,よ 七 , た い.と い う1 1 ’は 一日 目 か 7 これ は テ ス ト1日 け り」 「せ ん . サ の 的 と の 7 ㌧ t  か t t T き い ・ 接 .の よ ク に わ 1 日 I tり D L Ot つ け て くだ . し㌧ つ ま の1 は 日 日 いし た は や っ て わ た は q H . し 1ンh た い で す か 1・ r .L t か , ィ .い ウ イー ク t と1 ウ4 日 ど ち ら で も な しl 争 例  耳 首肯 く〕 l 1  小 字 喩 の 先 皇 l ミ  ロ Il 絃 4 貴 書 譜 ・も.良 薔 モ ーーケー スC ● 軸 ■ 書 ■ ・■ 爽 J 嘱 鐸 1  10 1 叶 l 8  ぎ r ホ ー ム 革 立 ’滅 iぎ ∬ 1 0   布  佐 靡 (畏 ■ ) 日  テ レビ 首 の デ ィ レ クタ ー 1 2  手 ん 小 事 H  t 址 士 ( l珪 ) 1 4 t カ 奮 l 上 1 5  ■ 審 ・義 ■ 騨 統制群:モラルジレンマの授業をしない2クラ ス ⑦授業実施時期 2001年5月 プレテスト・ポストテストでは、質問紙「職業 について(表1)」を用いた。 授業終了時の生徒の記述には、以下のような ものがあった。 ○友達に言われたからって変えるべきではない。 ぼくだっていろんな人に「場所変えたら?」と か「保育所なんてやめたら?」と言われた事も あった。でもぼくは変える気はなかった。なぜ なら僕は人に言われて自分の考えを変えるのが イヤだからた。別に悪いことではないと思うし、 男が行ってはいけない場所でもない。自分の考 えで最後まであきらめずに貫き通したいから、 希望を通すべき。 ○トライやるウイークなんて2度できない体験 だから。自分がやりたい事をして将来に向けて 考えていったらいいから希望を通すべき。 ○男の子だからと言って保育所に行けないのの はおかしい。男の子だって小さい子が好きな子 がいると思うし、ちょっと反対されて諦める夢 ならやめてしまえばいい。その気があるのなら 希望を通すべき。 ○男子1人でも自分が本当に行きたくて選んで いるのなら、がんばって体験してみた方がいい と思うから希望を通すべき。 ○保育所の方が女子に来てほしいと言っている から、希望を変えるべき。 「希望を変えるべき」の判断が多かった(28 人中25人)。このように生徒は子の授業を通し て、職業の「ジェンダー・バイアス」を考える ことができたと考えられる。 1 た ■ Ⅰ に は ■ 性 向 ト  女 性 向 暑 と い っ た も のり H b与 の で し ょ う か ? こ れ は テ スト で は あ り き せ ん . 今 の あ な た の 考 え た 叩 か せ て 下 き い ・ (例 の よう に あ て はま る も の に 0モ つ け て く だ さ い ・) 年  鳩  書    墓 前 (       ) h 性 向 と どち らか と い う と 第 健闘 と ど ち ら と も T え な ど ち ら か いうと 女1 1 R 性 Rぎ ■1 1 店 ○ 1 小 学 校 の た ま q t H ■ tll 断 .あ’蕪 辞 モ → ケー ス‘合 ■ i i.鱗 臣 ■ ■ 狛新川 七 人 ホ ー ム 書 i u r墓 ’虚 1 0   糟 憬  れ は ■ ) 1 −  テ レ ビ 糞.の テ イ ククー 1 2  雷 ん が t l I i i ¥ ( ■∵ ■ ) 1 4t 力 奮 社 ,5 i 宣・封錆 1 6 首 雀 嘗0 レス ン■り

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表2 ジェンダー・バイアスを考えるためのジレンマ教材:「信二のトライやる・ウイーク」 信二は中学2年生で、もうすぐ楽しみにしてい たトライやるウイーク(体験学習)が始まる。信 二は以前から、保育所での活動を希望していた。 小さい子が大好きで、将来は保育士になりたいと いう夢を持っていたからだ。 ところが保育所は希望者が多く、第2希望に移 らないといけない人もでてきた。親は「信二は小 さい頃から、面倒見が良かったからね。保育所は 合っているかもしれないね。でも保育所を希望し ているのは、女の子が多いでしょ。いい仕事だと は思うけど、女性の仕事だし、将来の職業として 選ぶには給料は安いわよ。友達もいる他の所に変 わった方がいいんじゃない。」と言う。 先生は「職業を男性「昌]き、女性向きと分けるの はいけないと思うが、小さい子の相手は女の子が、 どちらかというと向いているんじゃないかな。保 育所の方でも、できれば女子にきてほしいと言わ れているし、よく考えてみなさい。」と話した。 友達は「おい、信二 お前 保育所に行くのか? ええな、女の子ぽっかりで。でも男が一人だと、 つばり男同士がいいよ。さっきも女子らが、信二 が他に変わってくれたらいいのにって話していた せ。」とからかいながら言ってきた。 信二はだんだんイヤな気がしてきた。男女平等 とかいいながら、「男だから」という理由であきら めないといけないのか、信二は腹が立ってきた。 そう言えば、近頃は女性の人権問題がよく話題 になっている。信二は「女だから‥・」という理由 でつらくイヤな思いをしてきた人の気持ちが、少 しわかったような気がした。 女子らと行き先を決める話し合いの目が近づい てきた。明日までなら希望を変えるのを待ってく れると先生は言っている。 信二は希望を通すべきか、変えるべきか。 ア、希望を通すべき  ィ、希望を変えるべき 実験授業2 「職業の『ジェンダー・バイアス』 を是正できると『やってみたい』気持ちの方向 にプラスの影響を及ぼす」という仮説2をたて、 教材(「女にしかできない仕事、男にしかできな い仕事ってあるの?」表3参照)を用いて実験 授業をする。 ⑧授業対象者:兵庫県内B小学校6年生1クラス (診授業実施時期 2001年6月 プレテスト・ポストテストでは、研究1の質問 紙「職業について」(表1)を用いた。 表3 「女にしかできない仕事、男にしかできない仕事ってあるの?」について 授業で用いた資料①では、「女性職」「男性 職」の是正に関する内容を紹介しています。工 事現場で現場監督として働いている女性や、保 育士として働く男性やボディビルダーの女性を、 写真入りで紹介しています。 資料②では、「女にしかできない仕事、男に しかできない仕事ってあるの?」という内容で、 はとバス初の女性ドライバーや小児科の男性看 護士を紹介しています。またプロスポーツの世 界では女性が少ない事も疑問形で取り上げてい ます。メッセージとしては「世界にはさまざま な仕事があります。あなたはどんな仕事にもつ くことができますし、どんな働き方を選ぶ事も できます。 人には、いろいろな能力がそなわっ ています。」と書かれています 資料③では、いってきますと未来へ飛び出し ていく子ども達が描かれています。メッセージ は、「いろいろな生き方があって、いろいろな働 き方があります。働くことは自信をつけます。 働くことは仲間をつくります。働くことは生き ることです。今は働いていなくても、将来には 働きたいと思っている人もたくさんいます。あ なたはおとなになったら、どんな仕事につくの でしょうか?」と、問いかける形で終わってい ます。 この資料は、参考文献にあげています、「ジェンダ ー・フリーの絵本」③「働くって 楽しい」から引用し ています。 ー17−

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ⅡI.結果と考察 ⅢI−1「トライやる・ウイーク」体験先に見 られる男女の偏りについて 性による体験先の偏りを比較するために、8 0%以上の占有率の数を男女で比較した。区11 が示すように、男子の占める割合が100%の 体験先は6種、80%以上は12桓ある。一方、 女子が80%以上占める体験先は4種、女子が 100%は0である(5人以下は省く)。このよ うに体験先で男子の占める割合が高いものが多 く、男女で偏りがある。(兵庫県下6地域66校、 男子3785人・女子3534人) 4   2   0   8   亡 U   4   2   0 1 2       ! 1 1 1 6 l 4         吉 」    i O  l 1 男 子 が 1 0 0 % 男 子 が 8 0 % 以 女 子 が 8 0 % 以 女 子 が 1 0 0 % 図1性別に去り入滅こ偏りがある 体験先 次に女子の体験先の上位5番までをまとめた ものが表4−1である。表4−1にあがってい る5カ所の職種、保育所・幼稚園、ボランティ ア・社会福祉、スーパー、病院、文化・芸術・ 創作を約62%の女子が体験しており、体験先 の集中が見られる。 表4−1 女子の体験先ベスト5 人数 保育所・幼稚園 1166 ボランティア・社会福祉 292 ス「−ヅもー 263 病院 2ミ氾 文化・芸術・創作 223 N=3534 一方、男子の体験先上位をまとめた表4−2 では、ベスト5の体験先(スーパー、保育所・ 幼稚園製造業、農業、ガソリンスタンド)の占 有率は男子の34%に過ぎず、男子は幅広く体 験先を選択していると言える。 表4−2 男子の体験先ベスト5

人数

ス→ も

492

保育所t幼稚園

268

製造業その他

217

農業

159

ガソリンスタンド

145

N=3785 ⅡI−2 仮説1「生徒が希望している体験先は、 すでに『ジェンダー・バイアス』がかかった 状態で選択している」の検討 職業を選択する、「やってみたい」気持ちと 職業が男性向きか女性向きかといった「どちら の性向き」との相関(表5)の方向が男女で異 なり、女子では負の相関を男子では正の相関を 得ている。また相関の大きさは男子では低く (0.23∼0.29)、女子では中程度と高い(−0.47 ∼−0.49)。 表5 「やってみたい」気持ちと「どちらの 性向き」の相関関係 A 中2年 A 中2年 BJl鴫年 糾畑年 c JJや年 ¢畑年 D4 鴫年 D′lせ年 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 相関あり ○ ○ ○ 負の相関あり ○ ○ ○ 0 棚 軋 0 女子 (A中学校r=一0.4g、B小学校r=一0.49、C小学校 rニー0.47、D小学校r=−0.48,P<.001) 男子 (A中学校r=0.29、8小学校r=0.23、C小学校r= 0.23,P<.001、D小学校では相関が見られなかった) (男性向きを5…女性向きを1、やってみたいを5・=やりたく ないを1とする) つまり、女子は職業を「男性向き」と、とら えればとらえるほど、「やりたくない」と答える 傾向が見られ、また「女性向き」ととらえれば とらえるほど「やりたい」と答える傾向が強く 見られた0図2−1、図2−2は、女子が職業 を「女性向き」ととらえればとらえるほど、「や ってみたい」と答え、「男性向き」ととらえれば

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とらえるほど、「やりたくない」と答えていたと いう関係を表している。 5 やって みたい    こ   ̄   ∴.・隼 ・ 4 とちb かというと やってみ たい

_

3 どち ら で もない 2 どち らか というとや りたくない 1 や りたく な い 女 子 ・女 1 女 性 向 2 どちら か というと 女性 向 き 3 どちらと もい えな い 4 どちら か というと 男 性 向 き 5 男 性 向 性 向き き き 図2−1 女性向きととらえている女子のジェンダー・バイア ス(A中学校,図中の数字は人数を示す) 5 やって み たい 4 とろり か というと やってみ トい 3 どちら で もな い 2 どちらか とい うとや リた くない :式   コ 1 やりたく ない ;‥i−・・I孝幸 .…‥. 女 子 ・男 性 向 き 1 女性 向 き 2 どち ら か というと 女 性 向き 3 どちらと もいえな い ヰどちら か というと 男性 向き 5 男性 向き 図2−2 男性向きととらえている女子のジェンダー・バイア ス(A中学校,図中の数字は人数を示す) −一方、男子では自分の性向きではないと、と らえればとらえるほど、「やりたくない」と答え る傾向を相関関係は表している。(図2−3)。 つまり、女子ほど強くはないが、男性向きでは ない職業を選択しない。 次に、自分の性向きか否かという視点と実際 に選択した「トライやる・ウイーク」の体験先 を対応させたところ、表6に示したような結果 が得られた。 自分の性向きではないと答えている体験先 の女子は4%しかなく、約80%近くが自分の 性向きとする職種を選択している。 ー19 5 やって みたい 4 とちら かというと やってみ たい N 車I . 3 どちら でもない 孝幸j−.;・−::; 2どちらか というとや りたくない 1やりたく ない t 男子・男 性向き 1女性向 き 2 どちら かというと 女性向き 3どちらと もいえな い 4 どちら かというと 男性向き 5 男性向き 図2−3 男性向きととらえている男子のジェンダー・バイ アス(A中学校,図中の数字は人数を示す) 表6 体験先に見られるジェンダー・バイアス (数値は%,n=45) 自 分 の 性 向 き どち ら向 きで 自分 の 性 向 き だ と答 え てい る もな い と答 え で は な い と答 所 て い る 所 え て い る 所 男 子 4 7 3 2 2 1 女 子 7 7 19 4 合 計 6 4 2 4 1 1 男女合わせても、自分の性向きではない職種 を選択したものは約10%しかなく、60%以 上のものが自分の性向きだと答えた体験先を選 択した。 以上の事により仮説1は実証された。 ⅡI−3「ジェンダーリてイアス」是正が可能で あるかについて 表7は実験授業1における「ジェンダー・バ イアス」を授業前後で比較したものである。表 7から実験授業1をすることで「どちら向きの 性でもない」と答える割合が増えていることが わかる。 また「女性向き」と「それ以外」に分け、そ の出現率をプレテストとポストテスト比をズZ 検定したところ、「女性向き」と答える割合が有 意に減少していた(ズ2 =4.9,P<0.05)。 同じように「どちら向きともいえない」と「そ れ以外」では、「どちら向きともいえない」と答 える割合が増え、有意差が見られた(ズ2 =3耳

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P<0.05)。 表7 実験群におけるジェンダー・バイアス是正 (%) 女 性 向 き どちらか心 、うと女性 d ど ち ら と も い え な L l ど ちら か とい うと 諷ほ 向 ∃ 男 性 向 き プ レ テ ス ト 1 1 1 6 3 9 2 1 1 2 ポ ス ト テ ス H 3 1 8 5 3 1 9 6 また「男性向き+女性向き」と「それ以外」 では、「男性向き+女性向き」と答える割合が減 少し、有意差が見られた(ズ2 =7.2,P<0,05)。 以上の事から、この授業を行うことで、「ジ ェンダー・バイアス」の是正が生じたと言える。 次に、「ジェンダー・バイアス」是正を「性 向きに関らず、やってみたい、やりたくないと いう自由な選択ができる事」ととらえ、実験授 業1において、「ジェンダー・バイアス(男性向 きを5、女性向きを1とする)」と「やってみた い」気持ちとの相関関係の方向と大きさから、 以下の事が明らかになった。 「男女ともに自分の性向きをやってみたいと答 える」傾向が減少しており、実験群においてジ ェンダー・バイアス是正が生じたと言える(表 8)。 表8 プレテストとポストテストに見られる 相関係数(A中学校)(Pく0.001) プ レ テ ス ト ポ ス トテ ス ト 統 制 群 1 女 子 −0 .5 4 2 −0 .5 1 6 実 験 群  女 子 −0 .5 7 4 −0 .3 7 1 統 制 群 1 男 子 0 .3 7 2 0 ,4 0 2 実 験 群  男 子 0 .3 6 5 0 .2 6 3 Ⅲ−4 仮説2「職業の『ジェンダー・バイア ス』を是正できると『やってみたい』気持ち の方向にプラスの影響を及ぼす」について 仮説2の検証のために行った実験授業2で 「ジェンダー・バイアス」是正が有意にみられ た8人について、「ジェンダー・バイアス」是正 と「やってみたい度」の変化を示したのが、表 9である。男女ともに「ジェンダー・バイアス」 が是正できると、「やってみたい度」がアップし ている。 女子では、「男性向き」から「どちら向きで もない」(5から3)や「男性向き」から「どち らかというと男性向き」(5から4)、「どちら かというと男性向き」から「どちら向きでもな い」(4から3)に是正されると「やってみたい 度」が大きく上昇している。 男子では、「女性向き」から「どちら向きで もない」(1から3)に是正された場合の平均ア ップ度が高い。 また、女子において「女性向き」から「どち らかというと女性向き」(1から2)の是正を除 いて、男女ともに「ジェンダー・バイアス」が 是正できると、「やってみたい度」がアップする 事が示された。この事からも、男女ともに職業 におけるジェンダー・バイアスを是正する事が 「やってみたい度」アップにつながるといえる。 このように結果は、仮説2を支持している。 表9「やってみたい度」の変化の平均 (B小学校) 男 子 女 子 [女 性 向 き ]か ら [ど ち ら 向 き で も 1 .6 7 0 .5 0 な い ](1 か ら 3 ) [女 性 向 き ]か ら [ど ち ら か と い う 0 ,5 0 0 .0 0 と 女 性 向 き ]く1 か ら 2 ) t ど ち ら か と 言 う と 女 性 向 き ]か ら 「 0 0 0 .6 3 [ど ち ら 向 き で も な い ] (2 か ら 3 ) [ど ち ら か と 言 う と 男 性 向 き ]か ら 「 5 0 1 .5 0 [ど ち ら 向 き で も な い ](4 か ら 3 ) [男 性 向 き ]か ら [ど ち ら か と い う 「 3 3 1 _1 3 と 男 性 向 き ](5 か ら 4 ) [男 性 向 き ]か ら [ど ち ら 向 き で も 0 .5 8 1 .0 0 な い ](5 か ら 3 ) 合     計 6 .5 8 4 .7 5 平     均 1 .1 0 0 .7 9 Ⅱト5 「ジェンダー・バイアス」の問題点に ついて 実験授業2終了後の感想を分析すると、授業 前に「男性職・女性職」という職業の「ジェン ダー・バイアス」をもっていた児童は21名不 明な児童が10名いた(表10)。また、授業後も 「ジェンダー・バイアス」を持ち続けた児童は なく、それを是正する考えに変わった児童が27 名、不明な児童が4名であった。以上より、こ の授業を通じて、かなりの部分の「ジェンダー・ バイアス」が是正されたと言える。 表10実験授業前後の「ジェンダー・バイアス」 「ジェンダ ー り くイア ス」あ け ジェンダー ・バ イアス」な  不 明 授 業  前 2 1 0      1 0 授 業  後 0 2 7 4 (B小学校,数字は人数を示す) 「ジェンダー・バイアス」を是正する考えに変 化した児童の、異体的な記述をいくつか以下に

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示す。 (9「ぼくは、男にしかできない仕事や女にしか できない仕事ぽっかりだと思っていたけど、 今は、男性にも女性にもできる仕事がたくさ んできたらいいなと思います。」 ②「ぼくは、男の人にしかできない仕事、女の 人にしかできない仕事はいっぱいあると思 っていたけど、そうでもなかった。男の人の 仕事だって女の人はがんばればできる。女の 人に仕事だって男の人はがんばればできる と思う。誰だってがんばれば、どんな仕事で もできると、今日、この時問でわかりまし た。」 ③「私は男の人、女の人の仕事に性別はないほ うがいいなと思いました。理由は、大工さん の仕事がしたいと思ったとき、大工は男の仕 事だからって思ったとき、そのときに自分も 夢をなくしてしまうからです。これからの時 代は、仕事の性別なんてない方がいいと思い ました。」(ゴッシクは筆者による) このうち③は「ジェンダー・バイアス」是正 を強く意識した発言と言える。「男性職」「女性 職」というバイアスがあれば、自分の可能性を 伸ばせずに、終わってしまうかもしれない。 「…そのとき(「男性職」「女性職」と考えた時) に自分も夢をなくしてしまうからです…」とい う記述からもわかるように、「ジェンダー・バイ アス」を持ちつづけることは、将来の職業(進 路)を性別で、選択しないようにつながり、自 らの進路選択の幅を狭めることになる。そこに 問題が生じる。 Ⅳ.おわりに 本研究では、学校におけるジェンダー‥フリ ー教育に関して、主に進路選択における「ジェ ンダー・バイアス」の影響と是正という問題を 扱ってきた。 学校におけるジェンダー・フリーな教育が重 要である事を藤田(1999)は次のように述べて いる。「学校は、そうしたさまざまの重荷やハン ディーを抱えた子どもを等しく受け入れ、学習 と成長を援助し、生きる意欲と希望の拠り所と なることが期待されている。と同時に、たとえ 文化的再生装置として機能してることは事実で あるにしても、ジェンダー不平等をはじめとし て社会のさまざまな不平等や差別・抑圧の構造 を変えていく文化的拠点でもあることが期待さ れている。学校は、こんにち、こうした二重の 期待を託すことのできる唯一の制度化された公 的空間だといっても過言ではない。そして、だ からこそ、学校における<ジェンダー・フリー な教育>が重要なのである。」 教育には未来への大きな可能性がある。区は に示したように、「ジェンダーの再生産」を行う 学校から「ジェンダーの是正」を行う学校(ジ ェンダー・フリーな学校)へと転換していく事 ができれば、ジェンダー・フリーな人作りにつ ながり、男女共同参画社会が実現すると考える。 ジ亡ノダーの再生産を行ラ芋陵 ジ工二ノダ」の雇正喜弔う学校 発信       育てる 社会    l予已′ダー・フサ→な人作り】 l 変わる  P l 男 女 共 同 参 画 社 会 l 図3  男女共同参画社会作りに果たす 学校の役割 本研究で明らかされたように、子ども達の性 別によって「トライやる・ウイーク」体験先の 選択は違っている。このことは「男性向きの職 業」「女性向きの職業」といった職業観が小学校 高学年で、すでに形成されており、そのバイア スが体験先や進路の選択に関わっていることを 示唆している。このようなバイアス是正を学校 があえてしなければ、子ども達はバイアスを持 ったままの選択を行い、それは「ジェンダー」 の再生産につながる。小学校低学年の時期から 継続的に、職業の「ジェンダー・バイアス」是 正に取り組む必要がある。 ジェンダーの是正を行う学校の役割につい て、「教育こそが鍵」として徹底した男女平等教 育を推進しているスウェーデンの取り組みがあ る。ヤンソン(1987)は次のように述べている。 「スウェーデンでは、義務教育期間から、教育 の先には職業があることを自覚させる指導が行 ー21−

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われている。一言で言えば、スウェーデンの教 育は、労働して生きる1人前の社会人を養成す る事を目的としている。」実際に、スェーデンの 学校は、職業指導の場として重要な役割を果た しており、中学3年生では、職業実習もあり、 生徒たちは2週間、生産、販売、事務の3部門 のうちどれかを選び、現場で実習する。その際、 男子は女子の多い職場で、女子は男子の多い職 場で実習することがすすめられるのである。つ まり、学校は、職業選択に見られるジェンダー・ バイアスを是正する取り組みを積極的に行って いるのである。 現在の日本では、すぐさま、スウェーデンの ように、職場実習をする際、男子には女子の多 い職場で、女子には男子の多い職場で実習する ことをすすめるには、共通理解が得られにくい。 しかし、「トライやる・ウイーク」等の体験活動 を視野にいれた上で、研究2で提案したオープ ンエンドのジレンマ授業や「ジェンダー・バイ アス」是正授業を行うことの可能が示された。 このような「ジェンダー・バイアス」是正の ための授業を繰り返すことが、ジェンダーにと らわれない生き方の形成につながり、ひいては 「ジェンダー・バイアス」を是正し、進路選択 をジェンダー‥フリーにする視点を育てること につながろう。男女共同参画社会実現に向けて、 学校にはこのような役割が期待されている。 Ⅵ.今後の課題 言うまでもなく、ジェンダー・フリー教育は 進路選択のみに限ったものではない。また、本 研究で行った「ジェンダー・バイアス」是正の 取り組みは、短時間の授業実践を通してである。 継続性の点から問題が残ろう。 しかしながら、わずか1時間の実験授業なが ら、研究2で示されたような明白な効果を得た。 この教育の可能性は大きいと考える。今後は、 継続的な研究が必要であり、本研究で行った「ジ ェンダー・バイアス」是正の取り組みが、その 後の進路選択に、どのような影響を及ぼしてい くのかといったような縦断的な研究が不可欠で ある。 さらに、「かくれたカリキュラム」の見なお しを含め、学校ではどのようなジェンダー是正 の取り組みが必要かといった学校文化の見直し や効果的な教材開発、さらには、どうカリキュ ラムに位置づけるか等について、継続して研究 すべき課題がある。 【引用・参考文献】 新井眞人(1999)「職業への社会化と学校の役割一日分探 しと進路文化−」新井郁夫『子どもと教育の社会学1学習社 会としての学校−「教育する学校」を超えて−』教育出版株式 会社 荒木紀幸(1992)「モラルジレンマ資料と授業展開 中学 校編」 明治図書 荒木紀幸(1996)「モラルジレンマ授業の教材開発」 明 治図書 荒木紀幸(1997)「続道徳教育はこうすればおもしろい− コールハーグ理論の発展とモラルジレンマ授業−」北大路書房 鎌田とし子・矢澤澄子・木本喜美子(1999)「5 女の仕 事と男の仕事 性別職務分離のメカニズム」『講座社会学 1 4 ジェンダー』 東京大学出版部 亀田温子・舘かおる編(2000)「学校をジェンダー・フリ ーに」明石書店 木村涼子(1999)「学校文化とジェンダー」 勤草書房 小林宏(2000)「中学生の「社会体験学習」の効果に関す る研究」兵庫県立教育研修所研究紀要111集 鶴田敦子・丸岡玲子(1999)「ジェンダーの視点から教育 改革を考える」フォーラムA 橋本紀子・朴木佳緒留・村瀬幸治(2001)「ジェンダー・ フリーの絵本」全6巻 ③「働くって楽しい」大月書店 日野玲子(1999)「「ジェンダー論」の授業をつくる」 藤田英典・黒崎勲・片桐芳雄・佐藤学編 『ジェンダーと教育』 教育学年報7 兵庫県女性施策推進委員会(2000)「兵庫県男女共同参画 言十画に対する提言 中間とりまとめ」 藤田英典(1999)「ジェンダー問題の構造と<女性解放プ ロジェクト>の課題」藤田英典・黒崎勲・片桐芳雄・佐藤学編 『ジェンダーと教育』教育学年報7 古田猛志・住本克彦(2000)「進路指導から見た「トライ やる・ウノーク」の教育的効果」兵庫県立教育研修所研究紀要 111集 朴木佳緒留(1999)「スェーデンの男女平等教育に学ぶ」 鶴田敦子一丸岡玲子編 『ジェンダーの視点から 教育改革を考える』フォーラムA 朴木佳緒留(1999)「学校における男女平等教育一教育機 会均等と家庭科−」匡L立婦人教育会館  研究紀要第3号 朴木佳緒留(2001)「ジェンダー再生産のメカニズムー形 式的な機会均等からの脱却−」エイデル研究所 『季刊セクシャリティ』No3 ヤンソン由実子(1987)「男が変わる スウェーデン男女 平等の実現」 有斐閣選書

参照

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