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教育コンテンツのネット公表に関する知的財産権管理
Intellectual Property Rights Management regarding the Publication
of Educational Contents on the Internet
児玉 晴男†
Haruo Kodama
1. まえがき
教育コンテンツは,オープンコンテンツの流れの中で, わが国でもネット公開されている.その契機は,マサチュ ー セ ッ ツ 工 科 大 学 (MIT ) の オ ー プ ン コ ー ス ウ ェ ア (OpenCourseWare:OCW)になろう.OCW は,大学で正 規に提供された講義とその関連情報であり,ネットで無償 公開される仕組みといえる. そして,MIT OCW のプロジェクトは,日中韓において も,すすめられている.ただし,ここで留意しなければな らないことは,OCW は,米国の社会制度に適合する教育 コンテンツの公開になることである.したがって,教育コ ンテンツの公開にあたっては,わが国の法的・倫理的な問 題への対応との関係が明確にされなければならない. と こ ろ で , その 法 的 な 問 題へ の 主 な 対応は , 著 作 権 (copyright)ととらえられていよう.しかし,わが国の著 作権法では,著作権と関連権(copyright and related rights) の対応が必要である.しかも,その権利管理は,財産権だ けでなく人格権も対象になる.そして,OCW に対して指 摘されることはないが,OCW が教育コンテンツの普通名 称とはいえないことである.すなわち,無償公開される著 作物としての OCW は,MIT の商標といえることである. OCW は,文化の発展に寄与する著作物であり,産業の発 達に寄与する商標と商品等との関係を有する対象でもある. さらに,オープンコンテンツの OCW には,肖像権やプラ イバシーの問題への対応と倫理的な問題への対応が必要な コンテンツが含まれる.そして,その倫理的な問題は,社 会文化的な多様性があり,一律の対応にはならない. 上記から,教育コンテンツのネット公表は,著作権法に とどまらず,産業財産権法(商標法)の権利管理の考慮も 必要となる.さらに,倫理的な考慮も必要とされる.そこ で,倫理的な考慮は,人格権とプライバシーの関係から知 的財産権管理との関連から総合的にとらえることにする. 本稿は,教育コンテンツのネット公表の法的・倫理的な問 題への対応を知的財産権管理の観点から考察する.2. 教育コンテンツのネット公表の動向とその法
的・倫理的な問題
教 育 コ ン テ ン ツ の 公 開 は , オ ー プ ン 教 育 資 源 (Open Educational Resources:OER)[1]によりすすめられている. ただし,教育コンテンツのネット公表は,各国の社会制度 により,合理的になされるものといえる.ところが,その 動向において,わが国では合理性が必ずしも見られないま ま運用されている.なぜならば,米国の法的・倫理的な対 応を直接に適用して教育コンテンツのネット公表をすすめ ていると見えるからである.ここに,わが国における教育 コンテンツのネット公表の法的・倫理的な対応が明確にさ れなければならない. 2.1 教育コンテンツのネット公表の動向 わが国の大学は,日本オープンコースウェア・コンソー シアム(Japan Opencourseware Consortium: JOCW)に加盟 して,MIT OCW の規約の中で,教育コンテンツをネット 公表していることになる(図 1 参照).その規約は, Creative Commons Attribution 3.0 License(CC ライセンス) であり,ローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)が先導 するクリエイティブ・コモンズ(Creative Commons)のプ ロジェクトを推進するものである.なお,その規約の適用 除外に,別の契約,パブリック・ドメイン,フェアディー リングやフェアユースという権利の制限,そのほか著作権 の例外・制限規定 ,著作者の人格権が例示されている.す わわち,CC ライセンスは,本来,それらの点も考慮して 理解されなければならない. 図1 放送大学オープンコースウェアの表示例 JOCW と同じく,韓国オープンコースウェア(Korea Open Courseware:KOCW)では,韓国の大学の教育コンテ ンツがネット公表されている.そして,わが国と韓国より も大規模な教育コンテンツのネット公表に, MIT OCW の 中国版の精品課程[2]がある.また,iTunes U で教育コンテ ンツがオンデマンドで公開されている.JOCW に加盟する 大学でも,iTunes U による OCW のネット公表が行われて † 放送大学 / 総合研究大学院大学,OUJ / SOKENDAIFIT2012(第 11 回情報科学技術フォーラム)
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2 いる.このMIT OCW プロジェクトへの参加は,米国内は もとより,諸外国においても,一大学レベルである. した がって,OER がデジュリ標準とすれば,OCW はデファク ト標準の関係にたとえられよう. ところが,東アジアにおける教育コンテンツのネット公 表の特色は,わが国がJOCW を設立し,中国は中国公開教 育資源協会(China Open Resources for Education:CORE), 台 湾 は 台 湾 オ ー プ ン コ ー ス ウ ェ ア ・ コ ン ソ ー シ ア ム (Taiwan OpenCourseWare Consortium)を韓国が OCW を設 立して,MIT という米国の一私立大学のプロジェクトに参 加していることである.ただし,日中韓は,MIT OCW プ ロジェクトへの観点が異なっている. 中国の精品課程は,国家プロジェクトの位置づけになっ ている.2003 年,中国の教育部は,良質の教育資源を集め て,その教育資源を共有し,大学生に最高の教育を受けさ せるために,精品課程の活用を開始した.精品課程は,大 学の教育の質と量の充実を目的とした教学改革をすすめる ための国家プロジェクトの一部になる.韓国の KOCW も, 教 育 科 学 技 術 部 傘 下 の 韓 国 教 育 学 術 情 報 院 (Korea Education & Research Information Service:KERIS)により, 2009 年 1 月から運営されており,準国家プロジェクトとい える.他方,JOCW は国家プロジェクトとはいえない点か ら,現状と異なる観点からの対応が考慮されてもよい. 2.2 教育コンテンツのネット公表の法的・倫理な問題 教育コンテンツは,多様なメディアで制作・著作される. その形態は,ひとつの物あるいはひとつの著作物から構成 されるものではなく,著作物の多様な構造の集合からなる. このメディア融合された教育コンテンツは,その伝達され る過程で付される表示も含めた法的・倫理的な問題を網羅 している. 法的な対応は,著作権と肖像権の関係になる.この著作 権に関しては,わが国の著作権法からいえば,著作権と関 連権の処理が必要である.すなわち,教育コンテンツには 著作者の権利(著作者人格権と著作権)があり,教育コン テンツの伝達に関しては著作者の権利に隣接する権利(実 演家人格権と著作隣接権)が含まれる.そして,権利の帰 属に関しては,出版権が関与する.また,肖像権は,プラ イバシーとパブリシティが融合した権利である.ここで, 著作者の権利と肖像権は,権利の構造が類似する. また,法的な対応には,著作権の保護だけでなく,著作 権の制限が関係する.原則として,営利を目的としないと きは,公表された著作物は,権利者への許諾や利用料を必 要としない.しかし,わが国の著作権の制限において,権 利者への通知や補償金の支払いで調整される傾向にある. その処理の関係は,出版権の制限および著作隣接権の制限 にも及ぶ.そして,著作権の制限の規定とは別に,著作者 人格権の制限も考慮されなければならない.また,その関 係は,実演家人格権の制限にもいえる.さらに,教育コン テンツにプライバシーと倫理に関わるものが含まれるとき は,それらの権利管理も必要となる. ところで,放送大学の教育コンテンツ(放送番組教材) は,わが国の法的・倫理的な対応のもとに,無償公開され ている.すなわち,放送大学OCW のネット公表も CC ラ イセンスとは無関係になされる.OCW に関わる各国の大 学で留意すべき点は,いわゆる英米法系に属するといえる 点にある.すなわち,著作権(copyright)に対する保護の あり方が対局をなす点に注意する必要がある.それは,オ ープンコンテツのネット公表に関する親和性の有無になる. また,OCW は OER のプロジェクト自体を意味する別名と いうよりも,MIT OCW のブランドイメージによるといえ よう.しかも,CC ライセンスの表記も,その契約の内容 とは無関係に,一種のブランドイメージにある. ここに, 産業財産権法(商標法)の商標または登録商標との関連の 権利管理が想定されてくる.
iTunes U は,課金システムの iTunes Store 内の専用エリ アであるiTunes U において,大学の講義等を無償で公開す る.すなわち,OCW と iTunes U は,英米法系の法的・倫 理的な対応のもとで機能する利用料 0 を含む課金システム になる.本稿で検討の対象は,わが国の社会制度と整合す る教育コンテンツのネット公表に関する法的・倫理的な問 題への対応になる.すなわち,教育コンテンツのネット公 表にあたっては,各国の法的・倫理的な対応づけが見いだ されていなければならない.
3. 教育コンテンツのネット公表の法的・倫理な
問題への対応
教育コンテンツのネット公表の法的な問題への対応は, 三つの権利管理になる.すなわち,教育コンテンツのネッ ト公表は,著作権法に閉じて済むものではなく,産業財産 権法(商標法)の考慮も必要となる.すなわち,著作権と 関連権への対応,産業財産権(商標権)への対応,そして 倫理面の対応になる. 3.1 著作権と関連権への対応 教育コンテンツが(電子)書籍の対応で学術コンテンツ が(電子)ジャーナルの対応の関係とすると,わが国では それら著作権と関連権の権利管理には違いがある.教育コ ンテンツは出版権の設定になり,学術コンテンツは著作権 の譲渡になる.詳述すると,たとえば情報処理学会の電子 図書館で利用される電子ジャーナルは,著作権法のカテゴ リで,著作者から学会に著作権の譲渡と著作者人格権の不 行使特約によりなされる.そして,その電子ジャーナルは, 一般社団法人 学術著作権協会に信託譲渡され,複製に関し ては社団法人 日本複写権センターに委託される.それらは 著作権等管理事業者であり,著作権等管理事業法のカテゴ リによる権利管理は財産権が対象になる.ところが,米国 は,権利管理においては, copyright transfer で異なることは ない.著作権法における権利管理は,著作権と関連権およ びcopyright との相補性の観点からの整合が必要となる[3]. 国際的な著作権法界,すなわち英米系とそれ以外の国で は法理が異なる.その差異は著作物が有形的な媒体へ固定 されることが必要か否かにあり,その有無は著作隣接権の 概念を有しないか有するかになる.その法理の差異は,権 利の構造を異にすることになる.わが国においては,著作 権だけでなく,著作者人格権,出版権,実演家人格権,そFIT2012(第 11 回情報科学技術フォーラム)
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3 して著作隣接権の五つの権利を総合的にとらえることが必 要になる.すなわち,教育コンテンツのネット公表は,五 つの権利を総合した権利管理によって促進されることにな る.この関係は,中国と韓国の著作権法制と同様である. ただし,中国においては,出版権に相当する権利は,図書 出版者の権利として著作隣接権で規定される. 上記から,著作権と関連権は,著作権法制のもとに,人 格権と財産権の双対の関係からとらえた権利管理による対 応になる.ここで,著作物の伝達の形式の峻別は,ネット 公表においては,著作権と融合したものになる.二つの著 作権法制の中で,教育コンテンツの制作・著作に関する権 利の対応関係は,copyright transfer ならびに著作権の譲渡, 出版権の設定,著作隣接権の許諾,財産権に関する契約お よび著作者人格権と実演家人格権との関係は財産権(譲渡, 設定,許諾)と人格権が権利の保護と権利の制限(フェア ユース,フェアディーリング)の中で 対応する. そのとき,財産権(譲渡,設定,許諾)は,(著作物の) 利用権の譲渡が copyright transfer とが対応するとみなすこ とができる.ここで, iTunes は権利の保護における財産権 に関する契約に基づき,CC ライセンスに基づく OCW は フェアユース(権利の制限)の中の moral rights の保護に 関する表明になろう.ただし,フェアユースは権利の制限 と対応するものではあるが,その意味は異なる.すなわち, 有形的な媒体へ固定を保護の要件とする法理では,原則, コモンズといえる著作物は合衆国憲法修正1 条に反するも のであるのに対して,わが国の著作物(コンテンツ)は感 情の発露という著作者の権利として原始的に保護される対 象である. 3.2 商標への対応 教育コンテンツに関する名称は,著作物を指すだけでな く,別な意味をもつ.たとえば,Windows ®は,Windows のプログラム著作物に,Windows の登録商標(registration of trademarks; ®)という二重の意味を有している.
実際,"MIT" ,"Massachusetts Institute of Technology" , そのシールやロゴは,商標(trademarks;™) とかかわり をもつとの規定がある[4].それらは必ずしも,すべてが登 録 商 標 と は い え な い . し か し , オ ー プ ン コ ン テ ン ツ の OCW に関しては,図案化したマークやロゴも含めて,少 なくとも先使用の対象となる可能性がある.わが国におい ても,「UT」,「University of Tokyo」,「東大」,「東 京大学」の呼称,および関連して使用しているマーク,ロ ゴは,東京大学の登録商標および関連する標章である[5]. しかも,東大 OCW コース教材とウェブページに使われて いるその他のブランド名およびロゴについても,第三者の 商標とロゴがある.この商標の入れ子は,教育コンテンツ の著作権と関連権と同じ構造を有している. 上記の点は指摘されることがないが,当然,OCW 等に 関しては,産業財産権(商標権)も考慮しておかなければ ならない.東京大学 OCW といった表記は,産業財産権法 (商標法)の権利管理からいえば,不適切な併記といえる. ここに,教育コンテンツのネット公表に対する知的財産権 管理は,著作権法と産業財産権法に関連した対応が必要で ある.各大学と OCW を併記する表示は,それら二つの意 味を考慮すると問題があろう.OCW の名称等は,著作物 に対して,また商標または登録商標の対象となる. オープンコンテンツであっても,○C の付加の有無を問わ ず,無方式主義をとる著作権法においては著作(創作)し た時点で著作権(copyright)が発生する.そして,教育コ ンテンツのネット公表にあたっては,わが国の著作権と関 連権の保護と制限のもとに権利管理がなされており,その 権利管理が CC ライセンス準拠とその制限条項のフェアユ ース・フェアディーリングに関する権利管理と整合する関 係にある.したがって,上記の対応が想定されれば,わが 国で CC ライセンス準拠とフェアユース等の表明は不要な 行為になる. そして,方式主義をとる産業財産権法(商標法)におい ては,登録により権利が発生し登録商標(®)となる。そ の表示または商標(™)の付加の有無を問わず,それら呼 称,マーク,ロゴには自他商品(役務)識別機能,出所表 示機能などが認識できる.それは,先使用に関係する.ブ ランドイメージからOCW や CC ライセンスを使用するこ とは,登録商標と商標(標章)との関係からいえば,放送 大学オープンコースウェア(OCW)と併記することは, 適切とはいえない.なぜならば,大学名である登録商標 (商標)が OCW に付されているとみなせることから,大 学名と OCW とは分けて使用することが知的財産権管理か らいって適切な対応になる. 教育コンテンツのネット公表に関する著作権と copyright との整合からは,わが国の著作権法では映画の著作物の三 つの関係に顕現している.それは,映画の著作物の著作者 (著作権法 16 条)と映画の著作物の著作権の帰属(同法 29 条)になり,それらの重ね合わせとして職務著作の著作 者(同法 15 条)としての映画の製作者の権利の関係にな る.その中で,登録商標,商標が記された商品(役務)と の関わりをもつ. 3.3 倫理面の対応 法と倫理の関係は,本来,相互に入り込むものではない. その関係は,次のような関係にある.倫理も法も「道徳規 範」にかかわりをもち,倫理が内面的な規範であるのに対 し法は外面的な規範であり,本人の意志にかかわらず強制 されるという特色に注目しているとの見解がある[6].ただ し,わが国の旧家族法は道徳規範であり,またシャリーア (イスラム法)は,全生活を包含する規範といえる. したがって,法と倫理は,相互補完する関係になる.こ こで,本稿で着目するのは,知的財産権法および放送倫 理・出版倫理との接点にある.また,知的財産権法のソフ トローからのアプローチから,教育コンテンツのネット公 表に関する倫理面の対応を肖像権やプライバシーとの関連 から検討する.教育コンテンツのネット公表の障害となる 肖像権は,プライバシーの人格権の性質とパブリシティの 財産権の性質が融合する権利である.ここで,肖像に関し ては,プライバシーの保護の面から顔のマスクやぼかしを することが,同一性の保持を阻害する点で問題が生じるこ とがある.
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4 放送倫理として,一般には,NHK 新放送ガイドライン,
BBC Editorial Guidelines が参照され,また米国の公共放送 サービス(Public Broadcasting Service, PBS)のガイドライ ンも参照される.そして,映像に関する放送倫理として, 放送倫理基本綱領がある[7].その中で,放送は,放送の公 共性を重んじ,法と秩序を守り,基本的人権を尊重し,国 民の知る権利に応えて,言論・表現の自由を守るとしてい る.そして,放送は,適正な言葉と映像を用いると同時に, 品位ある表現を心掛けるよう努めるとする.また,一般基 準で,編集にあたっては人権を尊重するとなっている.放 送倫理に関しては,放映後にも視聴検査が行われる.テキ ストの出版に関しても,倫理的な留意点が注記される.そ の基準は,編集の自由や出版の自由に関わる[8].すなわち, 教育コンテンツのネット公表に関する倫理的な問題への対 応は,編成権と編集権に関係する.教育コンテンツのネッ ト公表により,その視聴は,国内にとどまるものではない. したがって,放送倫理基本綱領が意味するものは,倫理的 な問題が,各国の社会制度との全体的な関係からの理解に なる.これは,教育コンテンツの社会文化的な多様性を加 味した同一性の保持とその公表の有無の関係になる. ところで,米国で 1960 年代に用いられたコンプライア ンスは,命令や要求に応じることを意味し,守るべき規範 は法律に限らず,社会通念,倫理や道徳も含まれる.プラ イバシーと倫理的な問題との連携による対応は,コンプラ イアンスとの対応関係になろう.倫理的な問題への対応の 中の人権・人格権に関する内容は,著作権とプライバシー との相関問題への対応と相互に関連する.そして,宗教, 法・政治・経済,論争・裁判,社会生活,表現,広告,訂 正に関する放送大学学園放送番組基準は,学問の自由・大 学の自治と放送の公共性と公平性に関する総論的な基準の 中で社会文化的な多様性をも加味した同一性を保持する基 準といえる. 著作権法と放送倫理などとの接点は,著作権法に関する 権利の制限をも考慮して,さらに情報公開法と個人情報保 護法および著作権法の抵触関係から導かれる.倫理的な問 題の適切な対応は,著作権法の権利の制限の中の対象に対 して,情報公開法と個人情報保護法の人格権の相互の関係 を考慮することになろう[9].それは,教育コンテンツの人 格権と財産権のそれぞれの権利の保護と権利の制限との相 補の関係のもとに,再考することになる.それは,教育コ ンテンツの権利の保護と権利の制限における人格権と財産 権の対応だけでなく,教育コンテンツの権利の保護の財産 権と権利の制限における人格権および教育コンテンツの権 利の保護における人格権と権利の制限における財産権の対 応を要する.権利の保護と権利の制限の相互の関係は,わ が国の社会制度の中で,著作権とプライバシーとの対応お よび倫理的な問題への対応との連携による対応が重ね合わ せの関係になる.そして,それらは,通時的な対応ではな く,共時的な対応を意味する.
4.まとめと今後の課題
教育コンテンツのネット公表の促進は,たとえ OCW や iTunes U によってネット公表されるにしても,わが国の社 会制度と整合性を保つためには,人格権と財産権が連携す る権利管理が求められる.それは,教育コンテンツが複製 され,伝達され,派生していく過程における法的・倫理的 な問題への対応になる. そして,教育コンテンツは,映画の著作物の権利関係と 映画の著作物に連携する商標に関する権利管理が関与する. したがって,教育コンテンツのネット公表にあたっては, 登録商標,商標が記された商品(役務)との関わりをもつ. 教育コンテンツは,映画の著作物の権利関係と映画の著作 物に連携する商標に関する権利関係が関与する.したがっ て,それらに対する権利管理が教育コンテンツのネット公 表にあたって求められる.したがって,オープンコンテン ツと称すればすむことを OCW と明記することは,産業財 産権(商標権)との関わりからいえば不適切といえる. ところで,わが国では,学術コンテンツの著作権におけ る権利関係は,その教育コンテンツと整合するものになっ ていない.教育コンテンツと学術コンテンツとが相互に取 り込まれていくとき,不都合な状況を招く.ここで,「科 学知の総合化」において,科学映像をジャーナルと同様な 位置づけでとらえる試みがある[10].そのとき,学術論文に 科学映像が連携・融合する学術コンテンツが想定される. その場合,学術コンテンツのネット公表は,コンテンツの ネット公表の知的財産権管理の整合性から,本稿で検討し てきた教育コンテンツのネット公表の映画の著作物の三つ の権利関係の中で接点が生じうることになろう. なお,教育コンテンツを配信するシステムや視聴させる 仕組みは特許権,教育コンテンツの視聴を展開する画面表 示のアイコンは意匠権とも関連しうる.ここに,教育コン テンツのネット公表を持続可能なものとするためには,デ ィジタル権利管理(Digital Rights Management:DRM)に 留まらずに,総合的な知的財産権管理によるリデザインが 求められよう. 参考文献 [1] http://www.oercommons.org/(2012/6/27 アクセス) [2] http://www.core.org.cn/(2012/6/27 アクセス) [3] 児玉晴男,“クラウド環境の著作権と関連権の相補 性,”情報処理学会研究報告,2012-EIP-55-4No.4, 6p.,2012. [4] http://ocw.mit.edu/terms/trademarks/(2012/6/27 アクセ ス) [5] http://www.u-tokyo.ac.jp/gen03/b01_05_03_j.htm ( 2012/ 6/27 アクセス) [6] 田島裕,“企業倫理と法,”現代企業法の研究―筑波 大学大学院企業法学専攻十周年記念論集,信山社, p.430,2001. [7] http://www.bpo.gr.jp/bpo/overview/general.html (2012/6 /27 アクセス) [8] http://www.shojihomu.co.jp/oshirase/20100331.pd(2012/ 6 /27 アクセス) [9] 児玉晴男,“包括的なユビキタスネット法制における 開示/非開示情報の構造とその権利の性質,”情報通 信学会誌,Vol.28,No.3, pp.1-12,2010. [10] http://sas.soken.ac.jp/movie/(2012/6/27 アクセス)FIT2012(第 11 回情報科学技術フォーラム)
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