Title
アルファルファにおける菌核病抵抗性育種に関する研究 -
表現型循環選抜による抵抗性の向上および育苗環境と抵抗
性発現 -( 内容の要旨 )
Author(s)
神戸, 三智雄
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 乙第023号
Issue Date
1998-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2268
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 鼻 神戸三智堆 (愛知県) 博士(農学) 農博乙第23号 平成10年3月13日 学位規則第4粂第2項該当 アルファルファにおける菌核病抵抗性育種に関する 研究 一義現型循環選抜による抵抗性の向上および育 苗環境と抵抗性発覗-主査 副査 副査 副査 攫 授 授 授 教∵教∵教∵教 学学学学 大 大 大 大 阜 阜 州 岡 岐∵岐 信 静 弘 彦 男 均 文 書 叩 本 田 原 田 藤 盲 氏 澤 論 文 の 内 容 の 要 旨 晩秋から早春にかけて発病するアルファルファ菌核病は、重要な多犯性病書であるが、 これまで抵抗性品種育種は成功していなかった。本研究ではアルファルファにおいて菌核 病抵抗性の遭伝的な差を表現型に発現させる環境条件、菌核病菌の病原性と抵抗性の機作 を解明するとともに、表現型循環選抜によって抵抗性の向上が実現できることを実証した。 さらにそれらの結果を理融研究と対比して、その辻伝的基礎についても推論を行った。そ の要旨は以下に示すとおりである。 1.抵抗性の発現と環境条件 アルファルファ品種を秋播きした圃毒削こ培養菌を接種し、断熱性の高い銀色寒冷紗で 被覆し、菌核病を斉一に発病させる環境を作って生存率に品種間差を認めた。ある程度の 抵抗性がある材料としては、フランスのFlamande系統群に由来する品種が多く、抵抗性 が辻伝的であることが推察できた。これにより、自然条件でのハードニング・培養菌接種・ 被覆処理の組み合わせによる抵抗性検定の方法を確立した。 温室内の抵抗性検定に適した育苗条件の設定では、苗令・温度・日長を変えて組み合わ せた実験から、短日(9時間日長)、生育適温下限(16℃)で育苗した10週苗(8葉 展開期)において抵抗性の差の発現が大きく、検定に適していることを明らかにした。 2.菌株の病原性と抵抗性の機作 菌核病の病原性程度には菌株の収集地域による差が課められたが、レースとしての分 化は認められなかった。篠病性品種と抵抗性選抜系統を幼首で比較すると、篠病性品種は 病斑が根部まで伸展し枯死に至るが、抵抗性系統では病斑の伸展はクラウン部で停止して、 -152一
幼芽の再生が可能になった。病害発症の機作については、走査電顕観察を行い、抵抗性個 体に侵入した菌糸は表皮細胞で伸展を停止する典型的な抵抗性反応を認めることができた。 抵抗性品種では感染部で菌糸伸展の阻害反応が起きていることが示された。 3.表現型循環選抜による抵抗性の向上 フランス品種及び愛知農総試による育成品種等、10品種系統による約3000個体 を基礎集団として、1983年から9世代にわたり表現型循希選抜を加えた。圃場検定に おける1∼5世代系統の生存率についてみると、2世代選抜までのSR58・1,SR58-2では 梅低く、基礎集団の1部としたナツワカバと差がなかった。3世代系統から生存率は高く なり、5世代系統は生存率が明らかに高くなった。5∼9世代系統の比較検定では、9世 代選抜のSR58.9が最も高い生存率を示し、選抜世代を重ねることにより抵抗性が著しく 向上することが明らかに私められた。 累積選抜庄と選抜反応との関係から実現遺伝率を求めると、初期世代はb2=0.078と低か ったが、3∼9世代ではぴ=0.364と高い値を示した。基礎集団では菌核病の抵抗性に関与 する個々の遺伝子の働きは′J、さく、その頻度も低いため、初期世代ではほとんど抵抗性の 向上が認められなかったと考えられる。しかし、抵抗性の遺伝変異が発現する環境で表現 型循環選抜の世代を重ねることにより、集団内の抵抗性遺伝子の頻度が高まり、大きな選 抜反応が得られることになったと推論できた。 4‥理論モデルとの対比 9世代の表現型循環選抜で得られた菌核病抵抗性の選抜反応を、同質四倍体の理論的 な選抜モデルと対比した。無優性で初期の辻伝子頻度を低くしたモデルでは、エスケープ を少なくして選抜世代を繰り返した場合、目的とする遺伝子の頻度を徐々に高めることが できる。このモデルにおいて示された選抜を重ねることによる集団平均値の向上は、本研 究における菌核病抵抗性の藩抜反応と同様の債向を示した。 これらのことから、本研究の菌核病抵抗性のように初期世代では選抜効果が少なく育種 困難とみられる場合においても、辻伝的な差が表現型として発現できる希境が設定できれ ば、選抜世代を重ねることにより集団内辻伝子頻度を高めることができる。表現型循環選 抜はそのような育種において極めて有効な育種手法であることを推論できた。 審 査 結 果 の 要 旨 平成10年1月23日に岐阜大学大学院連合農学研究科セミナー重において行われた 公開論文発表のあと、4人の論文審査委負会で本論文を審査した。 温暖地における良質牧草として普及が期待されているアルファルファの安定栽培には、 菌核痛抵抗性品種の育成が重要であるが、この病害は多犯性であるため育種に成功して いなかった。同じマメ科のレンゲなどにおいても我が国で抵抗性品種は育成されていな い。このような状況下で、アルファルファの菌核病抵抗性品種の育成をめざして行われ た研究による本論文は、抵抗性の発現と環境条件、菌核病菌の病原性と抵抗性の機作、 表現型循環選抜による抵抗性系統の育成、さらにそれらを総合して理論モデルと対比さ
せながらアルファルファ菌核病抵抗性育種を学問的に解明した研究である。 1)抵抗性の発現と桑境条件 まず、アルファルファ品種を秋播きした圃場に培養菌を接種し、断熱性の高い銀色寒 冷紗で被覆し、菌核病を斉一に発病させる環境を作って生存率に品種間差を認め、抵抗 性がある遺伝質としては、フランスのFlamande系統群に由来する品種であること示し た。同時に、自然条件の圃場接種による抵抗性検定の方法を確立した。 温室内の抵抗性検定桑境の設定では、苗令・温度・.日長を変えて組み合わせた実験か ら、短日・生育適温下限・10遭苗が抵抗性の検定に適していることを明らかにした。 2)菌抹の病原性と抵抗性の模作 茜核病の病原性程度には菌抹の収集地域による差が認められたが、レースとしての分 化は認められなかった。羅病性品種と抵抗性選抜系統を幼苗で比較すると、羅病性品種 は病斑が根部まで伸展したが、抵抗性系統では病斑の伸展はクラウン部で停止した。さ らに走査電顕観察を行うと、抵抗性個体に侵入した菌糸は表皮細胞で伸展を停止する典 型的な抵抗性反応を認めることができ、抵抗性品種では感染部で菌糸伸展の阻害反応が 起きていることが示された。 3)表現型循秦選抜による抵抗性の向上 ′、 10品種系掛こよる約3000個体を基礎集団として、1983年から9世代にわたり 表現型循衆選抜を加えた。圃場検定における1∼5世代系統の生存率は、2世代選抜ま では極く低く、基礎集団の1部のナツワカバと差がなかったが、3世代系統から高くな り、5世代系統は生存率が明らかに高くなった。5∼9世代系統の比較検定では、9世 代選抜が最も高い生存率を示し、選抜世代を重ねることにより抵抗性が著しく向上する ことが明らかに忍められた。 累積選抜圧と選抜反応との関係から実現辻伝率を求めると、初期世代は抄=0.078と低 かったが、3∼9世代ではぴ=0.364と高い値を示した。 4)理論モデルとの対比 菌核病抵抗性の選抜反応を、同質四倍体の理論的な選抜モデルと対比すると、無康性で 初期の遺伝子頻度を低くしたモデルでは、エスケープを少なくして選抜世代を繰り返し た場合、目的とする辻伝子の頻度を徐々に高めることとなり、本研究における菌核病抵 抗性の選抜反応の世代推移の遺伝的背景が推定できた。本研究においては抵抗性の辻伝
変異が発痩する環境で表現型循雰選抜の世代を重ねたので、集団内において抵抗性遺伝
子の頻度が高まり、後期世代で大きな選抜反応が得られることになったと推論できた。 この研究論文は、アルファルファの我が国における菌核病抵抗性育種の学問的解析とし ては初の論文であり、審査委貞全員はその成果を高く評価した。この論文において示さ れた成果は、本研究の菌核病抵抗性のように初期世代では遷抜効果が少なく育種困難と みられる場合における他の栽培植物における育種研究にも貢献できる。即ち辻伝的な差 が表現型として発現できる環境の設定法の確立に成功すれば、表現型循環選抜の世代を 重ねることによって、集団内遺伝子頻度を高め、目的とする特性を向上させる.可能性を 明らかにしたので、その育種学的意義は大きいと評価できる。-154-論文の公開口頭発表における質疑への応答と説明も的確であった。 以上、本論文の審査委員会は基礎となる学術論文の審査も合わせて慎重に審議し、審査 委員全員の一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文として十分価値が あるものと判定した。 【学位論文の基礎となる学術論文】 1・アルファルファにおける菌核病抵抗性の人工接種による圃場検定法の開発と既存 品種の抵抗性評価. 神戸三智雄・藤本文弘・稲波進 育種学雑誌43:277∼287、1993. 2・アルファルファ菌核病抵抗性検定のための育苗条件設定と抵抗性の病理解剖学的 解析. 神戸三智雄・古賀博則・藤本文弘・奥村健治・水野和彦 育種学雑誌46:261∼268、1996. 3・Inma8eOfRe8i8tanCeOfA馳toSderotiniaCrt"na皿dStemRotthmugh RecurrentSelectionofSu血gPhnt8inImhtedFieldPk)t8. Michiohnbe,FumihimFujiJnOtO,YukoM血kami,SuBumuInamiand KabumasaFukaya Bree血gSdenoe47:3キワ、〉5よl、J門n