Title
デラウェア州会社法における取締役の誠実性概念の展開
Author(s)
大川, 俊
Citation
沖縄大学法経学部紀要 = Okinawa University JOURNAL
OF LAW & ECONOMICS(15): 1-18
Issue Date
2011-03-24
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/9583
ロリ ーg 沖縄大学法経学部紀要第15号 【論文】
デラウェア州会社法における取締役の誠実性概念の展開
TheDevelopmentOfDirectors'GoodFaithInDelawareCorporateLaw 大 川 俊 S h u n O K A W A 専 門 分 野 : 商 法 ( 会 社 法 ) キーワード:注意義務、忠実義務、誠実義務 I は じ め にアメリカ会社法において、取締役の信認義務(fiduciaryduty)は、伝統的に注意義務(dutyof
care)及び忠実義務(dutyofloyalty)に二分され、注意義務は会社と取締役の利益が一致する 場合における取締役の注意の欠如、忠実義務は会社と取締役との利益相反の問題として整理されて きた。しかし近年、デラウェア州の裁判例においては、監督義務僻怠に基づく取締役の責任や不当 に高額な報酬を決議した取締役の責任が問われるような場合について、これを伝統的な信認義務の 枠組みに基づいて審査することが困難であることに鑑み、取締役が誠実に行動していたか否かとい う新たな基準によって審査する試みがなされている。そして、デラウェア州会社法において、これは「取締役の誠実‘性(goodfaith)」又は「取締役の誠実義務(dutyofgoodfaith)」の問題と
理解され、誠実‘性概念の意義や伝統的な信認義務の枠組みにおける誠実義務の位置づけなどが議論 されている。このような状況の下、本稿は、デラウェア州の裁判例の展開を跡付けることにより、 取締役の誠実性をめぐる問題点を把握することを目的とする。 本稿は以下のように構成される。まず、アメリカ会社法における伝統的な信認義務の枠組みを概 観し、誠実性概念が出現する理論的背景を確認する(Ⅱ)。次に、デラウェア州において取締役の 誠実性が問題となった主要な裁判例を検討し、誠実‘性の意義、及び伝統的な信認義務の枠組みにお ける誠実義務の位置づけ等、誠実義務の性質を把握する(Ⅲ)。以上を基に、誠実性概念の出現に より、デラウェア州会社法における取締役の信認義務の枠組みがどのように変容しつつあるか、そ の方向性と問題点を把握する(Ⅳ)。 Ⅱ 信 認 義 務 アメリカ法において、ある者が、その関係の範囲内において、他人の利益のために行動する義務 を負う関係を一般に信認関係(fiduciaryrelationship)という'・信認関係は、受託者(trustee) が受益者(beneficiary)のために財産を管理する信託法(trustlaw)上の関係2や代理人(agent) が本人(principal)の利益を図る義務を負う代理(agency)における関係3等、通常、高度な義務 − 1 −‘ ー マ ー ー エ デラウェア州会社法における取締役の誠実性概念の展開 が要求される関係においてみられる4.会社法においては、取締役と会社(及びその所有者として の株主5)との関係は信認関係であるとされ6,コーポレート.ガバナンスの進化とともに取締役 の信認義務の理論が展開されてきた。 取締役の信認義務は、取締役の過った事業経営や不公正な自己取引(self-dealing)において問 題となる7.取締役に信認義務を課し、それを実行させることは取締役の行為を監視する仕組みと して機能する8.所有と経営が分離した株式会社においては、株主は受動的投資家として大量の資 金を供給し、企業価値の上昇から利益を得ることを期待し、そのための専門家として取締役を選任 する9。したがって、取締役が過った事業経営や不公正な自己取引を行った場合においては、株主 は損害を被るか不十分な利益しか得られないことになる'0.取締役の信認義務は、このような所有 と経営の分離からもたらされる損失から株主を保護する機能を有するとともに'1,取締役に対して 株主の利益のために行動することを求めるものである(株主利益の最大化)'2・ デラウェア州会社法においては、取締役の信認義務は会社の業務執行者の義務として規定され'3、 その内容は一般に注意義務および忠実義務から成る'4。注意義務は取締役が株主から経営を委託さ れた地位にある者として経営判断を行う際に問題となり、忠実義務は取締役個人の利益と会社の利 益が異なる場合に問題となる。注意義務が問題となる局面において、取締役の経営上の決定は、一 定の要件の下、経営判断の原則(businessjudgmentrule)による保護を受けるが、その前提に は取締役と会社との利益が一致し、かつ会社が取締役の判断を信頼できる状況が必要となる'5.他 方、忠実義務が問題となる局面においては、取締役と会社の利益が異なることから、この前提は当 てはまらず、取締役の行為や意思決定に対して経営判断の原則が適用されることはない'6. 1.注意義務 (1)意義と取締役の行為基準 アメリカ法においては、一般に、ネグリジェンス(negligence)"の表題の下、ある者がある行 為をするにあたって他人に損害を与えるリスクを伴う役割を引き受けた場合には、その者は注意深 くその役割を果たす義務(注意義務)を負い18、会社法における取締役の注意義務はその特殊な類 型と位置づけられる'9. 取締役が注意義務を尽くす際、「通常の慎重な者(ordinaryprudentperson)*"」という行為基 準(standardofconduct)が判例法において発展し、模範事業会社法やアメリカ法律協会の「コー ポレート・ガバナンスの原理:分析と勧告」(以下「ALT原理」という。)がこれを一般化する21。 すなわち、ALI原理は、「取締役又は役員は、会社に対し、誠実に、会社の最善の利益に合致する と合理的に信ずる方法で、かつ、通常の慎重な者が同様の地位において類似の状況の下で尽くすこ とを合理的に期待される注意をもって、その職務を遂行する義務を負う22」と規定する潟。デラウェ ア州判例法においては、Grahamv.Allis-ChalmersManufacturingCompany事件別(以下 「Graham事件」という。)が、「会社の業務を取り扱う取締役は、通常の注意深く(careful)慎重 な(prudent)者が同様の状況の下で尽くすであろう注意義務を負う。25」と述べ、「通常の慎重な 者」に関する行為基準を採用する26° (2)責任の判断基準∼経営判断の原則の意義と保護要件∼ 取締役の注意義務違反の責任は、一般に、不法行為法(tortlaw)におけるネグリジェンス基 準27によって審査されるが鮒、その際、経営判断の原則29が適用され、取締役はグロス・ネグリジェ
一 沖縄大学法経学部紀要第15号 ンス(glossnegligence)がなければ責任を負わない30・デラウェア州判例法においては、Aronson v.Lewis事件(以下「Aronson事件」という。)及びSmithv.VanGorkom事件(以下「Van Gorkom事件」という。)が、取締役の注意義務違反の責任を判断する際の基準として、経営判断 の原則の意義及び要件等を定式化する。 ①Aronson事件*:Aronsonv.Lewis,473A、2d805(De1.1984). 本件の概要は以下の通りである。駐車場設備のリース業等を行っていたMeyersParking System社(以下「Meyers社」という。)の取締役であったFink氏(Meyers社の47%の株式を 所有していた。)は、取締役退任後、Meyers社から多額の報酬を受ける雇用契約を締結し、無利 息の融資も受けていた。Meyers社の株主は、これらの契約により過大な金銭がFink氏に支払わ れたにも関わらずFink氏は高齢であり雇用契約に基づくサービスがほとんど提供されなかったこ とを理由に、このような金銭の支払いは会社資産の浪費(wasteofcorporateassets)にあたる と主張し、事前請求(pre-suitdemand)**を行うことなく株主代表訴訟を提起した。これに対し て、Meyers社及びその取締役らが事前請求が行われていないことを理由に訴え却下の申立て (motiontodismiss)を行った。 本件において、デラウェア州最高裁は、「……事前請求の無益性の問題は、全体として、経営判 断の原則やその適用に関する基準と密接に結びついている。デラウェア州会社法141条(a)の下、経 営判断の原則は、取締役に対して経営上の特権(prerogative)を認めるものである。経営判断の 原則は、ある経営上の決定を行うにあたり、その決定が十分な情報に基づいて、会社の最善の利益 のために行われたものであることを、取締役が誠実かつ正直に信じていたとの推定である。裁量権 の濫用がない場合には、取締役の経営判断は裁判所により尊重される。取締役の決定に異議を申し 立てる側に、経営判断の原則による推定を覆すに足る事実を立証する責任がある。……経営判断の 原則は以下の2つの要件の下に適用される。第1に、経営判断の原則による保護は、利害関係のな ^(disinterested)取締役によってのみ主張することができる。このことは、取締役が、取引の両 方の側に立たず、また、自己取引という意味において、当該取引から個人的な利益を得ていないこ とを意味する。それゆえ、取締役にこのような利害が存在する場合、及び当該取引が利害関係のな い取締役の過半数によって承認されない場合には、事前請求の無益性を判断する際に、経営判断の 原則が適用されることはない。第2に、経営判断の原則の保護を受けるため、取締役は、合理的に 利用可能なすべての情報を取得しておく義務がある。そのような‘情報を取得するために、取締役は、 その職務を遂行する際に必要な注意をもって行為しなければならない。デラウェア州の裁判例にお いては、様々な言葉で適用可能な取締役の注意義務の基準を述べてきたが、我々の分析によれば、 経営判断の原則の下での取締役の責任はグロス・ネグリジェンスに基づくものである。……事前請 求が無益であると裁判所が決定する際、裁判所は、その裁量権を適切に行使し、詳細に申し立てら れた事実に基づいて、(i)取締役が利害関係なく独立していたこと、及び(Ⅱ)問題となってい る行為が有効な経営判断の結果として行われていたことについて、合理的な疑いがあるか否かを審 査しなければならない。33」と述べ、事前請求の無益性との関係において、経営判断の原則の意義 及び適用要件を明らかにする。 ②VanGorkom事件":Smithv・VanGorkom,488A.2d858(Del.1985). 本件の概要は以下の通りである。TransUnion社の会長兼最高執行役員であるVanGorkom − 3 −
一 ・ ー 一 望 分 デラウェア州会社法における取締役の誠実‘性概念の展開 氏が、企業買収の専門家JayA.Pritzker氏(以下「Pritzker氏」という。)に対して同社を売却 しようと企図し、取締役会の決議を得ようとしたところ、出席取締役らが1株あたりの売却価格の 算定にあたり会社の本来的な価値や緊急の事情等に関する十分な』情報を得ないまま約2時間の討議 で同社の売却を承認した。これに対して、TransUnion社の株主が取締役らに対して損害賠償の 訴えを提起した。 本件において、デラウェア州最高裁は、「経営判断が必要な情報に基づいて行われたか否かは、 取締役が経営判断を行う前に、合理的に利用可能であると考えられる重要な‘情報を得ていたか否か にかかっている。……最近のAronson事件において、我々は、取締役の注意義務に関する基準に ついて、経営判断の原則の下での取締役の責任はグロス・ネグリジェンスに基づくものであると述 べた。グロス・ネグリジェンスは、取締役会によってなされた経営決定が‘情報に基づいて行われた ものであるか否かを判断する際の適切な基準である。……取締役は、会社を売却し、1株あたりの 売却価格を決定する際のVanGorkom氏の役割、及び会社の本来的な価値について十分な情報を 有していなかった。このような状況において、少なくとも、事前の情報がなく、危機的で緊急の事 態であったわけでもないのに、取締役が2時間の討議によって売却を承認したことは、グロス・ネ・ グリジェンスにあたる。35」と述べ、十分な情報がないまま約2時間の討議で会社の売却を決定し たことにつき、取締役のグロス・ネグリジエンスを認め、経営判断の原則の適用を否定した。 以上、取締役がある経営上の決定を行うにあたり、その決定が十分な情報に基づいて会社の最善 の利益のために行われたものであることを誠実かつ正直に信じていた場合には、経営判断の原則に よる保護が認められ、注意義務違反の責任が問われることはない。経営判断の原則が適用されるた めには、(i)ある経営上の決定が利害関係のない取締役によって行われたこと、及び(ii)当該 取締役がその決定を行う前に合理的に利用可能な情報を取得していたことが求められ、同原則の下 での取締役の責任はグロス・ネグリジェンス基準に基づいて審査される(Aronson事件)。経営判 断の原則が適用された結果、裁判所は取締役の決定を尊重し、後知恵でその決定を批判することは ない。他方、株主が取締役の詐欺(fraud)、違法行為(illegality)、利益相反行為(conflictofin-terest)等を立証した場合、経営判断の原則による推定は覆され、取締役の責任が認められる36. 一般に、取締役の決定が業務上の目的を欠き不合理である場合や、利益を得る可能性が全くない場 合、その他、ある経営上の決定に対して利害関係のある取締役や会社と利益相反関係にある取締役 による決定については、経営判断の原則による保護は否定される37。また、監督義務僻怠等の取締 役の不作為についても経営判断の原則の適用はない38・ (3)基本定款による免責規定 VanGorkom事件においては、十分な‘情報に基づかない取締役会の決定に対して取締役のグロ ス・ネグリジェンスを認定し、経営判断の原則による保護を認めなかった。しかし、VanGorkom 事件に対しては、取締役会の意思決定の質や水準39を基礎として経営判断の原則の適用の可否を審 査したものであり、それゆえ取締役の信認義務違反に基づく責任追及の可能性を増大させるもので あるとして、多くの批判が加えられた40.VanGorkom事件を受けて、企業社会は取締役(特に 独立取締役(independentdirector))の責任追及の可能性に対して大きな危機感を示した。そこ で、デラウェア州は、定款によって取締役の責任を免除することを認める規定を設け、これに対応 した。すなわち、デラウェア州会社法102条(b)(7)は、基本定款において事前に取締役の信認義務違
沖縄大学法経学部紀要第15号 反に基づく責任を免除する旨を定めることを認め、その例外として、①忠実義務違反の行為、②不 誠実な作為・不作為、意図的な不正行為、適用される法律を知りながらそれに違反する行為、③違 法な配当の支払い、④取締役が個人的に不正な利益を得る行為を挙げる4'。現在、ほとんどの州に おいて同様の規定が設けられ、多くの会社が定款において同種の免責規定を置いているため42、取 締役の注意義務違反に関する責任が認められることは少ない。 2.忠実義務 (1)意義 アメリカ法において、忠実義務とは、一般に、ある者がその地位を利用して受益者の利益よりも 個人の利益を優先させてはならない義務をいう43。会社法においては、取締役が会社の利益よりも 個人の利益を優先させるような自己取引を行ってはならない義務がその例とされる"・ デラウェア州の裁判例においては、Guthv.Loft,Inc.事件*(以下「Guth事件」という。)が、 「会社の役員や取締役は、個人的な利益を図るために信託的及び信認的地位を利用してはならない。 取締役は、厳密に言えば信託法上の受託者ではないが、会社及びその株主と信認関係にある。何年 もの間存在し、人間の性質や動機に関する深い洞察から導かれた政策によって、次のような1つの ルールが形成されてきた。会社の役員や取締役は、積極的に彼らが義務を負う対象である会社の利 益を保護しなければならないだけでなく、彼らの能力が正当に利用された場合に得られる会社の利 益を剥奪するような方法、又は彼らの権限を合理的かつ合法的に行使するような方法によって、会 社の利益を害するような行為をしてはならない。46」と述べ、忠実義務の意義を明らかにする。す なわち、忠実義務には、会社に損害を与える行為を「慎む(refrain)」という消極的な義務が含ま れると同時に、会社の利益を「積極的に(affirmatively)」保護する義務が含まれる。ある行為を 慎む義務は、ある者に背信的(betrayal)行為をさせない義務であり、積極的に会社の利益を保護 する義務は、献身(devotion)の概念に含まれる47 (2)注意義務との比較 忠実義務は、取締役の会社の最善の利益に反する行為、及び他の株主には提供されない個人的利 益の獲得を阻止する点において注意義務とは異なる48.注意義務は、粗末な(poor)意思決定や注 意の欠如に関する義務であり、個人的利益とは関係がないイ9.取締役が会社の利益よりも個人的利 益を優先させるような自己取引においては、自己取引を行う取締役は開示と露見を避けようとする ため、その発見は困難となる釦。自己取引が会社に利益をもたらすこともあり得るが、株主を犠牲 にして個人的利益だけをもたらす目的で行われることもある51.取締役の自己取引に関するインセ ンティブ如何によっては、市場の制裁をはるかに上回る1回限りの重要な個人的利益のために自身 の権限を利用する可能’性がある認。従って、一般に、忠実義務に関するルールは注意義務などの他 のルールよりも厳格なものとなる53。また、忠実義務が問題となる場合は、取引及び会社における 様々な自己取引の問題を惹起することから、そのための信認義務に関するルールも多様なものとな る54°従って、取締役のある行為が忠実義務違反にあたるか否かについては、広く一般化された表 現によってではなく、事例ごとに極めて道徳的な表現を用いて判断される傾向にある55。 Ⅲ 誠 実 義 務 デラウェア州会社法においては、伝統的に、取締役の信認義務は注意義務及び忠実義務に二分さ − 5 − 甲 ● ●一 Ⅱ宮 ︶
一 画 一 一 望 デラウェア州会社法における取締役の誠実性概念の展開 れ、注意義務は会社と取締役の利益が一致している場合における取締役の注意の欠如、忠実義務は
会社と取締役の利益相反の問題であると整理される。《その際、注意義務については、経営判断の原
則による保護、及びVanGorkom事件を契機に制定されたデラウェア州会社法102条(b)(7)による 責任の免除56が認められ、他方、忠実義務については、会社の事業機会の奪取や会社と取締役の利 益相反取引等、会社と取締役の利益が異なる局面を中心に様々なルールが形成されている57°しか し、例えば、取締役の監督義務僻怠の責任や不当に高額な報酬を決議した取締役の責任が問われる ような場合においては、仮にこれを注意義務違反の行為として類型化するならば基本定款による免 責規定が適用され、取締役の責任が問われることはなく、会社の損害を回復する機会が奪われるこ ととなり妥当ではない。そこで、近年、このような基本定款による免責規定を適用することが妥当 でない場合、又は伝統的な信認義務の枠組みに含めることが困難である取締役の行為については、 デラウェア州会社法等の制定法上の文言の解釈によって、取締役が誠実に行動していたか否かとい う基準による解決が試みられており、これは「取締役の誠実性(goodfaith)」又は「取締役の誠 実義務(dutyofgoodfaith)"」の問題として把握される59. 1.制定法規制 取締役が誠実に行動すべきであるという概念は、デラウェア州会社法の規制において広く認めら れている"。すなわち、デラウェア州会社法145条は、誠実に行動している取締役のみが法律上の 損害賠償責任を免除される資格を有する旨を規定する61。また、同141条(e)は、会社の帳簿記録、 及び役員やアドバイザーからの報告を誠実に信頼した取締役だけが、株主からの訴訟に対して完全 に保護される旨を規定する"。さらに、同144条(a)(1)及び(2)は、利害関係のある当事者間の取引に ついて、当該取引が利害関係のない取締役や株主によって誠実に承認された場合には、法の審査を 受けることはない旨を規定する63. 2.裁判例の展開 デラウェア州会社法においては、制定法規制により誠実性概念への言及がなされてきたにも関わ らず、近年まで、その本質的な意義が検討されることはなかった64.裁判例においても、取締役の 誠実義務は、伝統的に注意義務及び忠実義務に包摂され、これらの義務に違反しないケースにおい て、誠実義務が独立に審査されることはなかった65°しかし、近年、Cede&Co.v.Technicolor, Inc.事件(以下「Cede事件」という。)が、伝統的な信認義務の枠組みの中に誠実義務を独立した 1つの義務として位置づけたことを契機に、誠実性概念の意義、注意義務及び忠実義務との関係等 について言及した裁判例がみられるようになった。 1)Cede事件66:Cede&CO.v,TechnicoIor,Inc.,634A.2d345(De1.1993). 本件の概要は以下の通りである。1982年から1983年にかけて、MacAndrews&ForbesGroup, Inc.(以下「MAF社」という。)は、同社の100%子会社であるMacanfor社との合併を通じて、 Technicolor社の買収を試みた。これに対して、Technicolor社の少数株主であるCinerama社及 tfCede&Co.社が、Technicolor社に対して保有株式の買取請求を求めて訴えを提起した。その 際、Cinerama社及びCede.&Co.社は、Technicolor社の取締役の行った詐欺及び不公正な取引 について、信認義務違反の責任を主張した。 本件において、デラウェア州最高裁は、「取締役会の決定に対して訴えを提起した株主は、最初 に、経営判断の原則による推定を覆す責任を負う。その際、原告株主は、問題となっている決定に沖 縄 大 学 法 経 学 部 紀 要 第 1 5 号 関して、取締役が、信認義務のうちの誠実義務、忠実義務、注意義務という3つの組(triad)の いずれか1つに違反している事実を立証しなければならない。原告株主が、このような事実を立証 することができない場合には、経営判断の原則が取締役会の決定を保護し、裁判所が彼らの決定を 後知恵で評価することはない。経営判断の原則による推定が覆された場合、立証責任は問題となっ ている取引に関与している被告取締役に転嫁され、被告取締役は原告株主に対して当該取引の『完 全な公平‘性(entirefairness)』に関する事実を立証しなければならない。67」と述べ、「3つの組」 と い う 文 言 に よ っ て 、 誠 実 義 務 が 伝 統 的 な 注 意 義 務 及 び 忠 実 義 務 の 概 念 と 等 し い 位 置 に あ る 、 独 立 した信認義務の1つであるとの立場を示した68。 (2)Caremark事件":InreCaremarkInternationalInc.Deriv.Litig.,698A.2d959(Del.Ch. 1996). 本件の概要は以下の通りである。ヘルス・ケア産業に従事するCaremark社が、医療提供者との 間で様々な契約を締結し、医療提供者に対して紹介謝礼禁止法(Anti-ReferralPaymentsLaw) に違反する謝礼を支払っていたが、これについて起訴された結果、総額25億ドルの賠償金を支払っ たことについて、Caremark社の取締役らに対して株主代表訴訟が提起され、和解がなされた。 本件において、デラウェア州衡平法裁判所は、「……取締役の義務には、取締役会が十分である と判断した』情報収集及び報告に関するシステムが存在することを確保するよう誠実に努める義務が 含まれ、ある状況の下でその努力を怠ったならば、少なくとも理論上は、取締役は、適用される法 原則を遵守しなかったことによって生じた損害について責任を負う可能‘性がある。……一般に、 Graham事件や本件におけるように、会社の損害に対する取締役の責任の主張が、会社の活動が 違法なものであることを知らなかったことに基づく場合には、取締役会による継続的又は構造的な 監督権を行使しなかったこと(例えば、合理的な情報提供及び報告システムを確保する努力を全く 行わなかったこと)によってのみ、取締役が責任を負うための要件としての誠実性の欠如が立証さ れる。”」と述べ、取締役の監督義務僻怠の局面において、取締役等の違法行為を防止するための 内部統制システム(internalcontrolsystem)を構築すべき義務があることを明らかにした上で、 内部統制システム構築義務を怠ったことが誠実性の欠如に該当することを明らかにした。 (3)Disney事件":InreTheWaltDisneyCompanyDeriv.Litig.,906A.2d27(Del.2006). 本件の概要は以下の通りである。1995年10月、WaltDisneyCompany(以下「Disney社」と いう。)は、MichaelS.Ovitz氏(以下「Ovitz氏」という。)との間で、○vitz氏を社長として5 年間雇用する契約を締結した。同契約には、契約の終了とOvitz氏への退職金の支払いについて、 Ovitz氏に「十分な理由(goodcause)」がないにも関わらず同契約が終了された場合(「十分な理 由のない解任(non-faulttermination)J)には、5年の満期である2009年9月末日までの未払給 与に加え、残存1年度あたり7,500万ドルの追加の金銭及び300万株のストック・オプションを付与 するという内容が含まれていた。同契約に定める「十分な理由」とは、Ovitz氏がグロス・ネグリ ジェンスに基づく業務執行を行ったこと、不正行為を行ったこと、又はOvitz氏が自発的に退職し たことであった。Ovitz氏は、Disney社に雇用された数ヶ月後には他の会社を探し始め、その後 会社を退職したい旨をDisney社に申し出て、自身の退職を「十分な理由のない解任」として扱う よう依頼した。Disney社はこれを承認し、同社の取締役会は「十分な理由のない解任」の場合に 該当する退職金等の支払いを承認した。そこで、Disney社の株主は、「十分な理由のない解任」を − 7 −
ー ユ デラウェア州会社法における取締役の誠実‘性概念の展開 承認した同社の取締役に対する信認義務違反に基づく責任を追及する株主代表訴訟を提起した。 本件に至るまでの経緯は以下の通りである72。まず、InreTheWaltDisneyCompany DerivativeLitigation事件(①事件73)において、株主による事前請求が免除されるか否かにつき、 事前請求の無益性に関する審理がなされた。①事件において、デラウェア州衡平法裁判所は、原告 の請求を全て棄却し、事前請求の免除を認めなかった。これに対して、Brehmv.Eisner事件74 (②事件)において、デラウェア州最高裁は、①事件の判断を支持しながらも、一部破棄・差戻し として、事前請求の免除を認めなかった。次に、②事件を受けて、InreTheWaltDisney CompanyDerivativeLitigation事件"(③事件)において、デラウェア州衡平法裁判所は、原告 の主張は、取締役が誠実義務に違反したことを立証したとして、事前請求の免除を認めた。③事件 において事前請求の免除が認められたことによって、本件(⑤事件)の原審であるInreThe WaltDisneyCompanyDerivativeLitigation事件(④事件76)において、本案の審理がなされ た。④事件において、デラウェア州衡平法裁判所は、「……誠実性には、『目的に関する正直さ (honestyofpurpose)』が求められ、それは信認関係における純粋な注意であると言われてきた が、少なくとも、会社法の文脈においては、誠実性よりも不誠実性(badfaith)を定義づけるこ とのほうが容易であろう。77」と述べた上で、「不誠実は、会社の利益を追求するという純粋な試み 以外の目的をもって行われた取引、又は適用可能な制定法に違反することを知りながら行われた取 引において問題となる。78」として、不誠実概念の意義を明らかにした。 ④事件を受けて、本件において、デラウェア州最高裁は、まず、「信認義務に求められる行為の うち、少なくとも3つのカテゴリーが『不誠実』の候補に挙がる。第1のカテゴリーは、いわゆる 『主観的な不誠実(subjectivebadfaith)』」であり、これは侵害という意図が含まれた動機に基づ く行為が含まれる……。このような行為は伝統的かつ典型的な不誠実を構成する……。第2のカテ ゴリーは、他の2つのカテゴリーの反対に位置づけられるものであるが、注意の欠如が認められる 行為、すなわちグロス・ネグリジェンスに基づく行為、又は害意(malevolent)のない行為であ る……。ここに、グロス・ネグリジェンスが不誠実を構成するか否かという問題が提起されるが、 その答えはノーである。……第3のカテゴリーは、他の2つのカテゴリーの中間に位置するもので ある。すなわち、これは、不誠実とは義務を怠ること、又は意図的に責任を無視することであると 定義づけたデラウェア州衡平法裁判所の判断の意味を明らかにすることである。その際、誠実義務 違反の行為を、基本定款の免責規定によっては免責されない行為として扱うことが適切かどうかと いうことが問題となる。79」と述べ、④事件におけるデラウェア州衡平法裁判所において判断され た不誠実概念の意義を分析した。その上で、「信認義務に求められる誠実性とは、注意義務及び忠 実義務を含むだけでなく、.…・・会社又は株主の利益に対する真実の誠実さ(faithfulness)や献身 (devotion)が求められる全ての行為を含むものである。誠実性の欠如は、例えば、会社の最善の 利益を追求する以外の目的で行われる意図的な行為、適用可能な制定法に違反する意図で行われる 行為、義務の意識的な無視など、よく知られた義務に直面した際に意図的にそれを行わないことが 想定される。80」と述べ、不誠実に該当する3つの場合を類型化した。 (4)Stone事件":Stonev.Ritter,911A.2d362(Del.2006).
本件の概要は以下の通りである。2004年、銀行業を営むAmSouthBancorporation(以下
「AmSouth社」という.)とその100%子会社であるAmSouthBankは、連邦銀行機密法(the、●∼ □の 沖縄大学法経学部紀要第15号 federalBankSecrecyAct(以下「BSA」という。))及び資金洗浄防止法(Anti-Money-LaunderingAct(以下「AML」という。))に違反する投資取引を行ったことにより、政府や行政 機関からの調査を受け、4,000万ドルの罰金及び1,000万ドルの反則金を支払った。そこで、 AmSouth社の株主は、同社の取締役に対して、BSA及びAML違反を防止するための十分な内 部統制システムの構築を怠ったことが信認義務に違反するとして、株主代表訴訟を提起した。 本件において、まず、デラウェア州最高裁は、「……当裁判所は、Caremark事件での判断を維 持し、次の場合に取締役の監督義務違反を認める。すなわち、①取締役があらゆる報告や情報シス テムまたは統制を全く実行していない、又は②そのようなシステムまたは統制を実行していたとし ても、注意が要求されるリスクや問題について取締役が知らないことにより、それらの運営をモー ターし監督することを意識的に行っていない場合である。いずれの場合においても、……取締役が 義務があることを知りながら行為をせず、その結果、意識的に責任を無視したことが証明されるな らば、取締役は、信認義務における誠実性を果たさなかったことによって、誠実義務に違反する。8勺 と述べ、取締役の監督義務僻怠の局面において、取締役の誠実義務違反を認めた。その上で、「誠 実'性の欠如については、特に重要な以下の2つの視点が導かれる。すなわち、第1に、誠実義務は、 注意義務及び忠実義務を含む信認義務の『3つの組』であると表現される。しかし、誠実義務は、 注意義務及び忠実義務と同等の位置にある独立した信認義務を構成するものではない。注意義務及 び忠実義務のみが、それに違反した場合、直接に責任を負う基礎をなすのに対して、誠実義務は、 責任を負う際の間接的な基準でしかない。第2に、忠実義務は、金銭的又はその他の認識しうる利 害対立を含む事例に限定されない。そこには誠実義務も含む。……取締役は、会社の最善の利益の ために行動していると誠実に信じることができない限り、会社に対して忠実に行動しているとはい えない。函」と述べ、誠実義務の‘性質を明らかにした。 (5)Lyondell事件":LyondellChemicalCo.v.Ryan,970A.2d235(Del.2009). 本件の概要は以下の通りである。LyondellChemicalCompany(以下「Lyondell社」という。) の会長兼CEOであるDanSmith氏(以下「Smith氏」という。)は、BasellAF(以下「Basell 社」という。)との合併を企図し、Basell社のLeonardBlavatnik氏(以下「Blavatnik氏」という。)
と当該合併においてBasell社が取得するLyondell社の株式の価格について交渉した。Lyondell
社の取締役会は当初、「成り行きをみる(waitandsee)」との立場をとっていたが、財務アドバ イザー及び法務アドバイザーからの助言に基づき、当該合併契約を承認した。これを受けて、 Lyondell社の株主は、同社の取締役に対して、株主の利益よりも取締役個人の利益を重視したこ とが信認義務に違反するとして、当該合併契約を差し止める訴えを提起した。これに対して、 Lyondell社の取締役はサマリー・ジャッジメントを申し立てたが、デラウェア州衡平法裁判所はこれを斥けた83。そこで、Lyondell社の取締役が中間上訴(interlocutoryappeal)の申立てを行っ
た。 本件において、デラウェア州最高裁は、合併契約締結時における取締役の行為を審査した上で、 Revlonv.MacAndrews&ForbesHoldings,Inc.事件"(以下「Revlon事件」という。)におい て認められた基準(Revlon基準)7を適用する際に、その時期及び信認義務に要求される不誠実概 念を考慮しなかったデラウェア州衡平法裁判所の判断には誤りがあったとして、取締役には中間上 訴を申し立てる権利があるとした。具体的には、Lyondell社がBasell社の買収の対象になってい − 9 −一 二 デラウェア州会社法における取締役の誠実性概念の展開 る(inplay)ことが公表され、その対応としてLyondell社の取締役会は「成り行きをみる」こ とを決定したが、この決定に対してRevlon基準が適用された。そして、その際、Stone事件にお ける誠実義務が忠実義務の付随的要素であるとの立場を踏襲し、Revlon義務と誠実義務との関係 が検討された。すなわち、デラウェア州最高裁は、「……Lyondell社の定款には注意義務違反の個 人責任から取締役を保護するというデラウェア州会社法102条(b)(7)に基づく基本定款による免責規 定が含まれている。それゆえ、本件は、Lyondell社の取締役の行為が、基本定款によっては免責 されない忠実義務に関するものであったか否かという問題に帰着する。鯛」とした上で、誠実義務 については、「当裁判所は、最近の2つの事件を参考に『誠実性』について検討する。Disney事件 において、当裁判所は不誠実と認められる行為の範囲を議論し、そこには損害を発生させる意図だ けでなく意図的に義務を怠ることをも含むと結論づけた。……数ヶ月後、Stone事件において、当 裁判所は『監視』の文脈の中で不誠実の概念を検討し、Caremark事件における判断を採用した。 Caremark事件においては、会社の損失に関する取締役の責任を追及する訴訟が、取締役が会社内 において適切な行動をとらなければならない義務を無視したことを原因として提起された場合には、 取締役会が監督権を継続的・体系的に行使しなかったことのみが責任を認めるために必要な誠実性 の欠如にあたるとされた。Stone事件において、当裁判所は、不誠実を定義したDisney事件と Caremark事件の判断は十分に整合的であると述べた。Stone事件においては、『責任を課すため の要件として、信認義務の不履行を取締役が知っていることが求められる。89』とされ、取締役の 内心の事If(mentalstate)に関する立証の困難さが認められている。釦」と述べた。 3.誠実性の意義と誠実義務の性質 デラウェア州の裁判例において、取締役の誠実性は、(1)監督義務‘僻怠に基づく取締役の信認 義務違反(Caremark事件及びStone事件)、(2)退任取締役に対する不当に高額な報酬を決議 した取締役の信認義務違反(Disney事件)、(3合併契約締結時における取締役の信認義務違反 (Lyondell事件)において問題になると整理することができる。 誠実性の意義については、まず、内部統制システムの構築を怠ったことが「誠実性の欠如」にあ たる(Caremark事件及びStone事件)。そして、①会社の最善の利益を追求する以外の目的で行 われる意図的な行為、②適用可能な制定法に違反する意図で行われる行為、③義務の意識的な無視 など、よく知られた義務に直面した際に意図的にそれを行わないことが「不誠実」を構成する (Disney事件)。 誠実義務の4性質については、誠実義務を伝統的な信認義務の1つの独立した義務であると位置づ けたCede事件の判断に対して、Stone事件が、「誠実義務は、注意義務及び忠実義務と同等の位 置にある独立した信認義務を構成するものではない。91」と述べ、これを否定した。その上で、 Stone事件においては、「取締役は、会社の最善の利益のために行動していると誠実に信じること ができない限り、会社に対して忠実に行動しているとはいえない。92」と述べ、誠実義務は忠実義 務の付随的要素であるとされた。さらに、Stone事件における判断は、Lyondell事件においても 踏襲され、合併契約締結時においてRevlon基準が適用される際、基本定款によっては免除されな い忠実義務の問題として誠実‘性概念を検討すべきことが示された。
一 一 へ 。 ▲ 一 沖縄大学法経学部紀要第15号 Ⅳ お わ り に 本稿では、アメリカ会社法における伝統的な信認義務の枠組みを概観した上で、デラウェア州の 裁判例の展開を分析し、誠実性の意義、及び誠実義務の性質等について検討した。以下、これらの 内容を基に、誠実性概念の出現により、デラウェア州会社法における伝統的な信認義務の枠組みが どのように変容しつつあるか、その方向‘性と問題点を整理して、本稿の纏めとしたい。 まず、Stone事件がCede事件における判断を否定し、・誠実義務を信認義務の独立した1つの義 務ではないと理解したことについては異論はないが、これを忠実義務の付随的要素であると理解し たことに対しては批判がなされている鯛。すなわち、Stone事件が取締役の不作為を忠実義務の問 題として扱ったことにより、取締役が個人的な財産上の利益を得ることはない事例にまで忠実義務 の領域を拡大してしまったとの批判である。忠実義務は、従来、取締役が不適切な財産上の利益を 得る場合に問題となり、取締役から利益を吐き出させ、財産を剥奪することにより救済が図られて きた。従って、忠実義務違反の審査においては、会社が財産的損害を被っていることが前提となり、 かつ、その損害額の算定もなされなければならないが、取締役の不作為についてこのような作業を 行うことは損害の因果関係の観点からも困難を伴う。また、「会社の最善の利益を追求する以外の 目的で行われる意図的な行為」として定義される不誠実は、取締役の内心の意図の問題であり、こ れに対して損害の因果関係を認定することも困難である。このような状況の下、Stone事件を契機 として、誠実義務は、忠実義務ではなく注意義務に含まれるとの見解94や、伝統的な注意義務及び 忠実義務の中間領域を形成するとの見解95が有力に主張されている。 次に、Lyondell事件において、合併等のM&Aの領域においても取締役の誠実性が審査された ことが挙げられる。従来、M&Aの領域においては、敵対的買収に対する防衛策の妥当性に関して 適用されるUnocal基準船、取締役会が会社を売却する過程において適用されるRevlon基準97等の 審査基準が形成されてきた。すなわち、Unocal基準は、敵対的買収に対する防衛策を講じること は、注意義務の問題として経営判断の原則の適用があることを認めるものである。Revlon基準は、 会社が買収の対象となった場合、取締役は、株主の利益を最大化する目的をもって会社を最高額で 売却できる相手を探す義務(Revlon義務)を負い、その範囲においてのみ経営判断の原則の適用 があることを認めるものである98・この点、Lyondell事件は、会社の売却の際にRevlon基準が適 用され、注意義務の領域に属する事案であったが、基本定款における免責規定が適用されない忠実 義務の問題として、取締役の誠実性が審査された。Lyondell事件は、Stone事件における判断を 踏襲し、本来注意義務の問題として扱うべき事案を忠実義務の観点から審査したものと理解されて いる"・ デラウェア州会社法において、取締役の誠実性は、監督義務僻怠の局面における取締役の行為、 及び合併契約締結時における取締役の行為等に対する審査基準として機能し、その際、同時に、伝 統的に注意義務の領域に属すると考えられていた事案が忠実義務の問題として扱われるという、い わゆる忠実義務の拡張(expandingdutyofloyalty)*伽という現象が生じ、伝統的な信認義務の 枠組みが変容しつつある。従来、デラウェア州会社法においては、経営判断の原則による保護、及 び基本定款による責任の免除によって取締役の責任を軽減させるのが基本的な方向性であった。そ して、その際、デラウェア州会社法は、取締役の業務執行に関する権限と責任のバランスを適切に 構築するための努力を行ってきた'01°この点、忠実義務の拡張という現象は、このようなデラウェ − 1 1 − 卓
ー ユ デ ラ ウ ェ ア 州 会 社 法 に お け る 取 締 役 の 誠 実 性 概 念 の 展 開 ア州会社法の基本的な方向‘性及び取締役の権限と責任のバランスを損なわせ、それ故、取締役はリ スクのある経営を差し控える可能性があることも指摘されていることから'02、誠実性という審査基 準の適用範囲を明らかにすべく、今後の裁判例や学説の動向が注目されるところである。 なお、本稿は、取締役の誠実性概念が出現する理論的背景、及び裁判例の展開に基づく誠実性概 念を理解することを主眼としたものであり、特に忠実義務の拡張という現象については、その方向 性と問題点を指摘するにとどまった。この点に関するアメリカ会社法における学説の検討、及びそ れを基礎とするわが法への示唆については、広く取締役の信認義務に関する考察を含め、今後の課 題としたい。 Black'sLauノDictionary,at1402(9thed.2009). See,Restatement(Second)ofTrusts2,3(3)(1959). See,Restatement(Third)ofAgency1.01(2006). その他、例えば、後見人(guardian)と被後見人(ward)、弁護士(attorney)と依頼者(client) 等の関係も信認関係である。Black'sLawDie伽"ary,s叩γαnote1at1402. 取締役が信認義務を負う対象は、一般に、会社及びその所有者である株主であると考えられて いるが、これらは厳密に異なる意味として使い分けられているわけではなく、互換的に用いら れることが多い。カーテイス・』・ミルハウプト『米国会社法』(有斐閣、2009年)68頁。 信託の受託者が負う義務は信託財産を受益者の利益のために保管すべき義務であり、株主の利 益を最大化することが求められる取締役の信認義務に比べると若干控えめ(conservative)な ものとなる。CarterG.Bishop,Direcm『〃Ahdica加刀andtheT上z範onomicRoleofGood Fai胡mDelai"αreCorpoγαteLauノ,2007Mich.St.L.Rev.905,at915. ArthurR.Pintoetal.,Understα"〔伽g助叩orateLauノ,at89(2nded.2004).本書の邦 訳として、アーサー.R・ピントほか著〔米田保晴監訳〕『アメリカ会社法』(レクシスネクシ スジヤパン、2010年)がある。 〃・at199. Id.at94. m・ 所有と経営が一致する閉鎖的な株式会社においては、支配株主による不公正な自己取引等、少 数派株主の利益が抑圧される可能性が存在するため、支配株主にも信認義務が課される。〃・ at199. See,e.g..Pepperv.Litton,308U.S.295,at306(1939).,Arnoldv.SocietyforSav. Bancorp,Inc.,678A.2d533,at539(Del.1996). Del.CodeAnn.tit.8,141(a)(2001). このような分類ばアメリカ会社法の一般的なテキストにおいても明記されている。艶e,e.fr.. RobertC.Clark,CorporateLauノ,at123-157(1986).,JesseH.Choperetal..Casesα"d MaterialsonCorporα加凡,at74-179(6thed.2004).また、裁判所も伝統的に会社の取締 役や役員の信認義務の事例を注意義務と忠実義務の類型に分類してきた。See,e.g.,ClaireA.
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5 6 789岨Ⅱ
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沖縄大学法経学部紀要第15号 Hill,BrettH.McDonnell,Stonev.Ritterα"dtheExpα刀dingDutyofLoyalty,76 FordhamL.Rev.1769,at1771. カーテイス・J-ミルハウプト・前掲注(5)77頁。 カーテイス・』・ミルハウプト・前掲注(5)77頁。ArthurR.Pintoetal.,s叩『αnote7at 221・ ネグリジェンスは不法行為の一類型であり、その成立要件は、行為者がある状況の下で、①相 当の注意義務(dutyofduecare)を負いながら、②その注意義務に違反し、③それが原因 となって、④損害が生じることであると考えられている。田中英夫ほか編『英米法辞典』(東 京大学出版会、1991年)580頁。 例えば、運転手という役割を引き受けた者は注意深く運転する義務を負い、医師という役割を 引き受けた者は注意深く治療を施す義務を負う。MelvinA.Eisenberg,TノleDutyofC上Z7e of⑰叩o『αteDirectorsandOfficers,51U.Pitts.L.Rev.945,at945-946(1990).,メル ビン。A・アイゼンバーグ「アメリカ会社法における注意義務[1)1(松尾健一翻訳〕商事法 務1712号(2004年)28頁。 アメリカ会社法における取締役のネグリジェンス責任については、伊勢田道仁「米国における 取締役の注意義務法理の展開(1)(2.完)」大阪府立大学経済学研究36巻4号(1992年)246 頁以下、37巻1.2号(1992年)160頁以下参照。 Selheimerv.ManganeseCorp.ofAmerica,224A.2d634,at640(Pa.1966). なお、注意義務は一般にコモン・ロ−において発達した概念であり、デラウェア州会社法にお いてこれを定義する制定法上の規定はない。カーテイス.J・ミルハウプト・前掲注(5)71頁。 TheAmericanLawInstitute(ALI),丹加ciplesofCorporateGove7nα"ce:Analysisα"d Recommenda加凡s,4.01(1994).ALI原理の邦訳として、証券取引法研究会国際部会訳編 『コーポレート・ガバナンスーアメリカ法律協会「コーポレート・ガバナンスの原理:分析と 勧告」の研究』(日本証券経済研究所、1994年)がある。模範事業会社法も同様の規定を置く。 See,ModelBus.Corp・Act8.30(a)-b)(2000). これらの基準は、取締役が会社の最善の利益に合致すると合理的に信じる方法によって行動す るという主観的な要素(subjectiveelement)と、通常の慎重な者が同様の地位において類似の 状況において尽くすことを合理的に期待される注意という客観的な要素(objectiveelement) に分類される。MelvinA.Eisenberg,TheDivergenceofStα"dardsof⑰"血cta刀d Siα"dardsofReviei〃加Cりゅo7ateLauノ,62FordhamL.Rev.437,at439-4401993. Grahamv.Allis-ChalmersManufacturingCompany,188A.2d125(Del.1963). Id.at130. Graham事件以前において、注意義務の審査は、アメリカ合衆国連邦最高裁のBriggsv. Spaulding事件(141U.S.132,at152(1891).)における「通常の慎重かつ勤勉な者」とい う基準に依拠していた。CarterG.Bishop,supranote6at915.,HenryRidgelyHorsey, TheDutyofC上ireComponentoftheDelauノa7eBusinessJudgmentRule,19Del.J. Corp.L.971,at982-983(1994). 行為者の作為・不作為、他人に対する相当の注意義務、他人に不合理な被害の危険を生じる注 15 16 17 18 19 20 21 22 23
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27 − 1 3 − 一二ー ユ デラウェア州会社法における取締役の誠実‘性概念の展開 意義務違反という3要素が、過失ある行為(negligentact)を構成する。田中英夫ほか・前 掲注(17)580頁。 Graham事件は、不法行為法におけるネグリジェンス基準によって取締役の注意義務を審査 したものである。StephenM.Bainbridge,⑰mo7ateLai〃鱈"dEditionノ,at96(2009). See,ALI,PrinciplesofCorpo『α舵Governance:A凡α〃sisandRecommendations,4.01 (c)(1994).,ModelBus.Corp.Act8.30(a)-(b)(2000).Seealso,CharlesHansen,The DutyofCare,theBusinessJudgmentRule,α"dtheAmericα凡Lauノ肋stituteCorporate GovernanceProject,48Bus.Law.1355(1993).,DouglasM.Branson,TheRule剛at Is城αRule-TheBusinessJudgmentRules,36Val.U、L.Rev.631(2002). CharlesD.Lewis,TheBusmessJudgmentRuleandCorporateDirectors'Liabilityfor Mismanagement,22BaylorL.Rev.157,at162(1970).,WilliamT.Allenetal., RealigningtheStα"da7dofRevieuノofDirectorDueC上ireWitノIDelauノa7ePolicy:A C戒iqueofVanGorkomanditsProge叩asaStα"da7dofRevieuノProblem.96Nw.U. L.Rev.449,at450(2002).,CarterG.Bishop,supranote6at916. Aronsonv.Lewis,473A.2d805(Del.1984).本件の解説として、伊勢田道仁「代表訴訟提 起の事前請求が免除される場合と経営判断原則」商事法務1211号(1990年)27頁以下がある。 株主代表訴訟は、取締役が会社に損害を及ぼしたにもかかわらず、会社が訴えを提起しない場 合に、株主が取締役の会社に対する責任の履行を求めて提起する訴訟である。しかし、会社に 対する訴訟の提起は本来取締役会の決定に基づいて行われるものであることから、株主代表訴 訟が自由に認められるならば、取締役会の経営上の自由が侵害されるおそれがある。そこで、 アメリカでは、多くの州会社法において、株主に対し、株主代表訴訟を提起する前に、会社が 取締役を訴えるよう取締役会に求めることを義務づける仕組み(demandrequirement)を設 けている。いくつかの州においては、事前請求が常に義務づけられているが(See,Model Bus.Corp.Act7.42(2000).)、デラウェア州においては、株主が事前請求の無益性(futile) を立証した場合には、事前請求は免除される(Del.Ch.Ct.R.23.DoAronson事件は、事 前請求の無益性に関する審査基準を示す判決としても重要な意義を有する。なお、デラウェア 州における事前請求の無益性に関する審査基準については、拙稿「事前請求の無益性に関する 審査基準」沖縄大学法経学部紀要14号(2010年)75頁以下参照。 Aronsonv・Lewis,supranote31at812-814. SmithV.VanGorkom,488A.2d858(Del.1985).本件の解説として、神崎克郎「会社の 売却と取締役の注意義務」商事法務1164号(1988年)36頁以下がある。 Id.at872-874. Shlenskyv.Wrigley,237N.E.2d776at780(111.App.Ct、1968). ArthurR・Pintoetal.,sup『αnote7at211. 、、 裁判所は、取締役の決定の内容を検討することには消極的であるといわれる。〃・ See,e.g.,DanielR.Fischel,TheBusinessJudgmentRuleandthe升α凡sUnionCase, 40Bus.Law.1437(1985).,BaylessManning,Reflec伽nsα"dPracticalTipsonL娩加 28 29 30 31 32 33 34
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沖 縄 大 学 法 経 学 部 紀 要 第 1 5 号 tノleBoardroomafterVanGorkom,41Bus.Law.1(1985).,LeoHerzel&LeoKatz, Smithv.VanGorkom:TheBusinessofJudgingBusinessJudgment,41Bus.Law.1187 (1986). Del.CodeAnn.tit.8,102(b)(7)(2001). LisaM.Fairfax,SparetノleRod,町フo〃tノZeD舵cto『?Reujm"zj7zgDかecto7s'FY血cj〃y Dutythro昭ノiLegal〃αbility,42Hous.L.Rev.393at405(2005). Blac〃もLawDictio"αry,supγαnote1at581. mなお、模範事業会社法は、「取締役会の構成員は、取締役としての義務を尽くす際、誠実 に、会社の利益になると合理的に信ずる方法において、行動すべきである。」と規定する。 ModelBus.Corp.Act8.30(a)(2000). Guthv.Loft,Inc.,5A.2d503(Del.1939).本件の概要は以下の通りである。シロップ等の 飲食料の製造販売を営むLoft社の取締役及び代表者であったCharlesGuth氏(以下「Guth 氏」という。)は、Pepsi-Cola社(以下「Pepsi社」という。)の業績低迷に接し、Pepsi社を 再建させるため、Loft社の資金、設備、従業員等を利用する計画を内密に進めていた。これ に対して、Loft社は、Loft社がPepsi社を買収する事業機会(corporateopportunity)が あったことを理由に、Guth氏に対して訴えを提起した。Loft社は、Guth氏は内密に計画を 進める前にPepsi社を買収する機会に関する情報をLoft社に伝え、Loft社にPepsi社の買収 に関する最初の選択権を与えなければならなかったと主張した。 、、at510. CarterG.Bishop,supranote6at924. ArthurR・Pintoetal.,supranote7at221-222. 〃・at222. m. 〃. 〃. Id. Id.set223.忠実義務は、一般に、①取締役が会社の有する潜在的な事業機会(corporate opportunity)を侵奪する場合、②取締役と会社との利益相反取引(conflictofinterest)が 行われる場合、③役員報酬(executivecompensation)等に分類される。RobertC.Clark, supranote14at142.,StephenM.Bainbridge,supranote28at151.,カーテイス・』・ ミルハウプト・前掲注(5)77頁。例えば、Guth事件において、デラウェア州最高裁は、「あ る会社が財政的に引き受けることができる事業機会があり、それが当該会社の役員や取締役に とって利用可能であるならば、そのような事業機会は、その性質上、当該会社の営業と同種・ 同様のものであり、実際上の利益が伴うものであり、会社が関心と合理的な期待を有するもの であり、その機会を捉えることによって当該会社の役員や取締役の個人的利益が会社の利益と 衝突し、役員や取締役に対して、法が彼らの利益のためにその機会を利用することを許さない ものである。」と述べ、会社の事業機会の侵奪に関する要件を明らかにする。Guthv.Loft, Inc.,supranote45at510. 41 42 43 44 45
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− 1 5 − 帝ー ユ デラウェア州会社法における取締役の誠実性概念の展開 55 56 57 CarterG,Bishop,sup7anote6at921-922. Del.CodeAnn.tit.8,102(b)7)(2001). 忠実義務違反に基づく取締役の責任を判断する際、経営判断の原則の保護、及び基本定款によ る責任の免除は認められない。従って、原告は、より厳密な司法審査の利益を得るため、被告 の活動を忠実義務違反として‘性格付けようとすることが多くなる。ArthurR.Pintoetal., sup7anote7at221. 取締役の誠実義務が問題となる局面においては、通例、「誠実(goodfaith)」、「不誠実(bad faith)」、「誠実に行動しないこと(failuretoactingoodfaith)」、「誠実性の欠如(lackof goodfaith)」等の用語が互換的に用いられる。 この問題を扱った主要な文献は、他の箇所に掲げたもののほか、以下のものがある。See,e、9., ClaireMooreDickerson,FromBeノZ加dtheLoohmgGlass:GoodFaitノI,Fi血ciaryDuty &PermittedH上irm,22Fla.St.U.L・Rev.955(1995).,KarolynKnaackSteves,Note, D舵c加沌DutytoProtecttheCorpo7a伽励かomHarm:GoodFa虻ノiinBoardOversigノIt AfterCaremark,35Tex.J.Bus.L.32(1998).,DavidRosenberg,Ma蹴昭SenseofGood FaitノIinDelauノa7eCorporateFiduciaryLaw:ACo"かactαγjα〃A〃γoacノI,29Del.J. Corp.L.491(2004).,HillaryA.Sale,Delai"are'sGoodFaitノI,89CornellL.Rev.456 (2004).,DavidRosenberg,Making艶"seOfGoodFtlithInDelauノareCorporate 例duciaryLauノ,29Del.J.Corp.L.491(2005).,ChristopherM.Bruner,GoodFaitノI, StateOfMi凡必AndTheOuterBo皿"dα池s〃Directo『〃α〃ityInCorporateLauノ.41 WakeForestL.Rev.1131(2006).,ClaireA.Hill,BrettH.McDonnel,Disney,Good FaitノI,AndStructuralBias,32J.Corp.L.833(2007).,HillaryA.Sale,Mon伽γ加g C上zremα『腕GoodFaだん,32Del.J.Corp.L.719(2007).,MarkJ.Loewenstein,The D加e増ingMeaningofGoodFaitノI,34Del.J.Corp.L.433(2009). MelvinA.Eisenberg,TheDutyofGoodFaithinCorpoγα舵Lauノ,31Del.J.Corp.L. 1at42006). Del.CodeAnn.tit.8,145(2001). Del.CodeAnn.tit.8,141(e)(2001). Del.CodeAnn.tit.8,144(a)(l)(2)(2001). StephenM.Bainbridge,supranote28at161. 〃・ Cede&Co.v.Technicolor,Inc.,634A.2d345(Del.1993). 〃・at361. Cede事件以降、誠実義務が独立した信認義務の1つであるとの理解を示したものとして、以下 の判決がある。Cinerama,Inc.v.Technicolor,Inc.,663A.2d1156(Del.1995).,Malonev. Brincat,722A.2d5(Del、1998).,EmeraldPartnersv.Berlin,787A.2d85(Del.2001). InreCaremarkInternationalInc.DerivativeLitigation,698A.2d959(Del.Ch.1996). 本件の解説として、伊勢田道仁「従業員の違法行為と取締役の監視義務」商事法務1526号(1999 年)44頁以下がある。 58 59 60
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0 69一 . p ■ 沖 縄 大 学 法 経 学 部 紀 要 第 1 5 号 70 71 Id,at969-970. InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,906A.2d27(Del.2006).本件 の解説として、釜田薫子「取締役の経営判断と誠実義務」商事法務1787号(2006年)45頁以下 がある。 釜田・前掲注(71)47頁以下参照。 InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,731A.2d342(Del・Ch.1998). Brehmv.Eisner,746A.2d244(Del.2000).本件の解説として、釜田薫子「デラウェア州 の株主代表訴訟における提訴請求免除の要件」商事法務1603号(2001年)52頁以下がある。 InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,825A.2d275(Del.Ch.2003). 本件の解説として、川口恭弘「経営判断の原則と取締役の誠実義務」商事法務1730号(2005年) 31頁以下がある。 InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,907A.2d693(Del.Ch.2005). Id.at753. m・ InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,supranote71at64-66. Id.at67. StoneV.Ritter,911A.2d362(Del.2006).本件の解説として、近藤光男「従業員に対する 監視と誠実義務」商事法務1807号(2007年)35頁以下、拙稿「取締役の誠実'性と内部統制シス テム」法律論叢80巻4.5号(2008年)213頁以下がある。 Id.at367-370. m・at370. LyondellChemicalCo.v.Ryan,970A.2d235'(Del.2009).本件の解説として、藤林大地 「会社の売却と取締役の誠実義務」商事法務1891号(2010年)42頁以下、拙稿「合併契約締結 時における取締役の誠実性」沖縄大学法経学部紀要13号(2009年)75頁以下がある。 Ryanv.LyondellChemicalCo.,2008WL2923427(Del・Ch.). Revlonv.MacAndrews&ForbesHoldings,Inc.,506A.2d173(Del.1986).本件の解説 として、吉井敦子「敵対的公開買付けでの取締役の責務の変化」商事法務1230号(1990年)37 頁以下がある。 デラウェア州判例法においては、M&A取引の際の取締役の信認義務違反を判断する際、経営 判断の原則を基本としつつ、買収対象会社の支配権の変動を伴わない場合にはUnocal基準 (UnocalCorp.v.MesaPetroleumCo.,493A.2d946(Del.1985).本件の解説として、近 藤光男「差別的自己株式の買付けとその防衛策」商事法務1144号(1988年)33頁以下がある。)、 支配権の変動を伴う場合にはRevlon基準が適用され、取締役は、株主の利益のために最適な 売却価格を得なければならない義務を負う(Revlon義務)。 LyondellChemicalCo.v・Ryan,sup『αnote84at239. StoneV・Ritter,supranote81at370. LyondellChemicalCo.V.Ryan,supranote84at240. StoneV.Ritter,supranote81at370.
234777
75678901777788
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− 1 7 − 可・→ PhDー ユ デ ラ ウ ェ ア 州 会 社 法 に お け る 取 締 役 の 誠 実 性 概 念 の 展 開 92 93 1m. ClaireA.Hill,BrettH.McDonnell,supranote14.at1770-1771.,StephenM. Bainbridge,supranote28at162. 〃・ ClaireA.Hill,BrettH・McDonnell,sup7anote14at1796. 前掲注(87)参照。 前掲注(86)、(87)参照。 Revlon基準は、Unocal基準を覆すものではなく、Unocal基準の適用場面を限定したものと 考えられている。カーテイス.J・ミルハウプト・前掲注(5)205頁。従って、Revlon義務 は注意義務の問題と理解される。 AndrewS.Gold,TノleNeuノConceptOfLoyaltyInCO叩oγαteLauノ,43U.C.DavisL. Rev.457at501-502(2009. See,〃・at459-464.,ClaireA・Hill,BrettH.McDonnell,supranote14at1769-1771. StephenM.Bainbridge,StarLopez,BenjaminOklan,TノleConvergenceofGoodFaitノz