共愛学園前橋国際大学公開講座 この10年
~地域の学習ニーズに応えて~
鈴木泰
はじめに 公民館、カルチャーセンター等での生涯学習人口は、年々増え続け、「平成20年度文部 科学白書」によると、延べ約4200万人に達した1)。 国民の生涯学習へのニーズは高い。内閣広報室の2008年「生涯学習に関する世論調 査」によると、生涯学習を「今後してみたいと思う」48%、「どちらかといえばしてみた いと思う」23%、あわせると71%である2)。 高度な学習へのニーズも増大するはずである。国民中の大卒比率は、NHK世論調査の サンプル構成でみると、78年の12%から08年36%と3倍に増加している3)。高度な 学習へのニーズに対応する大学公開講座は、07年度では、開設校数1015、講座数3 2260、年間128万人の受講者がある4)。この受講者数も増加している。 大学が行う生涯学習プロジェクトには、公開講座や公開授業、シンポジウム、出前授業 等がある。群馬県内の大学でも数の差はあるが、すべての大学で公開講座・学術講演会、 シンポジウムを開催している5)。 共愛学園前橋国際大学も、1999年の開学以来、公開講座、英語教室やスポーツ教室、 出前授業、シンポジウムなど、年々、学習機会を多様化し、地域の生涯学習、学校教育に 寄与してきた。共愛学園前橋国際大学開設10周年を振り返るに当たり、地域の教育ニー ズを満たし、研究成果を地域に還元する公開講座関係の事業を総括し、今後の一層の発展 に資することとしたい。 1 前橋国際大学(以下本学と記述)生涯学習関連事業実施状況 本学の行ってきた、主な生涯学習関連事業は以下のとおりである。 公開講座(開学以来、毎年1回ないし2回) 地域共生センター設立記念生涯学習講座(08年) 「やさしい陶芸」(5回) 「旅に役立つ英語」(5回) 「託児ボランティア養成講座」(5回) 「パソコンはじめて教室」(4回)「生涯学習スポーツ バドミントン実技」(05年) 前橋市「木瀬地域の歴史を学ぶ」(4回、09年、学外) このほか、08年国際心理学シンポジウム「子どもの小遣いをどう教えるか」や08年 国際教育学会研究大会が実施され、共愛学園中学・高校・大学保護者後援会の文化講演会、 児童英語教員養成プログラム、日本語教員養成プログラムがある。 以下、本学で毎年、実施している「公開講座」について、詳しく見てゆこう。なお、他 大学の公開講座の定義と数え方は、必ずしも統一がとれていない。そこで、以下は、常識 的に、公開講座を一般市民を主たる対象とした講義・講演、技能訓練・実習と定義し、演 奏のみやコンクールは除くこととした。なお、大学正課の授業を一般に公開する公開授業 も、合わせて扱うこととした。主に学内で開かれる場合を主とし、学外での小規模な出張 講義は省いた。 (1) 本学公開講座開催頻度 一般成人向けの公開講座は、年 1 講座(2000年のみ2講座)、1講座1テーマで、9 9年~03年は5日間、04年以降は4日間、開催してきた。原則1日ごとに1名の講師 で1時間半の講演、30分の質疑という形をとっている。なお、本学の教員数は33であ る。 (2) 本学公開講座のテーマと講師 テーマはp24別表に示す通りであるが、大別すると、過去10講座のうち国際関係が 6講座を占める。残りの4講座は、こころ、教育問題、テレビといった社会・文化関係と 歴史である。他の大学では、第5章(3)にみるように、教養、語学、文学が多いが、本 学では、いずれも尐ない。本学は、規模の割に授業科目数が多く、広い分野をカバーして いるが、学内持ち回りを取らず、受講者ニーズ重視でテーマを決定した結果であろう。 講師については、当初から学外からも招聘しているが、10年間の開催回数(日数)5 3回中13回、1/4に過ぎない(非常勤や元常勤は学内扱いとした)。研究結果の地域還 元と学内公開を重視し、すべてを部外講師に頼ることはしていない。 (3) 本学公開講座の対象と受講料 対象は県内一般成人である。在学生、学園高校生にも呼び掛けているが、授業で特に受 講を勧めることもある。受講料は1講座2000円(高崎経済大学と同額。他の大学は無 料が多い)。在学生や教職員は無料である。 (4) 本学公開講座の周知 上毛新聞、読売、朝日3社に新聞広告を載せるほか、折込みチラシ、140通のDM送
付、公民館などへのチラシ(ポスター兼用)送付を行っている。折込みチラシ配布範囲は 前橋、伊勢崎近辺である。本学HP、群馬県生涯学習センター「まなびねっとぐんま」H Pで紹介される。 08年本学公開講座受講者アンケートによると、受講者が開講を知ったのは、①DM4 7%、②新聞広告44%、③新聞折込み29%によってである。なお、県2004年調査 によると、県内大学の公開講座広報手段で多いのは、①チラシ90%、②マスコミ80% ③HP75% ④県市町村広報誌50%であり、受講者の認知方法とやや違っている6)。 2 本学公開講座受講概況 過去10年間の本学公開講座受講者数は、表1のとおりである(詳細p24別表参照。 00年は2講座開催、*は5日間、その他は4日間の開催)。 表1 前橋国際大学公開講座受講者数 延べ数 1回当り 延べ数 1回当り 99年 * 不明 04年 290名 73名 00年①* 86名 17名 05年 145名 36名 00年② 137名 34名 06年 143名 36名 01年 *351名 70名 07年 187名 47名 02年 *183名 37名 08年 317名 79名 03年 *147名 29名 09年 307名 77名 受講者数は、10年間にやや増加し、04年以降は1回当り10名台や20名台はなく なった。一方、群馬県の04年調査によると7)、表2のように県内の大学では10名台、2 0名台の講座が4割近くもある。 表2 群馬県内大学・短大公開講座受講者数別分布(04年) 9名以下 7講座 100~149名 10 10~19名 13 150~299名 2 ^ 20~29名 16 300~499名 4 30~39名 7 500~699名 5 40~49名 10 700~899名 0 50~69名 12 900名以上 1 70~99名 9 計 96講座
本学で受講者が目立って多かったのは、01年の「群馬の20世紀をふりかえる」、04 年の「今、国際社会は・・・」、08年の「みんなが知りたい中国」である。 うち、04年と08年は、時事的にタイムリーなテーマ、内容であったためであろう。 04年は、アメリカ大統領選挙の年で、朝日新聞アメリカ総局長、ニュースキャスターで あった高成田亨客員教授が、選挙の10日後、アメリカから帰国しての講演があったし、 08年は、北京オリンピックの3カ月後で、テレビにも出演している東海大学葉千栄教授 の講演があった。 01年は、日本人の歴史好きに対応し8)、熟年の多い受講者にマッチしたこと、前年にN HKが「映像の20世紀 群馬」を放送したことの影響があると思われる。 3 本学公開講座受講者の特徴 毎回、受講される常連がおられる9)。06、07、08の3カ年の受講者の年度間重複状 況をみると、3年とも受講した人は9名、2年間受講した人は29名であった。2年以上 申しこんだ人を年度別にみると、次のとおりで、多い年は常連が半数を占めている。 06年「子どもと教育をめぐって」 41%(24/58名) 07年「世界から日本をみると」 50%(34/68名) 08年「みんなが知りたい中国」 26%(28/107名) 07年の常連34名の構成をみると、男性7割、女性3割で、年代別では男性50代以 上が6割を占める。 受講を認めているが、学生の受講者は尐なく、数名程度である。高校生は稀である。な お、学生が参加すると、他の受講者からマナーについての指摘があるのは、どの大学も同 じようだ。毎回、ご夫婦らしき、名字、住所が同じカップルの参加が数組ある。 次に、年ごとに受講者について、学生、教職員を除き、地域、年齢構成を調べた。 * 性、年齢構成(表3) その年のテーマによって、かなり異なるが、50代以上の男性が多く、全体の半数以上 を占めるのが普通である。06年の「教育問題」のときのように女性が多いのは珍しい。 なお、古い数字だが、01年の文部省調査では、国立大学で男女同程度、公立、私立で女 性6割という結果がある10)。 県立女子大の「公開講座」(08年、後述)では、女性82%、 60代52%であり、高齢者が多いという点では共通している(女性が多かったのは、「源 氏物語」に人気があったためで、テーマによって、受講者がかなり変わるということであ る)。本学でこれまで男性が多かったのは、テーマが国際社会であったためではないだろう か。 * 居住地域(表3) 毎回、前橋からが4割で、高崎、伊勢崎を合わせれば8割を占める。ただし、1,2割
であるが、かなり遠くから来学されており、全県に散らばっているといってよい。 なお、前橋市内で本学所在の小屋原町、隣接の上増田町、笂井町、駒形町、下大島町、 下長磯町からの参加者は、02年5名、06年3名、07年4名、08年10名である。 もう尐し範囲を広げれば、大学近辺からの受講者は2割を超えるであろう。 表3 前橋国際大学公開講座受講者の属性 (受講申込者名簿から、全て欠席した人と在学生を除いたもの) <年齢構成> 02年 06年 07年 08年 男70歳以上 9 15% 9 18% 14 22% 13 13% 60代 15 24 2 4 13 20 27 27 50代 8 13 3 5 12 18 17 17 40代 3 5 3 5 4 6 10 10 30代 0 0 1 2 1 2 0 0 20代以下 0 0 0 0 0 0 2 2 不明 2 4 3 5 0 0 3 3 男計 37 60% 21 38% 44 68% 72 73% 女70歳以上 0 0% 1 2% 2 3% 4 4% 60代 4 6 5 9 6 9 6 6 50代 6 10 8 15 3 5 7 7 40代 5 8 8 15 7 11 6 6 30代 5 8 6 11 2 3 2 2 20代以下 2 4 1 2 1 2 2 2 不明 3 5 6 11 0 0 0 0 女計 25 40% 34 62% 21 32% 27 27% 総計 62名 55名 65名 99名 <居住地域> 09年の市町村区分で記載 02年 06年 07年 08年 前橋市 26 42% 22 42% 32 48% 42 42% 高崎市 13 21 15 28 10 15 12 12 伊勢崎市 11 18 5 9 11 17 23 23 みどり市 1 1 3 1
桐生市 0 0 0 1 太田市 0 1 1 2 大泉町 0 0 0 2 邑楽町 0 0 1 1 館林市 0 0 0 1 沼田市 1 4 2 3 渋川市 2 0 1 0 吉岡町 0 0 1 1 みなかみ町 0 0 0 1 東吾妻町 1 1 1 2 榛東村 0 0 0 1 安中市 1 2 0 1 藤岡市 3 2 2 0 埼玉県吹上町 1 0 0 0 総計 62名 53名 65名 99名 4 本学受講者の評価と声 (1) 満足度 毎回、満足度は高い。04年、08年は、受講者も多く、満足度も高いことになる。 表4 前橋国際大学公開講座満足度(受講者アンケートによる) 04年 05年 06年 07年 08年 大変満足した 16% 11% 12% 8% 14% 満足した 63 54 52 62 59 ふつう 19 29 24 30 24 あまり満足しなかった 3 4 9 0 0 大変満足しなかった 0 4 3 0 0 平均スコア(5点満点) 4.0 3.6 3.6 3.8 3.8 (2) 受講料 2000円に対して、08年の受講者の評価は、「適正」77%、「安い」23%、「高 い」2%である。 (3) 時期 毎回、10月から12月初旬の土曜日に開催している。08年の受講者によれば、「こ
の時期がよい」が74%、ほかの時期希望は18%に過ぎず、しかも、時期が分散してい る。 (4) 評価する点 受講者アンケートの自由記述からみると、「現在の問題について、問題点をわかりやすく、 具体的に面白く聞けた」ということが主である。これは、特に著名な部外講師の講演の時 に多い。「マスコミが触れない裏事情」「ふだん会えない先生の話がきけた」のほか「資料 が充実」もある。 (5) 不満点・要望 今後のために、不満について、06年(教育問題)と08年(中国)の2回のアンケー トから詳しく見てゆきたい。 満足点についての記述が同じことに集中するのに対し、不満点は多岐にわたる。 受講者には、講演での客観的分析が不評である。「どうあるべきか、結論を聞きたい」「本 質を」「重要事項を」「歴史でなく現在を知りたい」「広く浅くでなく、絞った具体的な話を 聞きたい」「参加型の講座を希望」など、一言でいえば、現在と実践につながる話を聞きた がっている。これは好評の部外講師の場合でも同じであり、「最近の問題に触れていない」 という不満になる。参加型の講座への要望は尐数であるが、あるべき一つの形であり、実 現すれば希望者の充足度は高いのではないか。先端をゆく公開講座担当者にも、団塊の世 代が受講者になった時、双方向性の授業とか自己表現への意欲に応えるスタイル、講師の 用意が必要と述べる人もいる 11)。ただし、受身で知識だけ増やしたいという受講者が多い かも知れず、検討が必要だろう。そのほか、多いのが、部外有名講師の場合、「もっと聞き たかった」「30分は延ばしてほしかった」である。 学内講師に、「よりよい話術」を求める声がある。話し上手な部外講師との対比からの指 摘であろう。最初から話を聞こうとする姿勢がある公開講座受講者の指摘は耳が痛い。受 講者には熱心な人が多い。著名人講師の場合、受講前に参考書を読み、勉強したという人 が複数いる。 5 公開講座の課題 (1) 調査データによる概観 群馬県の2004年調査によると、県内大学等高等教育機関公開講座の課題は、①「周 知が不十分」65% ②「参加者が集まらない」50% ③「予算不足」45% に集中 している。ついでは④「ニーズにあったプログラム開発」25%である。本学もそれほど 切実ではないが共感するところである。 これら3点は、相互に関連が深い。参加者が尐ない講座は、前述のとおり、かなりの割 合である。⑥「他機関との競合」も参加者不足につながる。参加者拡大のためには周知と
魅力ある部外講師が必要で、「予算不足」がネックとなる。ただ、「競合」も「プログラム 開発」も⑤「スタッフ不足」⑥「講師の情報」も、大学の検討努力で変えうる部分である。 また、かなり古いが、より詳しく公開講座の課題を調べた全国調査があるが12)、実情は そう変わっていないようである。①「教育資源の不足」32% ②「学習プログラムの問 題」29%、③「教職員の勤務条件の悪化」13%という結果であるが、山本慶裕は、こ の調査から大学公開講座の課題を大別して、第一の課題を①、第二の課題を③、第三の課 題を「本来の大学運営に支障をきたす」とし、大学側の正直な言い方をそのまま紹介して いる。これは、大学経営の厳しさと大学の生涯学習についての認識不足を反映している。 最近では、瀬沼克彰の具体的な問題指摘があるが、その中でも、受講者の尐なさ、受講 料収入と運営費、競争の激化は、上記と重複している13)。 06年の大学公開講座研究会による加盟校調査によると 14)、講座運営の課題として特に 多いのは、①会場の確保59% ②実施に対する学内意識55% ③講座内容の企画4 9% で、以下、日程、費用、受講者年齢の偏り、広報の順となっている。公開講座に積 極的な大学での課題のようだ。 (2) 経費 全体を把握する最近の調査データがなく、首都圏と群馬県で若干取材しただけであるが、 受講料の額はさまざまである。群馬県内では、無料が多い。例えば、高崎健康福祉大、上 武大、関東学園大、東京福祉大、高崎商科大、県立女子大(受講カード作成が実費)が無 料である。群馬大学は半分が無料・半分が有料(1講座 数千円)、高崎経済大は本学と同 じ2000円である。なお、古いデータであるが、01年の文部省調査によると、「全て無 料」は公立大、私立大は3割、国立大は0%であった。 瀬沼は、そのころの先進校調査から、「私大、短大では無料で開催しているところが多く、 有料にしようという意志は弱いようである」。それに対して、アメリカの大学では、公開講 座を有料にして学部経営をバックアップしているという15)。 さらに,瀬沼は、競争相手として公民館や公立生涯学習センターがあり、無料であるこ と、マスコミ経営のカルチャーセンターは駅前などにあり、立地で負けていること等、大 学公開講座は悪条件にあると述べていた16)。 しかし、日本でも、最近は事情が変わり、早稲田大学、明治大学、首都大学東京など、 相当数の大学が、多数の有料講座を開き、駅前教室を設け、カルチャーセンター並みの受 講料を取るようになってきた17)。首都大学東京など、入会金を別にとるところもある。 前橋国際大学の受講料1講座2000円は、実際にかかる経費の2割以下に過ぎないも のである。公開講座直接経費の内訳をみると、講師料(学内講師の場合はわずか)、新聞広 告費、チラシ作成配布費が大きく、他に資料印刷費、茶話会経費がある。無料の大学は、 全て、これらを負担している訳である。 こうみると、公開講座受講料については、有料高額で経営利益を図るタイプ、完全無料
タイプ、中間の本学のようなタイプに三分されるが、今後の動向はどうなるのであろうか。 現今の大学経営からは有料化したいであろう。しかし、これは受講者減につながる。 有料化が成り立つ大学は、基本的には、ブランド力、立地条件、財政能力、卒業生数に 恵まれているところに限られるのではないか。そうでないところでも、企画と講師次第で 採算がとれる可能性もあるが(実際にある)、やはり冒険である。 また、生涯学習における大学の役割を考慮すると、すべての大学が有料化することは好 ましくない。受講者に配慮すれば、逆に無料化は推進しなければならない。基本的な考え 方として、全くの無料化に反対論もあるだろう。中間タイプの大学は、受講料は経費の一 部にすぎないのだから、地域貢献、大学PRにつながるものとして、現状維持するところ が多いのではないか。 (3) テーマ 文部科学省08年調査によると、大学・短大・高専の公開講座の対象は、一般成人75%、 高校生以下7%、女性のみ5%、男性のみ 1%、親子2%、特定職業人4%、その他7%で 圧倒的に一般向けが多い。実施された大学公開講座のジャンル別内訳を、多い順にみると、 ①一般教養29%、②語学18% ③専門・職業16% ④現代的課題14%、⑤趣味1 3% ⑥スポーツ5%である。群馬県04年調査でも、「文学・語学」43%、「人文科学・ 社会科学」39%、「現代的課題」27%、「芸術文化」19%の順となっている。本学の 場合は、既述のように国際社会、上記分類に当てはめれば、現代的課題が多い。 本学の受講者アンケートで、今後の希望テーマを尋ねた結果は、次のとおりで、その年 のテーマによって、希望テーマも違うことが分かる。しかし、いずれの場合も、教養、趣 味、文学、語学は尐ない。「それぞれの大学の特色」は、本学の場合、やはり最も開催頻度 の多い国際社会で、公開講座の10年間の蓄積がそれを証明しているようだ。 06年(テーマ 教育問題) 08年(テーマ 中国) 国際問題 4 26 社会問題 10 14 教養 7 4 その他 1 0 なお、瀬沼によると、先進的な大学が多い大学公開講座研究会加盟校では、00年の人 気は、①語学、②文学 ③スポーツ ④健康 ⑤PCであり 18)、 最新の学習動向では、 人気は健康系(太極拳、合唱等)、心理学系(臨床心理、カウンセリング等)、実技系(油 絵、書道等)、語学系、教養系(源氏、シェイクスピア等)と述べている19)。カルチャーセ ンターの内容と似ているように思える。
6 今後の企画に向けて 今後の公開講座を考えるため、国民の生涯学習ニーズや国の生涯学習政策など、社会動 向を概観し、他大学の動きを探っておきたい。 (1) 生涯学習をとりまく環境と動き 生涯学習については、法律上に規定がある。1990年に「生涯学習の振興のための政 策の推進体制等の整備に関する法律」が制定され、2006年には、改正教育基本法第三 条として、以下が加わった。「国民一人一人が自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることが できるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会において学習することができ、その成果 を適切に生かすことができる社会の実現がはかられねばならない」。 生涯学習における大学の役割について、国の考え方を見よう。09年の「文部科学白書」 は、大学には知的資源の地域社会への還元という役割があるとし、具体的には、①正課教 育の開放 ②公開講座や高校への出前授業等正課以外の活動、③審議会、講演会等への人 材提供 ④図書館、体育館等施設の開放 ⑤共同研究等産学連携をあげている20)。 最近、注目すべき動向として、08年中央教育審議会答申「新しい時代を切り開く生涯 学習の振興方策について」があり、人々が変化の激しい時代に生きる総合力を身につける こと、社会の知識基盤を強固なものとするという社会的要請の重視を強めたことがある。 改正教育基本法のいう「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に 寄与する態度を養うこと」「個人の要望と社会の要望のバランス」に対応するわけである。 そして、重視される社会のニーズ について、同答申は、04年と11年の生涯学習審議 会答申を下敷きにして、「文化・教養タイプから社会参加型や問題解決型の学習あるいは職 業的知識技能を習得等、学習成果の活用を見込んだ内容のものへと重点を移行させるべき である」とする21)。 07年の中央教育審議会中間報告の言い方を借りると、「生きがい・教養だけでなく、職 業的知識技能を習得する学習を強化する」ことになる22)。そして、社会に役立つ人間力養 成を強調、具体的に職業教育のほかボランティアに焦点を当てている。 職業教育を重視するのは、非正規雇用の増加等を考慮し、職業能力の習得更新の機会を 設けるためであり、ボランティアについては、地域の教育力低下の中、地域のきずなづく りのためである。また、学習成果を確認する場をつくり、一人ひとりの学習を発展させる ための相談システムを設けるべきとしている。「各個人の学習成果の活用のため、身近な地 域で誰もがボランティア活動に参加できるようにする」と述べ23)、後述するように「生涯 学習に関する世論調査」で、教育ボランティアへのニーズを調べている。 この職業教育の重視の背景について、具体的なデータに基づく清水司元早大総長の説明 がある24)。清水司によると、日本の成人教育は諸外国に比べ、著しく遅れており、国力の 衰えが危惧される。25歳以上大学入学者率はOECD平均が20.7%であるのに、日 本は2.7%であり、率だけでなく絶対値も(例えば韓国より)尐ない。これは社会人入
学のしにくさのためである。一方、日本の企業内教育は不十分とする。 以上、国の動きとしては、個人の生涯学習が、個人の発展にも社会の維持発展にもつな がる意義あるものを目指すべきとし、職業学習とボランティアを重視する訳であり、その 必要度が高いことはよく理解できる。大学はこれに対処することが望ましい。ただ、現段 階ではボランティア、職業教育志望者は、そう多くない。大学の立場では、生涯学習にお いて大きなウエイトを持つ趣味・教養を無視するわけにはいかない。また、職業教育受講 者を拡大するには、企業側の協力が不可欠である。 職業、ボランティアに対しては、世論調査で相当数の学習志向が見られても、実際の行 動につながらない。労力、経費を要する場合、なかなか学習に移行しないからである。さ らに、後述するように、現在を楽しむ傾向の強い時代背景もある。職業、ボランティアに ついては、意欲がある多数の人たちを行動につなげるよう働きかけることが大事ではない か。 大学公開講座の増加の背景として、大学開放推進機構香川正弘会長は、次の四つをあげ ている。①18歳人口の減尐を社会人学生で補う動き ②大学が地域の公共財という認識 の増加 ③趣味から生きがい発見へという生涯学習ニーズの成熟 ④国際競争のための能 力育成という経済界の要請25)。 国の動きの他、大学が公開講座を生き残り経営策と自覚しだしたこともあるであろう。 (2) 学習ニーズ調査 以下、やや羅列的になるが、国民の生涯学習へのニーズがいかなるものか、08年の「生 涯学習に関する世論調査」によって概観する。 している学習の種類は、①健康・スポーツ23% ②趣味20% ③PC14% ④教 養10% の順である。 学習を生かしている場は、①人生を豊かに44% ②健康維持増進42% ③家庭・日 常生活38% ④仕事・就職34%であり、学習理由26)は、①興味・趣味59% ②健康 体力41% ③人との親睦38% ④教養35% ⑤家庭生活34% である。 今後してみたい学習内容は、①健康・スポーツ55%、②趣味53% ③教養29% ④ PC26% と、している学習とあまり違わない。 「地域や社会における教育」27)の支援や教育への参加ニーズ、つまり教育ボランティアへ の意欲について聞くと、「参加したい」15%、「どちらかといえば参加したい」29%で あった。積極回答は尐ないようであるが、それでも実数にすれば非常な数になる。 以上は、国民全体の結果である。本学に限らず、公開講座受講者には高齢者が多いよう なので、高齢者の傾向についてチエックしておこう。 学習理由は、「老後の人生を有意義にするため」が60代以上で、2,3位の約50%と なり、「教養」が20%台に減る。漠然とでなく、充足感を求めている。「してみたいこと」 は60代の場合、全体と大差ないが、70歳以上だけが、PC,家庭生活が尐なくなる。
(3) 他大学の動き 1) 有料化実施状況と大学公開講座研究会など 既述のように、文部科学省の01 年度調査でも、有料が 6 割以上であるが、これは資料実 費程度の小額のものも含んでいる。しかし、最近は、講師料をカバーする程度あるいはカ ルチャー並みの受講料を取る大学が増えているようだ。新聞広告やHPで散見しただけだ が、相当数の大学がカルチャーセンターなみに有料化している。最近では、青山学院大が 09年度から有料化し、中部大学も検討中とのことである。 以下、本格有料化した大学を、いくつか紹介しよう(表5)。数値は、いずれも08年度 のものである。講座数は、基本的に、大学規模(教員数)に制約されているように思うが、 そうでない例も多い。後述のように、桜の聖母短期大学は小規模校でありながら多くの講 座を開設し、逆に立教大などは、規模に比べ開催数が尐ないとのことである。教員数が尐 なくても講座が多い大学は、たぶん部外講師に頼っているのだろう。教員数の多い早稲田 大学でも講師はかなりの数が部外からである。ちなみに、大学公開講座研究会加盟校は、 公開講座の先進校が多いと思われるが、その加盟校でも、非常勤を除いた部外講師の比率 は37%である28)。 早稲田大学は生涯学習専門組織、エクステンションセンター設置が早く、最大規模を誇 る。以下,瀬沼克彰によるが、早大の受講料収入は20億円、明治大学リバティーアカデ ミーは10億円となる 29)。 早大の受講料の例をあげると、「オリエントの考古学」4 回、 14000円、「ビジネスライティング」7 回、17000円である。また、早大では、単 位制があり、受講者は中央図書館が使用でき、一定単位を超えると、校友となる道が開け る30)。単位制は、短大での取得単位に大学で聴講した科目の単位を合わせて、学位授与機 構の審査で大卒の資格を得られるものである。公開講座の単位でも、学位授与機構の審査 の対象となる。 ただし、このことを公開講座側では全く宣伝していない。 本学同様、小規模校の桜の聖母短期大学(福島市)は、公開講座に長い歴史を持ち、文 部科学省からも特色のある大学教育支援プログラムに採択されている。受講は、全て有料 で、受講料は1回(1日)あたり、500~4000円と幅があるが、最頻値は1500 円あたりのようだ。1講座も1回~12回と幅があるが、平均5回(日)として、講座数、 受講者数に乗ずれば、受講料収入が推測できるが、当っているであろうか。瀬沼によると、 1講座受講者7人、1回500円で採算が取れるが、採算が取れている大学は30校程度 ではないかとのことである。 その他、先進校の状況については、瀬沼の近著が大変詳しいので、参照されたい31)。 表5 他大学公開講座受講者数(ネットおよび電話取材による) 講座数 (常勤教員) 受講者数 早稲田大学 1500(2121) 31274
昭和女子大 1000( 318) 10000 上智大学 380( 541) 明治大学 320( 994) 18000 首都大学東京 300( 864) 3400 桜美林大学 278( 285) 2335 桜の聖母短期大学 146( 24) 1639 恵泉女学園大学 99( 67) このほか、未確認だが、次のようなデータもある。淑徳大学200以上(128)、神奈 川大学100(401)、鶴見大学77(354)、多摩美術大46(177)、学習院大秋 145(982)、東洋英和女学院大学秋74(77) 次に、大学公開講座研究会や大学開放推進機構の公開講座担当者向け研修から、参考に なりそうな見方、コメントを紹介する。 * 08 年の大学開放推進機構研修セミナーの要点32) 早大エクステンションセンター岩城雅信事務長:「リピーターを増やすために学習者の声 なき声を吸い上げるようにしている」「カルチャーセンターとの差別化を意識」「特定の層 だけを狙った講座は受講者を集めにくい」「広報は口コミにつきる。新聞広告、地下鉄の案 内板の他、HPの充実に努めている」「団塊の世代対策として、双方向、受講者の表現意欲 への対応」「公開講座には、受講者同士の学習もあるので、講師との懇親会に補助。リピー ター確保に有効」。 園田学園女子大生涯学習センター松成雄三担当部長:通常の講座の他、じっくり学びた い人向けに3年制のシニア専修コースを設けている(立教大学の「シニアセカンドステー ジ」は、より本格的なようだ。いずれも高齢の受講者の多さからの発想であろう)。入学者 は08年、文学歴史科34名と国際文化科11名。毎年40~50名の入学者がいる。入 学金10500円、授業料63000円(選択科目については別料金)。最低週2日登校(立 教は毎日)。募集対象(資格要件でない)は、公開講座受講生と近隣行政の生涯学習機関課 程修了者であり、合否判定がある。 若干、大学HPから補うと、公開講座のほうは、06年度、総受講者数は1538名、 受講料をとり、1回(日)の受講当り、1000~1500円というところのようだ。講 座科目は語学、資格など、カルチャーセンターとかなり似ている。なお、同大は、教員数 82名の大学である。 * 大学開放推進機構香川昌弘会長への雑誌インタビュー33) 知識の切り売りのような講演会はだめで、尐人数のゼミ形式の授業がよい。職業能力や
生きがいを一つのテーマとして、ライフワークのように探求する講座を提供すれば、社会 人でも勉強する。一般受けする週刊誌的なレベルのテーマが通用する時代ではない。地域 にある特定の目的団体、職業集団のニーズにあった講座を開設すれば、募集広報もいらな い。地域のニーズを聞いて回る御用聞きとしての機能を持つことだ。 * 09年大学公開講座研究会公開シンポジウムの報告と感想34) 山本和人(東京家政大)、瀬沼克彰(桜美林大)、新美皙也(中京大)、遠藤克弥(東京国 際大)の発言を筆者なりに以下のようにまとめた。 「有料化について」 大学生き残り策の一つであり、収益が上がらないとしても、受益 者負担が原則で、独立採算が理想であり、有料化によって、やりたいことができるという メリットがある。 「地域連携・他大学との連携について」:地域連携は目的とばかり理解していたが、費用 節減・効率化の手段であるという印象を受けた。連携で経費節減の例があるからである。 また、地域との連携、大学間連携の例が紹介された。これによって、一大学では実行不可 能なことも実現できるのではないかというヒントを得た(例えば、夜間開催を交替で実施 するなど)。 「公民館との差別化」:(カルチャー的講座があふれているが)本を読めばわかるような 内容は避けて、大学らしい講座にという複数の発言があった。大学の強みである、履修証 明と単位制を活かし、これまでの講座はやめ、日本経済に欠かせない外国人労働者の教育 に力点を置けという指摘や、ボランティアリーダーの育成の試みが印象に残った。 「ボランティアリーダー育成について」:大学側からみると、受講者は尐ないかもしれな いが、生涯学習リーダーが、また、次のリーダーを育成してゆくことを考えると、重要な ことである。確かに講座学習によって力をつければ、教えたいという願望を持つし、成果 が生かされるなら、それだけ真剣に学習に取り組むだろう。時間と金のある団塊世代対策、 成果を活かすという中教審答申にかなう訳である。 2) 群馬県内で成功している事例 前記群馬県調査で、受講者数が非常に多い大学1,2について、なぜ受講者が多いのか を調べてみた。具体的には、1講座数百人の受講者がある県立女子大と桐生短期大学につ いてである。前記調査は04年のものであるが、以下は最新の状況を紹介する。 * 群馬県立女子大 教員数は09年10月現在58名であるが、公開講座の開催頻度は大変多い。主要な講 座は、学内教員のみによる「公開講座」、部外講師を交えた「県民公開授業」・「群馬学連続 シンポジウム」である(他に英会話教室や学外開催の講座、出前講座がある)。 08年についてみよう。「公開講座」は文学部4学科と国際コミュニケーション学部を網
羅する,多彩な内容の講座であるが、一応、1講座扱いとした35) 。16回(13日)開催 で、延べ1725名が受講している。この年は、竹内正彦准教授「源氏物語の魅力」が人 気を集め、6回で延べ1163名が受講した。他の講座は、1回28~99名、平均56 名の受講者であった。「公開講座」の受講者は、ほとんど一般県民で、本学同様、学生が受 講することは尐ない。 いわゆる一般向けの公開講座より、「県民公開授業」「群馬学連続シンポジウム」のほう が、講座数も受講者数も多い。あわせて17の講座で、年間、学生7858名、県民34 81名、計11339名を集めた。「群馬学連続シンポジウム」は3回、その他は、各講座 10~15回、計211回(日)開催され、大半は学外講師である。企画、講師人選にあ たられる教職員の労力、経費は、かなりのものであろう。 「県民公開授業」は、文部科学白書のいう「正課教育の開放」に当たるが、通常の学生 向けの授業を公開したのではなく、開放のためにわざわざ設けたもののようだ。受講者が 多い講座は、「美しい日本語」10回で、2409名(1回平均241名)、「群馬学連続シ ンポジウム」3回の1349名(1回450名)である。 受講者が尐ないのは、「群馬学」関係の分野別講座で(「連続シンポジウム」と別、県民 公開授業枠内)、1回当り12名や19名を含め、5回平均22名である。これには、18 時開催という時刻の遅さの影響もあるらしい。我が国トップクラスの商事会社重役などに よる「国際舞台の日本人」も1回平均28名であった。 注目すべき講座として、各国大使、外交官による、「国際理解と平和」が12回にわたっ て行われた。受講者も多いほうで、1回平均91名である。 以上、「県民公開授業」「群馬学シンポジウム」とも、学生に受講させたい有意義な講座 を開催、各分野の最前線の講師を招いている。県立ということで、地域と連携した大学公 開講座に力を入れていることが分かる。連携が非常にしやすいことがあるであろう。 「県民公開授業」(含群馬学分野別)と「群馬学連続シンポジウム」を合わせた受講者は 既述の通り11339人で、内訳は、学生7858人、一般3481人である。学内教員 のみによる「公開講座」の1725人(学生若干を含む)を加えると、一般県民は約50 00人が受講したことになる。ただし、「群馬学連続シンポジウム」は、学生、一般とも受 講者が多いが、「県民公開授業」の場合は、「美しい日本語」「群馬学分野別」を除くと、学 生以外の県民の受講者は、1回当り平均7名と尐ない。 以上、1回当りの受講者数で、前橋国際大学と比べ、明らかに多く一般県民多数を集め た講座は、「群馬学連続シンポジウム」(一回平均250名)」と「県民公開授業」の『美し い日本語』(1回平均117人)、「公開講座」の『源氏物語』(1回平均194名)という ことになる。このうち、『源氏物語』は、講師が従来の講座で人気があったため、過去の受 講者多数(数千名)へのDMが受講者を集めたということである。「美しい日本語」の講師 も、08年は、鳥飼玖美子、石川九楊等(09年は山田太一、小田島雄志、清水義範、久 米明等)であるし、09年度の「県民公開授業」『若者とアメリカ文化』をとっても、内田
隆三、越智道雄、浜野保樹等全て部外の有名講師である。小額の謝礼で協力とのことであ るが、来ていただくのは容易でないであろう。 以上、受講料無料の大学公開講座として、相当のことを実施されているといえよう。 * 桐生短期大学(08年から桐生大学短期大学部)公開講座 数百人を集めた公開講座の詳細は次のとおりである。このほか、07年に452名と県 の一覧にあるが、これは、文化祭でのお笑いと物まねである36)。 2004年 一般 学生 計 1回目 ピーター・フランクル氏講演 290名 180名 470名 2回目 アテフ・ハリム氏バイオリンコンサート 293名 187名 480名 7 まとめ 以上、長々と述べてきたが、前橋国際大学の公開講座は、努力の甲斐あって、まずまず の受講者を集め、地域に根ざした大学としての責務を果たしてきたと思う。 冒頭、現在は高度の生涯学習ニーズがある時代と述べたが、実際の大学公開講座受講者 数は、各大学が相当数の公開講座を設けているにもかかわらず、尐なく、大学の悩みの一 つである。これは、PR不足、講座内容と人々の関心とのずれによるが、基本的には、ア ンケートでとらえた学習欲求というものが、現実の受講行動となるには距離があるものだ と考えざるを得ない。背景に、努力を嫌い、目前の楽しみを選ぶ風潮もあり、最近では不 景気も加味される。 受講者の立場から,学習の障害や、意欲が学習に結び付く条件を考えるなら、場所、時 間、テーマ・内容、程度・受け入れやすさ、経費がある。大学側には、PR,魅力ある内 容・講師、受講しやすい雰囲気作りを工夫しなければならない。そして、今、受講してい る人たちだけでなく、新たな受講者を開拓するには、一般には、なじみにくい大学に、ま ず一度、足を運ばせることを考えなくてはならない。具体的施策として、常連受講者が現 在の中核であることを重視し、1,2年だけでも経費をかけ、有名部外講師を呼んで受講 者を拡大し、DM送付の対象を増やすことが有効かと思う。 三菱総研の06年調査によると37)、大学公開講座への要望として、①「受けやすい料金」 28%、②「知識やスキルでなく方法論や考え方」27%、③「時間帯」25%、④「実 践的教育」23%、以下、⑤わかりやすさ ⑥近づきやすい雰囲気 ⑦グループワーク ⑧ 実務で最先端の人の講義 があげられている。このうち、②④⑦は本学での要望に尐数だ が類似の例があった。具体的にどうするのか難しいところではある。 ここで、カルチャーと大学の講座の違いを考えたい。カルチャーに比べ、大学講座の伸 びが尐ないとのことであるが、大学の不利は、一般に、場所、なじみにくさ、講座内容、 内容の程度にあるのではないか。逆に有利なのは、受講料(有料化したところでも、カル
チャーよりやや安価である)、信頼度、(それに履修証明?)であろう。 学習成果を確認し、さらなる実用的学習やボランティアに結び付くような学習相談シス テムが一般化することが望ましい。また、時間があり、社会貢献意欲があるが、行動しな い多数の人に、講座の中で著名人等がボランティアを呼び掛けることがあってよい。 団塊の世代対策、元気いっぱいの高齢者向けに、高齢者対象のコースを設ける試みがあ る。瀬沼によると「公開講座はジリ貧」であり、不況もあって講座の有料化は厳しい。厳 しいカリキュラムの講座も必要だろうが、受講者を集める上からは、緩やかな時間割、廉 価のコースから始めたほうが良いように思う。受講後、成果を活かせるルートがあれば、 受講者も増えよう。不況下、若干でも交通費や手当を出るようなボランティアなら、乗っ てくるのではないか。 大学講座有料化の動きは、大学が経営上、必要とし、一方で、有料でも学習したい人が いて、拡充してきたのであろう。確かに、ある程度からは受益者負担だろう。若干でも経 費を取ったほうが、しっかりとした学習に結び付くかもしれない。しかし、実際、無料に すれば受講者は増えるであろう。そもそも、無料の講座数が変わらないか減って、一方で 有料の講座が増えていくのは生涯学習が発展しているとは言えないのではないか。大学の 多くは、現今の経営状態の中で、無料で公開講座を開講している。国は、厳しい財政下で はあるが、本来は、基本法の精神で、国民の生涯学習体制をつくるよう、公開講座へ十分 な財政支援をすべきである。 地域連携、大学間連携は、効率化、経費節減策として検討してはどうだろうか。 学習は学校卒業で終わるのでないという生涯学習の理念を我々は再確認したい。これは、 もっぱら学習者たる人々の自覚の問題だが、教える側でも、瀬沼が述べるように、米国で は、「卒業生の継続教育」が普通という点は参考になる38)。 おわりに この原稿は、4年間、公開講座の担当であったが、日常にかまけて、ゆっくり勉強する ことがなかったものが、機会を与えられ、公開講座の概況を取りまとめたものである。書 き終えて、取材不十分と自覚しているが、おぼろげながら、概況が分かる、入門のための まとめにはなっているかと思う。勉強になったし、昔、P.ラングランの生涯教育(当時 のいいかた)の発想に共感し、その後、放送の教育教養機能の調査研究をしたものとして、 このテーマにかかわることができ、感謝している。 他大学の有料講座は、膨大な数があるだけ、今後の企画の参考になる。直接、HPなど で見て、ヒントを得られたい。瀬沼氏の前掲書に先進形態やユニークな大学の状況が多く 紹介されている。また、大学公開講座研究会や全日本大学開放推進機構の研修セミナーに は、時折でも参加したほうがよいと思う。公開講座の有料化の検討は、大学の数尐ない収 入源、改革を考えることである。たとえ、実施に移せなくても、現在のありようを考える 上で、今回の作業は大変参考になり、ヒントが得られた。
この作業を通して、採用したいこと、思いつくことが多々あった。大学連携やシニア学 級や常連拡大がそうであるし、細かなことでは、講座受講者とのコミュニケーションで、 図書館利用を認めたり、講座最終日の茶話会を活発化することなどである。また、受講者 アンケートでも、時系列比較のためだけでなく、他大学の講座受講状況や具体的な利用目 的等を追加したらと思う。また、県内大学にだけでも簡単なアンケートを実施したいと思 う。 以上、この小稿の執筆に当たり、全日本大学開放推進機構瀬沼克彰理事長には、大変お 世話になった。特に全国の最新の事情をお教えいただき、多数の引用をお許しいただき、 深く感謝申し上げる。また、いくつかの大学には、問い合わせでご迷惑をおかけした。と りわけ、訪問に対し、懇切に応対下さった群馬県立女子大学事務局酒井玲美主任、ご多用 中にもかかわらずデータをお送りくださった文部科学省生涯学習政策局榎木奨悟係長に厚 く御礼を申し上げたい。 注 1)文部科学省「文部科学白書 平成20年度版」p345『学習人口の現状』から算出。 2)内閣広報室「生涯学習に関する世論調査」2008年3月、20歳以上国民 3)NHK[日本人の意識調査」、16歳以上国民対象。数値は、大卒に大学院修了者、短 大卒、高専卒を加えたもの。16歳以上人口はおよそ1億人である。 4)文部科学省「文部科学白書 平成20年版」p37『公開講座の開設状況』による。 短大、高専を含む。 5)群馬県企画部「地域貢献に関するアンケート」2006年 6)群馬県「平成16年度 県民を対象とした各種事業に関する実態調査 ~県関係機 関・施設および大学高等教育機関編~」 7)これは、群馬県「平成16年度 県民を対象とした各種事業に関する実態調査」の一 覧表から筆者が作成したものである。本文で冒頭述べたように大学によって定義はま ちまちで、大学説明会、コンテスト、展覧会を含むものもあった。この表ではこれら を除外したが、文化祭での講演、学会での講演は含めた。 8)テレビの歴史番組の数、歴史ものの出版状況を見てもわかる。 9)群馬県立女子大の場合、「ほとんどが固定層」で、DM数千の送付で受講者募集に十分 とのことである。 10)瀬沼克彰「発展する大学公開講座」学文社、2005年、p21 11)早稲田大学エクステンションセンター岩城雅信事務長、08年「大学・短大公開講座 担当教職員研修セミナー」開催報告(全日本大学開放推進機構HPより) 12)小野元之・香川正弘「広がる学び 開かれる大学」ミネルヴァ書房 1998年、 p28 13)瀬沼克彰「第二ステージの大学公開講座」学文社、2009年、p23
14)瀬沼克彰「第二ステージの大学公開講座」p114 15)瀬沼克彰「発展する大学公開講座」p63 16)瀬沼克彰「発展する大学公開講座」p64 17)早稲田大学八丁堀、淑徳大池袋、首都大学東京飯田橋キャンパス等がある。桜美林大 学は駅前に教室や無料バスの便を設けている。 18)瀬沼克彰「発展する大学公開講座」p141 19)瀬沼克彰「第二ステージの大学公開講座」p281 20)文部科学省「平成20年度 文部科学白書」2009年、佐伯印刷、p37 2008年中央教育審議会答申「新しい時代を切り開く生涯学習の振興方策について」 でも「各大学や高等専門学校、専修学校が地域における社会貢献として、それぞれの 特色を活かして行う公開講座等の地域振興に貢献する取り組みを促すことも、地域社 会の教育力向上を図る上で効果的である』と述べている(同答申P27『大学等の高 等教育機関と地域の連携』)。 21)文部科学省「平成20年度 文部科学白書」2009年、佐伯印刷 p28 22)07年、中央教育審議会生涯学習分科会「新しい時代を切り開く生涯学習の振興方策 について 中間報告」 23)中央教育審議会08年2月答申 p22 24)第9回大学公開講座研究会での清水司東京家政大学理事長(元早大総長)の基調講演 による。 25)“BETWEEN”03年5月 特集「これからの社会人教育」香川正弘上智大学教授 (当時)へのインタビュー。 26)中央教育審議会生涯学習分科会「学習活動やスポーツ、文化活動にかかわるニーズと 社会教育施設に関する調査」(インターネット調査、2006年)によると、「16歳 以上の国民が学習活動をしている理由は、①「人生を豊かにできるから」55%、 ②「知識や技術を高められる」54% ③「余暇を楽しく過ごせるから」46%、 であり、60代が尐し違って、「老化防止になる」が②59%と多く、「余暇」が③、 「知識技能向上」が尐なく、④となる。この方がわかりやすいが、ネット調査なので 参考に紹介するのみとした。 27)このままでは、わかりにくいが、調査では、「人々に教えること」と説明している。 28)瀬沼克彰「第二ステージの大学公開講座」p110 加盟100校へのアンケート 29)瀬沼克彰「第二ステージの大学公開講座」p54 30)早稲田大学エクステンションHPによる。 31)瀬沼克彰「第二ステージの大学公開講座」学文社、2009年 32)全日本大学開放推進機構「08年 大学・短大公開講座担当教職員研修セミナー」 開催報告(同機構HP)より。なお、園田学園女子大学のシニアコースには、09年 情報学科もつくられた。
33)“BETWEEN”03年5月 特集「これからの社会人教育」 34)第9回大学公開講座研究会公開シンポジウム「地域連携の新しい展開と公開講座」 35)4学科の分担で、かなり違った内容であり、統一テーマは掲げていない。1回の文化 講演会やシンポジウムを1講座とするなら、この講座は実質16講座となる。前橋国 際大学の場合は、4回ないし5回の講義だが、統一テーマなので1講座とした。講座 の数えかたにはこうした問題がある。実質、何日実施したかも重要である。 36)スピードワゴン、二宮優樹「笑いで健康促進 笑う門に福来る」 37)瀬沼克彰「第二ステージの大学公開講座」p23より再掲。 38)瀬沼克彰「発展する大学公開講座」p6 別表 共愛学園前橋国際大学公開講座の10 年 1999 年度統一テーマ「世界のことばと文化」 テーマ 講師 参加人数 日中両国の漢字比較 講師 張 鴻起 データなし 飛鳥と百済の交隣と文化 二松学舎大学国際政治経済学部 教授 柳 尚煕 〃 フランス語の文化的背景 講師 西川 正也 〃 スペイン、ドンキホーテと巨匠達 非常勤講師 塙 哲夫 〃 言葉に潜む文化 教授 ハーバート・W・ペニントン 〃 2000 年度統一テーマ「アジア経済と日本」 テーマ 講師 参加人数 アジア経済の概観 教授 石井 昌司 24 名 直接投資とアジア経済 教授 石井 昌司 13 名 NIEs経済と ASEAN 経済 教授 石井 昌司 25 名 中国経済 教授 石井 昌司 12 名 アジア経済の課題 教授 石井 昌司 15 名 2000 年度統一テーマ「冷戦後の世界と日本―残された課題」 テーマ 講師 参加人数 戦後日本の原子力政策 ―原爆調査から東海村までー 占領・戦後史研究者 笹本 征男 37 名 経営者資本主義の時代 教授 沖田 健吉 33 名 ロシア・東欧の脱社会主義 教授 鶴岡 重成 35 名
朝鮮半島問題と日本 教授 大沼 久夫 32 名 2001 年度統一テーマ「群馬の 20 世紀をふりかえる」 テーマ 講師 参加人数 NHK『映像の 20 世紀群馬県』にたず さわって 教授 石原 征明 76 名 群馬の昭和史あれこれ 教授 石原 征明 69 名 昭和天皇の桐生市行幸と誤導事件 助教授 宮崎 俊弥 72 名 高崎連隊によるビルマのカラゴン村事 件 県立前橋高校教諭 岩根 承成 72 名 近代群馬の製糸業 助教授 宮崎 俊弥 62 名 2002 年度統一テーマ「グローバリゼーションのなかで考える」 テーマ 講師 参加人数 今、自由民権運動を考える 教授 石原 征明 48 名 ディズニーリゾートと牛肉 教授 沖田 健吉 40 名 古典と若い人たち 教授 齊藤 孝弌 29 名 日本語と日本人 ―言語を通しての日本文化論― 教授 白石 明夫 33 名 世界平和の構図をどう再構築するか 国際社会学部長・教授 鈴木 沙雄 33 名 2003 年度統一テーマ「心豊かに生きるー心・モラル・教育・文化を語る」 テーマ 講師 参加人数 女子教育の歴史に学ぶ 教授 山田 昇 29 名 日本人のモラル・マナー ―国民はどう考えているかー 教授 鈴木 泰 34 名 文化という生き方 ―何が憎しみを生み出すのかー 助教授 山本登志哉 26 名 心を探る 教授 鎌田 正之 35 名 ジャン・コクトーと日本の芸術家達 助教授 西川 正也 23 名
2004 年度統一テーマ「今、国際社会は・・・ 」 テーマ 講師 参加人数 アメリカ大統領選挙 朝日新聞論説委員(客員教授) 高成田 享 84 名 在日ブラジル人 大泉町立図書館長 糸井 昌信 67 名 外交官が見た国際社会 元エクアドル大使(前講師) 塙 哲夫 65 名 北朝鮮とは、どのような国か 教授 大沼 久夫 74 名 2005 年度統一テーマ「テレビを考える」 テーマ 講師 参加人数 変わるテレビと課題 教授 鈴木 泰 40 名 テレビの影響力 学習院大学名誉教授 藤竹 暁 37 名 アナウンサー NHK エグゼクティブ・アナウンサー 宮田 修 35 名 テレビへの苦情 BPO 放送と人権を守る機構 前専務理事 大木圭之介 33 名 2006 年度統一テーマ「子どもと教育をめぐって」 テーマ 講師 参加人数 群馬の教育の展望と課題 群馬県教育長 内山 征洋 38 名 友だちのつくり方 本当のコミュニケ ーションとは? 教授 山本登志哉 31 名 義務教育の行方 教授 山田 昇 35 名 学力と教師 ―未来をひらくためにー 法政大学教授 尾木 直樹 39 名 2007 年度統一テーマ「世界から日本を見ると」 テーマ 講師 参加人数 北朝鮮の核開発と日本 教授 大沼 久夫 48 名 日韓の生活・社会の違い 准教授 呉 宣児 51 名 国際的に見た日本人の生活時間 教授 鈴木 泰 46 名 世界に広がる日本ブーム 教授 西川 正也 42 名
2008 年度統一テーマ「みんなが知りたい中国」 テーマ 講師 参加人数 中国は今後どうなるか 東海大学教授 葉 千栄 90 名 中国経済の現状・課題と日本の対応 教授 石井 昌司 77 名 日中関係を考えるー相互認識のずれを 中心にー 早稲田大学教授 山本登志哉 77 名 中国主要都市の景観について(歴史と 町並み) (社)日中科学技術文化センター 参与 小針 俊郎 73 名 2009 年度統一テーマ「人間らしさの探求 心理・教育・福祉の視点から」 テーマ 講師 参加人数 人間らしさの進化と発達 ―感情と社会性を中心にー 東京大学准教授 遠藤 利彦 91 名 顔とこころー美醜をめぐる心理学 講師 松本 学 78 名 化粧の力―自分らしさのお手伝いー 資生堂ライフクオリティー ビューティーセンター 宇野 晶子 73 名 大人になること 親になること 准教授 後藤さゆり 65 名