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訪日外国人の観光消費が千葉県にもたらす経済波及効果

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総 合 地 域 研 究 第 10 号   2 0 2 0 年 3 月 47 1 はじめに 観光産業の規模は世界的に拡大している。国連世界観光機関(UNWTO)によれば、2017 年の世界全体の国際観光客到着数は、過去最高の 13 億 2,600 万人(前年比約 7%増)、国際観 光収入は 1 兆 3,400 億米ドル(前年比約 5%増)を記録、1 人当たりの国際観光収入も 1,000 米 ドルを突破した。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)では、こうしたツーリズム産業がも たらす経済効果が、全世界の総 GDP の約 10%、全世界の雇用の約 10%に貢献していると推 計している。このように国際的な旅行・観光の拡大は、経済活動や雇用の創出を通じて、 現代の社会経済を牽引する重要な役割を果たすようになっている。 国内においても訪日外国人による観光消費の重要性が増している。観光庁「訪日外国人 消費動向調査」によれば、2018 年の訪日外国人旅行者は過去最高の約 3,119 万人となり、 2012 年の 3.7 倍に増加している。それにともない訪日外国人の旅行消費額も増加しており、 2018 年には約 4.5 兆円、日本人を含めた国内旅行総消費額の 15.4%を占めている。 千葉県における訪日外国人観光客の増加は全国水準を上回っており、2018 年には外国人 宿泊客数が 4 年連続で過去最高の約 359 万人となり、全宿泊客数に対する訪日外国人比率 は約 18%となっている。千葉県では、「観光立県千葉」を掲げて「第 3 次観光立県ちば推進 基本計画」を策定し、2023 年度に年間県内観光客数 2 億人、年間宿泊客数 2,100 万人、外国 人宿泊客数は延べ 500 万人の増加を目標として設定している。 本論文では、こうした訪日外国人の観光消費が千葉県内産業にもたらしている経済効果 について、産業連関分析を用いて経済波及効果を推計することにより分析を行う。 2 千葉県における訪日外国人観光の動向 2.1 千葉県の訪日外国人観光客数の推移 千葉県の日本人観光客も含めた観光入込客数の推移(図 1)をみると、リーマンショック や東日本大震災の影響などにより一時的な落ち込みはあったものの、その後比較的速やか に回復し、長期的には一貫して増加を続けており、2018 年の観光入込客数は 1 億 8,683 万人 (人地点)と 6 年連続で過去最高を更新している。それにともない宿泊客数も 2018 年に 1,923 万人(人泊)とこれも過去最高を更新している1) 訪日外国人の観光入込客数も、東日本大震災後は、風評被害や余震への不安などにより [論 文]

訪日外国人の観光消費が

千葉県にもたらす経済波及効果

八 木 直 人

敬愛大学経済学部准教授

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総 合 地 域 研 究 48 激減したが、円安などの要因もあり比較的早期に増加に転じ、2014 年には震災前の水準を 回復、その後も順調に増加を続け、2018 年には外国人宿泊客数の総数は約 359 万人と 4 年 連続で過去最高を記録した(図 2)。その結果、千葉県観光の宿泊客数に占める訪日外国人 観光客の割合は 2018 年で約 18%にまでのぼっている。 訪日外国人の千葉県への訪問率は、全体で東京都、大阪府に次ぐ第 3 位、また国籍別で みてもすべて 5 位以内であり、国内でも人気の訪問先となっている(図 3、4)。1 人 1 泊当た りの観光消費単価をみると、東京ディズニーリゾートなどを擁することから全国でももっ とも高額となっている。訪日外国人観光の観点でみた場合、千葉県は国内でも有数の観光 消費地であるといえる。 こうした外国人観光客の増加の背景には、中国籍観光客の増加がある。2009 年 7 月に中 国人富裕層の個人観光客に対するビザの発給を開始し、さらに翌年の 2010 年 7 月の中間所 得層へのビザ発給要件の緩和により、全国的に中国人の宿泊客数が大幅に増加している。 千葉県においても中国籍観光客は 2014 年以降大幅に増加し、2018 年には千葉県訪日外国人 宿泊客数のうち 38.1%を占める約 137 万人(人泊)にのぼった。 その他の国・地域では、台湾(約 43 万人泊)、北米(約 32 万人泊)、タイ(約 24 万人泊)と 続いている。これらの地域でも、円高やリーマンショックの影響から 2000 年代後半以降減 少がみられたものの、台湾を中心に 2012 年以降増加が続いている。 一方、訪日外国人の観光入込状況を千葉県内の地域別でみると、宿泊客数の大半が千 葉・東葛飾・印旛の 3 地域に集中しており、県内地域間に大きな格差があることがわかる (図 5)。千葉県観光入込調査の区分では、千葉地域に幕張メッセのある幕張新都心、東葛飾 地域に東京ディズニーリゾート、印旛地域に成田空港など、外国人観光客に対しても集客 力のある施設が集中している。千葉県への訪日外国人観光客の訪問地はこれらの施設が多 くを占めており、県内の他の地域への観光誘致には成功していない現状がうかがえる。ま た上記の 3 地域でも、それぞれ主要な観光施設の立地する千葉市・浦安市・成田市が大半 を占めており、周辺地域への誘導には結びついていない。 こうした格差の要因としては、交通網の整備、文化施設や史跡などの観光資源としての 整備、農産物の特産品の開発や農業 6 次産業化による高付加価値化など、日本人観光客に 対するものと同様の課題も挙げられるが、それと同時にキャッシュレス化や多言語化によ る外国人観光客の受け入れ体制整備の遅れ、外国人に対応した観光プランの構築やプロモ ーションの不足など、外国人に向けた特有の課題も考えられる。 2.2 訪日外国人の増加と観光政策 訪日外国人旅行者の増加の要因としては、アジア諸国の経済成長、円安やビザ要件の緩 和、格安航空会社(LCC)の就航、免税対象商品の品目の拡大などとならんで、それらを 戦略的に組み合わせた官民連携によるインバウンド政策を挙げることができる2) 少子高齢化が進む日本では、定住人口の減少による地域経済の縮小が懸念されており、 地域活性化や雇用増大が見込まれる成長戦略の重点施策のひとつとして、訪日外国人旅行 (所謂インバウンド)が注目されている。政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」の中 で、「観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に」「観光産業を革新し、国際競争力を高め、 我が国の基幹産業に」「すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に」

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論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 49 という「3 つの視点」による「10 の改革」を示し、訪日外国人旅行者数を 2020 年に 4,000 万人、2030 年に 6,000 万人、訪日外国人旅行消費額を 2020 年に 8 兆円、2030 年に 15 兆円と する新目標を掲げている。 千葉県でも国の政策方針を受けて、「観光立県千葉」の実現に向け「第 3 次観光立県ちば 推進基本計画」(2019 ∼ 2023 年度)を策定し、計画の最終年(2023 年度)に年間県内観光客 数 2 億人、年間宿泊客数 2,100 万人とする数値目標を掲げている。特に、外国人宿泊客数は 延べ 500 万人、5 年間で 36%増となる数値目標を設定し、海外向けの情報発信等を強化して インバウンドの誘客促進にさらに力を入れている。 図 1 千葉県の観光入込客数および宿泊客数の推移 1960 70 80 90 2000 10 (年) 200,000 150,000 100,000 50,000 0 40,000 30,000 20,000 10,000 0 (出所) 千葉県観光入込調査報告書 観光入込客(左目盛) 宿泊客数(左目盛) (千人地点) (千人泊) 2005 10 15 200,000 150,000 100,000 50,000 0 25 20 15 10 5 (出所) 千葉県観光入込調査報告書 (%) (年) 2005 10 15 1,500 1,000 500 0 (年) ■日本人 ■外国人  外国シェア(右目盛) 図 2 訪日外国人宿泊客数の内訳の推移  中国  台湾  香港  韓国  北米  欧州

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総 合 地 域 研 究 50 3 訪日外国人観光客による観光消費総額の推計 3.1 推計に用いる観光統計 訪日外国人観光の経済波及効果を分析するためには、千葉県における訪日外国人の観光 消費の規模を把握する必要がある。しかし訪日外国人観光客は多くの国・地域から来てお り、国籍・地域別に 東京都 大阪府 千葉県 京都府 福岡県 奈良県 北海道 愛知県 神奈川県 沖縄県 36.6% 35.6% 25.8% 10.4% 8.9% 7.9% 7.8% 7.5% 6.8% 0.25% 0.21% 0.17% 45.6% ⋮ ⋮ 島根県 高知県 福井県 千葉県 大阪府 福岡県 北海道 東京都 沖縄県 佐賀県 全国平均 鹿児島県 京都府 三重県 群馬県 福井県 (出所) 訪日外国人消費動向調査 (出所) 訪日外国人消費動向調査 20,681円 19,771円 18,335円 18,165円 17,171円 16,063円 15,195円 14,855円 13,737円 4,997円 4,917円 4,757円 21,152円 図 3 訪日外国人の都道府県訪問率 図 4 1人1泊あたり消費単価 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2011年 2012年 2010年 2009年 2008年 3,586 3,239 2,942 2.780 1,806 1,434 1,479 1,045 1,561 1,551 1,819 千葉地域 東葛飾地域 印旗地域 君津地域 その他 図 5 外国人宿泊客数の地域分布の推移(単位:千人泊) (出所) 千葉県観光入込調査報告書

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論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 51 ① 訪日観光客における構成比 ② 1 回の旅行の消費単価の大きさ ③ 1 回の旅行の滞在期間の長さ ④ 購入品目ごとの購入率・購入単価の傾向 ⑤ 都道府県ごとの購入品目の特性 が異なっている。より正確な経済効果を推計するには、①∼⑤の違いを考慮した上で、国 籍・地域別の消費額を集計する必要があるが、残念なことにこれらの情報を網羅的に把握 した観光統計は今のところ存在せず、複数の統計を組み合わせて推計するしかない。 訪日外国人の観光消費額に関する調査としては、観光庁による「訪日外国人消費動向調 査」がある。この統計では「1 人 1 回当たり旅行消費単価」「平均泊数」「1 人 1 泊当たりの 旅行消費単価」「国籍・地域別費目別購入率および購入者単価」「訪問地(都道府県・各運輸 局)別費目別購入率および購入者単価」などについて、国籍・地域別にサンプル調査を行 っており、上記の②∼⑤については、この統計を利用することができる。しかし観光客が 帰国時の空港で回答する調査であるため、消費総額は 1 回の旅行全体、訪問地の情報は 「主な宿泊地」の 1 地域だけの調査となっており、各都道府県内の消費額は把握されていな い。訪日外国人観光客は 1 回の旅行において複数の都道府県を訪れる場合が多く、各都道 府県内の消費額の推計を得ることは難しい。 一方、各都道府県の観光消費に対する調査としては「観光入込客統計」がある。かつて の調査では各県が独自の基準により行われていたため、年度と暦年や実人数と延べ人数が 混在しているなど、比較が難しい面があったが、平成 21 年 12 月に策定・公表された観光 庁による「観光入込客統計に関する共通基準」の導入の働きかけにより、各都道府県の統 計が比較可能になった。共通基準による観光入込客統計では、各都道府県内の観光地点に おいて調査を行っており、県内における消費額が共通基準により把握されている。これに より、①の各県内の観光消費総額の総額を算出することができる。 本章では、上記 2 統計の情報を組み合わせることで、千葉県における訪日外国人の観光 消費額の推計を行う。 3.2 訪日外国人による観光消費総額の推計 千葉県商工労働部観光企画課による「平成 30 年千葉県観光入込調査報告書」では、県内 の観光地点(15 地点)を訪れた観光客を対象に、県内訪問地点数、観光消費額等について 四半期ごとに観光地点パラメータ調査(サンプル調査)を行い、属性別(観光目的・ビジネ ス目的・訪日外国人、県外・県内、宿泊・日帰り)の構成比、平均訪問地点数、観光消費額単 価を算出している。この調査結果に基づき推計された平成 30 年の観光入込客数(実人数) は、約 10,530 万人(単位:人回)となった。平成 30 年の 1 年間の観光消費額は約 1 兆 3,424 億円、そのうち宿泊客が約 7,550 億円、日帰り客が約 5,874 億円となった。 そのうち、訪日外国人についての推計結果が表 1 である。訪日外国人の総数の推計値は 約 347 万人(単位:人回)、そのうち宿泊客が約 325 万人、日帰り客が約 21 万人であった。 これに消費単価の推計値を掛け合わせると、訪日外国人の消費総額は宿泊客で 1,764 億 3,500 万円、日帰り客で 15 億 2,100 万円、合計で 1,779 億 5,600 万円となった。 千葉県観光入込調査報告書では、国・地域別の外国人宿泊客数も推計している(表 2)。

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総 合 地 域 研 究 52 訪日外国人は、国・地域によって観光目的や消費内容が大きく異なり、観光消費の経済波 及効果も大きく異なり、観光消費を国・地域別に分けて推計することにより、より正確な 経済波及効果の推計が可能になる。しかし、外国人観光客は、国・地域によって旅行 1 回 当たりの消費単価、1 泊当たりの消費単価も異なるが、千葉県観光入込調査では、国・地 域ごとの消費単価は掲載されていない。そこで「訪日外国人消費動向調査」を用いて、国 表 1 訪日外国人観光の観光地点パラメータ調査結果 宿泊 1∼3月 374 38,153 14,280 38 8,613 326 4∼6月 540 30,302 16,360 17 6,347 108 7∼9月 522 29,977 15,656 159 6,843 1,087 10∼12月 420 37,817 15,876 ― 7,394 1∼3月 292 51,103 14,911 ― 6,619 4∼6月 379 105,094 39,778 ― 7,213 7∼9月 395 73,676 29,087 ― 7,892 10∼12月 333 91,547 30,488 ― 7,324 観光目的 ビジネス   兼 観光目的 日帰り 宿泊客 (千人回) 176,435 1,521 177,957 消費単価 (円/人回) 消費総額 (百万円) 日帰り客 (千人回) 消費単価 (円/人回) 消費総額 (百万円) (出所)  平成30年千葉県観光入込調査報告書 ― ― ― ― ― 消費総額小計 消費総額合計 表 2 国・地域別の外国人宿泊客数(単位:千人泊) アジア 国・地域 宿泊客数 1,365 433 114 149 75 244 316 171 119 511 シェア 38.1% 12.1% 3.2% 4.2% 2.1% 6.8% 8.8% 4.8% 3.3% 14.2% 中国 台湾 香港 韓国 シンガ ポール タイ 北米 欧州 オースト ラリア その他・ 不明 * 千葉県観光入込調査ではマレーシア、ベトナムも掲載されている。 (出所)  平成30年千葉県観光入込調査報告書 * 表 3 国籍・地域別の消費単価 アジア 国・地域 旅行消費単価 192,931 99,398 136,039 69,457 160,076 104,143 165,223 185,740 198,611 181,879 9.7 6.8 6.3 4.4 8.3 8.8 12.8 15.1 13.3 15.9 19,982 14,692 21,704 15,954 19,285 11,789 12,891 12,291 14,941 11,403 中国 台湾 香港 韓国 シンガ ポール タイ 北米 欧州 オーストラリア その他・不明  1)マレーシア、ベトナムについても計算している。  2)千葉県観光入込調査の区分と合わせるために、北米は「アメリカ合衆国・カナダ」の加重平均、欧州は「英国・ドイ ツ・フランス・イタリア・スペイン」の加重平均を用いた。  3)訪日外国人消費動向調査2018年(表3−1)国籍・地域別1人1回当たり旅行消費単価。  4)訪日外国人消費動向調査2018年(表4−1)国籍 地域別平均泊数  5)旅行消費単価(円/泊)=旅行消費単価(円/人回)÷平均泊数(泊) 2) 2) 1) 3) (円/人回) 平均泊数4) (泊) 旅行消費単価5) (円/泊)

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論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 53 籍別の観光消費増額を推計する。 「千葉県観光入込調査」で報告している国・地域別統計は、宿泊客数(千人泊)となって いる。そこで、「訪日外国人消費動向調査 2018 年」の「(表 3 − 1)国籍地域別 1 人 1 回当た り旅行消費単価(円/人回)」を「(表 4 − 1)国籍 地域別平均泊数(泊)」で割り、国籍・ 地域別 1 泊当たり消費単価(円/泊)を算出した(表 3)。 「千葉県観光入込調査」と「訪日外国人消費動向調査」の数値は異なる調査であるため、 数値の間に整合性はない。そこで千葉県観光入込調査の宿泊客数と訪日外国人消費動向調 査の消費単価をかけた消費総額を用いて、 の式によって国籍別の相対的なシェアを算出した。 次に、表 4 のシェアを表 1 の旅行消費増額 1,779.57 億円に掛けて、国籍・地域別に按分し た。その結果、国籍・地域別の訪日外国人旅行消費総額は図 6 のようになった。内訳をみ ると、アジア国籍の旅行者の消費が約 1,352 億円となり、全体の約 76%を占めている。特に 中国籍旅行者は宿泊客数で最も大きい約 38%を占め、それに加えて 1 泊当たりの消費単価 1 万 9,982 円/泊と相対的に高いため、観光消費総額では約 847 億円(約 47.6%)と全体の半 分近くを占めた。次いで台湾からの旅行者が約 198 億円(約 11.1%)、北米が約 127 億円(約 7.1%)と続いた。 3.3 費目別旅行消費額の推計 産業連関分析を行うためには、上で求めた総消費額を産業連関表の各部門に割り付ける 必要があるが、「千葉県観光入込調査」では産業連関表の部門と対応するような消費項目別 の単価は公表されていない。そこで訪日外国人消費動向調査の「(表 2 − 1)国籍・地域(21 国籍別消費総額のシェア= 宿泊客数(泊)× 消費単価(円/泊) 「宿泊客数(泊)× 消費単価(円/泊)」の総和) 表 4 国籍・地域別の旅行消費総額シェア(推計値) アジア 国・地域 旅行消費総額 47.6% 11.1% 4.3% 4.1% 2.5% 5.0% 7.1% 3.7% 3.1% 10.2% 中国 台湾 香港 韓国 シンガ ポール タイ 北米 欧州 オースト ラリア その他・ 不明 シェア 図 6 国籍・地域別旅行消費総額(推計値) アジア 1,352億円 中国 847億円 台湾 198億円 香港 77億円 北米 127億円 その他 181億円 欧州 65億円 オーストラリア 55億円 ベトナム 6億円 韓国 74億円 マレーシア 16億円 タイ 89億円 シンガポール 45億円

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区分)別費目別購入率および購入者単価」を用いて費目別の一人当たり購入額の推計し、 費目別の購入額の構成比を計算した。 図 7 は、費目別購入構成比の推計値のうち大項目の内訳を表したものである。欧州・北 米・オーストラリア国籍の旅行者の構成比は概ね似た傾向にあり、宿泊費の割合が 40%以 上を占めている。一方、アジアからの旅行者の購入額の構成比にはばらつきがあるが、総 じて宿泊費の割合が低く買物代の割合が高いという傾向がある。特に中国籍の旅行者は購 入額の過半を買物代に使っている。 このように国・地域によって旅行中の消費費目の構成比には大きな差がある。図 8 およ び図 9 は、このうち中国および北米から旅行者による観光消費(全国)の詳細な費目別購入 額の構成比を表したものである。中国籍の旅行者は、購入額のうち買物代が約 58%を占め ており、その内訳も化粧品・香水 22.4%、医療品 6%、医療 5.7%、靴・かばん・革製品 5.4%と、「モノ消費」の傾向が高い。一方、米国籍の旅行者は買物代の比率は約 14%しかな く、宿泊費・飲食費といった「コト消費」の傾向が高いことがわかる。 次に、図 6 でもとめた国籍・地域別旅行消費総額に国籍・地域別の費目別購入額の構成 比を掛けて、国籍・地域別の観光消費額を推計した。日帰り客については、宿泊費をのぞ いた購入額構成比を用いて推計した。図 10 は国籍・地域別に推計した費目別観光消費(大 項目)の総額を表している。 図 11 は、千葉県に生じる訪日外国人観光消費の中で、中国籍旅行者の占める割合につい て表したものである。中国籍旅行者の消費は全体の約 47.6%にのぼり、千葉県の訪日外国 人観光消費の中で非常に大きな割合を占めているため、千葉県の観光消費総額の内訳は中 国籍旅行者の消費特性に大きく影響を受ける。図 11 で示したように中国籍旅行者の観光消 費の特徴は買物代の割合が高いことであり、特に化粧品・香水の割合が約 22%を占めてい る。これを反映して、訪日外国人全体の観光消費においても化粧品・香水の消費額が 10% 以上を占めることとなった。 総 合 地 域 研 究 54 宿泊費 飲食費 交通費 娯楽等サービス費 買物代 その他 韓国 台湾 香港 中国 タイ シンガポール マレーシア ベトナム 欧州 北米 オーストラリア 図 7 1人1泊あたり費目別購入額(大項目)の構成比(推計値) 30% 23% 27% 17% 27% 36% 30% 27% 42% 25% 8% 21% 42% 26% 39% 24% 24% 9% 9% 19% 31% 46% 37% 10% 23% 58% 39% 26% 34% 41% 15% 15% 14% 14% 14% 16% 15% 6% 21% 11% 11% 23% 11% 20%

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論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 55 図 8 中国籍旅行者の費目別購入額の構成比(推計値) 医薬品 6.0% 衣類 5.7% 化粧品・香水 22.4% 中国 交通費 6.1% 飲食費 15.3% 宿泊費 17.3% 買物代 58.1% 娯楽サービス 3.1% テーマパーク 0.9% その他娯楽等サービス費 0.9% その他の買物 11.4% 菓子類 3.8% 電気製品・家電等 3.5% その他 1.3% 靴・かばん・革製品 5.4% 図 9 北米国籍旅行者の費目別購入額の構成比(推計値) 北米 交通費 13.9% 娯楽サービス 4.0% その他 2.3% その他 0.0% 酒類 1.3% 衣類 2.8% 現地ツアー・ 観光ガイド 0.7% その他の買物 5.1% 飲食費 25.9% 宿泊費 42.1% 買物代 14.1% 美術館・ 博物館ほか 0.9% 民芸品・伝統工芸品 1.4% 菓子類 1.6% その他食料品・飲料・たばこ 2.0%

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総 合 地 域 研 究 56 図10 費目別旅行消費総額(大項目)の推計値 中国 台湾 その他 北米 タイ 香港 韓国 欧州 オーストラリア シンガポール マレーシア ベトナム その他 約847億円 約89億円 約77億円 約74億円 約65億円 約55億円 約45億円 約6億円 約16億円 約181億円 宿泊費 飲食費 交通費 買物代 娯楽等サービス費 その他 約198億円 約181億円 約127億円 中国籍 47.6% 中国籍以外 52.4% 医薬品 2.8% 衣類 2.7% 靴・かばん・ 革製品 2.6% 菓子類 1.8% 電気製品 1.7% 健康グッズ・ トイレタリー 1.4% その他の 買物 4.0% 図 11 中国籍旅行者による観光消費の割合(推計値) 化粧品・香水 10.7% 買 物 代 買物代以外 19.9%

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4 訪日外国人観光消費による経済波及効果の推計 4.1 費目別観光消費の産業連関表部門分類への割付 この章では、これまで計算した千葉県における訪日外国人の観光消費支出を用いて、訪 日外国人の観光消費が千葉県にもたらす経済波及効果を推計する。産業連関分析には「平 成 23 年千葉県産業連関表(37 部門)」を用いる。経済波及効果推計の流れは、①産業連関 表部門別消費額の算出、②購入者価格から生産者価格への変換、③直接効果推計における 県内自給率の調整、④産業連関表を用いた経済波及効果の分析、の順となる。 まず、各国籍・地域ごとと日帰り・宿泊ごとに推計された費目別観光消費総額をすべて 集計し、表 5 のルールで産業連関表の各部門へ割り付けた。その結果、千葉県の訪日外国 人観光消費によって各産業に発生する最終需要総額は、図 12 のようになった。もっとも需 要額が大きいのは、娯楽等サービス費の大半が割り付けられた「対個人サービス」部門で あり、約 8,490 億円であった。次に需要が大きい部門は、中国籍旅行者による化粧品・香水、 医薬品の購入比率の影響から「化学製品」部門となった。続いて、買物代の対応項目が多 い「その他の製造工業製品」部門、飲食料品と続いている。 4.2 購入者価格から生産者価格への変換 産業部門別に割り付けられた観光消費額は、購入者価格(小売価格)ベースである。購 入者価格には、生産者価格(工場で出荷されるときの価格)に、国内貨物運賃(運輸マージン) および商業マージンが上乗せされているため、第一次産業及び第二次産業の各産業で発生 する「商業マージン」「運輸マージン」をそれぞれ「商業」「運輸」の産業に配分し、生産 者価格ベースの観光消費額に変換した。なお、商業マージン率(商業マージンを購入者価格 で除した値)および運輸マージン率は、新潟県産業連関表の投入係数表(取引基本表)の中 間需要の列部門ごとに、原材料等の投入額を当該部門の生産額で除して得た係数表におけ る「商業」および「運輸」の各行の数値を引用した。 4.3 直接効果の推計における県内自給率の調整 経済波及効果を分析するには、旅行客・観光客の消費による最終需要の発生のうち、千 葉県内の財・サービスの生産を直接誘発する県内需要を求める必要がある。県内需要は、 生産者価格ベースの最終需要に県内自給率を乗じることで求められる。県内需要の推計に 用いる県内自給率は、平成 23 年千葉県産業連関表における県内自給率(1 −移輸入係数)を 用いているが、旅行客・観光客の消費額すべてが県内産業への需要であると考えられる部 門(商業、運輸、対個人サービス部門)については県内自給率を 100%と設定した。 論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 57

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総 合 地 域 研 究 58 表 5 費目別旅行消費総額 日帰り 宿泊 合計 支出項目 宿泊費 45,490.2 45,490.2 対個人サービス 飲食費 413.8 33,909.0 34,322.8 対個人サービス 交通費 200.0 16,032.9 16,233.0  航空(日本国内移動のみ) 7.8 629.0 636.8 運輸・郵便  Japan Rail Pass 48.0 3,526.8 3,574.7 運輸・郵便  新幹線・鉄道・地下鉄・モノレール 94.6 7,852.4 7,947.0 運輸・郵便  バス 9.1 716.0 725.1 運輸・郵便  タクシー 19.9 1,572.3 1,592.2 運輸・郵便  レンタカー 18.4 1,555.6 1,574.0 対事業所サービス  船舶(日本国内移動のみ) 0.7 54.6 55.3 運輸・郵便  その他交通費 1.5 126.4 127.9 石油・石炭製品(50%) 運輸・郵便(50%) 娯楽等サービス費 72.1 6,010.0 6,082.1  現地ツアー・観光ガイド 8.4 682.2 690.6 対個人サービス  ゴルフ場 0.6 57.2 57.9 対個人サービス  テーマパーク 19.9 1,707.5 1,727.4 対個人サービス  舞台・音楽鑑賞 2.7 225.5 228.2 対個人サービス  スポーツ観戦 1.0 76.2 77.2 対個人サービス  美術館・博物館・動植物園・水族館 12.4 967.6 979.9 教育・研究  スキー場リフト 5.5 417.3 422.8 対個人サービス  温泉・温浴施設・エステ・リラクゼーション 3.9 323.6 327.6 対個人サービス  マッサージ・医療費 3.2 287.2 290.4 対個人サービス  展示会・コンベンション参加費 0.8 66.9 67.7 対個人サービス  レンタル料(レンタカーを除く) 0.8 62.8 63.6 対事業所サービス  その他娯楽等サービス費 12.8 1,136.0 1,148.8 対個人サービス 買物代 834.1 74,906.6 75,740.6  菓子類 79.8 6,993.3 7,073.1 飲食料品  酒類 20.7 1,700.6 1,721.3 飲食料品  生鮮農産物 5.2 446.4 451.6 農林水産業  その他食料品・飲料・たばこ 48.1 4,070.6 4,118.7 飲食料品  化粧品・香水 232.6 21,845.2 22,077.8 化学製品  医薬品 79.2 7,348.8 7,427.9 化学製品  健康グッズ・トイレタリー 39.6 3,653.8 3,693.4 その他の製造工業製品  衣類 107.3 9,290.4 9,397.7 繊維製品  靴・かばん・革製品 79.1 7,122.9 7,201.9 その他の製造工業製品  電気製品(デジタルカメラ/PC/家電等) 51.6 4,604.0 4,655.6 電気機械  時計・フィルムカメラ 33.5 3,074.8 3,108.3 その他の製造工業製品  宝石・貴金属 14.7 1,318.4 1,333.1 その他の製造工業製品  民芸品・伝統工芸品 15.4 1,232.2 1,247.5 パルプ・紙・木製品(50%)  窯業・土石製品(50%)  本・雑誌・ガイドブックなど 4.6 365.5 370.1 その他の製造工業製品  音楽・映像・ゲームなどソフトウェア 7.2 613.0 620.2 その他の製造工業製品  その他買物代 15.5 1,226.8 1,242.4 その他の製造工業製品 その他の製造工業製品(25%) その他 1.0 86.3 87.3 運輸・郵便(25%) 対個人サービス(50%) 1,521.0 17,6435.0 177,956.0 産業連関表の割付先部門 (単位:百万円)

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論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 59 図12 最終需要(購入者価格ベース)の総額(推計値) 対個人サービス 化学製品 その他の製造工業製品 運輸・郵便 飲食料品 繊維製品 情報・通信機器 電気機械 対事業所サービス 教育・研究 窯業・土石製品 パルプ・紙・木製品 農林水産業 医療・福祉 石油・石炭製品 846.0億円 295.1億円 175.9億円 146.2億円 129.1億円 94.0億円 23.3億円 23.3億円 16.4億円 9.8億円 6.2億円 6.2億円 4.5億円 2.9億円 0.6億円 韓国 台湾 香港 オーストラリア中国 シンガポール 欧州 北米 その他 マレーシア ベトナム オーストラリア タイ 図13 最終需要(生産者価格ベース)と県内需要の割合(推計値) 対個人サービス 化学製品 商業 運輸・郵便 その他の製造工業製品 飲食料品 繊維製品 電気機械 情報・通信機器 対事業所サービス 教育・研究 窯業・土石製品 パルプ・紙・木製品 農林水産業 医療・福祉 約846.0億円 約223.9億円 約216.6億円 約116.4億円 約116.3億円 約84.1億円 約47.3億円 約18.8億円 約18.4億円 約16.4億円 約9.8億円 約4.6億円 約4.3億円 約3.2億円 約2.9億円 47% 100% 100% 100% ■ 県内需要 ■ 他県への需要

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4.4 経済波及効果の推計結果 産業連関分析の結果、訪日外国人の観光消費が千葉県にもたらす県内需要の総額は、 1,406 億 193 万円であった。県内需要による生産誘発額は、総額で約 2,083 億 9,460 万円とな った。内訳をみると、県内需要と等しい直接効果に対して 1 次波及効果は 4,255 億 5,342 万 円、2 次波及効果は 252 億 3,925 万円となった。総合効果が直接効果の何倍であるかを示す 波及倍率は、1.48 倍であった。 また、生産誘発額のうち、新たに生み出された粗付加価値の額である粗付加価値誘発額 は、1,163 億 8,849 万円となった。内訳をみると、直接効果が 791 億 89 万円、1 次波及効果 が 212 億 6,639 万円、2 次波及効果が 160 億 2,120 万円である。粗付加価値誘発額のうち、雇 用者の所得として分配された額である雇用者所得誘発額は 583 億 8,634 万円となった。内訳 は、直接効果が 430 億 3,397 万円、1 次波及効果が 92 億 9,503 万円、1 次波及効果が 60 億 5,735 万円である。また県内需要による雇用者誘発数は、約 1 万 9,693 人となった。 部門別の経済波及効果の特徴をみてみると、経済波及効果がもっとも大きいのは、観光 消費のうち宿泊費および飲食費のすべてと娯楽等サービス費の大半を含む「対個人サービ ス」部門で、総額約 890 億円の生産誘発額、約 527 億円の付加価値誘発額をもたらしてい る。しかし効果の内訳をみると、生産誘発額の大半が県内需要による直接効果であり、波 及倍率は 1.05 倍しかない。反対に「不動産」部門では、全く県内需要がなく直接効果がな いにもかかわらず、1 次および 2 次波及効果だけで約 103 億円の生産誘発額、約 85 億円の付 加価値誘発額をもたらしている。同様のことは「電気・ガス・熱供給」「情報・通信」「石 油・石炭製品」「金融・保険」の各部門についてもいえる。ただし、「不動産」部門は雇用 への影響は少なく、雇用者所得誘発額は約 3 億円、雇用者誘発数は約 78 人に過ぎない。 国籍・地域別の効果では、中国籍旅行者による波及効果が各部門とも 40%以上を占めて いる。特に中国籍旅行者の支出割合の高い化粧品・香水や医薬品などを含む「化学製品」 部門では、約 141 億円の生産誘発額が生じており、その約 79%が中国籍旅行者の消費によ る。 総 合 地 域 研 究 60 表 6 産業連関分析による経済波及効果 1 最終需要増加額 需要増加額 177,956.00 140,601.93 県内需要額 (単位:百万円) 3 波及倍率 生産誘発額合計÷需要増加額 生産誘発額合計÷県内需要額 1.17 1.48 (単位:倍) 4 雇用者誘発数 19,693.43人 2 経済波及効果 生産誘発額 合計 直接効果 1次波及効果 2次波及効果 208,394.60 140,601.93 42,553.42 25,239.25 116,388.49 79,100.89 21,266.39 16,021.20 58,386.34 43,033.97 9,295.03 6,057.35 粗付加価値誘発額 雇用者所得誘発額 (単位:百万円)

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論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 61 図14 部門別生産誘発効果(上位15部門・推計値) 対個人サービス 商業 運輸・郵便 化学製品 不動産 対事業所サービス 電力・ガス・熱供給 飲食料品 情報通信 金融・保険 その他の製造工業製品 石油・石炭製品 教育・研究 医療・福祉 水道 約890億円 約287億円 約230億円 約141億円 約103億円 約73億円 約55億円 約52億円 約40億円 約31億円 約31億円 約27億円 約24億円 約16億円 約14億円 ■ 直接効果 ■ 1次波及効果 ■ 2次波及効果 図15 部門別付加価値誘発効果(上位15部門・推計値) 対個人サービス 商業 運輸・郵便 不動産 対事業所サービス 化学製品 情報通信 金融・保険 教育・研究 飲食料品 その他の製造工業製品 医療・福祉 電力・ガス・熱供給 廃棄物処理 水道 約527億円 約203億円 約117億円 約85億円 約46億円 約23億円 約23億円 約22億円 約20億円 約19億円 約13億円 約10億円 約10億円 約8億円 約8億円 ■ 直接効果 ■ 1次波及効果 ■ 2次波及効果

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総 合 地 域 研 究 62 図16 部門別雇用者所得誘発額(上位15部門・推計値) 対個人サービス 商業 運輸・郵便 対事業所サービス 教育・研究 金融・保険 その他の製造工業製品 医療・福祉 化学製品 飲食料品 情報通信 廃棄物処理 不動産 非営利サービス 建設 約276億円 約129億円 約59億円 約28億円 約17億円 約11億円 約9億円 約8億円 約8億円 約8億円 約7億円 約5億円 約3億円 約3億円 約2億円 ■ 直接効果 ■ 1次波及効果 ■ 2次波及効果 図17 部門別雇用者誘発数(上位15部門・推計値) 対個人サービス 商業 運輸・郵便 対事業所サービス 教育・研究 その他の製造工業製品 飲食料品 金融・保険 医療・福祉 情報通信 化学製品 廃棄物処理 不動産 建設 非営利サービス 約11,641人 約4,032人 約1,532人 約847人 約230人 約208人 約188人 約162人 約160人 約105人 約103人 約90人 約78人 約74人 約53人 ■ 直接効果 ■ 1次波及効果 ■ 2次波及効果

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5 おわりに 本論文では、千葉県内における訪日外国人の観光消費の特性と県内産業にもたらす経済 効果を分析した。千葉県内の訪日外国人観光消費額は「平成 30 年千葉県観光入込統計」、 国籍・地域別の観光消費額は「2018 年訪日外国人消費動向調査」のデータにもとづき、平 成 23 年千葉県産業連関表を用いて経済波及効果を計算した。 その結果、2018(平成 30)年の 1 年間の経済波及効果は、生産誘発額の総額で約 2,083 億 9,460 万円、粗付加価値誘発額は 1,163 億 8,849 万円、雇用者所得誘発額は 583 億 8,634 万円 となった。また経済波及効果によって生み出される雇用者誘発数は約 2 万人にのぼること がわかった。国籍別では、観光消費総額に占める中国籍旅行者の消費額は 47.6%に上り、 千葉県観光の経済効果に大きな地位占めると同時に、部門別の経済波及効果の特性にも影 響を与えていることがわかった。 UNWTO の予測によれば、日本を含むアジア地域における 2020 年∼ 2030 年の国際旅行 客の年間平均成長率は、45%にのぼると予測されている。千葉県では、「観光立県千葉」の 実現に向け、「第 3 次観光立県ちば推進基本計画」(2019 ∼ 2023 年度)を策定し、計画最終 年度の 2023 年度には、年間県内観光客数 2 億人、年間宿泊客数 2,100 万人とする目標を掲 げている。特に、外国人宿泊客数は延べ 500 万人の増加を目標として設定し、海外向けの 情報発信等などインバウンドの誘客促進を強化している。訪日外国人の千葉県の訪問率は、 全体で東京都、大阪府に次ぐ第 3 位、また国籍別でみてもすべてで 5 位以内であり、国内 でも人気の訪問先となっている。しかし県内の訪問地をみると、成田空港のある印旛地域、 ディズニーランドのある浦安を含む東葛飾、幕張新都心を含む千葉地域で合計 97%以上を 占めており、香取・海匝・山武・長生・夷隅・安房・君津地域を合計しても 3%に満たない。 こうした県内訪問率の大きな格差は、今後の千葉県インバウンド観光の大きな課題である。 論     文 訪 日 外 国 人 の 観 光 消 費 が 千 葉 県 に も た ら す 経 済 波 及 効 果 63 図18 中国籍観光客による生産波及効果の割合(上位15部門・推計値) 対個人サービス 商業 運輸・郵便 化学製品 不動産 対事業所サービス 電力・ガス・熱供給 飲食料品 情報通信 金融・保険 その他の製造工業製品 石油・石炭製品 教育・研究 57% 35% 中国 その他の国・地域 38% 79% 43% 42% 43% 40% 43% 43% 61% 55% 44%

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本論文の 3 章で示したとおり、観光客の国籍により観光消費における特性が異なる。ア ジアからの観光客は買い物の占める割合が高く「モノ消費」の傾向があり、欧米やオース トラリアからの観光客は宿泊費・飲食費の占める割合が高く「コト消費」の傾向がある。 近年のアジアの経済成長により価値観やライフスタイルの多様化が進む中で、アジアから の観光客においても「コト消費」へのシフトが顕著となってきている。また現在のところ 県内の外国人観光客の過半はアジアからの団体客が占めているが、欧米からの観光客は個 人客が多く、アジアからの観光客も個人客へのシフトが徐々に進みつつある。 観光客が求めるニーズが多様化し、とりわけグルメや体験型観光への関心が高まれば、 地域固有の資源を活用した飲食や宿泊のニーズが高まり、これまで訪日外国人が訪れなか った旅館・民宿・民泊などを利用した小規模な観光施設の利用も広がる可能性がある。こ うした訪日観光の「コト消費」化や個人客化へのシフトを、これまでインバウンド観光が 未開拓であった県内周辺地域に対する潜在的観光ニーズに変えていくことが必要である。 (注) 1) 観光入込客数の「延べ実数」は、「人地点」「人泊」の単位で計測する。これは観光地点及び行祭事・イベント ごとの観光入込客の総数を表す。一方、「実人数(人回)」は当該県内の観光地点を訪れた観光入込客をカウント した値であり、1 人の観光入込客が県内の複数の観光地点を訪れたとしても、1 人回と数える。 2)「観光立国」というキーワードを掲げたのは小泉内閣時の 2003 年にスタートした「ビジット・ジャパン・キャ ンペーン」であったが、観光消費額を数値目標として掲げたのは 2007 年の「観光立国推進基本計画」である。 その後、2015 年 6 月の第 5 回観光立国推進閣僚会議と、それを受けて策定された 2016 年 3 月の「明日の日本を支 える観光ビジョン」において、訪日外国人観光客の観光振興に関する消費額の目標値が設定され、翌年の観光立 国推進基本計画に拡大し盛り込まれた。 (参考文献)

[1] 稲田義久・下田充(2018)「訪日外国人消費の経済効果」『APIR Trend Watch No. 48』アジア太平洋研究所 [2] 観光庁『訪日外国人消費動向調査 2018 年 年次報告書』 [3] 観光庁(2013)『観光入込客統計に関する共通基準』 [4] 観光庁(2019)『旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究 2017』 [5] 千葉銀行(2018)『新たな局面を迎える観光立県“ちば”』 [6] 千葉県(2019)『3 次観光立県ちば推進基本計画』 [7] 千葉県商工労働部観光企画課(2019)『平成 30 年千葉県観光入込調査報告書』 [8] 日本旅行業協会(2019)『数字で見る旅行業 2019』 総 合 地 域 研 究 64 やぎ・なおと Naoto Yagi

参照

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