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JAIST Repository: 企業の競争力構築プロセス : 日米ハイテク企業の比較(国際競争力・産業競争力(3),一般講演,第22回年次学術大会)

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Academic year: 2021

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 企業の競争力構築プロセス : 日米ハイテク企業の比較 (国際競争力・産業競争力(3),一般講演,第22回年次学 術大会) Author(s) 安田, 洋史 Citation 年次学術大会講演要旨集, 22: 708-711 Issue Date 2007-10-27

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/7374

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

(2)

2E14

企業の競争力構築プロセス:日米ハイテク企業の比較

○安田洋史(株式会社東芝)

1.はじめに 企業はその経営資源や能力を外部環境に適合するように戦略を選定する。(Grant,1991) 優れた経営資 源の確保が競争力の源泉を生み出し、これが企業の競争力を構築する。特に外部環境の変化が激しく、 また求められる経営資源が広範であるハイテク業界で事業を行う企業にとっては、他社にない差別化さ れた経営資源を質量ともに確保することが、厳しい競争に勝ち残るためには不可欠である。このために 企業は経営資源への投資を行い、必要となる資金を調達する。これが企業が競争力を構築し成長してい くための最も基本的な行動原則である。無論、競争力構築の要因は多岐にわたり、それを一つのパター ンや戦略で語ることはできない。成功した企業の戦略を分析すると、そこには多くの要因が複雑に絡み 合っていることが明らかとなる。しかし一方で、そのような多くの要因の根底には、企業がいかに資金 を調達し、投資を行い、経営資源を確保し、競争力の源泉となる優位性を作ってきたか、という基本パ ターンが必ず存在する。 本稿では企業の競争力構築プロセスを、資金調達→投資→経営資源の確保→競争力源泉の創出というス テップで説明し、さらにこれによって創出される事業収益と資金がさらなる投資と経営資源確保に繋が っていく、という循環サイクル・モデルを提示する。そしてこの競争力構築プロセスの視点から、日米 ハイテク企業の成長の差異の分析を試みる。日米の主要企業の事例分析に基づき、過去 10 年間にみら れる競争力の盛衰を、このプロセスの相違と関連つけて論じる。 2.競争力構築の循環サイクル・モデル 先に述べた競争力構築プロセスをモデル化したのが図1である。(Yasuda、2007)企業の競争力は成長 率や収益率などいくつかの指標によって捉えることができる。他社に優る成長率や収益率を可能にする ものが競争力の源泉であり、これには、生産、技術、販売などの領域ごとに様々な要因がある。例えば 高生産能力、高スループット、低コストなどは生産領域での重要な競争力の源泉である。同様に、技術 領域では迅速な新商品提供、差別化技術の保有、付加価値製品など、また販売領域では戦略的顧客との 連携、グローバルな販売体制、市場支配力の確保などが、競争力の源泉となる。

このような競争力の源泉を生み出すのは企業の有する経営資源である。

(Mothe and Quelin, 2001)

有 形資源、無形資源、人材資源など様々な経営資源が生産、技術、販売の領域に存在する。そしてこのよ うな経営資源を質的および量的に確保するために企業は投資を行う。生産に関する経営資源を確保する ための生産投資、同様に技術のための技術投資、販売のための販売投資が行われる。生産、技術、販売 いずれの投資であってもその原資となるのは、企業が製品やサービスを提供することで生み出す営業キ ャッシュフロー(C/F)である。すなわち企業は営業キャッシュフローを投資に転じ、これによって経営 資源を強化することで競争力の源泉を生み出し、構築された競争力からさらなる営業キャッシュフロー を生み出していく。そして、これが一層の投資を可能とし、益々の競争力を構築していく。このような 投資→経営資源の確保→競争力源泉の創出→競争力構築→営業キャッシュフローの創出→投資、という 循環サイクルにより企業は成長していく。いかにこのような循環サイクルを実現するかが企業が成長す るための不可欠の要因である。循環サイクルを実現できない企業は競争力を失い衰退していく。

(3)

図1.競争力構築の循環サイクル・モデル 上に述べた循環サイクルは、投資を行うのに必要な営業キャッシュフローが事業から得られている状態 を前提としたものである。しかし十分な営業キャッシュフローが事業から得られていない場合、企業は 循環サイクルを実現するために、他の方法で資金調達を考慮しなければならない。これが財務活動から 得られる資金フロー、すなわち財務キャッシュフローの活用である。例えば、株式や社債の発行、銀行 からの借り入れにより資金を調達して投資に向けることになる。図2(a)は、営業キャッシュフローの レベルはいまだ十分ではないが、これに財務キャシュフローを加えた規模の投資を行うことにより、質 的にも量的にも優位な経営資源を確保し、成長の循環サイクルを実現していくパターンを示してある。 一方、図2(b)は財務キャシュフローの活用を行わず、営業キャッシュフローの範囲内でしか投資を 行わないために、なかなか成長の循環サイクルを実現できないパターンを示してある。この二つのパタ ーンの対比が示すことは、資金調達とそれによる投資の実行が、循環サイクルを実現し企業が競争力を 構築していくうえで重要な要因となる、ということである。 図2.成長の循環サイクルと財務キャッシュフロー 企業の競争力  企業の競争力   企業の競争力  企業の競争力  企業の競争力  投資資金 投資資金 投資資金

(a)

(

b)

営業資金 営業資金 営業資金 投資資金 投資資金 営業資金 営業資金 企業の競争力  財務C/F 企業の競争力   財務C/F 企業の競争力  企業の競争力  企業の競争力  投資C/F

(a)

営業資金を超えた投資による成長パターン

(

b) 

営業資金に縛られた投資による非成長パターン 営業C/F 営業C/F 営業C/F 営業C/F 営業C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 財務C/F 財務C/F 営業C/F 営業C/F 企業の競争力  企業の競争力   企業の競争力  企業の競争力  企業の競争力  投資資金 投資資金 投資資金

(a)

(

b)

営業資金 営業資金 営業資金 投資資金 投資資金 営業資金 営業資金 企業の競争力  財務C/F 企業の競争力   財務C/F 企業の競争力  企業の競争力  企業の競争力  投資C/F

(a)

営業資金を超えた投資による成長パターン

(

b) 

営業資金に縛られた投資による非成長パターン 営業C/F 営業C/F 営業C/F 営業C/F 営業C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 投資C/F 財務C/F 財務C/F 営業C/F 営業C/F 企 業 の 競 争 力 生 産 投 資 R & D 投 資 販 売 投 資   生 産 資 源   ・ 生 産 体 制     ・ オ ペ レ ー タ ・ 生 産 設 備 技 術 資 源   ・ 開 発 体 制     ・ 技 術 者 ・ 開 発 設 備 販 売 資 源   ・ 販 売 チ ャ ネ ル ・ 営 業 ス タ ッ フ ・ 販 売 設 備 生 産 技 術 販 売 投 資 C /F 営 業 C /F 競 争 力 の 源 泉 経 営 資 源 生 産 力     ・ 高 生 産 規 模 ・ 高 ス ル ー プ ッ ト ・ 低 コ ス ト 技 術 力     ・ 新 商 品     ・ 差 別 化 技 術 ・ 付 加 価 値 商 品 販 売 力     ・ 戦 略 顧 客 ・ グ ロ ー バ ル 販 売 ・ 市 場 支 配 財 務 C /F 企 業 の 競 争 力 生 産 投 資 R & D 投 資 販 売 投 資   生 産 資 源   ・ 生 産 体 制     ・ オ ペ レ ー タ ・ 生 産 設 備 技 術 資 源   ・ 開 発 体 制     ・ 技 術 者 ・ 開 発 設 備 販 売 資 源   ・ 販 売 チ ャ ネ ル ・ 営 業 ス タ ッ フ ・ 販 売 設 備 生 産 技 術 販 売 投 資 C /F 営 業 C /F 競 争 力 の 源 泉 経 営 資 源 生 産 力     ・ 高 生 産 規 模 ・ 高 ス ル ー プ ッ ト ・ 低 コ ス ト 技 術 力     ・ 新 商 品     ・ 差 別 化 技 術 ・ 付 加 価 値 商 品 販 売 力     ・ 戦 略 顧 客 ・ グ ロ ー バ ル 販 売 ・ 市 場 支 配 財 務 C /F

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3.日米ハイテク企業の比較分析

ここでは、前節に述べた競争力構築プロセスの視点から日米ハイテク企業の成長の差異について分析す る。この目的のために半導体業界における日米主要企業の事例を取り上げる。半導体事業は、ハイテク 業界のなかでも特に大規模な設備投資、最先端の技術開発、グローバルな販売ネットワークで特徴づけ られ、そのための投資やそれに必要となる資金調達がとりわけ重視される。(Chen & Sewell, 1996)ま た特に過去 10 年間、この業界では日米企業間において競争力の大きな変化がみられた。市場シェアを 比べてみると 1990 年代の半ば、日本企業と米国企業のシェアはそれぞれほぼ市場を二分にていた。そ の後、十年間、米国企業のシェアは微増した一方で、日本企業のそれはほぼ半減してしまった。本稿で は、この対照的な現象を上に述べた競争力構築プロセスの視点から分析する。分析対象として、半導体 業界において 2005 年度売上高の上位 20 社に含まれる日米企業を選定する。ここには米国企業 7 社、日 本企業 8 社が含まれる。この合計 15 社を対象として 1994 年から 2004 年までの 10 年間にわたり各社が 公表した業績および財務データを用いた比較分析を行った。 まずこの 10 年間の各社の売上高成長率を比較した。成長率上位は米国企業が占めており、その平均値 は米国企業が 9.0%であるのに対して日本企業は 3.2%である。上記成長モデルに従うと、このような成 長の原動力となるのは強力な経営資源の確保であり、これを可能にするのは積極的な投資である。この 投資活動を比較するために、売上高に対する投資額の比率を「投資比率」として、この 10 年間の各企 業の投資比率を算出した。日米企業を比較すると、やはり投資比率上位は米国企業が占めており、平均 値をみると米国企業が 19.4%であるのに対して日本企業は 7.5%と大きな差がある。図 3 は成長率と投資 比率との間の相関分析の結果であり、この両比率の間には強い相関が確認される。米国企業の多くは図 中の右上に位置しているのに対して、日本企業の多くは左下に位置している。これば米国企業の高い成 長率が高い投資比率に起因している可能性を示している。 図3.売上高成長率と投資比率との相関 さらに上記成長モデルに従うと、積極的な投資活動は営業活動からのキャッシュフローに加えて財務活 動から得られるキャッシュフローを活用してその規模を拡大することによって実現される。この財務活 動からの資金調達レベルを評価する指標として、投資額に対する財務キャッシュフローの比率を「財務 比率」とし、同様にこの 10 年間にわたる各企業の財務比率を算出した。日米企業を比較するとやはり、 財務比率上位は米国企業が占めており、平均値をみると米国企業は 17.7%であるのに対して日本企業は -16.1%と好対照であった。図 4 は投資比率と財務比率との間の相関分析の結果であり、やはりここにも 相関がみられる。先と同様に、米国企業の高い投資比率がその高い財務比率に起因する可能性を示して いる。 0% 5% 10% 15% 0% 10% 20% 30% 売上高成長率 = 0.003 + 0.428 x 投資比率 相関係数 = 0.786 P値=0.0005 投資比率 (94-04) 売上 高成 長率 (94-0 4 ) 米国企業 日本企業 0% 5% 10% 15% 0% 10% 20% 30% 売上高成長率 = 0.003 + 0.428 x 投資比率 相関係数 = 0.786 P値=0.0005 投資比率 (94-04) 売上 高成 長率 (94-0 4 ) 米国企業 日本企業

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図4.投資比率と財務比率との相関 4.まとめ 本稿では企業が競争力を構築していくプロセスを循環サイクルとしてモデル化した。また強力な経営資 源を確保するための投資、およびその投資規模を達成するための財務資金の活用、がこの循環サイクル を実現するための重要な要因であることを指摘した。そしてこのモデルの視点から、過去 10 年間にわ たる日米半導体企業の競争力構築の差異を分析した。企業の成長率とその投資比率との間、および投資 比率と財務比率との間の相関関係が明らかとなり、日米企業間の競争力構築の差異の要因として、それ ぞれの投資活動および財務活動への取り組みの相違がある点を指摘した。むろん、競争環境や事業内容 が複雑になるなかで、競争力構築の背景となる要因も多岐にわたり特定の理由のみで現象を説明できる ものではない。しかし、ここで指摘した点が一つの重要な要因であり得るとしたら、今後さらにその分 析を精緻なものとし、競争力構築に向けた施策を真剣に検討していく必要がある。また、市場主導型と 銀行主導型、直接金融主体と間接金融主体、と対比される日米それぞれの資本市場の特質や構造の相違 が、企業の財務活動の相違に反映していることは容易に推測される(Gowen and Tall, 2002)。企業の競 争力構築プロセスを論じるにあたって、企業活動のインステイチューション(Institution)としての 資本市場との関係を分析していくことも、今後の研究課題として考えたい。

参考文献

Yasuda, H. (2007) ‘Creation of firms’ competitiveness through finance activities', Japan Journal of Finance, Vol.27 (to be publicshed).

Chen, C. and Sewell, G. (1996) ‘Strategies for technological development in South Korea and Taiwan; the case of semiconductors', Research Policy, Vol.25, pp.759-783.

Grant, R.M., “Resource based theory of competitive advantage: implications for strategy formulation”, California Management Review, Spring, 1991, pp.114-135.

Gowen, C. and Tallon, W. (2002) ‘Turnaround strategies of American and Japanese electronics corporations: How do they differ in formulating plans and achieving results ?’, The Journal of High Technology Management Research, Vol.13, pp.225-248.

Mothe, C. and Quelin, B. (2001) ‘Resource creation and partnership in R&D consortia', Journal of High Technology Management Research, Vol.12, pp.113-138.

0% 10% 20% 30% -80% -60% -40% -20% 0% 20% 40% 60% 財務比率 (94-04) 投資 比率 (94-04) 投資比率 = 0.131 + 0.094 x 財務比率 相関比率 = 0.419 P値=0.12 米国企業 日本企業 0% 10% 20% 30% -80% -60% -40% -20% 0% 20% 40% 60% 財務比率 (94-04) 投資 比率 (94-04) 投資比率 = 0.131 + 0.094 x 財務比率 相関比率 = 0.419 P値=0.12 米国企業 日本企業

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