松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 抜 刷 平 成 二 十 三 年 十 月 発 行
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一 本 稿 の 目 的 二 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 の 特 定 と そ の 検 証 1 特 定 か つ 検 証 す べ き ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 の 規 定 2 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 四 二 条 ︵ 以 上 、 二 三 巻 一 号 ︶ 3 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 〇 条 4 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 一 条 5 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 三 条 6 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 四 条 7 小 括 三 日 本 法 へ の 示 唆 1 民 法 四 六 七 条 二 項 の 解 釈 論 へ の 示 唆 2 民 法 四 六 七 条 一 項 の 解 釈 論 へ の 示 唆 四 お わ り に ︵ 以 上 、 本 号 ︶ 一3 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 〇 条 第 二 草 案 三 五 〇 条 も ま た 、 一 見 す る と 、 梅 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 を 起 草 す る 際 に 参 照 し た 第 二 草 案 の 規 定 に 含 ま れ て い な い よ う に 思 え る ︵ 本 稿 一 を 参 照 ︶ 。 し か し 、 梅 起 草 委 員 に よ っ て 参 照 さ れ た 第 二 草 案 三 五 一 条 が 第 二 草 案 三 五 〇 条 を 準 用 し て い る こ と か ら 、 梅 起 草 委 員 は 当 然 に 、 第 二 草 案 三 五 〇 条 も 参 照 し た と 考 え ら れ る ︵ 第 二 草 案 三 五 一 条 に つ い て は 後 述 す る ︶ 。 第 二 草 案 三 五 〇 条 は 、 次 の よ う な 規 定 で あ る 。 ﹁ ! 新 債 権 者 は 、 債 務 者 が 債 権 の 譲 渡 後 に 旧 債 権 者 に 対 し て し た 給 付 、 及 び 債 権 の 譲 渡 後 に 債 務 者 と 旧 債 権 者 と の 間 で そ の 債 権 に 関 し て な さ れ た 法 律 行 為 が 有 効 で あ る こ と を 認 め な け れ ば な ら な い 。 た だ し 、 債 務 者 が そ の 給 付 又 は 法 律 行 為 の 時 点 で 債 権 の 譲 渡 を 知 っ て い た と き は 、 こ の 限 り で な い 。 " 債 権 の 譲 渡 後 に 債 務 者 と 旧 債 権 者 と の 間 で 係 属 し た 訴 訟 に お い て 、 そ の 債 権 に 関 す る 確 定 判 決 が あ っ た と き は 、 新 債 権 者 は 、 そ の 判 決 の 効 力 を 認 め な け れ ば な ら な い 。 た だ し 、 訴 訟 が 係 属 し た 時 点 で 債 務 者 が 債 権 の 譲 渡 を 知 っ て い た と き は 、 こ の 限 り で な い 。 ﹂ 第 二 草 案 三 五 〇 条 の 文 言 は 、P ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 、R eatz 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 の す べ て に お い て 、 全 く 同 一 で あ り 、 脚 注 を 付 さ れ て い な い 。 暫 定 第 二 草 案 、 官 版 第 二 草 案 と も に 、 同 条 の 趣 旨 を 説 明 し て い な い の で あ る 。 第 二 委 員 会 議 事 録 の う ち 、 債 権 譲 渡 を 含 む 第 一 巻 は 、 一 八 九 七 年 に 公 表 さ れ た が 、 そ こ で は た と え ば 、 第 二 草 案 三 五 〇 条 一 項 は 、 第 一 草 案 三 〇 四 条 一 項 の 表 現 を わ ず か に 変 更 し た も の に す ぎ な い と 説 明 さ れ て い る7︵5 ︶ 。 し た が っ て 、 第 一 草 案 三 〇 四 条 一 項 の 趣 旨 は 、 第 二 草 案 三 五 〇 条 一 項 に お い て も 維 持 さ れ て い る と い え よ う 。 第 一 草 案 理 由 書 ︵ 一 八 八 八 年 ︶ は 、 第 一 草 案 三 〇 四 条 一 項 の 趣 旨 に つ い て 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 二 263
譲 渡 債 権 は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 が 債 権 譲 渡 契 約 を 締 結 す る こ と に よ っ て 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 と の 間 だ け で は な く 、 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 完 全 に 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る が ︵ 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︶ 、 通 知 は 債 権 譲 渡 の 効 力 発 生 要 件 で は な い ︵ も ち ろ ん 、 対 抗 要 件 で も な い ︶ た め 、 債 務 者 は 、 債 権 譲 渡 を 知 り え な い 可 能 性 が あ り 、 旧 債 権 者 で あ る 譲 渡 人 に 無 効 な 弁 済 を し て 二 重 弁 済 の 危 険 を 負 う 恐 れ が あ る 。 そ こ で 、 そ の 弁 済 を 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と す る こ と に よ っ て 、 債 権 譲 渡 を 知 ら な い で 譲 渡 人 ︵ 旧 債 権 者 ︶ に 対 し て 弁 済 し た 債 務 者 を 保 護 す る べ き で あ る7︵6 ︶ 。 右 の 第 一 草 案 理 由 書 の 説 明 は 、 債 権 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 ︵ 旧 債 権 者 ︶ に 弁 済 を し た 場 合 に お い て 、 そ の 弁 済 を 無 効 と し 、 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 に 二 重 弁 済 を 強 い る こ と は 譲 渡 人 、 譲 受 人 お よ び 債 務 者 間 の 公 平 に 反 す る と い う 理 解 に よ っ て 基 礎 づ け ら れ て い る と い え る 。 債 務 法 部 分 草 案 理 由 書 ︵ 一 八 八 二 年 ︶ も 、 債 務 法 部 分 草 案 一 五 条 一 文 の 趣 旨 に つ い て ︵ 77 ︶ 、 第 一 草 案 理 由 書 と 同 様 の 説 明 を し て い る7︵8 ︶ 。 一 八 九 五 年 三 月 に 甲 号 議 案 四 七 〇 条 を 起 草 し た 梅 起 草 委 員 は 、 第 一 草 案 三 〇 四 条 の 趣 旨 を 知 り え た の で あ り 、 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 時 に 第 二 委 員 会 議 事 録 ︵ 一 八 九 七 年 ︶ を 参 照 し え な か っ た も の の 、 第 二 草 案 三 五 〇 条 の 趣 旨 を 把 握 で き た と 思 わ れ る 。 し か し 、 暫 定 第 二 草 案 お よ び 官 版 第 二 草 案 は 、 第 二 草 案 三 五 〇 条 に お い て も 、 同 条 を 支 配 し て い る 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ に つ い て 、 譲 渡 人 お よ び 譲 受 人 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ っ て 、 譲 渡 契 約 の 効 力 が 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 し て も 完 全 に 及 ぶ 根 拠 を 説 明 し て い な い 。 す な わ ち 、 梅 起 草 委 員 は 、 第 二 草 案 三 四 二 条 に 引 き 続 き 第! 二! 草! 案! 三! 五! 〇! 条! か! ら! も! 、 債! 務! 者! 以! 外! の! 第! 三! 者! に! 対! す! る! 関! 係! で! も! 債! 権! の! 特! 定! 承! 継! が! 妥! 当! す! る! 理! 由! を! 見! い! だ! す! こ! と! は! で! き! な! か! っ! た! の で あ る ︵ 本 稿 二 2 を 参 照 ︶ ︵ 79 ︶ 。 本 稿 は 、 こ の 点 を 特 に 強 調 し て お き た い 。 262 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 三
4 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 一 条 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 一 条 は 、 次 の よ う な 規 定 で あ る 。 同 条 二 項 に つ い て は 、P ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 、R eatz 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 の う ちR eatz 版 が 、 文 言 上 ほ ん の わ ず か に 他 の 第 二 草 案 と 異 な っ て い る ︵ 同 条 一 項 に つ い て は 、 三 つ の 暫 定 第 二 草 案 と 官 版 第 二 草 案 の す べ て に お い て 、 文 言 上 の 差 異 は な い ︶ 。 ま た 、 同 条 に 付 さ れ た 脚 注 に つ い て も 、R eatz 版 は 、 他 の 第 二 草 案 と 異 な っ て い る 。 そ こ で 、R eatz 版 と 他 の 第 二 草 案 と の 差 異 を 明 ら か に す る た め 、 同 条 に つ い て は 原 文 も 掲 載 す る こ と に し た い 。 ﹁ ! 既 に 譲 渡 さ れ た 債 権 が 旧 債 権 者 に よ っ て 再 度 第 三 者 に 譲 渡 さ れ た 場 合 に お い て 、 債 務 者 が そ の 第 三 者 に 対 し て 給 付 を な し 、 又 は 、 債 務 者 と そ の 第 三 者 と の 間 で 法 律 行 為 が 行 わ れ 、 若 し く は 、 訴 訟 が 係 属 し た と き は 、 債 務 者 の た め に 、 第 三 五 〇 条 の 規 定 を 第 一 譲 受 人 に 対 し て 準 用 す る 。 " 既 に 譲 渡 さ れ た 債 権 が 裁 判 所 の 決 定 に よ っ て 第 三 者 に 移 付 さ れ た と き 、 又 は 、 既 に 譲 渡 さ れ た 債 権 が 法 律 に 基 づ き 第 三 者 へ と 移 転 し た こ と を 旧 債 権 者 が そ の 第 三 者 に 対 し て 承 認 し た と き も 、 前 項 と 同 様 で あ る 。 ﹂ ︻ 第 二 草 案 三 五 一 条 の 原 文 ︼ §3 5 1 ︵30 5 ︶ ︵ 80 ︶ Ist ein e b ereits ab g etreten e F o rd eru n g v o n d em b ish erig en G läu b ig er n o ch m als an ein en D ritten ab g etreten w o rd en , so fin d en , w en n d er S ch u ld n er an d en D ritten g eleistet h at o d er w en n zw isch en d em S ch u ld n er u n d d em D ritten ein R ech tsg esch äft v o rg en o m m en o d er ein R ech tsstreit an h än g ig g ew o rd en ist, zu G u n sten d es S ch u ld n ers d ie V o rsch riften d es §3 5 0 de m fr ühe re n E rw er be r ge ge nübe r ent spr ec he nde A nw endung. D as G leich e g ilt, w en n d ie b ereits ab g etreten e F o rd eru n g d u rch g erich tlich en B esch lu ß ein em D ritten ü b erw iesen 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 四 261
w o rd en ist o d er w en n d er b ish erig e G läu b ig er d em D ritten g eg enübe r ane rka nnt ha t, da ß di e be re its abge tr et ene F o rd eru n g k raft G esetzes au f d en D ritten ü b erg eg an g en sei. R eatz 版 を 除 く 暫 定 第 二 草 案 ︵P ioni er 社 版 とM andr y の 私 撰 版 ︶ お よ び 官 版 第 二 草 案 は 、 条 文 番 号 の 部 分 ︵ 右 の 原 文 に お け る 最 初 の 下 線 部 分 ︶ に 脚 注 を 付 し て い る 。P ioni er 社 版 とM andr y の 私 撰 版 の 脚 注 番 号 は そ れ ぞ れ 、 ﹁ 1 ﹂ と ﹁ 22 ﹂ で あ る8︵1 ︶ 。 ま た 、 官 版 第 二 草 案 の 脚 注 番 号 は 、 ﹁ 1 ﹂ で あ る8︵2 ︶ 。 右 に 述 べ たP ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 の 脚 注 は 、 文 言 上 同 一 で あ り 、 そ の 内 容 は 、 ﹁ 第 二 草 案 三 五 一 条 が 同 草 案 三 五 〇 条 二 項 を 準 用 す る 限 り 、 民 事 訴 訟 法 二 三 六 条 に お い て 同 草 案 三 五 〇 条 二 項 と 同 草 案 三 五 一 条 を 指 摘 す る こ と は 、 留 保 さ れ た ま ま ︵ 差 し 控 え ら れ た ま ま ︶ で あ る 。 ﹂ と い う も の で あ る ︵ 83 ︶ 。 と こ ろ で 、 た と え ば 、 第 二 草 案 三 五 一 条 一 項 と 対 応 関 係 に あ る 第 一 草 案 三 〇 五 条 一 文 は ︵ 債 務 者 に よ る 劣 後 譲 受 人 へ の 弁 済 に 特 化 し て い え ば ︶ 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 に よ っ て 、 債 権 の 多 重 譲 渡 の 場 合 に お け る 複 数 譲 受 人 間 の 優 劣 は 債 権 譲 渡 契 約 締 結 の 先 後 で 決 す る こ と に な る と こ ろ 、 債 務 者 に 対 す る 通 知 が 債 権 譲 渡 の 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 効 力 発 生 要 件 お よ び 対 抗 要 件 と さ れ て い な い こ と か ら 、 第 一 の 譲 渡 に つ き 善 意 で 劣 後 譲 受 人 た る 第 二 譲 受 人 に 弁 済 し た 債 務 者 に つ い て 、 そ の 弁 済 を 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と し た も の で あ る 。 す な わ ち 、 第 一 草 案 三 〇 五 条 一 文 は 、 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 の 第 二 譲 受 人 に 対 す る 弁 済 を 有 効 と し て 、 債 務 者 を 二 重 弁 済 の 危 険 か ら 解 放 す る こ と に よ り 、 譲 渡 人 、 第 一 譲 受 人 、 第 二 譲 受 人 お よ び 債 務 者 間 の 公 平 を 図 っ た も の で あ る ︵ 84 ︶ 。 第 一 草 案 三 〇 五 条 は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 に 支 配 さ れ た 規 定 で あ り 、 暫 定 第 二 草 案 お よ び 官 版 第 二 草 案 と も に 第 一 草 案 三 〇 五 条 の 趣 旨 と 内 容 を 維 持 し な い 旨 の 記 述 を 一 切 し て い な い こ と か ら 、 第 二 草 案 三 五 一 条 の 趣 旨 は 、 第 一 草 案 三 〇 五 条 の 趣 旨 と 同 一 で あ る と み て よ い で あ ろ う8︵5 ︶ 。 し か し 、P ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 に お け る 第 二 260 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 五
草 案 の 条 文 番 号 に 付 さ れ た 脚 注 は 、 ﹁ 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 が 譲 渡 人 と 譲 受 人 に よ る 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ っ て 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 し て も 完 全 に 及 ぶ と し 、 フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 し な い 理 由 ﹂ を 明 ら か に す る も の で は な い 。 そ の 意 味 で は こ の 脚 注 を 有 す るP ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 と 、 こ の 脚 注 を 有 し な いR eatz 版 と の 間 に は 、 差 異 は 存 し な い と 分 析 す る こ と が 可 能 で あ ろ う 。 R eatz 版 は 、 第 二 草 案 三 五 一 条 二 項 に つ い て も 、P ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 と 異 な る 点 を 有 し て い る 。 ま ず 、 右 の 原 文 に お け る 二 番 目 の 下 線 部 分 に 着 目 す る と 、P ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 は 、 ﹁ist ﹂ の 後 に ﹁, ﹂ を 打 っ て い な い の に 対 し て 、R eatz 版 は 、 ﹁, ﹂ を 打 っ て い る ︵ 86 ︶ ︵ 87 ︶ 。 し か し 、 こ の 形 式 的 な 差 異 は 、 第 二 草 案 三 五 一 条 二 項 の 翻 訳 に 全 く 影 響 を 与 え な い 。R eatz 版 と そ の 他 の 第 二 草 案 は 、 二 番 目 の 下 線 部 分 に つ い て 、 実 質 的 に 同 一 で あ る と い う こ と が で き る 。 次 に 、 右 の 原 文 に お け る 三 番 目 の 下 線 部 分 に つ い て 、P ioni er 社 版 、M andr y の 私 撰 版 お よ び 官 版 第 二 草 案 と 異 な り 、R eatz 版 だ け が 、 脚 注 を 付 け て い る 。 脚 注 の 番 号 は 、 ﹁ 8 ﹂ で あ る ︵ 88 ︶ 。R eatz 版 に お け る そ の 脚 注 は 、 ﹁ こ の 承 認 に つ い て 特 別 な 方 式 を 定 め た 規 定 を 置 く こ と は 、 不 要 で あ る よ う に 思 わ れ る 。 ﹂ と い う も の で あ る8︵9 ︶ 。 こ の 脚 注 も ま た 、 第 二 草 案 三 五 一 条 を 支 配 す る 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ の 趣 旨 を 明 ら か に す る も の で は な く 、 特 に 債 権 の 多 重 譲 渡 の 場 合 に お い て フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 し な い 理 由 を 説 明 し て い な い 。 こ う し て み る と 、 暫 定 第 二 草 案 お よ び 官 版 第 二 草 案 と も に 、 第 二 草 案 三 五 一 条 に お い て も 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し た 根 拠 に つ い て 何 ら 述 べ て い な い こ と に な る 。 や は り 、 梅 起 草 委 員 は 、 暫 定 版 と 官 版 双 方 の 第 二 草 案 三 五 一 条 を 参 照 し て も 、 な ぜ 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 が 譲 渡 契 約 締 結 に よ っ て 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 し て も ︵ 不 完 全 で は な く ︶ 完 全 に 及 ぶ の か 、 甲 号 議 案 四 七 〇 条 起 草 時 に は そ の 趣 旨 を 把 握 で き な か っ た と 考 え ら れ る の で あ る 。 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 六 259
5 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 三 条 第 二 草 案 三 五 三 条 は 、 以 下 の よ う な 規 定 で あ り 、 三 つ の 暫 定 第 二 草 案 と 官 版 第 二 草 案 の す べ て に つ い て 、 文 言 上 の 差 異 は な い 。 た だ 、 暫 定 第 二 草 案 の う ちR eatz 版 の み 、 同 条 一 項 に 脚 注 を 付 し て い る 。R eatz 版 の 脚 注 の 位 置 を 正 確 に 示 す た め 、 第 二 草 案 三 五 三 条 に つ い て も 、 訳 文 と あ わ せ て 原 文 を 掲 載 す る 。 ﹁ ! 債 務 者 は 、 旧 債 権 者 に よ っ て 交 付 さ れ た 債 権 の 譲 渡 に 関 す る 証 書 の 交 付 と 引 換 え で の み 、 新 債 権 者 に 対 し て 給 付 を し な け れ ば な ら な い 。 新 債 権 者 の 告 知 又 は 催 告 は 、 そ の 証 書 の 呈 示 な く し て な さ れ 、 か つ 、 債 務 者 に よ っ て そ の 証 書 の 呈 示 が な い こ と を 理 由 に 遅 滞 な く 拒 絶 さ れ た と き は 、 無 効 で あ る 。 " 前 項 の 規 定 は 、 旧 債 権 者 が 債 務 者 に 対 し て 債 権 の 譲 渡 に つ い て 書 面 で 通 知 し た と き は 、 適 用 し な い 。 ﹂ ︻ 第 二 草 案 三 五 三 条 の 原 文 ︼ §3 5 3 ︵30 8 ︶ ︵ 90 ︶ D er S chul dne r is t de m ne ue n G lä ubi ge r ge ge nübe r zur L ei st ung nur ge ge n A us hä ndi gung ei ne r von de m b ish erig en G läu b ig er ü b er d ie A b tretu n g au sg estellten U rkunde ve rpf lic ht et . E ine K ündi gung ode r ei ne M ahnung de s ne ue n G lä ubi ge rs is t unw ir ks am , w enn si e ohne V or le gung ei ne r sol che n U rkunde er fol gt und aus di es em G runde von de m S chul dne r unve rz ügl ic h zur üc kge w ie se n w ir d. D ie se V or sc hr if te n finde n ke ine A nw endung, w enn de r bi she rige G lä ubi ge r de m S chul dne r di e A bt re tung sch riftlich an g ezeig t h at. 梅 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 起 草 時 に 参 照 し え な か っ た 、 債 権 譲 渡 を 含 む 第 二 委 員 会 議 事 録 第 一 巻 に よ れ 258 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 七
ば 、 第 二 草 案 三 五 三 条 は 、 第 一 草 案 三 〇 八 条 前 段 の 趣 旨 を 維 持 し て い る と い う ︵ 91 ︶ ︵ 92 ︶ 。 第 一 草 案 に お い て は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 一 草 案 二 九 三 条 ︶ か ら9︵3 ︶ 、 譲 渡 債 権 は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 と の 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 の み に よ っ て 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 完 全 に 移 転 し 、 そ の 完 全 な 移 転 の た め の 譲 渡 に つ い て の 債 務 者 に 対 す る 通 知 は 不 要 と さ れ て い る 。 し た が っ て 、 債 務 者 は 、 表 見 譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し て 、 真 正 な 債 権 者 と の 関 係 で 二 重 弁 済 の 危 険 を 負 い う る の で あ り 、 こ の よ う な 結 果 は 、 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 が 不 利 益 を 被 る た め 、 譲 渡 人 、 譲 受 人 お よ び 債 務 者 間 の 公 平 に 反 す る こ と に な る 。 そ こ で 、 第 一 草 案 は 、 譲 受 人 ︵ 新 債 権 者 ︶ が 譲 渡 債 権 を 行 使 す る た め に は 、 譲 渡 人 に よ る 債 務 者 に 対 す る 譲 渡 に つ い て の 通 知 、 ま た は 譲 渡 に つ い て の 公 正 証 書 の 債 務 者 に 対 す る 呈 示 と い う 要 件 を 譲 受 人 が 具 備 し な け れ ば な ら な い と し 、 新 債 権 者 た る 譲 受 人 に ﹁ 権 利 者 と し て の 資 格 ︵Leg itim atio n ︶ ﹂ を 債 務 者 に 対 し て 証 明 さ せ る の で あ る ︵ 94 ︶ 。 な お 、 債 務 法 部 分 草 案 も 、 第 一 草 案 三 〇 八 条 と 同 様 の 規 定 を 置 い て い る ︵ 一 八 条 一 項 ︶ ︵ 95 ︶ 。 債 務 法 部 分 草 案 理 由 書 に よ れ ば 、 債 務 法 部 分 草 案 一 八 条 一 項 の 趣 旨 は 、 第 一 草 案 三 〇 八 条 の そ れ と 同 じ で あ る9︵6 ︶ 。 第 二 草 案 三 五 三 条 に 関 す る 第 二 委 員 会 議 事 録 の 説 明 か ら は 、 ﹁ 譲 渡 人 と 譲 受 人 と の 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ っ て 、 譲 渡 債 権 が 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 完 全 に 移 転 す る ﹂ こ と ︵ 債 権 の 特 定 承 継 原 則 が 採 用 さ れ て い る こ と ︶ の 理 由 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 の 趣 旨 ︶ は 、 明 ら か と は な ら な い 。 問 題 は 、 梅 起 草 委 員 が 参 照 し え た 四 つ の 第 二 草 案 の う ち 、 唯 一 第 二 草 案 三 五 三 条 ︵ 一 項 ︶ に 脚 注 を 付 し て い るR eatz 版 が そ の 脚 注 の 中 で 債 権 の 特 定 承 継 原 則 の 趣 旨 を 述 べ て い る か ど う か で あ る 。 も し 、R eatz 版 が そ の 趣 旨 を 説 明 し て い る の で あ れ ば 、 梅 起 草 委 員 は 、 そ の 趣 旨 を 把 握 し た 上 で 、 フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 と 比 較 し て 価 値 判 断 を 行 い 、 債 権 取 引 安 全 の 観 点 か ら 対 抗 要 件 主 義 を 選 択 し て 採 用 し た こ と に な る 。 し か し 、R eatz 版 が そ の 趣 旨 を 説 明 し て い な い の で あ れ ば 、 一 八 九 七 年 に 公 表 さ れ た 第 二 委 員 会 議 事 録 第 一 巻 が そ れ に つ い て 述 べ て い る こ と と 相 ま っ て 、 梅 起 草 委 員 は 、 一 八 九 五 年 の 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 八 257
甲 号 議 案 四 七 〇 条 起 草 当 時 、 そ の 趣 旨 を 理 解 し え な か っ た 可 能 性 が あ る で あ ろ う 。 こ の 可 能 性 は 、 第 二 草 案 三 四 二 条 が 日 民 四 六 七 条 二 項 の 解 釈 論 に 示 唆 を 与 え う る こ と を 意 味 す る 。 R eatz 版 は 、 第 二 草 案 三 五 三 条 一 項 の 原 文 の 下 線 部 に 脚 注 を 付 け て い る 。 脚 注 の 番 号 は 、 ﹁ 10 ﹂ で あ り 、 そ の 内 容 は 、 次 の よ う な も の で あ る ︵ 97 ︶ 。 新 し い 規 定 ︵ 第 二 草 案 三 五 三 条 一 項 前 段 ︶ は 、 債 務 者 の 保 護 に 値 す る 利 益 を 直 接 的 な 方 法 で 顧 慮 し た が 、 第 一 草 案 三 〇 八 条 前 段 は 、 こ れ と は 対 照 的 に 、 間 接 的 に そ の 利 益 を 顧 慮 し た に す ぎ な い 。 人 々 は 、 通 知 ま た は 債 権 譲 渡 証 書 に 公 の 認 証 を 要 求 す る こ と が 必 要 不 可 欠 で あ る と 認 識 し て お ら ず 、 そ こ ま で 債 務 者 に 配 慮 し て し ま う と 、 あ ま り に も 債 権 の 譲 渡 を 困 難 な ら し め る と 憂 慮 し た 。 第 二 委 員 会 の 多 数 は 、 債 務 者 の 債 権 譲 渡 証 書 交 付 請 求 権 が 弁 済 期 に あ る た め 、 債 務 者 の 譲 受 人 に 対 す る 履 行 拒 絶 権 は 留 置 権 で あ る の か 、 そ れ と も 、 債 務 者 の 給 付 義 務 の 履 行 が 債 権 譲 渡 証 書 の 交 付 に か か っ て い る だ け な の か ど う か と い う 問 題 に つ い て 、 決 着 を つ け る こ と を 拒 絶 し た 。 ま た 、 特 別 な 規 定 に よ っ て 、 債 権 譲 渡 証 書 の 交 付 に 代 え て 担 保 を 供 与 す る 権 利 を 譲 受 人 に 認 め る こ と は 不 要 で あ る と す る 。 R eatz 版 の 脚 注 は 、 ! 旧 債 権 者 に よ っ て 交 付 さ れ た 債 権 譲 渡 証 書 を 新 債 権 者 が 債 務 者 に 交 付 せ ず 、 か つ 、 旧 債 権 者 が 債 務 者 に 対 し て 譲 渡 に つ い て 通 知 し な い 場 合 、 第 二 草 案 三 五 三 条 は 債 務 者 に 対 し て 直 接 に 履 行 拒 絶 権 を 与 え て い る が 、 他 方 、 第 一 草 案 三 〇 八 条 前 段 は 新 債 権 者 の 履 行 請 求 を 法 律 上 無 効 で あ る と 宣 言 し 、 そ の 帰 結 と し て 債 務 者 の 履 行 拒 絶 権 が 導 か れ る と い う 二 段 階 構 造 に な っ て い る こ と を 指 摘 す る 。 こ こ で は 、 債 務 者 に 履 行 拒 絶 権 を 与 え る こ と に よ っ て 、 新 債 権 者 に 権 利 者 と し て の 資 格 ︵L eg itim atio n ︶ を 証 明 さ せ 、 債 務 者 が 表 見 256 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 九
譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し な い よ う に す る と い う 配 慮 が 、 そ も そ も 債 権 の 特 定 承 継 原 則 か ら 生 じ た も の で あ る こ と は 、 全 く 説 明 さ れ て い な い 。 ま た 、 ! 債 権 譲 渡 証 書 が 公 正 証 書 で あ る べ き か 否 か に つ い て も 、 結 局 は 証 明 方 法 の 問 題 で あ っ て 、 そ も そ も な ぜ 証 明 が 必 要 と な る の か に つ い て 、 や は り こ の 脚 注 は 、 言 及 し て い な い と い え る 。 そ し て 、 " 債 務 者 の 履 行 拒 絶 権 の 法 的 性 質 論 も 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ の 趣 旨 を 説 明 す る も の で は な い し 、 新 債 権 者 に 債 権 譲 渡 証 書 の 交 付 に 代 わ る 担 保 供 与 を 認 め る か 否 か と い う こ と も 、 債 務 者 が 表 見 譲 受 人 に 無 効 な 弁 済 を す る こ と に よ る リ ス ク を ど の よ う に 回 避 す る か と い う 問 題 で あ っ て 、 そ の リ ス ク が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 に 起 因 す る こ と を 指 摘 す る も の で は な い 。 こ う し て み る と 、 右 のR eatz 版 の 脚 注 を 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 時 に 参 照 し た で あ ろ う 梅 起 草 委 員 は 、 第 二 草 案 が な ぜ 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し て い る の か と い う こ と を そ の 脚 注 か ら も 把 握 す る こ と は で き な か っ た と 考 え ら れ る 。 結 局 、 暫 定 第 二 草 案 お よ び 官 版 第 二 草 案 は 、 第 二 草 案 三 五 三 条 の 箇 所 で も 債 権 の 特 定 承 継 の 原 則 が 採 用 さ れ て い る 趣 旨 を 何 ら 示 し て い な い と い え る 。 6 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 五 四 条 梅 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 を 起 草 す る 際 に 参 照 し た ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 の 規 定 の う ち 、 そ の 最 後 の 規 定 で あ る 第 二 草 案 三 五 四 条 は 、 第 二 草 案 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ を 採 用 す る 趣 旨 に つ い て 、 何 ら か の 説 明 を 加 え て い る の だ ろ う か 。 第 二 草 案 三 五 四 条 の 文 言 に つ い て は 、P ioni er 社 版 とM andr y の 私 撰 版 の そ れ は 、 全 く 同 一 で あ り 、 両 者 と も に 、 一 切 脚 注 を 付 し て い な い 。 そ こ で ま ず 、P ioni er 社 版 とM andr y の 私 撰 版 に お け る 同 条 の 翻 訳 と 原 文 を 示 す こ と に し た い 。 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 一 〇 255
﹁ 軍 人 、 公 務 員 、 聖 職 者 又 は 公 立 学 校 の 教 員 が 俸 給 、 休 職 給 又 は 恩 給 に つ い て 譲 渡 で き る 範 囲 内 で こ れ を 譲 渡 し た と き は 、 支 払 金 庫 は 、 旧 債 権 者 が 交 付 し た 公 に 認 証 さ れ た 証 書 の 交 付 に よ っ て 、 そ の 債 権 の 譲 渡 に つ い て 通 知 さ れ な け れ ば な ら な い 。 そ の 通 知 が な い 限 り は 、 支 払 金 庫 は 、 そ の 債 権 の 譲 渡 を 知 ら な い も の と み な す 。 ﹂ ︻ 第 二 草 案 三 五 四 条 の 原 文9︵8 ︶ ︼ H ab en M ilitärp erso n en , B eam te, G eistlich e o d er L eh rer an ö ffen tlich en U n terrich tsan stalten d en ü b ertrag b aren T he il ihr es D ie ns te inkom m ens , W ar te ge lde s ode r R uhe ge ha lts abge tr et en, so is t di e aus za hl ende K as se dur ch A us hä ndi gung ei ne r von de m bi she rige n G lä ubi ge r aus ge st ellten ö ffen tlich b eg lau b ig ten U rkunde von de r A bt re tung zu be na chr ic ht ige n. S ol ange di e B ena chr ic ht igung ni cht er fol gt is t, gi lt di e A bt re tung al s de r K as se ni cht be ka nnt . こ れ に 対 し て 、 官 版 第 二 草 案 は 、 右 の 第 二 草 案 三 五 四 条 の 原 文 の う ち 、 最 初 の 下 線 部 分 に つ い て 、 ﹁R uhe ge ha lte s ﹂ と し て い る9︵9 ︶ 。 ま た 、R eatz 版 は 、 原 文 の 二 番 目 の 下 線 部 分 に つ い て 、 ﹁So la nge ﹂ と し て い る ︵ 100 ︶ 。 官 版 第 二 草 案 お よ びR eatz 版 も 、 同 条 に は 脚 注 を 付 し て い な い 。 以 上 の こ と か ら す る と 、 官 版 第 二 草 案 お よ び R eatz 版 の 三 五 四 条 は 、P ioni er 社 版 お よ びM andr y の 私 撰 版 の そ れ と 形 式 的 に ほ ん の わ ず か に 異 な っ て い る に す ぎ ず 、 実 質 的 に は 後 者 の 規 定 と 同 一 の 規 定 で あ る と い え る で あ ろ う 。 暫 定 第 二 草 案 と 官 版 第 二 草 案 の い ず れ も 、 第 二 草 案 三 五 四 条 の 部 分 に お い て 、 第 二 草 案 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ を 採 用 す る 趣 旨 を 全 く 説 明 し て い な い 。 そ れ ゆ え 、 梅 起 草 委 員 は つ い に 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 が 債 権 譲 渡 契 約 を 締 結 す る こ と に よ り た だ ち に 、 譲 渡 債 権 は ︵ 債 務 者 は も ち ろ ん ︶ 債 務 者 以 外 の 第 三 者 と の 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 完 全 に 移 転 す る 理 由 、 す な わ ち 対 抗 要 件 主 義 が 採 用 さ れ て い な い 理 由 を 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 時 に 把 握 し え な か っ た の で あ る 。 254 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 一 一
7 小 括 梅 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 時 ︵ 一 八 九 五 年 三 月 ︶ に 四 種 類 の ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵P ioni er 社 版 ︵ 一 八 九 二 年 ︶ 、M andr y の 私 撰 版 ︵ 一 八 九 二 年 ︶ 、R eatz 版 ︵ 一 八 九 三 年 ︶ ︵ 以 上 、 暫 定 第 二 草 案 ︶ お よ び 官 版 第 二 草 案 ︵ 一 八 九 四 年 ︶ ︶ の う ち の ど れ を 参 照 し た の か に つ い て は 、 本 稿 は 、 起 草 時 期 と の 関 係 で 、 暫 定 第 二 草 案 お よ び 官 版 第 二 草 案 の す べ て が 梅 起 草 委 員 に よ っ て 参 照 さ れ た と 考 え る 。 も ち ろ ん 、 梅 起 草 委 員 は 、 四 種 類 の 第 二 草 案 の す べ て を 参 照 し た の で は な く 、 そ の 一 部 の み を 参 照 し た 可 能 性 は 否 定 で き な い 。 し か し 、 暫 定 第 二 草 案 お よ び 官 版 第 二 草 案 に つ い て 、 梅 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 に あ た っ て 参 照 し た そ の 具 体 的 な 規 定 ︵ 三 四 二 条 、 三 五 〇 条 、 三 五 一 条 、 三 五 三 条 お よ び 三 五 四 条 ︶ を 検 証 し た 結 果 、 四 種 類 の 第 二 草 案 間 で 文 言 が 同 一 の 規 定 が 多 く 、 規 定 の 文 言 に 差 異 が あ っ た と し て も 、 そ れ は 極 め て わ ず か な 形 式 上 の 差 異 に す ぎ な い も の で あ る こ と が 分 か っ て い る 。 ま た 、 そ の 具 体 的 な 規 定 に 脚 注 が 付 さ れ て い る 場 合 で あ っ て も 、 そ の 脚 注 は 、 第 二 草 案 が フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 せ ず 、 な ぜ 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ を 採 用 し た の か に つ い て 、 な ん ら 言 及 し て い な い 。 つ ま り 、 四 種 類 の 第 二 草 案 す べ て が 、 特 に ﹁ 譲 渡 人 と 譲 受 人 と の 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 、 譲 渡 債 権 は 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 、 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 完 全 に 移 転 す る ﹂ 理 由 を 説 明 し て い な い の で あ る 。 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 に 関 し て 、 四 種 類 の 第 二 草 案 は 、 形 式 的 に も 実 質 的 に も 同 じ も の と 評 価 で き る 。 そ れ ゆ え 、 本 稿 は 、 梅 起 草 委 員 が 参 照 し た 第 二 草 案 を ﹁ 四 種 類 の 第 二 草 案 す べ て ﹂ と い う 形 で 特 定 す れ ば 十 分 で あ る と 考 え る 。 こ う し て 、 梅 起 草 委 員 は 、 甲 号 議 案 四 七 〇 条 起 草 時 に お い て 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 が 債 権 譲 渡 契 約 の 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 効 力 に つ い て 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 す る 趣 旨 を 把 握 し え な か っ た の で あ り 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 と は 対 照 的 に 、 債 権 取 引 の 安 全 を 図 っ て い る フ ラ ン ス 民 法 の 対 抗 要 件 主 義 を 選 択 し て 採 用 し た も 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 一 二 253
の と 思 わ れ る 。 こ こ で は 、 通 知 ま た は 承 諾 に よ っ て 、 債 務 者 が 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と 理 解 さ れ て い る わ け で あ る 。 本 稿 は 、 梅 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 時 に 参 照 し え な か っ た 、 債 権 譲 渡 を 含 む 第 二 委 員 会 議 事 録 第 一 巻 ︵ 一 八 九 七 年 ︶ が 債 権 譲 渡 契 約 の 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 効 力 と の 関 係 で 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 す る 趣 旨 を 説 明 し て い る こ と に 注 目 し て き た 。 第 二 委 員 会 議 事 録 に よ れ ば 、 担 保 の た め の 債 権 譲 渡 の 場 合 の よ う に 、 譲 受 人 が 譲 渡 人 の 使 者 ま た は 代 理 人 と し て 譲 渡 に つ い て 債 務 者 に 通 知 す る こ と は 、 譲 渡 人 の 信 用 危 殆 を 惹 起 し 、 原 因 行 為 た る 担 保 権 設 定 契 約 に お け る 信 義 則 上 の 義 務 違 反 を 構 成 す る こ と が あ る と い う 。 し た が っ て 、 債 務 者 に 対 し て ︵ 対 抗 要 件 と し て の ︶ 通 知 が な さ れ な い こ と も あ り 、 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と み る こ と は で き ず 、 対 抗 要 件 主 義 を 採 る こ と は で き な い と い う 。 第 二 委 員 会 議 事 録 は 、 通 知 が な さ れ な い こ と に よ り 、 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 情 報 が 債 務 者 に も た ら さ れ ず 、 そ れ ゆ え 債 務 者 は 公 示 機 能 を 果 た し え な い と す る の で あ る101︵ ︶ 。 梅 起 草 委 員 は 、 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 時 に 、 債 務 者 は 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ た り え な い 場 合 が あ る と い う 認 識 は な か っ た と 考 え ら れ る ︵ 本 稿 二 2 を 参 照 ︶ 。 も し 、 梅 起 草 委 員 が 日 本 民 法 に お け る 債 権 譲 渡 制 度 の 部 分 を 第 二 委 員 会 議 事 録 公 表 後 に 起 草 し た な ら ば 、 梅 起 草 委 員 は 、 フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 で は な く 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 四 二 条 の 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 選 択 し て 採 用 し た 可 能 性 が あ る の で は な い だ ろ う か 。 そ し て 、 こ の こ と は 、 甲 号 議 案 四 七 〇 条 に 基 づ く 日 民 四 六 七 条 の う ち 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 に つ い て 規 定 し て い る 同 条 二 項 に 対 し て 、 第 二 委 員 会 が 説 く 債 権 の 特 定 承 継 原 則 の 趣 旨 が 解 釈 論 上 の 示 唆 を 与 え う る こ と を 意 味 し て い る の で は な か ろ う か 。 さ ら に 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 が 日 民 四 六 七 条 二 項 の 解 釈 論 に 示 唆 を 与 え う る の で あ れ ば 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 と 252 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 一 三
の 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 、 譲 渡 債 権 は 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 完 全 に 移 転 す る と 解 す る 方 向 性 も ま た 、 検 討 に 値 す る も の と 思 わ れ る 。 す な わ ち 、 債 務 者 に 対 す る 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 に つ い て も 規 定 し て い る と 解 さ れ る 日 民 四 六 七 条 一 項 を め ぐ る 解 釈 論 も ま た 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 四 二 条 ︵ 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︶ お よ び 第 二 草 案 三 五 〇 条 や 第 二 草 案 三 五 三 条 と い っ た 規 定 に よ っ て 、 示 唆 を 与 え ら れ る の で は な い か と 考 え ら れ る 。 以 下 、 本 稿 三 に お い て 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 の 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ と そ れ に よ っ て 支 配 さ れ て い る 第 二 草 案 の 規 定 が 日 民 四 六 七 条 の 解 釈 に い か な る 示 唆 を 与 え う る の か に つ い て 、 若 干 の 考 察 を 試 み た い 。
三
日
本
法
へ
の
示
唆
1 民 法 四 六 七 条 二 項 の 解 釈 論 へ の 示 唆 梅 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 起 草 時 ︵ 一 八 九 五 年 三 月 ︶ に 参 照 し え た 債 務 法 部 分 草 案 、 第 一 草 案 、 暫 定 第 二 草 案 お よ び 官 版 第 二 草 案 は 、 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 が 譲 渡 人 と 譲 受 人 に よ る 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 し て も 完 全 に 及 ぶ 趣 旨 に つ い て 明 ら か に し て い な か っ た 。 一 八 九 七 年 に 公 表 さ れ た 債 権 譲 渡 部 分 を 含 む 第 二 委 員 会 議 事 録 は 、 た と え ば 担 保 の た め の 債 権 譲 渡 の 場 合 、 譲 受 人 が 譲 渡 人 の 使 者 ま た は 代 理 人 と し て 債 務 者 に 対 し て 譲 渡 に つ い て 通 知 す る こ と は 譲 渡 人 の 信 用 危 殆 を 惹 起 し 、 原 因 行 為 た る 担 保 権 設 定 契 約 に お け る 信 義 則 上 の 義 務 違 反 を 構 成 す る た め 、 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と す る こ と は で き な い と し 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 せ ず 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ を 採 用 し た と 説 明 し て い た 。 一 八 九 五 年 三 月 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 一 四 251の 時 点 で こ の 第 二 委 員 会 議 事 録 に お い て 述 べ ら れ た 、 第 二 草 案 が 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 す る 趣 旨 に つ い て 知 り え な か っ た 梅 起 草 委 員 は 、 債 務 者 が 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 し て 稀 に 虚 偽 の 回 答 を す る 可 能 性 が あ り 、 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と し て は 不 完 全 で あ る も の の 、 債 務 者 は 通 常 そ の 機 能 を 果 た し う る と 理 解 し て ︵ 本 稿 二 2 を 参 照 ︶ 、 債 権 譲 渡 制 度 に お い て 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 し た 。 こ こ で は 、 債 権 取 引 安 全 の 観 点 か ら 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 四 二 条 の 債 権 の 特 定 承 継 原 則 よ り も 、 フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 が 妥 当 で あ る と の 判 断 が な さ れ た と 考 え ら れ る 。 し か し 、 ! 現 在 の わ が 国 に お い て も 多 用 さ れ て い る 債 権 譲 渡 の 類 型 で あ る ﹁ 担 保 の た め の 債 権 譲 渡 ﹂ に あ っ て 、 債 務 者 に 対 し て 譲 渡 に つ い て 通 知 す る こ と は 、 譲 渡 人 の 信 用 危 殆 を 生 じ さ せ 、 担 保 権 設 定 契 約 に よ る 信 義 則 上 の 義 務 違 反 と な り う る で あ ろ う 。 こ の こ と は 、 債 務 者 の も と に 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 情 報 が 伝 達 さ れ ず 、 そ れ ゆ え 、 債 務 者 が 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と し て の 機 能 を 果 た し え な い 場 合 が あ る こ と を 意 味 す る102︵ ︶ 。 ま た 、 " 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と す る こ と は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 に よ る 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 、 そ れ 以 前 に は な か っ た 債 務 者 以 外 の 第 三 者 へ の 回 答 義 務 を 債 務 者 に 課 す こ と に な る が 、 債 権 譲 渡 契 約 に な ん ら 関 与 し な い 債 務 者 に か か る 義 務 を 課 す こ と は 、 譲 渡 人 、 譲 受 人 お よ び 債 務 者 間 の 不 公 平 を 生 じ さ せ 、 債 務 者 の 法 的 地 位 に つ い て 、 譲 渡 に よ る 不 利 益 が も た ら さ れ て は な ら な い と い う 原 則 ︵ 日 民 四 六 八 条 二 項 ︶ に 反 す る で あ ろ う ︵ 本 稿 二 2 を 参 照 ︶103︵ ︶ 。 さ ら に 、 # 回 答 義 務 を 負 わ な い 債 務 者 は 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 し て 譲 渡 債 権 の 帰 属 に つ い て 回 答 す る こ と も あ る が 、 回 答 し な い こ と も あ り う る の で あ り 、 公 示 に 求 め ら れ る 確 実 性 を 欠 き 、 公 示 方 法 た り え な い こ と に な る104︵ ︶ 。 右 の ! の 理 由 か ら 、 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と 理 解 す る こ と は で き な い と し て 、 フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 し な い と す る 第 二 委 員 会 議 事 録 の 説 250 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 一 五
明 は 、 右 の ! や " の よ う な 本 稿 の 分 析 と も 相 ま っ て 、 ﹁ 債 務 者 は 不 完 全 で は あ る が 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と し て 機 能 す る ﹂ と い う 梅 起 草 委 員 の 見 解 に 疑 問 を 投 げ か け る も の で あ る と い え よ う 。 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と す る こ と は で き な い と い う ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 の 理 解 は 、 日 民 四 六 七 条 二 項 の 解 釈 に 影 響 を 及 ぼ す も の と 考 え ら れ る 。 も ち ろ ん 、 日 民 四 六 七 条 二 項 を 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ に よ っ て 支 配 さ れ て い る 規 定 で あ る と 解 す る こ と は で き な い 。 同 条 同 項 は 、 指 名 債 権 の 多 重 譲 渡 の 場 合 に お け る 複 数 譲 受 人 間 の 優 劣 決 定 基 準 を 定 め て い る が 、 仮 に 、 同 条 同 項 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 に 支 配 さ れ て い る の で あ れ ば 、 そ の 基 準 は 、 債 権 譲 渡 契 約 締 結 時 の 先 後 と な る と こ ろ 、 同 条 同 項 は 、 確 定 日 付 あ る 証 書 に よ る 通 知 ま た は 承 諾 の 先 後 で 優 劣 を 決 し て お り 、 対 抗 要 件 主 義 に 基 づ い て い る の で あ る105︵ ︶ 。 梅 起 草 委 員 が 参 照 し え な か っ た 第 二 委 員 会 議 事 録 が 指 摘 す る よ う に 、 担 保 の た め の 債 権 譲 渡 の 場 合 に お い て は 特 に 、 債 権 譲 渡 に つ い て 債 務 者 に 対 し て 通 知 す る こ と は 、 譲 渡 人 の 経 済 的 信 用 危 殆 を 惹 起 し 、 担 保 権 設 定 契 約 ︵ 原 因 行 為 ︶ に よ る 信 義 則 上 の 義 務 に 違 反 す る106︵ ︶ 。 そ し て 、 債 務 者 に 対 す る 通 知 が 許 容 さ れ な い 結 果 、 ま た 、 債 務 者 に 譲 渡 債 権 の 帰 属 を 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 し て 回 答 す る 義 務 を 課 す こ と が で き な い た め 、 債 務 者 は 、 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と し て の 機 能 を 果 た し え ず 、 通 知 ま た は 承 諾 に よ っ て 債 権 譲 渡 に つ い て 債 務 者 に 認 識 さ せ る 必 要 は な い こ と に な る 。 こ の こ と か ら 、 日 民 四 六 七 条 二 項 が 定 め る 多 重 譲 渡 の 場 合 に お け る 複 数 譲 受 人 間 の 優 劣 決 定 基 準 は 、 判 例 通 説 が 説 く 確 定 日 付 あ る 通 知 書 の 到 達 の 先 後 で は な く 、 通 知 書 中 の 確 定 日 付 の 先 後 と 解 さ れ る べ き と 考 え る107︵ ︶ 。 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 の 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 第 二 草 案 三 四 二 条 ︶ は 、 日 民 四 六 七 条 二 項 に つ い て 、 ﹁ 確 定 日 付 説 の 再 評 価 ﹂ と い う 解 釈 論 上 の 示 唆 を 与 え る も の と 思 わ れ る 。 日 民 四 六 六 条 一 項 本 文 が 指 名 債 権 の 二 重 譲 渡 を 禁 じ て い な い と こ ろ 、 譲 渡 人 が 第 一 譲 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 一 六 249
受 人 に 当 該 指 名 債 権 を 譲 渡 し て も 、 そ の 第 一 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 ま た は 承 諾 書 を 具 備 し な い 限 り 、 当 該 指 名 債 権 は 、 譲 渡 人 の 下 に 不 完 全 に 帰 属 し て い る こ と に な る 。 そ れ ゆ え 、 譲 渡 人 は 、 第 二 譲 受 人 に 対 し て 当 該 指 名 債 権 を 二 重 に 譲 渡 す る こ と が で き る 。 第 一 譲 受 人 と 第 二 譲 受 人 と の 間 の 優 劣 は 、 通 知 書 ま た は 承 諾 書 に お け る 確 定 日 付 の 先 後 で 決 ま り 、 確 定 日 付 に つ い て 先 ん じ た 譲 受 人 が 、 確 定 的 に 当 該 指 名 債 権 を 取 得 す る 。 日 民 四 六 七 条 二 項 の 対 抗 要 件 主 義 は 、 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と し て 債 権 取 引 の 安 全 を 図 る と い う 実 質 的 な 機 能 を 有 し て お ら ず 、 複 数 譲 受 人 間 の 優 劣 を 決 定 す る と い う 形 式 的 な 機 能 し か 有 し て い な い と み る べ き で は あ る ま い か108︵ ︶ 。 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 四 二 条 の 債 権 の 特 定 承 継 原 則 は 、 日 民 四 六 七 条 二 項 に つ い て 、 ﹁ 確 定 日 付 説 の 再 評 価 ﹂ と い う 解 釈 上 の 示 唆 を 与 え う る と し て も 、 指 名 債 権 の 二 重 譲 渡 の 場 合 に お い て 、 第 一 譲 受 人 が 第 二 譲 受 人 よ り も 早 く 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 具 備 し た が 、 そ の 通 知 書 を 債 務 者 に 到 達 さ せ て い な い 間 に 、 第 二 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 具 備 し 、 こ の 通 知 書 を 債 務 者 に 到 達 さ せ た た め 、 債 務 者 が 第 一 の 譲 渡 に つ き 善 意 で 第 二 譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し た と き に 、 か か る 債 務 者 の 二 重 弁 済 の 危 険 を ど の よ う に し て 除 去 す る か が 、 確 定 日 付 説 に お い て は 問 題 と な る109︵ ︶ 。 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 を 譲 渡 に よ っ て 譲 渡 前 よ り も 不 利 益 な 地 位 に 置 く こ と は 、 譲 渡 人 、 譲 受 人 お よ び 債 務 者 間 の 公 平 に 反 す る ︵ 日 民 四 六 八 条 二 項 参 照 ︶ 。 し た が っ て 、 法 律 上 、 こ の よ う な 債 務 者 を 保 護 す る 必 要 が あ る110︵ ︶ 。 こ の 点 で 参 考 と な る の が 、 最 判 昭 和 六 一 年 四 月 一 一 日 民 集 四 〇 巻 三 号 五 五 八 頁 で あ る ︵ 以 下 、 ﹁ 昭 和 六 一 年 判 決 ﹂ と よ ぶ ︶ 。 昭 和 六 一 年 判 決 の 詳 細 な 分 析 と 検 討 に つ い て は 他 日 に 譲 り た い が 、 到 達 時 説 を 前 提 と す る 昭 和 六 一 年 判 決 は 、 優 先 す る 譲 渡 に つ い て 認 識 し て い な い 債 務 者 が 劣 後 譲 受 人 に 対 し て し た 無 効 な 弁 済 は 日 民 四 七 八 条 に よ っ て 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と さ れ う る と す る 。 確 定 日 付 説 に お い て も 、 第 二 譲 受 人 が 第 一 譲 受 人 よ り も 早 く 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 債 務 者 に 到 達 さ せ れ ば 、 債 務 者 が 債 権 譲 渡 248 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 一 七
契 約 に 何 ら 関 与 し て い な い こ と に も 鑑 み 、 第 二 譲 受 人 は 、 取 引 通 念 上 債 権 者 ら し い 外 観 を 有 す る 者111︵ ︶ 、 す な わ ち 債 権 の 準 占 有 者 で あ る と い え る 。 そ し て 、 準 占 有 者 た る 第 二 譲 受 人 が 無 権 利 者 で あ る こ と に つ き 善 意 で あ り112︵ ︶ 、 か つ 、 善 意 で あ る こ と に つ き 無 過 失 で あ る な ら ば 、 債 務 者 が 第 二 譲 受 人 に 対 し て し た 無 効 な 弁 済 は 、 日 民 四 七 八 条 に よ っ て 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と な る と 思 わ れ る 。 前 述 の よ う に 、 日 民 四 六 七 条 二 項 は 、 ﹁ 優 劣 決 定 機 能 ﹂ を 担 う 規 定 で あ り 、 そ れ と は 質 的 に 異 な る ﹁ 債 務 者 保 護 機 能 ﹂ を 担 う こ と は で き な い こ と か ら す れ ば113︵ ︶ 、 日 民 四 六 七 条 二 項 と は 異 な る 日 民 四 七 八 条 に 後 者 の 機 能 を 担 わ せ る こ と は 、 論! 理! 的! に! は! 妥! 当! な! 法 律 構 成 で あ る と 評 価 し う る 。 昭 和 六 一 年 判 決 に よ れ ば 、 債 務 者 が 無 過 失 で あ る た め に は 、 ﹁ 劣 後 譲 受 人 を 真 の 債 権 者 で あ る と 信 ず る に つ き 相 当 な 理 由 が あ る こ と ﹂ が 必 要 で あ る と さ れ る 。 ﹁ 相 当 な 理 由 ﹂ が あ る か ど う か は 、 債 務 者 が 劣 後 譲 受 人 で あ る 第 二 譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し た 状 況 と も 密 接 に 関 連 す る で あ ろ う 。 た と え ば 、 譲 渡 債 権 の 履 行 期 日 に ︵ 確 定 日 付 に つ い て 第 一 譲 受 人 に 劣 後 す る ︶ 第 二 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 債 務 者 に 到 達 さ せ 、 第 一 譲 受 人 が そ の 三 日 後 に 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 債 務 者 に 到 達 さ せ た 場 合 に お い て 、 第 二 譲 受 人 が 無 権 利 者 で あ る こ と に つ き 善 意 で 第 二 譲 受 人 に 弁 済 し た 債 務 者 に は 、 帰 責 性 は 認 め ら れ な い で あ ろ う 。 か か る 債 務 者 に 過 失 を 認 定 し て 第 一 譲 受 人 に 対 す る 二 重 弁 済 を さ せ る と 、 多 重 譲 渡 が な い 場 合 に も 債 務 者 に 履 行 遅 滞 の 危 険 を 強 い る こ と に な る 。 他 方 、 譲 渡 債 権 の 履 行 期 日 の 午 前 中 に 第 二 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 債 務 者 に 到 達 さ せ 、 そ の 日 の 午 後 に 第 一 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 債 務 者 に 到 達 さ せ た 場 合 、 第 二 譲 受 人 に 善 意 で 弁 済 し た 債 務 者 は 、 帰 責 性 あ り と 評 価 さ れ う る 。 こ の 場 合 に 債 務 者 に 過 失 あ り と し て も 、 債 務 者 に 履 行 遅 滞 の 危 険 を 強 い る こ と は な さ そ う で あ る 。 し か し 、 指 名 債 権 は 三 重 に も 四 重 に も 譲 渡 さ れ う る こ と に 鑑 み て ︵ 日 民 四 六 六 条 一 項 本 文 ︶ 、 債 務 者 に 過 失 あ り と 認 定 す れ ば 、 債 務 者 は 、 第 一 譲 受 人 に 優 先 す る 譲 受 人 が 存 在 す る 可 能 性 が あ る こ と 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 一 八 247
か ら 、 第 一 譲 受 人 に 対 し て 履 行 遅 滞 の 危 険 を 負 い う る 。 ま た 、 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 が 第 一 譲 受 人 よ り も 先 に 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 自 ら に 到 達 さ せ た 第 二 譲 受 人 に 対 し て 善 意 で 弁 済 し て も 、 過 失 を 認 定 し 、 二 重 弁 済 を 債 務 者 に 強 い る こ と は 、 譲 渡 に よ っ て 債 務 者 の 法 的 地 位 を 譲 渡 前 よ り も 不 利 益 な も の と し 、 日 民 四 六 八 条 二 項 に 代 表 さ れ る 債 権 譲 渡 法 の 理 念 に 反 す る で あ ろ う 。 こ う し て み る と 、 債 務 者 が 優 先 す る 債 権 譲 渡 に つ い て 善 意 で 劣 後 譲 受 人 に 対 し て 弁 済 を し た 場 合 、 日 民 四 七 八 条 に よ っ て そ の 弁 済 を 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と し 、 債 務 者 を 二 重 弁 済 の 危 険 か ら 解 放 す る こ と は 、 同 条 の 無 過 失 要 件 を 充 足 す る か 否 か の 判 断 が 困 難 な と き が あ る こ と を 考 慮 す る と 、 債 務 者 保 護 の 点 で 問 題 が あ る と 考 え る114︵ ︶ 。 そ こ で 、 劣 後 譲 受 人 に 善 意 で 弁 済 し た 債 務 者 の 弁 済 を 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と し 、 譲 渡 に よ っ て 譲 渡 前 よ り も そ の 法 的 地 位 を 不 利 益 な も の と し な い よ う に す る た め 、 水 本 教 授 が 指 摘 さ れ る ご と く 、 日 民 四 六 八 条 二 項 の 直 接 適 用 ま た は 類 推 適 用 が 考 え ら れ る 。 指 名 債 権 の 二 重 譲 渡 が な さ れ た 後 、 第 一 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 第 二 譲 受 人 よ り も 先 に 具 備 し た が 、 第 二 譲 受 人 の 確 定 日 付 あ る 通 知 書 が 第 一 譲 受 人 の そ れ よ り も 先 に 債 務 者 に 到 達 し た た め 、 債 務 者 が 第 二 譲 受 人 に ︵ 無 権 利 者 で あ る こ と に つ き 善 意 で ︶ 弁 済 し た 場 合 を 考 え て み よ う 。 第 二 譲 受 人 は 、 第 一 譲 受 人 が 対 抗 要 件 を 具 備 す る ま で は 不 完 全 な が ら 債 権 者 で あ っ た の で あ り 、 そ の 法 的 地 位 は 、 譲 渡 人 の そ れ と 等 し か っ た こ と に な る 。 し た が っ て 、 債 務 者 が 第 二 譲 受 人 に 対 し て し た 弁 済 は 、 譲 渡 後 、 譲 渡 に つ い て の 通 知 を 受 け る ま で の 間 に 譲 渡 人 に 対 し て し た 弁 済 と 実 質 的 に 同 じ こ と に な り 、 日 民 四 六 八 条 二 項 の 直 接 適 用 に よ り 譲 渡 債 権 に つ い て 弁 済 し た こ と を 債 務 者 が 第 一 譲 受 人 に 対 抗 で き る 結 果 、 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と な る115︵ ︶ 。 こ こ で は 、 劣 後 譲 受 人 で あ る 第 二 譲 受 人 が 無 権 利 者 で あ る こ と に つ い て 、 債 務 者 が 善 意 無 過 失 で あ っ た か ど う か は 、 当 然 問 題 と な ら な い 。 な お 、 譲 渡 人 が 第 一 譲 受 人 に 指 名 債 権 を 譲 渡 し 、 第 一 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 具 備 し た 後 、 譲 渡 人 が そ の 債 権 を 第 二 譲 受 人 に 譲 渡 し て 、 第 二 譲 受 人 が 確 定 日 付 あ る 通 知 書 を 第 246 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 一 九
一 譲 受 人 よ り も 先 に 到 達 さ せ た 場 合 に お い て 、 債 務 者 が 第 二 譲 受 人 に ︵ 無 権 利 者 で あ る こ と に つ き 善 意 で ︶ 弁 済 し た と き は 、 第 二 譲 受 人 は 、 譲 渡 債 権 を 取 得 し て お ら ず 、 そ の 法 的 地 位 は 、 譲 渡 人 の そ れ と 同 視 さ れ え な い 。 そ う す る と 、 か か る 債 務 者 の 弁 済 は 、 日 民 四 六 八 条 二 項 に よ っ て 有 効 と は な ら ず 、 債 務 者 は 、 第 一 譲 受 人 へ の 二 重 弁 済 を 強 い ら れ る こ と に な る 。 こ の こ と は 、 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 の 法 的 地 位 を 譲 渡 前 よ り も 不 利 益 な も の に す る こ と を 意 味 す る 。 そ れ ゆ え 、 日 民 四 六 八 条 二 項 の 趣 旨 を 基 礎 と し て 、 同 条 同 項 を 類 推 適 用 し 、 債 務 者 は 、 譲 渡 債 権 に つ い て 弁 済 し た こ と を 第 一 譲 受 人 に 対 し て 対 抗 す る こ と が で き 、 そ の 結 果 、 債 務 か ら 解 放 さ れ る と 解 す る べ き で あ る 。 同 条 同 項 が 類 推 適 用 さ れ る 以 上 、 第 二 譲 受 人 が 無 権 利 者 で あ る こ と に つ き 、 債 務 者 が 善 意 無 過 失 で あ る こ と は 、 問 題 と さ れ え な い 。 同 条 同 項 に よ る 指 名 債 権 の 多 重 譲 渡 の 場 合 に お け る 債 務 者 保 護 は 、 日 民 四 七 八 条 に よ る そ れ よ り も 手 厚 く 、 よ り 債 権 譲 渡 法 の 基 本 理 念 に 適 合 す る で あ ろ う 。 本 稿 の 立 場 の 帰 結 は 、 ﹁ 債 務 者 は 早 く 到 達 し た 第 二 譲 受 人 へ の 譲 渡 通 知 書 を 見 て す ぐ に 弁 済 等 を す れ ば 債 務 は 消 滅 し 、 弁 済 等 を し な い 間 に 第 一 譲 受 人 へ の 譲 渡 通 知 書 が 到 達 す れ ば 、 確 定 日 附 の 先 後 を 見 き わ め て 、 日 附 の 早 い ほ う に 弁 済 す れ ば そ の 弁 済 は 有 効 と な り 、 遅 い ほ う に 弁 済 す れ ば 無 効 と な る ﹂ と い う 水 本 教 授 の 見 解 と 同 じ も の と な る116︵ ︶ 。 2 民 法 四 六 七 条 一 項 の 解 釈 論 へ の 示 唆 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と し な い 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 四 二 条 の 債 権 の 特 定 承 継 原 則 が 日 民 四 六 七 条 二 項 の 解 釈 論 に 示 唆 を 与 え る の で あ れ ば 、 同 原 則 は 、 指 名 債 権 の 単 純 譲 渡 の 場 合 ︵ 多 重 譲 渡 で は な い 場 合 ︶ に つ い て 規 定 し て い る 日 民 四 六 七 条 一 項 の 解 釈 に も 示 唆 を 与 え る と 考 え ら れ る 。 同 原 則 に よ れ ば 、 譲 渡 債 権 は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 と の 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 、 譲 渡 人 と 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 二 〇 245
譲 受 人 間 の み な ら ず 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 と の 関 係 で も 完 全 に 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 し 、 そ れ ゆ え 、 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 完 全 に 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る こ と に な る 。 そ し て 、 指 名 債 権 が 多 重 譲 渡 さ れ る 場 合 で は な い 以 上 、 譲 渡 人 が 譲 受 人 に 対 し て 当 該 指 名 債 権 を 譲 渡 し た 後 、 譲 渡 人 に 譲 渡 債 権 が 不 完 全 な が ら 帰 属 し て い る と 解 す る 理 由 は な い こ と か ら 、 日 民 四 六 七 条 一 項 は 、 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 は 債 務 者 に 対 し て も 完 全 に 及 ぶ こ と を 前 提 と し て い る と い え る117︵ ︶ 。 そ れ で は 、 日 民 四 六 七 条 一 項 は 、 ど の よ う に 解 さ れ る べ き か 。 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 の 債 権 の 特 定 承 継 原 則 が 同 条 同 項 の 解 釈 に 示 唆 を 与 え る 以 上 、 そ の 原 則 に よ っ て 支 配 さ れ て い る 第 二 草 案 三 五 三 条 が 参 考 と な る 。 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 は 、 譲 渡 に つ い て 知 ら な い た め 、 表 見 譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し て し ま い 、 新 債 権 者 で あ る 譲 受 人 を 含 む 真 正 な 債 権 者 に 対 し て 二 重 弁 済 の 危 険 を 負 う と こ ろ 、 そ の 二 重 弁 済 の 危 険 を 除 去 す る た め 、 新 債 権 者 た る 譲 受 人 は 、 自 ら の 権 利 者 と し て の 資 格 ︵Leg itim atio n ︶ を 証 明 し な け れ ば な ら な い 。 日 民 四 六 七 条 一 項 所 定 の 通 知 ま た は 承 諾 は 、 そ の 証 明 方 法 で あ る 。 そ し て 、 こ の 証 明 が な さ れ る こ と を 担 保 す る た め 、 新 債 権 者 が 通 知 ま た は 承 諾 を 具 備 し な い で 譲 渡 債 権 を 債 務 者 に 対 し て 行 使 し て き た 場 合 、 表 見 譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を す る 恐 れ が あ る 債 務 者 は 、 債 務 の 履 行 を 拒 絶 で き る 。 そ れ ゆ え 、 同 条 同 項 の ﹁ 対 抗 す る こ と が で き な い ﹂ は 、 ﹁ 新 債 権 者 た る 譲 受 人 が 自 ら に 完 全 に 帰 属 し て い る 譲 渡 債 権 の 行 使 を 債 務 者 に 対 し て 認 め さ せ る こ と が で き な い ﹂ と 解 さ れ る こ と に な る118︵ ︶ 。 日 民 四 六 七 条 一 項 は 、 債 務 者 が 表 見 譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を す る 危 険 を 回 避 す る た め 、 譲 受 人 に 権 利 者 と し て の 資 格 ︵L eg itim atio n ︶ を 証 明 さ せ る べ く 、 通 知 ま た は 承 諾 を 譲 受 人 が 譲 渡 債 権 を 行 使 す る た め の 要 件 ︵ 権 利 行 使 要 件 ︶ と し た も の と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 日 民 四 六 七 条 一 項 の 趣 旨 は 、 指 名 債 権 譲 渡 の 他 の 規 定 に お い て は 存 し な い 。 し た が っ て 、 譲 受 人 は 、 日 民 四 六 七 条 一 項 の 通 知 ま た は 承 諾 を 具 備 し さ え す れ ば 、 譲 渡 債 権 を 債 務 者 に 対 し て 行 使 し う る の で あ り 、 債 務 者 は 、 そ の 244 民 法 四 六 七 条 と ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 二 ・ 完 ︶ 二 一
譲 受 人 の 履 行 請 求 に 応 じ て 弁 済 す れ ば 、 譲 渡 債 権 は 、 消 滅 す る こ と に な る119︵ ︶ 。 な お 、 債 務 者 は 、 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い た め 、 譲 受 人 が 日 民 四 六 七 条 一 項 の 通 知 ま た は 承 諾 を 具 備 す る 前 で あ れ ば 、 完 全 な 無 権 利 者 で あ る 譲 渡 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し て し ま い 、 二 重 弁 済 を 強 い ら れ る 危 険 が あ る 。 し か し 、 同 条 同 項 は 、 債 務 者 が 譲 渡 に つ い て 善 意 で 譲 渡 人 に 対 し て し た 弁 済 を 有 効 に す る 規 定 で は な い 。 同 条 同 項 は 、 ﹁ 権 利 行 使 機 能 ﹂ を 担 う 規 定 で あ っ て 、 権 利 行 使 に よ っ て ︵ 譲 渡 債 権 を 債 務 者 に 対 し て 行 使 で き る と い う ︶ 法 的 利 益 を 受 け る の は 、 譲 受 人 で あ る が 、 そ れ に よ っ て ︵ 譲 渡 債 権 に つ い て 履 行 を し な け れ ば な ら な い と い う ︶ 法 的 不 利 益 を 受 け る の は 、 債 務 者 で あ る 。 他 方 、 債 務 者 の か か る 弁 済 を 有 効 と し て 債 務 者 を 保 護 す る 機 能 ︵ ﹁ 債 務 者 保 護 機 能 ﹂ ︶ は 、 ︵ 譲 渡 債 権 に つ い て の 債 務 が 消 滅 し 、 譲 受 人 に 対 す る 債 務 か ら 解 放 さ れ る と い う ︶ 法 的 利 益 を 債 務 者 に 与 え 、 ︵ 譲 渡 債 権 を 消 滅 さ せ て 満 足 を 得 ら れ な く さ せ る と い う ︶ 法 的 不 利 益 を 譲 受 人 に 与 え る の で あ る 。 ﹁ 権 利 行 使 機 能 ﹂ と ﹁ 債 務 者 保 護 機 能 ﹂ は 、 相 対 立 す る も の で あ っ て 、 そ れ ゆ え 、 同 一 の 規 定 が 両 機 能 を 担 う こ と は で き な い120︵ ︶ 。 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 が ﹁ 権 利 行 使 機 能 ﹂ を 担 う 規 定 と ﹁ 債 務 者 保 護 ﹂ を 担 う 規 定 を そ れ ぞ れ 三 五 三 条 と 三 五 〇 条 と い う よ う に 別 個 に 定 め て い る こ と も 、 日 本 民 法 の 債 権 譲 渡 法 解 釈 の 参 考 に な る 。 債 務 者 が 通 知 前 ま た は 承 諾 前 に 譲 渡 に つ き 善 意 で 譲 渡 人 に 対 し て し た 弁 済 は 、 日 民 四 六 七 条 一 項 以 外 の 規 定 に よ っ て 特 別 に 例 外 的 に 有 効 と さ れ る べ き な の で あ る 。 譲 受 人 が 日 民 四 六 七 条 一 項 の 通 知 ま た は 承 諾 を 具 備 し て い な い な ら ば 、 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 に と っ て 、 譲 渡 人 は 、 取 引 通 念 上 債 権 者 ら し い 外 観 を 有 し て い る と い え る 。 そ こ で 、 日 民 四 七 八 条 に よ り 、 債 務 者 が 譲 渡 に つ き 善 意 で し た 弁 済 を 有 効 と し 、 債 務 者 保 護 を 図 る こ と が 考 え ら れ る 。 た だ 、 ! 債 務 者 に よ る 善 意 立 証 が 困 難 で あ る た め121︵ ︶ 、 指 名 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 の 地 位 が 譲 渡 前 よ り も 悪 化 す る こ と に な り 、 日 民 四 六 八 条 二 項 に 代 表 さ れ る 債 権 譲 渡 法 の 基 本 理 念 に 反 す る 恐 れ が あ る こ と 、 " 債 権 譲 渡 に お け る 債 務 者 保 護 は 同 じ 債 権 譲 渡 法 の 規 定 に よ っ て 図 ら れ る の が 妥 松 山 大 学 論 集 第 二 十 三 巻 第 四 号 二 二 243
当 で あ る こ と か ら 、 本 稿 は 、 債 務 者 の か か る 弁 済 を 日 民 四 七 八 条 に よ っ て 有 効 と し 、 債 務 者 か ら 二 重 弁 済 の 危 険 を 除 去 す る こ と に は 消 極 的 で あ る 。 譲 受 人 が 通 知 ま た は 承 諾 を 具 備 す る 前 に 、 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て 弁 済 し た 場 合 に お い て は 、 譲 渡 人 が 無 権 利 者 で あ る こ と に つ き 善 意 で あ る こ と が 要 件 と さ れ て お ら ず 、 債 権 譲 渡 法 の 規 定 で あ る 日 民 四 六 八 条 に よ っ て 、 債 務 者 保 護 が 図 ら れ る べ き で は な か ろ う か122︵ ︶ 。 債 務 者 は 、 譲 渡 債 権 に つ い て 弁 済 し た こ と を 譲 受 人 に 認 め さ せ る ︵ 対 抗 す る ︶ こ と が で き 、 そ の 結 果 、 譲 受 人 は 、 譲 渡 債 権 の 消 滅 を 認 め な け れ ば な ら な い 。 こ う し て 、 債 務 者 は 、 二 重 弁 済 を 回 避 す る こ と が で き る の で あ る 。