1 はじめに 昨今、教科横断的な学習やカリキュラムマネジメントが重要視されている。学習指導要領 においても、他教科との連携の重要性について、さまざまな章で明記されている。 教科横断的に授業を組み立てていくことは、小学校の学校現場では、当然のこととして取 り組んでいたことである。特に学習時間が確保しにくい高学年には、必要不可欠な取り組み であろう。 国語科以外の教科でも、聞く話す、読む、書く等の国語力が常に問われる。情報の選択や 読み取り、学んだことをまとめ、相手や目的に応じて伝わりやすく表現することなど、国語 の力はすべての教科の元になっている。これまで、算数的な理解力はあっても、正しく表現 できないために評価されないという子どもたちを多く見てきた。子どもたちの国語力の現状 は、国語科以外の教科の中でこそ具体的に捉えることができるのではないだろうか。そこで、 すべての教科等にわたり国語力を養い、生かし、試す授業を展開していきたいと考えた。 本実践は、2014 年度、鳴門市北灘東小学校が休校になる前の、最後の 1 年間の取り組み である。地域とともに歩んできた学校の最後の年ということで、この 1 年は、総合的な学習 の時間(以下総合)と、地域と関わる学校行事に力を入れたいと考えていた。そのスケジュー ルに国語の教育課程をうまく組み込んで、国語力を生かし、さらに養う授業がしたいという 願いをもって、4 月、5 年生(男 1 名、女 2 名)の学級開きを行った。 「学校がなくなっても、地域のために、自分のために、北灘をいつまでも元気のあるふる さとにしたい。」その思いを核として、国語と総合を軸とした学習を展開することで、子ど もの思考の流れがスムーズになり、充実した学習ができた 1 年間であった。その後、転勤先 でも 5 年生と 6 年生の担任として今に至っているが、私の今の教育活動の原点となった 1 年 間でもあった。 2 取組の実際 ① 1 年間を見越した学習計画 北灘東小校区は、瀬戸内海に面した国道 11 号線沿い約 8㎞にわたる、山と海に囲まれた
国語と総合を軸とした1年間の取組
―北灘町PR大作戦―
大 野 実 緒
自然豊かな地域である。地域は沿岸漁業及び養 殖業によって栄え、鳴門鯛やわかめなど、鳴門 を代表する海産物が有名である。保護者は学校 教育に大変協力的であり、学校と保護者、地域 が一体となって子どもの成長に関わっており、 子どもたちは日頃から地域の温かさを肌で感じ ながら生活していた。 子どもたちの様子を観察してみると、休校を 目の前にしても、自分たちの学校がなくなり、138 年もの歴史が今閉ざされようとしている という実感を、あまりもてていないようであった。このままでは、新しい環境の中で生活す ることになっても、自分たちのふるさとへの誇り、ひいては自分自身の自信や誇りをもつこ とができないのではないかと懸念された。 そこで、4 月、担任をしていた 5 年生において、学校の歴史や昨年度までの地域学習を振 り返る機会をもち、今自分たちがやるべきことは何なのかを話し合った。1 年をかけ、北灘 の素晴らしいところを再度調べ、校内や地域に PR していこうと、話がまとまっていった。 この活動により、5 年生だけでなく、全校の子どもたちにも、もっと北灘を愛する心が育つ のではないか、そして、自分たちが愛されて育ってきたことを実感し、自信をもって、新天 地で活躍することができるのではないかと考えた。そこで、総合のテーマを「北灘町 PR 大 作戦」とし、国語科を中心とした学習を通して、子どもたちの思いを形にしていくこととし た。 まずは 1 年間の学習計画を大まかに立てた(【資料①】)。 変更することのできない学校行事や、道徳・人権教育の時間確保(2014 年度、鳴門市人 権教育研究大会の会場校であった)を見据え、まず総合の計画を立て、次に必要な国語の力 を考え、カリキュラムを組み直した。国語の教科書を順番通りに学習するのではなく、その 時その時に、特に必要であったり、関係の深かったりする国語の単元を入れ込んだ。 【資料①】の年間計画表は、総合と学校行事、人権教育に関する各教科の関連単元をまと めて書き入れたものである。掲載している資料はモノクロであるが、実際に作成したものは、 国語とそれに関係する教科の単元に色をつけ、色ごとに、関係し合う単元を分類した。四角 で囲んだ縦書きのものは、5 年生で学習する読みの教材名と、平行読書する本の題名である。 他教科の学習に関係の深いものを学習する時期を選んで読んでいったが、読む教材について は、総合の時間や行事に左右されることなく実施した。多感な 5 年生の心の成長のために、 読む時間は独立した時間として、ゆったりと楽しめるようにしたかったためである。読み物 教材から感じたことを話し合ったり、自分と向き合う時間を作ったりする時間を大事にする
第 5 学年 学習年間計画(2014) 【資料①】 学期 月 各教科・道徳 総合的な学習 特活・学校行事など 1 学 期 4 (国)「きくこと」について考えよう 「きいて、きいて、きいてみよう」( 2 時間) (社)世界の中の国土 学習の計画を立てよう( 3 時間) ⃝鳴門市の産業や観光について調べよう ( 1 時間) ⃝まとめ方を話し合おう ( 2 時間) 北灘町 PR 大作戦Ⅰ∼粟田編∼(32 時間) ⃝インタビューの仕方を学ぼう ( 2 時間) ⃝お願いの手紙を書こう(神社・漁港・金 磯さん) ( 1 時間) 城神社 ⃝ 城神社について調べよう ( 2 時間) ⃝ 城神社の見学をしよう ( 2 時間) ⃝ 城神社のまとめをしよう ( 2 時間) ⃝お礼の手紙を書こう ( 1 時間) 粟田漁港 ⃝粟田漁港について調べよう ( 2 時間) ⃝粟田漁港の見学をしよう ( 2 時間) ⃝お礼の手紙を書こう ( 1 時間) ⃝粟田地区のまとめをしよう(PV 作り) ( 2 時間) PR しよう!第 1 弾 ⃝運動会で PR(体) ⃝敬老のつどいで PR ( 8 時間) ⃝宿泊学習で PR ( 4 時間) ・入学式 ・ゴミゼロ運動 ・授業参観 ・プール清掃 ・あいさつ運動 ・授業参観 ・愛校奉仕作業 ・係活動の見直し ・明神小との交流① ・運動会 ・北灘西小との交流 ・敬老のつどい ・集団宿泊学習 ・国際交流会 ・北灘まつり ・授業参観(人権) 5 (国)敬語( 3 時間) (社)国土の地形の特色と人々のくらし (家)見つめてみようわたしと家族の生活 6 (国)書き言葉と話し言葉( 1 時間) (社)国土の気候の特色と人々のくらし 7 (国)活動を報告する文章を書こう 「次への一歩−活動報告書−」( 3 時間) (社)わたしたちの生活と食料生産(農業) (体)北灘ソーランを踊ろう 9 (社)わたしたちの生活と食料生産(漁業) (道)信頼し合える仲間作り (理)流れる水のはたらき 10 (国)自分の考えをまとめて、討論をしよう 「豊かな言葉の使い手になるためには」( 4 時間) (社)これからの食料生産とわたしたち (理)雲と天気の変化 2 学 期 ★⃝「これからの北灘を考える」会議① ( 3 時間) 北灘町 PR 大作戦Ⅱ∼ 木・大浦編∼(32 時間) 木 ⃝ 木の祭りについて調べよう ( 1 時間) ⃝ 木の歴史についてお話を聞きに行こう ( 2 時間) ⃝ 木のまとめをしよう ( 2 時間) ⃝お礼の手紙を書こう ( 1 時間) わかめについて学ぼう ⃝わかめの養殖について調べよう( 2 時間) ⃝お願いの手紙を書こう(林さん・菊川さん) ( 1 時間) ⃝わかめの種付けの方法を教わり、種付け をしよう ( 3 時間) ⃝お礼の手紙を書こう ( 1 時間) ⃝わかめの刈り取りの方法を教わり、刈り 取りをしよう ( 3 時間) ⃝漁業体験や調べたことをもとに、漁業の 苦労や工夫などについてまとめよう ( 3 時間) さかな市 ⃝さかな市について調べよう ( 1 時間) ⃝さかな市の取材に行こう ( 3 時間) ⃝さかな市や北灘町の産業についてまとめ よう ( 2 時間) ⃝お礼の手紙を書こう ( 1 時間) PR しよう!第 2 弾 ⃝「これからの北灘を考える」会議② ( 3 時間) ⃝今までの活動をオリジナル PV や新聞に まとめる ( 3 時間) ・ 城神社祭り ・鳴人権 ・灯籠祭り ・授業参観 ・係活動の見直し ・お楽しみ会 ・明神小との交流② ・授業参観 ・ 6 年生を送る会 ・卒業式 ・休校式 11 ★(国)理由付けを明確にして説明しよう 「グラフや表を引用して書こう」( 5 時間) (社)わたしたちの生活と工業生産(自動車、公害) 12 (社)わたしたちの生活と工業生産(工業地域、貿易) 1 (社)情報化した社会とわたしたちの生活 2 (国)理由を明確にして、すいせんしたり、それ を聞いたりしよう・提案書を書こう 「6 年生を送る会を成功させよう」( 5 時間) (社)わたしたちの生活と環境(森林) (家)環境を考えた「エコライフ」を工夫しよう (社)わたしたちの生活と環境(自然災害) 3 (国)新聞の編集のしかたや記事の書き方に目を 向けよう「新聞を読もう」( 2 時間) ﹁あめ玉﹂ ﹁生き物は円柱形﹂ ﹁大造じいさんとガン﹂ ﹁千年の灯にいどむ﹂ ﹁百年後のふる さとを守る﹂ ﹁わらぐつの 中の神様﹂ ﹁ゆるやかに つながるイン ターネット﹂ ﹁のどがかわいた﹂ ﹁ い の ち を い た だ く ﹂ ﹁嵐よ、おれ の兄弟よ﹂ ﹁天気を 予習する﹂ (道)不合理なしきたり (道)山の粥 (道)いのちをいただく (図)読書感想画コンクール 「鹿よ、おれの兄弟よ」 鳴人権
ことを心がけた。 以下には、この計画表の 10 月に配した、総合「PR しよう!第 1 弾「これからの北灘を 考える」会議①」、国語「理由付けを明確にして説明しよう「グラフや表を引用して書こう」」 の実践について報告する。 ② 総合「PR しよう!第 1 弾「これからの北灘を考える」会議①」 国語「理由付けを明確にして説明しよう「グラフや表を引用して書こう」」 総合の 1 年間の単元を貫く目標を次のように立てた(【資料②】参照)。 ○北灘町の魅力を探し PR する活動を通して、より地域や学校への愛着をもち、その気 持ちが伝わるようオリジナルプロモーションビデオを作り、取り組んだことや考えたこ とを工夫して伝えることができるようにする。 ○ 138 年の北灘東小の歴史を支えてきてくださった地域の方々とのふれあいを通して、自 分の「ふるさと」への思いをもち、その中で自分たちにできることや地域の未来につい て考えることができるようにする。 総合 北灘町 PR 大作戦−オリジナル PV を作ろう− 【資料②】 ① 1 年間の単元を貫く目標 ○北灘町の魅力を探し PR する活動を通して、より地域や学校への愛着をもち、その気持ちが伝わるよう オリジナルプロモ−ションビデオを作り、取り組んだことや考えたことを工夫して伝えることができるよ うにする。 ○ 138 年の北灘東小の歴史を支えてきてくださった地域の方々とのふれあいを通して、自分の「ふるさと」 への思いをもち、その中で自分たちにできることや地域の未来について考えることができるようにする。 ②単元の流れ(全 67 時間) ○鳴門市の産業や観光について調べよう( 1 時間) ○まとめ方を話し合おう。 ( 2 時間) 鳴門の漁業は,北灘町が有名 なんだね。 学校がなくなるのはさみしい。 北灘はいいところなのに。 みんなに北灘のよさを知って もらいたい。 学習の計画を立てよう( 3 時間) 北灘町を PR したい!オリジナルプロモーションビデオを作りたい!
○運動会で PR(体)○敬老のつどいで PR( 8 時間) ○宿泊学習で PR( 4 時間) ○「これからの北灘を考える会議①」( 3 時間) ○ 木( 6 時間) ○さかな市( 7 時間) 調べよう 見学・取材をしよう まとめよう お礼の手紙を書こう ○お願いの手紙を書こう(林さん・菊川さん)( 1 時間) ○わかめについて学ぼう( 7 時間) 種付けをしよう 刈り取ろう まとめよう お礼の手紙を書こう PR しよう!第 1 弾(12 時間) 北灘町 PR 大作戦Ⅱ− 木・大浦編−(26 時間) 運動会の競技に「スダチブリ」を登場させた い。 わかめの種はこんなに小さいのに,3か月で こんなに大きくなるんだな。 北灘西小と合同で,他校の友達に北灘を PR し たい。 わかめの養殖の大変さや喜びがわかった。 もっとすてきな町になるため にはどうしたらいいかな。 木の猿伝説は本当にあった んだなあ。 ぼくたちの意見を聞いてほし いな。 さかな市には漁師さん以外の 人も働いているんだな。 3・4 年の子ともこれからの北 灘について話したいな。 うずしお食堂の食レポを成功 させたい。 ○インタビューの仕方を学ぼう ( 2 時間) ○お願いの手紙を書こう(神社・漁港・金磯さん) ( 1 時間) ○ 城神社( 7 時間) ○粟田漁港( 5 時間) 調べよう 見学・取材をしよう まとめよう お礼の手紙を書こう ○粟田地区のまとめをしよう(PV作り)( 2 時間) インタビューに答えやすい質問を考えよう。 お願いの手紙は見学に行く前には必ず書いて, 丁寧な言葉と字で気持ちを表そう。 事前に調べて質問を考えてい こう。 城神社は目の神様がいるん だな。 質問の答えをまとめて,PVに 入れる音声の原稿を考えよう。 映像の編集の工夫をしたら楽しいな。 他の取材も,かっこよく編集したい。 北灘町 PR 大作戦Ⅰ−粟田編−(20 時間)
1 学期の間、北灘町粟田を取材し、その特徴 やよさをまとめてきた。PR するためにプロ モーションビデオ(PV)作りに取り組んだり、 北灘町以外の人の目にとまる機会である運動会、 敬老の集い(学習発表会)、宿泊学習において、 様々な方法で PR したりしてきた。 それを受けて国語では、統計などの根拠を元 に説明する、書く学習を設定した。単元を「こ れからの北灘を考える─グラフや表を引用して 書こう─」とし、今の北灘町のくらしについて改めて考え意見文を書くことにした。 次に、国語の単元の計画について説明する(【資料③】参照)。 単元の目標は次のとおりである。 ⑴ 活動目標 ○統計資料を根拠として、意見文を書く。 ⑵ 指導目標 ○目的や意図に応じて収集した事柄を、全体を通して整理するとともに、引用したり図表や グラフを用いたりするなど、書き方を工夫して、自分の考えが伝わるように書くことができ るようにする。 ○意見文を聞き合い、表現の仕方に着目して助言し合うことができるようにする。 ○「これからの北灘を考える」会議② ( 3 時間) ○今までの活動をオリジナル PV にまとめる。( 3 時間) 少しずつ編集したPVを感動的 にまとめたい。 まとめたことを全校の前でプ レゼン発表したい。 映像と音楽で思いを伝えるこ とができるんだね。 全校児童で北灘の素晴らしさ について話したいな。 休校式でPVを流してもらって 感謝の気持ちを伝えたい。 休校式で感謝の気持ちを伝え たい。 運動会の競技「お届けします!北灘のうまいもん」 PR しよう!第 2 弾( 6 時間)
国語 これからの北灘を考える−グラフや表を引用して書こう−【資料③】 単元の目標 ⑴ 活動目標 ○統計資料を根拠として、意見文を書く。 ⑵ 指導目標 ○目的や意図に応じて収集した事柄を、全体を通して整理するとともに、引用したり図表やグラフを用い たりするなど、書き方を工夫して、自分の考えが伝わるように書くことができる。 ○意見文を聞き合い、表現の仕方に着目して助言し合うことができる。 単元の構想と評価計画(全 5 時間) 学習活動と子どもの意識 主な指導・支援 評価規準 第一次 課題を捉える ①教科書 P149,141 を読んで、意見文の構成と特徴に気 づく( 1 時間) ②題材を決める(1 時間) 第二次 意見文を書く ①必要な情報は何か考える( 1 時間) ②必要な情報を見つける( 1 時間) ③構成を考えた下書きをもとに、意見文を書く( 1 時間) ○作文の完成例を示し、 学習の見通しをもてる ようにする。 ○総合でまとめてきた ことをもとに、北灘を 見直し、自分の意見を 述べたい題材を見つけ させる。 ○主張の根拠となりそ うな情報をたくさんメ モさせる。 ○インターネットだけ ではなく様々な調べ方 を思い出すよう促す。 ○「天気を予想する」 の例を出し、表現の工 夫について思い出させ る。 ○活動に興味・関心を もち、進んで活動に取 り組んでいる。(発言) ○総合での学習と照ら し合わせ、自分の考え を整理しようとしてい る。(発言) ○主張から根拠となる ほしい情報を書き出し ている。(ノート) ○様々な方面からアプ ローチして情報を集め ている。(ノート) ○考え・根拠などを書 き分けたり、グラフや 表を効果的に使った文 章が書けている。(ワー クシート) 最終的にこんな作文を仕 上げていくのか。 グラフや表を用いると説 得力が増すなあ。 北灘のよい所は調べてき たけど,もっと町がよく なるにはどうしたらいい かな。 北灘に若い人がもっとふ えたらいいな。 この意見を主張するには, 根拠として人口の統計が 必要だ。 インターネットだけでは わからないから,インタ ビューをしてみよう。 「天気を予想する」では, 数値を具体的に書いてい たな。 何の資料が必要かメモし ておこう。 家の人にも聞いてみよう。 主語と述語がねじれてい ないか確認しよう。
単元の構想は次のとおりである。 <第一次 課題を捉える> 4 月からの子どもたちの活動の原動力は、「休校」と「北灘町 PR」である。総合の学習 を進めていくうちに、いきいきとした意見文を書くために、題材は総合に関連したものにす るということが自然と決まっていった。 北灘に、素晴らしいところや誇れるところがたくさんあることはわかってきた。そのうち に、「こうしたらもっと元気のいい町になるのではないか」「どうにかしたい」というような 思いが子どもたちの中に生まれてきた。 そこで第一次は、今まで総合でまとめてきたことをあえて批判的に捉えることから始めた。 「北灘は漁業の町といわれているけど、本当にそうなのだろうか」など、総合の学習の中で 感じた疑問を出させて話し合った。その後には、「私が大人になったら、北灘の町がこうだ といいな」「大好きな北灘を、みんなにももっと好きになってほしい」など、北灘の未来を 考える話題となった。3 人という少ない人数ではあったが、この時は本当に活発な話し合い が行われた。休校を迎えるにあたって、子どもたちなりに寂しさや不安を感じるとともに、 北灘への愛情が 4 月当初よりずっと増してきていると感じられた。また、その気持ちを共有 することで、下を向くだけではなく、前を向いて未来を考えることの大切さを、私も共に学 ぶことができた。 総合 これからの北灘を考える会議①(全 3 時間) 学習活動と子どもの意識 主な指導・支援 評価規準 ①自分の考えた「これからの北灘についての意見」の意 見文を発表し、討論する。( 1 時間) ②討論をもとに推敲する。( 1 時間) ③ 3・4 年生に意見発表をし、話し合う。( 1 時間) ○国語「豊かな言葉の 使 い 手 に な る た め に は」での討論の経験を 思い出させる。 ○参観授業で扱い、保 護者からも意見をもら う。 ○発表するだけでなく、 3・4 年生とも未来の 北灘について意見を交 わせるよう促す。 ○友達の意見に賛同す るだけではなく、批判 的な思考を働かせ意見 を交わすことができて いる。(発言) ○アドバイスをもとに 自分の考えを整理し、 相手意識を持って書け ている。(ワークシー ト) ○①とは違う相手意識 を持って、意見を交わ すことができている。 (発言) A さ ん は 北 灘 の シ ン ボ ルの猿について考えてい ておもしろいな。 B さんはアンケートを根 拠に付け足したらもっと いいんじゃないかな。 アドバイスのおかげで説 得力が出たぞ。 3・4 年生にもわかりや すい文章が書けたぞ。 下級生に聞いてもらえて, 先輩としてうれしかった。 3・4 年生にもこれから の北灘のことを考えてほ しいな。
その話し合いの中で、それぞれが意見文を書くための題材を決定していった。3 人の題材 は次のようなものに決まった。 A 学校の周りや家の周りに猿がたくさん来る。猿は昔に比べて増えているような気が する。畑を荒らしたりして家族は猿を嫌うけど、この猿をいかして町を盛り上げられ ないだろうか。 B 北灘の漁業は有名で、おいしい魚をたくさん捕っている。でも漁港に取材に行った とき、おじいさんが多かった。仕事を引き継ぐ人はいるのかな。 C 北灘中学校が昨年度休校になったが、校舎はきれいなまま。校舎を生かして、若い 人が楽しめるようなカフェや洋服屋さんを経営したら楽しいだろう。 <第二次 意見文を書く> 意見文を書くにあたって、自分がどんな課題をもっていて、どんな情報が必要かを、題材 を決めるための話し合いをしながら、どんどんメモしていった。メモの取り方は、今までの 経験を生かして工夫させた。総合の学習計画を立てた時に、クラゲチャートやイメージマッ プなどを示してまとめたので、そういった思考ツールを使う子がいたり、ホワイトボードを 使って箇条書きでどんどん書き出す子もいたりして、自分に合った好きなやり方で書いて いった。 調べる作業は授業時間としては 2 時間弱しかとっておらず、あとは休み時間や家庭で行っ た。必要だと思ったことを思いのままメモしていったが、実際その情報をすべて手に入れる ことは困難であったため、手に入れることのできた情報の範囲で意見文を書いていった。子 どもたちの書きたいという思いは、課題をつかんでからとても強まっているように感じてい たが、折り合いをつけて情報の取捨選択ができていた。書くのをあきらめたのではなく、で きる範囲で自分の意見を表そうとする姿に、成長を感じることができた。 次に、教科書の模範例や「天気を予想する」(光村 5 年、2010)の書き方の工夫を参考に、ワー クシートに下書きをし、清書をした。【資料④ ABC】に掲載したものは、児童 3 名の意見文 である。
【資料④− A】児童 A の意見文「さるで北灘の町おこし」 グラフ② グラフ① 参考資料 とみざわの神視点マーケティング tmtown.net/index.php/diary/18227/ ゆるキャラグランプリ参加状況推移 参加キャラ数 / 左軸・単位:体 2000 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 2014 年 2013 年 2012 年 2011 年 2010 年 1500 1000 500 0 投票総数(概算)右軸・単位:万票 1699 1580 865 349 169 2,267 1,743 659 333 24 1699 1580 865 349 169 2,267 1,743 659 333 24 32 猿の被害にあったことがある人数 (北灘東小の児童 32人中) 猿の被害にあっていない 0 猿の被害にあった
【資料④− B】児童 B の意見文「北灘のおいしい魚を守りたい」 児童 B の作文︵原文は手書き。原文そのまま︶ 北灘のおいしい魚を守りたい 北なだをもっとよくするには 、もっと北なだで漁業を する人がふえたらいいと考えます 。なぜなら 、北なだの 魚はおいしいので 、漁業をつづけていってほしいからで す。 下のグラフは 、北なだの人口ピラミッドのうつりかわ りと 、なにの仕事をしているかをあらわしたものです 。 ︵人口ピラミッド plus 、鳴門市統計年報︶人口ピラミッ ドをみると 、三ねんかんわかい人がへり 、七十才ぜんご の人がふえてきています 。ほかにも 、六十才になっても 漁業をしている人が多く 、七十才ぜんごの人は仕事をし ていない人も多いです 。それに 、二千年は漁業をする人 は六十六世帯ありましたが 、二千十年には 、二十九世帯 にへっています。 つぎのグラフは北なだ東小学校の子どもたちの家の人 がどのくらい漁業にかんけいある仕事をしているか調べ たものです 。北なだ東小学校の PT A 数 は二十三です 。 その内五世帯が漁業かんけいの仕事をしています 。十八 人がしていません 。あと 、五世帯の内 、五世帯が 、そ父 母が漁業をしていて、みんな六十才い上でした。 このように 、北なだ町では 、年々人口がへり六十才い 上のひとがふえてきています 。しかも漁業かんけいの仕 事をしている人は 、わかい人がへり 、こうれいの人がほ とんどです 。北なだは漁業の町と思っていたのに 、いが いと少なかったのでびっくりしました 。さむい中 、こう れいの方はだいじょうぶかなと思います 。だからこそ北 なだにわかい人がひつようなのです 。少なくともぼくは 北なだにすみたいです 。漁師ができるかわからないけど 、 北なだをかっきづいた町にしたいです。
【資料④− C】児童 C の意見文「校舎をうまく利用しよう」 「公立学校の年度別廃校発生数」 廃校施設活用状況実態調査の結果について 平成26年11月13日 文部科学省 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/11/1353354.htm 450 校 400 校 350 校 300 校 250 校 200 校 150 校 100 校 50 校 2004 年 0 校 小学校 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 中学校 高等学校等 379 117 89 314 7065 247 73 106 276 76 114 272 87101 334 88109 369 114 77 333 94 58 419 117 62 346 104 32 379 117 89 314 7065 247 73 106 276 76 114 272 87101 334 88109 369 114 77 333 94 58 419 117 62 346 104 32
<総合「これからの北灘を考える会議①」(10 月)> <第二次 意見文を書く>までが、国語の扱いである(【資料③】)。意見文の共有の時間は、 総合「これからの北灘を考える会議①」で行った。お互いの意見文を読み合い、「豊かな言 葉の使い手になるためには」(光村 5 年、2010)の学習で経験した討論の形を取り入れた。 これは、「いいね」だけではなく、友達の意見に対して、批判的な思考を働かせてアドバイ スをしてほしいという担任としての願いがあった。 しかし、日頃の人間関係のことや、思春期特有の感性を考慮すると、どの程度まで踏み込 んで深められるか、やや心配でもあった。しかし日常生活の「くだけた場」とは違い、授業 という「改まった場」であるということが、「こうしたらどうかな」という友達の意見を素 直に聞き入れやすい雰囲気にしていった。目の前の「休校」という現実世界の問題を学習に 生かすことの意義は想定していたが、授業という「改まった場」のよさを新たに発見するこ ととなった。授業という「改まった場」で本音が出せたことは、その後の学校生活にもよい 影響を与えているように感じられた。 学習を進めるうちに、3 人だけの共有ではなく、ほかの学年にも聞いてもらいたいという 声が上がった。そこで 3・4 年複式学級のクラスに提案し、発表を聞いてもらい、意見や感 想を話し合った。 この意見文の共有の場は、「これからの北灘を考える会議②」(3 月)に発展することになっ た(【資料①】参照)。総合の時間に作成していたプロモーションビデオ(PV)が完成した ころ、自分たちの考えたことを全校児童に向けてプレゼン発表したいという意見が出てきた。 4 年生の時から使い慣れているソフト「ジャストスマイル発表名人」を用いて、全校朝会で プレゼン発表した。またプロモーションビデオ(PV)も披露することができ、6 年生や先 生方からも意見をもらった。プレゼン資料は、休校式の時にも展示し、来校した多くの方々 に見てもらうことができた。休校がせまる中で、子どもたちの PR したい気持ちや、ふるさ とへの感謝の気持ちが、学級からとなりの学級へ、そして学校全体・地域・学区外へと、そ の活動の範囲をどんどん広げていき、多くの人に北灘のよさや北灘の未来について考えても らう機会をつくることができたと感じる。 3 おわりに 子どもたちと 1 年をかけて練り上げていく課題(この実践では「北灘町 PR 大作戦」)を もとに、授業を教科横断的に計画性をもって組み立て実践していく。その実践を通して、国 語の時間は大変重要であると感じた 1 年間であった。成果として、次の 4 つが挙げられる。
<成果> ○目的の達成のために、知らず知らずのうちに国語力が養われる。具体的には、 ・話し言葉と書き言葉を使い分けられること ・表現するための準備の方法を知ること ・情報の読み取りと取捨選択の力 ・メディアを使った表現力 などが挙げられる。 ○子どもの意識の流れが途切れず、探究的な課題が次々わきおこってくる。 ○大筋は子どもたちが自己決定して進めているので、意欲的に学習でき、達成感がある。 ○授業時間が確保でき、かつ教育的意義のある指導ができる。 ○子どもがいきいきと学習でき、教師も楽しく指導ができるため、学級経営によい影響 を与える。 一方、これからの課題として次の 2 点が残った。 <課題> ○少人数クラスだったので臨機応変に動くことができたが、人数の多いクラスでは意見 をまとめることは難しく、さらに工夫が必要である。 ○教科連携をする際に、各教科の目標を見失わないように注意することが大事である。 特に 2 点目は、大変重要な課題であると感じ ている。国語と総合で、同じ話し合う活動をし ていても、この時間は国語の観点から評価する 等、常に目標を意識し、評価の観点を念頭に置 きながら子どもをみとる必要がある。当たり前 のことではあるが、授業の前には、子どもとと もにめあての確認を十分に行い、指導していき たい。 今後、各教科の目標を見据えながら、すべて の教科等において国語力を生かした授業を展開したい。その中で国語の力を試し、楽しくい きいきと、子どもたちの学力を向上させられるような実践を重ねていきたい。 (おおの みお・鳴門市撫養小学校)