Title
労働者の健康管理に対する健康保養型観光の有用性の検
討
Author(s)
出口, 宝
Citation
名桜大学紀要 = THE MEIO UNIVERSITY BULLETIN(13):
53-61
Issue Date
2007
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/8048
名桜大学紀要13号 53-61(2007)
労働者の健康管理 に対する健康保養型
観光の有用性の検討
出口 宝
要旨 近年の観光業界では、健康 をテーマ とした取 り組みが新 しい観光分野 として注 目されている。 このなかで も、 とくに健康回復 ・増進 を目的 とした観光が健康保養型観光 と呼ばれるものであ る。一方、わが国では少子高齢社会 に突入 し、生活習慣病対策 と過重労動 による自殺が社会問 題 となって きている。 とくに、労働者 に対する近年の健康管理の動向は、従来の職業病の予防 に加 えて生活習慣病対策 とメンタルヘルス対策 にも重点がおかれるようになって きた。そ うい うことを念頭 において、労働者の健康管理 における生活習慣病 ならびにメンタルヘルス対策 に 対 して、健康保養型観光 を活用す ることの有用性 を検討 した。県外企業2社 か ら参加 した20 名 を対象 に、人間 ドックとその異常イ直に対す る改善 プログラムを 目的 とした5泊 6日のモデ ルツアーを実施 した。そ して、モデルツアー前後における臨床医学検査 ならびに心理学的検査、 そ してツアーアンケー ト調査 を実施 して、その有用性 を評価 した。 その結果、生活習慣病ならびにメンタルヘルスに対 しての改善が認め られた。職場や 日常生 活の場か ら離れて行 う健康の体験教育 と健康回復 ・増進 を目的 とした健康保養型観光は、労働 者の健康管理に有用であると考 えられた。Fe
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Shigeru Deguchi ABSTRACT
Inrecentyears,thetourism industryhasfeaturedhealth-relatedtours.Theaim oftoursis tohelppromoteandrestorehealth.InJapan,theelderlypopulationisincreasing,1ifestyledis -easesandsuicidesduetodepressionandoverworkarealsoemarglngaSsocialissues.Thus employeehealthmanagementaimsnotonlyatoccupationaldiseasesbutalsoreducinglifestyle diseasesandmentaldisorders.Thepresentstudyexploredthefeasibilityandpotential usefu1 -messofafeaturlnghealthexaminationandpromotionaspartofanemployeehealthmanage -mentprogram intendedtopreventlifestyIediseasesandmental disorders.Duringa5-day/6 -nighttourinOkinawa,20workerparticlpantSOftwocompaniesh・om otherprefectureswere glVenthorough medicallaboratorytests.
TheparticlpantSWereinformedoftheirindividual testresultsandweregiveninformation regarding theirimplicationsofthe丘ndingsaswellassuggestionsreguestedtofollow and conseguentlylifestylen)ehavioraVdietarychangeswillundergo.Beforeandaftertheto叫 Clini -callaboratorytests,standardizedpsychologicaltestsandsurveyswereconductedtoascertain theusefulnessofthisapproach.
Theresultsshowedimprovementsinknowledge,attitudeandpracticerelatedtolifestyle diseasesandmentaldisorders.Theysuggestthathealthpromotionactivitiestohelpworkers promoteandregainhealthtopursuehealthfullivingduringmulti-daytoursawayfrom thenor -malworkplaceofferausefultoolfortheemployeehealthmanagement.
出 目 宝
Ⅰ
はじめに
わが国では少子高齢社会 に突入 し、生活習慣病対策 と過重労動 による自殺が社会問題 となっ て きてい る。 と くに、労働者 の健康管理 については労働安全衛生法 において労働衛生 (産業保 健)面 の管理が行 われて きたが、その動 向 は従来の職業病 の予 防 に加 えて生活習慣病対策 とメ ンタルヘルス対策、そ して健康増進 に重点がおかれるようになって きた。現在、労動衛生法 に 定め られた定期健康集団 ・人間 ドックが実施 されてお り、その結果では労働者の約半数が何 ら かの異常 を有 している とされている1)。 そ して、これ らの結果 に対する対策 は健康管理の重要 課題 と考 え られる。 一方、近年の健康 ブームを背景 に観光産業界では、人間 ドッツアーやPETツアー、花粉症 ツ アーな どの健康 をテーマ とした企画が見 られるようになって きた。 このなかで、 とくに健康回 復 ・増進 を目的 とした観光が健康保養型観光 と呼 ばれる ものである。 そ こで、著者 らは県外 企業2社 か ら参加 した20名 を対 象 に、人間 ドックに健康保持増進 を 目的 としたプログラムを加 えたモデルツアーを実施 して、生活習慣病 とメンタルヘ ルスに対す る臨床 医学 的効果 を検討 した. さらに、 ツアーに関 してア ンケー ト調査 を行い、労働者の健康 管理 に対す る健康保養型観光の有用性の検討 を行 った。Ⅱ
対象 と方法
1.対 象 モデルツアー (以下 ツアー) の主 旨な らびにプログラム内容 を理解 して賛同が得 られた関東 在企業 1社 (出版業管理職)か ら参加 を得 た10名 (男性 10名、年齢 は35-62歳 、平均年齢54.8 歳) と、山陰地方在の企業1社 (製造業 ライ ン)か ら参加 を得 た10名 (女性2名、男性8名、 年齢 は25-60歳、平均年齢47.6歳)の合計20名 を対 象 とした。2.
方 法 5泊6日間のモデル ツアーを実施 した (Table1)。 プログラムは、健康づ くりの3要素であ る運動、栄養 、休養 に観光 を加 えた4要素 よ り構成 した。運動 の基本 は有酸素運動 とした。栄 養 で はエ わ レギー構 成比 を考慮 して、参加者 各 々 に合 わせ た摂取 カロ リー と塩分制限 (8g
/
day)と抗酸化能 に優 れた献立2'3'に重点 をおいた。晴好 品については自由飲酒の禁止、禁煙 と した。第2日目の午前 中にプログラム前検査 (以下前) を行い、最終 日午前中にプログラム後 検査 (以下後) を行 い、前後で以下の項 目について検討 した。 なお、前後の測定結果の統計解 析 にはPairedt-testを用い、統計学的 な有意水準 はP<0.05と した。労働者の健康管群に対する健康保養型観光の有用性の検討
Tablel モデル ツアー プログラム
*オプション (ゴルフ、釣 り、潮干狩 り、マリンスポーツ、イルカプログラム)
3.
検 査 項 目1) 身体計測 と血圧検査 :(1)身長、 (2)体重、 (3)BMI(bodymassindex)、(4)収縮期血圧 、 拡張期血庄 を測定 した。 2)代 謝能 :(1)血 中総 コ レステ ロール値 、 (2)血 中HDLコ レステ ロール値 、 (3)血 中中性 脂 肪血
、(
4
)
空腹時血糖値、(
5
)
血 中尿酸値 を測定 した。 3)酸化 ス トレスマー カー :(1)尿 中8-OHdG値 を測定 した。 4)精神 ス トレス検 査 :(1)唾液 中 コルチ ゾール値、 (2)唾液 中IgA値 を測定 した。 5)心理学 的検査 :(1JSDS自己評価 式抑 うつ尺度、 (2)STAI状 態 ・特性不 安検 査、 (3)疲労 蓄積 自己診 断チ ェ ックリス ト、 (4)身体 的緊張測定尺度 を測定 した。4.
ア ンケ ー ト調 査 1) ツアー に関す る調査 :(1)参加動機 、 (2)ツアー内での関心事項 、 (3)開催希望季節 、 (4) 自己負担す る場 合の適正金額 、 (5)自由記述式 に よる ツアー全体評価 を実施 した。2
)食事 に関す る調査 :(1)味 と量 の満足 度 の経 日的変化調査 を実施 した。 3)観光 に関す る調査 :(1)観光 メニュー、(2)体験 .交流メニューに対する評価調査 を実施 した。Ⅲ
結
果
1.検 査 結 果 1) 身体計測 と血圧検査 で は、 (1)体重 は20名全 員が減少 した。平均値 は前が67.4kgで、後 は66.1kgと有意 に減少 した (p<0.000 1)0 (2)BMIは全員が低 下 した。前 で は9名が肥満 (BMI 25以上 )であ ったが 、後 は この うち2名が正常値 となった。平均値 は前 が23.4で後が23.1と有 意 に低 下 した (p<0.0001)(Fig.1)。 (3)収縮期 血圧 は17名が下 降 した。前 で は5名 が高血圧 症 (135mmHg以上)であ ったが、後 は この うち3名が正常値 となった。平均値 は前 が127.3mmHg で後が115.6mmHgと有意 に下 降 した (p<0.0005)0 (4)拡 張期 血圧 は13名 が下 降 した。前 で は出 口 宝 6名が高血圧症 (90mmHg以上)であったが、ツアー後はこの うち4名が正常値 となった。平 均値 は前が81.1m Hgで後が75.2mmHgと有意 に下降 した (p<0.009)。以上か ら、体重減少効 果、そ してBMIの改善ならびに血圧 の改善 を認めた (Fig.2)0 Kg 体 重 900 800 700 600 500 400
i
310 290 27.0 250 23.0 210 190 170 150息
Fig.1 体重 とBMlの変化 ツアー前後 で体重 (p<0.0001)とBMl(p<0.0001)は有意に減少 した。 rTTnHg 拡張期血圧 mnHg 収縮期血圧 110 100 90 80 70 60 50 40 前 後 前 後 Flg.2 血圧の変化 ツア-前後 で収縮期血圧(p<0.0005)拡張期血圧(p<0.009)は有意に下降 した. 2)代謝能では、 (1)血 中総 コレステロール値 は前では5名が異常高値 であったが、後はこ の うち 3名が低下 した。平均値 は前が198.7mg/dlで、後が202.6mg/dlと増加傾向 を認めたが有 意差 を認めなかった。 (2)血中HDL-コレステロール値は前では 1名が異常低値であったが、後 は正常値 となった。平均値 は前が61.7mg/dlで、後が66.6mg/dlと増加傾 向 を認めたが有意差 は 認めなかった。 (3)血 中中性脂肪値 は前では 9名が異常高値であったが、後 は全員が正常値 と なったO平均値 は前が188.3mg他 で、後が69.9mg/dlと有意 に低下 した (p<0.0065)0 (4)空腹時 血糖値 は、前 では6名が異常高値 であ ったが、後 はこの うち5名が低下 した。平均値 は前が 101.3mg/dlで、後が101.0mg/dlと低下傾向を認めたが有意差 は認めなかった. (5)血中尿酸値は、 前では4名が異常高値であったが、後 はこの うち 1名が低下 した。平均値 は前が6.1mgd】で、 後が6.6mg/dlと有意 に増加 した (p<0.0031)。以上か ら、血 中HDL コレステロール値の増加傾 向 と血中中性脂肪血の改善 を認めた (Fig.3)0労働者の健康管理に対する健康保養型観光の有用性の検討 mg/dl総コレステロール mg/dlHDLコレステロール mg/dl 中性脂肪 . . It . ・: :・'-.T i:.i. IJi '' L . ll , : . . ; ∴ 7 5 3 1 9 ー 5 3 2 2 2 2 1 1 1 1 .
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:: 2 0 8 6 A 「 2 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 千,; i _Fi
g.3
血中脂質の変化 ツアー前後で血中総 コレステロール値 な らびに血中H
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コレステロール値 には 変化 を認めなかったが、血中中性脂肪値(
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0
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6
5
)
は有意に低下 した。3
)酸化 ス トレスマーカーでは、 (1)尿 中8
-
OHd
G
値 は1
3
名が低下、4
名が不変、3
名が上 昇 した。平均値は前が0
.
1
3
n
g
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mV
d
l
で、後が0
.
0
9
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g
/
mV
d
l
と有意 に低下 した(
p<0
.
0
0
0
1)
。以上か ら、酸化ス トレス障害発生の減少 を認めた(
Fi
g
.
4
)0 尿中8-OHdG . I . .・ .L IT .・ や 0 0 0 0 0 0 0 0 iZ' m/ gn 前 後Fl
g
.4
尿中8-
O
h
d
G
値の変化 ツアー前後で尿中8-
O
h
d
G
値(
p
<
0
.
0
0
01) は有意に低下 した。4
)精神ス トレスでは生理的検査 では、 (1)唾液中コルチ ゾール値 は1
2
名が低下、 1
名が不 変、7
名が増加 した。平均値 は前が1
.
6
3F
L
g
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dlで後が1
.
6
3F
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dd
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であった.(
2
)
唾液中I
g
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値 は1
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名が低下、5
名が増加 した。平均値 は前が5
6
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.
4i
L
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山で、後が3
6
5
.
7F
L
g
/
dlと低下傾向 を認めた が有意差は認めなかった。以上か ら、ス トレス反応物質の減少傾向 を認めた(
Fi
g
.
5)
05
)心理学的検査では、 (1)抑 うつ感の平均値 は前が3
6
.
0
で、後が3
2
.
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と有意 に低下 した(
p
<0
.
0
0
3)
0(
2
)
特性不安の平均値 は前が4
1
.5
で、後が3
9
.
5
と有意 に低下 した(
p<0
.
0
1
6
)
。状態不 安の不安定の平均値 は前が3
8
.
5
で、後が2
9
.
2
と有意 に低下 した(
p<0
.
0
0
1)
0(
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)
疲労感の平均 値は前が8
.
9
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で、後が3
.
1
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と有意 に低下 した(
p<0
.
0
0 1)
0(
4
)
身体的緊張感の平均値 は前が4
4
.
0
で、後が3
6
.
0
と有意に低下 した(
p<0
.
0
0
1)。以上か ら、抑 うつ感、不安感、疲労感、身体的緊 張感の低下 を認めた(
Fi
g
.
6)
0出 口 〟 g/ml 唾液 中 IgA 20000 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0
_
0≡ ∴ 前 後 宝 〟g/dl唾液中コルチ ゾール 500 450 400 350 300 250 200 150 100 050 000 伝 Fig.5 睡液中 IgA値 と睡液中コルチゾール値の変化 ツアー前後で睡液中 IgA値 と睡液中コルチゾール値 に変化 は認 めなかった。 5000 4500 4000 3500 3000 2500 2000 + 3000 2500 20_00 1500 1000 500 000 + Fig.6 抑 うつ感 と疲労感の変化 ツアー前後 で抑 うつ感 (p<0.003)と疲労感 (pく0.001)の改善 を認めた。 4.ア ンケー ト調査結果 1) ツアーに関 しては、 (1)参加動機 では、11名が会社 か ら勧 め られて、 8名が 自ら希望 し て参加、その他が 1名であった。 (2)ツアー内での関心事項では、沖縄 での保養 と食事 と運動 の順 に関心が高かった。 (3)開催希望季節 では、16名が10-12月、2名が 1- 3月、 2名が 7-9
月 を希望 した。10-12月 に希望す る理 由 と しては疲れが出る季節 との意見が多 く聞かれ た。 (4)自己負担す る場合 の適正金額 では、出版業管理職で5-10万 円が6名、10-15万 円が 2名、15-20万 円が 2名で、平均 は約13万 円であった。製造業 ライ ンで 5-10万円が7名、10 -15万 円が 3名で、平均 は約 7万 5千円であった。(5)ツアー全体 としての評価 は満足が18名、 やや満足が2名であった。 2)食事 に関 しては、 (1)経過 とともに、味 と量 ともに満不満 とやや満足が減少 し、普通 と やや満足 が増 える傾 向 となった。全体 ではやや満足か ら普通 との評価であった (Fig.7,Fig. 8)0
3)観光 に関す るもの として、体験 ・交流 メニューの満足度は高い評価であった。労働者の健康管理に対する健康保養型観光の有用性の検討 日 日 6 5 R l 日 日 4 3 2 食 食 食 食 食 食 食 食 食 食 食 食 朝 夕 昼 朝 夕 昼 朝 夕 昼 朝 夕 昼 日 } 日 ︼ ︻日 日 ︼ 日 ︼ = = = = =-= = ≡ = -a 岳 - - - -= = = = =- = -= ( - - - - iiiiii 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100% Fig.7 食事の量 に対 する満足度調査 食 食 食 食 食 食 食 食 食 食 食 夕 昼 朝 夕 昼 朝 夕 昼 朝 夕 昼 日 日 日 日 日 日 日 日 5 4 3 2 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100% Flg.8 食事の味 に対 する満足度調査 Ⅳ 考 察 近年の労働安全衛生 に関す る重点 は、過労死認定が増加す るなかで安全管理 に加 えて健康管 理の重要性が増 して きている。そのなかで も健康保持増進 を進める上で生活習慣病対策 とメ ン タルヘルス対策 は最重要課題 の一つ と考 え られる。一方 、わが国における休暇制度 に関連す る 動向では、厚生労働省 によ り連続休暇取得促進要綱 (平成2年)や生活大 国5カ年計画 (平成 4年)、そ して健康休暇のすすめ (平成4年) などが進め られて きた。最近ではゆ とり休暇の 取得推進運動 (平成
1
4
年)が記憶 に新 しい。 また、I
LO
加入 国 と して1
3
2
号条約 (有給休暇条 約)の批准 をす るべ きとの声 も聞かれる4)o フラ ンスや ドイツでは、バ カ ンス法や連邦休暇制 度の もとに労働者が保養地 に長期滞在 して健康増進 を図ることは よ く知 られてい る。そ こで、 わが国で も休暇 を活用 して健康管理 に取 り組 むことは有用である と考 え られる。 本研究では、 ツアーにおいてプログラム前後 の2
回の人間 ドック とその異常値 に対す る改善 プログラムを実施 して、健康増進 に対す る有用性 を検討 した。衛生法 に定め られた定期健康集 団 ・人間 ドックが実施 されてい るが、その検診 の結果 は平成1
4
年度で有所 見率が4
6
.
6
9
%
と高 く、多 くの労働者が何 らかの異常 を有 してい ることとなる-)。今 回 も,各 々の企業か ら選 出 さ れた参加者 の多 くは、プログラム前では肥満、高血圧 、糖尿病、高脂血症の項 目においていず れかの異常値 を示 していた。そ して、 プログラム後 の結果 は、体重、BMI、血圧 では一部の者出 口 宝 が正常値 になるな どの改善が認め られ、参加者平均値 も改善 した。空腹時血糖では、参加者平 均値 の推移はわずかであったが、プログラム前 に異常値 を示 した者のほとんどに改善が認め ら れた。脂 質代 謝で血 中総 コレステロール値 、血中HDLコ レステ ロ-ル値では参加者平均値の 推移 は認め られなかったが、異常値 を示 した者の多 くは改善 した。血中中性脂肪値 においては 参加者平均値 ならびにプログラム前 に異常値 を示 した全員が正常値 となった。 これ らは摂取 カ ロリーの制限 とエネルギー構成比や食材の工夫、運動、 自由飲酒の制限によるもの と考えられ た。 さらに、生活習慣病 と悪性腫癌の発症や進行、そ して老化 に関与する酸化ス トレス障害の 指標 の一つである尿 中8-OHdG値が低下 した。 これは、 フリーラジカル理論 に基づいたア ン チエイジング ・メニュー として注 目されている植物由来の抗酸化成分であるファイ トケ ミカル を多 く含 む食材 を多 く用 いたことによる もの と考えられる2'= '。 メンタルヘルスでは、抑 うつ感、不安感、疲労感 など全ての項 目において改善がえられた。 これは、日常生活か ら離れて、十分 な休養 と適度 な運動 を行い、そ して気分転換 に結 びつ くレ ジャーなどによる もの と考 えられる。前述 した生活習慣病 に対す る医学的検査値の改善だけを 目的 とす るならばならば、栄養 と運動が管理 された教育入院で十分な成果が得 られるであろう。 しか し、医療の場で行われる教育入院には心理的ス トレス面で負の要素が多 く、参加者が楽 し んで満足 して過 ごす時間 とはな りに くい と考えられる。一方、メンタルヘルス面での好効果や、 楽 しんで学ぶ健康教育 と健康増進 を行 えるのが健康保養型観光である0 ア ンケー ト調査の結果では、食の味 と量 においてはツアー3日日頃 を過 ぎると不満傾向が減 少する傾向がみ られた。普段 の食 に比べて摂取 カロリー と塩分が制限 されたことによる空腹感 といわゆる薄味 に対する不満 も、3日目を過 ぎる頃か ら慣 れて くるもの と考えられたO このよ うなツアーの必要 日数 を考 える上で重要 な事 と考えられる。 さて、現実的に健康保養型観光 を実施するにおいては費用 と休暇が必要 となる。費用 におい ては、 ア ンケー ト調査 の結果 では、平均 で約13万 円 と約 7万 5千 円 と2つの グループで異 な る結果であった。 これはグループ間で職種が異 なる為 と考 えられる。 これ らの金額は、今回の モデル ツアーの経験 か ら2回の人間 ドックなどの検査費用 を差 し引 くと現実的に可能な費用 と 考 えられる。 また、企業の福利厚生 などの補助が活用出来るのであれば個人負担は さらに軽減 されると思われる。一方、休暇は従来か ら観光旅行や レジャーなどの余暇活動 に使われてきた。 休暇の取得が少 ないなかで、 これ ら余暇活動 に使 われている休暇 を健康 目的に変換するのでは な く、そのための新たな有給休暇 を取得することが望 ま しい と思われる。 これ らの休暇取得や 経費の補助が企業活動上に対す る影響 を分析する必要はあるが、傷病 による長期休職や過重労 働 による労働災害の認定 などの発生 を考慮すれば、企業 自らが経費補助 と休暇取得 を推進する ことは労働者 と企業の両者 ともに意義のあることと考 えられる。 ところで、生活習慣病 は個人の責任 であ り、企業が関与 しない動 きもあるようである■■■。 し か し、健康増進法では、健康状態 を自覚 し、健康増進 に務めることは国民の責務であるとする とともに、企業 に もその努力 を支援する責務がある とされている。 さらに、生活習慣病 と作業 関連疾患 とはおたがいに結 びついた概念 とされてお り7'、メンタルヘルス とともに健康管理活 動の一つ として積極的に介入することが望 ましい と考える。従来の労働安全衛生 における健康 管理活動の場の中心は、職場や 日常生活の中で実施 されるのが通常であ り、これ らの重要性は 今後 も変わる事 はない と思われるが、非 日常的活動である健康保養型観光 を活用する事 も有用
労働者の健康管理 に対す る健康保 養型観光の有用性 の検討 な方法であると考 え られた。 本研究 は平成14年度 な らびに平成15年度沖縄 県健康保養型観光推進事業 によるモデルツアー において実施 したO沖縄県健康保養型観光推進事業協議会委員 な らびに分科会、 ワーキ ング委 員 に深甚 なる謝意 を表 します。