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バングラデシュの障害者 -- もう一人のマグサイサイ賞受賞者 (フォトエッセイ)

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Academic year: 2021

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バングラデシュの障害者 -- もう一人のマグサイサ

イ賞受賞者 (フォトエッセイ)

著者

山形 辰史

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

182

ページ

34-37

発行年

2010-11

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004382

(2)

パリクラマーの最初の一歩は五体投地 CDDのノーマン・カーン代表(右)と同僚のバリ氏 人権擁護のための人間の鎖。左から2人目がガフル・ミア氏、 3人目がバチュ・ミア氏

バングラデシュの障害者

―もう一人のマグサイサイ賞受賞者―

写真・文

 

山 形 辰 史

Tatsufumi Yamagata

■ フォトエッセイ ■ ●バングラデシュから世界へ   つい数年前まで、バングラデシュと言えば 洪水や船の沈没しかニュースにならず、全く 無力な最貧国とのみ認識されてきた。しかし こ の 国 に は、 世 界 に 誇 る 二 つ の 発 明 が あ る。 ひとつはムハマド・ユヌスとグラミン銀行が ノーベル平和賞を受賞したことによって有名 になったマイクロファイナンス(貧困層への 小規模金融)である。二つ目は、同国の国際 下痢性疾病研究センターが開発した経口補水 塩療法 (下痢で脱水症状を起こした乳児に、 水 と塩と糖分を混ぜて飲ませる治療法) である。 そしてこの夏、世界に普及しうる三つ目の発 明 の 推 進 者 が、 「 ア ジ ア の ノ ー ベ ル 賞 」と も 呼 ば れ る マ グ サ イ サ イ 賞 を 受 賞 し た。 そ の 発 明 と は、 バ ン グ ラ デ シ ュ の「 障 害 開 発 セ ン タ ー ( C D D : Ce ntr e fo r D ev elo pm en t in D isa bili ty ) が 国 際 N G O の H an dic ap In ter na tio na l ( H I ) と 開 発 し た C A H D ( Co m m un ity A pp ro ac he s to H an dic ap in D ev elo pm en t ) と い う 障 害 者 支 援 の 展 開 方 法 で あ る 。 C D D の ノ ー マ ン ・ カ ー ン 代 表 は 、 八 月 三 一 日 、 秋 葉 忠 利 広 島 市 長 ら と 共 に マ グ サ イ サ イ 賞 を 授 与 さ れ た 。 ●CAHDとは   CAHDは、障害者の地域社会での生活を 重視し、地域開発NGOの障害課題への取り 組みを促すひとつの手法である。障害者への アプローチとして先進国では近年、施設の建 物の中ではなく、障害者の住む地域での活動 を 重 視 す る「 地 域 に 根 ざ し た リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン( C B R )」 が 指 向 さ れ て き た。 し か しこの方法を、先進国と全く異なる環境の開

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《人間の鎖》を意味する横断幕をかかげ人権擁護を訴える人々。 発途上国においてどのように応用すべきかについては、多くの人々が 頭を悩ませてきた。   そこでHIとCDDが採用した方法は、バングラデシュの農村に数 多く展開している開発NGOに対して「障害と開発」に関して再教育 を行い、コミュニティで活動するNGOの能力を開発して、障害者の エンパワメントとコミュニティ開発を両立させることであった。この 方法は、障害者の住む社会の側を、より障害者に優しいものへと改変 し て い こ う と す る「 障 害 の 社 会 モ デ ル 」と も 整 合 的 で あ っ た。 ( よ り 詳 し く は、 筆 者 の 別 稿[ http://www .ide.go.jp/Japanese/P ublish/Download/ Report/2009/pdf/2009_110_ch3.pdf ]を参照いただきたい。 )   筆者は昨年一二月に、CDDの紹介により、CAHDを実践してい る地方のNGOの活動を見学する機会を得た。そこで以下では、バン グラデシュの農村で、障害者がどのように生活しているか、そしてそ の中でCAHDがどのように用いられているかを紹介する。 ●バングラデシュの障害者   まず、バングラデシュ北部のガイバンダ県を中心に活動するGUK ( Gana Unnayan K endra : 大衆開発センター) というNGOを訪問した。 GUKは、そのリーダーと障害担当スタッフがCDDで研修を受けた 後、障害者とその地域に対する活動を強化している。

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ルプラル氏の居住地域 ソヘル氏の手話を見つめるルプラル氏 GUKから5000タカ(約6000円)融資を受け、自宅前で竹細工に取り組むガフル・ミア氏   まる二日間GUKの障害担当者たちと行動 を共にし、彼らの知識の深さや地域の人々の 生活を見渡す広い視野、そして献身的な態度 に非常に心を打たれた。しかしそれよりも強 く 印 象 づ け ら れ た の は、 地 域 に 住 む 障 害 者、 中でも聴覚障害者の孤立と、おそらくはその ことによる受動的態度であった。例えば写真 に示した聴覚障害者のルプラルさんは、GU Kスタッフのソヘルさんの手話を見つめるだ けで、自分から手話で返事をするのはまれで あった。そして、だいたい何をするにも(手 話を使わない)家族の指示で動いている様子 であった。これは日本で、そして首都のダッ カ で も 手 話 で 能 弁 に 会 話 を 交 わ す「 ろ う 者 」 達を見慣れた筆者にとって、とても理解しが たいことであった。なぜルプ ラルさんはもっと手話を勉強 しようとか、手話で話しかけ ようと思わないのだろうか。   その原因はどうも「周囲に 手話を使える人がほとんど皆 無」という環境に起因してい るようであった。というのは、その地域は他 に五人の聴覚障害者が住んでいるが、歩いて 会いに行くには遠すぎたり、性別や年齢層が かなり異なっていて話し相手になりにくかっ たりするので、ルプラルさんが一生懸命手話 を勉強しようとする誘因に欠けているのであ る。日本やダッカにおいては、ろう学校に通 うことによって同世代の聴覚障害者と知り合 い、彼らとの人間関係を深めるため、自然に 手話をマスターすることになる。しかしその ような環境にないバングラデシュの農村地域 の障害者は、仲間作りをすることすら、かな りの努力を要することなのである。   これは程度の差こそあれ、開発途上国の農 村に共通する問題のように思われた。もとも と 交 通 や 通 信 が 整 備 さ れ て い な い 地 域 で は、

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GUKからの融資で雑貨屋を建てたバチュ・ミア氏 SNKSのワーカーのイムラン氏と身体障害児のエモン君 イムラン氏によるマッサージ イムラン氏が障害児宅に設置した歩行練習用具 やまがた たつふみ/アジア経済研究所 貧困削減・社会開発グループ 専門は開発経済学。著作に「フィリピン障害者の生計」(森壮也と共著)森壮也編『途 上国障害者の貧困削減』岩波書店、2010年、がある。 障害者同士が知り合ったり、何らかの共同行 動を起こしたりするためにはかなりの努力が 要るのである。 ●障害者の自立に向けて   つぎに訪れた西部のラッシャヒ県では、そ のバガ地区で障害者支援を強化しているSN K S( Samata Nari Kallyan Sangstha : 平 等 女性厚生協会)というNGOと共に障害者宅 を訪問した。SNKSも、そのリーダーや担 当 者 が C D D で 研 修 を 受 け て い た。 若い担当者は、とても献身的に地域 の障害者(中でも身体障害児)の把 握とリハビリに尽くしていた。   し か し こ こ で 考 え さ せ ら れ た の は、障害者に対して尽くそうとする あまり、障害者の自立を促す指向性 が、バングラデシュのNGO全体に 薄いことである。 CAHDによって、 障害に対するアプローチが農村にま で 広 が り つ つ あ る 現 在、 障 害 者 自 立 の た め に ど の よ う な 方 向 付 け を す べ き か が、 バ ン グ ラ デ シ ュ の 次 な る 課 題となる。

参照

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